IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日東電工株式会社の特許一覧

特許7405832硬化型粘接着シート、及び硬化型粘接着シートの製造方法
<>
  • 特許-硬化型粘接着シート、及び硬化型粘接着シートの製造方法 図1
  • 特許-硬化型粘接着シート、及び硬化型粘接着シートの製造方法 図2
  • 特許-硬化型粘接着シート、及び硬化型粘接着シートの製造方法 図3
  • 特許-硬化型粘接着シート、及び硬化型粘接着シートの製造方法 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】硬化型粘接着シート、及び硬化型粘接着シートの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/35 20180101AFI20231219BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20231219BHJP
   C09J 163/00 20060101ALI20231219BHJP
   C09J 11/08 20060101ALI20231219BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
C09J7/35
C09J7/38
C09J163/00
C09J11/08
C09J11/06
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021509141
(86)(22)【出願日】2020-03-17
(86)【国際出願番号】 JP2020011847
(87)【国際公開番号】W WO2020196119
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2022-12-15
(31)【優先権主張番号】P 2019065068
(32)【優先日】2019-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 亜樹子
(72)【発明者】
【氏名】新田 あゆみ
(72)【発明者】
【氏名】保井 淳
【審査官】高崎 久子
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-168400(JP,A)
【文献】特開2016-186843(JP,A)
【文献】特開2012-224733(JP,A)
【文献】特開平09-157620(JP,A)
【文献】特開2012-197427(JP,A)
【文献】国際公開第2011/062149(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2014-0148081(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J
B32B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂と、
潜在性硬化剤と、
ゲル化剤とを含む粘接着剤組成物からなる粘接着剤層を備える硬化型粘接着シートであって、
前記エポキシ樹脂の0質量%超50質量%以下が、25℃で固形状のエポキシ樹脂であり、
前記潜在性硬化剤は45℃以上80℃未満の反応開始温度を有し、
ここで、前記反応開始温度は下記のとおり測定される、
硬化型粘接着シート。
<反応開始温度の測定方法>
ビスフェノールF型エポキシ樹脂と潜在性硬化剤とを混合した樹脂組成物を、温度変調DSCを用いて、50mL/minの窒素雰囲気下で昇温速度2℃/minにて、樹脂組成物のHeat Flow挙動を得る。その際のHeat Flow挙動が立ち上がる温度である発熱開始温度を、潜在性硬化剤の反応開始温度とする。
【請求項2】
前記潜在性硬化剤がアミン系化合物である、請求項1に記載の硬化型粘接着シート。
【請求項3】
前記エポキシ樹脂100質量部に対して前記潜在性硬化剤を15~40質量部含有する、請求項1または2に記載の硬化型粘接着シート。
【請求項4】
前記ゲル化剤がコアシェル型のアクリル樹脂である、請求項1~3のいずれか1項に記載の硬化型粘接着シート。
【請求項5】
前記エポキシ樹脂100質量部に対して前記ゲル化剤を5~40質量部含有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の硬化型粘接着シート。
【請求項6】
エポキシ樹脂と、45℃以上120℃以下の反応開始温度を有する潜在性硬化剤と、ゲル化剤とを含む粘接着剤組成物を調製する工程(1)、及び、
前記粘接着剤組成物からなるシート状の粘接着剤層を成形し、30℃~43℃で保持してシート化する工程(2)
を含み、
前記エポキシ樹脂の50質量%以下が、25℃で固形状のエポキシ樹脂であり、
ここで、前記反応開始温度は下記のとおり測定される、
硬化型粘接着シートの製造方法。
<反応開始温度の測定方法>
