(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】カウルトップ構造
(51)【国際特許分類】
B62D 25/08 20060101AFI20231219BHJP
【FI】
B62D25/08 G
(21)【出願番号】P 2022017521
(22)【出願日】2022-02-07
【審査請求日】2022-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】下里 孝太
(72)【発明者】
【氏名】高畑 賢士
【審査官】長谷井 雅昭
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第1868776(CN,A)
【文献】特開2020-104569(JP,A)
【文献】特許第6615828(JP,B2)
【文献】国際公開第2011/045995(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体のパワーユニットルームを開閉可能に覆うフードと、
前記フードに対して後方に離間して配置されて車室の前方を透過可能に覆うウィンドウガラスと、
前記フードの回動中心になると共に、前記フードおよび前記ウィンドウガラスの間に位置するフードヒンジと、
前記フードヒンジを上方から覆うヒンジカバーと、を備え、
前記ヒンジカバー
は、裏面側に凹設されたノッチにより、前記ノッチに対応する上面側に線状の薄肉部が形成されている、ことを特徴とするカウルトップ構造。
【請求項2】
前記ヒンジカバーは、車幅方向の外側の端部から中央に向かって車両前後方向の長さが大きくなっており、前記薄肉部が車幅方向中央側の端部に沿って
車両前後方向に延びる、ことを特徴とする請求項
1に記載のカウルトップ構造。
【請求項3】
車体のパワーユニットルームを開閉可能に覆うフードと、
前記フードに対して後方に離間して配置されて車室の前方を透過可能に覆うウィンドウガラスと、
前記フードの回動中心になると共に、前記フードおよび前記ウィンドウガラスの間に位置するフードヒンジと、
前記フードヒンジを上方から覆うヒンジカバーと、を備え、
前記ヒンジカバーには、車両前後方向に延びる線状の薄肉部を設け
、
車幅方向の外側の端部から中央に向かって車両前後方向の長さが大きくなっており、前記薄肉部が車幅方向中央側の端部に沿って形成されている、ことを特徴とするカウルトップ構造。
【請求項4】
前記ヒンジカバーは、前記フードヒンジの上方に位置する本体部と、前記本体部の車幅方向内側の端部から下方に延出する側壁部と、を備え、
前記薄肉部は、前記本体部と前記側壁部との間の角部に沿って形成されている、ことを特徴とする請求項1~3のうち何れか一項に記載のカウルトップ構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カウルトップ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車体前部構造は車体のパワーユニットルームを開閉可能に覆うエンジンフードと、エンジンフードに対して後方に離間して配置され車室の前方を透過可能に覆うウィンドウガラスと、備える。車体前部構造は、エンジンフードの回動中心になると共にエンジンフードとウィンドウガラスとの間に位置するフードヒンジと、フードヒンジを上方から覆うヒンジカバーとが備えられている(例えば特許文献1等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような従来のカウルトップ構造では、フードヒンジが上方からヒンジカバーによって覆われて、ヒンジカバーの直下にフードヒンジが存在する。
例えば、保護対象物が車両に前方から衝突する際、充分なストロークを与えて保護対象物を保護しなければならない。例えば、衝撃を与える荷重の吸収量を確保して歩行者の保護性をさらに向上させるためには、ヒンジカバーの形状に更なる改良の余地があった。
この発明は、荷重の吸収特性を良好なものとすることができるカウルトップ構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するため、本発明のカウルトップ構造は、車体のパワーユニットルームを開閉可能に覆うフードと、フードに対して後方に離間して配置されて車室の前方を透過可能に覆うウィンドウガラスと、フードの回動中心になると共に、フードおよびウィンドウガラスの間に位置するフードヒンジと、フードヒンジを上方から覆うヒンジカバーと、を備える。ヒンジカバーは、裏面側に凹設されたノッチにより、ノッチに対応する上面側に線状の薄肉部が形成されている、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、荷重の吸収特性を良好なものとすることができるカウルトップ構造が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の実施形態のカウルトップ構造で、車体の前部を上方から見た構成を示す平面図である。
