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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】アンテナ装置および無線通信装置
(51)【国際特許分類】
   H01Q 5/378 20150101AFI20231219BHJP
   H01Q 9/30 20060101ALI20231219BHJP
   H01Q 5/385 20150101ALI20231219BHJP
   H01Q 1/24 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
H01Q5/378
H01Q9/30
H01Q5/385
H01Q1/24 Z
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021553204
(86)(22)【出願日】2019-10-23
(86)【国際出願番号】 JP2019041501
(87)【国際公開番号】W WO2021079430
(87)【国際公開日】2021-04-29
【審査請求日】2022-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】318012780
【氏名又は名称】FCNT株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】篠島 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】古賀 洋平
(72)【発明者】
【氏名】伴 泰光
(72)【発明者】
【氏名】殿岡 旅人
(72)【発明者】
【氏名】▲崎▼田 聡史
(72)【発明者】
【氏名】吉川 学
【審査官】赤穂 美香
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0288074(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0258979(US,A1)
【文献】特開2004-201278(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 5/378
H01Q 9/30
H01Q 5/385
H01Q 1/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体基板と、
前記誘電体基板の一方の面に設けられ、一端が前記誘電体基板の他方の面に設けられた給電部と電気的に接続され、第1周波数の電波で動作する板状の第1アンテナ素子と、
前記誘電体基板の平面視において少なくとも一部が前記第1アンテナ素子と重なるように前記他方の面に設けられ、一端が前記他方の面に設けられた接地部と電気的に接続されるとともに他端と前記給電部との距離が前記他端と前記接地部との距離よりも短く設定され、第2周波数の電波で動作する板状の第2アンテナ素子と、を備え、
前記他端は、前記給電部に向けて配置される、
アンテナ装置。
【請求項2】
前記第2アンテナ素子の前記他端と前記第1アンテナ素子が容量結合することを特徴とする、
請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記第1アンテナ素子は、前記第1周波数の電波の波長の1/4の長さを有するモノポールアンテナであり、
前記第2アンテナ素子は、前記第2周波数の電波の波長の1/4の長さを有するモノポールアンテナである、
請求項1または2に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記第2アンテナ素子の前記他端と前記給電部との距離は2mm以下である、
請求項1から3のいずれか一項に記載のアンテナ装置。
【請求項5】
前記第1アンテナ素子および前記第2アンテナ素子は、屈曲する部分を有する、
請求項1から4のいずれか一項に記載のアンテナ装置。
【請求項6】
前記第2アンテナ素子は前記第1アンテナ素子よりも短く形成される、
請求項1から5のいずれか一項に記載のアンテナ装置。
【請求項7】
前記誘電体基板の平面視において少なくとも一部が前記第1アンテナ素子と重なるように前記他方の面に設けられ、第3の周波数で動作する板状の第3アンテナ素子をさらに備え、
前記第3アンテナ素子は、前記第3アンテナ素子の一端が前記接地部と電気的に接続され、前記第3アンテナ素子の他端と前記給電部との距離前記第3アンテナ素子の前記他端と前記接地部との距離よりも短く設定される
