(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】フライス工具
(51)【国際特許分類】
B23C 5/20 20060101AFI20231219BHJP
B23C 5/06 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
B23C5/20
B23C5/06 A
(21)【出願番号】P 2022500678
(86)(22)【出願日】2020-06-23
(86)【国際出願番号】 AT2020060250
(87)【国際公開番号】W WO2021003506
(87)【国際公開日】2021-01-14
【審査請求日】2022-05-20
(32)【優先日】2019-07-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AT
(73)【特許権者】
【識別番号】500005837
【氏名又は名称】セラティチット オーストリア ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】110003317
【氏名又は名称】弁理士法人山口・竹本知的財産事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075166
【氏名又は名称】山口 巖
(74)【代理人】
【識別番号】100133167
【氏名又は名称】山本 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100169627
【氏名又は名称】竹本 美奈
(72)【発明者】
【氏名】バーチャー,ペーター
【審査官】小川 真
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-544872(JP,A)
【文献】特開2010-142948(JP,A)
【文献】特表2002-524275(JP,A)
【文献】特表2014-524365(JP,A)
【文献】特表平09-509104(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23C 5/20
B23C 5/00ー5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
切削インサートを収容するための少なくとも1つの座部(102)と前記座部(102)に配置されたフライス加工用両面切削インサート
とを有する基体(101)を備える、フライス工具(100)であって、
前記切削インサートが、
上側面(2)と、
下側面(4)と、
周囲側面(6)と、
前記上側面(2)から前記周囲側面(6)への移行部に形成された第1の切削エッジ(8)と、
前記下側面(4)から前記周囲側面(6)への移行部に形成された第2の切削エッジ(10)と、
対称軸(S)であって、前記対称軸(S)に関して前記切削インサートが4回回転対称を有する前記対称軸(S)と、
前記対称軸(S)に対し垂直に延び、前記切削インサートを2つの半部に分割する、基準面(R)と、
を有し、
前記第1の切削エッジ(8)および前記第2の切削エッジ(10)はそれぞれ、
交互に配置された主刃(12)および平刃(14)を有し、
これらは、それぞれ隆起切削コーナー(16)と、この隆起切削コーナー(16)よりも前記基準面(R)からの距離が小さい下降切削コーナー(18)と、の間に延び、
前記周囲側面(6)は、それぞれ前記平刃(14)に沿って延びる平逃げ面(24)を有し、当該平逃げ面(24)は、割り当てられた前記平刃(14)からの距離が増加するにつれて、前記対称軸(S)に近づき、
前記周囲側面(6)は、それぞれ前記主刃(12)に沿って延びる主逃げ面(22)を有し、当該主逃げ面(22)は、割り当てられた前記主刃(12)からの距離が増加するにつれて前記対称軸(S)から離れる、
前記座部(102)は、前記基準面(R)に平行に延びる前記切削インサート(1)の主載置面(26)を支持するための主当接面(103)を有し、この主当接面(103)が負の軸方向設置角度(δ)および負の半径方向設置角度(Φ)で延び、前記半径方向設置角度(Φ)は前記軸方向設置角度(δ)よりも少なくとも10°小さく、前記半径方向設置角度(Φ)は、前記主当接面(103)と、前記フライス工具(100)の回転軸(Z)及び前記座部(102)に取り付けられた前記切削インサート(1)のアクティブな前記隆起切削コーナー(16)により架け渡される面ZXと、の間で測定される、
