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  • 特許-同期整流回路 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】同期整流回路
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/155 20060101AFI20231219BHJP
【FI】
H02M3/155 C
H02M3/155 B
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2022033423
(22)【出願日】2022-03-04
(65)【公開番号】P2023128808
(43)【公開日】2023-09-14
【審査請求日】2022-03-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000159043
【氏名又は名称】菊水電子工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】戸嶋 龍一
【審査官】柳下 勝幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-248396(JP,A)
【文献】特開2014-045604(JP,A)
【文献】特開2001-326569(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/155
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
双方向コンバータとして定電流モードで制御する同期整流回路であって、
スイッチング素子およびインダクタを含むコンバータ部と、
エラーアンプおよびPWM回路を含み、前記スイッチング素子を制御する制御回路とを備え、
前記制御回路は、制御開始時において、前記コンバータ部の出力電圧の電圧モニタ値を前記エラーアンプの誤差増幅器に入力して、前記コンバータ部の出力電圧が、前記コンバータ部の出力に接続された電圧源の電圧値と等しくなるように制御し、前記定電流モードで制御を開始すると、前記誤差増幅器の入力を前記インダクタの出力電流の電流モニタ値に切り替えることを特徴とする同期整流回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、同期整流回路に関し、より詳細には、チョッパ回路を用いた双方向コンバータとして動作する同期整流回路に関する。
【背景技術】
【0002】
直流電力を直流電力に変換する変換装置であるDC-DCコンバータには、降圧コンバータ、昇圧コンバータ、力行/回生が可能な双方向コンバータ等がある。回路形式としては、ダイオードを用いた非同期整流型と、スイッチング素子のみで制御する同期整流型とが知られている。
【0003】
図1に、従来の同期整流型のチョッパ回路を用いたDC-DCコンバータの概略の構成を示す。DC-DCコンバータ10は、同期整流型のチョッパ回路を用いたコンバータ部11と、エラーアンプ21およびPWM回路22を含む制御回路部12とから構成されている。制御回路部12は、定電流モードでコンバータ部11を制御している。エラーアンプ21は、コンバータ部11のインダクタ電流値CURR_MONと基準電流値CURR_REFとの差分に応じた駆動信号DRIVEをPWM回路22に出力する。PWM回路22では、入力された駆動信号DRIVEと、内部で生成した鋸歯状波とをコンパレータで比較しPWM変調する。変調されたパルスを、コンバータ部11のスイッチング素子に供給し、チョッパ回路を制御する。
【0004】
また、起動時に生ずる突入電流を防止するためのソフトスタート回路を備えたDC-DCコンバータが知られており、さらに、再起動時、ソフトスタートから定電流モード等に切り替える際の突入電流を防止する構成も知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-133915号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のDC-DCコンバータの出力側に電圧源を接続し、双方向コンバータとして動作させる場合、コンバータ部の出力端子電圧は、出力側に接続された出力電圧源によって異なる。従って、同期整流型DC-DCコンバータの場合、出力電流の向き(力行/回生)は、出力しようとする電圧値Voutと、出力側に接続された出力電圧源の電圧値Voとの大小で決まる。チョッパ回路の出力電圧Voutは、入力側電圧源の電圧値VinとPWM回路22のデューティ比の積で決まる。すなわち、電圧値Vinとデューティ比の積が電圧値Voより高ければ力行動作となり、電圧値Vinとデューティ比の積が電圧値Voより低ければ回生動作となる。電圧値Vinとデューティ比の積が電圧値Voに等しければ、電流のやり取りは発生せず、電流値はゼロとなる。
【0007】
従来のソフトスタート回路は、コンバータ部の出力電圧が0Vから緩やかに上昇するように、エラーアンプの出力を設定している。従って、出力しようとする電圧値Vout<出力電圧源の電圧値Voとなり、制御開始直後は回生動作を始め、出力電圧源からコンバータ部11に突入電流が流れ込んでしまうという問題があった。
【0008】
例えば、非同期整流型のDC-DCコンバータを使用した一般的な直流電源装置、電子負荷装置の動作に当てはめると、定電流モードで動作させた場合、電流0Aから制御を開始するようになっている。この場合、駆動信号DRIVEは、出力電流0Aから基準電流値CURR_REFの電流値に達するように出力を制御する。このため、制御を開始した瞬間に関しては、必ずPWM回路22のデューティ比がゼロからスタートしてしまう。上記の場合と同様に、出力しようとする電圧値Vout<出力電圧源の電圧値Voとなり、制御開始直後は回生動作を始め、出力電圧源からコンバータ部11に突入電流が流れ込んでしまう。
【0009】
図2に、従来のDC-DCコンバータの制御開始時の電流立上り波形を示す。双方向コンバータとして電流モードで15Aの回生電流が流れるように定電流モードで制御した場合のシミュレーション結果である。制御開始直後は、40A以上に達する突入電流が流れてしまうことが分かる。上記した実機への応用に際して、定電流モードでの制御において意図しない過大な電流は、被試験体として使用される蓄電池やインバータなどの評価において障害になり、最悪の場合試験体の破損につながる恐れがある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の目的は、出力側に電圧源を接続し、双方向コンバータとして定電流モードで制御する場合に、出力側からの突入電流を抑制する同期整流回路を提供することにある。