請求項1から6のいずれか一項に記載のアンテナ装置。
【請求項8】
前記第3アンテナ素子は、前記第3周波数の電波の波長の1/4の長さを有するモノポールアンテナである、
請求項7に記載のアンテナ装置。
【請求項9】
前記第1アンテナ素子と少なくとも一部が併走するように前記一方の面に設けられ、一端が前記他方の面に設けられた前記接地部と電気的に接続されるとともに他端が前記第1アンテナ素子の一端に向けて延び、第4周波数の電波で動作する板状の第4アンテナ素子をさらに備える、
請求項1から8のいずれか一項に記載のアンテナ装置。
【請求項10】
前記第4アンテナ素子は、前記第4周波数の電波の波長の1/4の長さを有するモノポールアンテナである、
請求項9に記載のアンテナ装置。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載のアンテナ装置を備える、
無線通信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナ装置および無線通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スマートフォン、タブレット型コンピュータ、車載用アンテナを備えた車両等の無線通信装置は、例えば高速通信を実現するために、複数の周波数帯を用いた通信を行っている。そのため、無線通信装置には、複数の周波数帯に対応するアンテナ装置が搭載されている。
【0003】
例えば、特許文献1では、第1のアンテナエレメントの水平部を上側に第2のアンテナエレメントの水平部を下側に重ねて配置し、第1のアンテナエレメントと第2のアンテナエレメントの給電点を共通にすることでデュアルバンドに対応する内蔵アンテナが開示されている。特許文献2では、複数の逆Fアンテナを備えることで複数の周波数に対応するアンテナ装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-269301号公報
【文献】特表2006-524940号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年では、複数のアンテナ素子を同一平面上に併走させたアンテナ装置も利用されている。アンテナ素子は、例えば、Laser Direct Structuring(LDS)等によって薄く形成される。同一平面上に併走する複数のアンテナ素子は、互いの側面で容量結合することになるため、容量結合によって生じる結合容量(静電容量)はアンテナ素子の厚みに依存する。アンテナ素子は薄く形成されるため、結合容量は小さくなりやすい。このようなアンテナ装置は、小さい結合容量によってハイパスフィルタ(HPF)の特性が顕著になり、低い周波数(例えば、2GHz以下)における性能が低下する問題があった。また、複数のアンテナ素子を同一平面上に併走させるとアンテナ装置の面積が増大するため、アンテナ装置や当該アンテナ装置を実装する無線通信装置の小型化にも好ましい設計ではなかった。
【0006】
開示の技術の1つの側面は、複数の周波数に対して動作可能であるとともに小型化が容易なアンテナ装置および当該アンテナ装置を備えた無線通信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
開示の技術の1つの側面は、次のようなアンテナ装置によって例示される。本アンテナ装置は、誘電体基板と、前記誘電体基板の一方の面に設けられ、一端が前記誘電体基板の他方の面に設けられた給電部と電気的に接続され、第1周波数の電波で動作する板状の第1アンテナ素子と、前記誘電体基板の平面視において少なくとも一部が前記第1アンテナ素子と重なるように前記他方の面に設けられ、一端が前記他方の面に設けられた接地部と電気的に接続されるとともに他端が前記接地部よりも前記給電部に近い位置に存在し、第2周波数の電波で動作する板状の第2アンテナ素子と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
開示の技術は、複数の周波数に対して動作可能であるとともに小型化が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施形態に係るアンテナ装置の一例を示す図である。
図2図2は、実施形態に係るアンテナ装置を+Z方向から平面視した図である。
図3図3は、比較例に係るアンテナ装置の一例を示す図である。
図4図4は、第1変形例に係るアンテナ装置の一例を示す図である。
図5図5は、第1変形例に係るアンテナ装置を+Z方向から平面視した図である。