フライス工具(100)。
【請求項2】
前記切削インサートは、前記上側面(2)を平面図で見たときに傾斜角を有するほぼ正方形の基本形状を有し、前記主刃(12)は前記正方形の基本形状の主側面に沿って延び、前記平刃(14)は前記傾斜角に沿って延びる、請求項1に記載の
フライス工具(100)。
【請求項3】
前記第1の切削エッジ(8)および前記第2の切削エッジ(10)はそれぞれ、前記隆起切削コーナー(16)および前記下降切削コーナー(18)を介して互いに接続されている4つの前記主刃(12)と4つの前記平刃(14)とによって形成される、請求項1または2に記載の
フライス工具(100)。
【請求項4】
前記主刃(12)は、前記上側面(2)もしくは前記下側面(4)を平面図で見たときにそれぞれ、隣り合う前記平刃(14)と130°~140°の範囲の内角(α、α')を有する、請求項1から3のいずれか1項に記載の
フライス工具(100)。
【請求項5】
前記平逃げ面(24)は、それぞれ平坦面として、前記平刃(14)全体に沿って前記隆起切削コーナー(16)から前記下降切削コーナー(18)まで延びる、請求項1から4のいずれか1項に記載の
フライス工具(100)。
【請求項6】
前記主逃げ面(22)は、それぞれ平坦面として、前記主刃(12)全体に沿って前記隆起切削コーナー(16)から前記下降切削コーナー(18)まで延びる、請求項1から5のいずれか1項に記載の
フライス工具(100)。
【請求項7】
前記上側面(2)および前記下側面(4)はそれぞれ、前記主刃(12)に隣接して、主すくい面斜面(32)と、前記平刃(14)に隣接して平すくい面斜面(34)と、を備えている、請求項1から6のいずれか1項に記載の
フライス工具(100)。
【請求項8】
前記平すくい面斜面(34)の名目上の面取り角(β)は、前記主すくい面斜面(32)の名目上の面取り角(γ)よりも小さい、
すなわちβ<γである、請求項7に記載の
フライス工具(100)。
【請求項9】
前記平すくい面斜面(34)の前記名目上の面取り角(β)は、前記主すくい面斜面(32)の前記名目上の斜面角(γ)よりも、少なくとも8°小さい、請求項8に記載の
フライス工具(100)。
【請求項10】
前記軸方向設置角度(δ)は-1°~-5°の範囲にある、請求項
1から9のいずれか1項に記載のフライス工具
(100)。
【請求項11】
前記半径方向設置角度(Φ)は-15°~-21°の範囲にある、請求項
1から10のいずれか1項に記載のフライス工具
(100)。
【請求項12】
前記切削インサート(1)は、アクティブな
前記主刃(12)が16°~24°の範囲の実質上の軸方向角度(θ)で延びるように配置されて
おり、
実質上の前記軸方向角度(θ)は、前記回転軸(Z)が前記隆起切削コーナー(16)に隣接するアクティブな前記主刃(12)の端部と交差する半径方向で見て、アクティブな前記主刃(12)と前記フライス工具(100)の前記回転軸(Z)との間で、決定される、請求項
1から
11のいずれか1項に記載のフライス工具
(100)。
【請求項13】
前記切削インサートは、アクティブな
前記主刃(12)に形成される実質上の主逃げ角が8°~12°の範囲にあり、アクティブな
前記平刃(14)に形成される実質上の平逃げ角(τ)が8°~12°の範囲にあるように配置されている、請求項
1から
12のいずれか1項に記載のフライス工具
(100)。
【請求項14】
前記切削インサート(1)は、平すくい面
斜面(34)と主すくい面
斜面(32)とを備え、前記平すくい面
斜面(34)の実質上の面取り角度と
前記主すくい面
斜面(32)の実質上の面取り角度とが設置状態でほぼ同じ大きさになるように配置されている、請求項
1から
13いずれか1項に記載のフライス工具
(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フライス加工のための両面切削インサート、および、少なくとも1つの切削インサートを備えたフライス工具、に関する。
【背景技術】
【0002】
