(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】混合装置用のフィルタユニット及び溶液を濾過する方法
(51)【国際特許分類】
C12M 1/00 20060101AFI20231219BHJP
C12M 1/12 20060101ALI20231219BHJP
C12M 1/21 20060101ALI20231219BHJP
C12N 1/00 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
C12M1/00 C
C12M1/12
C12M1/21
C12N1/00 J
C12N1/00 E
(21)【出願番号】P 2021510353
(86)(22)【出願日】2019-08-30
(86)【国際出願番号】 US2019049122
(87)【国際公開番号】W WO2020047448
(87)【国際公開日】2020-03-05
【審査請求日】2022-08-24
(32)【優先日】2018-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516008497
【氏名又は名称】フジフイルム アーバイン サイエンティフィック, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】フレッチャー、 トーマス レイド
(72)【発明者】
【氏名】マウロ、 ウェイン
(72)【発明者】
【氏名】ニーズ、 デビッド
【審査官】上村 直子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0022449(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0243502(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0145368(US,A1)
【文献】米国特許第05603900(US,A)
【文献】特表2016-501125(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0226444(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第104888298(CN,A)
【文献】中国実用新案第201088751(CN,Y)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00-3/00
C12N 1/00-7/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
混合装置用のフィルタユニットであって、
液体及びガスを含む流体を受け取るように構成される親水性フィルタであって、
前記親水性フィルタは前記液体を滅菌するようにさらに構成され
、
前記親水性フィルタは、円筒形の親水性フィルタカプセル内に配置された中空で円筒形の親水性フィルタエレメントを含み、前記親水性フィルタカプセルは出口ポートを含み、前記親水性フィルタエレメントは前記液体を滅菌するように構成される第1の膜を含み、
前記親水性フィルタエレメントは、前記液体が前記第1の膜を横切って前記親水性フィルタエレメントの中空の中心部に流入して前記出口ポートから流出することにより前記フィルタユニットから排出されるように、前記親水性フィルタカプセルに連結される、親水性フィルタと、
前記親水性フィルタ
の前記親水性フィルタカプセルと前記親水性フィルタエレメントとの間の空間から前記ガスを受け取るように構成される疎水性ベントフィルタであって、前記疎水性ベントフィルタは、通気孔と、前記フィルタユニットの内部を前記フィルタユニットの外部から分離するように構成される
第2の膜とをさらに含み、前記ガスは、前記
第2の膜を横切って前記通気孔から流出することにより前記フィルタユニットから排出される、疎水性ベントフィルタと
を含むフィルタユニット。
【請求項2】
前記疎水性ベントフィルタは、前記親水性フィルタ
の前記親水性フィルタカプセルと前記親水性フィルタエレメントとの間の空間から前記液体の一部を受け取るように構成される、請求項1に記載のフィルタユニット。
【請求項3】
前記疎水性ベントフィルタは、少なくとも部分的にポリテトラフルオロエチレン又はポリフッ化ビニリデンの少なくとも一方から構成される、請求項1に記載のフィルタユニット。
【請求項4】
前記親水性フィルタは、少なくとも部分的にポリエーテルスルホンから構成される、請求項1に記載のフィルタユニット。
【請求項5】
前記疎水性ベントフィルタは、円筒形
の疎水性フィルタカプセル内に配置された中空
で円筒形
の疎水性フィルタエレメントをさらに含み、前記
疎水性フィルタカプセルは前記通気孔を含み、前記
疎水性フィルタエレメントは前記
第2の膜を含み、
前記
疎水性フィルタエレメントは、ガスが前記
第2の膜を横切って前記
疎水性フィルタエレメントの中空の中心部に流入して前記通気孔から流出することにより前記フィルタユニットから排出されるように、前記
疎水性フィルタカプセルに連結される、請求項1に記載のフィルタユニット。
【請求項6】
混合装置用のフィルタユニットであって、
液体と、ガスと、閉じ込められたガスを含む液体から成る泡とを含む流体を受け取るように構成される親水性フィルタであって、
前記親水性フィルタは前記液体を滅菌するようにさらに構成され
、
前記親水性フィルタは、円筒形の親水性フィルタカプセル内に配置された中空で円筒形の親水性フィルタエレメントを含み、前記親水性フィルタカプセルは出口ポートを含み、前記親水性フィルタエレメントは前記液体を滅菌するように構成される第1の膜を含み、
前記親水性フィルタエレメントは、前記液体が前記第1の膜を横切って前記親水性フィルタエレメントの中空の中心部に流入して前記出口ポートから流出することにより前記フィルタユニットから排出されるように、前記親水性フィルタカプセルに連結される、親水性フィルタと、
前記親水性フィルタ