図6図6は、第2変形例に係るアンテナ装置の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態について説明する。以下に示す実施形態の構成は例示であり、開示の技術は実施形態の構成に限定されない。実施形態に係るアンテナ装置は、
誘電体基板と、
前記誘電体基板の一方の面に設けられ、一端が前記誘電体基板の他方の面に設けられた給電部と電気的に接続され、第1周波数の電波で動作する板状の第1アンテナ素子と、
前記誘電体基板の平面視において少なくとも一部が前記第1アンテナ素子と重なるように前記他方の面に設けられ、一端が前記他方の面に設けられた接地部と電気的に接続されるとともに他端が前記接地部よりも前記給電部に近い位置に存在し、第2周波数の電波で動作する板状の第2アンテナ素子と、を備える。
【0011】
本アンテナ装置は、例えば、誘電体基板の他方の面をグランド基板に向けて設置される。給電部は、例えば、グランド基板に設けられた給電点と電気的に接続されることで第1アンテナ素子への給電を行う。接地部は、例えば、グランド基板に設けられた接地端子と電気的に接続されることで、第2アンテナ素子を接地する。
【0012】
本アンテナ装置は、誘電体基板の平面視において、板状の第2アンテナ素子の少なくとも一部が板状の第1アンテナ素子と重なるように配置される。本アンテナ装置は、第1アンテナ素子の下面と第2アンテナ素子の上面とを容量結合させることができるため、第1アンテナ素子と第2アンテナ素子の結合容量を第1アンテナ素子と第2アンテナ素子とが同一平面上に併走される場合よりも大きくすることができる。そのため、本アンテナ装置は、ハイパスフィルタの特性を緩和することができ、ひいては、低い周波数(例えば、周波数2GHz以下)の電波に対しても好適なアンテナ性能を実現することができる。
【0013】
さらに、本アンテナ装置は、第2アンテナ素子の他端が給電部の近くに配置される。本アンテナ装置は、このような特徴により、第1アンテナ素子と第2アンテナ素子の結合容量をさらに大きくすることができ、ひいては、低い周波数の電波に対するアンテナ性能を向上させることができる。
【0014】
また、本アンテナ装置では、第1アンテナ素子と第2アンテナ素子とを誘電体基板の異なる面にそれぞれ配置する。そのため、第1アンテナ素子と第2アンテナ素子とを同一面上に併走させるアンテナ装置よりも、アンテナ素子の設置面積を縮小することができる。すなわち、本アンテナ装置は、アンテナ装置の小型化が容易である。
【0015】
ここで、第1アンテナ素子は、第1周波数の電波の波長の1/4の長さを有するモノポールアンテナであってもよく、第2アンテナ素子は、第2周波数の電波の波長の1/4の長さを有するモノポールアンテナであってもよい。また、前記第2アンテナ素子の他端と前記給電部との距離は、可及的に近いことが好ましく、その距離は、例えば、2mm以下である。
【0016】
本アンテナ装置は、次の特徴を有してもよい。前記第1アンテナ素子および前記第2アンテナ素子は、屈曲する部分を有する。第1アンテナ素子および第2アンテナ素子が屈曲する部分を有することで、アンテナ装置をより小型化することができる。
【0017】
本アンテナ装置は、次の特徴を有してもよい。前記第2アンテナ素子は前記第1アンテナ素子よりも短く形成される。すなわち、第2アンテナ素子は、第1アンテナ素子よりも高い周波数で動作するアンテナ素子である。第1アンテナ素子が動作する第1周波数は、例えば、2GHzであり、第2アンテナ素子が動作する第2周波数は、例えば、2.5GHzである。このような特徴を有することで、誘電体基板の平面視において第1アンテナ素子と少なくとも一部が重なるようなアンテナ素子の追加が容易になる。
【0018】
本アンテナ装置は、次の特徴を有してもよい。前記誘電体基板の平面視において少なくとも一部が前記第1アンテナ素子と重なるように前記他方の面に設けられ、一端が前記接地部と電気的に接続され、他端が前記接地部よりも前記給電部に近い位置に存在し、第3周波数の電波で動作する板状の第3アンテナ素子をさらに備える。第3アンテナ素子も、第2アンテナ素子と同様に、第1アンテナ素子と第3アンテナ素子との結合容量を大きいものとすることができる。ここで、前記第3アンテナ素子は、前記第3周波数の電波の波長の1/4の長さを有するモノポールアンテナであってもよい。第3周波数は、例えば、3.5GHzである。
【0019】