特には金属材料の、切削加工のために、1つの切削インサートまたは複数の切削インサートを備えた担支体を有するフライス工具がしばしば使用される。この場合、切削インサートは通常は交換可能であり、発生する摩耗に基づいて、ある程度規則的な間隔で交換されなければならない。切削インサートをいわゆる転換切削インサート(インデクサブル切削インサート“indexable cutting interts“)として形成することが知られており、この切削インサートは同一に形成された複数の切削エッジ部を有し、これらのエッジ部は、順次連続的に、フライス工具の担体に対する切削インサートの相対的な向き(割り出し(英:indexing))の変化により、被加工材の切削加工を実施するアクティブ位置に、もたらされ得る。この場合、それぞれの非アクティブな切削エッジ部は、被加工材には干渉せず、例えば、以前のアクティブな切削エッジの摩耗後に、アクティブ位置にもたらされ得る。このようにして、互いに無関係に使用可能な複数の切削エッジ部が用意され、当該切削エッジ部は、切削インサートの効率的な使用を可能にする。この場合、フライス工具上での配置においてそれぞれアクティブな切削位置にある主刃はアクティブな主刃と呼ばれ、アクティブな切削位置にある平刃はアクティブな平刃と呼ばれる。割り出しによって使用することができる他の主刃および平刃は、非アクティブな主刃または非アクティブな平刃と呼ばれる。
【0003】
交換可能な切削インサートは、通常は、特に硬質金属(超硬合金)、サーメット、または切削セラミックなどの、硬質かつ耐摩耗性の材料から形成され、さらには耐摩耗性の硬質材料コーティングを備えることもできる。担体は、典型的には、特に鋼などの、より靭性の高い材料から形成され、部分的に、例えばより靭性の高い硬質金属または他の材料も使用される。
【0004】
切削インサートを可能な限り効率的に使用するために、両面切削インサートを使用すること、が知られており、当該両面切削インサートは上側面と周囲側面との間の移行部と、下側面と周囲側面との間の移行部との両方にそれぞれ、互いに独立して使用可能な多数の切削エッジ部を有する切削エッジを、備えている。
【0005】
特に平フライス加工のために、いわゆるS型(square、正方形)の転換切削板がしばしば使用されるが、これは切削エッジごとに、4つの主刃を有する正方形のベース形状を有しており、当該主刃は正方形のほぼ各辺に沿って延びている。この場合、隣接する主刃の間には、-隆起切削コーナーと下降切削コーナーを介して-、後続の平刃が配置されており、これらの平刃は例えば典型的には主刃に対して約135°の角度で延びることができる。この場合、切削インサートがフライス工具に取り付けられた状態では、平刃は通常フライス工具の回転軸に対してほぼ垂直に配置されており、表面を平滑にする切刃として作用する。フライス工具に対して半径方向外側で隆起切削コーナーを介して平刃に隣接する主刃は、主として切屑を除去する切刃として作用する。
【0006】
作動中におけるフライス工具の回転に関して後方にある両面切削インサートの切削エッジの摩耗もしくは損傷を回避するために、切削インサートはフライス工具内で以下のように傾けて配置されなければならない、すなわち、被加工材に係合するアクティブな平刃の後方に位置する他方の切削エッジの非アクティブな平刃を保護するために、この切削インサートは、軸方向に関しては、負の軸方向設置角度で前方に向かって傾けられており、被加工材に係合するアクティブな主刃の後方に位置する他方の切削エッジの非アクティブな主刃を保護するために、半径方向に関しては、負の半径方向設置角度で傾けられいるように、配置されなければならない。軸方向および/または半径方向の著しい傾斜は、作用する切削力および切屑の形成の両方に関して問題を引き起こすおそれがある。
【0007】
本技術分野では、例えば逃げ角、すくい角などの特定の用語を、一方では切削インサートに関しては「名目上」のものとして定義することができ、他方ではフライス工具における切削インサートの被加工材への設置状態に関しては(これとは異なる)「実質上」のものと定義することができることに留意されたい。本明細書の文脈では、名目上の角度仕様が切削インサートの説明で使用され、一方実質上の角度仕様は切削インサートが取り付けられたフライス工具に関して使用される。
【0008】
特に両面切削インサートを備えたフライス工具では、フライス加工プロセスの安定性は、実現された実質上のすくい角および実質上の逃げ角に非常に敏感に依存し、その際、切削インサートの両面形成は、形状の遊び範囲を極めて制限する。
【0009】
特許文献1には、平フライス加工用の両面切削インサートと、複数のこのような切削インサートを備える平フライス加工用のフライス工具とが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】欧州特許出願公開EP 2 747 925 A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題は、特に平フライス加工中に、格別に滑らかな切削および格別に安定したフライス加工プロセスを可能にする、フライス加工のための改良された両面切削インサートと、少なくとも1つのそのような切削インサートを有する改良されたフライス工具と、を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