ビスフェノールF型エポキシ樹脂と潜在性硬化剤とを混合した樹脂組成物を、温度変調DSCを用いて、50mL/minの窒素雰囲気下で昇温速度2℃/minにて、樹脂組成物のHeat Flow挙動を得る。その際のHeat Flow挙動が立ち上がる温度である発熱開始温度を、潜在性硬化剤の反応開始温度とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化型粘接着シート、及び硬化型粘接着シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エレクトロニクス産業において、電子デバイス中の多くの構成要素を機械的に接着するために、半構造用接着剤が用いられている。半構造用接着剤は潜在性硬化剤とともにライナー上にコーティングすることにより、半構造用接着テープを製造して用いるのが典型的である。
【0003】
半構造用接着テープを用いて電子デバイス中の構成要素を接着すると、高い硬化活性化温度が電子デバイス中の繊細な部品を損傷するという問題があった。
【0004】
上記問題に対して、比較的低温度で硬化可能な接着テープが検討されてきている。例えば、特許文献1には、第1の面及び反対側の第2の面を有する硬化剤層であって、スクリムと、スクリムを少なくとも部分的に封入するバインダー層と、バインダー層中に分散される潜在的硬化剤と、を含む硬化剤層と、硬化剤層の第1の面上に配置される第1のエポキシ層と、硬化剤層の第2の面上に配置される第2のエポキシ層と、を含む低温硬化性のエポキシテープが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】日本国特開2013-525984号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
粘接着シートを製造するには、エポキシやアクリル等の固体材料を含む樹脂組成物をシート状に成形する必要がある。このような固体材料を含む樹脂組成物をシート化する場合には、当該組成物を剥離フィルム等の表面上にできるだけ均一に塗布する必要がある。そのため、一旦加熱して粘度を下げてから各種材料を混合するか、あるいは、一旦溶剤に溶解させたのち、当該樹脂組成物を剥離フィルム等に塗布、乾燥してシート化することが考えられる。
【0007】
しかしながら、潜在性硬化剤を含む樹脂組成物を用いる場合、その粘度を下げるために加熱するとシート化の段階で硬化反応が開始してしまう。また、溶剤を用いる場合も同様の問題が生じてしまう。そのため、上記のような方法でシート化を行うことは困難である。
【0008】
そこで、本発明は、粘着性を有し、かつ低温で硬化が可能な硬化型粘接着シート、及びその製造方法を提供することを一つの課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた。その結果、硬化剤として特定の反応開始温度を有する潜在性硬化剤を使用するとともに、ゲル化剤を用いることにより、低温で硬化が可能であり、かつ粘着性を有する硬化型粘接着シートを提供できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
本発明の一実施形態は、エポキシ樹脂と、潜在性硬化剤と、ゲル化剤とを含む粘接着剤組成物からなる粘接着剤層を備え、上記潜在性硬化剤は45℃以上120℃以下の反応開始温度を有する、硬化型粘接着シートに関する。
【0011】
本発明の一実施形態において、硬化型粘接着シートは、上記潜在性硬化剤がアミン系化合物であることが好ましい。
【0012】
本発明の一実施形態において、硬化型粘接着シートは、エポキシ樹脂100質量部に対して上記潜在性硬化剤を15~40質量部含有することが好ましい。
【0013】
本発明の一実施形態において、硬化型粘接着シートは、ゲル化剤がコアシェル型のアクリル樹脂であることが好ましい。
【0014】
本発明の一実施形態において、硬化型粘接着シートは、エポキシ樹脂100質量部に対してゲル化剤を5~40質量部含有することが好ましい。
【0015】
本発明の一実施形態において、硬化型粘接着シートは、エポキシ樹脂の50質量%以下が、25℃で固形状のエポキシ樹脂であることが好ましい。
【0016】
本発明の一実施形態において、エポキシ樹脂と、45℃以上120℃以下の反応開始温度を有する潜在性硬化剤と、ゲル化剤とを含む粘接着剤組成物を調製する工程(1)、前記粘接着剤組成物からなるシート状の粘接着剤層を成形し、30℃~43℃で保持してシート化する工程(2)を含む、硬化型粘接着シートの製造方法に関する。
【発明の効果】
【0017】
本発明の実施形態によれば、粘着性を有し、かつ低温硬化が可能な硬化型粘接着シート、および、その製造方法を提供できる。当該シートは、未硬化の状態では粘着性を有するため、シートとして被着体に貼付でき、かつ、低温硬化により接着性も発現させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、本発明の一実施形態の硬化型粘接着シート1(基材レス)を示す図である。
図2図2は、本発明の一実施形態の硬化型粘接着シート(基材付き)を示す図である。図2(a)は基材の片面にのみ粘接着剤層を備える硬化型粘接着シート2a、図2(b)は基材の両面に粘接着剤層を備える硬化型粘接着シート2bを示す図である。
図3図3は、本発明の一実施形態の硬化型粘接着シートにおける粘接着剤層11を第1被着体31上に配置した状態を示す図である。
