IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシーの特許一覧

特許7405839置換シクロペンタジエン化合物およびメタロセンの合成
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】置換シクロペンタジエン化合物およびメタロセンの合成
(51)【国際特許分類】
   C07C 1/24 20060101AFI20231219BHJP
   C07C 13/44 20060101ALI20231219BHJP
   C07F 7/00 20060101ALI20231219BHJP
   C07F 17/00 20060101ALI20231219BHJP
   C08F 4/6592 20060101ALI20231219BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20231219BHJP
【FI】
C07C1/24
C07C13/44
C07F7/00 A
C07F17/00
C08F4/6592
C07B61/00 300
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021512426
(86)(22)【出願日】2019-09-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-06
(86)【国際出願番号】 US2019050546
(87)【国際公開番号】W WO2020068420
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2022-08-29
(31)【優先権主張番号】62/737,974
(32)【優先日】2018-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】パディラアセヴェド、アンジェラ アイ.
【審査官】中村 政彦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/064044(WO,A1)
【文献】特開平08-188711(JP,A)
【文献】特開平08-059722(JP,A)
【文献】特開平09-132537(JP,A)
【文献】BRAUDE, E. A. et al.,“456. Polycyclic systems. Part V. A new route to azulenes”,Journal of the Chemical Society (Resumed),1953年,pp. 2208-2216,DOI: 10.1039/JR9530002208
【文献】CONIA, J. M. et al.,“Sur un mode de preparation simple des cyclopentenones par action de l'acide polyphosphorique sur les esters d'acides αβ-ethyleniques”,Tetrahedron Letters,1968年,Vol. 9, No. 17,pp. 2101-2104,DOI: 10.1016/S0040-4039(00)89752-X
【文献】CONIA, J. M. et al.,“No. 515. - Sur la preparation de cyclopentenones par action de l'acide polyphosphorique sur les esters d'acides alpha-ethyleniques. 1re Partie: Aspects pratiques”,BULLETIN DE LA SOCIETE CHIMIQUE DE FRANCE,1970年,No. 8-9,pp. 2981-2991,ISSN: 0037-8968
【文献】EATON, P. E. et al.,“Phosphorus pentoxide-methanesulfonic acid. Convenient alternative to polyphosphoric acid”,The Journal of Organic Chemistry,1973年,Vol. 38, No. 23,pp. 4071-4073,DOI: 10.1021/jo00987a028
【文献】ZEWGE, D. et al.,“A Mild and Efficient Synthesis of 4-Quinolones and Quinolone Heterocycles”,The Journal of Organic Chemistry,2007年,Vol. 72, No. 11,pp. 4276-4279,DOI: 10.1021/jo070181o
【文献】YANG, Q. et al.,“Novel and Efficient Syntheses of Bis(η5-tetrahydroindenyl) Dichlorides of Titanium, Zirconium and Hafnium”,Synlett,1996年,Vol. 1996, No. 06,pp. 563-564,DOI: 10.1055/s-1996-5495
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 1/00
C07C 13/00
C07F 7/00
C07F 17/00
C08F 4/00
C07B 61/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
置換シクロペンタジエン化合物を合成する方法であって、
(A)式(1)の化合物(「化合物(1)」):
【化1】

[式中、下付き文字nは1、2、3、または4であり、基R、R1A、R、R2A、R、R3A、およびRのそれぞれは、独立してHまたは(C~C)アルキルであるか、あるいは任意の2つの隣接するR~R基は共に結合して(C~C)アルキレンを形成し、R~R3Aのうちの残りの基は、Hまたは(C~C)アルキルである]を、
有効量の五酸化リン/メタンスルホン酸試薬(P/HCSOH試薬)と、
式(2)の化合物(「化合物(2)」):
【化2】

[式中、下付き文字nおよび基R~Rは、上記で定義されたとおりである]を作製するのに十分な反応条件下で接触させることであって、ただし、前記接触工程(A)は、ポリリン酸(PPA)を不含であることを条件とする、接触させることと、
(B)前記化合物(2)を、式(3)の化合物(「化合物(3)」):
【化3】

[式中、下付き文字nおよび基R~Rは上記で定義された通りであり、RはそれぞれHまたは(C~C)アルキルである]を作製するのに十分な反応条件下で、水素化物官能性還元剤または(C~C)アルキルリチウムのいずれかである金属-R還元剤と接触させることと、(C)前記化合物(3)を脱水反応条件と接触させて、式(4)の置換シクロペンタジエン化合物(「化合物(4)」):
【化4】

[式中、下付き文字nおよび基R~Rは、上記で定義された通りである]を作製することと、
を含む方法。
【請求項2】
金属-(置換シクロペンタジエニル配位子)錯体を含む置換メタロセン化合物を合成する方法であって、
請求項1の工程(A)~(C)にしたがって前記化合物(4)を合成することと、
(D)前記化合物(4)を、アルキルリチウムと、式(5)の化合物(「化合物(5)」):
【化5】

を作製するのに十分な反応条件下で接触させることと、
(E)前記化合物(5)を、式(6)の化合物(「化合物(6)」):
【化6】

と、式(7)の化合物(「化合物(7)」):
【化7】

[式中、下付き文字nおよび基R~Rは、上記で定義された通りであり、金属Mは、元素周期表の第4族の金属であり、R~Rのそれぞれは独立して、Hまたは(C~C)アルキルであり、RおよびR10は独立して、Hまたは(C~C)アルキルであるか、あるいはRおよびR10は共に結合して、(C~C)アルキレンである]を作製するのに十分な反応条件下で接触させることと、
を含む方法。
【請求項3】
ジルコノセンジメチル錯体を合成する方法であって、
前記化合物(7)[式中、MはZrである]を、請求項2の工程(A)~(E)にしたがって合成することと、
(F)前記化合物(7)を、有効量の臭化メチルマグネシウムと、式(8)の化合物(「化合物(8)」):
【化8】

[式中、下付き文字nおよび基R~R10は、上記で定義された通りである]を作製するのに十分な反応条件下で接触させることと、を含む方法。
【請求項4】
前記P/HCSOH試薬を作製するために使用される、PのHCSOHに対する比が、0.05/1~1/1(重量/重量)である、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記P/HCSOH試薬を作製するために使用される、PのHCSOHに対する比が、0.1/1(重量/重量)である、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記化合物(4)が、化合物(4a)~(4e)のうちのいずれか1つからなる群から選択され、
化合物(4a)は、下付き文字nは2であり、R~R3AはHであり、RおよびRのそれぞれはメチルである化合物(4)であり、
化合物(4b)は、下付き文字nは1であり、R~RはHであり、Rはメチルである化合物(4)であり、
化合物(4c)は、下付き文字nは1であり、R~R3AはHであり、RおよびRのそれぞれはメチルである化合物(4)であり、
化合物(4d)は、下付き文字nは3であり、R~R3AはHであり、RおよびRのそれぞれはメチルである化合物(4)であり、
化合物(4e)は、下付き文字nは4であり、R、R1A、2つのR、およびそれぞれのR2AはH、および2つのR、およびR、RおよびRのそれぞれはメチルである化合物(4)である、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
式(9)のジクロロ化合物:
【化9】