課題は、請求項1に記載のフライス加工のための両面切削インサートによって解決される。有利な実施形態は従属請求項に記載されている。
【0013】
フライス加工のための両面切削インサートは、上側面と、下側面と、周囲側面と、上側面から周囲側面への移行部に形成されている第1の切削エッジと、下側面から周囲側面への移行部に形成されている第2の切削エッジと、切削インサートが4回回転対称性を有する対称軸と、この対称軸に垂直に延びる基準面であって切削インサートを2つの半部に分割する基準面と、を有する。第1の切削エッジおよび第2の切削エッジはそれぞれ、交互に配置された主刃および平刃を有し、これらの切刃はそれぞれ、隆起切削コーナーと、この隆起切削コーナーよりも基準面に対してより短い距離にある下降切削コーナーと、の間に延びる。周囲側面は、それぞれ平刃に沿って延びる平逃げ面を有し、当該平逃げ面は割り当てられた平刃からの距離が増加するにつれて対称軸に近づく。周囲側面は、それぞれ主刃に沿って延びる主逃げ面を有し、当該主逃げ面は割り当てられた主刃からの距離が増加するにつれて対称軸から離れる。
【0014】
一方では平逃げ面は、割り当てられた平刃からの距離が増加するにつれて対称軸に近づき、すなわち平逃げ面は正の名目上の平逃げ角度を有して形成されており、また、他方では主逃げ面は、割り当てられた主刃からの距離が増加するにつれて対称軸から離れ、すなわち主逃げ面は負の名目上の主逃げ角度を有して形成されているので、この組み合わせで、平フライス加工のためのフライス工具における両面切削インサートの設置状態が可能になり、当該拙著状態では、量的に比較的小さい負の軸方向設置角度、すなわちごくわずかに負の軸方向設置角度での、および、量的にはるかに大きい負の半径方向設置角度、すなわちはるかに強い負の半径方向設置角度での、設置が可能になる。この組み合わせは、設置状態での主刃に非常に大きな正の実質上の軸方向角度を提供することを可能にし、それを用いて、非常に滑らかな剥離性の切削挙動、および、非常に良好な切屑排出、を達成することができる。負の名目上の主逃げ角により、この場合、極端な設置状態にもかかわらず、主刃での安定した切削ウェッジと、被加工材料のための最適な逃げ角とが可能となり、また後背側の非アクティブな主刃および平刃は摩耗から確実に保護される。
【0015】
さらなる発展によれば、切削インサートは、上側面を平面図で見たときに傾斜角を有するほぼ正方形の基本形状を有し、主刃は正方形の基本形状の主側面に沿って延び、平刃は傾斜角に沿って延びる。この構成により、アクティブな主刃とアクティブな副刃との最適な位置合わせが可能になる。好ましくは、第1の切削エッジおよび第2の切削エッジは、それぞれ、4つの主刃および4つの平刃によって形成され、これらは隆起切削コーナーおよび下降切削コーナーを介して互いに接続されている。
【0016】
さらなる発展によれば、主刃は、上側面または下側面を平面図で見たときに、それぞれ隣接する平刃と130°~140°の範囲の内角を有する。この場合、主刃と下降切削コーナーを介してこれに隣り合う平刃との間の内角は、例えば主刃と隆起切削コーナーを介してこれに隣り合う平刃との間の内角に等しくてもよく、または、2つの内角は互いに異なっていてもよく、この場合、それぞれ内角は130°と140°との間の範囲にあるべきである。この構成により、平フライス加工における主刃と平刃との特に有利な位置合わせが達成される。
【0017】
さらなる発展によれば、平逃げ面は、それぞれ平坦面として、平刃全体に沿って隆起切削コーナーから下降切削コーナーまで延びる。この場合、格別に滑らかに加工された被加工材表面を達成することができる。平刃は隆起切削コーナーから下降切削コーナーまで延びる。この場合、平刃は、隆起切削コーナーから下降切削コーナーまで単調に下降して基準面に接近してもよい。
【0018】
好ましくは、平刃は、上側面を平面図で見たときに、直線的に形成されていてもよい。
【0019】
さらなる発展によれば、主逃げ面はそれぞれ、平坦面として、主刃全体に沿って隆起切削コーナーから下降切削コーナーまで延びる。この場合、切削のために利用可能な格別に長い主刃が、可能となる。主刃は、隆起切削コーナーから下降切削コーナーまで延びる。特に、主刃は、隆起切削コーナーから下降切削コーナーまで、単調に下降して基準面に接近してもよい。