図4図4は、本発明の一実施形態の硬化型粘接着シートを用いて得られる、接着構造体100を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について、詳細に説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0020】
本明細書において、範囲を示す「A~B」は、「A以上B以下」を意味する。また、本明細書において、「質量%」は「重量%」と同義とし、「質量部」は「重量部」と同義として扱う。
【0021】
[硬化型粘接着シート]
本発明の一実施形態の硬化型粘接着シートは、エポキシ樹脂と、潜在性硬化剤と、ゲル化剤とを含む粘接着剤組成物からなる粘接着剤層を備え、上記潜在性硬化剤は、45℃以上120℃以下の反応開始温度を有することを特徴とする。本発明の一実施形態の硬化型粘接着シートは未硬化の状態であり、かつ粘着性を有するシートである。当該シートは、未硬化の状態では粘着性を有するため、シートとして被着体に貼付でき、かつ、低温硬化により接着性も発現させることができる。
【0022】
本発明の一実施形態の硬化型粘接着シートは粘接着剤組成物からなる粘接着剤層を備える。以下、粘接着剤組成物が含有する各成分について詳細に説明する。
【0023】
<エポキシ樹脂>
本発明の一実施形態における粘接着剤組成物はエポキシ樹脂を含有する。
【0024】
エポキシ樹脂の種類は特に限定されない。例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、水素添加ビスフェノールA型エポキシ樹脂などのビスフェノール系エポキシ樹脂、例えば、ナフタレン型エポキシ樹脂、例えば、ビフェニル型エポキシ樹脂、例えば、ジシクロ型エポキシ樹脂、例えば、脂環族系エポキシ樹脂、例えば、トリグリシジルイソシアヌレートエポキシ樹脂、例えば、ヒダントインエポキシ樹脂、例えば、グリシジルエーテル系エポキシ樹脂、例えば、グリシジルアミノ系エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0025】
好ましくは、ビスフェノール系エポキシ樹脂、より好ましくは、ビスフェノールA型エポキシ樹脂及びビスフェノールF型エポキシ樹脂が挙げられる。
【0026】
エポキシ樹脂は、単独で用いることができ、2種以上を併用することもできる。
【0027】
エポキシ樹脂は、常温で、液状、半固形状および固形状のいずれの形態であってもよい。
【0028】
常温で液状のエポキシ樹脂は、具体的には、25℃で液状である。液状のエポキシ樹脂の粘度は、25℃において、例えば、30Pa・s以上、好ましくは、80Pa・s以上である。また、液状のエポキシ樹脂の粘度は、25℃において、例えば、500Pa・s以下、好ましくは、300Pa・s以下である。
【0029】
常温で固形状のエポキシ樹脂は、具体的には、25℃で固形状である。固形状のエポキシ樹脂の軟化点は、例えば、70℃以上、好ましくは、75℃以上である。
【0030】
本発明の一実施形態における粘接着剤組成物が含有するエポキシ樹脂は、その50質量%以下が、25℃で固形状のエポキシ樹脂であることが好ましい。本発明の一実施形態における粘接着剤組成物が含有するエポキシ樹脂は、その45質量%以下が、25℃で固形状のエポキシ樹脂であることがより好ましく、その30質量%以下が、25℃で固形状のエポキシ樹脂であることがさらに好ましい。
【0031】
また、本発明の一実施形態における粘接着剤組成物が含有するエポキシ樹脂は、その0質量%以上が、25℃で固形状のエポキシ樹脂であることが好ましく、その10質量%以上が、25℃で固形状のエポキシ樹脂であることがより好ましい。
【0032】
エポキシ樹脂の50質量%以下が、25℃で固形状のエポキシ樹脂であることにより、粘接着剤組成物の粘度が高くなりすぎず、硬化剤やゲル化剤の混合が容易である。また、エポキシ樹脂の10質量%以上が、25℃で固形状のエポキシ樹脂であることによって、シート化にかかる時間が短縮できる。
【0033】
エポキシ樹脂の配合割合は、粘接着剤組成物全量に対して、例えば、40質量%以上、好ましくは、50質量%以上である。また、エポキシ樹脂の配合割合は、粘接着剤組成物全量に対して、例えば、100質量%以下、好ましくは、70質量%以下である。上記範囲であることによって、より簡便かつ強固な接着が可能となる。
【0034】
なお、本発明の一実施形態の粘接着剤組成物は、エポキシ樹脂以外のその他の樹脂も含有させることができる。例えば、シリコーン化合物、ポリプロピレングリコ-ルなどのポリオール化合物、ウレタン樹脂、及びアクリル樹脂などが挙げられる。
【0035】
<潜在性硬化剤>
本発明の一実施形態における粘接着剤組成物は潜在性硬化剤を含有する。
【0036】
潜在性硬化剤とは、常温(具体的には25℃)で固形状であり、所定温度で活性化しエポキシ樹脂と相溶してエポキシ樹脂を硬化する硬化剤をいう。特に本発明の一実施形態において、潜在性硬化剤は、45℃以上120℃以下の温度範囲で活性を開始することを特徴とする。すなわち、かかる潜在性硬化剤は、45℃以上120℃以下の反応開始温度を有する。
【0037】
潜在性硬化剤の反応開始温度が上記範囲であることにより、樹脂組成物の調製時や保管時に硬化が始まってしまうことを防ぎつつ、硬化させる際には比較的低温で反応を進めることができる。
【0038】
