(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】前処理液と、顔料と分散染料との混合物とを含むテキスタイル印刷流体セット
(51)【国際特許分類】
C09D 11/328 20140101AFI20231219BHJP
C09D 11/322 20140101ALI20231219BHJP
C09D 11/54 20140101ALI20231219BHJP
D06P 5/30 20060101ALI20231219BHJP
D06P 1/16 20060101ALI20231219BHJP
D06P 1/44 20060101ALI20231219BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20231219BHJP
B41M 5/00 20060101ALI20231219BHJP
D06M 15/263 20060101ALI20231219BHJP
D06M 15/333 20060101ALI20231219BHJP
D06M 15/564 20060101ALI20231219BHJP
D06M 15/572 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
C09D11/328
C09D11/322
C09D11/54
D06P5/30
D06P1/16 B
D06P1/44 H
B41J2/01 501
B41M5/00 100
B41M5/00 114
B41M5/00 120
B41M5/00 132
D06M15/263
D06M15/333
D06M15/564
D06M15/572
(21)【出願番号】P 2021536181
(86)(22)【出願日】2019-12-17
(86)【国際出願番号】 US2019066843
(87)【国際公開番号】W WO2020131865
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2022-11-08
(32)【優先日】2018-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519372065
【氏名又は名称】デュポン エレクトロニクス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】スコット ダブリュ.エリス
(72)【発明者】
【氏名】シャオチン リー
(72)【発明者】
【氏名】ジュエ リアン
【審査官】仁科 努
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-171907(JP,A)
【文献】特開2013-199719(JP,A)
【文献】特開2008-231617(JP,A)
【文献】特開2017-132946(JP,A)
【文献】国際公開第2018/207636(WO,A1)
【文献】特表2010-503779(JP,A)
【文献】特開平07-305010(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0152858(US,A1)
【文献】特開昭61-215787(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/328
B41J 2/01
B41M 5/00
C09D 11/322
C09D 11/54
D06M 15/263
D06M 15/333
D06M 15/564
D06M 15/572
D06P 1/16
D06P 1/44
D06P 5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)カチオン性ポリマー、多価金属塩、有機酸、およびこれらの混合物から選択される1種または複数種であるインク凝集剤を含む水性前処理組成物と;
b)顔料と分散染料との混合物である着色剤と、第1のポリマー系バインダーとを含有する水性インクジェットインクであって、前記第1のポリマー系バインダーは、
ポリエステルポリオール系水性ポリウレタン、である、水性インクジェットインクと
を含有する、テキスタイル印刷用インクジェット印刷流体セット。
【請求項2】
a)における前記水性前処理組成物が第2のポリマー系バインダーをさらに含む、
請求項1に記載の流体セット。
【請求項3】
前記水性インクジェットインクが前記着色剤用の分散剤をさらに含む、
請求項2に記載の流体セット。
【請求項4】
前記着色剤が自己分散顔料である、
請求項2に記載の流体セット。
【請求項5】
a)テキスタイル基材を準備する工程と;
b)カチオン性ポリマー、多価金属塩、有機酸、およびこれらの混合物から選択される1種または複数種であるインク凝集剤を含有する前処理組成物を塗布する工程と;
c)前記テキスタイル基材上に水性インクジェットインクを噴射する工程であって、前記水性インクジェットインクが着色剤と第1のポリマー系バインダーとを含み、前記着色剤が、顔料と分散染料との混合物であ
り、前記第1のポリマー系バインダーは、ポリエステルポリオール系水性ポリウレタンである、工程と
を含む、テキスタイル生地へのデジタル印刷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、テキスタイル基材を前処理し、顔料と分散染料との混合物をテキスタイル基材に印刷することに関する。
【背景技術】
【0002】
関連出願の相互参照
本出願は、米国特許法第119条の下、2018年12月19日付けで出願された米国仮特許出願第62/781917号明細書からの優先権を主張する。
【0003】
インクジェットデジタル印刷法は、テキスタイル印刷において一層重要になってきている。それは、スクリーン印刷などの従来の印刷法よりも多数の潜在的便益を提供する。デジタル印刷は、スクリーン調製に関連した設置費を排除し、費用効果的な短時間運転生産を潜在的に可能にすることができる。デジタル印刷は、スクリーン印刷法で実際に達成できない印刷パターンの色調勾配および繰り返しなどの視覚効果をさらに可能にする。デジタル印刷の生産中にオリジナルのパターンを変更することの容易さは、短期間内のパターンまたは他の要件の変化に応答することが可能である場合にとりわけ有益である。
【0004】
分散染料インクは、最も一般的に知られているタイプのデジタルテキスタイルインクである。典型的には、染料昇華プロセスが行われると、分散染料インクが生地の中に染み込んで染色され、テキスタイル自体の一部になる。分散染料は一般的に非イオン性の化学物質であり、水への溶解度はわずかである。その結果、分散染料は、ポリエステル、ナイロン、アセテート、ポリエステルブレンド、およびその他の合成繊維などの疎水性繊維には十分に保持されることができるものの、綿、絹、および羊毛などの天然繊維にはあまり保持されない。
【0005】
顔料は、染料と比較して特定の繊維に対して実際の親和性を有さないため、様々な繊維やブレンドの最上層の着色に適している。しかしながら、顔料を使用したテキスタイル基材への印刷は、他の染料着色剤を使用するよりも少ない色しか従来得られていない。米国特許出願公開第20050182154号明細書には、テキスタイルに印刷するためのバインダーとして架橋ポリウレタンを含むインクジェットインクが開示されている。
【0006】
米国特許出願公開第2006225227号明細書には、印刷ペーストおよび染浴で使用される少なくとも1種のニッケル錯体顔料と少なくとも1種の分散染料とを含有する組成物が開示されている。
【0007】
テキスタイルへの効果的な工業用デジタル印刷の1つの難しい基準は、綿、羊毛、または絹などの天然素材から、ポリエステルや混紡生地のような合成材料まで、多数の様々なテキスタイル基材があることである。全てのこれらの様々な生地の種類は、前処理および後処理、並びに加工の様々なニーズに加えて、様々な種類のインクを必要とする。耐久性のある高品質な画像を形成するために、様々なテキスタイル基材に印刷可能なインクジェットインクが必要とされている。本開示は、テキスタイルに印刷するための前処理組成物と一緒に使用される、着色剤としての分散染料と顔料とのブレンドと、ポリマー系バインダーとを含有するインク組成物を提供することによって、この要求を満たす。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一実施形態は、テキスタイル印刷用のインクジェット印刷流体セットを提供し、流体セットは、a)カチオン性ポリマー、多価金属塩、有機酸、およびこれらの混合物から選択される1種または複数種であるインク凝集剤を含む水性前処理組成物;並びにb)顔料と分散染料との混合物である着色剤と、ポリエステルポリオール系水性ポリウレタン、ポリカーボネートポリオール系水性ポリウレタン、ポリエステル-カーボネートポリオール系水性ポリウレタン、アクリルエマルジョンポリマー、スチレンアクリルエマルジョンポリマー、酢酸ビニル-エチレンコポリマー分散液、およびこれらの混合物からなる群から選択される1種または複数種である第1のポリマー系バインダーと、を含有する水性インクジェットインク;を含有する。
