(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】深さプロファイルが変化するリファイナセグメント
(51)【国際特許分類】
D21D 1/30 20060101AFI20231219BHJP
【FI】
D21D1/30
(21)【出願番号】P 2021503759
(86)(22)【出願日】2019-06-03
(86)【国際出願番号】 SE2019050508
(87)【国際公開番号】W WO2020022941
(87)【国際公開日】2020-01-30
【審査請求日】2022-03-10
(32)【優先日】2018-07-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】515203011
【氏名又は名称】バルメット・アー・ベー
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リンドブロム,トミー
【審査官】藤原 敬士
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05467931(US,A)
【文献】特開2009-174108(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21D 1/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リグノセルロース材料のリファイナ(100)内のリファイナディスク(30)に取り付けられるように構成されたリファイナセグメント(10)であって、前記リファイナセグメント(10)には、前記リファイナセグメント(10)の内周(10a)から前記リファイナセグメント(10)の外周(10b)に向かう方向に延在する複数の離間したバー(20
i)が設けられており、隣接する
第1のバー(
20
k
)および第2のバー(20
k+1
)の各対が、前記リファイナセグメント(10)上において対応する中間領域(22)を境界付ける、リファイナセグメント(10)において、前記リファイナセグメント(10)は、前記リファイナセグメント(10)上の少なくとも1つの中間領域(22)がチャネル区域(23)と隆起区域(24)とを備え、前記チャネル区域(23)は、第1の側面(23b)で前記隆起区域(24)に接続し、深さプロファイルが変化する断面を有する中間領域(22)を形成するために、前記隆起区域(24)よりも深く前記リファイナセグメント(10)内に延在し、前記チャネル区域(23)は、前記リファイナセグメント(10)の前記外周(10b)から前記リファイナセグメント(10)の前記内周(10a)の方向に徐々に小さくなる幅W1を有し、前記隆起区域(24)は、前記リファイナセグメント(10)の前記外周(10b)から前記リファイナセグメント(10)の前記内周(10a)の方向に対応して大きくなる幅W2を有する、ことを特徴とする、リファイナセグメント(10)。
【請求項2】
前記チャネル区域(23)の第2の側面(23a)は、前記隣接する
第1のバー(
20
k
)および第2のバー(20
k+1
)の対の内の第1のバー(20
k)に接続しており、前記隆起区域(24)の1つの側面(24a)は、前記隣接する
第1のバー(
20
k
)および第2のバー(20
k+1
)の対の内の第2のバー(20
k+1)に接続している、請求項1に記載のリファイナセグメント(10)。
【請求項3】
前記チャネル区域(23)は、
-ブロック状の断面を有するチャネル、又は
-少なくとも部分的に角度の付いた断面を有するチャネル、又は
-面取りされた断面を有するチャネル、又は
-鉢形の断面を有するチャネル
を備える、請求項1又は請求項2に記載のリファイナセグメント(10)。
【請求項4】
前記チャネル区域(23)は、前記リファイナセグメント(10)の前記外周(10b)から前記リファイナセグメント(10)の前記内周(10a)の方向に次第に深くなる深さを有する、請求項1~3のいずれか一項に記載のリファイナセグメント(10)。
【請求項5】
前記隆起区域(24)が、深さが前記第1のバー(20
k)から前記第2のバー(20
k+1)に延在する方向に徐々に小さくなる深さプロファイルを有する中間領域22を形成するために、隆起区域(24)がチャネル区域(23)に接続する側面から隆起区域(24)が前記隣接する