本発明の一実施形態における潜在性硬化剤は、120℃以下の反応開始温度を有し、100℃以下の反応開始温度を有するものが好ましい。また、本発明の一実施形態における潜在性硬化剤は、45℃以上の反応開始温度を有し、50℃以上の反応開始温度を有するものが好ましい。
【0039】
本発明の一実施形態における潜在性硬化剤の反応開始温度は、例えば、以下の方法により測定できる。
【0040】
ビスフェノールF型エポキシ(jER806、三菱ケミカル社製)100質量部に潜在性硬化剤を20質量部混合した樹脂組成物をアルミニウム製のクローズセルに約5mg秤量し、温度変調DSC(商品名「Q-2000」、ティー・エイ・インスツルメント社製)を用いて、50mL/minの窒素雰囲気下で昇温速度2℃/minにて、樹脂組成物のHeat Flow挙動を得る。その際のHeat Flow挙動が立ち上がる温度である発熱開始温度を、潜在性硬化剤の反応開始温度とする。
【0041】
本発明の一実施形態における潜在性硬化剤は、上記反応開始温度を有する限り、その種類は特に制限されない。例えば、アミン系化合物、尿素系化合物、アミド系化合物、ジヒドラジド系化合物、イミダゾール系化合物、及びイミダゾリン系化合物などが挙げられる。
【0042】
アミン系化合物としては、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、それらのアミンアダクト、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、及びジアミノジフェニルスルホンなどが挙げられる。
【0043】
尿素系化合物としては、例えば、3-(3,4-ジクロロフェニル)-1,1-ジメチル尿素(DCMU)、N’-フェニル-N,N-ジメチル尿素、及び1、1’-(メチル-m-フェニレン)ビス(3,3’-ジメチル尿素)などが挙げられる。
【0044】
このような尿素系化合物のなかでは、好ましくは、3-(3,4-ジクロロフェニル)-1,1-ジメチル尿素(DCMU)が挙げられる。
【0045】
アミド系化合物としては、例えば、ポリアミドなどが挙げられる。
【0046】
ヒドラジド系化合物としては、例えば、アジピン酸ジヒドラジドなどのジヒドラジドなどが挙げられる。
【0047】
イミダゾール系化合物としては、例えば、メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、エチルイミダゾール、イソプロピルイミダゾール、2,4-ジメチルイミダゾール、フェニルイミダゾール、ウンデシルイミダゾール、ヘプタデシルイミダゾール、及び2-フェニル-4-メチルイミダゾールなどが挙げられる。
【0048】
イミダゾリン系化合物としては、例えば、メチルイミダゾリン、2-エチル-4-メチルイミダゾリン、エチルイミダゾリン、イソプロピルイミダゾリン、2,4-ジメチルイミダゾリン、フェニルイミダゾリン、ウンデシルイミダゾリン、ヘプタデシルイミダゾリン、2-フェニル-4-メチルイミダゾリンなどが挙げられる。
【0049】
このような潜在性硬化剤は、単独で使用してもよく、あるいは、併用することもできる。
【0050】
このような潜在性硬化剤のなかでは、好ましくは、アミン系化合物が挙げられる。
【0051】
このような潜在性硬化剤の配合割合は、上記エポキシ樹脂100質量部に対して、例えば15~40質量部、好ましくは20~35質量部、より好ましくは20~30質量部である。上記範囲であることによって保管時に硬化が始まってしまうことを防ぎつつ、硬化させる際には比較的低温で反応を進めることができる。
【0052】
<ゲル化剤>
本発明の一実施形態における粘接着剤組成物はゲル化剤を含有する。
【0053】
本発明の一実施形態における粘接着剤組成物はゲル化剤を含有することにより、粘接着剤組成物が凝固(ゲル化)してシート形状を保持できる。したがって、当該組成物はゲル化剤を含有することによって、剥離フィルムや基材等の表面上により均一に塗布することができ、シート化が可能となる。
【0054】
ゲル化剤は、上記作用を有する限り、特に制限されるものではない。例えば、シランカップリング剤等により表面処理したシリカ粉末、セピオライトなどの鉱物繊維、及びコアシェル型のアクリル樹脂などがある。なかでもコアシェル型のアクリル樹脂がエポキシ樹脂との相溶性の観点から好ましい。
【0055】
ここでコアシェル型とは、例えばアクリル樹脂等の熱可塑性樹脂からなるコア層を、コア層と同一またはその他の樹脂からなるシェル層で被覆した真珠状微粒子である。なお用途に応じて多層構造としてもよい。
【0056】
コアシェル型のアクリル樹脂としては、例えば、コア層にアクリル、スチレンアクリル又はスチレンメタアクリル樹脂を用い、シェル層にアクリル、スチレンアクリル又はスチレンメタアクリル樹脂を用いたコアシェル型エマルジョンを例示することができる。具体例としては、三菱ケミカル社製のダイヤナール(登録商標)LP-3106、ダイヤナール(登録商標)LP-3109や、BASF社製のジョンクリル(登録商標)74J、ジョンクリル(登録商標)537、PDX7677、及び、アイカ工業社製のゼフィアックなどが挙げられる。
【0057】
このようなゲル化剤の配合割合は、上記エポキシ樹脂100質量部に対して、例えば5~40質量部、好ましくは10~30質量部、より好ましくは10~20質量部である。上記範囲であることによって、剥離フィルムや基材等の表面上により均一に塗布することができ、シート化が容易となる。
