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特許7405833超音波探触子の製造方法、及び、超音波探触子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】超音波探触子の製造方法、及び、超音波探触子
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/12 20060101AFI20231219BHJP
【FI】
A61B8/12
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021509402
(86)(22)【出願日】2020-03-23
(86)【国際出願番号】 JP2020012776
(87)【国際公開番号】W WO2020196427
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2022-11-14
(31)【優先権主張番号】P 2019059153
(32)【優先日】2019-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 靖之
(72)【発明者】
【氏名】坂口 雄紀
【審査官】後藤 昌夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-095090(JP,A)
【文献】特開平04-126136(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波探触子の製造方法であって、
少なくとも2本の電気信号線に対して、前記少なくとも2本の電気信号線の一部同士の相対的な位置関係を保持可能な保持体を取り付ける取付工程と、
前記少なくとも2本の電気信号線のうち前記保持体と隣接する部分を、圧電素子に接続する接続工程と、
前記取付工程の前に、前記少なくとも2本の電気信号線を、前記保持体により保持される保持位置の両側の第1位置及び第2位置で挟持する挟持工程と、
前記挟持工程の後で、かつ、前記接続工程の前に、前記少なくとも2本の電気信号線の被覆材を、前記第1位置と前記保持位置との間、又は、前記第2位置と前記保持位置との間、のいずれかの位置で除去する被覆除去工程と、を含む、超音波探触子の製造方法。
【請求項2】
前記挟持工程では、前記少なくとも2本の電気信号線が前記保持位置において一方向に沿って延在するように、前記少なくとも2本の電気信号線を挟持する、請求項に記載の超音波探触子の製造方法。
【請求項3】
前記接続工程の前に、前記圧電素子の接続位置と、前記少なくとも2本の電気信号線の接続位置と、を位置合わせ冶具により調整する位置合わせ工程を含む、請求項1又は2に記載の超音波探触子の製造方法。
【請求項4】
圧電素子と、
前記圧電素子に接続されている少なくとも2本の電気信号線と、
前記少なくとも2本の電気信号線に取り付けられ、前記少なくとも2本の電気信号線の一部同士の相対的な位置関係を保持する保持体と、
前記圧電素子及び前記保持体を収容するハウジングと、
前記保持体の前記ハウジング内での位置を固定する固定部材と、を備え、
前記ハウジングは、前記圧電素子の位置で円筒状の周壁の一部に形成されている開口部、の基端側に位置する基端側筒状部を備え、
前記保持体及び前記固定部材の少なくとも一部は、前記基端側筒状部内に収容されている、超音波探触子。
【請求項5】
前記固定部材は、前記保持体と前記ハウジングとの間に介在し、前記保持体を前記ハウジングに対して接着する接着体である、請求項に記載の超音波探触子。
【請求項6】
前記接着体及び前記保持体は主成分としてゴム又は樹脂を含み、
前記接着体の主成分となるゴム材料又は樹脂材料は、前記保持体の主成分となるゴム材料又は樹脂材料と異なる、請求項に記載の超音波探触子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、超音波探触子の製造方法、及び、超音波探触子、に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波探触子は、医療用超音波診断装置の超音波の送受信器として利用されている。超音波探触子は、カテーテル内に装填されることで、このカテーテルを体内に挿入した状態で行われる超音波診断にも用いられている。
【0003】
特許文献1には、頂部主表面及び底部主表面を有するアクティブトランスジューサエレメントと、頂部主表面上に形成される頂部電極と、底部主表面上に形成される底部電極と、低部電極を覆う導電性バッキングエレメントと、頂部電極に電気的に接続されている第1リードと、導電性バッキングエレメントに電気的に接続される第2リードと、を備える超音波探触子が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-198425号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
カテーテルに装填される超音波探触子では、患者負担を軽減するため、及び、血管深部などのより細径な体腔への挿入性を高めるため、小型化の要求が高い。
【0006】
超音波探触子の小型化は、圧電体及び一対の電極からなる圧電素子を含む超音波振動子を小型化することで実現できる。しかしながら、超音波振動子を小型化すると、圧電素子も小さくなる。そのため、圧電素子の電極も小さくなり、圧電素子と外部電源とを接続する電気信号線を、圧電素子の電極に接続する作業が困難になる。
【0007】
本開示は、圧電素子に対して電気信号線を接続する作業を容易にする、超音波探触子の製造方法を提供することを目的とする。また、本開示は、圧電素子に対して電気信号線を接続することが容易となる構成を備える超音波探触子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の第1の態様としての超音波探触子の製造方法は、超音波探触子の製造方法であって、少なくとも2本の電気信号線に対して、前記少なくとも2本の電気信号線の一部同士の相対的な位置関係を保持可能な保持体を取り付ける取付工程と、前記少なくとも2本の電気信号線のうち前記保持体と隣接する部分を、圧電素子に接続する接続工程と、を含む。
