(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】1,1’-ビシクロ[1.1.1]ペンタン-1,3-ジエチルケトン系有機物の連続合成方法
(51)【国際特許分類】
C07C 45/68 20060101AFI20231219BHJP
C07C 49/563 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
C07C45/68
C07C49/563
(21)【出願番号】P 2021570238
(86)(22)【出願日】2019-06-11
(86)【国際出願番号】 CN2019090736
(87)【国際公開番号】W WO2020248126
(87)【国際公開日】2020-12-17
【審査請求日】2021-11-25
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】519153051
【氏名又は名称】ジーリン アシムケム ラボラトリーズ カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】JILIN ASYMCHEM LABORATORIES CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ホン,ハオ
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,エンシュアン
(72)【発明者】
【氏名】ルー,ジアンピン
(72)【発明者】
【氏名】ウェイ,フーリアン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,スーハン
(72)【発明者】
【氏名】チェー,グアンダー
【審査官】奥谷 暢子
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第107486115(CN,A)
【文献】特表2019-510012(JP,A)
【文献】Botee H,High molecular weight poly((1,1,1)propellane)s and a new polyamide with bicyclo(1,1,1)pentane fragments,Advanced Materials,1991年,3,440-442
【文献】Kaszynski P,A practical photochemical synthesis of bicyclo[1.1.1]pentane-1,3-dicarboxylic acid,J. Org. Chem.,1988年,53,4593-4594
【文献】Luke D Elliott,Batch versus flow photochemistry: A revealing comparison of yield and productivity,Chemistry-A European Jounals,15226-15232,2014年,20
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1,1'-ビシクロ[1.1.1]ペンタン-1,3-ジケトンの連続合成方法であって、前記1,1'-ビシクロ[1.1.1]ペンタン-1,3-ジケトンは、式(III)で表される構造を有し、
(前記R
1、前記R
2、前記R
3のうち1つは、ベンジル基であり、残りは、水素である。)
前記連続合成方法は、
光源の照射下で、原料Aと原料Bを連続反応装置に連続的に送って、温度制御装置によって前記連続反応装置内の反応温度を制御しながら連続光化学反応を行い、前記1,1'-ビシクロ[1.1.1]ペンタン-1,3-ジケトンを得るステップを含み、前記原料Aは、
2-ベンジルトリシクロ[1.1.1.0
1,3
]ペンタンであり、前記原料Bは、式(II)で表される構造を有し、
前記連続光化学反応を行う前に、前記原料Aと溶媒を混合して混合液を形成し、その後、前記混合液を前記連続反応装置に送
り、
共溶媒を前記連続反応装置に連続的に送るステップをさらに含み、
前記連続光化学反応の反応温度は、0~30℃であ
り、
前記溶媒は、n-ブチルエーテルであり、前記共溶媒は、エタノールである、ことを特徴とする連続合成方法。