(「化合物(9)」)[式中、それぞれの下付き文字nは、独立して、1、2、3、または4であり、基R、R1A、R、R2A、R、R3A、R、およびRのそれぞれは、独立してHまたは(C~C)アルキルであるか、あるいは任意の2つの隣接するR~R基は共に結合して(C~C)アルキレンを形成し、R~Rのうちの残りの基は、Hまたは(C~C)アルキルである]を作製する方法であって、
請求項1の工程(A)~(C)および請求項2の工程(D)にしたがって前記化合物(5)を合成することを含み、
2モル当量の前記化合物(5)を、1モル当量のZrClと、前記化合物(9)を作製するのに十分な反応条件下で接触させることを含む方法。
【請求項8】
前記化合物(9)を、有効量の臭化メチルマグネシウムと、ジメチル化合物(10)(「化合物(10)」)を作製するのに十分な反応条件下で接触させる工程をさらに含み、前記化合物(10)が、化合物(9)のそれぞれのCl原子が化合物(10)においてメチル基(CH)で置き換えられていることを除いて、化合物(9)の構造と同一の構造を有する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
オレフィンを重合する方法であって、請求項2の方法にしたがって前記化合物(7)を合成すること、または請求項3の方法にしたがって前記化合物(8)を合成することと、前記化合物(7)または(8)を、活性剤と接触させて、触媒を作製することと、エチレンおよび/またはアルファオレフィンを、前記触媒と、ポリエチレンホモポリマー、エチレン/アルファオレフィンコポリマー、またはポリ(アルファオレフィン)ホモポリマーを含むポリオレフィンポリマーを作製するのに十分な条件下で接触させることと、を含み、前記方法は、白金、パラジウム、ニッケル、ロジウム、およびルテニウムを不含である、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
置換シクロペンタジエン化合物、およびそれから置換メタロセンを合成すること。
【0002】
導入
メタロセン化合物は、2つの非置換シクロペンタジエニル配位子(Cp、正式には式[Cの陰イオン)に結合される遷移金属原子を含む。置換メタロセン化合物は、1つのCp配位子、およびCpにアイソローバルである1つの置換シクロペンタジエニル配位子(置換Cp)に結合される遷移金属原子、またはCpにアイソローバルである、2つの独立して選択される置換Cpに結合される遷移金属原子を含む。遷移金属は、オレフィンの重合を触媒するのに有用な第3族~第12族のいずれか1つの元素である。遷移金属の例は、チタン、ジルコニウム、およびハフニウムなどの第4族金属である。置換シクロペンタジエニル配位子の例は、メチルシクロペンタジエニルおよび4,5,6,7-テトラヒドロインデニルである。典型的な置換メタロセン化合物は、4,5,6,7-テトラヒドロインデニルシクロペンタジエニルジルコニウムジメチル錯体((4,5,6,7-テトラヒドロインデニル)(シクロペンタジエニル)Zr(CH)である。典型的には、置換メタロセン化合物の合成は、多数の合成工程を伴い、高価な試薬を使用し、ならびに/または水素化触媒および工程(例えば、白金触媒水素化工程)を用いて、インデニル-シクロペンタジエニルジルコニウムジクロリド化合物を4,5,6,7-テトラヒドロインデニル-シクロペンタジエニルジルコニウムジクロリド化合物に変換する。例えば、US2004/0249096A1およびUS5,721,185を参照されたい。
【0003】
Uemichi,Yoshio;Kanoh,Hisao.Kenkyu Hokoku-Asahi Garasu Kogyo Gijutsu Shoreikai,Volume 49,Pages 225-30,1986。CODEN:AGKGAA。ISSN:0365-2599は、白金が、ポリエチレン分解の特に強力な源であることを報告している。Uemichi,Yoshio;Makino,Yutaka;Kanazuka,Takaji,Degradation of polyethylene to aromatic hydrocarbons over metal-supported activated carbon catalysts,Journal of Analytical and Applied Pyrolysis(1989),14(4),331-44。
【0004】
以下も参照されたい。Tabatabaenian,K.;Mamaghani,M.;Neshat,A.;Masjedi,M.Synthesis and Spectroscopic Studies of New Substituted Dinuclearη-4,5,6,7-Tetrahydroindenyl Ruthenium Complexes.Russian Journal of Coordination Chemistry.2003,29,7,501。Austin,R.N.;Clark,T.J.;Dickson,T.E.;Killian,C.M.;Nile,T.A.;Shabacker,D.J.;McPhail,T.A.Synthesis and Properties of Novel Substituted 4,5,6,7-tetrahydroindenes and Selected Metal Complexes.Journal of Organometallic Chemistry.1995,491,11。Conia,J.M.;Leriverend,M.L.Tetrahedron Letters.1968,17.2101(Coniaら)。L.Rand and R.J.Dolinski,J.Org.Chem.,1966,31,3063、およびL.Rand and R.J.Dolinski,J.Org.Chem.,1966,31,4061(包括的に「RandおよびDolinski」)。Yokota,K.;Kohsaka,T.;Ito,K.;Ishihara,N.Consideration of Mechanism of Styrene/Ethylene Copolymerization with Half-Titanocene Catalysts.Journal of Polymer Science.2005,43,5041。Tetsuya,I.らによるJP10316694A号、Brancaccio G.;Lettieri,G.;Monforte,P.;Larizza,A.Farmaco,Edizione Scientifica.1983,9,702-8。Eaton,P.E.;Carlson,G.R.;Lee,J.T.Phosphorus Pentoxide-Methanesulfonic Acid.A Convenient Alternative to Polyphosphoric Acid.J.Org.Chem.1978,38,4071。Paquette,L.A.;Stevens,K.E.,Can.J.Chem.1984,62,2415。Paquette,L.A.;Cheney,D.L.,J.Org.Chem.1989,54,3334、J.Org.Chem.1966,3065。
【0005】
Coniaらは、シクロヘキセンおよびクロトン酸を、ポリリン酸(PPA)の存在下で反応させることで、唯一の生成物として2,3,4,5,6,7-ヘキサヒドロ-3-メチル-1H-インデン-1-オンだけが得られたと報告した。(Coniaらの構造1)。Coniaらは、シクロペンチルクロトネートまたはシクロヘキシルクロトネートを、PPAの存在下で反応させることで、3-メチル-ビシクロ[3.3.0]-2-オクテン-1-オン(40%収率、Coniaらの表1)または2,3,4,5,6,7-ヘキサヒドロ-3-メチル-1H-インデン-1-オン(60%収率、Coniaらの表2)が得られたと報告した。
【0006】
RandおよびDolinskiは、ポリリン酸(PPA)または五酸化リン(PまたはP10)およびPPAの混合物を使用して、シクロヘプテン、シクロヘキセン、またはシクロペンテンと、アクリル酸またはクロトン酸などのアルファ,ベータ-不飽和カルボン酸との反応を触媒して、シクロヘプチルクロトネート、シクロヘキシルクロトネート、またはシクロペンチルクロトネートなどのエステル副生成物を含むか、または不含である反応混合物が得られることを報告している。エステル副生成物が相対的にどれだけ作製されるかは、PPAとの混合物に使用される五酸化リンの量、またはシクロアルケンの量に対するPPAもしくはP/PPA混合物の量に依存すると言われている。
【発明の概要】
【0007】
我々は、シクロペンテノン化合物(「シクロペンテノン」)が、置換シクロペンタジエン化合物の作製に有用な中間体であり、それはメタロセン触媒の作製に有用であり、それは、エチレン、プロピレン、アルファオレフィン、およびブタジエンなどのオレフィンモノマーを重合して、さまざまな産業用途があるポリオレフィンポリマーを作製するのに有用であることを発見した。
【0008】
本発明は、いくつかの実施形態を含む。置換シクロペンタジエン化合物を合成する方法。合成は、五酸化リン/メタンスルホン酸試薬(例えば、Eatonの試薬)の存在下で、アルファ,ベータ-不飽和カルボン酸、シクロアルキルエステル化合物を環化して、置換シクロペンテノン化合物を作製する工程と、置換シクロペンテノン化合物を、置換シクロペンタジエン化合物へ変換する工程とを含む。また、金属-(置換シクロペンタジエニル配位子)錯体を含む置換メタロセン化合物を合成する方法であって、置換シクロペンタジエニル配位子が、置換シクロペンタジエン化合物から作製される方法。この方法で作製される金属-(置換シクロペンタジエニル配位子)錯体および置換メタロセン化合物。金属-(置換シクロペンタジエニル配位子)錯体または置換メタロセン化合物から作製される置換メタロセン触媒。
【0009】
我々は、置換シクロペンタジエン化合物のより短い合成を発見した。この合成は、五酸化リン/メタンスルホン酸試薬を使用して、Coniaらの以前のPPAに基づく合成よりも低温で行うことができ、しかも高収率であり得る。また、この合成は、水素化触媒を使用すること、水素化工程、および水素化触媒濾過工程を回避する。したがって、本発明の金属-(置換シクロペンタジエニル配位子)錯体およびそれから作製される置換メタロセン触媒、ならびにそれで作製されるポリオレフィンは、白金、パラジウム、ニッケル、ロジウム、およびルテニウムなどの(添加される)水素化触媒金属を、有益に不含である。上で論じたように、ポリオレフィン分解の問題は、水素化触媒金属に起因すると文献に報告されており、したがって、本発明の錯体および触媒は、そのようないずれの問題(複数可)も有益に回避する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
概要および要約は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0011】
特定の発明の実施形態を、相互参照を容易にするために番号付きの態様として以下に説明する。追加の実施形態は、本明細書の他の箇所に記載される。
【0012】
態様1.置換シクロペンタジエン化合物を合成する方法であって、(A)式(1)の化合物(「化合物(1)」):
【化1】
[式中、下付き文字nは1、2、3、または4であり、基R1、R1A、R2、R2A、R3、R3A、およびR4のそれぞれは、独立してHもしくは(C~C)アルキルであるか、あるいは任意の2つの隣接するR1~R3基は共に結合して(C~C)アルキレンを形成し、R1~R3Aのうちの残りの基はHまたは(C~C)アルキルである]を、有効量の五酸化リン/メタンスルホン酸試薬(P/HCSOH試薬)と、式(2)の化合物(「化合物(2)」):
【化2】
[式中、下付き文字nおよび基R1~R4は、上記で定義されたとおりである]を作製するのに十分な反応条件下で接触させることであって、ただし、接触工程(A)は、添加されるポリリン酸(PPA)を不含であることを条件とする、接触させることと、(B)化合物(2)を、水素化物官能性還元剤または(C~C)アルキルリチウムのいずれかである金属-R5還元剤と、式(3)の化合物(「化合物(3)」):
【化3】
[式中、下付き文字nおよび基R1~R4は上記で定義された通りであり、R5はそれぞれHまたは(C~C)アルキルである]を作製するのに十分な反応条件下で、接触させることと、(C)化合物(3)を、脱水反応条件と接触させて、式(4)の置換シクロペンタジエン化合物(「化合物(4)」):
【化4】
[式中、下付き文字nおよび基R1~R5は、上記で定義された通りである]を作製することと、を含む方法。金属-R5還元剤が水素化物官能性還元剤である場合、化合物(3)においてR5はHである。金属-R5還元剤が(C~C)アルキルリチウムである場合、化合物(3)においてR5は(C~C)アルキルである。化合物(2)を作製するのに十分な反応条件は、無水環境および-80℃~30℃の温度を含む。工程(A)は、PPA不含であり得る。
【0013】
態様2.金属-(置換シクロペンタジエニル配位子)錯体を含む置換メタロセン化合物を合成する方法であって、態様1の工程(A)~(C)にしたがって化合物(4)を合成することと、(D)化合物(4)を、アルキルリチウムと、式(5)の化合物(「化合物(5)」):
【化5】
を作製するのに十分な反応条件下で接触させることと、(E)化合物(5)を、式(6)の化合物(「化合物(6)」):
【化6】
と、式(7)の化合物(「化合物(7)」):
【化7】
[式中、下付き文字nおよび基R1~R5は、上記で定義された通りであり、金属Mは、元素周期表の第4族の金属であり、R6~R8のそれぞれは、独立してHまたは(C~C)アルキルであり、R9およびR10は、独立してHもしくは(C~C)アルキルであるか、あるいはR9およびR10は共に結合して、(C-C)アルキレンである]を作製するのに十分な反応条件下で接触させることとを含む方法。いくつかの実施形態において、Mは、Ti、Zr、またはHf、あるいは、ZrまたはHf、あるいは、TiまたはZr、あるいは、TiまたはHf、あるいは、Ti、あるいはZr、あるいはHfである。
【0014】