の前記親水性フィルタカプセルと前記親水性フィルタエレメントとの間の空間から前記ガスと、前記泡と、前記液体の一部とを受け取るように構成される消泡装置であって、前記泡から前記ガスの少なくとも一部を放出するようにさらに構成される消泡装置と、
前記消泡装置から前記ガスを受け取るように構成される疎水性ベントフィルタであって、前記疎水性ベントフィルタは、通気孔と、前記フィルタユニットの内部を前記フィルタユニットの外部から分離するように構成される
第2の膜とをさらに含み、前記ガスは、前記
第2の膜を横切って前記通気孔から流出することにより前記フィルタユニットから排出される、疎水性ベントフィルタと
を含むフィルタユニット。
【請求項7】
前記疎水性ベントフィルタは、前記消泡装置から前記液体の一部を受け取るように構成される、請求項
6に記載のフィルタユニット。
【請求項8】
前記消泡装置は、前記泡から前記ガスの少なくとも一部を放出するように構成される消泡物質を含む、請求項
6に記載のフィルタユニット。
【請求項9】
前記消泡物質はステンレス鋼の削り屑を含む、請求項
8に記載のフィルタユニット。
【請求項10】
前記疎水性ベントフィルタは、少なくとも部分的にポリテトラフルオロエチレン又はポリフッ化ビニリデンの少なくとも一方から構成される、請求項
6に記載のフィルタユニット。
【請求項11】
前記親水性フィルタは、少なくとも部分的にポリエーテルスルホンから構成される、請求項
6に記載のフィルタユニット。
【請求項12】
前記疎水性ベントフィルタは、円筒形
の疎水性フィルタカプセル内に配置された中空
で円筒形
の疎水性フィルタエレメントをさらに含み、前記
疎水性フィルタカプセルは前記通気孔を含み、前記
疎水性フィルタエレメントは前記
第2の膜を含み、
前記
疎水性フィルタエレメントは、ガスが前記
第2の膜を横切って前記
疎水性フィルタエレメントの中空の中心部に流入して前記通気孔から流出することにより前記フィルタユニットから排出されるように、前記
疎水性フィルタカプセルに結合される、請求項
6に記載のフィルタユニット。
【請求項13】
溶液を濾過する方法であって、
親水性フィルタと、消泡装置と、疎水性ベントフィルタとから成るフィルタユニットで、液体と、ガスと、閉じ込められたガスを含む液体から成る泡とを含む流体を受け取ること
であって、前記親水性フィルタは、円筒形の親水性フィルタカプセル内に配置された中空で円筒形の親水性フィルタエレメントを含み、前記親水性フィルタカプセルは出口ポートを含み、前記親水性フィルタエレメントは前記液体を滅菌するように構成される第1の膜を含むことと、
前記泡から前記ガスの少なくとも一部を放出するように構成される前記消泡装置に前記ガス及び前記泡を向けることと、
前記フィルタユニットの内部を前記フィルタユニットの外部から分離するように構成される
第2の膜を横切って前記疎水性ベントフィルタの通気孔から前記ガスを排出することと、
前記親水性フィルタにより前記液体を滅菌することと、
前記フィルタユニットから滅菌された液体を排出することと
を含
み、
前記液体を滅菌することは、前記液体を、前記第1の膜を横切って前記親水性フィルタエレメントの中空の中心部に流入させることを含み、
前記滅菌された液体を排出することは、前記液体を前記出口ポートから排出することを含む、方法。
【請求項14】
前記疎水性ベントフィルタは、前記液体の一部を受け取るように構成される、請求項
13に記載の方法。
【請求項15】
前記消泡装置は、前記泡から前記ガスの少なくとも一部を放出するように構成される消泡物質を含む、請求項
13に記載の方法。
【請求項16】
前記疎水性ベントフィルタは、少なくとも部分的にポリテトラフルオロエチレン又はポリフッ化ビニリデンの少なくとも一方から構成される、請求項
13に記載の方法。
【請求項17】
前記疎水性ベントフィルタは、円筒形
の疎水性フィルタカプセル内に配置された中空
で円筒形
の疎水性フィルタエレメントをさらに含み、前記
疎水性フィルタカプセルは前記通気孔を含み、前記
疎水性フィルタエレメントは前記
第2の膜を含み、
前記ガスを排出することは、前記ガスを、前記
第2の膜を横切って前記
疎水性フィルタエレメントの中空の中心部に排出し、前記通気孔から排出することを含む、請求項
13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術の実施形態は、全体として、少なくとも1つの材料を少なくとも1つの流体と混合するための自動化された方法及び装置のコンポーネントに関する。より詳細には、本技術の実施形態は、乾燥成分をバイオプロセス溶液に再構成するために特に適合された自動化された方法及び装置のための滅菌及び/又は濾過コンポーネントに関する。
【背景技術】
【0002】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年8月31日に出願された米国仮特許出願第62/725,717号の優先権を主張するものであり、当該米国仮特許出願は、その全体が参照により本明細書に含まれるものとする。
【0003】
バイオプロセスは、生細胞又はその成分を用いて所望の生成物を得るプロセスである。バイオプロセスは多くの場合、様々な溶液の使用を必要とする。例えば、バイオプロセスの最初のステップには細胞培養が含まれる場合があり、細胞培養は多くの場合、新しい細胞をうまく培養するために細胞培養培地の使用を必要とする。バイオプロセスの後のステップでは、生成物精製プロセスの一部として様々な緩衝液の使用が必要となる場合がある。
【0004】
バイオプロセス溶液は多くの場合、大きなステンレス鋼タンク又は単回使用の混合装置のいずれかで使用直前に乾燥成分から水和される。典型的なプロセスは、時間がかかり、費用がかかり、所望の生成物に直接的な価値を付加しない。
【0005】