(前記R
4及び前記R
5は、それぞれ独立して、水素、アルキル基又はアリール基から選ばれる。)
【請求項2】
前記光源は、波長300~350nmのLEDランプである、ことを特徴とする請求項1に記載の連続合成方法。
【請求項3】
前記連続光化学反応の反応温度は、0~5℃である、ことを特徴とする請求項1に記載の連続合成方法。
【請求項4】
前記連続光化学反応の反応時間は、10~20minである、ことを特徴とする請求項1に記載の連続合成方法。
【請求項5】
前記原料Aと前記原料Bのモル数比が1:(1.0~1.5)である、ことを特徴とする請求項1に記載の連続合成方法。
【請求項6】
前記連続反応装置は、連続反応コイル又はカラム反応器から選ばれる、ことを特徴とする請求項1に記載の連続合成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品中間体合成の分野に関し、具体的には、1,1'-ビシクロ[1.1.1]ペンタン-1,3-ジエチルケトン系有機物の連続合成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
1-アミノビシクロ[1.1.1]ペンタン-1-ギ酸は、非天然アミノ酸として医薬品化学の研究分野において巨大な潜在力を発揮し、価格が高い。1,1’-ビシクロ[1.1.1]ペンタン-1,3-ジエチルケトンは、1-アミノビシクロ[1.1.1]ペンタン-1-ギ酸を合成するための重要な中間体でありながら、様々な対称なプロペラン誘導体を合成するビルディングブロックであり、さらに官能基化されることによって、一連の酸、エステル、アルコール、アミドなどのプロペラン誘導体を得ることができる。基質の特殊性のため、1,1’-ビシクロ[1.1.1]ペンタン-1,3-ジエチルケトンの合成についての報告は少なかった。
【0003】
従来の合成方法は、全てバッチ合成法であり、プロペランと2,3-ブタンジオンを基質として、長期間にわたって光を照射することでフリーラジカル付加反応を起こし、1,1’-ビシクロ[1.1.1]ペンタン-1,3-ジエチルケトンを製造するものである。例えば、従来の文献では、1,1-ジブロモ-2,2-ジクロロメチルシクロプロパンを出発原料として、まず、メチルリチウムと反応した後に蒸留し、次に留分と2,3-ブタンジオンを氷水浴の条件下で光を8h照射し、目的物を得ることが報告されており、2つのステップの全収率は58%である。しかし、この反応では、必要な光照射時間が長く、反応転化が遅く、実験室小規模で1,1’-ビシクロ[1.1.1]ペンタン-1,3-ジエチルケトンを調製できるが、スケールアップができない。それ以降、類似した文献が報告されているが、反応効率が低いという問題の解決に至らず、その結果、このような化合物のコスト及び下流製品の価格が極めて高い。
【0004】
以上のように、従来の合成方法は、反応効率が低く、収率が低いという問題を抱えている。さらに、反応基質であるプロペラン及び製品は、安定性が低く、光を照射されるとプロペラン自体が緩やかに分解、変質してしまい、効果的に転化できず、また、製品も光照射により変質することがある。
【0005】
上記問題が存在するため、転化率及び反応速度を向上させるために1,1'-ビシクロ[1.1.1]ペンタン-1,3-ジエチルケトン系有機物の新しい合成方法を提供することが求められる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の主な目的は、従来1,1’-ビシクロ[1.1.1]ペンタン-1,3-ジエチルケトンの合成に存在する、反応原料や製品が安定しないことから、反応原料の転化率及び製品収率の低下を引き起こすという問題を解決するために、1,1'-ビシクロ[1.1.1]ペンタン-1,3-ジエチルケトン系有機物の連続合成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成させるために、本発明によれば、1,1'-ビシクロ[1.1.1]ペンタン-1,3-ジエチルケトン系有機物の連続合成方法であって、1,1'-ビシクロ[1.1.1]ペンタン-1,3-ジエチルケトン系有機物は、式(III)で表される構造を有し、