第1のバー(
20
k
)および第2のバー(20
k+1
)の対の内の前記第2のバー(20
k+1)に接続する側面に延在する方向に次第に大きくなる高さを有する、請求項1~4のいずれか一項に記載のリファイナセグメント(10)。
【請求項6】
チャネル区域(23)の最も深い部分と隆起区域(24)との間における相対的な高さの差が、外周(10b)から内周(10a)に向かって延在する方向に徐々に大きくなる、請求項1~4のいずれか一項に記載のリファイナセグメント(10)。
【請求項7】
前記チャネル区域(23)は、リファイナセグメント(10)の外周(10b)からリファイナセグメント(10)の内周(10a)に向かって延在する方向に徐々に大きくなる深さを有する、請求項1~5のいずれか一項に記載のリファイナセグメント(10)。
【請求項8】
前記隆起区域(24)はプラトー区域を形成する、請求項1~7のいずれか一項に記載のリファイナセグメント(10)。
【請求項9】
前記リファイナセグメント(10)には、N本の離間したバー(20
i)が設けられており、Nは、4~7の値をとる、請求項1~8のいずれか一項に記載のリファイナセグメント(10)。
【請求項10】
前記リファイナセグメント(10)には、複数の離間したバー(20
i)が設けられており、前記バーは前記リファイナセグメント(10)の内周(10a)から前記リファイナセグメント(10)の外周(10b)に向かう方向に延在しており、且つ前記リファイナセグメント(10)の半径方向の全長の20~40%に延在している、請求項1~9のいずれか一項に記載のリファイナセグメント(10)。
【請求項11】
離間したバー(20
i)が設けられていないリファイナセグメント(10)の外側区域に、木材チップを処理するように構成されたリファイニング構造が設けられている、請求項10に記載のリファイナセグメント(10)。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載のリファイナセグメント(10)が設けられたリファイナディスク(30)。
【請求項13】
前記リファイナディスク(30)は、ステータディスク又はロータディスクである、請求項12に記載のリファイナディスク(30)。
【請求項14】
請求項13に記載のリファイナディスクを備えたリファイナ(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
提案する技術は、概して、リグノセルロース材料のリファイナのためのリファイナセグメントに関連する。より具体的には、提案する技術は、変化する断面深さプロファイルを有するリファイナセグメントに関連する。提案する技術はまた、そのようなリファイナセグメントが設けられたリファイナディスク、並びに提案されるリファイナセグメントを装備したリファイナディスクが設けられたリファイナにも関連する。
【背景技術】
【0002】
例えば、リグノセルロース材料の典型的なリファイナは、材料がリファイニング又は解繊される2つの相対的に回転するディスクを備える。相対的に回転するディスクの対は、特に、ロータと称される1つの回転ディスクと、ステータと称される静止ディスクとを具備し得る。これらのディスク、又はこれらのディスクの少なくとも一方には、多くの場合、材料のより効率的なリファイニングを行うために、リファイナセグメントと称されるセグメントが設けられている。協働するステータディスク及びロータディスクの少なくとも一方には、多くの場合、バー及びダムが設けられたリファイナセグメントが装備されている。バーは、主にリグノセルロース材料の効率的なリファイニングを提供するために利用される、セグメント上に配置された突出構造である。これに代わって、ダムの目的は、主に、2つのリファイニングディスク間のディスク間隙、例えば、ロータとステータとの間のディスク間隙、又は2つの相対的に回転するディスクを分離するディスク間隙に向けて、材料の流れを誘導するか、又は引き上げることである。材料がリファイニング又は解繊されるのは、ディスク間のディスク間隙である。リファイナの通常の使用中に、リファイニング作用又は解繊作用は摩擦を引き起こし、摩擦は処理される材料を加熱する。木材パルプなどのリグノセルロース材料は天然で水を含んでいるため、摩擦によって水が加熱され、蒸気が生成される。生成された蒸気は、材料の流れに深刻な影響を与える可能性がある。そのような蒸気は、材料の流れと相互に作用し、材料の流れの意図した経路を混乱させる可能性がある。