基本的な細胞培養法は長年にわたってほとんど変化していないが、細胞培養の量は劇的に増加し続け、それにより培地調製の要件が変化している。より多くの研究所、製薬会社、バイオテクノロジー企業が細胞培養法を用いているだけでなく、多くの場合、非常に大規模に用いている。バイオテクノロジー企業は、1日に数千リットルの液体培地を消費し、多数の製造技術者及び科学者を雇用して、商業的利用のために細胞培養から抗体、成長因子、又は組換えタンパク質を生成する場合がある。本開示は、信頼性及び一貫性を向上させながら、これらのプロセスにおいて必要な時間、労力、エラーのリスク及び汚染のリスクを低減するのに役立つ、バイオプロセス溶液を調製するのにインライン混合装置を使用するための自動化されたシステム及び方法を提供する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
インライン混合装置を使用するには、例えば、バイオプロセス溶液を調製するために使用される再構成プロセス中に、空気などのガスを排出する必要がある。排出されない場合、空気は混合装置内で再構成される溶液を押しのける可能性がある。また、インライン混合装置内に存在する空気は、濾過膜(例えば、滅菌親水性膜)を通過することができず、混合装置内の水性液体の流れを遅くするか又は停止させる場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
全体として、本明細書に記載される実施形態は、乾燥成分を液体溶液に調製する(例えば、粉末バイオプロセス培地を液体バイオプロセス培地に調製する)ための自動化された方法及び装置のためのコンポーネントに関する。以下でさらに説明するように、乾燥成分は、再構成された液体溶液よりも必要とする貯蔵スペースが少なく、より長い貯蔵寿命を有し、より安価であり、予め包装された液体溶液よりも必要とする輸送及び取り扱い時間が短い傾向がある。したがって、液体溶液が必要な場合、予め包装された液体溶液を購入するよりも、乾燥成分から液体溶液への調製を簡単で、直接的かつ繰り返し可能にするように設計された自動化された方法及び装置を利用することが有利である。したがって、いくつかの実施形態による技術は、乾燥成分(例えば、粉末培地)を細胞培養培地又は緩衝液などの流体に混合するための自動化された方法のためのコンポーネントに関する。より詳細には、本技術のいくつかの実施形態は、自動化された方法によって使用可能な混合装置のための滅菌及び/又は濾過コンポーネントに関し、ここで、自動化された方法及び混合装置の両方が、乾燥成分を所定の単位体積量の液体に再構成するように適合されている。
【0008】
本技術を用いて、様々な乾燥成分を液体溶液に再構成することができる。例えば、本明細書で使用される場合、乾燥成分は、粉末細胞培養培地、乾燥粉末培地、乾燥緩衝液粉末、顆粒培地、乾燥塩、乾燥化学物質、乾燥成分、乾燥材料、及び未水和成分を指し得る。
【0009】
一実施形態は、混合装置用のフィルタユニットに関する。フィルタユニットは、親水性フィルタと、疎水性ベントフィルタとを含む。親水性フィルタは、液体とガスとを含む流体を受け取るように構成される。親水性フィルタは、液体を滅菌するようにさらに構成される。疎水性ベントフィルタは、親水性フィルタからガスを受け取るように構成される。疎水性ベントフィルタは、通気孔と、フィルタユニットの内部をフィルタユニットの外部から分離するように構成される膜とをさらに含み、ガスは、膜を横切って通気孔から流出することによってフィルタユニットから排出される。
【0010】
別の実施形態は、混合装置用のフィルタユニットに関する。フィルタユニットは、親水性フィルタと、消泡装置と、疎水性ベントフィルタとを含む。親水性フィルタは、液体と、ガスと、閉じ込められたガスを含む液体から成る泡とを含む流体を受け取るように構成される。親水性フィルタは、液体を滅菌するようにさらに構成される。消泡装置は、親水性フィルタからガスと、泡と、液体の一部とを受け取るように構成される。消泡装置は、泡からガスの少なくとも一部を放出するようにさらに構成される。疎水性ベントフィルタは、消泡装置からガスを受け取るように構成される。疎水性ベントフィルタは、通気孔と、フィルタユニットの内部をフィルタユニットの外部から分離するように構成される膜とをさらに含み、ガスは、膜を横切って通気孔から流出することによってフィルタユニットから排出される。
【0011】
別の実施形態は、溶液を濾過する方法に関する。方法は、親水性フィルタと、消泡装置と、疎水性ベントフィルタとを含むフィルタユニットで、液体と、ガスと、閉じ込められたガスを含む液体から成る泡とを含む流体を受け取ることと、泡からガスの少なくとも一部を放出するように構成される消泡装置にガス及び泡を向けることと、フィルタユニットの内部をフィルタユニットの外部から分離するように構成される膜を横切って疎水性ベントフィルタの通気孔からガスを排出することとを含む。方法は、親水性フィルタにより液体を滅菌することと、フィルタユニットから滅菌された液体を排出することとをさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0012】
本技術の上記の特徴、ならびに他の特徴、態様、及び利点を、添付の図面を参照しながら、様々な実施形態に関連して説明する。しかしながら、例示された実施形態は単なる例であり、本発明を限定することを意図するものではない。
【0013】
【
図1】例示的な実施形態による、粉末バイオプロセス培地などの粉末を再構成するための、フィルタユニットを含む混合装置の概略図である。
【0014】
【
図2】例示的な実施形態による、
図1のフィルタユニットの詳細な概略図である。
【0015】
【
図3】例示的な実施形態による、フィルタユニットのフィルタエレメントの斜視図である。
【0016】
【
図4】例示的な実施形態による、
図3のフィルタエレメントの断面図である。
【0017】
図5は、例示的な実施形態による、フィルタ内の流体の流れを示す