【0020】
好ましくは、主刃は、上側面を平面図で見たときに、直線的に形成さていてもよい。
【0021】
さらなる発展によれば、上側面および下側面はそれぞれ、主刃に隣接して、主すくい面面取り部と、平刃に隣接して、平すくい面面取り部と、を備える。このようにして、切削インサートの格別に堅牢な設計が可能になる。主すくい面面取り部および平すくい面面取り部は、この場合、好ましくは、それぞれ0.1~0.4mmの範囲の(主刃もしくは平刃に垂直に測定した)幅を有する。この場合、平すくい面面取り部の幅および主すくい面斜面の幅は、好ましくは少なくともほぼ同じであるとよい。
【0022】
さらなる発展によれば、平すくい面面取り部の名目上の面取り角度は、主すくい面面取り部の名目上の面取り角度よりも小さい。このように形成すると、大きな負の半径方向設置角度および小さな負の軸方向設置角度での設置状態において、アクティブな主刃およびアクティブな平刃の両方を、確実に保護することを可能にし、また、同時に主刃および平刃を被加工材に最適に適合させることを可能にする。好ましくは、平すくい面面取り部の名目上の(すなわち切削インサート上で測定した)面取り角度は、主すくい面面取り部の名目上の(切削インサート上で測定した)面取り角度よりも、少なくとも8°小さくすることができる。例えば主すくい面面取り部の名目上の面取り角度は正とし、平すくい面面取り部の名目上の面取り角は負としてもよく、または例えば両方が負であってもよいことに留意されたい。特に好ましくは、平すくい面面取り部の名目上の面取り角度は、主すくい面面取り部の名目上の面取り角度よりも少なくとも10°小さくすることができる。好ましくは、平すくい面面取り部の名目上の面取り角度は、その際、主すくい面面取り部の名目上の面取り角度よりも最大で20°小さい。
【0023】
本発明の課題は請求項10に記載のフライス工具によっても解決される。有利なさらなる発展は従属請求項に記載されている。
【0024】
フライス工具は基体を有しており、当該基体は、切削インサートを収容するための少なくとも1つの座部と、この座部に配置された前述の請求項の1つによる少なくとも1つの切削インサートとを有している。このフライス工具によって、両面切削インサートに関して上述した利点が得られる。好ましくは、フライス工具の基体は、同様の切削インサートを収容するために、基体の周囲に分配された複数の座部を有することができる。この場合、好ましくは、複数の切削インサートが座部に固定されていてもよい。好ましくは、切削インサートは同じ向きで座部に固定されていてもよい。フライス工具は、好ましくは特に平フライス工具として形成される。切削インサートは、この場合アクティブな平刃がフライス工具の回転軸に対してほぼ垂直に延びるように、配置される。正確に垂直な配置からわずかにずらすことも可能であるが、特に平刃はフライス工具の回転軸の方向にわずかに軸方向に後方に傾けられていてもよい。
【0025】
さらなる発展によれば、座部は、基準面に対して平行に延びる切削インサートの主載置面を支持するための主当接面を有し、また、この主当接面は、負の軸方向設置角度および負の半径方向設置角度で延び、半径方向設置角度は軸方向設置角度よりも少なくとも10°小さい。これは、軸方向設置角度および半径方向設置角度の両方がそれぞれ負であるが、半径方向設置角度は軸方向設置角度よりもはるかに負であることを意味する。負の軸方向設置角度とこれよりはるかに負の半径方向設置角度との組み合わせは、設置状態での主刃にて非常に大きな正の実質上の軸方向角度を実現することを可能とし、それにより非常に滑らかな剥離性の切削加工挙動および非常に良好な切屑排出を達成され、また同時に、後背側の非アクティブな主刃および平刃を確実に保護することを可能にする。好ましくは、半径方向の取り付け角度は、軸方向の取り付け角度よりも少なくとも15°小さくてもよい。その場合、半径方向の取り付け角度は、好ましくは軸方向の取り付け角度よりも最大で20°小さく、それにより切削インサートは頑丈で安定した形状で形成され得る。
【0026】
好ましくは軸方向設置角度は-1°~-5°の範囲にあってもよく、特に好ましくは-2°~-4°の範囲にあるとよく、その結果一方では、非アクティブな主刃および副刃の十分な保護が達成され、他方では非常に滑らかな切削が可能になる。
【0027】