態様3.ジルコノセンジメチル錯体を合成する方法であって、態様2の工程(A)~(E)にしたがって化合物(7)[式中、MはZrである]を合成することと、(F)化合物(7)を、有効量の臭化メチルマグネシウムと、式(8)の化合物(「化合物(8)」):
【化8】
[式中、下付き文字nおよび基R1~R10は、上記で定義された通りである]を作製するのに十分な反応条件下で、接触させることとを含む方法。
【0015】
態様4.P/HCSOH試薬を作製するために使用される、PとHCSOHとの比が、0.05/1~1/1(重量/重量)である、態様1~3のいずれか1つに記載の方法。
【0016】
態様5.P/HCSOH試薬を作製するために使用される、PとHCSOHとの比が、0.1/1(重量/重量)である、態様1~4のいずれか1つに記載の方法。Eatonの試薬として知られている。
【0017】
態様6.化合物(4)は、化合物(4a)~(4e)のいずれか1つからなる群から選択され、化合物(4a)は、下付き文字nは2であり、R1~R3AはHであり、R4およびR5のそれぞれはメチルである化合物(4)であり、化合物(4b)は、下付き文字nは1であり、R1~R4はHであり、R5はメチルである化合物(4)であり、化合物(4c)は、下付き文字nは1であり、R1~R3AはHであり、R4およびR5のそれぞれはメチルである化合物(4)であり、化合物(4d)は、下付き文字nは3であり、R1~R3AはHであり、R4およびR5のそれぞれはメチルである化合物(4)であり、化合物(4e)は、下付き文字nは4であり、R1、R1A、2つのR2、およびそれぞれのR2AはHであり、および2つのR2、およびR3、R4およびR5のそれぞれはメチルである化合物(4)である、態様1~5のいずれか1つに記載の方法。化合物(4a)~4(e)のいずれか1つを使用して、化合物(5)の対応する実施形態(化合物(5a)~(5e)のいずれか1つとしてそれぞれ指定される)を作製する、態様1~5のいずれか1つに記載の方法。化合物(5a)~(5e)および化合物(6)のいずれか1つを使用して、化合物(7)の対応する実施形態(化合物(7a)~(7e)のいずれか1つとしてそれぞれ指定される)を作製する、態様1~5のいずれか1つに記載の方法。化合物(7a)~(7e)のいずれか1つを使用して、化合物(8)の対応する実施形態(化合物(8a)~(8e)のいずれか1つとしてそれぞれ指定される)を作製する、態様3の方法。化合物(7)は化合物(7f)および(7g):
【化9】
のいずれか1つである、態様2または3の方法。
【0018】
態様7.式(9)のジクロロ化合物:
【化10】
(「化合物(9)」)[式中、それぞれの下付き文字nは、独立して、1、2、3、または4であり、基R1、R1A、R2、R2A、R3、R3A、R4、およびR5のそれぞれは、独立してHもしくは(C~C)アルキルであるか、あるいは任意の2つの隣接するR1~R3基は共に結合して(C~C)アルキレンを形成し、R1~R5のうちの残りの基はHまたは(C~C)アルキルである]を作製する方法であって、2モル当量の化合物(5)を、1モル当量のZrClと、化合物(9)を作製するのに十分な反応条件下で、接触させることを含む方法。
【0019】
態様8.化合物(9)を、有効量の臭化メチルマグネシウムと、ジメチル化合物(10)(「化合物(10)」)を作製するのに十分な反応条件下で接触させる工程をさらに含み、化合物(10)が、化合物(9)のそれぞれのCl原子が化合物(10)においてメチル基(CH)で置き換えられていることを除いて、化合物(9)の構造と同一の構造を有する、態様7の方法。
【0020】
態様9.態様7の方法によって作製される式(9)の化合物または態様8の方法によって作製される化合物(10)。いくつかの態様において、化合物(9)は、化合物(9a)~(9e)のいずれか1つであり、化合物(10)は、化合物(10a)~(10e)のいずれか1つであり、化合物(9a)および(10a)において、それぞれの下付き文字nは2であり、R1~R3AはHであり、R4およびR5のそれぞれはメチルであり、化合物(9b)および(10b)において、それぞれの下付き文字nは1であり、R1~R4はHであり、R5はメチルであり、化合物(9c)および(10c)において、それぞれの下付き文字nは1であり、R1~R3AはHであり、R4およびR5のそれぞれはメチルであり、化合物(9d)および(10d)において、それぞれの下付き文字nは3であり、R1~R3AはHであり、R4およびR5のそれぞれはメチルであり、化合物(9e)および(10e)において、それぞれの下付き文字nは4であり、R1、R1A、2つのR2、およびそれぞれのR2AはHであり、および2つのR2、およびR3、R4およびR5のそれぞれはメチルである。
【0021】
態様10.オレフィンを重合する方法であって、態様2の方法にしたがって化合物(7)を合成すること、または態様3の方法にしたがって化合物(8)を合成することと、化合物(7)または(8)を活性剤と接触させて触媒を作製することと、エチレンおよび/またはアルファオレフィンを、触媒と、ポリエチレンホモポリマー、エチレン/アルファオレフィンコポリマー、またはポリ(アルファオレフィン)ホモポリマーを含むポリオレフィンポリマーを作製するのに十分な条件下で接触させることとを含み、この方法は、白金、パラジウム、ニッケル、ロジウム、およびルテニウムを不含である、方法。
【0022】
態様11.態様10の方法によって作製され、白金、パラジウム、ニッケル、ロジウム、およびルテニウムを不含であるポリオレフィンポリマー。
【0023】
「不含」という用語は、検出可能な存在を含まないことを意味する。
【0024】
下付き文字nおよび基R1~R4は、化合物(1)について定義されているため、それらは化合物(2)~(8)について定義され得る。基R5は、金属-R5還元剤について定義されているため、化合物(3)~(8)について定義され得る。基R6~R10は、化合物(6)について定義されているため、化合物(7)および(8)について定義され得る。
【0025】
いくつかの態様において、化合物(1)~(8)のいずれか1つ、あるいはそれぞれは、以下の限定(i)~(xxi)のいずれか1つによって特徴付けられる。(i)式中、R1~R3の少なくとも1つは(C-C)アルキルであり、またはR4はHである。(ii)式中、R1~R4のそれぞれはHである。(iii)式中、R1~R3のそれぞれはHであり、R4はメチルである。(iv)式中、化合物(1)~(8)において、R1およびR2のそれぞれはHであり、R3およびR4のそれぞれはメチルである。(v)式中、R1および/またはR2はメチルであり、R3はHである。(vi)式中、R1はメチルであり、R2は1-メチルエチル(すなわち、イソプロピル)であり、R3はHである。(vii)式中、R1は1-メチルエチル(すなわち、イソプロピル)であり、R2はメチルであり、R3はHである。(viii)式中、R1およびR2は独立して(C~C)アルキルであり、R3はHであり、R1に結合される炭素原子の立体化学は(R)であり、R2に結合される炭素原子の立体化学は(S)である。(ix)式中、R1およびR2は独立して(C~C)アルキルであり、R3はHであり、R1に結合される炭素原子の立体化学は(S)であり、R2に結合される炭素原子の立体化学は(R)である。(x)(vi)および(viii)の両方。(xi)(vi)および(ix)の両方。(xii)(vii)および(viii)の両方。(xiii)(vii)および(ix)の両方。(xiv)式中、R5はHである。(xv)式中、R5はメチルである。(xvi)(i)および(xiv)または(xv)の両方。(xvii)(ii)および(xiv)または(xv)の両方。(xviii)(iii)および(xiv)または(xv)の両方。(xix)(iv)および(xiv)または(xv)の両方。(xx)(v)および(xiv)または(xv)の両方。(xxi)任意の2つの隣接するR1~R3基は共に結合して(C~C)アルキレンを形成し、R1~R3のうちの残りの基はHまたは(C~C)アルキルである。
【0026】
化合物(1)は、商業的供給業者から入手し得、またはアルファ,ベータ不飽和カルボン酸、シクロアルキルエステルを作製するのに適した出発材料から合成し得る。市販の化合物(1)の例は、(1a)(2E)-2-ブテン酸、シクロヘキシルエステル、(1b)(2E)-2-ブテン酸、シクロペンチルエステル(CAS 1195328-04-1)、(1c)(2E)-2-ブテン酸、シクロヘプチルエステル(CAS 10555-39-2)、および(1d)プロペン酸、シクロペンチルエステル(CAS16868-13-6)である。(2E)-2-ブテン酸は、(E)-クロトン酸としても知られている。本明細書で特に明記しない限り、「クロトン酸」は、(2E)-2-ブテン酸を意味する。いくつかの実施形態において、化合物(1)は、化合物(1a)~(1d)のいずれか1つであり、あるいは、化合物(1)は、化合物(1a)~(1d)のいずれか3つからなる群から選択され、あるいは、化合物(1)は、化合物(1a)、あるいは化合物(1b)、あるいは化合物(1c)、あるいは化合物(1d)である。
【0027】
化合物(1)は、式(a):
【化11】
[式中、下付き文字nおよび基R1~R3は、化合物(1)について定義された通りである]の対応するシクロアルカノールを、式(b):
【化12】
[式中、R4は、化合物(1)について定義された通りである]のアルファ,ベータ-不飽和カルボン酸と、脱水条件下で反応させることによって容易に合成し得る。適切な脱水条件には、還流トルエン、パラトルエンスルホン酸(pTsOH)などのプロトン酸、および生成された水を除去するためのDean-Starkトラップ、または隔離するための乾燥剤が含まれる。乾燥剤の例は、3オングストロームモレキュラーシーブおよび無水硫酸ナトリウムである。対応するアルコールおよびカルボン酸からカルボン酸エステルを合成するための方法および条件は、よく知られており、有用である。化合物(1)はまた、式(a)のシクロアルカノールを、対応するアルファ,ベータ-不飽和カルボン酸無水物と反応させることによって合成し得、これは、2モル当量の化合物(b)を脱水することによって作製し得る。
【0028】
シクロアルカノール化合物(a)は、商業的供給業者から入手し得、またはアルコールを作製する周知の方法によって合成し得る。下付き文字nが1である市販の化合物(a)の例は、(a1)シクロペンタノール(CAS 96-41-3)、(a2)3-メチル-シクロペンタノール(CAS 18729-48-1)、(a3)3,4-ジメチル-シクロペンタノール(CAS 73316-51-5)、および(a4)3,3-ジメチル-シクロペンタノール(CAS 60670-47-5)である。下付き文字nが2である市販の化合物(a)の例は、(a5)シクロヘキサノール(CAS108-93-0)、(a6)2-メチルシクロヘキサノール(立体異性体の混合物または単一のエナンチオマー)、(a7)4-メチルシクロヘキサノール(CAS 589-91-3)、(a8)2,5-ジメチルシクロヘキサノール(CAS 3809-32-3)、(a9)5-メチル-2-(1-メチルエチル)-シクロヘキサノール(例えば、立体異性体の混合物として、または(1R、2S、5R)-メントールなどのその任意の1つのエナンチオマーとして)である。下付き文字nが3である市販の化合物(a)の例は、(a10)シクロヘプタノール(CAS 502-41-0)、(a11)4-メチルシクロヘプタノール(CAS 90200-61-6)、および(a12)4,4-ジメチルシクロヘプタノール(CAS 35099-84-4)である。下付き文字nが4である市販の化合物(a)の例は、(a13)シクロオクタノール(CAS 696-71-9)、および(a14)3,5,7-トリメチルシクロオクタノール(CAS 1823711-29-0)である。いくつかの実施形態において、化合物(1)は、化合物(a1)~(a14)のいずれか1つ、あるいは、化合物(a1)~(a14)の任意の13個からなる群から選択される化合物、あるいは下付き文字nが1、2、または3である化合物(1)、あるいは、下付き文字nが1または2である化合物(1)、あるいは、下付き文字nが1である化合物(1)、あるいは、下付き文字nが2である化合物(1)、あるいは、下付き文字nが3または4である化合物(1)、あるいは、下付き文字nが3である化合物(1)、あるいは、下付き文字nが4である化合物(1)から作製され、R1~R3を含むアルコール誘導部分が対応する。
【0029】
アルファ,ベータ-不飽和カルボン酸化合物(b)は、商業的供給業者から入手し得、またはカルボン酸を作製する周知の方法によって合成し得る。市販の化合物(b)の例は、(b1)アクリル酸(式中、R4がHである化合物(b))、(b2)クロトン酸(式中、R4がメチルである化合物(b))、(b3)2-ペンテン酸(式中、R4がエチルである化合物(b))、および(b4)2-ヘキセン酸(式中、R4がプロピルである化合物(b))である。いくつかの実施形態において、化合物(1)は、化合物(b1)~(b4)のいずれか1つ、あるいは化合物(b1)~(b4)のいずれか3つからなる群から選択される化合物、あるいは、化合物(b1)または(b2)、あるいは、化合物(b1)、あるいは、化合物(b2)、あるいは、化合物(b3)または(b4)、あるいは、化合物(b3)、あるいは、化合物(b4)から作製され、R4を含むカルボン酸由来部分が対応する。
【0030】