図1のフィルタユニットの詳細な概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下の詳細な説明では、本開示の一部を形成する添付の図面を参照する。図面では、文脈上別段の指示がない限り、類似の符号は一般に類似のコンポーネントを示す。詳細な説明、図面、及び特許請求の範囲に記載された例示的な実施形態は、限定を意図するものではない。詳細な説明は、例示的な実施形態の説明として意図されており、実施され得る実施形態のみを表すことを意図するものではない。本明細書で使用される「例示的な」という用語は、「例、事例、又は例示として役立つこと」を意味し、必ずしも他の実施形態よりも好ましいか又は有利であると解釈されるべきではない。本明細書に提示される主題の主旨又は範囲から逸脱することなく、他の実施形態を利用することができ、他の変更を行うことができる。本明細書に全体として記載され、図面に示されている本開示の態様は、多種多様な異なる構成で配置、置換、組み合わせ、及び設計することができ、それらのすべてが明示的に想定され、本開示の一部を形成していることが容易に理解されるであろう。
【0019】
本明細書に記載される実施形態は、全体として、乾燥成分からの溶液の調製、例えば、乾燥粉末細胞培養培地からの細胞培養用培地の調製又は乾燥緩衝液粉末からの緩衝液の調製に使用されるデバイス/装置、システム、及び方法のための濾過及び/又は滅菌コンポーネントに関する。提供される実施形態の1つ以上は、溶液の再構成に関して、特に乾燥粉末培地を含む乾燥形態での細胞培養培地の再構成に関して、当技術分野に存在する欠点、制限、又は欠陥の1つ以上を克服することができる。例えば、本明細書に記載されるいくつかの実施形態において、コンポーネントは、再構成がより効率的に行われ、例えば、望ましくない泡又は空気などの閉じ込められたガスを含まない溶液を生成するように、粉末を再構成するために使用される装置からの空気などのガスの排出を促進し得る。
【0020】
本開示は、粉末細胞培養培地から液体細胞培養培地を調製することとの関連で、本明細書に記載されるシステム及び方法に言及する。しかしながら、本明細書に記載されるシステム及び方法は他のタイプの溶液を調製するために適合され得ることが理解されるべきである。例えば、本明細書に記載のシステム及び方法は、バイオ医薬品バルク原薬のクロマトグラフィー及び下流処理用の緩衝液を調製するために使用され得る。別の例として、本明細書に記載されるシステム及び方法は、様々な「バイオプロセス溶液」又は生細胞又はその成分を使用して所望の生成物を得るプロセスで使用される溶液を調製するために使用され得る。また、本明細書に記載されるシステム及び方法は、多くのより広範な商業的又は工業的用途に適合させることができると考えられる。一例として、多くの液剤が病院の薬局で一定の頻度及び量で調製されている。生理食塩水、消化剤、造影剤、染料、滅菌液、麻酔薬が液体として再構成される。更なる代替的な用途は、これらに限定されないが、農薬、肥料、及び一般に粉末から調製される様々な飲料(例えば、牛乳、アイスティーなど)のいずれかの調製を含むが、これらの全ては、本明細書に記載されるシステム及び方法の実施形態を用いて再構成することができる。この点に関して、本発明のシステム及び方法を用いて再構成され得る乾燥成分は、粉末細胞培養培地に限定されず、乾燥粉末培地、乾燥緩衝液粉末、顆粒培地、乾燥塩、乾燥化学物質、乾燥成分、乾燥材料、及び未水和成分を含み得る。
【0021】
図1は、混合装置10の一実施形態の全体システム図である。好ましくは、混合装置10は、培地を汚染しない非毒性の医療グレードのプラスチック又は他の非毒性材料などの、細胞培養環境に適した材料で作られる。混合装置10は、様々な長さの管18(例えば、可撓性ホース)で互いに接続された第1混合チャンバ12と、第2混合チャンバ14と、フィルタユニット16とを含む。管は、弁を通る流体の流れを選択的に可能にし(例えば、弁が開位置にあるとき)かつ停止する(例えば、弁が閉位置にあるとき)ために、管に設けられた様々な弁20をさらに含む。例示的な実施形態において、弁はピンチ弁であるが、他の実施形態において、弁はボール弁などの他のタイプの弁であるか又はボール弁などの他のタイプの弁を含むことができる。様々な実施形態において、混合装置10は、粉末細胞培養培地を液体培地に再構成するように設計される。例えば、混合装置10は、必要な培地成分(例えば、粉末細胞培養培地、重炭酸ナトリウムなど)が予め包装された単回使用の装置であることができる。しかしながら、当業者は、混合装置10を使用して、他の形態の未溶解細胞培養培地(例えば、顆粒状細胞培養培地)を再構成するか、乾燥形態からバイオプロセス緩衝液を調製するか、又はより一般的に粉末から液体を再構成することができることを理解するであろう。
【0022】
初めに、様々な実施形態において、第1混合チャンバ12は、液体培地に再構成される乾燥粉末培地を含む。例えば、第1混合チャンバ12には、予め測定された量の乾燥粉末培地が提供され得る。いくつかの実施形態において、第1混合チャンバ12は、既にその中に予め測定された量の乾燥粉末培地がある状態で予め包装され得る。また、様々な実施形態において、第1混合チャンバ12は、培地と精製水との及び/又は溶解重炭酸ナトリウム又は補助物質などの他の粉末又は液体との混合を促進するように設計される。例えば、第1混合チャンバ12は、流体が第1混合チャンバ12に入るときの旋回渦運動の生成を促進するために、第1混合チャンバ12の上端及び/又は下端にそれぞれ連結された上部コーン及び/又は下部コーンを含むことができる。旋回渦運動は、乾燥粉末培地、精製水、溶解重炭酸ナトリウム、補助物質等の混合を促進するのに役立つ。第1混合チャンバ12の様々な構成及び実施形態は、「培地混合チャンバ」と題され、2016年3月31日に出願され、その全体が本明細書に含まれる、米国特許出願第15/087,826号に記載されている。
【0023】
第1混合チャンバ12はまた、それにより流体が第1混合チャンバ12に流入及び第1混合チャンバ12から流出することができる様々なポート、例えば、頂部ポート、上部ポート、及び下部ポートなどを含む。例示的な実施形態において、ポートの少なくともいくつかは、流体が第1混合チャンバ12の内壁に対して実質的に接線方向の角度で第1混合チャンバ12に入るように第1混合チャンバに配置することができ、それにより第1混合チャンバ内の様々な培地成分の混合がさらに促進され得る。また、第1混合チャンバ12は、ポートの少なくともいくつかを通して管18で様々な入口22に接続され、様々な入口22は、次いで、再構成プロセスが完了した後に残りの培地を装置10から洗い流すために、水、細胞培地用の補助物質、及び圧縮空気などの再構成プロセスのための様々な流体源に接続され得る。