本アンテナ装置は、次の特徴を有してもよい。前記第1アンテナ素子と少なくとも一部が併走するように前記一方の面に設けられ、一端が前記他方の面に設けられた接地部と電気的に接続されるとともに他端が前記第1アンテナ素子の一端に向けて延び、第4周波数の電波で動作する板状の第4アンテナ素子をさらに備える。第4アンテナ素子と電気的に接続される接地部は、第2アンテナ素子が接続される接地部であってもよいし、他の接地部であってもよい。第4アンテナ素子は、少なくとも一部が第1アンテナ素子と併走する。また、第4アンテナ素子の他端は、第1アンテナ素子において強い電流が生じる第1アンテナ素子の一端に向けて延びる。そのため、第1アンテナ素子と第4アンテナ素子の結合容量を大きいものとすることができる。ここで、第4アンテナ素子は、第4周波数の電波の波長の1/4の長さを有するモノポールアンテナであってもよい。ここで、第4周波数は、例えば、5GHzである。
【0020】
開示の技術は、上記アンテナ装置を備える無線通信装置であってもよい。無線通信装置としては、例えば、スマートフォン、フィーチャーフォン、タブレット型コンピュータ、ノートブック型コンピュータ、ウェアラブルコンピュータ等を挙げることができる。
【0021】
<実施形態>
以下、図面を参照して、実施形態についてさらに説明する。図1は、実施形態に係るアンテナ装置の一例を示す図である。図1に例示されるアンテナ装置1は、LDS基板100、第1アンテナ10および第2アンテナ20を含む。アンテナ装置1は、例えば、グランド基板200上に設けられる。図1において、表面110側から見えない部分については点線で図示している。以下、本明細書において、+Z方向を上方向とも称し、-Z方向を下方向とも称する。アンテナ装置1は、「アンテナ装置」の一例である。
【0022】
LDS基板100は、例えば、LDS用の樹脂で形成される。LDS用の樹脂は、例えば、誘電体である。図1に例示されるLDS基板100は、表面110および裏面120が正方形に形成された直方体となっている。表面110および裏面120は、LDS基板110の底面である。図1に例示されるLDS基板100では、表面110および裏面120の縦横はそれぞれ12mmであり、その面積は144mmとなっている。LDS基板100は、裏面120をグランド基板200に向けて、グランド基板200上に設けられる。なお、図1に例示されるLDS基板100では表面110および裏面120は正方形に形成されているが、表面110および裏面120は正方形以外の形状に形成されてもよい。LDS基板100は、「誘電体基板」の一例である。表面110は、「一方の面」の一例である。裏面120は、「他方の面」の一例である。
【0023】
第1アンテナ10は、第1周波数(例えば、2GHz)の電波で動作するモノポールアンテナである。第1アンテナ10は、LDSによって薄い板状に形成される。すなわち、第1アンテナ10は、側面よりも上面および下面の方が広く形成される。第1アンテナ10は、LDS基板100の表面110に設けられる。
【0024】
第1アンテナ10の一端11は、LDS基板100に設けられたビア130を介して裏面120に設けられた給電部13と電気的に接続される。第1アンテナ10の他端12は、第1アンテナ10において、給電部13からの電気的な距離が最も遠いことから弱い電流が存在する領域となる。図1では、第1アンテナ10は、第1周波数の電波での動作に好適なアンテナ長(例えば、第1周波数の電波の波長の1/4)をLDS基板100の表面110上の限られた面積内で確保できるように一端11と他端12との間で屈曲させている。しかしながら、第1周波数の電波での動作に好適なアンテナ長を確保できるのであれば、第1アンテナ10は屈曲しなくともよい。第1アンテナ10は、「第1アンテナ素子」の一例である。給電部13は、「給電部」の一例である。
【0025】
第2アンテナ20は、第2周波数(例えば、2.5GHz)の電波で動作する無給電のモノポールアンテナである。第2アンテナ20は、LDSによって薄い板状に形成される。すなわち、第2アンテナ20は、側面よりも上面および下面の方が広く形成される。第2アンテナ20は、LDS基板100の裏面120に設けられる。
【0026】
第2アンテナ20の一端21は、LDS基板100の裏面120に設けられた接地部23と電気的に接続される。第2アンテナ20の他端22は、接地部23よりも給電部13に近い位置に配置される。すなわち、第2アンテナ20において弱い電流が存在する領域となる他端22が、強い電流が存在する領域となる給電部13の近くに配置される。接地部23は、「接地部」の一例である。
【0027】