【0003】
提案する技術の特定の目的は、蒸気と材料の流れとの間の相互作用に関連する問題のいくつかを少なくとも軽減する機構を提供することにある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
全般的な目的は、材料の流れの改善を可能にするリファイナセグメントを提供することにある。
【0005】
特定の目的は、リファイナセグメント上の材料の流れとリファイナセグメント上の蒸気の流れとの分離を可能にするリファイナセグメントを提供することにある。
【0006】
付加的な目的は、改善された材料の流れを可能にし、特にリファイナセグメント上の材料の流れとリファイナセグメント上の蒸気の流れとの分離を可能にするリファイニングセグメントが設けられたリファイナディスクを提供することにある。
【0007】
さらに別の目的は、改善された材料の流れを可能にし、特にリファイナセグメント上の材料の流れとリファイナセグメント上の蒸気の流れとの分離を可能にする少なくとも1つのリファイニングディスクを装備したリファイナを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の態様によれば、リグノセルロース材料のリファイナ内のリファイナディスクに取り付けられるように適合されたリファイナセグメントが提供され、リファイナセグメントには、リファイナセグメントの内周からリファイナセグメントの外周に向かう方向に延在する複数の離間したバーが設けられており、隣接するバーの各対は、リファイナセグメント上において対応する中間領域を境界付ける。リファイナセグメントは、チャネル区域と隆起区域とを具備する少なくとも1つの中間領域を備える。チャネル区域は、第1の側面で隆起区域24に接続しており、深さプロファイルが変化する断面を有する中間領域22を形成するために、隆起区域24よりも深くリファイナセグメント10内に延在している。
【0009】
第2の態様によれば、第1の態様によるリファイナセグメントが設けられたリファイナディスクが提供される。
【0010】
第3の態様によれば、第2の態様によるリファイナディスクが提供され、リファイナディスクは、ステータディスク又はロータディスクである。
【0011】
第4の態様によれば、第2の態様又は第3の態様によるリファイナディスクを備えたリファイナが提供される。
【0012】
提案する技術の実施形態は、リファイニングセグメント上において、より良好に制御された材料の流れをもたらす。これにより、より均一なリファイニング作用及び、より良好な最終製品が保証される。
【0013】
詳細な説明を読むことにより、他の利点が理解されるであろう。
【0014】
実施形態は、実施形態のさらなる目的及び利点と共に、添付の図面と共に解釈される以下の説明を参照することによって最もよく理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】提案する技術を利用することができる、従来のリファイナの概略図である。
【
図2】
図1に示したリファイナの、対向して配置されたリファイナディスクの概略図である。
【
図3A】円形のリファイナセグメントの概略図である。
【
図3B】
図3Aの円形のリファイナセグメントの一部の断面概略図である。
【
図4A】提案する技術によるリファイナセグメントの概略図である。
【
図4B】
図4Aに示したリファイナセグメントの一部の断面概略図である。
【
図5A】提案する技術によるリファイナセグメントの実施形態の概略図である。
【
図5B】
図5Aに示したリファイナセグメントの一部の断面の概略図である。
【
図6A】提案する技術によるリファイナセグメントが設けられたリファイナディスクの概略図である。
【
図6B】
図6Aのリファイニングディスクと協働することができる、既知のリファイナディスクの概略図である。
【
図7】提案する技術によるリファイナセグメント上の材料の流れの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図面全体を通して、類似又は対応する要素に対して、同一の参照記号が用いられている。
【0017】