活性剤(化合物(7)または(8)を活性化して触媒を形成するため)。助触媒としても知られている。任意の金属含有化合物、材料、または化合物および/もしくは物質の組み合わせは、支持されていないかまたは支持材料上に支持されているかを問わず、化合物(8)を活性化して触媒および活性剤種を得ることができる。活性化は、例えば、化合物(8)のZrから少なくとも1つの脱離基(例えば、少なくとも1つのメチル)を抽出して、触媒を得ることを含み得る。活性剤は、ルイス酸、非配位性イオン性活性剤、またはイオン化活性剤、またはルイス塩基、アルキルアルミニウム、またはアルキルアルミノキサンであり得る。アルキルアルミニウムは、トリアルキルアルミニウム、ハロゲン化アルキルアルミニウム、またはアルキルアルミニウムアルコキシド(ジエチルアルミニウムエトキシド)であり得る。トリアルキルアルミニウムは、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム(「TEAl」)、トリプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムなどであり得る。ハロゲン化アルキルアルミニウムは、塩化ジエチルアルミニウムであり得る。アルキルアルミノキサンは、メチルアルミノキサン(MAO)、エチルアルミノキサン、またはイソブチルアルミノキサンであり得る。活性剤は、修飾メチルアルミノキサン(MMAO)であるMAOであり得る。対応する活性剤種は、それぞれ、ルイス酸、非配位性イオン活性剤、イオン化活性剤、ルイス塩基、アルキルアルミニウム、またはアルキルアルミノキサンの誘導体であり得る。活性剤種は、それが由来する活性剤とは異なる構造または組成を有し得、活性化反応の副生成物であり得る。活性剤の金属は、通常、ジルコニウムなどの第4族の金属とは異なる。活性剤の金属含有量と、化合物(7)または(8)のジルコニウム含有量とのモル比は、1000:1~0.5:1、あるいは300:1~1:1、あるいは150:1~1:1、あるいは、100.0:1~1:1であり得る。
【0031】
アルキルとは、直鎖(1つ以上の炭素原子)、分岐鎖(3つ以上の炭素原子の場合)、または環状(3つ以上の炭素原子の場合)である非置換一価飽和非環式炭化水素を意味する。それぞれの(C~C)アルキルは独立してメチル、エチル、プロピル、1-メチルエチル、ブチル、1-メチルプロピル、2-メチルプロピル、または1,1-ジメチルエチルである。あるいは、それぞれの(C~C)アルキルは独立して(C~C)アルキル、あるいは、(C~C)アルキル、あるいは、(C~C)アルキル、あるいは、(C~C)アルキル、あるいは、(C-C)アルキル、あるいは、メチルまたは(C)アルキルである。いくつかの態様において、それぞれの(C~C)アルキルは独立して(C~C)アルキルであり、それぞれの(C~C)アルキルは独立してメチル、エチル、プロピル、または1-メチルエチル、あるいは、メチル、プロピル、または1-メチルエチル、あるいはメチル、あるいはエチル、あるいは、プロピル、あるいは、1-メチルエチルである。置換アルキルは、1つ以上の水素原子が非置換アルキル、ハロゲン、またはアルキルカルボン酸エステルなどの置換基によって形式的に置換されていることを除いて、上記で定義されたアルキルである。
【0032】
アルキルリチウムは、式アルキル-Liの化合物である。アルキルリチウムの例は、メチルリチウム、エチルリチウム、プロピルリチウム、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、t-ブチルリチウム、およびペンチルリチウムである。(C~C)アルキルリチウムは、アルキルがメチル、エチル、プロピル、1-メチルエチル、ブチル、1-メチルプロピル、2-メチルプロピル(sec-ブチル)、または1,1-ジメチルエチル(t-ブチル)であるアルキルリチウムである。
【0033】
アルキレンは、直鎖(1つ以上の炭素原子)、分岐鎖(3つ以上の炭素原子の場合)、または環状(3つ以上の炭素原子の場合)の非置換二価飽和非環式炭化水素である。それぞれの(C~C)アルキレンは、独立してメチレン(CH)、エチレン(CHCH)、プロピレン(CHCHCH)、1-メチルエチレン(CH(CH)CH)、ブチレン((CH)、1-メチルプロピレン(CH(CH)CHCH)、2-メチルプロピレン(CHCH(CH)CH)、または1,1-ジメチルエチレン(C(CHCHである。置換アルキレンは、1つ以上の水素原子が非置換アルキル、ハロゲン、またはアルキルカルボン酸エステルなどの置換基によって形式的に置換されていることを除いて、上記で定義されたアルキレンである。
【0034】
化合物は、分子または分子の集合体を意味する。
【0035】
脱水反応条件には、化合物(3)からの水の損失率を高めるのに効果的な温度および試薬が含まれる。このような試薬の例は、1モル(M)以上の塩酸(水性HCl)またはジエチルエーテル、エタノール、テトラヒドロフラン、もしくはトルエンなどの有機溶媒中の無水HClである。塩酸は、1M~8M、あるいは2M~6Mであり得る。
【0036】
有効量とは、検出可能な量の目的の生成物(例えば、場合によっては、化合物(2)~(8)のいずれか1つ)の作製を可能にするのに十分な量である。リン酸および/またはスルホン酸試薬の有効量は、検出可能な量の化合物(2)の作製を可能にするのに十分な試薬の量である。検出可能な量は、1H-核磁気共鳴(1H-NMR)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC、既知の標準に対する)、ガスクロマトグラフィー(GC、既知の標準に対する)、または質量分析などの適切な分析方法、通常1H-NMRによって特徴付けることができる。工程(A)で使用される五酸化リン/メタンスルホン酸試薬の有効量は、その組成、反応条件、およびコストに応じて変化し得る。当業者は、(1)および95重量%の五酸化リン/メタンスルホン酸試薬の初期反応混合物から開始し、その後、反応条件下で最適な結果が得られるまで、より低い重量%の五酸化リン/メタンスルホン酸試薬を含む反応混合物を系統的に試みることによって、その最適有効量を決定し得る。有効量は、(1)および五酸化リン/メタンスルホン酸試薬の総重量に基づいて、50~95重量%、あるいは50~80重量%であり得る。あるいは、P/HCSOH試薬の有効量は、化合物(1)のモル数に対して1~10モル当量(モル当量)、あるいは1~5モル当量、あるいは1~3モル当量であり得る。例えば、1.0モルの化合物(1)が接触工程(A)で使用される場合、P/HCSOH試薬の有効量は、1~10モル、あるいは1~5モル、あるいは1~3モルであり得る。
【0037】
水素化物官能性還元剤は、ケトンのオキソ基に添加して第三級アルコールを得ることができる金属-水素結合を有する化合物を意味する。適切な金属には、AlおよびBが含まれる。適切な水素化物官能性還元剤は、水素化アルミニウムリチウム(LiAlH)、水素化ジイソブチルアルミニウム(i-BuAlH)、および水素化ホウ素ナトリウム(NaBH)である。
【0038】
メタンスルホン酸は式HCSOHの化合物であり、CAS番号75-75-2を有し、商業的供給業者から広く入手可能である。
【0039】
五酸化リンは、式P(P10とも表記)の化合物であり、CAS番号1314-56-3を有し、商業的供給業者から広く入手可能である。
【0040】
五酸化リンおよびメタンスルホン酸試薬(「P/HCSOH試薬」、P10/HCSOH試薬またはP/MeSOH試薬とも表記)は、P(P10とも表記)およびHCSOHの物理的ブレンドまたはその反応生成物である。試薬中のP/HCSOHの重量/重量比は、0.05/1~1/1、あるいは0.1/1~1/1、あるいは0.15/1~1/1、あるいは0.2/1~1/1、あるいは0.05/1~0.14/1、あるいは0.1/1であり得る。0.1/1(重量/重量)P/HCSOH試薬は市販されており、Eatonの試薬と呼ばれ得る。PおよびCHSOHの試薬は、接触工程(A)の前または間など、化合物(1)の存在下でその場で形成され得る。あるいは、PおよびCHSOHの試薬は、接触工程(A)の前に(化合物(1)の非存在下で)予備形成され得る。P/CHSOH試薬を、接触工程(A)の前に予備形成し、得られた予備形成試薬を、接触工程(A)の実施形態での後での使用のために保存することは便利である。いくつかの態様において、この方法は、(i)接触工程(A)の前に、化合物(1)の非存在下で、P/HCSOH試薬を予備形成する工程、または(ii)接触工程が、化合物(1)の存在下で五酸化リンおよびメタンスルホン酸を共に接触させて、P/HCSOH試薬をその場で形成することをさらに含むこと、である限定(i)または(ii)をさらに含む。
【0041】
ポリリン酸またはPPAは、CAS番号8017-16-1を有し、一般に、式HO-[P(=O)(OH)]-Hの化合物であり、下付き文字nは重合度を示す。PPAは、酸素原子およびリン原子で構成され、硫黄原子および炭素原子を不含である。
【0042】
いくつかの態様において、本発明の方法で使用されるそれぞれの反応物、試薬、溶媒、または他の材料、およびそれらのそれぞれの生成物は、Pt、Ni、Pd、Rh、およびRuを不含である。
【0043】
作製するのに十分な反応条件下には、反応温度、反応圧力、反応雰囲気、もしあれば反応溶媒、反応物および試薬の濃度、反応物の相互および試薬に対するモル比、ならびに中和化合物の非存在が含まれる。反応圧力は、オレフィン重合反応のためにはより高いことを除き、通常は室圧(例えば、101キロパスカル(kPa)である。必要に応じて、反応(例えば、工程(A)~(F))を、無水分子窒素ガス雰囲気下で、またはSchlenckライン技術および条件を使用してドラフト内で実行し得る。
【0044】
作製するのに十分な反応条件下での反応温度は、工程ごとに変化し得る。例えば、工程(A)(環化)において、化合物(2)を作製するのに十分な反応条件下は、-78℃~30℃、あるいは-30℃~25℃、あるいは、0℃~25℃、あるいは-5℃~5℃を含み得る。工程(B)(水素化物還元またはアルキルリチウム添加)、(D)(シクロペンタジエンの脱プロトン化)、(E)(置換メタロセン化合物を形成すること)、および(F)(ジルコノセンジメチルを形成すること)において、反応温度は、独立して、-30℃~110℃、あるいは0℃~50℃、あるいは10℃~30℃であり得る。工程(C)(脱水)において、反応温度は、0℃~120℃、あるいは20℃~110℃、あるいは30℃~100℃であり得る。
【0045】
作製に十分な反応条件下で使用される場合、溶媒の使用の有無、および溶媒の種類は、工程ごとに変化し得る。工程(A)は、溶媒が不含であっても、または溶媒を用いてもよい。メタンスルホン酸の量が反応物を可溶化するのに十分である場合、溶媒を省略してもよい。あるいは、極性非プロトン性溶媒を用いてもよい。極性非プロトン性溶媒を、スルホラン、1,2-ジメトキシエタン、1-メトキシ-2-(2-メトキシエトキシ)エタン、およびそれらの任意の2つ以上の混合物から選択し得る。用いられる極性非プロトン性溶媒の量は、特に重要ではない。前述の極性非プロトン性溶媒は、化合物(1)および/またはP/HCSOH試薬を可溶化するのに役立ち得る。用いられる溶媒の量は、その中の0.5モル(M)~5M、または1M~2.5MのP/HCSOH試薬である出発溶液を調製するのに十分であり得る。極性非プロトン性溶媒は、接触工程(A)が、そのための前述の範囲内のより低い温度で実行されることを可能にし得る。プロトン性溶媒は、強力な脱水剤であるP/HCSOH試薬と望ましくない反応をすることが予想されるため、極性非プロトン性溶媒を、P/HCSOH試薬に使用する。極性非プロトン性溶媒は、化合物(1)およびP/HCSOH試薬を共可溶化するために、中間極性のものであり得る。極性非プロトン性溶媒は、-25℃~25℃、あるいは25℃、あるいは10℃、あるいは0℃、あるいは-10℃、あるいは-25℃で、化合物(1)の均一な溶液を生成することが可能であり得る。P/HCSOH試薬の存在下で化合物(1)の反応を成功させるために、均一な溶液は必要ではない。工程(B)(水素化物還元またはアルキルリチウム添加)、(D)(シクロペンタジエンの脱プロトン化)、(E)(置換メタロセン化合物を形成すること)、および(F)(ジルコノセンジメチルを形成すること)において、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、またはジオキサンなどのアルキルエーテルなどの無水の非極性非プロトン性溶媒を使用し得る。工程(B)において、水素化物官能性還元剤が使用され、水素化アルミニウムリチウムまたは水素化ジイソブチルアルミニウムである場合、無水の非極性溶媒を使用する。工程(B)において、水素化物官能性還元剤が使用され、水素化ホウ素ナトリウムである場合、メタノール、エタノール、2-プロパノール、または1-メトキシ-2-(2-メトキシエトキシ)エタンなどの極性プロトン性溶媒を使用し得る。アルキルリチウム試薬を、ヘキサン類、ヘキサン、またはヘプタンなどの無水アルカン溶媒に溶解し得る。臭化メチルマグネシウムなどのグリニャール試薬は、ジアルキルエーテルなどのアルキルエーテルに溶解し得る。
【0046】
作製するのに十分な反応条件下に含まれる反応雰囲気は、工程(A)(環化)については無水分子窒素ガスまたはSchlenckライン条件であり得、工程(C)(脱水)については空気であり得る。工程(B)(水素化物還元またはアルキルリチウム添加)、(D)(シクロペンタジエンの脱プロトン化)、(E)(置換メタロセン化合物を形成すること)、および(F)(ジルコノセンジメチルを形成すること)のための反応雰囲気は、無水窒素、アルゴン、もしくはヘリウムガスなどの不活性ガス、またはそれらの任意の2つ以上の混合物であり得る。
【0047】
作製するのに十分な反応条件下に含まれる反応物および試薬の反応濃度は、独立して、0.1~1.4M、あるいは0.25~1モル(M)、あるいは0.4~1Mの範囲であり得る。
【0048】
作製するのに十分な反応条件下に含まれる、反応物の相互および試薬に対するモル比は、使用される反応物および試薬に応じて、理論反応化学量論の0.25倍~1.5倍、あるいは理論反応化学量論の0.99倍~1.2倍、あるいは理論反応化学量論の1.0~1.1倍に変化し得る。工程(B)(水素化物還元またはアルキルリチウム添加)において、水素化物官能性還元剤と化合物(2)との理論反応化学量論は、1.0化合物(2)に対して0.25 LiAlH4またはNaBH4、および1.0化合物(2)に対して0.5 i-Bu2AlH、および1.0化合物(2)に対して1.0 (C~C)アルキルリチウムである。工程(C)(脱水)の理論反応化学量論は、通常1:1までの酸触媒中で触媒作用を示す。工程(D)(シクロペンタジエンの脱プロトン化)または(E)(置換メタロセン化合物を形成すること)のそれぞれの理論反応化学量論は、通常1:1である。工程(F)(ジルコノセンジメチルを形成すること)の理論反応化学量論は、1.0化合物(7)に対して2.0 臭化メチルマグネシウムである。
【0049】