【0009】
別の実施形態は、b)の第1のポリマー系バインダーがポリエステルポリオール系水性ポリウレタンであることを提供する。
【0010】
別の実施形態は、a)の水性前処理組成物が第2のポリマー系バインダーをさらに含むことを提供する。
【0011】
別の実施形態は、第2のポリマー系バインダーが非イオン性ポリマーであることを提供する。
【0012】
別の実施形態は、水性インクジェットインクが着色剤用の分散剤をさらに含むことを提供する。
【0013】
別の実施形態は、着色剤が自己分散顔料であることを提供する。
【0014】
別の実施形態は、水性インクジェットインクが着色剤用の分散剤をさらに含み、前記分散剤がb)の前記第1のポリマー系バインダーおよびa)の前記第2のポリマー系バインダーとは異なることを提供する。
【0015】
別の実施形態は、分散染料が、ディスパースブルー359、ディスパースレッド60、ディスパースイエロー54、ディスパースブルー360、ディスパースイエロー54、およびディスパースブラウン27からなる群から選択されることを提供する。
【0016】
別の実施形態は、
a)テキスタイル基材を準備すること;
b)カチオン性ポリマー、多価金属塩、有機酸、およびこれらの混合物から選択される1種または複数種であるインク凝集剤を含有する前処理組成物を塗布すること;並びに
c)テキスタイル基材上に水性インクジェットインクを噴射することであって、前記水性インクジェットインクが着色剤と第1のポリマー系バインダーとを含み、前記着色剤が、顔料と分散染料との混合物である、噴射すること;
を含む、テキスタイル生地にデジタル印刷する方法を提供する。
【0017】
さらに別の実施形態は、上の方法における第1のポリマー系バインダーが、ポリエステルポリオール系水性ポリウレタン、ポリカーボネートポリオール系水性ポリウレタン、ポリエステル-カーボネートポリオール系水性ポリウレタン、アクリルエマルジョンポリマー、スチレンアクリルエマルジョンポリマー、酢酸ビニル-エチレンコポリマー分散液、およびこれらの混合物からなる群から選択される1種または複数種であることを提供する。
【0018】
本実施形態のこれらおよび他の特徴および利点は、以下の発明を実施するための形態を読むことで当業者により容易に理解されるであろう。明確にするために、別々の実施形態として前述および後述される開示される実施形態の特定の特徴は、単一の実施形態での組み合わせでも提供され得る。反対に、単一の実施形態に関連して記載される開示される実施形態の様々な特徴は、別々にまたは任意の部分組み合わせでも提供され得る。
【発明を実施するための形態】
【0019】
特に明記または定義しない限り、本明細書において使用される全ての技術用語および科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般に理解されている意味を有する。
【0020】
特に明記されない限り、全てのパーセント、部、比率などは、重量基準である。
【0021】
量、濃度または他の値もしくはパラメーターが上位の好ましい値および下位の好ましい値の範囲、好ましい範囲またはリストとして与えられる場合、これは、範囲が別個に開示されているかどうかにかかわらず、任意の上位範囲限界または好ましい値と、任意の下位範囲限界または好ましい値との任意の対から形成される全ての範囲を具体的に開示していると理解されるべきである。ある範囲の数値が本明細書において列挙される場合、特に明記しない限り、その範囲は、その終点並びにその範囲内の全ての整数および分数を含むことを意図する。
用語「約」が値または範囲の端点を表すのに用いられる場合、本開示は、言及される特定の値または端点を含むと理解されるべきである。
【0022】
本明細書において使用される「含む」は、言及されている明言された特徴、整数、工程、または構成要素の存在を規定するものとして解釈されるべきであるが、1つ以上の特徴、整数、工程、または構成要素、またはそれらの群が存在することまたはそれらを付加することは除外されない。さらに、用語「含む」は、用語「から本質的になる」および「からなる」によって包含される例を含むことが意図される。同様に、用語「から本質的になる」は、用語「からなる」によって包含される例を含むことを意図する。
【0023】
本明細書において使用される「分散液」という用語は、1つの相が、バルク物質全体にわたって分布している微細粒子(多くの場合にコロイドサイズ範囲において)からなる2相系を意味し、粒子は、分散された相すなわち内相であり、バルク物質は、連続相すなわち外相である。
本明細書において使用される「分散剤」という用語は、多くの場合コロイドサイズである極めて微細な固体粒子の一様な且つ最大の分離を促進するために懸濁媒体に加えられる界面活性剤を意味する。顔料について、分散剤は、ほとんどの場合にポリマー系分散剤である。本明細書に記載されるポリウレタン分散剤は、実際に、それら自体分散液である。
【0024】
本明細書において使用される「OD」という用語は、光学密度を意味する。
【0025】
本明細書において使用される「水性ビヒクル」という用語は、水、または水と少なくとも1種の水溶性もしくは部分的に水溶性(即ちメチルエチルケトン)の有機溶剤(共溶剤)との混合物を意味する。
【0026】
本明細書において使用される「イオン化可能な基」という用語は、潜在的なイオン性基を意味する。
【0027】
本明細書において使用される「実質的に」という用語は、相当な程度、ほとんど全てであることを意味する。
【0028】
本明細書において使用される「MW」という用語は、重量平均分子量を意味する。
本明細書において使用される「D50」という用語は、粒径の分布の50パーセンタイル(中央値)の体積粒子径を意味する。
本明細書において使用される「D95」という用語は、粒径の分布の95パーセンタイルの体積粒子径を意味する。
【0029】
本明細書において使用される「NCO」という用語は、イソシアネートを意味する。
【0030】
本明細書において使用される「cP」という用語は、粘度単位であるセンチポアズを意味する。
本明細書において使用される「mN・m-1」という用語は、表面張力単位である1メートル当たりのミリニュートンを意味する。
本明細書において使用される「mPa・s」という用語は、粘度単位であるミリパスカル秒を意味する。
本明細書において使用される「psig」という用語は、空気圧を含まない圧力単位であるポンド平方インチゲージを意味する。
【0031】
本明細書において使用される「プレポリマー」という用語は、重合プロセスの中間体であり、且つポリマーと見なすことができるポリマーを意味する。
【0032】
本明細書において使用される「AN」という用語は、固体ポリマー1グラム当たりのmg KOH、酸価を意味する。
【0033】
本明細書において使用される「PUD」という用語は、本明細書に記載のポリウレタン分散液を意味する。
【0034】
本明細書において使用される「DTG」という用語は、「衣類直接印刷(direct to garment)」を意味する。
【0035】
本明細書において使用される「BMEA」という用語は、ビス(メトキシエチル)アミンを意味する。
本明細書において使用される「DBTDL」という用語は、ジブチルスズジラウレートを意味する。
本明細書において使用される「DMPA」という用語は、ジメチロールプロピオン酸を意味する。
本明細書において使用される「IPDI」という用語は、イソホロンジイソシアネートを意味する。
本明細書において使用される「NMP」という用語は、n-メチルピロリドンを意味する。
本明細書において使用される「TEB」という用語は、Dow Chemicalから供給されている試薬であるトリエチレングリコールモノブチルエーテルを意味する。
本明細書において使用される「スルホラン」という用語は、テトラメチレンスルホンを意味する。