【0009】
本開示の1つの実施形態としての超音波探触子の製造方法は、前記取付工程の前に、前記少なくとも2本の電気信号線を、前記保持体により保持される保持位置の両側の位置で挟持する挟持工程を含む。
【0010】
本開示の1つの実施形態として、前記挟持工程では、前記少なくとも2本の電気信号線が前記保持位置において一方向に沿って延在するように、前記少なくとも2本の電気信号線を挟持する。
【0011】
本開示の1つの実施形態としての超音波探触子の製造方法は、前記挟持工程の後で、かつ、前記接続工程の前に、前記少なくとも2本の電気信号線の被覆材を除去する被覆除去工程を含む。
【0012】
本開示の1つの実施形態としての超音波探触子の製造方法は、前記接続工程の前に、前記圧電素子の接続位置と、前記少なくとも2本の電気信号線の接続位置と、を位置合わせ冶具により調整する位置合わせ工程を含む。
【0013】
本開示の第2の態様としての超音波探触子は、圧電素子と、前記圧電素子に接続されている少なくとも2本の電気信号線と、前記少なくとも2本の電気信号線に取り付けられ、前記少なくとも2本の電気信号線の一部同士の相対的な位置関係を保持する保持体と、前記圧電素子及び前記保持体を収容するハウジングと、を備える。
【0014】
本開示の1つの実施形態としての超音波探触子は、前記保持体の前記ハウジング内での位置を固定する固定部材を備える。
【0015】
本開示の1つの実施形態として、前記固定部材は、前記保持体と前記ハウジングとの間に介在し、前記保持体を前記ハウジングに対して接着する接着体である。
【0016】
本開示の1つの実施形態として、前記接着体及び前記保持体は主成分としてゴム又は樹脂を含み、前記接着体の主成分となるゴム材料又は樹脂材料は、前記保持体の主成分となるゴム材料又は樹脂材料と異なる。
【発明の効果】
【0017】
本開示によれば、圧電素子に対して電気信号線を接続する作業を容易にする、超音波探触子の製造方法を提供することができる。また、本開示によれば、圧電素子に対して電気信号線を接続することが容易となる構成を備える超音波探触子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本開示の一実施形態としての超音波探触子を含む画像診断用カテーテルと、外部装置と、が接続された状態を示す図である。
図2図1に示す画像診断用カテーテルの先端部における長手方向に平行な断面を示す断面図である。
図3図1に示す画像診断用カテーテルの先端部における長手方向に直交する断面を示す断面図であり、図2のI-I線の位置での断面図である。
図4図1に示す超音波探触子の超音波振動子を示す図である。
図5図1に示す超音波探触子の製造方法の一例を示すフローチャートである。
図6A】挟持工程S1の概要を示す図である。
図6B】取付工程S2の概要を示す図である。
図6C】被覆除去工程S3の概要を示す図である。
図6D】切断工程S4の概要を示す図である。
図6E】位置合わせ工程S5の概要を示す図である。
図6F】接続工程S6の概要を示す図である。
図7】本開示の一実施形態としての超音波探触子を含む画像診断用カテーテルの一部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本開示に係る超音波探触子の製造方法の実施形態、及び、本開示に係る超音波探触子の実施形態、について図面を参照して説明する。各図において共通する部材・部位には同一の符号を付している。
【0020】
まず、本開示に係る超音波探触子を適用可能な画像診断装置の一例を説明する。図1は、一実施形態としての超音波探触子10を備える画像診断装置100を示す図である。
【0021】
画像診断装置100は、画像診断用カテーテル110と、外部装置120と、を備える。図1では、画像診断用カテーテル110が外部装置120に接続されている状態を示している。図2は、画像診断用カテーテル110の先端部における長手方向Aに平行な断面を示す断面図である。図3は、画像診断用カテーテル110の先端部における長手方向Aに直交する断面を示す断面図である。図3では、図2のI-I線の位置での断面を示している。図4は、超音波振動子11を示す図である。図4では、説明の便宜上、超音波振動子11に接続される電気信号線14の位置を二点鎖線により示している。
【0022】
<画像診断用カテーテル110>
画像診断用カテーテル110は、血管内超音波診断法(Intravascular Ultrasound、略称「IVUS」)に適用される。図1に示すように、画像診断用カテーテル110は、外部装置120に接続されることによって駆動される。より具体的に、本実施形態の画像診断用カテーテル110は、外部装置120の駆動ユニット120aに接続されている。
【0023】
以下、説明の便宜上、画像診断用カテーテル110において、画像診断用カテーテル110の長手方向Aで生体内に挿入される側を「先端側」と記載し、その反対側を「基端側」と記載する。また、画像診断用カテーテル110の基端側から先端側に向かう方向を単に「挿入方向A1」と記載する場合がある。また、画像診断用カテーテル110の先端側から基端側に向かう方向を単に「抜去方向A2」と記載する場合がある。
【0024】
図1に示すように、画像診断用カテーテル110は、挿入部110aと、操作部110bと、を備える。挿入部110aは、画像診断用カテーテル110のうち、生体内に挿入されて使用される部位である。操作部110bは、画像診断用カテーテル110のうち、挿入部110aが生体内に挿入されている状態で、生体外で操作される部位である。本実施形態の画像診断用カテーテル110では、後述する先端側コネクタ42(図1参照)よりも先端側の部分が挿入部110aであり、先端側コネクタ42から基端側の部分が操作部110bである。
【0025】
図1図2に示すように、挿入部110aは、超音波探触子10と、シース20と、を備える。
【0026】