第2アンテナ20が動作する第2周波数は第1アンテナ10が動作する第1周波数よりも高いため、第2アンテナ20の長さは第1アンテナ10の長さよりも短く形成される。図1では、第2アンテナ20は、第2周波数の電波での動作に好適なアンテナ長(例えば、第2周波数の電波の波長の1/4)をLDS基板100の裏面120上の限られた面積内で確保できるように一端21と他端22との間で屈曲させている。しかしながら、第2周波数の電波での動作に好適なアンテナ長を確保できるのであれば、第2アンテナ20は屈曲しなくともよい。
【0028】
第2アンテナ20の他端22と給電部13との間の距離(間隔)は、互いに接触しない範囲で可及的に狭いことが好ましい。第2アンテナ20の他端22と給電部13との間の距離(間隔)は、例えば、第1周波数が1GHzである場合には2mm以下、第1周波数が2GHzである場合には1mm以下、第1周波数が4GHzである場合には0.5mm以下であることが好ましい。第2アンテナ20は、「第2アンテナ素子」の一例である。
【0029】
グランド基板200には、給電点と接地端子とが設けられる。給電部13がグランド基板200の給電点と電気的に接続されることで、第1アンテナ10が給電される。グランド基板200の接地端子は、接地された端子である。接地部23がグランド基板200の接地端子と電気的に接続されることで、第2アンテナ20が接地される。
【0030】
図2は、実施形態に係るアンテナ装置を+Z方向から平面視した図である。図2では、平面視において第1アンテナ10と第2アンテナ20とが重なっている領域R1を斜線で示している。なお、図2では、グランド基板200の図示は省略している。図2の領域R1が例示するように、第2アンテナ20は、平面視において少なくとも一部が第1アンテナ10と重なるように配置される。第2アンテナ20は、可及的に第1アンテナ10と重なるように配置されることが好ましい。このように配置されることで、アンテナ装置1では、板状に形成された第1アンテナ10の下面と板状に形成された第2アンテナ20の上面とで容量結合させることができる。
【0031】
<比較例>
図3は、比較例に係るアンテナ装置の一例を示す図である。比較例に係るアンテナ装置800は、LDSによって形成される第1アンテナ810および第2アンテナ820がLDS基板830の同一面状において略平行に設けられる。このように設けられた第1アンテナ810と第2アンテナ820とは、互いの側面間で容量結合される。
【0032】
第1アンテナ810および第2アンテナ820は、LDSによって薄い板状に形成されるモノポールアンテナである。第1アンテナ810の一端811は給電点(図示を省略)と電気的に接続され、他端812は給電点から離れる方向に向けて延びている。第2アンテナ820の一端821は給電点の近傍において接地され、他端822は給電点から離れる方向に向けて延びている。
【0033】
<実施形態と比較例との比較>
比較例に係るアンテナ装置800では、第1アンテナ810と第2アンテナ820の容量結合は、互いの側面で行われる。薄い板状に形成された第1アンテナ810と第2アンテナ820では、側面の面積は上面や下面の面積と比較して極めて狭くなる。そのため、比較例に係るアンテナ装置800では、第1アンテナ810と第2アンテナ820の結合容量は、例えば、0.003pFとなる。このように結合容量が小さいアンテナ装置800ではハイパスフィルタの特性が顕著となる。その結果、アンテナ装置800では、2GHz以下の周波数においてアンテナ性能が低下しやすい。
【0034】
一方、実施形態に係るアンテナ装置1では、第1アンテナ10と第2アンテナ20の容量結合は、第1アンテナ10の下面と第2アンテナ20の上面とで行われる。第1アンテナ10および第2アンテナ20において、上面や下面の面積は、側面と比較して極めて大きくなる。そのため、実施形態に係るアンテナ装置1では、第1アンテナ10と第2アンテナ20との結合容量が、例えば、0.095pFとなる。このように、実施形態に係るアンテナ装置1では、第1アンテナ10と第2アンテナ20との結合容量を比較例に係るアンテナ装置800の第1アンテナ810と第2アンテナ820の結合容量よりも大きくすることができる。このような特徴により、実施形態に係るアンテナ装置1は、比較例に係るアンテナ装置800よりもハイパスフィルタの特性を緩和することができ、ひいては、周波数2GHz以下の電波に対しても好適なアンテナ性能を実現することができる。
【0035】