本明細書で使用されるTerathane(登録商標)650は、Invista, Wichita, KSのポリエーテルジオールである。
本明細書において使用される「EDA」という用語は、エチレンジアミンを意味する。
本明細書において使用される「TEA」という用語は、トリエチルアミンを意味する。
本明細書において使用される「DEA」という用語は、ジエタノールアミンを意味する。
本明細書において使用される「DMPA」という用語は、ジメチロールプロピオン酸を意味する。
本明細書において使用される「MDEA」という用語は、メチルジエタノールアミンを意味する。
本明細書において使用される「TETA」という用語は、トリエチレンテトラミンを意味する。
本明細書において使用される「THF」という用語は、テトラヒドロフランを意味する。
【0036】
本明細書において使用される「TRB-2」という用語は、シアン顔料であるDainichiseika(登録商標)TRB-2を意味する。
本明細書において使用される「Y74」という用語は、Sun Chemicalから供給されている黄色顔料であるイエロー74を意味する。
本明細書において使用されるDenacol(登録商標)321は、Nagase Chemicals Ltd., Osaka, Japanの架橋試薬であるトリメチロールプロパンポリグリシジルエーテルである。
本明細書において使用されるDesmophen(登録商標)C1200は、Covestro (Pittsburgh, PA)からのポリエステルカーボネートジオールである。
本明細書において使用されるSurfynol(登録商標)440は、Air Products (Allentown, PA)の非イオン性界面活性剤である。
本明細書において使用されるTerathane(登録商標)1400は、Invista (Witchita, KA)のポリテトラメチレンオキシドポリオールである。
本明細書において使用されるEleminol JS-20は、Sanyo Chemical Industries (Kyoto, Japan)の重合性界面活性剤である。
本明細書において使用されるPolystep B-1は、Stepan (Chicago, IL)のアニオン性界面活性剤である。
本明細書において使用されるArtistri(登録商標)P5010は、DuPont (Wilmington, DE)の生地前処理溶液である。
【0037】
特に明記しない限り、上述の化学物質は、Aldrich (Milwaukee, WI)または他の同様の研究用薬品の供給業者から入手した。
【0038】
さらに、文脈上特に明記されない限り、単数形での言及はまた、複数形を含んでもよい(たとえば、「1つの(a)」および「1つの(an)」は、1つまたは1つ以上を指してもよい)。
【0039】
(着色剤)
本開示の適切な着色剤は、分散染料と顔料との混合物である。
【0040】
本開示の適切な分散染料は、大気圧下で70~260℃で昇華または蒸発する染料である。例としては、アゾ、アントラキノン、キノフタロン、スチリル、オキサジン、キサンテン、メチン、およびアゾメチン染料が挙げられる。これらの染料の中でも、黄色分散染料の例としては、「C.I.ディスパースイエロー51」、54、60、64、65、71、82、98、114、119、160、201、および211が挙げられる。橙色分散染料の例としては、「C.I.ディスパースオレンジ25」、33、44、および288が挙げられる。赤色分散染料の例としては、「C.I.ディスパースレッド4」、22、55、59、60、73、86、91、146、152、191、302、および364が挙げられる。青色分散染料の例としては、「C.I.ディスパースブルー14」、28、56、60、72、73、77、334、359、360、および366が挙げられる。他の色成分としては、たとえば「C.I.ディスパースブラウン27」;「C.I.ディスパースバイオレット26」、27、28;などが挙げられる。
【0041】
これらの中でも、「C.I.ディスパースイエロー54」、60、64、71、82;「C.I.ディスパースオレンジ25」、288;「C.I.ディスパースレッド4」、22、55、60、146、302、364;「C.I.ディスパースブルー14」、28、56、72、334、359、360;「C.I.ディスパースバイオレット28」;および「C.I.ディスパースブラウン27」が好ましい。
【0042】
上記分散染料は、粉末または塊の乾燥状態、またはウェットケーキもしくはスラリー状態であってよく、或いは、染料合成中および合成後の染料粒子の凝集を抑制する目的で、界面活性剤などの分散剤を少量含んでいてもよい。これらの市販の染料は、工業染色用、着色樹脂用インク、インクジェット等のグレードを有しており、また製造方法、純度、染料の粒径等の相違を有している。
【0043】
本明細書において使用される「顔料」という用語は、分散剤によって分散され、分散剤の存在下において分散条件下で処理されることを必要とする不溶性着色剤を意味する。分散プロセスは、安定な分散された顔料をもたらす。選択された顔料は、乾燥形態または湿潤形態で使用され得る。たとえば、顔料は、通常、水性媒体中で製造され、得られた顔料は、水湿潤プレスケーキとして得られる。プレスケーキの形態では、顔料は、乾燥形態で凝集する程度には凝集しない。そのため、水で湿った状態のプレスケーキ形態の顔料は、予備混合プロセスにおいて解凝集するために、乾燥形態の顔料ほどには多くの混合エネルギーを必要としない。代表的な市販の乾燥顔料は、米国特許第5,085,698号明細書に列挙されている。インクジェットインクに有用な色特性を有する顔料のいくつかの例としては、ピグメントブルー15:3およびピグメントブルー15:4のシアン顔料;ピグメントレッド122およびピグメントレッド202のマゼンタ顔料;ピグメントイエロー14、ピグメントイエロー95、ピグメントイエロー110、ピグメントイエロー114、ピグメントイエロー128およびピグメントイエロー155のイエロー顔料;ピグメントオレンジ5、ピグメントオレンジ34、ピグメントオレンジ43、ピグメントオレンジ62、ピグメントレッド17、ピグメントレッド49:2、ピグメントレッド112、ピグメントレッド149、ピグメントレッド177、ピグメントレッド178、ピグメントレッド188、ピグメントレッド255およびピグメントレッド264のレッド顔料;ピグメントグリーン1、ピグメントグリーン2、ピグメントグリーン7およびピグメントグリーン36のグリーン顔料;ピグメントブルー60、ピグメントバイオレット3、ピグメントバイオレット19、ピグメントバイオレット23、ピグメントバイオレット32、ピグメントバイオレット36およびピグメントバイオレット38のブルー顔料;TiO2およびZnOなどのホワイト顔料;並びにブラック顔料カーボンブラックが挙げられる。本明細書において使用される顔料名および省略形は、Society of Dyers and Colourists, Bradford, Yorkshire, UKによって確立され、The Color Index, Third Edition, 1971で公開された顔料の「C.I.」表示である。
【0044】
インク、特にインクジェットインクを調製するために、両方の着色剤、分散染料と顔料は、単独で、または組み合わせて、ポリマー系分散剤を用いて分散させることができる。着色剤粒子は、特に通常約10ミクロン~約50ミクロンの範囲の直径を有する噴射ノズルで、インクジェット印刷装置をインクが自由に通って流れることができる程度に十分に小さい。粒径は、着色剤の分散安定性にも影響を及ぼし、これはインクの寿命を通して重要である。微小粒子のブラウン運動は、粒子の凝集の防止に役立つ。最大の色強度および光沢のために小さい粒子を使用することも望ましい。有用な粒径の範囲は、典型的には約0.005ミクロン~約15ミクロンである。典型的には、顔料の粒径は約0.005~約5ミクロン、最も典型的には約0.005~約1ミクロンの範囲であるべきである。動的光散乱によって測定される平均粒径は、約500nm未満、典型的には約300nm未満である。
【0045】
本開示の顔料は、自己分散(または自己分散性)顔料でもあり得る。自己分散顔料(または「SDP」)という用語は、顔料粒子の表面が、別の分散剤なしで顔料が水性ビヒクルにおいて安定して分散されることを可能にする親水性の分散性を付与する基で化学的に改質されている顔料粒子を意味する。「安定して分散された」とは、顔料が微粉化されて均一に分布しており、粒子成長および凝集に耐性であることを意味する。
【0046】