上記連続合成方法は、光源の照射下で、原料Aと原料Bを連続反応装置に連続的に送って、温度制御装置によって連続反応装置内の反応温度を制御しながら連続光化学反応を行い、1,1'-ビシクロ[1.1.1]ペンタン-1,3-ジエチルケトン系有機物を得るステップを含み、原料Aは、式(I)で表される構造を有し、原料Bは、式(II)で表される構造を有する、連続合成方法を提供する。
【0008】
(R
1、R
2、R
3は、それぞれ独立して、水素、ベンジル基、アルキル基、アリール基、ハロゲン、エステル基、カルボキシ基又はヒドロキシ基から選ばれ、且つR
1、R
2、R
3のうちの少なくとも1つは、水素ではない。)
(R
4及びR
5は、それぞれ独立して、水素、アルキル基又はアリール基から選ばれる。)
【0009】
さらに、R1、R2、R3は、それぞれ独立して、水素、ベンジル基、メチル基、フェニル基又はヒドロキシ基から選ばれ、R4及びR5は、それぞれ独立して、水素、メチル基、ベンジル基又はフェニル基から選ばれる。
【0010】
さらに、連続光化学反応を行う前に、連続合成方法は、原料Aと溶媒を混合して混合液を形成し、その後、混合液を連続反応装置に送るステップをさらに含み、
好ましくは、溶媒は、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-ブチルエーテル、シクロヘキサン、及びシクロペンタンからなる群から選ばれる1種又は複数種である。
【0011】
さらに、光源は、波長300~350nmのLEDランプである。
【0012】
さらに、連続光化学反応の反応温度は、0~30℃、好ましくは0~5℃である。
さらに、連続光化学反応の反応時間は、10~20minである。
【0013】
さらに、連続光化学反応を行う過程において、連続合成方法は、共溶媒を連続反応装置に連続的に送るステップをさらに含む。
【0014】
さらに、共溶媒は、メタノール、エタノール、酢酸エチル、ギ酸エチル、アセトン、ブタノン、及びアセトニトリルからなる群から選ばれる1種又は複数種である。
【0015】
さらに、原料Aと原料Bとのモル数比は、1:(1.0~1.5)である。
【0016】
さらに、連続反応装置は、連続反応コイル又はカラム反応器から選ばれる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の技術案を用いると、置換基を有するプロペランにより形成されるフリーラジカルが高い安定性を有するため、置換基を有するプロペランを反応原料とすることで反応原料の安定性を大幅に向上させ、プロペランが光で照射されると緩やかに分解、変質する確率を低下させ、それにより、反応原料の転化率及び目的産物である(1,1'-ビシクロ[1.1.1]ペンタン-1,3-ジエチルケトン系有機物)の収率をある程度向上させることができる。
【0018】
また、上記光化学反応において、反応原料が連続反応装置に連続的に送られるため、反応にかかる時間が短く、製品の産量が高い。それによって、反応原料及び製品が破壊される確率を低下させ、しかも、反応原料の転化率及び製品の収率を極めて大きく向上させる。さらに、上記連続合成方法は、また、反応のスケールアップに存在する問題(例えば実用可能性や効率性)を効果的に解決し、1,1'-ビシクロ[1.1.1]ペンタン-1,3-ジエチルケトン系有機物の工業的生産を可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0019】
本出願の一部を構成する明細書の図面は、本発明をさらに理解するために提供されるものであり、本発明の例示的な実施例及びこの説明は、本発明を解釈することに用いられ、本発明を不適に限定するものではない。
【
図1】本発明にかかる好ましい1,1'-ビシクロ[1.1.1]ペンタン-1,3-ジエチルケトン系有機物の連続合成装置の構造模式図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
なお、矛盾しない限り、本出願の実施例及び実施例の特徴は互いに組み合わせることができる。以下、実施例を参照して本発明を詳細に説明する。
【0021】