中和剤は、作製するのに十分な反応条件下では含まれるべきではない。工程(A)(環化)において、中和剤は、P/HCSOH試薬の酸性度を中和するか、または別様にそれを無効にする量の塩基性化合物であり得る。例えば、工程(A)で使用される化合物(1)の純度は、少なくとも95重量%、あるいは少なくとも98重量%、あるいは少なくとも99重量%、あるいは少なくとも99.5重量%であり得る。工程(B)(水素化物還元またはアルキルリチウム添加)、(D)(シクロペンタジエンの脱プロトン化)、(E)(置換メタロセン化合物を形成すること)、および(F)(ジルコノセンジメチルを形成すること)において、中和剤は、プロトン性化合物(例えば、NH官能性、OH官能性、および/またはSH官能性化合物)または酸化剤であろう。NH官能性化合物の例は、第1級および第2級のアミンおよびアミドである。OH官能性化合物の例は、アルコール、カルボン酸、およびオキシムである。SH官能性化合物の例は、チオール(メルカプタン)である。NHおよびOH官能性化合物の例は、第1級および第2級のアミノアルコールおよびアミノ酸である。工程(C)(脱水)において、中和剤は、添加される水(脱水工程の副生成物として形成される水を数えない)またはそこで使用される酸脱水触媒を中和するであろうある量の塩基性化合物であろう。工程(b)で使用される化合物(2)、工程(C)で使用される化合物(3)、工程(D)で使用される化合物(4)、工程(D)で使用される化合物(6)、および工程(F)で使用される化合物(7)の純度は、独立して、少なくとも95重量%、あるいは少なくとも98重量%、あるいは少なくとも99重量%、あるいは少なくとも99.5重量%であり得る。
【0050】
化合物は、そのすべての同位体および天然存在および同位体濃縮型を含む。濃縮型は、医学的用途または偽造防止用途を有し得る。
【0051】
いくつかの態様において、本明細書の化合物、組成物、配合物、混合物、または反応生成物のいずれかは、H、Li、Be、B、C、N、O、F、Na、Mg、Al、Si、P、S、Cl、K、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、As、Se、Br、Rb、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Te、I、Cs、Ba、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Tl、Pb、Bi、ランタノイド、およびアクチノイドからなる群から選択される化学元素のうちのいずれか1つを不含であり得るが、化合物、組成物、配合物、混合物、または反応生成物に必要な化学元素(例えば、ポリオレフィンに必要なCおよびH、またはアルコールに必要なC、H、およびO)は除外されない。
【0052】
別途指示されない限り、以下を適用する。あるいは、別個の実施形態に先行する。ASTMとは、標準化機構であるASTM International(West Conshohocken,Pennsylvania,USA)を意味する。いずれの比較例も例示の目的でのみ使用されており、先行技術ではない。不含または欠乏は、完全に存在しないこと、あるいは検出不可能であることを意味する。~し得る(may)は、必須ではなく、選択を許容する。機能的は、機能的に可能または有効であることを意味する。任意選択(任意選択的に)は、存在しない(除外される)か、あるいは存在する(含まれる)ことを意味する。元素の周期表は、2013年5月1日付けのIUPAC版である。特性は、標準試験方法および測定条件(例えば、粘度:23℃および101.3kPa)を使用して測定される。範囲は、端点、部分範囲、およびそれらの中に包含される整数値および/または小数値を含むが、整数の範囲が小数値を含まない場合を除く。室温:23℃±1℃。化合物に言及する場合、置換されるとは、置換ごとに、水素の代わりに、1つ以上の置換基を有することを意味する。構造と化合物の名前との間に矛盾がある場合は、構造が優先される。
【実施例
【0053】
本明細書に他に記載がない限り、特徴付けのために以下の調製方法を使用する。指示される場合、グローブボックス内の乾燥窒素雰囲気下で、合成を行う。乾燥窒素流下で冷却されたオーブン乾燥ガラス器具内で、乾燥窒素雰囲気下で無水条件を必要とする反応を実行する。無水トルエン、ヘキサン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、および1,2-ジメトキシエタンは、Sigma-Aldrichからのものである。窒素を満たしたグローブボックス内で実行される実験に使用される溶媒を、活性化4オングストローム(Å)モレキュラーシーブ上で保管することによって、さらに乾燥させる。シクロペンタジエニルジルコニウム(IV)クロリド(MはZrであり、R6-R10はHである化合物(6)である化合物(6a)「(Cp)ZrCl」)を、Boulder Scientificから購入し、受け取ったままの状態で使用する。他のすべての試薬を、Sigma-Aldrichから購入し、受け取ったままの状態で使用する。例えば、0.1/1(重量/重量)P/MeSOH試薬を、Sigma-Aldrich CAS番号39394-84-8から購入し得る。
【0054】
H-NMR(プロトン核磁気共鳴分光法)の化学シフトデータを、重水素化溶媒中の残留プロトンを参照として使用して、テトラメチルシラン(TMS)に対する100万分の1(ppm)のダウンフィールド、δスケールで報告する。CDClで測定されるH-NMR化学シフトデータは7.26ppm、ベンゼン-d6(C)で測定されるデータは7.16ppm、テトラヒドロフラン-d8(THF-d8)で測定されるデータは3.58ppmを基準とする。H-NMR化学シフトデータを、ppm単位の化学シフト(多重度、ヘルツ(Hz)単位の結合定数(複数可)、および積分値)の形式で報告する。多重度を、s(シングレット)、d(ダブレット)、t(トリプレット)、q(カルテット)、pent(ペンテット)、m(マルチプレット)、およびbr(ブロード)と略記する。
【0055】
GC/MS(EI)は、ガスクロマトグラフィー(電子イオン化)を意味する。
【0056】
調製1:(1a)(2E)-2-ブテン酸、シクロヘキシルエステル
【化13】
の合成。ドラフト内で、シクロヘキサノール(30ミリリットル(mL)、283.9ミリモル(mmol))、クロトン酸(25.9g、300.98mmol)、p-トルエンスルホン酸(1.08g、5.68mmol)、および40mLのトルエンを、250mLの丸底フラスコに入れた。フラスコには、Dean-Starkトラップおよび還流冷却器を装備した。得られた反応混合物を加熱して還流させ、生成された水を共沸的に除去した。18時間還流させた後、反応混合物を周囲温度に冷却し、水(55mL)でクエンチした。得られた有機層を分離し、飽和NaHCO水溶液(2×40mL)、次いで塩水(30mL)で洗浄し、次いで硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過した。溶媒を減圧下で除去して、化合物(1a)を淡黄色の液体(40.6g)として85%の収率で得た。HNMR(400MHz,クロロホルム-d)δ6.93(dq,1H),5.81(dq,1H),4.84-4.73(m,1H),1.92-1.80(m,4H),1.77-1.64(m,3H),1.59-1.12(m,6H)、およびGC/MS(EI)(質量検出値=168、87、69)は、(2E)-2-ブテン酸、シクロヘキシルエステルと一致した。
【0057】
調製2(プロフェティック):(1b)(2E)-2-ブテン酸、3,5,7-トリメチルシクロオクチルエステル(1e)の合成。シクロヘキサノールの代わりに284mmolの(a12)3,5,7-トリメチルシクロオクタノール(CAS 1823711-29-0)を使用することを除いて、調製1を反復して、(2E)-2-ブテン酸、3,5,7-トリメチルシクロオクチルエステル(1b)を得る。
【0058】
調製3:(2E)-2-ブテン酸、シクロペンチルエステルの合成。
【化14】
ドラフト内で、Dean-Starkトラップおよび還流冷却器を備えた50mLの丸底フラスコに、シクロペンタノール(2.1mL、23.2mmol)、クロトン酸(2.11g、24.6mmol)、p-トルエンスルホン酸(0.088g、0.46mmol)、および5mLのトルエンを入れる。得られた混合物を加熱して還流させ、生成された水を共沸的に除去する。18時間還流させた後、反応混合物を周囲温度に冷却し、水(10mL)でクエンチする。得られた有機層を分離し、飽和NaHCO水溶液(2x10mL)、次いで塩水(20mL)で洗浄し、次いで硫酸マグネシウムで乾燥させる。濾過し、減圧下で濾液から溶媒を除去して、2.8g(78%収率)の化合物(1c)を無色の液体として得る。HNMRおよびGC/MS(質量検出値=154)は、(2E)-2-ブテン酸、シクロペンチルエステルと一致した。化合物(1c)は、GC/MS(EI)154(質量),87,69.HNMR(400MHz,クロロホルム-d)δ6.91(dq,1H),5.79(dq,1H),5.18(tt,1H),1.94-1.79(m,5H),1.83-1.63(m,4H),1.67-1.48(m,2H)によって特徴付けられる。
【0059】
発明例1:化合物(2a):2,3,4,5,6,7-ヘキサヒドロ-3-メチル-1H-インデン-1-オン
【化15】
(下付き文字nは2であり、R1~R3はHであり、R4はメチルである化合物(2))の合成。ドラフト内で、攪拌棒を備えた250mLの丸底フラスコ内の窒素雰囲気下で、化合物(1a)(2E)-2-ブテン酸、シクロヘキシルエステル(3g、17.8mmol)を添加した。フラスコ内のエステルを0℃に冷却した。次いで、P/HCSOH試薬(0.1/1))(8.49mL、53.5mmol)を0℃で滴下した。得られた反応混合物を撹拌しながら周囲温度(23℃)に温め、周囲温度で72時間撹拌を続けた。得られた粗生成物を20mLの水で希釈し、次いで、泡立ちがおさまるまで固体NaHCOを少しずつ加えて、pH8~pH9を有するクエンチされた混合物を得た。分液漏斗でクエンチされた混合物の水層および有機層を分離した。水層をジエチルエーテルで3回抽出した(3×20mL)。有機層を3つの抽出物と合わせ、その合わせたものを塩水(30mL)で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、そして濾過した。真空中で溶媒を除去して、2.45gの化合物(2a)を薄茶色の油生成物として得た(91.4%の収率)。HNMR(400MHz,クロロホルム-d)δ2.77-2.67(m,1H),2.61(ddd,1H),2.48-2.34(m,1H),2.32-2.03(m,3H),2.03-1.47(m,5H),1.14(d,3H)は、(2a)2,3,4,5,6,7-ヘキサヒドロ-3-メチル-1H-インデン-1-オンと一致した。
【0060】
発明例2(プロフェティック):化合物(3a)(下付き文字nは2であり、R1~R3はHであり、R4およびR5のそれぞれはメチルである化合物(3))の合成。乾燥窒素雰囲気下で、500mLの丸底フラスコ内の発明例1の化合物(2a)(136mmol)を秤量し、無水ジエチルエーテル(245mL)に溶解する。反応混合物を-78℃に冷却する。メチルリチウム(1.6M、110mL、176.3mmol、R5はメチルである金属-R5還元剤)を滴下し、溶液を-78℃で15分間撹拌する。反応混合物を室温で20時間撹拌して、化合物(3a)を含む反応混合物を得る。化合物(3a)を、必要に応じて、H-NMRおよび/またはGC-MSによって単離および/または特徴付け得る。
【0061】
発明例3(プロフェティック):化合物(4a)(下付き文字nは2であり、R1~R3aはHであり、R4およびR5のそれぞれはメチルである化合物(4))の合成。発明例2の化合物(3a)を含む反応混合物に、水性6M HCL(67mL)を加え、室温で20時間撹拌しながら加水分解する。有機相を分離する。水層をジエチルエーテル(2×60mL)で抽出する。有機層を合わせ、水(80mL)、次いで飽和NaHCO(80mL)、次いで塩水(80mL)で洗浄する。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、真空中で溶媒を除去して、化合物(4a)をオレンジ色の液体として得る。化合物(4a)を、必要に応じて、H-NMRおよび/またはGC-MSによって単離および/または特徴付け得る。
【0062】
発明例4(プロフェティック):化合物(5a)(下付き文字nは2であり、R1~R3aはHであり、R4およびR5のそれぞれはメチルである化合物(5))の合成。グローブボックス内の16オンスのガラス瓶で、化合物(4a)(50mmol)をヘキサン(140mL)に溶解する。撹拌した溶液に、ヘキサン中のn-ブチルリチウムの溶液(1.6M、46.6mL、74.5mmol)を滴下する。反応混合物を20時間撹拌する。吸引濾過により化合物(5a)を収集し、得られた固体生成物をヘキサンで洗浄する。真空下で乾燥させて、化合物(5a)を固体として得る。化合物(5a)を、必要に応じて、H-NMRによって単離および/または特徴付け得る。
【0063】
発明例5(プロフェティック):化合物(7a)(下付き文字nは2であり、R1~R3aおよびR6~R10はHであり、R4およびR5のそれぞれはメチルであり、MはZrである化合物(7))の合成。32オンスのガラス瓶内のドライボックスに、272mLの無水ジエチルエーテル中のスラリー化合物(5a)(31mmol)。撹拌した反応混合物に、(Cp)ZrCl(8.12g、31.1mmol、化合物(6a))を少しずつ加え、次いで1,2-ジメトキシエタン(27mL)を加える。得られた濃いオレンジ色の反応混合物を室温で48時間撹拌し、濾過し、真空下で溶媒を除去して、化合物(7a)を得る。化合物(7a)を、必要に応じて、H-NMRによって単離および/または特徴付け得る。
【0064】