SDPは、官能基または官能基を含有する分子を顔料の表面上にグラフトすることにより、物理的処理(真空プラズマなど)により、または化学処理(たとえば、オゾン、次亜塩素酸などでの酸化)により調製され得る。単一の種類または複数の種類の親水性官能基が1つの顔料粒子に結合され得る。親水性基は、水性ビヒクル中に分散される場合、SDPに負電荷をもたらすカルボキシレートまたはスルホネート基である。カルボキシレートまたはスルホネート基は、通常、一価および/または二価のカチオン性対イオンを伴う。SDPの製造方法は周知であり、たとえば、米国特許第5554739号明細書および米国特許第6852156号明細書に見出すことができる。
【0047】
SDPは、カーボンブラックに基づくものなどの黒色であり得るか、または着色顔料であり得る。インクジェットインクに有用な色特性を有する顔料の例としては、ピグメントブルー15:3およびピグメントブルー15:4(シアン用);ピグメントレッド122およびピグメントレッド202(マゼンタ用);ピグメントイエロー14、ピグメントイエロー74、ピグメントイエロー95、ピグメントイエロー110、ピグメントイエロー114、ピグメントイエロー128およびピグメントイエロー155(イエロー用);ピグメントオレンジ5、ピグメントオレンジ34、ピグメントオレンジ43、ピグメントオレンジ62、ピグメントレッド17、ピグメントレッド49:2、ピグメントレッド112、ピグメントレッド149、ピグメントレッド177、ピグメントレッド178、ピグメントレッド188、ピグメントレッド255およびピグメントレッド264(レッド用);ピグメントグリーン1、ピグメントグリーン2、ピグメントグリーン7およびピグメントグリーン36264(グリーン用);ピグメントブルー60、ピグメントバイオレット3、ピグメントバイオレット19、ピグメントバイオレット23、ピグメントバイオレット32、ピグメントバイオレット36およびピグメントバイオレット38(ブルー用);並びにカーボンブラックが挙げられる。しかしながら、これらの顔料のいくつかは、SDPとしての調製に好適ではない場合がある。本明細書では、着色剤は、Society Dyers and Colourists, Bradford, Yorkshire, UKによって確立され、The Color Index,Third Edition, 1971で公開された、それらの「C.I.」表示に関する。
【0048】
本開示のSDPは、ある度合いの官能基化を有することができ、この場合、アニオン性基の密度は、顔料表面の1平方メートル当たり約3.5μモル未満(3.5μモル/m2)、より特には約3.0μモル/m2未満である。また、約1.8μモル/m2未満、より特に約1.5μモル/m2未満の官能基化の度合いが適切であり、SDPの所定の特定の種類に好ましい場合がある。分散後の有用な粒径の範囲は、典型的には約0.005um~約15umである。典型的には、顔料粒径は、約0.005um~約5um;特に約0.005um~約1umの範囲であるべきである。動的光散乱によって測定される平均粒径は、約500nm未満、典型的には約300nm未満である。
【0049】
インク中に存在する顔料の量は、インクの総重量を基準として典型的には約0.1重量%~約25重量%の範囲、より典型的には約0.5重量%~約10重量%の範囲である。無機顔料が選択される場合、無機顔料が一般的に有機顔料よりも高い密度を有するため、インクは、有機顔料を用いる同等のインクにおけるよりも高い重量百分率の顔料を含有する傾向があるであろう。
【0050】
分散染料対顔料の重量比は1:20~20:1である。より典型的には、分散染料対顔料の比は1:10~10:1である。最も典型的には、分散染料対顔料の比は1:5~5:1である。
【0051】
(着色剤のためのポリマー系分散剤)
着色剤のためのポリマー系分散剤は、ランダムポリマーであっても構造化ポリマーであってもよい。典型的には、ポリマー系分散剤は、疎水性モノマーと親水性モノマーとのコポリマーである。「ランダムポリマー」は、それぞれのモノマーの分子がポリマー主鎖においてランダムに配列されるポリマーを意味する。好適なランダムポリマー系分散剤の参照については、米国特許第4,597,794号明細書を参照されたい。「構造化ポリマー」は、ブロック、分岐、グラフトまたはスター構造を有するポリマーを意味する。構造化ポリマーの例としては、米国特許第5,085,698号明細書に開示されるものなどのABまたはBABブロックコポリマー;欧州特許第0556649号明細書に開示されるものなどのABCブロックコポリマー;および米国特許第5,231,131号明細書に開示されるものなどのグラフトポリマーが挙げられる。使用することができる他のポリマー系分散剤は、たとえば、米国特許第6,117,921号明細書、米国特許第6,262,152号明細書、米国特許第6,306,994号明細書および米国特許第6,433,117号明細書に記載されている。
【0052】
「ランダムポリマー」には、ポリウレタンも含まれる。ポリウレタン分散剤が、顔料を分散させた後に架橋されて顔料分散液を形成する、米国特許出願公開第2012/0214939号明細書において開示されるポリウレタン分散剤が特に有用である。
【0053】
分散染料の分散に適した他の「ランダムポリマー」は特に限定されず、例としては、クレオソート油スルホン酸のホルムアルデヒド縮合物、芳香族スルホン酸のホルムアルデヒド縮合物、リグニンスルホン酸のホルムアルデヒド縮合物、およびそれらのナトリウム塩など、並びにスチレン-(メタ)アクリル酸に基づくコポリマー、およびポリウレタン系分散剤が挙げられる。
【0054】
(顔料系分散物の調製)
本発明で使用される着色剤分散液は、当該技術分野で公知の任意の従来の粉砕プロセスを使用して調製することができる。ほとんどの粉砕プロセスは、第1の混合工程とそれに続く第2の粉砕工程とを含む2段階プロセスを使用する。第1の工程は、ブレンドされた「プレミックス」を得るために、全ての成分、すなわち着色剤、分散剤、液体担体、中和剤、および任意の添加剤を混合することを含む。典型的には、全ての液体成分が最初に添加され、続いて分散剤、そして最後に着色剤が添加される。混合は、通常撹拌されている混合容器の中で行われ、混合工程のためには高速分散機(HSD)が特に適している。HSDに取り付けられた、500rpm~4000rpm、より典型的には2000rpm~3500rpmで作動するCowels型のブレードは、望まれる混合を実現するために最適なせん断を提供する。十分な混合は、通常、上記の条件下で15~120分間混合した後に達成される。
【0055】
第2の工程は、プレミックスを粉砕して着色剤分散液を製造することを含む。典型的には、粉砕にはメディアミルによる粉砕プロセスが含まれるものの、他の粉砕技術も使用することができる。本発明では、Eiger Machinery Inc., Chicago, Illinoisによって製造されたラボスケールのEiger Minimill(M250型、VSE EXP)が使用される。粉砕は、約820グラムの0.5YTZ(登録商標)ジルコニア媒体をミルに入れることによって行った。ミルディスクは、2000rpm~4000rpm、典型的は3000rpm~3500rpmの速度で作動する。分散液は、再循環粉砕プロセスを使用して処理され、ミルを通る典型的な流量は200~500グラム/分、より典型的には300グラム/分である。粉砕は、溶媒の一部が粉砕物から抜き出されて保持され、粉砕が完了した後に添加される段階的手順を使用して行うことができる。これは、粉砕効率を最大化する最適なレオロジーを実現するために行われる。粉砕中に抜き出される溶媒の量は分散液によって異なり、典型的には、合計800グラムのバッチサイズで200~400グラムである。典型的には、本発明の分散液は、合計4時間粉砕される。
【0056】
黒色顔料分散液については、マイクロフルイダイザーを使用する別の粉砕プロセスを使用することができる。マイクロ流動化は、高圧下でノズルを介した顔料の衝突によって粉砕が行われる、メディアミルによらない粉砕プロセスである。典型的には、顔料分散液は400グラム/分の流量で15,000psiで処理され、合計12回ミルを通過する。実施例の黒色顔料分散液の製造では、ダイヤモンドZチャンバーを備えたラボスケール(M-110Y型、Microfluidics (Newton, Massachusetts)から入手可能)高圧空気式マイクロフルイダイザーを使用した。
【0057】