【0058】
<その他成分>
【0059】
本発明の一実施形態における粘接着剤組成物には、硬化層の弾性率の調整等を目的として、シリカ、マイカ、及び炭酸カルシウム等の充填材を配合することもできる。充填材の配合量は特に限定されないが、例えば、粘接着剤組成物100質量部に対して、1質量部以上、好ましくは、10質量部以上である。また、充填材の配合量は、例えば、粘接着剤組成物100質量部に対して、100質量部以下、好ましくは、80質量部以下である。
【0060】
本発明の一実施形態の硬化型粘接着シートは上記粘接着剤組成物からなる粘接着剤層を備える。本実施形態の粘接着シートは、図1に示すように粘接着剤層が剥離シートに保持された形態を有する基材レスの粘接着シートであってもよく、図2(a)、(b)に示すように粘接着剤層をシート状基材(支持体)の片面又は両面に有する形態の基材付き粘接着シートであってもよい。ここでいう粘接着シートの概念には、粘接着テープ、粘接着ラベル、及び粘接着フィルム等と称されるものが包含され得る。
【0061】
なお、粘接着剤層は典型的には連続的に形成されるが、かかる形態に限定されるものではない。例えば、点状、及びストライプ状等の規則的あるいはランダムなパターンに形成された粘接着剤層であってもよい。また、本実施形態の粘接着シートは、ロール状であってもよく、枚葉状であってもよい。あるいは、さらに種々の形状に加工された形態の粘接着シートであってもよい。
【0062】
本発明の一実施形態の硬化型粘接着シートは、粘接着剤層の他方の背面に接合した基材を含む基材付き粘接着シートの形態であり得る。図2(a)に、本発明の一実施形態の硬化型粘接着シートにおいて、基材の片面上に粘接着剤層が形成されている一構成例の模式的な断面図を示す。図2(a)に示される粘接着シート2aは、基材21と、基材の片面上に形成された粘接着剤層11とを備える。
【0063】
また別の態様として、図2(b)に基材21の両面上に粘接着剤層が形成されている一構成例の模式的な断面図を示す。図2(b)に示される粘接着シート2bは、基材21と、基材の両面上に形成された第1の粘接着剤層11及び第2の粘接着剤層12を備える。
【0064】
基材は、粘接着剤層に靱性を付与するものであって、例えば、ガラスクロス、樹脂含浸ガラスクロス、合成樹脂不織布、金属箔、カーボンファイバー、ポリエステルフィルム、及び発泡体シートなどが挙げられる。
【0065】
ガラスクロスは、ガラス繊維を布にしたものであって、公知のガラスクロスが挙げられる。このようなガラスクロスのなかでは、基材と粘接着剤層との密着性を考慮すると、好ましくは、シランカップリング剤による処理がなされているシランカップリング剤処理ガラスクロスが挙げられる。
【0066】
シランカップリング剤としては、例えば、アミノシラン、エポキシシラン、アクリロキシシランなどの公知のシランカップリング剤が挙げられる。このようなシランカップリング剤は、単独で使用してもよく、あるいは、併用することもできる。また、このようなシランカップリング剤のなかでは、好ましくは、エポキシシランが挙げられる。
【0067】
樹脂含浸ガラスクロスは、上記したガラスクロスに熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂などの合成樹脂が含浸処理されているものであって、公知のものが挙げられる。
【0068】
熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、及びフェノール樹脂などが挙げられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、酢酸ビニル樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、塩化ビニル樹脂、及びEVA-塩化ビニル樹脂共重合体などが挙げられる。また、このような熱硬化性樹脂および熱可塑性樹脂は、それぞれ単独で使用してもよく、あるいは、併用(例えば、メラミン樹脂と酢酸ビニル樹脂との併用)することもできる。
【0069】
合成樹脂不織布としては、例えば、ポリプロピレン樹脂不織布、ポリエチレン樹脂不織布、及びエステル系樹脂不織布などが挙げられる。
【0070】
金属箔としては、例えば、アルミニウム箔、及びスチール箔などの公知の金属箔が挙げられる。
【0071】
カーボンファイバーは、炭素を主成分とする繊維を布にしたものであって、公知のものが挙げられる。
【0072】
ポリエステルフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム、及びポリブチレンテレフタレート(PBT)フィルムなどが挙げられる。
【0073】
発泡体シートとしては、非晶質系の架橋タイプであって、例えば、ポリウレタン、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン、および、それらのコポリマーなど)、シリコーン、アクリルなどの樹脂、例えば、ゴムなどが挙げられる。
【0074】