発明例6(プロフェティック):化合物(8a)(下付き文字nは2であり、R1~R3aおよびR6~R10はHであり、R4およびR5のそれぞれはメチルである化合物(8))の合成。8オンスのガラス瓶内のドライボックスに、無水ジエチルエーテル(65mL)中のスラリー化合物(7a)(10.5mmol)。撹拌した反応混合物に、臭化メチルマグネシウムの溶液(3.0M、7.89mL、23.7mmol)を滴下する。反応混合物を室温で20時間撹拌する。真空下で溶媒を除去する。得られた固体生成物をヘキサン(150mL)に溶解し、ろ過する。真空下でヘキサンを除去して、化合物(8a)を得る。化合物(8a)を、必要に応じて、H-NMRによって単離および/または特徴付け得る。
【0065】
発明例7:ポリエチレンポリマーを得るための化合物(7a)または(8a)から調製される触媒を使用するエチレンの(プロフェティック)重合。内径304.8mm(12インチ)、および直線側部高さ2.4384メートル(8フィート)の寸法の反応ゾーンを有し、ポリマー顆粒の流動反応器床を含む気相流動床反応器(「反応器」)を使用する。リサイクルガス流を流すためのリサイクルガスラインを備えたリアクターを構成する。リアクターにガス供給入口、触媒入口、およびポリマー生成物出口を取り付ける。発明例5の化合物(7a)または発明例6の化合物(8a)から調製される触媒を流動床反応器に供給する。流動反応器床の下の液体1-ヘキセンコモノマーと共に、エチレンおよび水素のガス状供給流を、リサイクルガスラインに導入する。エチレン(「C2」)、水素(「H2」)、および1-ヘキセン(「C6」)の個々の流速を制御して、一定の1-ヘキセンコモノマーとエチレンモノマーの組成モル比(「C6/C2」)0.0001~0.1(例えば、0.0050)、一定の水素とエチレンのモル比(「H2/C2」)0.0001~0.1(例えば、0.0020)、および一定のエチレン(「C2」)分圧1,000~2,000キロパスカル(kPa)(例えば、1,500kPa)を維持する。インラインガスクロマトグラフによってすべてのガスの濃度を測定し、リサイクルガス流の組成が比較的一定であるようにする。補給原料を連続的に流すことにより、流動状態で成長するポリマー粒子の反応床を維持し、反応ゾーンを通してガスをリサイクルする。0.4~0.7メートル/秒(m/秒)の表面ガス速度(例えば、0.49~0.67m/秒、または1.6~2.2フィート/秒(ft/秒))を使用する。反応器を、全圧2,000~3,000kPa(例えば、2344~約2413kPa、または340~約350ポンド/平方インチゲージ(psig))で、85~115°C(例えば、105℃)の一定の反応温度で操作する。粒子状生成物の形成速度に等しい速度で床の一部を引き抜くことにより、流動床を一定の高さに維持する。前述のプロセスにより、ポリエチレンポリマーを含む生成物が得られる。ポリマーの生産速度は、5~20kg/時の範囲(例えば、13~18kg/時)である。ポリマー生成物を、一連のバルブを介して半連続的に固定容量チャンバーに取り出し、この取り出したポリマー生成物をパージして、同伴炭化水素を除去し、加湿窒素(N)ガス流で処理して、微量の残留重合触媒を失活させる。
【表1】
【0066】
*BBFは、1000個の主鎖炭素原子あたりのブチル分岐の数である。
【0067】
表1から分かるように、発明例7で生成される重合触媒は、望ましい触媒活性を有し、得られるポリエチレンポリマーは望ましい特性を有すると予想される。
【0068】
発明例8(プロフェティック):化合物(2b)ビシクロ[3.3.0]-1(5)-オクテン-2-オン
【化16】
(下付き文字nは1であり、R1-R4はHである化合物(2))の合成。18mmolの(1b)プロペン酸、シクロペンチルエステル(CAS16868-13-6)を、化合物(1a)の代わりに使用することを除いて、発明例1を反復して化合物(2b)を得る。
【0069】
発明例9:化合物(2c)(4-メチル-ビシクロ[3.3.0]-1(5)-オクテン-2-オン、すなわち、下付き文字nは1であり、R1~R3はHであり、R4はメチルである化合物(2)):
【化17】
の合成。ドラフト内で、窒素雰囲気下で、攪拌棒を備えた100mLの丸底フラスコ内に、調製3の化合物(1c)(2E)-2-ブテン酸、シクロペンチルエステル(0.5g、3.24mmol)を加えた。フラスコ内のエステルを0℃に冷却した。次いで、P/HCSOH試薬(0.1/1))(1.5mL、9.73mmol)を0℃で滴下した。得られた反応混合物を撹拌しながら周囲温度(23℃)に温め、72時間撹拌を続けた。得られた粗生成物を5mLの水で希釈し、次いで、泡立ちがおさまるまで固体NaHCOを少しずつ加えて、pH8~pH9を有するクエンチされた混合物を得た。分液漏斗でクエンチされた混合物の水層および有機層を分離した。水層をジエチルエーテル(3×8mL)で3回抽出した。有機層を3つの抽出物と合わせ、その合わせたものを塩水(15mL)で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、そして濾過した。真空中で溶媒を除去して、オレンジ色の油として0.42g(95%の収率)の化合物(2c)を得た。H NMR(400MHz,クロロホルム-d)δ3.05-2.89(m,1H),2.81(dt,1H),2.66-2.47(m,1H),2.47-2.26(m,6H),1.19(d,3H)は、化合物(2c)と一致した。
【0070】
発明例10(プロフェティック):化合物(2d)10-メチル-ビシクロ[5.3.0]-1(7)-デセン-8-オン(下付き文字nは3であり、R1~R3はHであり、R4はメチルである化合物(2))の合成。18mmolの(1c)(2E)-2-ブテン酸、シクロヘプチルエステル(CAS10555-39-2)を、化合物(1a)の代わりに使用することを除いて、発明例1を反復して化合物(2d)を得る。
【0071】
発明例11(プロフェティック):化合物(2e)2,4,6,11-テトラメチル-ビシクロ[6.3.0]-1(8)-ウンデセン-9-オン(下付き文字nは4であり、R1-R4はメチルである化合物(2))の合成。18mmolの(1e)(2E)-2-ブテン酸、3,5,7-トリメチルシクロオクチルエステル(調製物2)を、化合物(1a)の代わりに使用することを除いて、発明例1を反復して化合物(2e)を得る。
【0072】
発明例12(プロフェティック):化合物(3b)~(3e)(下付き文字nおよび基R1~R4は、化合物(2b)~(2e)についてそれぞれ定義された通りである化合物(3))の合成。化合物(2a)を、化合物(2b)~(2e)のいずれか1つで置き換えることを除いて、発明例2を反復し、化合物(3b)~(3e)のいずれか1つをそれぞれ含む反応混合物を得、式中、下付き文字nおよび基R1~R4は、化合物(2b)~(2e)についてそれぞれ定義されているとおりであり、R5はメチルである。化合物(3b)~(3e)を、必要に応じて、H-NMRおよび/またはGC-MSによって単離および/または特徴付け得る。
【0073】
発明例13(プロフェティック):化合物(4b)~(4e)の合成。化合物(4b)は、下付き文字nは1であり、R1-R4はHであり、R5はメチルである化合物(4)である。化合物(4c)は、下付き文字nは1であり、R1~R3AはHであり、R4およびR5のそれぞれはメチルである化合物(4)である。化合物(4d)は、下付き文字nは3であり、R1~R3AはHであり、R4およびR5のそれぞれはメチルである化合物(4)である。化合物(4e)は、下付き文字nは4であり、R1、R1A、2つのR2、およびそれぞれのR2AはHであり、および2つのR2、およびR3、R4およびR5のそれぞれはメチルである化合物(4)である。化合物(3a)を、化合物(3b)~(3e)のいずれか1つでそれぞれ置き換えることを除いて、発明例3を反復して、化合物(4b)~(4e)のいずれか1つをそれぞれ含む反応混合物を得、ここで下付き文字nおよび基R1~R5は、化合物(3b)~(3e)についてそれぞれ定義されたとおりである。化合物(4b)~(4e)を、必要に応じて、H-NMRおよび/またはGC-MSによって単離および/または特徴付け得る。
【0074】
発明例14(プロフェティック):化合物(5b)~(5e)(下付き文字nおよび基R1~R5は、化合物(4b)~(4e)についてそれぞれ定義された通りである化合物(5))の合成。化合物(4a)を、化合物(4b)~(4e)のいずれか1つでそれぞれ置き換えることを除いて、発明例4を反復して、化合物(5b)~(5e)のいずれか1つをそれぞれ含む反応混合物を得、式中、下付き文字nおよび基R1~R5は、化合物(4b)~(4e)についてそれぞれ定義されたとおりである。化合物(5b)~(5e)を、必要に応じて、H-NMRによって単離および/または特徴付け得る。
【0075】
発明例15(プロフェティック):化合物(7b)~(7e)(下付き文字nおよび基R1~R5は、化合物(5b)~(5e)についてそれぞれ定義された通りであり、R6~R10はHであり、MはZrである化合物(7))の合成。化合物(5a)を、化合物(5b)~(5e)のいずれか1つでそれぞれ置き換えることを除いて、発明例5を反復して、化合物(7b)~(7e)のいずれか1つを含む反応混合物をそれぞれ得、式中、下付き文字nおよび基R1~R5は、化合物(5b)~(5e)についてそれぞれ定義されているとおりであり、R6~R10はHであり、MはZrである。化合物(7b)~(7e)を、必要に応じて、H-NMRによって単離および/または特徴付け得る。
【0076】
発明例16(プロフェティック):化合物(8b)~(8e)(下付き文字n、基R1~R10、およびMは化合物(7b)~(7e)についてそれぞれ定義された通りである化合物(8))の合成。化合物(7a)を、化合物(7b)~(7e)のいずれか1つでそれぞれ置き換えることを除いて、発明例6を反復して、化合物(8b)~(8e)のいずれか1つをそれぞれ含む反応混合物を得、式中、下付き文字n、基R1~R10、およびMは、化合物(7b)~(7e)についてそれぞれ定義されたとおりである。化合物(8b)~(8e)を、必要に応じて、H-NMRによって単離および/または特徴付け得る。
【0077】
発明例17:化合物(7b)~(7e)のいずれか1つから、または化合物(8b)~(8e)のいずれか1つから調製される触媒を使用するエチレンの(プロフェティック)重合。化合物(7a)を、化合物(7b)~(7e)のいずれか1つで置き換えるか、または化合物(8a)を化合物(8b)~(8e)のいずれか1つで置き換えることを除いて、発明例7を反復して、発明例7によって作製されるポリエチレンポリマーとは異なるポリエチレンポリマーを含む異なる生成物を得る。
【0078】
前述のように、Coniaら、RandおよびDolinskiなどが、シクロヘプテン、シクロヘキセン、またはシクロペンテンと、アクリル酸やクロトン酸などのアルファ,ベータ-不飽和カルボン酸との反応を触媒するPPAまたはP/PPA混合物を使用することで、エステル副生成物(例えば、それぞれシクロヘプチルクロトネート、シクロヘキシルクロトネート、またはシクロペンチルクロトネート)を含む反応混合物が得られることを報告している。我々は、シクロヘプテン、シクロヘキセン、またはシクロペンテンと、アクリル酸やクロトン酸などのアルファ,ベータ不飽和カルボン酸との反応を触媒する五酸化リン/メタンスルホン酸試薬を使用することで、エステル副生成物を含まない反応混合物が得られることを見いだした(例えば、反応は、シクロヘプチルクロトネート、シクロヘキシルクロトネート、またはシクロペンチルクロトネートをそれぞれもたらさない)。我々は、この発見を、ガスクロマトグラフィー-質量分析(GC-MS)による少なくとも1つの反応混合物の分析に基礎づけており、これは、いずれのエステル副生成物も示さない。我々はまた、この発見を、P/HCSOH試薬の存在下で、シクロヘプテン、シクロヘキセン、またはシクロペンテンと、アクリル酸、またはクロトン酸などのアルファ、ベータ不飽和カルボン酸との反応が、P/HCSOH試薬の存在下で、それぞれシクロヘプチルクロトネート、シクロヘキシルクロトネート、またはシクロペンチルクロトネートの反応よりもはるかに速いことを確認したことに基礎づけている。
【0079】
理論に縛られることを望まないが、我々は、P/HCSOH試薬が、アルファ,ベータ-不飽和カルボン酸(例えば、クロトン酸)と反応して、一般式R4CH=CHC(=O)-O-SO-CHの混合無水物をその場で与え、それは式R4CH=CHC(=O)のアシリウムイオン(すなわち、アシルカルボニウムイオン)をその場で生成し、それはシクロアルケンのFriedel-Craftsアシル化を急速に受けて、式R-C(=O)-R[式中、RはR4CH=CH-であり、Rはシクロアルケン-1-イルである]のケトンをその場で与え、そのケトンは環化反応を受けて、対応するシクロペンテノンを与えると考える。例えば、シクロアルケンがシクロヘキセンであり、アルファ,ベータ-不飽和カルボン酸がクロトン酸である場合、我々は、P/HCSOH試薬がクロトン酸と反応して、一般式HCCH=CHC(=O)-O-SO-CHの混合無水物をその場で与え、それは式HCCH=CHC(=O)のアシリウムイオン(すなわちアシルカルボニウムイオン)をその場で生成し、それはシクロアルケンのFriedel-Craftsアシル化を急速に受けて、式R-C(=O)-R[式中、RはHCCH=CH-であり、Rはシクロヘキセン-1-イルである]のケトンをその場で与え、そのケトンは環化反応を受けて、2,3,4,5,6,7-ヘキサヒドロ-3-メチル-1H-インデン-1-オン(すなわち、9-メチル-ビシクロ[4.3.0]-8-ノネン-7-オン)である対応するシクロペンテノンを与えると考える。したがって、シクロヘプテン、シクロヘキセン、またはシクロペンテンなどのシクロアルケンと、アクリル酸またはクロトン酸などのアルファ,ベータ不飽和カルボン酸との反応に、五酸化リン/メタンスルホン酸試薬を使用することは、Coniaら、RandおよびDolinskiなどがPPAまたはP/PPA混合物を使用して報告したエステル副生成物(例えば、それぞれシクロヘプチルクロトネート、シクロヘキシルクロトネート、またはシクロペンチルクロトネート)を、本質的には作製しない。
本願は以下の態様にも関する。
(1) 置換シクロペンタジエン化合物を合成する方法であって、(A)式(1)の化合物(「化合物(1)」):
【化18】