図1に示すように、操作部110bは、内管部材30と、外管部材40と、を備える。内管部材30は、超音波探触子10の基端側の端部を保持している。外管部材40は、シース20の基端側の端部を保持している。詳細は後述するが、内管部材30が外管部材40内を中心軸方向に移動することで、超音波探触子10がシース20内を長手方向Aに移動することができる。また、詳細は後述するが、超音波探触子10の一部である駆動シャフト13及び電気信号線14は、内管部材30及び外管部材40の内部を通じて、長手方向Aにおいて、挿入部110aの領域のみならず、操作部110bの領域に亘って延在している。つまり、本実施形態の操作部110bは、内管部材30及び外管部材40に加えて、超音波探触子10により一部が構成されている。
【0027】
[超音波探触子10]
図2に示すように、超音波探触子10は、超音波振動子11と、ハウジング12と、駆動シャフト13と、電気信号線14と、保持体15と、固定部材16と、を備える。
【0028】
図4に示すように、超音波振動子11は、圧電素子1と、支持部材2と、音響整合部材3と、を備える。具体的に、圧電素子1は、扁平状の圧電体4と、この圧電体4の厚み方向Bの少なくとも一方側に積層されている第1電極5と、圧電体4の厚み方向Bの少なくとも他方側に積層されている第2電極6と、からなる。以下、説明の便宜上、少なくとも第1電極5の一部が設けられている、圧電体4の厚み方向Bの一方側を「圧電素子1の表面側」と記載する。また、説明の便宜上、少なくとも第2電極6の一部が設けられている、圧電体4の厚み方向Bの他方側を「圧電素子1の裏面側」と記載する。圧電素子1の表面側とは、超音波の送受信を行う側である。また、圧電素子1の裏面側とは、超音波の送受信を行う側とは反対側である。
【0029】
圧電素子1の圧電体4は、例えば、圧電セラミックシートにより構成される。圧電セラミックシートの材料としては、例えば、チタン酸ジルコニウム酸鉛(PZT)、ニオブ酸リチウムなどの圧電セラミック材料が挙げられる。圧電体4は、圧電セラミック材料ではなく、水晶により形成されていてもよい。
【0030】
圧電素子1の第1電極5及び第2電極6は、例えば、マスク材を用いたイオンプレーティング法、蒸着法、スパッタ法により、圧電体4の厚み方向Bの両面それぞれに電極層として積層させることで形成できる。第1電極5及び第2電極6の材料としては、例えば、銀、クロム、銅、ニッケル、金などの金属や、これら金属の積層体などが挙げられる。
【0031】
本実施形態の第1電極5は、圧電素子1の表面側のみに形成されている。
【0032】
これに対して、本実施形態の第2電極6は折返し電極により構成されている。具体的に、本実施形態の第2電極6は、裏面電極層6aと、表面電極層6bと、連結導電部6cと、を備える。裏面電極層6aは、圧電素子1の裏面側に位置する。表面電極層6bは、圧電素子1の表面側に位置する。連結導電部6cは、裏面電極層6a及び表面電極層6bを連結している。換言すれば、本実施形態の第2電極6は、圧電素子1の裏面側から表面側に亘って形成されている。第2電極6を折返し電極とすることで、圧電素子1の表面側に、第1電極5、及び、第2電極6の表面電極層6b、を共に配置できる。これにより、第1電極及び第2電極それぞれが圧電素子の別々の面のみに配置されている場合と比較して、電気信号線14と第1電極5及び第2電極6との接続作業を圧電素子1の片面側のみで行うことができる。
【0033】
本実施形態では第2電極6が折返し電極により構成されているが、第2電極6に代えて、第1電極5が折返し電極により構成されていてもよい。
【0034】
図4に示すように、支持部材2は、圧電素子1の裏面側から圧電素子1を支持している。具体的に、支持部材2は、圧電素子1の裏面側を覆うように、圧電素子1に積層されている。これにより、ノイズとなる圧電素子1からの超音波を吸収することができる。つまり、本実施形態の支持部材2は、圧電素子1の超音波を吸収する吸音層を構成している。
【0035】
支持部材2としての吸音層は、吸音層を形成するシート材を圧電素子1に張り合わせる方法、吸音層を形成する液状の吸音性材料を塗布して硬化させる方法、などによって形成することができる。支持部材2の材料としては、例えば、ゴムや、タングステン粉末などの金属粉末を分散させたエポキシ樹脂など、が挙げられる。
【0036】
図4に示すように、音響整合部材3は、圧電素子1の表面側の一部を覆うように積層されている。より具体的に、本実施形態の音響整合部材3は、第1電極5のうち電気信号線14が接続される位置、及び、第2電極6の表面電極層6bのうち電気信号線14が接続される位置、を除き、圧電素子1の表面側の全域を覆うように積層されている。音響整合部材3を設けることにより、被検体への超音波の伝播効率を高めることができる。つまり、本実施形態の音響整合部材3は、超音波の伝播効率を高める音響整合層を構成している。
【0037】
音響整合部材3としての音響整合層は、音響整合層を形成するシート材を圧電素子1に張り合わせる方法、音響整合層を形成する液状の音響整合性材料を塗布して硬化させる方法、などによって形成することができる。音響整合部材3の材料としては、例えば、エポキシ樹脂などの樹脂材料が挙げられる。また、音響整合部材3は、樹脂材料から構成された樹脂層の積層体により構成されていてもよい。
【0038】
図2に示すように、ハウジング12は、超音波振動子11を内部に収容している。ハウジング12の基端側は、駆動シャフト13に接続されている。ハウジング12は、円筒状の金属パイプの周壁の一部に開口部12aが設けられた形状をしており、金属塊からの削り出しやMIM(金属粉末射出成形)等により形成される。また、ハウジング12はジルコニア等を焼成して作成するセラミクスや、ポリカーボネート等の樹脂材料を成形することで形成してもよい。
【0039】
また、図2図3に示すように、ハウジング12は、保持体15及び固定部材16の少なくとも一部(本実施形態では全部)を内部に収容している。より具体的に、本実施形態のハウジング12は、上述した開口部12aの先端側に位置する先端壁部12bと、上述した開口部12aの基端側に位置する基端側筒状部12cと、を備える。本実施形態において、保持体15及び固定部材16の少なくとも一部は、基端側筒状部12c内に収容されている。
【0040】