一般に、本願で使用される全ての用語は、異なる意味が明確に与えられ、かつ/又はそれが使用される文脈から暗示されない限り、関連する技術分野におけるそれらの用語の通常の意味に従って解釈されるべきである。要素、装置、構成部品、手段などへの全ての言及は、特に明記しない限り、要素、装置、構成部品、手段などの少なくとも1つの例を指すものとして公然と解釈されるべきである。本願で開示される実施形態の任意の特徴は、適切な場合には、他の任意の実施形態に適用することができる。同様に、実施形態の任意の利点は、他の任意の実施形態に当てはまる可能性があり、逆もまた同様である。添付される実施形態の他の目的、特徴及び利点は、以下の説明から明らかになるであろう。
【0018】
提案する技術をよりよく理解するために、関連する技術の簡単な概要及び関連する技術的問題の分析から始めることが有用である場合がある。
【0019】
この目的のために、提案する技術を利用することができるリファイナを概略的に示す
図1を参照する。
図1は、例示的なパルプリファイナを断面図で概略的に示している。この構成は、本発明を理解するために必須ではない装置の全ての構成要素と共に、リファイナ装置の外部ケーシングを表すハウジング26に収容されている。図示されていない構成要素の例は、例えば回転シャフトを駆動するための電気モータ、リグノセルロース材料の供給機構などである。第2のハウジング31の内部では、ロータリファイナディスク30とステータリファイナディスク30
*とがシャフトに沿って直線的に位置合わせされている。以下では、ロータリファイナディスク30及びステータリファイナディスク30
*を、それぞれロータ及びステータと称する。ロータ30は、軸受16上に配置された回転シャフト15に取り付けられている。回転シャフト15は、シャフト15と、それによってロータ30とを回転させるモータ(図示せず)に接続されている。ロータ30に面するステータ30
*には、リグノセルロース材料のための供給チャネル14とリファイニング領域19との間に延在する、中央に配置された貫通孔32が設けられることができる。ロータ30には、特定の実施形態において、リグノセルロース材料の流入に面する表面を有するセンタープレート17を設けることができる。センタープレート17の表面には、リグノセルロース材料を外側に導く構造が設けられることができる。ロータ30
*及び/又はステータ30には、パルプの誘導及び粉砕を可能にするために、リファイナセグメントが設けられている。これらのリファイナセグメントには、バー及びダムが設けられることができる。
【0020】
使用中、木材チップ又は調製木材、例えばパルプなどのリグノセルロース材料は、供給機構(図示せず)によって、供給チャネル14を通して供給される。材料は、ステータ30*の孔32を通過し、領域19に進入する。領域19は、本質的に、ロータ30とステータ30*との間の開放領域によって画定され、この領域は、動作中に非常に小さくなることができる。領域19に流入するリグノセルロース材料は、ロータ30のセンタープレート17に進入する。センタープレート17は、リグノセルロース材料をロータ及び/又はステータ上のリファイナセグメントに向けて誘導するように作用する。
【0021】
提案する技術が用いられ得るロータ-ステータ構成の、より詳細な説明を提供するために、
図2を参照する。
図2は、例えば上述したようなリファイナにおいて、ハウジング31に収容されたロータ-ステータ構成の断面側面図を示している。回転シャフトを中心として回転するように配置されたロータが示されている。ロータには、ステータに面する表面上に、リファイナセグメント1を備えるリファイニングディスク30が設けられている。ステータには、ロータに面する表面上に、リファイナセグメント1
*を備えるリファイニングディスク30
*が設けられている。リファイニングディスクの目的の1つは、リファイナセグメント1、1
*を支持することであるため、リファイニングディスクは、リファイナの特定の変形例では、セグメントホルダと称されることがある。また、
図2には、リファイニングを受けるリグノセルロース材料の入口32が示されている。入口32は、ステータの中央領域に配置されている。入口32に対向するロータ側のリファイニングディスクの中央領域に配置されているのは、センタープレート17である。
図1を参照して上述したセンタープレート17の目的は、入口32からリファイニングディスクの外側部分に向かって落下する材料を分散させることである。つまり、センタープレート17は、リファイナディスク上に配置されたリファイナセグメントに向けて材料を分散させるように作用する。