フィラー、可塑剤、顔料、カーボンブラック、シリカゾル、他のポリマー分散液、および既知のレベリング剤、湿潤剤、消泡剤、安定剤、並びに目的の最終用途で公知の他の添加剤も分散液に配合することができる。
【0058】
上記着色剤分散液の有用な粒径の範囲は、典型的には約0.005um~約15umである。典型的には、粒径は、約0.005um~約5um;特に約0.005um~約1umの範囲であるべきである。動的光散乱によって測定される平均粒径は、約500nm未満、典型的には約300nm未満である。
【0059】
(インクのためのポリマー系バインダー1)
バインダーは、インク配合物に添加されるポリマー化合物またはポリマー化合物の混合物である。バインダーは、たとえば、印刷された材料により大きい耐久性を与えるなど、印刷された材料に特性を付与することができる。インクジェットインクにおけるバインダーとして使用される典型的なポリマーとしては、ポリウレタン分散液およびポリウレタン溶液、アクリル、スチレンアクリル、スチレンブタジエン、スチレンブタジエンアクリロニトリル、ネオプレン、エチレンアクリル酸、エチレン酢酸ビニルエマルジョン、ラテックスなどが挙げられる。バインダーは、溶液であり得るか、またはカルボン酸、硫黄含有酸、アミン基および他の類似のイオン性基などのイオン性置換基を有することによってエマルジョンとして安定化され得る。代わりに、バインダーは、外的な界面活性剤により安定化され得る。バインダーは、単独でまたは他のバインダーと組み合わせて使用することができる。バインダーは、典型的にはインクの総重量を基準として少なくとも0.2重量%の量でインク中に存在する。典型的には、バインダーは、上述した染料および顔料の分散剤とは異なる。バインダーは、典型的には、顔料分散液の調製中ではなく、最終調合段階中にインクに加えられる。
【0060】
好ましいバインダーは、分散染料と混和性である。分散染料分子は、明るい色および耐久性を示すために、分子レベルで好ましいバインダーマトリックスに溶解できる必要がある。分散染料と強く相互作用する好ましいバインダーは、ポリエステルポリオール系水性ポリウレタン、ポリカーボネートポリオール系水性ポリウレタン、ポリエステル-カーボネートポリオール系水性ポリウレタン、アクリルエマルジョンポリマー、スチレンアクリルエマルジョンポリマー、および酢酸ビニル-エチレンコポリマー分散液である。
【0061】
(インクビヒクル)
本開示のインクは、水性ビヒクルまたは水性キャリア媒体としても知られるインクビヒクル、典型的には水性インクビヒクルを含む。
【0062】
インクビヒクルは、水性分散液および任意選択の添加剤のための液体キャリア(または媒体)である。「水性インクビヒクル」という用語は、水、または水と共溶剤または保湿剤と一般に言われる1種または複数種の有機の水溶性ビヒクル成分との混合物からなるインクビヒクルを意味する。好適な混合物の選択は、所望の表面張力および粘度、選択される顔料、顔料入りインクジェットインクの乾燥時間、並びにインクがその上へ印刷される紙の種類など、具体的な用途の要件に依存する。当技術分野では、ときに、共溶剤が印刷された基材上のインクの浸透および乾燥に役立ち得る場合、それは浸透剤と言われる。
【0063】
水溶性有機溶媒および保湿剤の例としては:アルコール、ケトン、ケト-アルコール、エーテル、およびその他(チオジグリコール、スルホラン、2-ピロリジン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、およびカプロラクタム等);エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、トリメチレングリコール、ブチレングリコール、およびヘキシレングリコールなどのグリコール;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のオキシエチレンまたはオキシプロピレンの付加ポリマー;グリセロールおよび1,2,6-ヘキサントリオールなどのトリオール;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルなどの多価アルコールの低級アルキルエーテル;ジエチレングリコールジメチルもしくはジエチルエーテルなどの多価アルコールの低級ジアルキルエーテル;尿素および置換尿素が挙げられる。
【0064】
水と、ジエチレングリコールなどの多価アルコールとの混合物が、水性インクビヒクルとして典型的である。水とジエチレングリコールとの混合物の場合、インクビヒクルは、通常、30%の水と70%のジエチレングリコールから95%の水と5%のジエチレングリコールまで、より典型的には60%の水と40%のジエチレングリコールから95%の水と5%ジエチレングリコールまでを含む。パーセンテージは、インクビヒクルの総重量を基準とする。水とブチルカルビトールとの混合物も効果的なインクビヒクルである。
【0065】
インクのインクビヒクルの量は、典型的には、インクの総重量に基づいて約70%~約99.8%、より典型的には約80%~約99.8%の範囲にある。
【0066】
インクビヒクルは、界面活性剤、またはグリコールエーテルおよび1,2-アルカンジオールなどの浸透剤を含めることにより、速やかに浸透させる(速乾)ことができる。グリコールエーテルとしては、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、エチレングリコールモノ-iso-プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ-iso-プロピルエーテル、エチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、エチレングリコールモノ-t-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-t-ブチルエーテル、1-メチル-1-メトキシブタノール、プロピレングリコールモノ-t-ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ-iso-プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、およびジプロピレングリコールモノ-イソプロピルエーテルが挙げられる。典型的な1,2-アルカンジオールはC4~C6アルカンジオールであり、1,2-ヘキサンジオールが最も典型的である。適切な界面活性剤としては、エトキシル化アセチレンジオール(たとえばAir Productsから市販されているSurfynol(登録商標)シリーズ)、エトキシ化一級アルコール(たとえばShellから市販されているNeodol(登録商標)シリーズ)および二級アルコール(たとえばUnion Carbideから市販されているTergitol(登録商標)シリーズ)、スルホサクシネート(たとえばCytecから市販されているAerosol(登録商標)シリーズ)、有機シリコーン(たとえばWitcoから市販されているSilwet(登録商標)シリーズ)、およびフルオロ界面活性剤(たとえばDuPontから市販されているZonyl(登録商標)シリーズ)が挙げられる。
【0067】
加えられるグリコールエーテルおよび1,2-アルカンジオールの量は、典型的にはインクの総重量に基づいて約1重量%~約15重量%、より典型的には約2重量%~約10重量%の範囲にある。界面活性剤は、典型的には、インクの総重量に基づいて約0.01%~約5%、より典型的には約0.2%~約2%の量で使用され得る。
【0068】
いかなる特定の粘度範囲またはプリントヘッドにも限定されないが、本開示のインクは、より低い粘度用途に特に好適である。したがって、本開示のインクの粘度(25℃での)は、約15mPa・s未満、または約12mPa・s未満、さらにより有利には約10mPa・s未満であってもよい。
【0069】
(他の成分)
他の成分、添加剤は、そのような他の成分がインクジェットインクの安定性および噴射性を妨げない程度でインクジェットインクに配合され得る。これは、当業者により、日常の実験によって容易に測定され得る。
【0070】
通常、界面活性剤は、表面張力および湿潤特性を調整するためにインクに加えられる。適切な界面活性剤としては、前述のビヒクルの項において開示されたものが挙げられる。たとえば、アニオン性、非イオン性、カチオン性、または両性の界面活性剤を使用することができる。典型的には、界面活性剤は、インクの総重量に基づいて約5重量%までの、より典型的には3重量%までの量で使用される。
【0071】
エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、イミノ二酢酸(IDA)、エチレンジアミン-ジ(o-ヒドロキシフェニル酢酸)(EDDHA)、ニトリロトリ酢酸(NTA)、ジヒドロキシエチルグリシン(DHEG)、トランス-1,2-シクロヘキサンジアミン四酢酸(CyDTA)、ジエチレントリアミン-N,N,N’,N”,N”-五酢酸(DTPA)、およびグリコレテルジアミン-N,N,N’,N’-四酢酸(GEDTA)、並びにこれらの塩などの封止(またはキレート)剤を含むことは、たとえば、重金属不純物の有害作用を除去することに有益であり得る。
【0072】
インクのpHは、典型的には7より大きく、アミン、アルカリまたはアルカリ水酸化物、およびその他の一般的に使用されるpH調整剤などの塩基によって調整することができる。当業者は、インク中の他の成分と適合性を有する適切なpH調整剤を容易に選択することができる。
【0073】
インク組成物の詰まり防止特性を改善するために、米国特許第5272201号明細書(完全に記載されているかのようにあらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる)の中に例示されているものなどの共溶媒が含まれていてもよい。
【0074】
印刷後の硬化を実現するために、特定の試薬をインクジェットインクへの添加剤として使用することができる。印刷後の硬化は、多くの場合、印刷後にサンプルを加熱することで促進される。適切な印刷後硬化剤の例としては、アミドおよびアミン-ホルムアルデヒド樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、およびブロックされたポリイソシアネートが挙げられる。選択された印刷後硬化剤は、インクに可溶性であるか分散性である必要がある。選択された印刷後の硬化剤を含むインクは、保管中に安定である。これは、印刷前に硬化反応が起こらないことを意味する。インクが印刷された後、且つ印刷された画像が熱および任意選択的な圧力で溶融された場合にのみ、印刷後硬化剤は、バインダー、分散剤、インクビヒクル、基材などと化学反応する。印刷後硬化剤の具体的な例は、Cytec,West Patterson,NJのCymel(登録商標)303 ULFである。
【0075】
微生物の増殖を阻害するために殺生物剤が使用されてもよい。
【0076】
(インク特性)
噴射速度、液滴の分離長さ、液滴サイズ、および流れ安定性は、インクの表面張力および粘度に非常に影響を受ける。典型的には、顔料系インクジェットインクは、25℃で約20ダイン/cm~約70ダイン/cmの範囲の表面張力を有する。粘度は、25℃で30cPほどまで高くてもよいが、典型的にはそれよりも低い。インクは、広範囲の放出条件、即ち、ピエゾ素子の駆動周波数、またはドロップオンデマンド型デバイスもしくは連続デバイスにおけるサーマルヘッドの放出条件、並びにノズルの形状およびサイズと適合する物理的特性を有する。インクは、インクジェット装置においてかなりの程度詰まらないように長期間にわたり優れた貯蔵安定性を有するべきである。さらに、インクは、接触するインクジェット印刷装置のパーツを腐食してはならず、且つ基本的に無臭および無毒性でなければならない。
【0077】
(インクセット)
「インクセット」という用語は、インクジェットプリンターが噴射するように備えられた全ての個々のインクまたは他の液体を意味する。典型的には、インクセットは、少なくとも3つの異なって着色されたインクを含む。たとえば、シアン(C)、マゼンタ(M)およびイエロー(Y)インクは、CMYインクセットを形成する。より典型的には、インクセットは、たとえば、CMYKインクセットを形成するためにCMYインクセットにブラック(K)インクを加えることにより、少なくとも4つの異なって着色されたインクを含む。インクセットのブラック、マゼンタ、イエローおよびシアンインクは、典型的には水性インクであり、着色剤として染料、顔料またはこれらの組合せを含むことができる。こうした他のインクは、一般的な意味において当業者に周知である。
【0078】
典型的なCMYKインクに加えて、インクセットは、オレンジインク、グリーンインク、レッドインクおよび/またはブルーインク並びに薄いシアンおよび薄いマゼンタなどの高強度の色および軽強度の色のインクの組合せなどの異なって着色されたインクを含む1つ以上の「色域拡大」インクをさらに含むことができる。これらの「色域拡大」インクは、米国特許出願公開第2003/0128246号明細書に開示されているようなアナログスクリーン印刷の色域をシミュレートするためのテキスタイル印刷において特に有用である。
【0079】
基材
本実施形態は、天然および合成繊維、並びにそれらの様々なブレンドへのインクジェット印刷に特に有利である。天然生地の例としては、綿、絹、および羊毛が挙げられる。合成繊維の例としては、ポリエステル、ナイロン、Nomax(登録商標)、およびKevlar(登録商標)が挙げられる。これらのタイプの生地は、一般的には印刷前に前処理される。
【0080】
(前処理溶液)
本発明で使用される前処理溶液は、インク凝集剤を含む水性組成物である。適切なインク凝集剤としては、カチオン性ポリマー、多価金属塩、有機酸、およびこれらの混合物が挙げられる。前処理溶液の例としては、DuPontのArtistri(登録商標)5001、5002、5003、および5010シリーズが挙げられる。本開示の前処理溶液によって前処理された生地に本開示のインクを印刷すると、前処理溶液中のインク凝集剤が、インク中の着色剤の凝集または「衝突」を引き起こす。
【0081】
(カチオン性ポリマー)
前処理組成物中のカチオン性ポリマーおよびコポリマーは、反対に帯電しているアニオン性着色剤分散液およびアニオン性バインダー分子を基材に引き付けて定着させる。カチオン群には、他のいずれよりも多様な分子構造が存在する。そのようなカチオン性樹脂は、主なポリマー主鎖に対してまたはポリマー鎖の側基として電荷基を組み込むことができ、通常、四級アンモニウム基を含むため、pHレベルに関係なく形式的な正電荷が存在する。スルホニウムまたはホスホニウム基を含むカチオン性ポリマーも合成されている。酸性媒体中でカチオン特性を獲得する用途では弱電解質バージョンが使用され、これらは、一級、二級もしくは三級アミノ基またはそれらの混合物を含むポリアミンに基づく。調製手法は、多くの場合、単純な水溶液中での且つ油中水型エマルジョンとしての鎖成長および段階成長メカニズムによる重合並びに既存のポリマーの変性を網羅する。
【0082】
前処理コーティングにおいて使用するためのカチオン性ポリマーとしては、限定するものではないが、ジアリルジメチルアンモニウムクロリドなどのジアリルジアルキルアンモニウムモノマーのポリマーおよびコポリマー(ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド(PDADMAC)等);ポリアクリルオキシエチルジメチルアンモニウムクロリドまたはポリアクリルアミドエチルジメチルアンモニウムクロリドなどのカチオン性アクリレートおよびアクリルアミドのポリマーおよびコポリマー;ポリメチルビニルピリジンクロリドなどの四級化ビニルピリジンのポリマーおよびコポリマー;ポリアルキルアミンおよび四級アンモニウムのポリマーおよびコポリマー;直鎖および分岐ポリエチレンイミン;ポリビニルアミン;並びにエピハロヒドリン-アミンポリマー、フランスのSNF Inc.のFLOQUAT(登録商標)FL2650およびAshland Inc (Wilmington, Del)のKYMENE(登録商標)557LXポリマーなどのエピクロロヒドリンから誘導されたポリマーおよびコポリマーを挙げることができる。そのような系中のコモノマーは、ポリマー分子の柔軟性、疎水性または機械的特性を変更するものから構成され得る。さらに、基材への付着性を強化するために反応性および/または自己縮合性モノマーが入れられ得る。
【0083】
元々備わっているカチオン特性を有する天然起源のポリマーも存在するか、またはカチオン性高分子電解質を得るためにポリマーが変性され得る。これらのうちの最も有力なものは、キトサンである。他の例としては、カチオン性デンプン、カチオン性ポリマー変性クラフトリグニン並びにカチオン性グラフト化アミロペクチン、グアーガムおよび多糖が挙げられる。
【0084】
(多価カチオン塩)
本発明の前処理剤は、1種または複数種の多価カチオンを含む。特定の状況で必要とされる有効量は、変動することができ、本明細書に記載されているいくらかの調整が一般的に必要である。