【
図2】本発明の実施形態のカウルトップ構造で、ヒンジカバーの構成を説明する要部の斜視図である。
【
図3】本発明の実施形態のカウルトップ構造で、ヒンジカバーの構成を示す
図2中III-III線に沿った位置での断面図である。
【
図4】本発明の実施形態のカウルトップ構造で、ヒンジカバーに荷重が入力した様子を説明する
図3に示す位置での断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の一実施形態について、適宜図面を参照しながら説明する。同一の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0009】
実施形態のカウルトップ構造は、
図1に示すように車体1の前部に、エンジンまたはモータ等の動力源を収容するパワーユニットルーム2が設けられている。パワーユニットルーム2の上面開口は、エンジンフード3により開閉可能に覆われている。
エンジンフード3の後方には、一定距離離間してウィンドウガラス4が配置されている。ウィンドウガラス4は、車室6の前方を透過可能に覆うように配置されている。
【0010】
パワーユニットルーム2とウィンドウガラス4との間には、車幅方向に沿って中空のカウルトップ5が車幅方向略全幅にわたり延設されている。カウルトップ5の車幅方向両端部で上面側には、左,右一対のフードヒンジ7,7がそれぞれ設けられている。
フードヒンジ7は、エンジンフード3およびウィンドウガラス4の前縁4a間に配置されている。
図2に示すように各フードヒンジ7は、エンジンフード3の回動中心となる軸7aを車体1側に枢着させている。
【0011】
各フードヒンジ7の上方には、ヒンジカバー8が備えられている。ヒンジカバー8は、フードヒンジ7を含めて、エンジンフード3の後縁3aからウィンドウガラス4の前縁4aおよびウィンドウガラス4の側縁に沿うピラーの下部までを覆っている。
実施形態のヒンジカバー8は、フードヒンジ7の上方に位置する本体部11と、本体部11の車幅方向中央側の端部11aから下方に延出する側壁部12と、を備えている。
このうち、本体部11は、フードヒンジ7(
図2参照)の上方に配置される。平板状に形成されている。本体部11の上面は、エンジンフード3の後縁3aの上面と略面一の高さ位置に配置されている。また、本体部11は、車幅方向外側の端部11bよりも中央側の端部11aに向かって車両前後方向の長さが大きくなるように徐変する平面視略扇型に形成されている。
【0012】
また、本体部11と側壁部12との間には、角部13が設けられている。実施形態の角部13は、本体部11の端部11aと側壁部12の上端との間を連結している。側壁部12は、本体部11と略同じ厚さ寸法を有していて、本体部11と略直交するように角部13を介して下方へ折り曲げられている(
図3参照)。
【0013】
図3に示すように実施形態のヒンジカバー8の本体部11には、車幅方向中央側の端部11aの下方にU溝状のノッチ10が凹設されている。ノッチ10は、略U溝状で角部13の裏面側の入隅に沿って車両前後方向略全長にわたり設けられている。ノッチ10は、上方に凸状で入隅底部まで深さ方向の寸法が本体部11および側壁部12の厚さ寸法より小さく設定されている。入隅部は、カウルトップ5の上面側に位置する段差状の角部13から所定寸法、たとえば側壁部12の内側面延設位置まで車幅方向に離間している。
【0014】
また、本体部11の上面側には、ノッチ10に対応する部分に車両前後方向に延びる線状の薄肉部9が設けられている。薄肉部9は、角部13に沿って車両前後方向略全長にわたり形成される(
図2)。本実施形態の薄肉部9は、周囲の本体部11と比べて脆弱に形成されて上面側の周囲と上面を面一としている。このため、薄肉部9は、
図3に示すように荷重Fが上方から加わると
図4に示すように薄肉部9の周囲と比較して容易に変形する。
【0015】
さらに側壁部12の下端12aは、カウルトップ5の上面側に近接または当接する位置まで延設されている。また、本体部11の車幅方向中間部の下面からは、縦壁部15が下方へ向けて一体に延設されている。縦壁部15は、平板状で車両前後方向へ延設されてカウルトップ5の上面側に下端を近接または当接させている。
【0016】
上述した実施形態のカウルトップ構造は、
図1に示すように車体1のパワーユニットルーム2を開閉可能に覆うエンジンフード3と、エンジンフード3に対して後方に離間して配置されるウィンドウガラス4と、を備える。