【0022】
提案する技術を利用できる一般的なリファイナを詳細に説明したので、次に進み、提案する技術に関連する特定のリファイナセグメントを詳細に説明する。この目的のために、
図3Aを参照する。
図3Aは、リファイナ内のリファイナディスクに取り付けられる可能背のある円形リファイナセグメントを示している。バーがセグメントの外周からセグメントの内周まで完全に延在しているリファイナセグメントのような、他の変形例も可能である。バーは直線形状を有してもよいが、湾曲させることも可能である。提案する技術は、これら全ての変形例において用いられ得る。
図3Aの円形リファイナセグメント10は、内周10bと外周10aとの間に延在しており、円形リファイナセグメント10には複数の半径方向に延在するバーが設けられている。バーの内の3つが参照番号20
k、20
k+1、20
k+2でそれぞれ表されており、添え字kは特定のバーを示しており、1からNに及ぶ。Nはリファイナセグメント上のバーの総数である。隣接するバー20
k、20
k+1の対は、中間領域22を境界付ける。リファイナセグメント上における材料の流れは、主にそのような中間領域に集中する。
図3Bは、
図3Aのリファイナセグメント10の一部の別の図を提供している。バー20
k、20
k+1、20
k+2を具備するリファイナセグメントの一部が断面図で示されている。隣接するバー20
k、20
k+1の間にあるか、又はそれらのバーによって部分的に境界付けられる領域22は、平面領域である。
図3A及び
図3Bに示したようなリファイナセグメントに関する1つの特定の問題は、リファイナセグメントの使用中に生成される蒸気が領域22内を移動するように強いられ、したがって蒸気が同じ領域内の材料の流れと相互に作用して干渉し、それにより材料の流れを最適とは言えないものにすることである。提案する技術は、材料の流れと蒸気の流れとの分離を可能にする機構を提供することによって、この問題の少なくとも一部に対処することを目的としている。これは、リファイニングセグメントの中間領域22に変化する深さプロファイルを提供することによって達成される。深さプロファイルは、特に、隣接する隆起区域よりも深くリファイナセグメントの大部分に延在するチャネル区域を具備する。チャネル区域は、蒸気にリファイナセグメント上における別の経路を提供し、一方、隣接する隆起区域は、材料の流れがサーフィンのように、すなわちチャネル区域に進入すること無く、隣接するバーを横断することを可能にする。隆起区域とは、本願では、チャネル区域に対して隆起した中間領域内の区域を意図する。つまり、隆起区域は、リファイナセグメントの作業面に関して、チャネル区域よりも高く配置されている。隆起区域は、例えば
図3B及び
図4Aに示すように、隣接するチャネル区域から急激に隆起し、それによりプラトーを形成してもよいし、又は隆起区域は、隆起区域がチャネル区域に接続する最低点から、隆起区域がバーに接続する最高点まで徐々に隆起することもできる。
【0023】
図4Bは、提案する技術によるリファイナセグメント10の概略図を、上から見たものとして、すなわち上面図で、提供する。リグノセルロース材料のリファイナ100内におけるリファイナディスク30に取り付けられるように構成されたリファイナセグメント10が示されている。リファイナセグメント10には、リファイナセグメント10の内周10aからリファイナセグメント10の外周10bに向かう方向に延在する複数の離間したバー20
iが設けられており、隣接するバー20
k、20
k+1の各対は、リファイナセグメント10上において対応する中間領域22を境界付ける。リファイナセグメント10は、チャネル区域23と、プラトー区域24の形態にある隆起区域24とを具備する少なくとも1つのそのような中間領域22を備える。チャネル区域23は、第1の側面23bでプラトー区域24に接続し、深さプロファイルが変化する断面を有する中間領域22を形成するために、プラトー区域24よりも深くリファイナセグメント10内に延在している。
【0024】
図4Aは、
図4Bに示したリファイナセグメントの断面の概略図を提供する。断面図は、2つの隣接するバー間の中間領域が、2つの隣接する領域、すなわち、チャネル区域23とプラトー区域24の形態にある隆起区域とにどのように分割されるかを示している。異なる領域は、チャネル区域の一端、すなわち側面23bで結合されている。側面23bにおいて、チャネル区域23は急峻に隆起して、プラトー区域24に入る。プラトー区域24は、側面24aでバー20