本実施形態のハウジング12の先端側及び基端側は閉鎖されている。図2に示すように、ハウジング12における超音波振動子11よりも先端側の位置には先端壁部12bが設けられている。また、図2に示すように、ハウジング12における超音波振動子11よりも基端側の位置には、保持体15及び固定部材16が配置され、ハウジング12の基端側筒状部12cを閉塞している。このようにすることで、画像診断の精度を向上させることができる。
【0041】
駆動シャフト13は、可撓性を有する管体により構成されている。駆動シャフト13の内部には、超音波振動子11に接続される電気信号線14が配置されている。駆動シャフト13は、例えば、軸まわりの巻き方向が異なる多層のコイルによって構成される。コイルの材料としては、例えば、ステンレス、Ni-Ti(ニッケル・チタン)合金などが挙げられる。このような駆動シャフト13にすることで、2本の電気信号線14を二重らせん状のツイストペアケーブルにより構成しても、シールド性を高めて電気信号線14から発生するノイズによる影響を軽減することができる。
【0042】
駆動シャフト13は、内管部材30及び外管部材40の内部を通って、内管部材30の基端部に位置する後述のハブ32まで延在している。つまり、駆動シャフト13は、長手方向Aにおいて、挿入部110aの先端部から操作部110bの基端部まで延在している。
【0043】
図2に示すように、電気信号線14は、駆動シャフト13内に延在しており、超音波振動子11と外部装置120とを電気的に接続している。つまり、電気信号線14は、駆動シャフト13と同様、長手方向Aにおいて、挿入部110aの先端部から操作部110bの基端部まで延在している。電気信号線14は複数(本実施形態では2本)設けられており、上述した第1電極5及び第2電極6にそれぞれ接続されている。複数の電気信号線14は、例えば、2本の電気信号線14が撚り合わされたツイストペアケーブルにより構成される。各電気信号線14は、外径が0mmより大きく0.2mm以下の、可撓性を有する柔軟な細線部材とすることができる。各電気信号線14は、例えば、0mmより大きく0.2mm以下の導線と、絶縁材料により形成され、導線の周囲を被覆する被覆材と、により構成可能である。このような電気信号線14は、被覆材が除去されて露出した導線により構成される接続部14a(図4参照)で、圧電素子1と接続される。
【0044】
図2図3に示すように、保持体15は、複数(本実施形態では2本)の電気信号線14に対して取り付けられている。保持体15は、各電気信号線14の一部同士の相対的な位置関係を保持している。本実施形態の2本の電気信号線14は、保持体15が取り付けられた位置において、互いの位置関係が離間した状態で保持されている。換言すれば、保持体15は、各電気信号線14の一部同士の間のギャップを保持している。
【0045】
本実施形態において、2本の電気信号線14のうち保持体15と隣接する部分は、はんだ、導電性接着剤などを用いて圧電素子1に接続されている。より具体的に、2本の電気信号線14のうち保持体15の先端側に隣接する部分が、圧電素子1に接続されている。本実施形態の電気信号線14は、上述したように、導線及び被覆材により構成されている。そのため、本実施形態の2本の電気信号線14は、被覆材が除去されて導線が露出した状態で、圧電素子1の第1電極5及び第2電極6に接続されている。
【0046】
上述したように、保持体15は、ハウジング12内に位置している。より具体的に、本実施形態の保持体15の少なくとも一部(本実施形態では全部)は、基端側筒状部12c内に位置している。換言すれば、長手方向Aに直交する保持体15の最大長さは、ハウジング12の内径よりも小さい。これにより、保持体15は、ハウジング12の基端側筒状部12c内に収容可能となる。また、保持体15は、ハウジング12の周方向の少なくとも一部において、ハウジング12の基端側筒状部12cの内面と接触していない。本実施形態では、保持体15とハウジング12の基端側筒状部12cの内面との間に、固定部材16が介在している。
【0047】
保持体15は、セラミック等で構成されてもよいが、主成分としてゴム又は樹脂を含む材料で構成されることが好ましい。具体的に、保持体15のゴム材料としては、例えば、シリコーンゴムが挙げられる。また、保持体15の樹脂材料としては、例えば、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。より具体的に、保持体15は、例えば、シリコーンゴム系の接着剤、シリコーン樹脂系の接着剤、エポキシ樹脂系の接着剤、等により形成される。また、保持体15は、例えば、UV硬化型の接着剤により形成することができる。更に、保持体15にタングステン等のX線造影性を有する材料を混ぜ合わせてもよい。
【0048】
図2図3に示すように、固定部材16は、保持体15のハウジング12内での位置を固定する。固定部材16は、保持体15のハウジング12内での位置を固定できれば、その構成は特に限定されない。しかしながら、本実施形態のように、固定部材16は、保持体15とハウジング12との間に介在し、保持体15をハウジング12に対して接着する接着体であることが好ましい。このようにすれば、保持体15とハウジング12との間の空隙を埋めることができ、超音波振動子11からの超音波が、保持体15とハウジング12との間を通ってハウジング12の外側へと漏れ出ることを抑制できる。これにより、診断対象となる部位で反射する超音波を効率的に受信できる。そのため、画像診断の精度を向上させることができる。
【0049】
特に、固定部材16としての接着体は、保持体15とハウジング12の内面との間の空隙を、ハウジング12の周方向全域で形成しないように、配置されていることが好ましい。換言すれば、ハウジング12の内部が、超音波振動子11の基端側で、電気信号線14と、保持体15と、固定部材16としての接着体と、により閉塞されていることが好ましい。このようにすることで、超音波振動子11からの超音波が、保持体15とハウジング12との間を通ってハウジング12の外側へと漏れ出ることを、より抑制できる。
【0050】