背景技術に記載のとおり、従来の1,1’-ビシクロ[1.1.1]ペンタン-1,3-ジエチルケトンの合成には、反応原料や製品が安定しないことから、反応原料の転化率及び製品収率の低下を引き起こすという問題が存在する。上記技術的課題を解決するために、本出願は、1,1'-ビシクロ[1.1.1]ペンタン-1,3-ジエチルケトン系有機物の連続合成方法であって、1,1'-ビシクロ[1.1.1]ペンタン-1,3-ジエチルケトン系有機物は、式(III)で表される構造を有し、
上記連続合成方法は、光源の照射下で、原料Aと原料Bを連続反応装置に連続的に送って、温度制御装置によって連続反応装置内の反応温度を制御しながら連続光化学反応を行い、1,1'-ビシクロ[1.1.1]ペンタン-1,3-ジエチルケトン系有機物を得るステップを含み、原料Aは、式(I)で表される構造を有し、原料Bは、式(II)で表される構造を有する、連続合成方法を提供する。
【0022】
(R
1、R
2、R
3は、それぞれ独立して、水素、ベンジル基、アルキル基、アリール基、ハロゲン、エステル基、カルボキシ基又はヒドロキシ基から選ばれ、且つR
1、R
2、R
3のうちの少なくとも1つは、水素ではない。)
(R
4及びR
5は、それぞれ独立して、水素、アルキル基又はアリール基から選ばれる。)
【0023】
置換基を有するプロペランにより形成されるフリーラジカルが高い安定性を有するため、置換基を有するプロペランを反応原料とすることで反応原料の安定性を大幅に向上させ、プロペランが光で照射されると緩やかに分解、変質する確率を低下させ、それにより、反応原料の転化率及び目的産物(1,1'-ビシクロ[1.1.1]ペンタン-1,3-ジエチルケトン系有機物)の収率をある程度向上させることができる。また、上記光化学反において、反応原料が連続反応装置に連続的に送られるため、反応にかかる時間が短く、製品の産量が高い。
【0024】
それによって、反応原料及び製品が破壊される確率を低下させ、しかも、反応原料の転化率及び製品の収率を極めて大きく向上させる。さらに、上記連続合成方法は、また、反応のスケールアップに存在する問題(例えば実用可能性や効率性)を効果的に解決し、1,1’-ビシクロ[1.1.1]ペンタン-1,3-ジエチルケトンの工業的生産を可能とする。
【0025】
連続光化学反応の転化率をさらに向上させるために、好ましくは、R1、R2、R3は、それぞれ独立して、水素、ベンジル基、メチル基、フェニル基又はヒドロキシ基から選ばれ、R4及びR5は、それぞれ独立して、水素、メチル基、ベンジル基又はフェニル基から選ばれる。好ましい一実施例では、連続光化学反応を行う前に、連続合成方法は、原料Aと溶媒を混合して混合液を形成し、その後、混合液を連続反応装置に送るステップをさらに含む。原料Aと溶媒を混合して混合液を形成した後に連続反応装置に送ると、反応原料の安定性のさらなる向上に有利であり、さらに反応原料の転化率及び目的製品の収率の向上に有利である。
【0026】
より好ましくは、溶媒は、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-ブチルエーテル、シクロヘキサン、及びシクロペンタンからなる群のうちの1種又は複数種を含むが、これらに限定されない。他の溶媒に比べて、上記いくつかの溶媒は、原料Aとはより良い相性を有するので、原料Aの安定性のさらなる向上に有利である。
【0027】
従来の光化学反応では、高圧水銀ランプを用いて強光を照射するのが一般的であるが、設備が長時間作動すると、大量の熱が放出され、釜式反応の場合、巨大な安全上の危険をもたらす。上記技術的課題を解決するために、好ましい一実施例では、光源は波長300~350nmのLEDランプである。従来の高圧水銀ランプと比較して、上記波長のLEDランプを光源とすると、設備の使用時のリスクを低減させ、設備への投資を減少させる。
【0028】
好ましい一実施例では、連続光化学反応の反応温度は0~30℃である。連続光化学反応の反応温度は上記範囲を含むが、これに限定されるものではなく、上記範囲内に限定されると、連続光化学反応における反応原料の転化率及び目的製品の収率を向上させるのに有利である。より好ましくは、連続光化学反応の反応温度は0~5℃である。
【0029】
反応原料Aと原料Bの反応程度を充分向上させて目的産物の収率をさらに向上させるために、好ましくは、連続光化学反応の反応時間は10~20minである。
【0030】