このような基材のなかでは、好ましくは、ガラスクロスが挙げられる。ガラスクロスを基材として使用することで、絶縁信頼性が高く柔軟な粘接着シートの提供が可能となり、例えば、鉄-アルミニウムなどの金属異材接合時に懸念される電位差腐食を防止することができる。
【0075】
このような基材の厚みは、例えば、25μm以上、好ましくは、50μm以上である。また、基材の厚みは、例えば、300μm以下、好ましくは、250μm以下である。
【0076】
基材の厚みが25μm未満であると、基材として必要な硬度を確保することができず、粘接着シートの貼着作業性が低下する場合がある。一方、基材の厚みが上記範囲内であると、粘接着シートの貼着作業性の向上を図ることができる。
【0077】
[硬化型粘接着シートの製造方法]
本発明の一実施形態に係る硬化型粘接着シートの製造方法は、エポキシ樹脂と、45℃以上120℃以下の反応開始温度を有する潜在性硬化剤と、ゲル化剤とを含む粘接着剤組成物を調製する工程(1)、及び、粘接着剤組成物からなるシート状の粘接着剤層を成形し、30℃~43℃で保持して、シート化する工程(2)を備える。
【0078】
以下、各工程について説明する。
【0079】
<エポキシ樹脂と、45℃以上120℃以下の反応開始温度を有する潜在性硬化剤と、ゲル化剤とを含む粘接着剤組成物を調製する工程(1)>
本工程(1)は本発明の一実施形態に係る粘接着剤組成物を調製する工程である。本発明の一実施形態に係る粘接着剤組成物を得るには、例えば、エポキシ樹脂と、潜在性硬化剤と、ゲル化剤とを配合し、樹脂組成物を調製する。各成分は上記のものを同様に使用できる。
【0080】
<粘接着剤組成物からなるシート状の粘接着剤層を成形し、30℃~43℃で保持してシート化する工程(2)>
上記工程(1)で調製した粘接着剤組成物を用いてシートを作製するには、まず、上記粘接着剤組成物からなるシート状の粘接着剤層を成形する。そのためには、基材レスの場合は、上記粘接着剤組成物を剥離フィルムの表面にシート状に形成する。
【0081】
また、基材付きの場合は、上記粘接着剤組成物を上述した基材上にシート状に形成する。以下、基材レスの場合で、剥離フィルムの表面にシート状に形成する態様について例示的に説明するが、本発明の態様はこれに限定されるものではない。
【0082】
上記粘接着剤組成物を剥離フィルムの表面にシート状に形成するとは、具体的には、図1に示すように、粘接着剤組成物を剥離フィルム13の表面に塗布したのち、粘接着剤組成物を塗布した側(剥離フィルムと接触する接触面と反対側の表面)から別の剥離フィルム14を配置することによって、剥離フィルムの間に粘接着剤層11をシート状に形成する。すなわち、粘接着剤組成物を2枚の剥離フィルム13、14で挟み込むことにより、剥離フィルム13、14の間に粘接着剤層11をシート状に形成してもよい。
【0083】
剥離フィルムは、例えば、略矩形平板形状の剥離シートであって、上面および下面が平坦状に形成されている。
【0084】
剥離フィルムは、例えば、ポリオレフィン(具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)などのビニル重合体、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネートなどのポリエステル、例えば、ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素樹脂などの樹脂材料などから、フィルムに形成されている。また、剥離フィルムは、例えば、鉄、アルミニウム、ステンレスなどの金属材料などからも形成されることもできる。
【0085】
剥離フィルムとしては、好ましくは、ポリエステルフィルム、より好ましくは、ポリエチレンテレフタレートフィルムが挙げられる。
【0086】
なお、剥離フィルムの表面には、必要により、適宜の剥離処理が施されていてもよい。
【0087】
剥離フィルムの厚みは、例えば、10μm以上、1000μm以下である。
【0088】
粘接着剤組成物を剥離フィルムの表面に塗布する塗布方法としては、例えば、ドクターブレード法、ロール法、スクリーン法、及びグラビア法などが挙げられる。
【0089】
以上のようにして、剥離フィルム上に、粘接着剤組成物からなるシート状の粘接着剤層を形成する。
【0090】
なお、基材付きの場合で、基材上に粘接着剤層を形成する場合も、剥離フィルム上に粘接着剤層を形成する場合と同様に、粘接着剤組成物を直接付与して粘接着剤層を形成する直接法を用いてもよい。あるいは、上記剥離フィルム上に形成した粘接着剤層を基材に転写する転写法を用いてもよい。
【0091】
つづいて、剥離フィルムや基材上にシート状に形成した粘接着剤層を30~43℃で保持する。これによりゲル化剤が凝固し、シート化する。シート状に形成した粘接着剤層を30~43℃で保持することにより、潜在性硬化剤が活性化し粘接着剤組成物が硬化してしまうことを防止できる。
【0092】
シート状に形成した粘接着剤層を保持する温度は30~43℃、好ましくは33~40℃である。
【0093】
また、シート状に形成した粘接着剤層を保持する時間は、潜在性硬化剤が活性化し粘接着剤組成物が硬化しなければ、特に制限されないが、通常1~7日、好ましくは2~4日である。
【0094】