k+1に接続する。断面図で見た場合の中間領域の変化する深さプロファイルにより、リファイニングプロセス中に生成される蒸気がチャネル区域23に沿って移動することが可能となり、一方、任意の材料の流れは、主にプラトー区域上で中間領域を横断する。すなわち、材料の流れは、サーフィンのように中間領域22を横断する。
【0025】
提案する技術の特定の実施形態によれば、チャネル区域23の第2の側面23aが、隣接するバー20k、20k+1の対の内の第1のバー20kに接続しており、隆起区域24の1つの側面24aは、隣接するバー20k、20k+1の対の内の第2のバー20k+1に接続しているリファイナセグメント20が提供される。チャネル区域が第1のバー20kに接続する、この特定の実施形態は、リファイニングセグメント上の隣接する領域間において最大の深さの差を保証する。これにより、材料の流れが、チャネル区域23に入ること無く、中間領域22を横切る可能性が高まる。
【0026】
チャネル区域23は、中間領域における蒸気の流れと材料の流れとの分離を容易にするいくつかの異なる形状を有し得る。チャネル区域23は、例えば、ブロック状の断面を有するチャネル、又は少なくとも部分的に角度の付いた断面を有するチャネル、又はより面取りされた断面を有するチャネルを備えてもよい。チャネル区域はまた、鉢形の断面を有するチャネルであってもよい。
【0027】
提案する技術の別の可能な実施形態によれば、チャネル区域23が、リファイナセグメント10の外周10bからリファイナセグメント10の内周10aの方向に次第に深くなる深さを有するリファイナセグメント10が提供される。この実施形態は、リファイナセグメントの内周10aの近くにおいて、チャネル区域23の容積が、より大量の蒸気を輸送できることを保証し、積層した材料の流れ及び蒸気の流れを可能にする。実施形態はまた、積層した材料の流れ及び蒸気の流れを可能にする。
【0028】
チャネル区域23が内周10aの近くでより大量の蒸気を輸送することも可能にし、さらに積層した材料の流れ及び蒸気の流れを可能にする、提案する技術の付加的な実施形態によれば、チャネル区域23が、リファイナセグメント10の外周10bからリファイナセグメント10の内周10aの方向に徐々に小さくなる幅W
1を有し、隆起区域24、例えば、プラトー区域24は、リファイナセグメント10の外周10bからリファイナセグメント10の内周10aの方向に対応して大きくなる幅W
2を有する、リファイナセグメント10が提供される。この実施形態は、
図5Aに概略的に示されている。
【0029】
提案する技術のさらに別の実施形態は、深さが第1のバー20
kから第2のバー20
k+1に延びる方向に徐々に小さくなる深さプロファイルを有する中間領域22を形成するために、隆起区域、又は特定の実施形態ではプラトー区域24が、隆起区域又はプラトー区域がチャネル区域23に接続する側面から隆起区域24が隣接するバー20
k、20
k+1の対の内の第2のバー20
k+1に接続する側面まで延在する方向に次第に大きくなる高さを有する、リファイナセグメント10を提供する。この実施形態は
図5Bに概略的に示されており、
図5Bは、隆起区域24が、どのように側面23bの位置の特定の高さから対向側面24aのより高い高さまで徐々にかつ滑らかに隆起するか、と、プラトー区域がどのようにバー20
k+1と合流するかと、を示している。この実施形態は、領域22を横断する材料の流れが、任意の実質的に鋭い角部に遭遇することなく、滑らかな方法で領域22を横断することを保証する。これにより、鋭い端縁が無いことによって乱流やその他の流れの乱れの発生が抑制されるため、より良好に制御された材料の流れがもたらされる。
【0030】
提案する技術のさらに別の実施形態によれば、チャネル区域23の最も深い部分と隆起区域24又はプラトー区域24との間における相対的な高さの差が、外周10aから内周10bに向かって延在する方向に徐々に大きくなる、リファイナセグメント10が提供される。この実施形態はまた、チャネル区域23の容積の増大を保証し、これにより、チャネル区域23は、リファイナセグメントの内周10aの近くで、より大量の蒸気を輸送することができ、また積層した材料の流れ及び蒸気の流れも可能にする。
【0031】