固定部材16としての接着体は、主成分としてゴム又は樹脂を含む材料で構成されることが好ましい。具体的に、固定部材16としての接着体は、例えば、シリコーンゴム系の接着剤、エポキシ樹脂系の接着剤、等により形成される。
【0051】
上述した保持体15、及び、固定部材16としての接着体、それぞれの主成分がゴム又は樹脂で同一である場合に、固定部材16としての接着体の主成分となるゴム材料又は樹脂材料は、保持体15の主成分となるゴム材料又は樹脂材料と異ならせることができる。上述したように、保持体15及び固定部材16をいずれも接着剤により形成する場合には、保持体15を形成する接着剤を、固定部材16を形成する接着剤よりも、粘度の高い材料とすることが好ましい。保持体15を構成する粘度の高い接着剤により、複数の電気信号線14同士の位置保持性能を確保し易い。また、固定部材16を構成する粘度の低い接着剤により、保持体15とハウジング12との間の空隙を充填する作業効率が向上する。上述した保持体15、及び、固定部材16としての接着体、それぞれの主成分がゴム又は樹脂で異なる場合であっても、いずれも接着剤により形成される場合には、上記同様の理由で、上記同様の粘度の関係を採用することが好ましい。
【0052】
[シース20]
図2に示すように、シース20は、第1中空部21a及び第2中空部21bを区画している。第1中空部21aには、超音波探触子10が収容されている。超音波探触子10は、第1中空部21a内において、長手方向Aに進退移動することができる。第2中空部21bには、ガイドワイヤWが挿通可能である。本実施形態では、第2中空部21bを区画する管状のガイドワイヤ挿通部20bが、第1中空部21aを区画する管状の本体部20aの先端部に対して、互いが平行な状態になるように位置している。本体部20a及びガイドワイヤ挿通部20bは、互いに異なる管部材を熱融着等によって接合することで形成可能であるが、このような形成方法に限られない。
【0053】
本体部20aには、X線が不透過な材料で形成されるX線造影性を有するマーカ22が設けられている。また、ガイドワイヤ挿通部20bにおいても、X線造影性を有するマーカ23が設けられている。マーカ22及び23は、例えば、白金、金、イリジウム、タングステン等のX線不透過性の高い金属コイルまたは金属パイプにより構成可能である。
【0054】
シース20の長手方向Aにおいて超音波振動子11が移動する範囲には、超音波の透過性が他の部位に比べて高く形成された窓部24が形成されている。より具体的に、本実施形態の窓部24は、シース20のうち本体部20aに形成されている。
【0055】
本体部20aの窓部24、及び、ガイドワイヤ挿通部20bは、可撓性を有する材料で形成され、その材料は特に限定されない。構成材料としては、例えば、ポリエチレン、スチレン、ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリブタジエン、トランスポリイソプレン、フッ素ゴム、塩素化ポリエチレン等の各種熱可塑性エラストマー等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組合せたポリマーアロイ、ポリマーブレンド、積層体等も使用することができる。
【0056】
本体部20aの窓部24よりも基端側は、窓部24よりも剛性が高い材料によって補強された補強部を有する。補強部は、例えば、樹脂等の可撓性を有する管状部材に、ステンレス製などの金属素線を網目状に編組した補強材が配設されて形成される。上記管状部材は、窓部24と同様の材料によって形成される。
【0057】
シース20の外表面には、湿潤時に潤滑性を示す親水性潤滑被覆層を配置することが好ましい。
【0058】
シース20の本体部20aの先端部には、第1中空部21aの内部と外部とを連通する連通孔26が形成されている。プライミング時には、この連通孔26を通じて、本体部20a内の気体を排出することができる。
【0059】
[内管部材30及び外管部材40]
図1に示すように、内管部材30は、内管31と、ハブ32と、を備える。内管31は、外管部材40内で進退移動可能に挿入されている。ハブ32は、内管31の基端側に設けられている。
【0060】
図1に示すように、外管部材40は、外管41と、先端側コネクタ42と、基端側コネクタ43と、を備える。外管41は、内管31の径方向外側に位置し、外管41内を内管31が進退移動する。先端側コネクタ42は、シース20の本体部20aの基端部と、外管41の先端部と、を接続している。基端側コネクタ43は、外管41の基端部に設けられ、内管31を外管41内に受容するように構成されている。
【0061】
上述した超音波探触子10の駆動シャフト13及び電気信号線14は、シース20の本体部20a、この本体部20aの基端側に接続された外管部材40、及び、この外管部材40に一部が挿入されている内管部材30の基端部に位置するハブ32まで、延在している。
【0062】
上述した超音波探触子10及び内管部材30は、それぞれが一体的に長手方向Aに進退移動するように互いに接続されている。そのため、例えば、内管部材30が、挿入方向A1に向かって押される操作がなされると、内管部材30は、挿入方向A1に向かって、外管部材40内に押し込まれる。内管部材30が挿入方向A1に向かって外管部材40内に押し込まれると、内管部材30に接続されている超音波探触子10がシース20の本体部20a内を挿入方向A1に移動する。逆に、内管部材30が、抜去方向A2に向かって引かれる操作がなされると、内管部材30は、外管部材40内から抜去方向A2に引き出される。内管部材30が外管部材40内から抜去方向A2に引き出されると、内管部材30に接続されている超音波探触子10はシース20の本体部20a内を抜去方向A2に移動する。
【0063】
内管部材30が挿入方向A1へ最も押し込まれたときには、内管部材30の先端部は、外管部材40の先端側コネクタ42付近まで到達する。この際、超音波探触子10の超音波振動子11は、シース20の本体部20aの先端付近に位置する。
【0064】