シート化した粘接着剤層の厚みは、硬化後の接着性を確保するためには、例えば、50μm以上、好ましくは、80μm以上、より好ましくは、100μm以上である。また、シート化した粘接着剤層の厚みは、例えば、2000μm以下、好ましくは、1000μm以下、より好ましくは、700μm以下である。特に良好な硬化性と、硬化後の高い接着性を両立するためには、粘接着剤層の厚みは、100~700μmであることが好ましい。
【0095】
つづいて、本発明の実施形態における硬化型粘接着シートの使用方法について説明する。以下、被着体同士(第1被着体と第2被着体)を接着させる方法(基材レス)について例示的に説明するが、本発明の実施形態における硬化型粘接着シートの使用方法はこれに限定されるものではない。
【0096】
まず、シート化した粘接着剤層11を、剥離フィルムから第1被着体31の表面に転写する。具体的には、まず、粘接着剤層11を第1被着体31に接触させ、続いて、剥離フィルムを粘接着剤層11から引き剥がす。
【0097】
また、2枚の剥離フィルムによって、粘接着剤層11を挟み込んだ場合は、例えば、まず、一の剥離フィルムを剥離する。次いで、露出した粘接着剤層11の露出面を第1被着体2に接触させ、続いて、剥離フィルムを粘接着剤層11から引き剥がす。
【0098】
これにより、図3に示すように、粘接着剤層11を第1被着体31に配置する。
【0099】
次に、上記で第1被着体31に配置した粘接着剤層11に対し、その粘接着剤層11を配置した側に第2被着体41を接触させる。第2被着体41を第1被着体31の粘接着剤層11を配置した側に接触させる方法は特に制限されず、任意の方法を採用できる。
【0100】
粘接着剤層11を介して第1被着体31と第2被着体41とを接触させた後、粘接着剤層11を加熱硬化することによって、第1被着体31および第2被着体41が強固に接着され、図4に示すような接着構造体100を製造することができる。
【0101】
なお、基材付きの粘接着シートの場合は、粘接着剤層の基材と反対側の表面と被着体とを接触させることで、基材付きの粘接着シートを被着体に配置した後、粘接着剤層を加熱することによって、基材付きの粘接着シートと被着体とを強固に接着させることができる。すなわち、基材付きの粘接着シートと被着体との接着構造体を製造することができる。
【0102】
本発明の実施形態における粘接着剤組成物は、45℃以上120℃以下の反応開始温度を有する潜在性硬化剤を含むため、当該組成物からなる粘接着剤層を、比較的低温で硬化させることができる。
【0103】
粘接着剤層を加熱硬化する際の温度は、例えば70℃以上150℃以下である。粘接着剤層を加熱硬化する際の温度は、好ましくは75℃以上、より好ましくは80℃以上である。また、粘接着剤層を加熱硬化する際の温度は、好ましくは120℃以下、より好ましくは100℃以下である。
【0104】
また、粘接着剤層を加熱硬化する際の反応時間は、上記温度によって異なるが、例えば5~120分、好ましくは10~60分、より好ましくは20~40分である。
【0105】
具体的には、以下(1)~(5)のいずれかの加熱条件で硬化させることが好ましい。
(1)70℃以上80℃未満の温度で30~120分加熱する。より好ましくは40~100分加熱する。
(2)80℃以上90℃未満の温度で20~100分加熱する。より好ましくは25~90分加熱する。
(3)90℃以上100℃未満の温度で10~60分加熱する。より好ましくは15~45分加熱する。
(4)100℃以上120℃未満の温度で10~40分加熱する。より好ましくは15~30分加熱する。
(5)120℃以上150℃未満の温度で5~30分加熱する。より好ましくは10~20分加熱する。
【0106】
以上のようにして形成される粘接着剤層の剪断接着力は、好ましくは5MPa以上、より好ましくは7MPa以上、さらに好ましくは10MPa以上である。粘接着剤層の剪断接着力が、5MPa以上であれば、粘接着剤層は、接着性に優れ、第1被着体と第2被着体とを確実に接着しやすくすることができるため、好ましい。
【0107】
接着剤層の剪断接着力は、以下の方法により測定される。
【0108】
幅25mm×長さ100mm×厚み1.6mmのSPCC(JIS G3141)の先端に幅25mm×長さ10mmにカットした硬化型粘接着シートを貼り付け、もう一方のSPCCを重ね合わせて、クリップで固定したのちに、80℃30分で硬化させる。こうして得られた試験片を、引張試験機AG-X(島津製作所社製)にて、長さ方向に5mm/minで引っ張り、剥離した際の試験力を測定する。剪断接着力は以下の式により算出する。
剪断接着力(MPa)=試験力(N)/250mm
【実施例
【0109】
以下、本発明の実施の形態について、実施例を用いてより詳細に説明する。
【0110】
(シ-ト性)
シ-ト性は、粘接着剤組成物のシート化の可否で評価した。シート化が可能であれば「〇」、シート化が不可であれば「×」とした。
【0111】
(粘着性)
粘着性は、作製したシートの粘着性(タック)の有無で評価した。シートに粘着性があれば「〇」、粘着性がないものを「×」とした。なお、表1中、「-」は、粘着性評価の前提となるシート化ができかったことを示す。
【0112】
(剪断接着力)