チャネル区域23がリファイナセグメントの内周10aの近傍で、より大量の蒸気を輸送することを可能にし、また積層した材料の流れ及び蒸気の流れも可能にする、提案する技術の実施形態にはまた、リファイナセグメントの外周10aからリファイナセグメントの内周10bに向かって延在する方向に徐々に大きくなる深さを有する、チャネル区域23が設けられ得る。
【0032】
提案する技術の特定の実施形態によれば、N本の離間したバー20iが設けられたリファイナセグメント10が提供され、Nは、区間[4;7]内の値をとる。この実施形態は、リファイニングバーがまばらに装備されたリファイナセグメントを提供し、まばらに装備されたリファイナセグメントは、リファイニングされる材料がリファイナセグメントの外縁に向かって比較的迅速に輸送されることを保証すると同時に、堅牢な構造を提供する。例えば、均一な材料の流れを得るために、リファイナセグメントの周りに対称的にバーを提供することが可能であり、例えば、リファイナセグメントが0°~180°に亘る半円形に形成された場合、リファイナセグメント上に6本のバーを提供することが可能であり、各バーはその隣接するバーの双方から30°ずらされている。一般に、リファイナセグメントが角度Ωの扇形として画定される場合、互いに角度Ω/Nだけオフセットされた、N本の対称的に配置されたバーを有するリファイナセグメントを得ることが可能である。隣接するバーの間には、5°~15°の区間にある最小角度オフセットがあることが望ましい。
【0033】
提案された技術のさらに別の実施形態は、リファイナセグメント10の内周10aからリファイナセグメント10の外周10bに向かう方向に延在する、複数の離間したバー20iが設けられており、バーが前記リファイナセグメントの半径方向の全長の約20~40%にさらに延在しているリファイナセグメント10を提供する。つまり、リファイナセグメントが半径方向の長さRを有する場合、離間したバーは、好ましくは、リファイナセグメントの内周10aから区間[R/5,2R/5]内に入る長さまで延在するセグメント領域に位置するように配置されるべきである。
【0034】
上記の実施形態の特定の変形例によれば、リファイナセグメントの外側区域、すなわち、離間したバー20iが設けられていないこれらの区域に、木材チップを処理するように構成されたリファイニング構造が設けられているリファイナセグメント10が提供される。この実施形態は、木材チップを含むリファイニング材料が、離間したバーの誘導作用によってリファイナセグメントの外側区域に向かって押し出され、外側区域に設けられたリファイニング構造によって処理されることを保証する。リファイニング構造は、木材チップを処理するため、例えば粉砕するか又は引き裂くために、リファイナセグメントの作業面から突出する構造であり得る。リファイニング構造は、例えば、規則正しいバーであってよく、すなわち、隣接するバーは一定の深さの中間領域を有する。
【0035】
提案する技術によるリファイナセグメントのいくつかの実施形態を説明したので、以下では、リグノセルロース材料のリファイナのリファイナディスク上に提供された場合の、そのようなリファイナセグメントの働きについて説明する。提案する技術によるリファイニングセグメントは、リファイナディスク30に取り付けられるセグメントの形で設けられてもよい。リファイニングセグメントは、任意選択で中央領域が除去された円の形で、又は扇形の形で設けられてもよい。したがって、リファイナディスク30には、複数のリファイナセグメントが設けられてもよく、それによりリファイナディスク30は、リファイニングセグメントによって完全に覆われるか、又は部分的に覆われる。リファイニングディスク30は、この特定の場合には、セグメントホルダと称され得る。しかしながら、リファイニングセグメントはまた、完全に一体化されたディスクの形態で設けられてもよく、したがって、リファイニングディスク自体の一部を形成するか、又はリファイニングディスク自体を画定する。この場合、リファイニングセグメント及びリファイニングディスク30は、ロータ又はステータに取り付け可能な一体構造を形成する。リファイニングセグメントは、任意選択で中央領域が除去された円の形で、又は扇形の形で設けられてもよい。したがって、リファイナディスク30にはいくつかのリファイナセグメントが設けられてもよく、それによりリファイナディスク30はリファイニングセグメント1によって完全に覆われるか、又は部分的に覆われる。今度は、