さらに、実施形態に係るアンテナ装置1では、比較例に係るアンテナ装置800とは異なり、第2アンテナ20の他端22が給電部13の近くに配置される。実施形態に係るアンテナ装置1は、このような特徴により、第1アンテナ10と第2アンテナ20の結合容量をさらに大きくすることができ、ひいては、周波数2GHz以下の電波に対するアンテナ性能を比較例に係るアンテナ装置800よりも向上させることができる。
【0036】
また、実施形態に係るアンテナ装置1では、第1アンテナ10と第2アンテナ20とをLDS基板100の異なる面にそれぞれ配置する。そのため、第1アンテナ810と第2アンテナ820とを同一面上に配置する比較例に係るアンテナ装置800よりも、アンテナの設置面積を縮小することができる。すなわち、実施形態に係るアンテナ装置1は、比較例に係るアンテナ装置800よりも、アンテナ装置の小型化が容易である。
【0037】
<第1変形例>
実施形態に係るアンテナ装置1は、第1アンテナ10と第2アンテナ20の2つのモノポールアンテナを備える。第1変形例では、3つのモノポールアンテナを備えるアンテナ装置について説明する。
【0038】
図4は、第1変形例に係るアンテナ装置の一例を示す図である。図4に例示されるアンテナ装置1aは、第3アンテナ30をさらに備える点で、実施形態に係るアンテナ装置1とは異なる。図4において、表面110側から見えない部分については点線で図示している。
【0039】
第3アンテナ30は、第3周波数(例えば、3.5GHz)の電波で動作する無給電のモノポールアンテナである。第3アンテナ30は、第1アンテナ10および第2アンテナ20と同様に、LDSによって薄い板状に形成される。すなわち、第3アンテナ30は、側面よりも上面および下面の方が広く形成される。第3アンテナ30は、LDS基板100の裏面120に設けられる。
【0040】
第3アンテナ30の一端31は、接地部23と電気的に接続される。第3アンテナ30は、接地部23を挟んで第2アンテナ20とは逆方向に延びるとともに、第3アンテナ30の他端32は接地部23よりも給電部13の近い位置に配置される。すなわち、第3アンテナ30において弱い電流が存在する領域となる他端32が、強い電流が存在する領域となる給電部13の近くに配置される。
【0041】
第3アンテナ30の他端32と給電部13との間の距離(間隔)は、互いに接触しない範囲で可及的に狭いことが好ましい。第3アンテナ30の他端32と給電部13との間の距離(間隔)は、例えば、第1周波数が1GHzである場合には2mm以下、第1周波数が2GHzである場合には1mm以下、第1周波数が4GHzである場合には0.5mm以下であることが好ましい。
【0042】
第3アンテナ30が動作する第3周波数は第2アンテナ20が動作する第2周波数よりも高いため、第3アンテナ30の長さは第2アンテナ20の長さよりも短く形成される。図4では、第3アンテナ30は、第3周波数の電波での動作に好適なアンテナ長(例えば、第3周波数の電波の波長の1/4)をLDS基板100の裏面120上の限られた面積内で確保できるように一端31と他端32との間で屈曲させている。しかしながら、第3周波数の電波での動作に好適なアンテナ長を確保できるのであれば、第3アンテナ30は屈曲しなくともよい。第3アンテナ30は、「第3アンテナ素子」の一例である。
【0043】
図5は、第1変形例に係るアンテナ装置を+Z方向から平面視した図である。図5では、平面視において第1アンテナ10と第2アンテナ20とが重なっている領域R1を斜線で示し、平面視において第1アンテナ10と第3アンテナ30とが重なっている領域R2をドットのパターンで示す。また、図5では、グランド基板200の図示は省略している。図5の領域R2に例示されるように、第3アンテナ30は、平面視において少なくとも一部が第1アンテナ10と重なるように配置される。第3アンテナ30は、可及的に第1アンテナ10と重なるように配置されることが好ましい。このように配置されることで、アンテナ装置1aでは、さらに、第1アンテナ10の下面と第3アンテナ30の上面とで容量結合させることができる。
【0044】
例えば、第1アンテナ10を動作させる第1周波数よりも第2アンテナ20を動作させる第2周波数の方が高い周波数である場合には、第1アンテナ10よりも第2アンテナ20が短くなる。このような場合には、平面視において第1アンテナ10と第2アンテナ20とを可及的に重なるように配置しても、第1アンテナ10において第2アンテナ20と重なっていない部分が存在しやすくなる。そのため、第1周波数よりも第2周波数の方が高い周波数である場合には、平面視において第3アンテナ30を第1アンテナ10とを重なるように配置することが容易である。