幅25mm×長さ100mm×厚み1.6mmのSPCC(JIS G3141)の先端に幅25mm×長さ10mmにカットした硬化型粘接着シートを貼り付け、もう一方のSPCCを重ね合わせて、クリップで固定したのちに、80℃30分で硬化させた。こうして得られた試験片を、引張試験機AG-X(島津製作所社製)にて、長さ方向に5mm/minで引っ張り、剥離した際の試験力を測定した。剪断接着力は以下の式により算出した。
剪断接着力(MPa)=試験力(N)/250mm
なお、表1中、「-」は未測定であることを示し、「測定不可」とは、シート性または粘着性が無いため、せん断接着力の測定が不可であったことを示す。
【0113】
(潜在性硬化剤の反応開始温度)
実施例、比較例および参考例で使用した潜在性硬化剤の反応開始温度は以下の方法で実施した。
ビスフェノールF型エポキシ(jER806、三菱ケミカル社製)100質量部に潜在性硬化剤を20質量部混合した樹脂組成物をアルミニウム製のクローズセルに約5mg秤量し、温度変調DSC(商品名「Q-2000」、ティー・エイ・インスツルメント社製)を用いて、50mL/minの窒素雰囲気下で昇温速度2℃/minにて、樹脂組成物のHeat Flow挙動を得た。その際のHeat Flow挙動が立ち上がる温度である発熱開始温度を、潜在性硬化剤の反応開始温度とした。
【0114】
[粘接着剤組成物の作製]
(実施例1)
液状のビスフェノールF型エポキシ樹脂(商品名「jER806」、三菱ケミカル社製)100質量部と、潜在性硬化剤として、アミン化合物(商品名「フジキュア FXR-1020」、T&K TOKA社製)20質量部と、ゲル化剤として、コアシェル型のアクリル樹脂(商品名「ダイヤナール(登録商標)LP-3106」、三菱ケミカル社製)20質量部とを混合し、粘接着剤組成物を調製した。なお、上記潜在性硬化剤の反応開始温度は、上記方法で測定した結果54℃であった。
2枚のポリエチレンがラミネートされた剥離紙の間に、上記得られた粘接着剤組成物の厚みが200μmとなるように、手動油圧真空加熱プレス(製品名「11FD」、井元製作所社製)でプレスして粘接着剤層をシート状に成形し、35℃で5日間静置して、未硬化の硬化型粘接着シートを得た。
【0115】
(実施例2)
液状のビスフェノールF型エポキシ樹脂(商品名「jER806」、三菱ケミカル社製)90質量部と、固体のビスフェノールF型エポキシ樹脂(YDF-2005RD、新日鉄住金化学製)10質量部を熱溶融させて混合した。その後、室温に戻したのちに、潜在性硬化剤として、アミン化合物(商品名「フジキュア FXR-1020」、T&K TOKA社製)30質量部と、ゲル化剤として、コアシェル型のアクリル樹脂(商品名「ダイヤナール(登録商標)LP-3106」、三菱ケミカル社製)20質量部とを混合し、粘接着剤組成物を調製した。シート化は35℃3日間静置した以外は、実施例1と同様に行った。
【0116】
(実施例3)
液状の脂肪族エポキシ樹脂(商品名「SR-4GL」、阪本薬品工業社製)15質量部と、固体のビスフェノールF型エポキシ樹脂(商品名「YDF-2005RD」、新日鉄住金化学社製)30質量部と、固体の高耐熱性エポキシ樹脂(商品名「HP4700」、DIC社製)15質量部を熱溶融させて混合物1を得た。また、液状のビスフェノールF型エポキシ樹脂(商品名「jER806」、三菱ケミカル社製)40質量部と、潜在性硬化剤として、アミン化合物(商品名「フジキュア FXR-1020」、T&K TOKA社製)30質量部と、ゲル化剤として、コアシェル型のアクリル樹脂(商品名「ダイヤナール(登録商標)LP-3106」、三菱ケミカル社製)10質量部とを混合し、混合物2を得た。その後、混合物1と混合物2を混練機で混合し、粘接着剤組成物を得た。シート化は35℃1日間静置した以外は、実施例1と同様に行った。
【0117】
(比較例1)
ゲル化剤を添加しない以外は、実施例1と同様とした。
【0118】
(参考例1)
調製した粘接着剤組成物を80℃10分で静置した以外は、実施例1と同様とした。
【0119】
上記各例について、シート性および粘着性の有無を評価し、剪断接着力の測定を実施した。結果を表1に示す。
【0120】
【表1】
【0121】
実施例1~3では、シート化が可能であり、粘着性も有していた。また、80℃という低温での硬化が可能であった。また、実施例1~3のシートでは、硬化により接着性の発現を確認できた。特に実施例3のシートでは、硬化により高い接着力を有することが確認できた。
【0122】
一方、比較例1における粘接着剤組成物は、ゲル化剤を含んでいないため液状のままとなり、シート化できなかった。
また、実施例1における粘接着剤組成物を80℃で10分間保持した参考例1では、シート化は可能であったが、樹脂の硬化が進行しており、粘着性が失われていた。
【0123】
以上、図面を参照しながら各種の実施の形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上記実施の形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【0124】
なお、本出願は、2019年3月28日出願の日本特許出願(特願2019-065068)に基づくものであり、その内容は本出願の中に参照として援用される。
【符号の説明】
【0125】
1、2a、2b 硬化型粘接着シート
11、12 粘接着剤層
13、14 剥離フィルム
21 基材
31 第1被着体
41 第2被着体
100 接着構造体
図1
図2
図3
図4