好ましい一実施例では、連続光化学反応を行う過程において、連続合成方法は、共溶媒を連続反応装置に連続的に送るステップをさらに含む。連続光化学反応において共溶媒を加えることによって、原料Aと原料Bの相性を向上できるだけではなく、反応で生成した目的製品(1,1'-ビシクロ[1.1.1]ペンタン-1,3-ジエチルケトン系有機物)を溶解することができ、それによって、目的製品をより良く排出し、副反応が発生する確率を低下させる。より好ましくは、共溶媒は、メタノール、エタノール、酢酸エチル、ギ酸エチル、アセトン、ブタノン、及びアセトニトリルからなる群のうちの1種又は複数種を含むが、これらに限定されるものではない。
【0031】
好ましい一実施例では、原料Aと原料Bとのモル数比は1:(1.0~1.5)である。原料Aと原料Bとのモル数比は上記範囲を含むが、これに限定されるものではなく、上記範囲内に限定されると、目的製品(1,1'-ビシクロ[1.1.1]ペンタン-1,3-ジエチルケトン系有機物)の収率のさらなる向上に有利である。
【0032】
従来のバッチ反応プロセスでは、設備の材質への要件が高い釜式反応装置が使用されており、材質による影響のため、量産ができない。上記問題を解決するために、好ましい一実施例では、連続反応装置は連続反応コイル又はカラム反応器から選ばれる。
【0033】
上記技術案をより良く理解できるように、本出願は、1,1'-ビシクロ[1.1.1]ペンタン-1,3-ジエチルケトン系有機物の合成に好適に用いられる連続合成装置をさらに提供し、
図1に示すように、該連続合成装置は、第1の配合装置10、第2の配合装置20、自動供給システム30、混合器40、第1のプランジャーポンプ50、第2のプランジャーポンプ51、連続光化学反応装置60(反応コイル)、光源70、及び後処理装置80(連続濃縮晶析装置)を含み、且つ、後処理装置80は、薄膜蒸発器81、連続晶析器82、及びフィルタ83を含む。
【0034】
これらのうち、第1の配合装置10には、原料A入口、溶媒入口及び混合液出口が設けられ、第2の配合装置20には、原料B入口及び原料B出口が設けられ、混合器40には、供給口及び反応原料出口が設けられ、且つ上記供給口と混合液出口は、混合液送り管路を介して連通し、且つ第1のプランジャーポンプ50は、混合液送り管路に設けられる。上記供給口と原料B出口は、原料B送り管路を介して連通し、且つ第2のプランジャーポンプ51は、原料B送り管路に設けられる。
【0035】
また、自動供給システム30は、第1のプランジャーポンプ50と第2のプランジャーポンプ51の供給速度を制御するために使用される。連続光化学反応装置60には、反応原料入口及び生成物系出口が設けられ、且つ反応原料入口と反応原料出口は、反応原料送り管路を介して連通し、第1のプランジャーポンプ50は、送り管路に設けられ、生成物系出口は後処理装置80の入口側に連通し、後処理装置80では、生成物系は、薄膜蒸発器81、連続晶析器82、フィルタ83によって順次処理され、所望の1,1'-ビシクロ[1.1.1]ペンタン-1,3-ジエチルケトン系有機物が得られ、光源70は連続光化学反応装置に照射するものである。
【0036】
以下、特定実施例を参照して本出願をさらに詳しく説明するが、これらの実施例は本出願の特許範囲を限定するものとして理解されるべきではない。
【0037】
本出願では、「equiv.」はモル数の倍数を表し、例えば、1molのプロペランに必要な2,3-ブタンジオンの用量が1.1molである場合、1.1equiv.として表してもよい。
【0038】
実施例では、
図1に示す装置を用いて1,1'-ビシクロ[1.1.1]ペンタン-1,3-ジエチルケトン系有機物を合成する。
【0039】
比較例1
[1.1.1]プロペランのn-ブチルエーテル溶液1.5kg(NMR含有量6.7%、原料換算で100g)を自作して第1の配合装置に加え、2,3-ブタンジオン143g(1.1equiv.)、共溶媒としてエタノール200mlを第2の配合装置に加えて、均一な溶液を調製し、光源(波長313nmのLEDランプ)をオンにして、自動供給システムを起動させ、プランジャーポンプを制御して原料A溶液を10g/min、2,3-ブタンジオンのエタノール溶液を2g/minでオンライン混合器に投入した後、連続反応装置(コイル)に入れて反応させ、外浴の温度を0~5℃、保留時間を15minに制御し、排出口に薄膜濃縮装置を接続して連続的に濃縮させて、濃縮液を振とう器に入れて温度を-55~-60℃に制御し、オンライン析晶を行って製品をろ過し、白色固体195.67gを得て、収率は85%であった。