ウィンドウガラス4は、車室6の前方を透過可能に覆っている。また、カウルトップ構造は、フードヒンジ7と、フードヒンジ7を上方から覆うヒンジカバー8と、を備える。フードヒンジ7は、エンジンフード3の回動中心になると共に、エンジンフード3およびウィンドウガラス4の間に位置している。そして、ヒンジカバー8には、車両前後方向に延びる線状の薄肉部9が形成されている。
【0017】
このように構成された実施形態のカウルトップ構造は、荷重Fの吸収特性を良好なものとすることができる。
詳しくは、
図3に示すようにヒンジカバー8に上方から荷重Fが加わると、車両前後方向に延びる脆弱な薄肉部9が
図4に示すようにヒンジカバー8を変形させる起点となる。
そして、車両前後方向に延びる線状の薄肉部9を挟んで両側に位置する側壁部12および本体部11が車幅方向の左,右にそれぞれ拡開変形しながらヒンジカバー8を下方へ移動させる。
【0018】
側壁部12の下端部は、カウルトップ5の上面に摺接しながら車幅方向中央に向けて変形して側壁部12を傾斜させる。また、ヒンジカバー8の裏面側中間位置から突設されている縦壁部15は、下方に位置するカウルトップ5の上面側に当接しながらカウルトップ5を押し下げる。
そして、ヒンジカバー8は、角部13が下方へ移動して潰れ、本体部11の裏面側をカウルトップ5の上面側に落下させる。
【0019】
ヒンジカバー8は、カウルトップ5の上面側に本体部11の裏面側が当接するまで、所望のストローク量を設けてもよくさらにエネルギ吸収特性を向上させることが出来る
例えば、保護対象物である歩行者等の頭部Hが車両に前方から衝突する際、荷重Fがヒンジカバー8の上方から加わると薄肉部9は、ストローク中の変形により必要なエネルギ吸収を行うことができる。このため、歩行者等の頭部Hがヒンジカバー8に当接しても頭部Hに与える衝撃が低減する。よって実施形態のヒンジカバー8は、歩行者の保護性をさらに向上させることができる。
【0020】
また、本体部11は、ヒンジカバー8が変形する際、ノッチ10から破断して側壁部12を分離させるようにしてもよい。この場合、本体部11はカウルトップ5の上面側に残存してフードヒンジ7の上方を覆う。このため、保護対象物は、本体部11に当接して、下方に位置するカウルトップ5の角部またはフードヒンジ7(
図2参照)に対して直接当接することはない。
【0021】
また、実施形態の本体部11は、
図2に示すように平板状に形成された上面をエンジンフード3の後縁3aの上面と略面一の高さ位置に配置している。さらに薄肉部9が周囲の上面と面一である。このように本体部11の形状等、ヒンジカバー8の周縁の外観品質を良好なものとしつつ歩行者保護性能を向上させることができる。
【0022】
また、
図3に示すように実施形態の薄肉部9は、ヒンジカバー8の裏面側に凹設されたノッチ10により形成される。
実施形態のカウルトップ構造は、ノッチ10に対応する薄肉部を起点として屈曲変形して、本体部11と側壁部12との間を車両前後方向に沿わせて破断させている。ヒンジカバー8は、ノッチ10が凹設形成された箇所の外面側に薄肉部9を位置させることができる。このため、所望の位置に変形の起点を容易に設けることができる。
【0023】
さらに、ノッチ10は、ヒンジカバー8の裏面側に凹設されている。このため、外部からノッチ10を視認することができない。また、ノッチ10は、角部13に沿って形成されている。これにより、ヒケの影響を受けにくい、といった実用上有益な作用効果を発揮する。
【0024】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。上述した実施形態は本発明を理解しやすく説明するために例示したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について削除し、若しくは他の構成の追加・置換をすることが可能である。上記実施形態に対して可能な変形は、たとえば、以下のようなものである。
【0025】
実施形態では、
図2に示すようにヒンジカバー8の本体部11が平面視略扇型に形成されている。本体部11は、車幅方向の端部11bよりも車体1の車幅方向中央側に位置する端部11aに向かって車両前後方向の長さが大きくなるように徐変させている。これによりヒンジカバー8は、比較的大きな薄肉部9およびノッチ10を角部13に沿って形成することができる。
しかしながら、ヒンジカバー8の形状は、特にこれに限らない。たとえば、本体部11が上面視で略三角形形状、半円形状、多角形形状等、どのような形状であってもよい。すなわち、ヒンジカバー8に車両前後方向に延びる線状の薄肉部9が設けられていればよい。よって、ヒンジカバー8の本体部11および側壁部12の形状、数量および材質が実施形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0026】
1 車体
2 パワーユニットルーム
3 エンジンフード(フード)
4 ウィンドウガラス
5 カウルトップ
7 フードヒンジ
8 ヒンジカバー
9 薄肉部