【0011】
本発明は、このような目的を達成するために、一実施態様は、双方向コンバータとして定電流モードで制御する同期整流回路であって、スイッチング素子およびインダクタを含むコンバータ部と、エラーアンプとPWM回路を含み、前記スイッチング素子を制御する制御回路とを備え、前記制御回路は、制御開始時において、前記コンバータ部の出力電圧の電圧モニタ値を前記エラーアンプの誤差増幅器に入力して、前記コンバータ部の出力電圧が、前記コンバータ部の出力に接続された電圧源の電圧値と等しくなるように制御し、前記定電流モードで制御を開始すると、前記誤差増幅器の入力を前記インダクタの出力電流の電流モニタ値に切り替えることを特徴とする。

【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、双方向コンバータとして定電流モードで制御する場合に、動作開始直後の駆動信号を、直前の出力電圧に応じた電圧モニタ値から制御するので、出力側からの突入電流を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】従来の同期整流型のチョッパ回路を用いたDC-DCコンバータの概略の構成を示す図である。
図2】従来のDC-DCコンバータの制御開始時の電流立上り波形を示す図である。
図3】本発明の一実施形態にかかる同期整流回路の概略の構成を示す図である。
図4】本実施形態の同期整流回路の制御開始時の電流立上り波形を示す図である。
図5】本実施形態の同期整流回路を含む試験装置における電流立上り波形を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0015】
図3は、本発明の一実施形態にかかる同期整流回路の概略の構成を示す。同期整流回路100は、同期整流型のチョッパ回路を用いたコンバータ部101と、エラーアンプ121およびPWM回路122を含む制御回路部102とから構成されている。コンバータ部101は、入力側の直流電圧源111を含み、コンデンサC1、スイッチング素子S1,S2、インダクタL、およびコンデンサC2から構成される同期整流型のチョッパ回路である。コンバータ部101の出力には、出力側の直流電圧源103が接続され、双方向コンバータとして動作する。
【0016】
コンバータ部101のインダクタLの出力には電流検知素子が設けられ、出力電流に応じた電流モニタ値CURR_MONが制御回路部102に入力される。制御回路部102は、定電流モードによる制御では、コンバータ部101の電流モニタ値CURR_MONと基準電流値CURR_REFとの差分に応じた駆動信号DRIVEをPWM回路122に出力する。PWM回路122では、入力された駆動信号DRIVEと、鋸歯状波生成回路132で生成した鋸歯状波とをコンパレータ133で比較し、PWM変調する。変調されたパルスを、コンバータ部101のスイッチング素子S1,S2に供給し、チョッパ回路を制御して、コンバータ部101から所望の出力電流が得られるようにする。
【0017】
コンバータ部101の出力には電圧検知素子が設けられ、出力電圧に応じた電圧モニタ値VOLT_MONが制御回路部102に入力される。本実施形態のエラーアンプ121は、さらにスイッチSWを備え、電流モニタ値CURR_MONと電圧モニタ値VOLT_MONとを切り替えて、誤差増幅器131の入力端子に入力することができる。
【0018】
エラーアンプ121における動作を詳述する。図3は、双方向コンバータとして定電流モードによる制御開始前の状態を示している。誤差増幅器131の反転入力端子には、スイッチSWを介して、電圧モニタ値VOLT_MONの分電圧が入力されており、電圧モニタ値VOLT_MONに比例した駆動信号DRIVEが、エラーアンプ121から出力される。従って、コンパレータ133では、出力しようとする電圧値が、出力側の直流電圧源103の電圧値Voと同じになるようにデューティ比が設定され、PWM回路122からスイッチング素子S1,S2を制御する。
【0019】
双方向コンバータとして定電流モードによる制御を開始すると、開始と同時に誤差増幅器131の反転入力端子には、スイッチSWを介して、電流モニタ値CURR_MONと基準電流値CURR_REFとの差分に応じた電圧が入力される。誤差増幅器131は積分回路を形成し、上述したように、電流モニタ値CURR_MONと基準電流値CURR_REFとの差分に応じた駆動信号DRIVEをPWM回路122に出力する。
【0020】
この構成によれば、制御開始直後の駆動信号DRIVEの値は、スイッチSWを切り替える直前の出力電圧に応じた電圧モニタ値に比例した値からスタートするので、PWM回路122のデューティ比は、出力側の直流電圧源103の電圧値Voとなるように、スイッチング素子S1,S2を制御する。従って、制御開始直後に回生動作が生ずることはなく、出力電圧源103からコンバータ部101への突入電流を抑制することできる。
【0021】
図4に、本実施形態の同期整流回路の制御開始時の電流立上り波形を示す。電流モードで15Aの回生電流が流れるように定電流制御した場合のシミュレーション結果である。制御開始直後の突入電流が抑制され、回生電流がゼロからスムーズに立ち上がっていることが分かる。
【0022】
図5に、本実施形態の同期整流回路を含む試験装置における電流立上り波形を示す。同期整流回路100を含む試験装置の出力に、直流電源を接続する。試験装置は、電流設定値-1A(回生動作)、定電流モードに設定され、直流電源は、電圧設定値1000Vに設定されている。試験装置の出力に1000Vが印加された状態で、試験装置の出力をONした時の波形を示している。上記のシミュレーション結果と同様に、制御開始直後の突入電流が抑制され、回生電流がゼロから-1Aまでスムーズに立ち上がっていることが分かる。
【符号の説明】
【0023】
10,100 同期整流回路
11,101 コンバータ部
12,102 制御回路部
21,121 エラーアンプ
22,122 PWM回路を含む
103,111 直流電圧源
131 誤差増幅器
132 鋸歯状波生成回路
133 コンパレータ
図1
図2
図3
図4
図5