[式中、下付き文字nは1、2、3、または4であり、基R1、R1A、R2、R2A、R3、R3A、およびR4のそれぞれは、独立してHまたは(C ~C )アルキルであるか、あるいは任意の2つの隣接するR1~R3基は共に結合して(C ~C )アルキレンを形成し、R1~R3Aのうちの残りの基は、Hまたは(C ~C )アルキルである]を、有効量の五酸化リン/メタンスルホン酸試薬(P /H CSO H試薬)と、式(2)の化合物(「化合物(2)」):
【化19】

[式中、下付き文字nおよび基R1~R4は、上記で定義されたとおりである]を作製するのに十分な反応条件下で接触させることであって、ただし、前記接触工程(A)は、ポリリン酸(PPA)を不含であることを条件とする、接触させることと、(B)前記化合物(2)を、式(3)の化合物(「化合物(3)」):
【化20】

[式中、下付き文字nおよび基R1~R4は上記で定義された通りであり、R5はそれぞれHまたは(C ~C )アルキルである]を作製するのに十分な反応条件下で、水素化物官能性還元剤または(C ~C )アルキルリチウムのいずれかである金属-R5還元剤と接触させることと、(C)前記化合物(3)を脱水反応条件と接触させて、式(4)の置換シクロペンタジエン化合物(「化合物(4)」):
【化21】