【0040】
実施例1
2-メチル-2-フェニル[1.1.1.01,3]プロペランのn-ブチルエーテル溶液1.56kg(NMR含有量5.0%、原料換算で78g)を自作して第1の配合装置に加え、2,3-ブタンジオン143g(1.1equiv.)、共溶媒としてエタノール200mlを第2の配合装置に加えて、均一な溶液を調製し、光源(波長313nmのLEDランプ)をオンにして、自動供給システムを起動させ、プランジャーポンプを制御して原料A溶液を10g/min、2,3-ブタンジオンのエタノール溶液を1.93g/minでオンライン混合器に投入した後、連続反応装置(コイル)に入れて反応させ、外浴の温度を0~5℃、保留時間を15minに制御し、排出口に薄膜濃縮装置を接続して連続的に濃縮させて、濃縮液を振とう器に入れて温度を-55~-60℃に制御し、オンライン析晶を行って製品をろ過し、白色固体を145.8g得て、収率は94%であった。
【0041】
実施例2
実施例1との相違点は、外浴の温度が20℃であることにある。
【0042】
2-メチル-2-フェニル[1.1.1.01,3]プロペランのn-ブチルエーテル溶液1.56kg(NMR含有量5.0%、原料換算で78g)を自作して第1の配合装置に加え、2,3-ブタンジオン143g(1.1equiv.)、共溶媒としてエタノール200mlを第2の配合装置に加えて、均一な溶液を調製し、光源(波長313nmのLEDランプ)をオンにして、自動供給システムを起動させ、プランジャーポンプを制御して原料A溶液を10g/min、2,3-ブタンジオンのエタノール溶液を1.93g/minでオンライン混合器に投入した後、連続反応装置(コイル)に入れて反応させ、外浴の温度を20℃、保留時間を15minに制御し、排出口に薄膜濃縮装置を接続して連続的に濃縮させて、濃縮液を振とう器に入れて温度を-55~-60℃に制御し、オンライン析晶を行って製品をろ過し、白色固体を120.98g得て、収率は78%であった。
【0043】
実施例3
実施例1との相違点は、原料Aと原料Bのモル数比が1:2.0であることにある。
【0044】
2-メチル-2-フェニル[1.1.1.01,3]プロペランのn-ブチルエーテル溶液1.56kg(NMR含有量5.0%、原料換算で78g)を自作して第1の配合装置に加え、2,3-ブタンジオン260.5g(2.0equiv.)、共溶媒としてエタノール200mlを第2の配合装置に加えて、均一な溶液を調製し、光源(波長313nmのLEDランプ)をオンにして、自動供給システムを起動させ、プランジャーポンプを制御して原料A溶液を10g/min、2,3-ブタンジオンのエタノール溶液を4.18g/minでオンライン混合器に投入した後、連続反応装置(コイル)に入れて反応させ、外浴の温度を0~5℃、保留時間を15minに制御し、排出口に薄膜濃縮装置を接続して連続的に濃縮させて、濃縮液を振とう器に入れて温度を-55~-60℃に制御し、オンライン析晶を行って製品をろ過し、白色固体を108.57g得て、収率は70%であった。
【0045】
実施例4
実施例1との相違点は、連続反応装置がカラム反応器であることにある。
【0046】
2-メチル-2-フェニル[1.1.1.01,3]プロペランのn-ブチルエーテル溶液1.56kg(NMR含有量5.0%、原料換算で78g)を自作して第1の配合装置に加え、2,3-ブタンジオン143g(1.1equiv.)、共溶媒としてエタノール200mlを第2の配合装置に加えて、均一な溶液を調製し、光源(波長313nmのLEDランプ)をオンにして、自動供給システムを起動させ、プランジャーポンプを制御して原料A溶液を10g/min、2,3-ブタンジオンのエタノール溶液を1.93g/minでオンライン混合器に投入した後、カラム反応器に入れて反応させ、外浴の温度を0~5℃、保留時間を15minに制御し、排出口に薄膜濃縮装置を接続して連続的に濃縮させて、濃縮液を振とう器に入れて温度制御-55~60℃オンライン析晶を行って製品をろ過し、白色固体を122.52g得て、収率は79%であった。
【0047】
実施例5