内管部材30の先端部には、内管部材30が外管部材40よりも先端側に飛び出すことを防止すると共に、内管部材30が最も基端側に引かれたときに外管部材40の基端側に抜け落ちることを防止するストッパ部が設けられている。ストッパ部は、上記機能を実現できる構成であれば特に限定されず、例えば、所定の位置で外管部材40と長手方向Aにおいて突き当たる壁部などにより構成すればよい。
【0065】
内管部材30のハブ32の基端には、外部装置120と機械的および電気的に接続されるコネクタ部が設けられている。つまり、画像診断用カテーテル110は、内管部材30のハブ32に設けられたコネクタ部により、外部装置120と機械的および電気的に接続される。より具体的に、超音波探触子10の電気信号線14は、超音波振動子11からハブ32のコネクタ部まで延在しており、ハブ32のコネクタ部が外部装置120に接続された状態で、超音波振動子11と外部装置120とを電気的に接続する。超音波振動子11における受信信号は、ハブ32のコネクタ部を介して外部装置120に送信され、所定の処理を施されて画像として表示される。
【0066】
<外部装置120>
図1に示すように、外部装置120は、駆動シャフト13を回転させるための動力源であるモータ121と、駆動シャフト13を長手方向Aに移動させるための動力源であるモータ122と、を有する。モータ122の回転運動は、モータ122に接続したボールネジ123によって軸方向の運動に変換される。
【0067】
より具体的に、本実施形態の外部装置120は、駆動ユニット120aと、この駆動ユニット120aに有線又は無線で電気的に接続されている制御装置120bと、この制御装置120bが画像診断用カテーテル110から受信した受信信号に基づいて生成した画像を表示可能なモニタ120cと、を備える。本実施形態の上述したモータ121、モータ122及びボールネジ123は、駆動ユニット120aに設けられている。この駆動ユニット120aの動作は、制御装置120bによって制御される。制御装置120bは、CPU及びメモリを含むプロセッサにより構成することができる。
【0068】
外部装置120は、本実施形態で示す構成に限られず、例えば、キーボード等の外部入力部を更に備える構成であってもよい。
【0069】
<超音波探触子10の製造方法>
次に、本開示に係る超音波探触子の製造方法の一例について説明する。ここでは、本開示に係る超音波探触子の一実施形態としての超音波探触子10の製造方法について説明する。
【0070】
図5は、超音波探触子10の製造方法の一例を示すフローチャートである。図5に示す超音波探触子10の製造方法は、挟持工程S1と、取付工程S2と、被覆除去工程S3と、切断工程S4と、位置合わせ工程S5と、接続工程S6と、を含む。図6Aは、挟持工程S1の概要を示す図である。図6Bは、取付工程S2の概要を示す図である。図6Cは、被覆除去工程S3の概要を示す図である。図6Dは、切断工程S4の概要を示す図である。図6Eは、位置合わせ工程S5の概要を示す図である。図6Fは、接続工程S6の概要を示す図である。以下、図5図6A図6Fを参照して、各工程S1~S6について詳細に説明する。
【0071】
図6Aに示すように、挟持工程S1では、複数の電気信号線14を、保持体15により保持される後述の保持位置P3の両側の位置で挟持する。本実施形態ではツイストペアケーブルにより構成されている2本の電気信号線14を、第1クランプ部材201aと第2クランプ部材201bを用いて、2箇所で挟持する。より具体的に、第1クランプ部材201aが2本の電気信号線14を挟持する第1位置P1は、ツイストペアケーブルの延在方向Cにおいて、第2クランプ部材201bが2本の電気信号線14を挟持する第2位置P2と異なる。延在方向Cにおいて、第1位置P1と第2位置P2との間に、保持体15が取り付けられる後述の保持位置P3が位置する。挟持工程S1により、後述する取付工程S2の作業性を向上させることができる。第1クランプ部材201a及び第2クランプ部材201bそれぞれは、例えば、スポンジ材により2本の電気信号線14を挟み込む構成とすることができる。
【0072】
また、本実施形態では、挟持工程S1において、延在方向Cに所定の張力を付加した状態で、第1クランプ部材201a及び第2クランプ部材201bの一方を他方に対して回動させて、2本の電気信号線14の捩れを解消する。このようにすることで、挟持工程S1において、複数(本実施形態では2本)の電気信号線14が後述する保持位置P3において一方向(本実施形態では延在方向C)に沿って延在するように、複数の電気信号線14を挟持することができる。より具体的に、本実施形態では、2本の電気信号線14のうち、第1位置P1と第2位置P2との間の部分が、延在方向Cに略平行になるように延在した状態を実現できる。これにより、後述する取付工程S2の作業性を、より向上させることができる。第1位置P1と第2位置P2との間の延在方向Cの距離は、後述の取付工程S2等の作業性を考慮すると、3cm以上確保することが好ましい。
【0073】
図6Bに示すように、取付工程S2では、複数の電気信号線14に対して、電気信号線14の一部同士の相対的な位置関係を保持可能な保持体15を取り付ける。より具体的に、延在方向Cの第1位置P1と第2位置P2との間の保持位置P3で、延在方向Cに略平行する2本の電気信号線14に対して、互いの離間距離を一定に保つ保持体15を取り付ける。保持体15は、例えば、UV硬化型の接着剤とすることができる。このようなUV硬化型の接着剤で保持体15を形成する場合は、例えば、UV透過性材料で形成された割型を利用すればよい。このようにすれば、複数の電気信号線14の挟み込むように配置された割型内にUV硬化型の接着剤を充填し、外部からUVを照射する。これにより、接着剤を硬化させて、保持体15を形成することができる。
【0074】
保持体15により離間させる複数の電気信号線14の間の距離は、圧電素子1において電気信号線14が接続される箇所同士の離間距離に応じて、適宜決定すればよい。
【0075】
保持体15の形状は特に限定されないが、上述したようにハウジング12(図2図3参照)内に収容されるため、ハウジング12内に収容可能な大きさ、形状で成形される。
【0076】