【0045】
<第2変形例>
第2変形例では、第1変形例に係るアンテナ装置1aに対して、さらに、モノポールアンテナを追加した構成について説明する。図6は、第2変形例に係るアンテナ装置の一例を示す図である。図6において、表面110側から見えない部分については点線で図示している。図6に例示されるアンテナ装置1bは、第4アンテナ40をさらに備える点で、第1変形例に係るアンテナ装置1aとは異なる。
【0046】
第4アンテナ40は、第4周波数(例えば、5GHz)の電波で動作する無給電のモノポールアンテナである。第4アンテナ40は、第1アンテナ10、第2アンテナ20および第3アンテナ30と同様に、LDSによって薄い板状に形成される。すなわち、第4アンテナ40は、側面よりも上面および下面の方が広く形成される。第4アンテナ40は、LDS基板100の表面110に設けられる。第4アンテナ40は、例えば、屈曲する第1アンテナ10が表面110上に区画する領域内に、少なくとも一部が第1アンテナ10と併走するように設けられる。
【0047】
第4アンテナ40の一端41は、LDS基板100に設けられたビア140を介して裏面120に設けられた接地部33と電気的に接続される。接地部33がグランド基板200に設けられた接地端子と電気的に接続されることで、第4アンテナ40は接地される。第4アンテナ40の他端42は、第1アンテナ10の他端12よりも一端11の近い位置に配置される。換言すれば、第4アンテナ40の他端42は第1アンテナ10の一端11に向けて可及的に近づくように延びる。すなわち、第4アンテナ40において電流が小さい領域となる他端42が、第1アンテナ10において強い電流が存在する領域となる一端11の近くに配置される。なお、図6では、第4アンテナ40の一端41は接地部23とは異なる接地部33に接続されているが、一端41は接地部23に接続されてもよい。
【0048】
第4アンテナ40の他端42と第1アンテナ10の一端11との間の距離(間隔)は、互いに接触しない範囲で可及的に狭いことが好ましい。第4アンテナ40の他端42と第1アンテナ10の一端11との間の距離(間隔)は、例えば、第1周波数が1GHzである場合には2mm以下、第1周波数が2GHzである場合には1mm以下、第1周波数が4GHzである場合には0.5mm以下であることが好ましい。
【0049】
第4アンテナ40が動作する第4周波数は第3アンテナ30が動作する第3周波数よりも高いため、第4アンテナ40の長さは第3アンテナ30の長さよりも短く形成される。図6では、第4アンテナ40は、第4周波数の電波での動作に好適なアンテナ長(例えば、第4周波数の電波の波長の1/4)をLDS基板100の表面110上の限られた面積内で確保できるように一端41と他端42との間で屈曲させている。しかしながら、第4周波数の電波での動作に好適なアンテナ長を確保できるのであれば、第4アンテナ40は屈曲しなくともよい。
【0050】
第4アンテナ40は、第2アンテナ20や第3アンテナ30とは異なり、第1アンテナ10と同一面上に設けられるため、第1アンテナ10の下面と第4アンテナ40の上面とで容量結合させることは難しい。そこで、第4アンテナ40では、少なくとも一部を第1アンテナ10に併走させることで、第1アンテナ10と第4アンテナ40とを容量結合させる。容量結合を強くするためには、第4アンテナ40を可及的に長く第1アンテナ10と併走させることが好ましい。さらに、第4アンテナ40において第1アンテナ10と併走する部分は、可及的に第1アンテナ10と近づけることが好ましい。このように配置することで、第4アンテナ40の側面と第1アンテナ10の側面との間で生じる結合容量を可及的に大きなものとすることができる。第4アンテナ40は、「第4アンテナ素子」の一例である。
【0051】
以上で開示した実施形態や変形例はそれぞれ組み合わせることができる。また、以上で開示した実施形態や変形例に係るアンテナ装置を無線通信装置に実装させることもできる。
【符号の説明】
【0052】
1、1a、1b、800・・・アンテナ装置
10、810・・・第1アンテナ
11、21、31、41、811、821・・・一端
12、22、32、42、812、822・・・他端
13・・・給電部
20、820・・・第2アンテナ
23・・・接地部
30・・・第3アンテナ
40・・・第4アンテナ
100・・・LDS基板
110・・・表面
120・・・裏面
130・・・ビア
200・・・グランド基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6