図6A及び6Bを参照する。
図6Aは、リファイナセグメントがステータディスク30
*上に設けられている、提案する技術の特定の例を示している。ステータディスク30
*には、チャネル区域23と隆起区域又はプラトー区域24とに分離された中間領域22を境界付けるバー20
k、20
k+1などのバーを備える部分円形リファイナセグメントが設けられている。リファイナセグメントは、ディスクの外周から内周10aまで延在しており、ディスクの外周は、リファイナセグメントの外周10bと一致し得る。ステータディスク30
*は、
図6Aに示した場合のように、ディスクの中心上へと流れる材料をディスクの外周に向けて半径方向に分散させるように構成されたセンタープレートを支持し得る、中央リファイナセグメント自由領域を備え得る。半径方向は、rで表された矢印で示されている。リファイナの使用中、ステータディスク30
*は、ロータディスク30に対向して配置される。
図6Bには、可能なロータディスクが示されている。この例では、リファイニングディスク30及び30
*は、ステータ、すなわち静止リファイニングディスク、及び、ロータ、すなわち回転ディスクとして記載されている。しかしながら、ディスクは双方とも回転していてもよい。さらに、ステータディスクの代わりに、提案する技術によるリファイニングセグメントをロータディスクに装備することも可能である。また、相対的に回転するディスクの双方に提案する技術によるリファイニングセグメントを装備することも可能である。しかしながら、ステータディスクにリファイナセグメントを装備することが若干好ましい場合がある。対向して配置されたリファイニングディスク30及び30
*は、リファイニング間隙と称される小さな間隙によって分離される。リファイニング作用の大部分は、この間隙で起こる。したがって、リファイナが作動されると、リファイニングされる材料は、場合によりロータディスクの中心に開口を有する入口チャネルを通してステータ30
*のセンタープレート上に供給され、センタープレートは、材料を半径方向外側に導き、それにより、材料は、周囲に向かう途中でリファイニング間隙においてリファイニングされる。材料が中央に詰まり、材料がリファイニングセグメント全体に一様に分散することを回避するために、進入する材料が半径方向に素早く移動できるようにすることが重要である。材料の流れに悪影響を与える可能性のある機構の1つは、本開示で先に説明したように、リファイニングプロセス中に生成される蒸気と材料の流れとの間の相互作用である。蒸気及び材料に別々の経路を与えるリファイニングセグメントを提供することにより、間隙全体での材料の流れ及び分散を改善することが可能である。
図7は、提案する技術によるリファイニングセグメント上の材料の流れの概略図を提供している。図面の矢印は、相対回転が反時計回りの方向である場合の、材料の移動方向を示している。材料は、内周10bと外周10aとの間で外周10aに向かう途中で主に隆起又はプラトー区域24に接するサーフィンのような方法で領域22を横断し、一方、プロセスで生成される蒸気は、チャネル区域23によって提供される自由空間を占有することができる。
図7の下部は、断面で見た場合の材料の流れを示している。矢印は、材料の流れのサーフィンのような動きを示している。
【0036】
上記の例から、提案する技術の一態様が、本開示に示したことによるリファイナセグメントが設けられたリファイナディスク30を提供することは明らかである。
【0037】
提案する技術の付加的な態様が、本開示に示したことによるリファイナセグメントが設けられたリファイナディスク30であって、リファイナディスク30がステータディスク又はロータディスクである、リファイナディスク30を提供することも明らかである。
【0038】
提案する技術の付加的な態様が、上記のようなリファイナディスクを備えたリファイナ100を提供することも明らかである。
【0039】
上記の実施形態は、単に例として与えられたものであり、提案する技術はそれらの実施形態に限定されないことを理解されたい。当業者には、添付の特許請求の範囲によって定義される本範囲から逸脱することなく、実施形態に対して様々な修正、組み合わせ、及び変更を行うことができることが理解されるであろう。特に、異なる実施形態における異なる部分の解決策は、技術的に可能な場合、他の構成で組み合わせることができる。