【0085】
「多価」は、2以上の酸化状態を示し、元素「Z」については、典型的にはZ2+、Z3+、Z4+などと記載される。簡潔にするために、多価カチオンは、本明細書ではZxとして言及され得る。多価カチオンは、前処理水溶液に実質的に可溶性であり、好ましくは実質的にイオン化された状態で(溶液中に)存在するため、これらは、媒体が前処理溶液にさらされる際にフリーであり、非多孔質または低多孔質媒体と相互作用できる形態である。
【0086】
Zxとしては、これらに限定されるものではないが、以下の元素の多価カチオンが挙げられる:Mg、Ca、Sr、Ba、Sc、Y、La、Ti、Zr、V、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ni、Pd、Pt、Cu、Au、Zn、Al、Ga、In、Sb、Bi、Ge、Sn、Pb。別の実施形態では、多価カチオンは、Ca、Ba、Ru、Co、ZnおよびGaの少なくとも1つを含む。さらに別の実施形態では、多価カチオンは、Ca、Ba、Ru、Co、ZnおよびGaの少なくとも1つを含む。好ましくは、多価カチオンは、Caである。
【0087】
Zxは、塩の形態で添加することにより、またはアルカリの形態で添加することにより、前処理溶液中に組み込むことができ、前処理溶液のpHの調整において塩基として使用され得る。
【0088】
関連するアニオン性材料は、任意の一般的なアニオン性材料、特にハロゲン化物、硝酸塩および硫酸塩から選択することができる。アニオンの形態は、多価カチオンが前処理水溶液に溶解するように選択される。多価カチオン塩は、それらの水和形態で使用することができる。
【0089】
Caについて、好ましい多価カチオン塩は、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、硝酸カルシウム水和物およびこれらの混合物である。
【0090】
(有機酸)
前処理組成物は、カルボン酸、それらの誘導体、およびそれらの組み合わせなどの、水溶性(25℃で望ましくは10g/l以上、より望ましくは25g/l以上、好ましくは50g/l以上の濃度で水溶性)の有機酸成分も含有する。水溶性有機酸の機能は、前処理で塗布されたアニオンコロイド安定化インクの凝固を助けることである。有機酸は、1つ以上のカルボン酸基を有することができる。カルボン酸は、通常、1~20個の炭素、好ましくは1~10個の炭素を有する。好ましい有機酸としては、ギ酸、酢酸、クエン酸、酒石酸、イタコン酸、およびシュウ酸が挙げられる。
【0091】
前処理溶液は、ポリマー系バインダー2をさらに含み得る。ポリマー系バインダー2は、塗布後、任意選択的には乾燥およびそれ自体の化学硬化/架橋またはその架橋剤を介した表面への架橋後に、膜または層を形成することによって、結合/結合剤(バインダー)として機能する。当該技術分野で知られているように、バインダーは塗布後に化学的または物理的遷移を経る。化学的または物理的遷移は、凝結、乾燥、加熱、硬化、架橋などであってよい。ポリマー系バインダー2はインク凝集剤ではない。
【0092】
好ましいポリマー系バインダー2は、非イオン性ポリマーである。このようにして形成される非イオン性ポリマー/インク凝集剤溶液は、コーティングされた媒体の処理を可能にするために、溶液としてまたは安定エマルジョンとして安定でなければならない。非イオン性ポリマーがゲル化するか、または、たとえば多価カチオン塩溶液などのインク凝集剤の存在下でそのエマルジョンが析出する場合、それは、前処理添加剤として使用することができない。非イオン性ポリマーがインク凝集剤の存在下で安定であるか否かを決定するためのスクリーニング試験は、10重量%のポリマー(乾量基準)と15重量%の硝酸カルシウム四水和物とを混合し、溶液/エマルジョンが安定であるか否かを観察することである。安定性は、周囲温度(約25℃)において10分および24時間で観察される。非イオン性ポリマー成分は、安定な非イオン性ポリマー/多価カチオン溶液/エマルジョン混合物を与えなくてはならない。
【0093】
いくつかの適切な相溶性の非イオン性ポリマー系バインダーとしては、たとえば、アクリル、ウレタン、ポリエステル、ポリアミド、ポリビニル、ポリエーテル、ポリアミン、およびセルロース構造に基づく非イオン性水溶性ポリマー、またはアクリルラテックス、ポリウレタン分散液、酢酸ビニルコポリマーラテックス、ポリエステル、およびポリアミド分散液などの分散ポリマーが挙げられる。これらのポリマーは、限定するものではないが、フリーラジカル、グループトランスファー、イオン、RAFT、縮合および他のタイプの重合を含む任意の公知のプロセスによって製造することができる。
【0094】
非イオン性ポリマーは、化学的に結合させるかまたは物理的に吸収させるかのいずれかで非イオン性安定剤をポリマー中に組み込むことによって形成することができる。非イオン性反応性成分の例としては、エチレンオキシド誘導体、アクリルアミド、ヒドロキシエチル置換モノマー、ビニルピロリドン、エチレンイミンなどが挙げられる。組み込みは、重合工程中またはラテックスポリマーを調製する重合工程後に行うことができる。エチレンオキシド非イオン性成分の場合、置換は、非イオン性での安定性を付与するのに十分な(-CH2-CH2O-)n単位を有するグリコールを組み込む形態を取ることができる。たとえば、ポリウレタンは、非イオン性ポリウレタンに組み込まれたアルキルポリエチレングリコールを有し得る。非イオン性成分は、その特性が上述した安定性試験を満たす限り、非イオン性ラテックスポリマー中の主成分であり得る。
【0095】
非イオン性ラテックスポリマーは、ポリマーに組み込まれたイオン性成分も有し得る。例として、ポリウレタンについては、酸などのイオン性成分をポリウレタン反応で使用することができ、具体的な酸の例は、ジメチロールプロピオン酸である。アシルアミドおよびヒドロキシエチル置換非イオン性ラテックスポリマーについては、イオン源は(メタ)アクリル酸からのものであり得る。非イオン性ラテックスポリマー/多価カチオン溶液の不安定性をもたらすイオン性成分とインク凝集剤との錯化の可能性のため、非イオン性ラテックスポリマー中のイオン性成分の量には制限が存在する。非イオン性成分とイオン性成分とのバランスにより、上述したような安定した溶液が得られなければならない。
【0096】
存在する場合、非イオン性ポリマーは、有利には、インクの総重量を基準として少なくとも約0.3%、典型的には少なくとも約0.6%のレベルで使用される。上限は、前処理液の粘度または他の物理的制限によって決定される。より典型的な実施形態では、前処理液の総重量を基準として約50%以下、さらに最も典型的には約45%以下の非イオン性ポリマーが前処理組成物中に存在する。
【0097】
前処理溶液は、テキスタイル基材をインク凝集剤で適切にコーティングするのに十分な量のインク凝集剤を含む必要がある。典型的には、前処理溶液は、少なくとも約5重量%のインク凝集剤を含む。好ましくは、前処理剤は、約8重量%~約70重量%、より好ましくは最大約45重量%のインク凝集剤を含む。インク凝集剤の重量基準は、前処理溶液の総重量に基づいている。
【0098】
生地への前処理の適用は、任意の従来の方法であってもよく、そのような方法は関連技術分野で広く周知である。好ましい前処理適用方法の一例は、パディングと呼ばれる。パディングでは、生地を前処理溶液に浸漬した後、飽和した生地を、過剰の溶液を絞るニップローラに通す。生地中に保持される溶液の量は、ローラーにかけられるニップ圧によって制御することができる。他の前処理技術としては、生地の表面、または表面と裏面に噴霧することによって溶液を塗布する噴霧塗布、およびインクジェットプリントヘッドから溶液を噴射する噴射塗布が挙げられる。
【0099】
以下の実施例は、本発明を例示するが、それに限定されない。
【実施例】
【0100】
本発明を以下の実施例によりさらに例示するが、本発明は、これらに限定されず、特に注釈しない限り、部およびパーセントは、重量によるものである。
【0101】
(インク用ポリマー系バインダー1)
比較ポリマー、ポリエーテル系ポリウレタンポリマー
滴下漏斗、コンデンサー、スターラー、および窒素ガスラインを備えた、アルカリおよび酸を含まない乾燥したフラスコに、Invistaのポリエステルジオールである843gのTerathane(登録商標)1400、400gのアセトン、および0.06gのDBTLを入れた。混合物を40℃まで加熱し、完全に混合した。混合物に、40℃で60分間かけて滴下漏斗から275gのIPDIを添加し、残留IPDIを滴下漏斗から10gのアセトンですすぎ洗いしてフラスコの中へ入れた。