【0024】
様々な実施形態において、第2混合チャンバ14は、細胞培養培地への添加剤を含む。例示的な実施形態において、第2混合チャンバ14は、重炭酸ナトリウム粉末を含み、第2混合チャンバ14は、重炭酸ナトリウムと精製水との混合を促進するように設計される。また、第2混合チャンバ14は、その中に予め測定された量の重炭酸ナトリウムがある状態で予め包装され得る。いくつかの実施形態において、第2混合チャンバ14は、第1混合チャンバ12と同様に構成される(例えば、流体が第2混合チャンバ14に入るときの旋回渦運動の生成を促進するために、第2混合チャンバ14の上端及び/又は下端にそれぞれ連結された上部コーン及び/又は下部コーンを含む)。他の実施形態において、第2混合チャンバ14は、第1混合チャンバ12とは異なるように構成される。第2混合チャンバ14の様々な構成及び実施形態も、上述のようにその全体が本明細書に含まれる、「培地混合チャンバ」と題され、2016年3月31日に出願された米国特許出願第15/087,826号に記載されている。
【0025】
第1混合チャンバ12と同様に、第2混合チャンバ14は、それにより流体が第2混合チャンバに流入及び第2混合チャンバから流出することができる様々なポート、例えば、頂部ポート及び下部ポートなどを含む。また、ポートの少なくともいくつかは、流体が混合チャンバの内壁に対して実質的に接線方向の角度で第2混合チャンバ14に入るように第2混合チャンバ14に配置することができる。第2混合チャンバ14はさらに、ポートの少なくともいくつかを通して管18で、水源に接続された入口などの様々な入口22に接続される。また、
図1に示すように、第1混合チャンバ12及び第2混合チャンバ14は、それらのそれぞれのポートを通して管18で互いに接続され得る。
【0026】
装置10はまた、装置10の出口24の前に配置されたフィルタユニット16を含む。フィルタユニット16は、フィルタユニット16に流入する再構成された溶液を濾過するように構成される。例えば、
図1に示す実施形態において、流体は、第1混合チャンバ12及び/又は水源からフィルタユニット16に流入することができる。フィルタユニット16は、フィルタユニット16に流入する溶液を滅菌するようにさらに構成され得る。また、以下にさらに詳細に説明するように、フィルタは、溶液から空気又は他のガスを除去するように構成される。再構成された溶液がフィルタユニット16によって濾過及び/又は滅菌されると、溶液は出口24を通って装置10から流出し、例えば、滅菌貯蔵容器に導かれる。
【0027】
また、様々な実施形態において、混合装置10は、混合装置10内で測定を行うための様々なセンサを含むことができる。これらのセンサは、例えば、(例えば、装置10内の水圧を検出するための)圧力センサ、(例えば、装置10内の溶液の導電率、ひいては濃度を検出するための)導電率センサ、(例えば、混合プロセスで消費される流体の体積及び流量を検出するための)回転式流量計などの累積体積センサ、(例えば、装置10内の溶液のpHを検出するための)pHセンサ、(例えば、装置10内の流体の粘度を測定するための)粘度計などを含むことができる。例えば、
図1の実施形態において、装置10は、管18内に図示のように配置されたセンサ26を含む。これらのセンサ26は、(例えば、フィルタユニット16の背圧が高くなり過ぎないことを確実にするために)フィルタユニット16に流入する流体の圧力を測定するように構成される圧力センサと、フィルタユニット16に流入する溶液の導電率を測定し、それにより、フィルタユニット16に流入して最終的に装置10から流出する溶液の濃度を間接的に測定するように構成される導電率センサと、混合プロセス中に消費される水の体積及び流量を測定するように構成される体積センサとを含むことができる。
【0028】
様々な実施形態において、粉末培地はまた、自動化された方法によって混合装置10内で液体培地に混合される。例えば、コンピューティングシステムは、粉末培地の混合を制御するために、弁の開閉と自動化された方法の間に使用される流体源(例えば、水源、圧縮空気源、補助物質源)とを制御することができる。コンピューティングシステムは、様々なトリガーに応答して弁及び成分供給源を開閉することができる。例えば、コンピューティングシステムは、混合プロセスに関係する混合装置10からの(例えば、圧力センサ、導電率センサ、及び体積センサからの)測定値を受信することができる。次いで、コンピューティングシステムは、特定のレベル、特定のレベルより下又は上、特定の範囲内などの測定値の受信に応答して、弁及び/又は流体源を開閉することができる。別の例として、コンピューティングシステムは、特定の経過時間に応答して、弁及び/又は流体源を開閉することができる。
【0029】
自動化された方法によって乾燥粉末培地から液体培地を調製するために混合装置10を使用することは、それが容易かつ効率的な液体培地の調製を可能にするので、現在の分野に対する改良である。また、自動化された方法を制御するプログラミング論理(例えば、コンピューティングシステムの一部として非一時的な機械可読媒体に記憶された命令を実行する処理回路によって実行される)を有することにより、乾燥粉末培地からの液体培地の調製が繰り返し可能かつ一貫性のあるものとなる。混合装置10及び混合装置10と共に使用される自動化された方法の様々な構成及び実施形態に関する更なる詳細は、「バイオプロセス溶液を調製するための自動化された方法及び装置」と題され、2018年6月25日に出願され、その全体が本明細書に含まれる、米国特許出願第16/017,014号に記載されている。
【0030】