[式中、下付き文字nおよび基R1~R5は、上記で定義された通りである]を作製することと、を含む方法。
(2) 金属-(置換シクロペンタジエニル配位子)錯体を含む置換メタロセン化合物を合成する方法であって、前記(1)の工程(A)~(C)にしたがって前記化合物(4)を合成することと、(D)前記化合物(4)を、アルキルリチウムと、式(5)の化合物(「化合物(5)」):
【化22】

を作製するのに十分な反応条件下で接触させることと、(E)前記化合物(5)を、式(6)の化合物(「化合物(6)」):
【化23】

と、式(7)の化合物(「化合物(7)」):
【化24】

[式中、下付き文字nおよび基R1~R5は、上記で定義された通りであり、金属Mは、元素周期表の第4族の金属であり、R6~R8のそれぞれは独立して、Hまたは(C ~C )アルキルであり、R9およびR10は独立して、Hまたは(C ~C )アルキルであるか、あるいはR9およびR10は共に結合して、(C ~C )アルキレンである]を作製するのに十分な反応条件下で接触させることと、を含む方法。
(3) ジルコノセンジメチル錯体を合成する方法であって、前記化合物(7)[式中、MはZrである]を、前記(2)の工程(A)~(E)にしたがって合成することと、(F)前記化合物(7)を、有効量の臭化メチルマグネシウムと、式(8)の化合物(「化合物(8)」):
【化25】

[式中、下付き文字nおよび基R1~R10は、上記で定義された通りである]を作製するのに十分な反応条件下で接触させることと、を含む方法。
(4) 前記P /H CSO H試薬を作製するために使用される、P のH CSO Hに対する比が、0.05/1~1/1(重量/重量)である、前記(1)~(3)のいずれか1項に記載の方法。
(5) 前記P /H CSO H試薬を作製するために使用される、P のH CSO Hに対する比が、0.1/1(重量/重量)である、前記(1)~(4)のいずれか1項に記載の方法。
(6) 前記化合物(4)が、化合物(4a)~(4e)のうちのいずれか1つからなる群から選択され、
化合物(4a)は、下付き文字nは2であり、R1~R3AはHであり、R4およびR5のそれぞれはメチルである化合物(4)であり、
化合物(4b)は、下付き文字nは1であり、R1~R4はHであり、R5はメチルである化合物(4)であり、
化合物(4c)は、下付き文字nは1であり、R1~R3AはHであり、R4およびR5のそれぞれはメチルである化合物(4)であり、
化合物(4d)は、下付き文字nは3であり、R1~R3AはHであり、R4およびR5のそれぞれはメチルである化合物(4)であり、
化合物(4e)は、下付き文字nは4であり、R1、R1A、2つのR2、およびそれぞれのR2AはH、および2つのR2、およびR3、R4およびR5のそれぞれはメチルである化合物(4)である、前記(1)~(5)のいずれか1項に記載の方法。
(7) 式(9)のジクロロ化合物:
【化26】

(「化合物(9)」)[式中、それぞれの下付き文字nは、独立して、1、2、3、または4であり、基R1、R1A、R2、R2A、R3、R3A、R4、およびR5のそれぞれは、独立してHまたは(C ~C )アルキルであるか、あるいは任意の2つの隣接するR1~R3基は共に結合して(C ~C )アルキレンを形成し、R1~R5のうちの残りの基は、Hまたは(C ~C )アルキルである]を作製する方法であって、2モル当量の前記化合物(5)を、1モル当量のZrCl と、前記化合物(9)を作製するのに十分な反応条件下で接触させることを含む方法。
(8) 前記化合物(9)を、有効量の臭化メチルマグネシウムと、ジメチル化合物(10)(「化合物(10)」)を作製するのに十分な反応条件下で接触させる工程をさらに含み、前記化合物(10)が、化合物(9)のそれぞれのCl原子が化合物(10)においてメチル基(CH )で置き換えられていることを除いて、化合物(9)の構造と同一の構造を有する、前記(7に記載の方法。
(9) 前記(7に記載の方法により作製される式(9)の化合物または前記(8)に記載の方法により作製される化合物(10)。
(10) オレフィンを重合する方法であって、前記(2)の方法にしたがって前記化合物(7)を合成すること、または前記(3)の方法にしたがって前記化合物(8)を合成することと、前記化合物(7)または(8)を、活性剤と接触させて、触媒を作製することと、エチレンおよび/またはアルファオレフィンを、前記触媒と、ポリエチレンホモポリマー、エチレン/アルファオレフィンコポリマー、またはポリ(アルファオレフィン)ホモポリマーを含むポリオレフィンポリマーを作製するのに十分な条件下で接触させることと、を含み、前記方法は、白金、パラジウム、ニッケル、ロジウム、およびルテニウムを不含である、方法。
(11) 前記(10)に記載の方法によって作製され、白金、パラジウム、ニッケル、ロジウム、およびルテニウムを不含である、ポリオレフィンポリマー。