実施例1との相違点は、原料A中、R1、R2、R3がそれぞれ水素、水素、ベンジル基であることにある。
【0048】
2-ベンジルトリシクロ[1.1.1.01,3]ペンタンのn-ブチルエーテル溶液1.5kg(NMR含有量6.7%、原料換算で100g)を自作して第1の配合装置に加え、2,3-ブタンジオン60.6g(1.1equiv.)、共溶媒としてエタノール200mlを第2の配合装置に加えて、均一な溶液を調製し、光源(波長313nmのLEDランプ)をオンにして、自動供給システムを起動させ、プランジャーポンプを制御して原料A溶液を10g/min、2,3-ブタンジオンのエタノール溶液を1.46g/minでオンライン混合器に投入した後、連続反応装置(コイル)に入れて反応させ、外浴の温度を0~5℃、保留時間を15minに制御し、排出口に薄膜濃縮装置を接続して連続的に濃縮させて、濃縮液を振とう器に入れて温度を-55~-60℃に制御し、オンライン析晶を行って製品をろ過し、白色固体を146.6g得て、収率は94.5%であった。
【0049】
実施例6
実施例1との相違点は、原料A中、R1、R2、R3がそれぞれ、水素、水素、p-メトキシベンジル基であることにある。
【0050】
2-p-メトキシベンジルトリシクロ[1.1.1.01,3]ペンタンのn-ブチルエーテル溶液1.5kg(NMR含有量6.7%、原料換算で100g)を自作して第1の配合装置に加え、2,3-ブタンジオン50.8g(1.1equiv.)、共溶媒としてエタノール200mlを第2の配合装置に加えて、均一な溶液を調製し、光源(波長313nmのLEDランプ)をオンにして、自動供給システムを起動させ、プランジャーポンプを制御して原料A溶液を10g/min、2,3-ブタンジオンのエタノール溶液を1.39g/minでオンライン混合器に投入した後、連続反応装置(コイル)に入れて反応させ、外浴の温度を0~5℃、保留時間を15minに制御し、排出口に薄膜濃縮装置を接続して連続的に濃縮させて、濃縮液を振とう器に入れて温度を-55~-60℃に制御し、オンライン析晶を行って製品をろ過し、白色固体を138.6g得て、収率は94.8%であった。
【0051】
実施例7
実施例1との相違点は、原料A中、R1、R2、R3のそれぞれが、水素、水素、p-メトキシフェニル基であることにある。
【0052】
2-p-メトキシフェニルトリシクロ[1.1.1.01,3]ペンタンのn-ブチルエーテル溶液1.5kg(NMR含有量6.7%、原料換算で100g)を自作して第1の配合装置に加え、2,3-ブタンジオン55.0g(1.1equiv.)、共溶媒としてエタノール200mlを第2の配合装置に加えて、均一な溶液を調製し、光源(波長313nmのLEDランプ)をオンにして、自動供給システムを起動させ、プランジャーポンプを制御して原料A溶液を10g/min、2,3-ブタンジオンのエタノール溶液を1.42g/minでオンライン混合器に投入した後、連続反応装置(コイル)に入れて反応させ、外浴の温度を0~5℃、保留時間を15minに制御し、排出口に薄膜濃縮装置を接続して連続的に濃縮させて、濃縮液を振とう器に入れて温度を-55~-60℃に制御し、オンライン析晶を行って製品をろ過し、白色固体を141g得て、収率は94%であった。
【0053】
実施例8
実施例1との相違点は、使用される溶媒がn-ヘキサンであることにある。
【0054】
2-メチル-2-フェニル[1.1.1.01,3]プロペランのn-ヘキサン溶液1.5kg(NMR含有量6.7%、原料換算で78g)を自作して第1の配合装置に加え、2,3-ブタンジオン143g(1.1equiv.)、共溶媒としてエタノール200mlを第2の配合装置に加えて、均一な溶液を調製し、光源(波長313nmのLEDランプ)をオンにして、自動供給システムを起動させ、プランジャーポンプを制御して原料A溶液を10g/min、2,3-ブタンジオンのエタノール溶液を1.93g/minでオンライン混合器に投入した後、連続反応装置(コイル)に入れて反応させ、外浴の温度を0~5℃、保留時間を15minに制御し、排出口に薄膜濃縮装置を接続して連続的に濃縮させて、濃縮液を振とう器に入れて温度を-55~-60℃に制御し、オンライン析晶を行って製品をろ過し、白色固体を141.14g得て、収率は91%であった。