図6Cに示すように、被覆除去工程S3では、例えばレーザー照射により、複数の電気信号線14のうち少なくとも2本の電気信号線14の被覆材を除去する。これにより電気信号線14の導線を露出させる。被覆除去工程S3では、第1位置P1と保持位置P3との間、又は、第2位置P2と保持位置P3との間、のいずれかの位置で、2本の電気信号線14の被覆材を除去する。特に、被覆除去工程S3では、2本の電気信号線14の保持体15と隣接する部分に位置する被覆材を少なくとも除去することが好ましい。保持体15に隣接する部分は、第1クランプ部材201a及び第2クランプ部材201bを電気信号線14から取り外しても、2本の電気信号線14の離間距離が比較的に維持され易い。そのため、2本の電気信号線14のうち、保持体15に隣接する部分は、後述する接続工程S6において圧電素子1に接続する部位として利用し易く、接続工程S6の作業性を高めることができる。
【0077】
ここで、「保持体に隣接する部分」とは、2本の電気信号線14が保持体15により保持されている保持位置P3での最小離間距離に対して、延在方向Cにおいて保持体15から5倍となる距離だけ離れた位置よりも保持体15側に位置する部分を意味する。
【0078】
図6Dに示すように、切断工程S4では、2本の電気信号線14のうち、被覆除去工程S3により被覆材が除去された部分を切断し、圧電素子1(図4参照)に接続する接続部14aを形成する。この切断工程S4は、第1クランプ部材201a及び第2クランプ部材201bにより2本の電気信号線14を挟持した状態で実行される。
【0079】
図6Eに示すように、位置合わせ工程S5では、圧電素子1と、2本の電気信号線14の接続部14aと、の接続位置を、位置合わせ冶具203により調整する。本実施形態の位置合わせ冶具203は、圧電素子1を含む超音波振動子11が位置固定される振動子固定部203aと、保持体15が位置固定される保持体固定部203bと、を備える。図6Eでは、説明の便宜上、超音波振動子11の圧電素子1のみを示している。位置合わせ冶具203において、保持体固定部203bは、振動子固定部203aに対して、厚み方向Bと直交する方向に近接・離間できるようにスライド可能に取り付けられている。振動子固定部203aに位置固定された超音波振動子11と、保持体固定部203bに固定された保持体15と、はスライド移動する際に干渉しないように、厚み方向Bの位置が異なっている。このような位置合わせ冶具203を用いれば、保持体固定部203bを振動子固定部203aに対してスライド移動させることで、超音波振動子11の圧電素子1の少なくとも一部と、2本の電気信号線14の接続部14aと、が厚み方向Bで重なるように、位置合わせすることができる。このように、位置合わせ冶具203を用いることで、後述の接続工程S6の接続作業を、より確実かつ容易に実行することができる。
【0080】
図6Fに示すように、接続工程S6では、複数の電気信号線14のうち少なくとも2本の電気信号線14の保持体15と隣接する部分を、超音波振動子11の圧電素子1に接続する。本実施形態では、2本の電気信号線14の両方を、圧電素子1に接続する。具体的に、2本の電気信号線14の一方を、圧電素子1の第1電極5(図4参照)に接続し、2本の電気信号線14の他方を、圧電素子1の第2電極6(図4参照)に接続する。電気信号線14の圧電素子1に対する接続は、例えば、溶融状態の予備はんだ204と、はんだペースト205と、により実現できる。圧電素子1の第1電極5及び第2電極6に予め予備はんだ204を塗布しておき、電気信号線14を配置した後にはんだペースト205を塗布することで、電気信号線14を予備はんだ204及びはんだペースト205で挟み込む。この状態で熱風により加熱することで、はんだペースト205が溶融し、溶融状態の予備はんだ204と一体化し、電気信号線14が接合される。また、塗布された状態のはんだペースト205が、2本の電気信号線14に跨るように付着していても、はんだペースト205は、熱風で加熱されることで、各電気信号線14に一体化する部分へと分離していく。このように、予備はんだ204及びはんだペースト205を利用することで、電気信号線14を圧電素子1に接続することができる。
【0081】
本実施形態では、圧電素子1に予め予備はんだ204を塗布し、電気信号線14を挟み込むように、後からはんだペースト205を塗布しているが、逆であってもよい。つまり、圧電素子1に予めはんだペースト205を塗布し、電気信号線14を挟み込むように、後から予備はんだ204を塗布してもよい。また、圧電素子1に予め予備はんだ204又ははんだペースト205を塗布する場合には、メタルマスクを利用して、塗布量を定量化することが好ましい。
【0082】
更に、予備はんだ204及びはんだペースト205を利用しない方法として、UV硬化型の接着剤を利用して接続してもよい。
【0083】
上述したように、2本の電気信号線14は、保持体15により保持される。そのため、2本の電気信号線14のうち、保持体15から所定距離の範囲に位置する部分は、互いに所定距離離間した状態を維持できる。そのため、上述した接続工程S6において、例えば0.5mm四方の小型の圧電素子1に対して、例えば外径0.1mm程度の可撓性を有する2本の電気信号線14を接続する場合であっても、2本の電気信号線14が所定距離(圧電素子1において2本の電気信号線14が接続される箇所の離間距離)に離間した状態を維持できるため、比較的容易に圧電素子1に対する接続を実行することができる。
【0084】
また、上記工程S1~S6の1つ又は複数を実行可能な製造装置を用いてもよい。このようにすれば、手作業による失敗を抑制でき、生産効率をより高めることができる。
【0085】
特に、圧電素子1の第1電極5及び第2電極6の一方が折返し電極により構成され、圧電素子1の表面側又は裏面側の一方のみに、2本の電気信号線14が接続される箇所がある場合には、圧電素子1において2本の電気信号線14が接続される箇所同士の離間距離が非常に小さくなる。そのため、2本の電気信号線14を圧電素子1の別々の位置に接続する作業が特に難しい。このような折返し電極を有する圧電素子1の場合には、保持体15を利用した上述の製造方法を用いることが特に好ましい。
【0086】