粉末細胞培養培地などの粉末を閉じた系又は実質的に閉じた系(例えば、混合装置10)で水和及び濾過するには、空気などのガスを排出する必要がある。空気は、水性液体の滅菌濾過のための通常の動作圧力では、フィルタ(例えば、フィルタユニット16)の典型的な滅菌親水性膜を通過しない。排気によって空気が除去されない場合、空気がフィルタの上流側で水性液体を押しのけるにつれて、フィルタの流れは減少し、最終的に停止する。また、親水性膜の乾燥した領域は水性液体を通過させない。
【0031】
このため、混合装置を通る液体の効率的な流れを可能にするために、装置用のフィルタは通気孔を必要とする。しかしながら、通気孔は、流出空気に対しては選択的に透過可能であり、装置内の溶液を汚染して閉じた系を危険にさらす可能性のある流入微生物に対しては選択的に透過可能でない必要がある。また、通気孔は、混合装置内で混合される水性液体の排出を防止する必要がある。
【0032】
このような状況において、十分に小さい孔(例えば、0.2μm以下)を有する半透過性の疎水性膜を使用することで、膜が実質的に乾燥していて泡がない限り、空気又は他のガスを選択的に排出させ、流入微生物の汚染及び水性液体の排出の両方を防ぐことができると分かった。しかしながら、粉末細胞培養培地などの粉末の水和は、疎水性膜を通しての空気の排出を阻害する非常に小さな気泡及び泡(例えば、閉じ込められた空気を含む溶解液)を発生させ得る液体及び空気の混合物を生成する。泡及び気泡は膜を濡らし、疎水性膜の濡れた領域は空気を通過させない。通気孔の流量の減少は、上記のように、親水性フィルタの上流側で水性液体を押しのけて最終的に水性液体濾液の流量を減少させる、システム内の空気の蓄積を引き起こす。このため、疎水性ベントフィルタのすぐ上流に消泡装置を使用することにより、十分な空気排出を維持できることがさらに分かった。小さな気泡及び泡を壊すのを助けることにより、装置は、水性液体の空気からの効果的な分離を可能にし、疎水性ベントフィルタの濡れを防ぐことができる。
【0033】
図2は、これらの有利な特徴を取り入れたフィルタユニット16の詳細図である。様々な実施形態において、フィルタユニット16は、親水性フィルタ100と、消泡装置102と、疎水性ベントフィルタ104とを含む。親水性フィルタ100は、滅菌フィルタであり、入ってくる溶液を滅菌するための膜を含む。いくつかの実施形態において、親水性フィルタ100は、中空の円筒形フィルタエレメント100b(
図2には見られない)を含む。
図3及び
図4の断面図は、(例えば、フィルタエレメントの外面に)プリーツのある膜100cを含む円筒形フィルタエレメント100bを示す。
図5に示すように、親水性フィルタ100は、フィルタエレメント100bとフィルタカプセル100aとの間に空間が存在するように、円筒形フィルタカプセル100aに適合する円筒形フィルタエレメント100bを含む。円筒形フィルタエレメント100bは、親水性フィルタ100に入ってくる溶液を滅菌する膜100cを含む。例えば、親水性フィルタ100に入る水性液体は、円筒形フィルタエレメント100bのこの膜100cを5~15L/分で通過する。したがって、様々な実施において、溶液は、入口106を通って親水性フィルタ100に入り、フィルタカプセル100aとフィルタエレメント100bとの間の空間に入り、フィルタエレメント100bの膜100cを通過してフィルタエレメント100bの中空の中心部に入ることにより滅菌され、出口108を通って親水性フィルタ100から排出される。様々な実施形態において、親水性フィルタエレメント100bは、少なくとも部分的にポリエーテルスルホン(「PES」)などの親水性材料から構成される。
【0034】
再び
図2を参照すると、消泡装置102は、溶液中の小さな気泡及び泡を壊してその中に閉じ込められた空気を放出するように構成される消泡物質110を含む。例えば、いくつかの実施形態において、消泡物質は、スチールウール又はステンレス鋼の削り屑であり得る。したがって、消泡装置102は、溶液と混合された泡及び空気を含む、親水性フィルタ100からの溶液の少なくとも一部を受け取り、溶液中の気泡及び泡を壊して溶液から空気を放出するように構成される。一例として、消泡物質110は、流れる溶液の運動力と消泡物質110の構造との組み合わせによって気泡及び泡を壊すように構成され得る。
【0035】
疎水性ベントフィルタ104は、装置10内で混合される溶液から空気又は他のガスを排出するように構成される。例えば、いくつかの実施形態において、疎水性ベントフィルタ104は、混合プロセス中に最大50Lの空気を排出することができる。
図5に示すように、いくつかの実施形態において、疎水性ベントフィルタ104は、円筒形フィルタカプセル104aに適合する(フィルタエレメント100b及び膜100cと同様に、フィルタエレメント104bの外面に膜を含む)円筒形フィルタエレメント104bを含む。したがって、様々な実施において、親水性フィルタ100からの空気(及び付随して疎水性ベントフィルタ104に押し込まれ又は噴射される溶液)は、疎水性ベントフィルタ104に入り、フィルタカプセル104aとフィルタエレメント104bとの間の空間に入る。空気は、次いでフィルタエレメント104bの膜を通ってフィルタエレメント104bの内側の中空の中心部に流入し、次いで疎水性ベントフィルタ104、ひいては装置10から、(例えば、フィルタカプセル104aの一部として組み込まれた)疎水性ベントフィルタ104の上部に配置された通気孔112を通って流出する。また、膜104cは、例えば、微生物及び望ましくない粒子が装置10に侵入して装置10の閉じた系を危険にさらさないように、フィルタユニット16の内部をフィルタユニット16の外部から分離する。様々な実施形態において、疎水性ベントフィルタエレメント104bは、少なくとも部分的にポリテトラフルオロエチレン(「PTFE」)又はポリフッ化ビニリデン(「PVDF」)などの疎水性材料から構成される。
【0036】
図5は、フィルタユニット16を通る溶液及び空気の流れを示す。
図5の実施形態において、滅菌されていない溶液の流れは実線の矢印200で示され、空気又は他のガスの流れは点線の矢印202で示され、滅菌された溶液の流れは点線の矢印204で示されている。また、