【0055】
実施例9
実施例1との相違点は、使用される光源の波長が365nmであることにある。
【0056】
2-メチル-2-フェニル[1.1.1.01,3]プロペランのn-ブチルエーテル溶液1.56kg(NMR含有量5.0%、原料換算で78g)を自作して第1の配合装置に加え、2,3-ブタンジオン143g(1.1equiv.)、共溶媒としてエタノール200mlを第2の配合装置に加えて、均一な溶液を調製し、光源(波長365nmのLEDランプ)をオンにし、自動供給システムを起動させ、プランジャーポンプを制御して原料A溶液を10g/min、2,3-ブタンジオンのエタノール溶液を1.93g/minでオンライン混合器に投入した後、連続反応装置(コイル)に入れて反応させ、外浴の温度を0~5℃、保留時間を15minに制御し、排出口に薄膜濃縮装置を接続して連続的に濃縮させて、濃縮液を振とう器に入れて温度を-55~-60℃に制御し、オンライン析晶を行って製品をろ過し、白色固体を131.85g得て、収率は85%であった。
【0057】
実施例10
実施例1との相違点は、保留時間が30minであることにある。
【0058】
2-メチル-2-フェニル[1.1.1.01,3]プロペランのn-ブチルエーテル溶液1.56kg(NMR含有量5.0%、原料換算で78g)を自作して第1の配合装置に加え、2,3-ブタンジオン143g(1.1equiv.)、共溶媒としてエタノール200mlを第2の配合装置に加えて、均一な溶液を調製し、光源(波長313nmのLEDランプ)をオンにして、自動供給システムを起動させ、プランジャーポンプを制御して原料A溶液を5.0g/min、2,3-ブタンジオンのエタノール溶液を1g/minでオンライン混合器に投入した後、連続反応装置(コイル)に入れて反応させ、外浴の温度を0~5℃、保留時間を30minに制御し、排出口に薄膜濃縮装置を接続して連続的に濃縮させて、濃縮液を振とう器に入れて温度を-55~-60℃に制御し、オンライン析晶を行って製品をろ過し、白色固体を136.48g得て、収率は88%であった。
【0059】
実施例11
実施例1との相違点は、加える共溶媒がアセトニトリルであることにある。
【0060】
2-メチル-2-フェニル[1.1.1.01,3]プロペランのn-ブチルエーテル溶液1.56kg(NMR含有量5.0%、原料換算で78g)を自作して第1の配合装置に加え、2,3-ブタンジオン143g(1.1equiv.)、共溶媒としてアセトニトリル200mlを第2の配合装置に加え、均一な溶液を調製し、光源(波長313nmのLEDランプ)をオンにして、自動供給システムを起動させ、プランジャーポンプを制御して原料A溶液を10g/min、2,3-ブタンジオンのエタノール溶液を2g/minでオンライン混合器に投入した後、連続反応装置(コイル)に入れて反応させ、外浴の温度を0~5℃、保留時間を15minに制御し、排出口に薄膜濃縮装置を接続して連続的に濃縮させて、濃縮液を振とう器に入れて温度を-55~-60℃に制御し、オンライン析晶を行って製品をろ過し、白色固体を131.83g得て、収率は85%であった。
【0061】
以上の説明から分かるように、本発明の上記実施例は下記技術的効果を達成させる。
【0062】
従来の製造方法と比較して、上記置換基を有するプロペランを反応原料として用いると、反応原料の安定性を大幅に向上させ、反応原料が光で照射されると緩やかに分解、変質する確率を低下させ、それによって、反応原料の転化率及び目的産物(1,1'-ビシクロ[1.1.1]ペンタン-1,3-ジエチルケトン系有機物)の収率をある程度向上させることができる。
【0063】
以上は本発明の好適な実施例に過ぎず、本発明を限定するものではなく、当業者にとっては、本発明の様々な変更や変化が可能である。本発明の趣旨及び原則を逸脱することなく行われる修正、等同置換や改良などであれば、全て本発明の特許範囲に含まれるものとする。
【符号の説明】
【0064】
上記図面には以下の図面の符号が含まれている。
10、第1の配合装置
20、第2の配合装置
30、自動供給システム
40、混合器
50、第1のプランジャーポンプ
51、第2のプランジャーポンプ
60、連続光化学反応装置
70、光源
80、後処理装置
81、薄膜蒸発器
82、連続晶析器
83、フィルタ。