また、図4に示す超音波探触子10の製造方法では、保持体15を、ハウジング12(図2図3参照)内に収容する収容工程を更に含む。この収容工程により保持体15をハウジング12に収容した状態とした後で、上述した接続工程S6を実行してもよい。また、図4に示す超音波探触子10の製造方法では、ハウジング12内の保持体15の位置を、固定部材16(図2図3参照)を用いて固定する固定工程を更に含む。固定工程では、例えば、固定部材16を形成する接着剤を、ハウジング12と保持体15との間に充填し、保持体15のハウジング12に対する位置を固定する。このように、電気信号線14を保持する保持体15をハウジング12に収容することで、電気信号線14のみをハウジング12に収容する場合と比較して、保持体15の体積だけ、電気信号線14とハウジング12との間の空隙を減らすことができる。そのため、固定部材16として液状の接着剤を用いる場合には、この固定部材16としての接着剤の充填量を減らすことができる。その結果、充填時にハウジング12外に流出してしまう無駄な接着剤の量についても減らすことができる。
【0087】
本開示に係る、超音波探触子の製造方法、及び、超音波探触子、は上述した実施形態で特定される具体的な構成・工程に限られず、請求の範囲の記載を逸脱しない限り、種々の変形・変更が可能である。図4に示す超音波探触子10の製造方法は、上述したように、工程S1~S6の他に、例えば上記収容工程などを含んでいてもよい。更に、図4に示す超音波探触子10の製造方法では、例えば、取付工程S2を被覆除去工程S3の前に実行しているが、先に被覆除去工程S3を実行してもよい。このように、本開示に係る超音波探触子の製造方法は、上述した実施形態において示す工程S1~S6及びその順序に限られない。したがって、本開示に係る超音波探触子の製造方法は、例えば、電気信号線14と圧電素子1との接続後に、保持体15を溶剤等により溶かす工程があってもよい。保持体15を溶かすことで、例えば、接続された圧電素子1及び電気信号線14を、固定部材16としての接着剤を使用しない別の固定方法で、ハウジング12に固定してもよい。また、上述した実施形態の超音波探触子10では、2本の電気信号線14のみを有し、この2本の電気信号線14が保持体15により保持される構成であるが、3本以上の電気信号線14を保持体15により保持する構成としてもよい。かかる場合には、3本以上の電気信号線14の少なくとも2本の電気信号線14を、圧電素子1に接続すればよい。
【0088】
更に、上述した実施形態の超音波探触子10は、イメージングコアとして、血管内超音波診断を可能とする超音波振動子11のみを備える構成であるが、この構成に限られず、例えば、光干渉断層診断(Optical Coherence Tomography、略称「OCT」)を可能とする光送受信部を更に備える構成であってもよい。図7は、超音波振動子11及び光送受信部301を備える超音波探触子310、を備える画像診断用カテーテル410の一部を示す断面図である。図7に示す超音波探触子310は、上述の超音波探触子10と比較して、光干渉断層診断を可能とする構成が付加されている点で異なっている。
【0089】
具体的に、図7に示す超音波探触子310では、ハウジング12内に超音波振動子11に加えて光送受信部301が配置されている。この光送受信部301は、駆動シャフト13内に延在する光信号線302としての光ファイバケーブルから伝送される光(測定光)を連続的に生体管腔内に送信すると共に、生体管腔内の生体組織からの反射光を連続的に受信する。光送受信部301は、受信した反射光を、光信号線302を通じて外部装置120(図1参照)に送信する。外部装置120の制御装置120b(図1参照)は、測定により得られた反射光と、光源からの光を分離することで得られた参照光とを干渉させることで干渉光データを生成する。また、外部装置120の制御装置120bは、生成された干渉光データに基づいて光断層画像を生成し、モニタ120c(図1参照)に表示させる。
【0090】
図7に示すように、駆動シャフト13内において、複数の電気信号線14は、光信号線302の周りに螺旋状に巻き付いており、複数の電気信号線14同士は平行に延在している。より具体的に、図7に示す2本の電気信号線14は、長手方向Aに延在する光信号線302としての光ファイバケーブルの周囲を二重らせん状に延在している。
【0091】
また、本開示に係る超音波探触子の製造方法は、図7に示すような、光干渉断層診断が可能な構成を備える超音波探触子310であっても適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本開示は、超音波探触子の製造方法、及び、超音波探触子、に関する。
【符号の説明】
【0093】
1:圧電素子
2:支持部材
3:音響整合部材
4:圧電体
5:第1電極
6:第2電極
6a:裏面電極層
6b:表面電極層
6c:連結導電部
10、310:超音波探触子
11:超音波振動子
12:ハウジング
12a:開口部
12b:先端側壁部
12c:基端側筒状部
13:駆動シャフト
14:電気信号線
14a:接続部
15:保持体
16:固定部材
20:シース
20a:本体部
20b:ガイドワイヤ挿通部
21a:第1中空部
21b:第2中空部
22、23:マーカ
24:窓部
26:連通孔
30:内管部材
31:内管
32:ハブ
40:外管部材
41:外管
42:先端側コネクタ
43:基端側コネクタ
100:画像診断装置
110、410:画像診断用カテーテル
110a:挿入部
110b:操作部
120:外部装置
120a:駆動ユニット
120b:制御装置
120c:モニタ
121:モータ
122:モータ
123:ボールネジ
201a:第1クランプ部材
201b:第2クランプ部材
203:位置合わせ冶具
203a:振動子固定部
203b:保持体固定部
301:光送受信部
302:光信号線
A:画像診断用カテーテルの長手方向
B:圧電素子の厚み方向
C:電気信号線の延在方向
P1:第1クランプ部材に挟持される第1位置
P2:第2クランプ部材に挟持される第2位置
P3:保持体により保持される保持位置
W:ガイドワイヤ
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図6F
図7