図5は、親水性フィルタ100及び疎水性ベントフィルタ104のそれぞれについて、フィルタカプセル100a、104a及びフィルタエレメント100b、104bの両方を示す。図示するように、親水性フィルタ100は、親水性フィルタカプセル100aと、親水性フィルタエレメント100bとを含み、疎水性ベントフィルタ104は、疎水性フィルタカプセル104aと、疎水性フィルタエレメント104bとを含む。
【0037】
図5に示すように、滅菌されていない溶液200及び空気又は他のガス202は、入口106を通って親水性フィルタ100に入る。滅菌されていない溶液200は、親水性フィルタカプセル100aと親水性フィルタエレメント100bとの間の空間を満たす。滅菌されていない溶液200は、親水性フィルタエレメント100bの膜100cを(例えば、5~15L/分の速度で)通過し、それにより滅菌され、親水性フィルタエレメント100bの内側の中空の中心部に入る。滅菌された溶液204は、次いで(例えば、それを通って滅菌された溶液が親水性フィルタ100から排出される親水性フィルタカプセル100aの出口ポートに連結された)出口108を通って流れることによりフィルタユニット16から排出される。滅菌された濾液204は、次いで滅菌容器に収集され、例えば、バイオプロセスの一部として使用され得る。
【0038】
また、滅菌されていない溶液200及びあらゆる空気又は他のガス202は、親水性フィルタ100から消泡装置102に流入することができる。実際には、例えば、空気及びあらゆる気泡又は泡は、親水性フィルタ100内の滅菌されていない溶液200から消泡装置102内に上昇し得る。消泡装置102内の消泡物質110は、溶液中の気泡及び泡を壊し、それにより溶液中に閉じ込められていた空気202を放出し、滅菌されていない溶液を親水性フィルタ100内に逆流させる。
【0039】
空気又は他のガス202は、次いで(例えば、同様に疎水性ベントフィルタ104に押し込まれ又は噴射される少量の滅菌されていない溶液と共に)疎水性ベントフィルタ104に流入する。
図5に示すように、空気202は、疎水性フィルタカプセル104aと疎水性フィルタエレメント104bとの間の空間に流入する。空気は、疎水性フィルタエレメント104bの膜104cを通って疎水性フィルタエレメント104bの中空の中心部に流入する。疎水性フィルタエレメント104bの膜(例えば、0.2μmのバリア)は、細菌及び他の微生物が装置10に侵入するのを防ぐ。空気は、次いで疎水性フィルタエレメント104bの中心部から出て、通気孔112を通って流れ、それにより装置10から出る。
【0040】
このようにして、フィルタユニット16は、混合装置10の閉じた系を維持しながら、混合溶液から空気を分離及び排出し、溶液を滅菌することができる。したがって、親水性フィルタ100と、消泡装置102と、疎水性ベントフィルタ104とから構成されるフィルタユニット16は、上記の技術的利点を提供する。また、いくつかの実施形態において、フィルタユニット16の上記の構成は、溶液の滅菌及び混合プロセス中の空気の排出のための普通とは異なるアプローチを表す。多くの疎水性フィルタは、乾燥状態での性能に関してのみ推奨され得るからである。例えば、疎水性フィルタは水の最小「破過圧力」を測定するために試験され得るが、水分が疎水性フィルタの性能に潜在的に影響を与え得るので、多くの疎水性フィルタは濡らさないことが推奨され得る。対照的に、上記のフィルタユニット16では、疎水性ベントフィルタ104は、滅菌されていない溶液の流れを受け入れるように直接構成されていないが、疎水性ベントフィルタ104は、依然として消泡装置102からの滅菌されていない溶液の一部に接触する可能性がある(例えば、滅菌されていない溶液の流れの運動力により、滅菌されていない溶液が疎水性ベントフィルタ104に噴射されるため)。このため、フィルタユニット16の上記の構成は、濾過システムにおいて普通でない可能性がある。しかしながら、この構成は、上記のように装置10内の溶液を維持しかつ閉じた系を維持しながら、装置10が空気を効果的に排出し、閉じ込められた空気を混合溶液から分離することを可能にし得る。したがって、この構成は、装置10の多くの用途にとって有利であり得る。
【0041】
代替的に、一部の実施形態において、フィルタユニット16は、消泡装置102を含まなくてもよい。代わりに、親水性フィルタ100を疎水性ベントフィルタ104に直接接続してもよい(図示せず)。このような実施形態において、滅菌されていない溶液は、疎水性ベントフィルタ104に噴射又は流入する可能性が高く、したがって、このような構成を使用することの意外性を増大させる可能性がある。しかしながら、この構成により、例えば、発泡がそれほど懸念されないか又は問題にならない状況では、溶液を効果的に滅菌し、空気を排出することができる。
【0042】
いくつかの実施形態において、フィルタユニット16は、
図2及び3に示されるフィルタユニット16とは異なる他の構成で配置され得ることも理解されるべきである。例えば、いくつかの実施形態において、装置10内で混合される溶液の滅菌は必要でない場合がある。このため、フィルタユニット16は、消泡装置102及び疎水性ベントフィルタ104を含むが、親水性フィルタ100を含まないことができる。代替的に、他の実施形態において、フィルタユニット16は、複数の通気孔などの異なる又は追加のコンポーネントを含み得る。また、他の実施形態において、装置10は
図1に示す装置10とは異なるように構成され得ることが理解されるべきである。例えば、いくつかの実施形態において、フィルタユニット16は、装置10の異なるセクションに配置され得る。
【0043】
また、上記の実施形態は、粉末細胞培養培地の再構成に関連して記載されているが、混合装置10及びフィルタユニット16の実施形態は、様々な乾燥成分を液体に、例えば、様々なバイオプロセス粉末をバイオプロセス溶液に再構成するために自動化された方法の実施形態と共に使用され得ることが理解されるべきである。使用される液体溶媒は水、アルコール、又は他の有機物であり得ることがさらに考えられる。溶解度特性、使用される溶媒、必要な量、及び溶媒と再構成される化学物質との化学的相互作用は、混合装置10及び/又はフィルタユニット16の構成、ならびに装置10を用いて粉末を再構成するために使用されるあらゆる自動化された方法に関するガイドラインを提供するのに役立つ。