【0102】
フラスコ温度を50℃に上げ、30分間保持し、次いで57gのDMPA、その後34gのTEAを滴下漏斗によってフラスコに入れ、漏斗を10gのアセトンですすぎ洗いした。フラスコ温度を再び50℃に上げ、NCO%が1.23%以下になるまで50℃で保持した。
【0103】
50℃の温度で、2390gの脱イオン(DI)水を10分間かけて添加し、続いて82gのTETA(10%水溶液として)を滴下漏斗から5分かけて添加し、これをその後80.0gの水ですすぎ洗いした。混合物を1時間50℃で保持し、次に室温に冷却した。
【0104】
アセトン(約423.0g)を真空下で除去し、約35.0重量%固形分のポリウレタンの最終分散液を残した。
【0105】
ポリマーA
ポリマーAは、米国特許出願公開第2005/0215663号明細書(完全に記載されているかのようにあらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる)の「Polyurethane Dispersoid(PUD EX 1)」に開示されているものと同じ手順に従って調製した。
【0106】
ポリマーB、スチレンアクリルエマルジョン
2つの滴下漏斗、コンデンサー、スターラー、および窒素ガスラインを備えた、アルカリおよび酸を含まない乾燥した反応フラスコに、6.9gのEleminol JS-20、4.9gのPolystep B-1、および1249gの脱イオン水を入れた。その後、混合物を撹拌し、窒素でパージしながら88℃に加熱した。これとは別に、61.3gのヒドロキシエチルアクリレート、70.7gのN-メチロールメタクリルアミド、47.8gのメタクリル酸、573.6gのメタクリル酸メチル、398.3gのスチレン、および462gの2-エチルヘキシルアクリレートからなるモノマー混合物を、19.7gのEleminol JS-20と13.8gのPolystep B-1とが入っている978gの脱イオン水に添加した。得られた混合物を、安定なプレエマルジョン供給物が形成されるまで十分な時間撹拌した。反応フラスコに取り付けられた滴下漏斗にプレエマルジョン供給物を入れ、窒素で20分間パージした。150gの中身をフラスコの中に一度に投入した。フラスコの温度は88℃に保たれた。これとは別に、169gの水の中に7.9gの過硫酸アンモニウムが入っている開始剤供給物を調製し、反応フラスコに取り付けられた2つ目の滴下漏斗に入れた。窒素で10分間パージした後、60gの中身をフラスコの中に一度に放出した。フラスコ温度の温度は88℃で一定に保たれた。残りのプレエマルジョン供給物および開始剤供給物は、温度が88℃で一定に保たれている間に、100分かけてフラスコに同時に供給した。供給が完了した後、温度を88℃でさらに60分間保持し、その後65℃に冷却した。温度が65℃に達した後、40gのアンモニアが入っている中和溶液を20分かけて176gの脱イオン水に供給し、65℃で180分間保持した際に、フラスコを室温まで冷ました。得られたエマルジョンは35%の固形分を有していた。
【0107】
ポリマー系バインダー1として適したいくつかの追加のポリマーを以下の表1に示す。
【0108】
【0109】
(顔料分散液)
シアン顔料分散液
シアン分散液は、その開示が完全に記載されているかのようにあらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2012/0214939号明細書に開示されている手順を用いて調製した。シアンTRB2顔料を用い、分散剤を、顔料を分散させた後に架橋した。
【0110】
イエロー顔料分散液
イエロー分散液は、イエロー顔料PY155を使用することを除いてシアン分散液と同様に調製した。
【0111】
マゼンタ顔料分散液
マゼンタ分散液は、マゼンタ顔料PR122を使用することを除いてシアン分散液と同様に調製した。
【0112】
ブラック顔料分散液
ブラック分散液は、カーボンブラック顔料を使用することを除いてシアン分散液と同様に調製した。
【0113】
分散染料分散液
分散染料分散液は、Diamond Dispersions Ltd. Sheffield, UKから供給された。いくつかの分散染料分散液を以下の表2に示す。
【0114】
【0115】
ディスパースレッド染料分散液、DSM Plus Red60、およびポリマー系バインダー1を混合し、以下の表3の重量%に基づいて水で希釈した。
【0116】
【0117】
試験したポリマーには、表1に列挙されている比較ポリマー、ポリマーA、ポリマーB、およびその他のポリマー系バインダー1が含まれていた。ポリマーと染料との各混合物は、ブロードットプロセスを使用して、綿100%のGildan Tシャツ生地にコーティングした。ブロードットプロセスでは、ガラス毛細管を使用して生地に円形の画像を形成し、溶液を引き上げた。次いで、加圧空気を10cmの測定距離で生地片に向けた。充填された毛細管を空気流の前に配置し、毛細管の底から溶液を生地に吹き付けて円形の画像を形成した。コーティングされた生地を、Stahls Hottronix (Carmichaels, PA)製のSTX20トランスファープレスを用いて180℃で90秒間ヒートプレスした。X-Rite比色計を使用して色を測定した。4つの繰り返しのドットからの平均の発色OD(光学濃度)を得た。これは以下の表4に列挙されている。光学濃度の結果は、DSM Plus Red60と組み合わせた場合に、ポリマー系バインダー1が比較ポリマーまたはポリマーなしよりも優れていることを示している。
【0118】
【0119】
インク実施例は、インクジェット技術分野における標準的な手順に従って製造した。インク調製の例として、インクビヒクルを調製し、撹拌しながらポリマー系バインダー1の水溶液に添加した。均一な混合物が得られるまで撹拌した後、溶液を着色剤分散液に添加し、均一なインク混合物が得られるまで撹拌した。このようにしてインク1~4および比較インク1~4を調製した。成分の量は下の表5に記載されている。成分量は、最終的なインクの総重量を基準とした重量パーセントである。
【0120】
【0121】
印刷に使用された生地には、Top Value Fabrics (Carson, CA)から供給された綿100%の生地であるDELMAR-3272E;Top Value Fabricsから供給されたスポーツTシャツ用のポリエステル100%の生地であるStealth S/904;およびGeorg+Otto Friedrich, a Gross-Zimmern Germanyから供給されたポリエステル100%の生地であるJETFLAG-L(登録商標)6050Kが含まれていた。印刷の前に、生地にDuPont Artistri P5010前処理溶液を噴霧した。前処理された生地を、Stahls' Hotronix (Carmichaels, PA)製のトランスファープレスSTX20を使用して、中程度の圧力下、165℃で90秒間ヒートプレスして乾燥した。生地を、ラボ印刷システムを使用して、表5に列挙されているインク実施例で印刷した。この印刷システムでは、取り付けられた固定式のSeiko (Tokyo, Japan) GS255プリントヘッドから、下にある回転シリンダーに保持されている生地にインクを噴射した。約12g/m2のインク被覆率で、4インチ×8インチのソリッドカラーブロックを印刷した。その後、印刷した生地を、コンベヤベルト上のトンネル乾燥機を165℃で5分間通すことによって硬化した。トンネル乾燥機は、Brown Manufacturing (Wyoming, MI)製のDragonAir Fire(商標) 3611であった。反射率(%)および色は、X-Rite比色計を使用して測定した。L*、a*、b*、彩度(Chroma)、および色相*が出力として報告された。K/S値で表される色の濃さは、次の式を使用して計算した:
K/S=[{(1-R)2/2R}]
(式中、Rは反射率%であり、Kは吸光度であり、Sは散乱である)。
CMY色の別の色の濃さの指標である彩度(Saturation)は、次の式を使用して計算した:
彩度(Saturation)=彩度(Chroma)/L*
【0122】
下の表6~9に示されているように、顔料と分散染料とのブレンドを含むインク1、2、3、および4のカラーデータは、着色剤として顔料のみを含む比較のインクよりも強い色の濃さを示した。
【0123】
【0124】
【0125】
【0126】