【0044】
フィルタユニット16は、ナイロン又は酢酸セルロースを含むことができる。また、培地製品の場合、フィルタユニット16で使用される膜は0.2μmフィルタであり得るが、特定の機能のために他のフィルタサイズを選択することができると考えられる。例えば、電気泳動緩衝液の調製には、汚染されていない溶液が必要であるが、必ずしも滅菌溶液である必要はなく、0.45μのフィルタで十分であろう。同様に、より粘性の高い溶液の調製には、より広い孔径が必要になる場合がある。要するに、フィルタユニット16に使用される膜は、あらゆる所望のサイズ、体積、孔径などのものであり得る。
【0045】
記載された技術の範囲から逸脱することなく、様々な修正及び変更を行うことができることは、当業者に理解されるであろう。このような修正及び変更は、添付の特許請求の範囲により定められるように、実施形態の範囲内に入ることが意図されている。また、一実施形態に含まれる部分が他の実施形態と交換可能であり、図示された実施形態の1つ以上の部分があらゆる組み合わせで他の図示された実施形態と共に含まれ得ることが当業者には理解されるであろう。例えば、本明細書に記載されかつ/又は図面に示された様々なコンポーネントのいずれかを他の実施形態と組み合わせ、交換、又は除外することができる。
【0046】
図面を参照して本明細書の実施形態を説明してきた。図面は、本明細書に記載されたシステム及び方法を実施する特定の実施形態の特定の詳細を示している。しかしながら、図面を用いて実施形態を説明することは、図面に存在する可能性のある制限を本開示に課すものと解釈されるべきではない。
【0047】
本明細書におけるあらゆる複数形及び/又は単数形の用語の使用に関して、当業者は、文脈及び/又は用途に適切なように、複数形から単数形へ及び/又は単数形から複数形へと翻訳することができる。様々な単数形/複数形の入れ替えは、明確にするために本明細書に明示的に記載され得る。
【0048】
一般に、本明細書及び特に添付の特許請求の範囲で使用される用語は全体として「オープンな」用語として意図されていることが当業者に理解されるであろう(例えば、「含む(comprising)」という用語は「含むが、これ(ら)に限定されない」と解釈されるべきであり、「含む(comprising)」及び「有する」という用語はそれぞれ「少なくとも含む」及び「少なくとも有する」と解釈されるべきであり、「含む(includes)」という用語は「含むが、これ(ら)に限定されない」と解釈されるべきである、など)。導入された請求項の記載の特定の数が意図されている場合には、そのような意図は当該請求項に明示的に記載されており、そのような記載がない場合には、そのような意図は存在しないことが、当業者にさらに理解されるであろう。例えば、理解の一助として、以下の添付の特許請求の範囲は、請求項の記載を導入するために「少なくとも1つの」及び「1つ以上の」という導入句の使用を含むことができる。しかしながら、このような句の使用は、同じ請求項が導入句「1つ以上の」又は「少なくとも1つの」と「a」又は「an」などの不定冠詞とを含む場合でも、不定冠詞「a」又は「an」による請求項の記載の導入が、このような導入された請求項の記載を含む特定の請求項を、このような記載を1つだけ含む実施形態に限定することを暗示すると解釈されるべきではない。一般に、「a」及び/又は「an」は、同じことが「少なくとも1つの」又は「1つ以上の」を意味すると解釈されるべきであり、請求項の記載を導入するために使用される定冠詞の使用にも当てはまる。
【0049】
また、「A、B、及びCなどの少なくとも1つ」に類似する慣例表現が使用されているような場合には、一般に、このような構成は、当業者がこの慣例表現を理解するであろう意味で意図されている(例えば、「A、B、及びCの少なくとも1つを有するシステム」は、Aのみ、Bのみ、Cのみ、A及びBを共に、A及びCを共に、B及びCを共に、及び/又はA、B、及びCを共に有するシステムなどを含むが、これらに限定されない)。「A、B、又はCなどの少なくとも1つ」に類似する慣例表現が使用されているような場合には、一般に、このような構成は、当業者がこの慣例表現を理解するであろう意味で意図されている(例えば、「A、B、又はCの少なくとも1つを有するシステム」は、Aのみ、Bのみ、Cのみ、AとBを共に、AとCを共に、BとCを共に、及び/又はA、B、Cを共に有するシステムなどを含むが、これらに限定されない)。明細書、特許請求の範囲又は図面のいずれにおいても、2つ以上の代替用語を提示する実質的にすべての選言的な語及び/又は句は、用語の1つ、用語の一方又は両方を含む可能性を想定するものと理解されるべきであることが、当業者にさらに理解されるであろう。例えば、「A又はB」という句は、「A」、「B」、又は「A及びB」の可能性を含むものと理解されるであろう。
【0050】
本開示のために、「連結された」という用語は、2つの部材の互いに直接的又は間接的な結合を意味する。このような結合は、本質的に固定的又は移動可能であり得る。このような結合は、2つの部材もしくは2つの部材と追加の中間部材とが互いに単一体として一体的に形成されるか、又は2つの部材もしくは2つの部材と追加の中間部材とが互いに取り付けられることによって達成され得る。このような結合は、本質的に恒久的であっても、本質的に取り外し可能又は解除可能であってもよい。
【0051】
本明細書に記載される技術は多くの用途を有し、本技術の特定の実施形態が詳細に説明されているが、本明細書に記載されている設計上の考慮事項を考えれば、開示された実施形態を変更できることは当業者には明らかであろう。したがって、前述の説明は、限定ではなく例示と見なされるべきであり、本発明の真の範囲は、以下の特許請求の範囲に定められるものである。