好ましくは半径方向設置角度は-15°~-21°の範囲にあってもよく、特に好ましくは-17°~-19°の範囲にあるとよい。この場合、半径方向設置角度と比較してほんの僅かに負である軸方向設置角度での設置が可能になり、これにより主刃の格別に滑らかな切削が可能になる。
【0028】
さらなる発展によれば、切削インサートは、アクティブな主刃が16°~24°、好ましくは18°~22°、の範囲の実質上の軸方向角度で延びるように、配置されている。この場合、非常に滑らかな剥離性の切削加工挙動および非常に良好な切屑の排出が達成される。
【0029】
さらなる発展によれば、切削インサートは、アクティブな主刃に形成される実質上の主逃げ角が8°~12°の範囲にあり、アクティブな平刃に形成される実質上の平逃げ角が同様に8°~12°の範囲にあるように、フライス工具に配置されている。この場合、切削インサートの長い耐用年数で同時に特に有利な切屑形成が達成される。
【0030】
さらなる発展によれば、切削インサートは、平すくい面面取り部および主すくい面面取り部を備え、平すくい面面取り部の実質上の面取り角および主すくい面面取り部の実質上の面取り角度が設置時にほぼ同じ大きさになるように、配置される。「ほぼ同じ大きさ」とは、差が5°未満、好ましくは3°未満であることと理解すべきである。この場合、格別に有利な切削挙動が達成される。
【0031】
本発明のさらなる利点および合目的性は、添付の図面を参照した実施例の以下の説明から明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】一実施形態による両面切削インサートの概略的な斜視図である。
【
図2】
図1の切削インサートの概略的な平面図である。
【
図5】切削インサートの対称軸に対して垂直な観察方向における主逃げ面上の切削インサートの概略的な側面図である。
【
図6】切削インサートの対称軸に対して垂直な観察方向における副逃げ面上の切削インサートの概略的な側面図である。
【
図7】フライス工具の回転軸に対して垂直な観察方向における一実施形態によるフライス工具の基体の概略的な側面図である。
【
図8】回転軸に沿った観察方向における
図7の基体の概略的な端面図である。
【
図9】フライス工具の回転軸に対して垂直な観察方向における切削インサートが取り付けられた実施形態によるフライス工具の概略的な側面図である。
【
図10】回転軸に沿った観察方向における
図9のフライス工具の概略的な端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下に図面を参照して一実施形態を説明する。まずフライス加工用の両面切削インサート1について
図1~
図6を参照して説明し、次にこの切削インサートが配置されたフライス工具100について説明する。切削インサート1およびフライス工具100は、平フライス加工用に形成されている。
【0034】
図1~
図6に見られるように、両面切削インサート1は、特に
図2に示される平面図に見られるように、コーナーが面取りされたほぼ正方形の基本形状を有する。
【0035】
切削インサート1は、上側面2と、これと反対側にある下側面4と、上側面2と下側面4との間に延びる周囲側面6と、を有する。上側面2から周囲側面6への移行部には、第1の切削エッジ8が形成されており、この第1の切削エッジ8は図示の実施形態では全周にわたって延びている。同様に、下側面4から周囲側面6への移行部には、第2の切削エッジ10が形成されており、この第2の切削エッジ10は図示の実施形態では同様に全周にわたって延びている。
【0036】
切削インサート1をフライス工具の座部に取り付けることができる取り付けボルトを収容するための貫通孔3が、切削インサート1の対称軸Sに沿って、上側面2から下側面4まで延びている。基準面Rは対称軸Sに垂直に延び、切削インサート1を(仮想的に)2つの同一の半体に分割する。切削インサート1は、対称軸Sに関して4回回転対称性を有し、すなわち対称軸Sを中心にそれぞれさらに90°回転することによって、同じ形状のものに移行することができる。切削インサート1はまた対称軸Sと基準面Rとの交点に関して点対称であり、その結果、第1の切削エッジ8および第2の切削エッジ10は互いにほぼ同一に形成されている。
【0037】
特に
図1および
図2に見られるように、上側面2および下側面4はそれぞれ基準面Rに対して平行に延びる主載置面26を備える。主載置面26はそれぞれ貫通孔3を取り囲んでいる。第1の切削エッジ8と主載置面26との間には、すくい面5を有する上側面2が設けられ、このすくい面は第1の切削エッジ8からの距離が大きくなるにつれて基準面Rに近づく。これに対応して、下側面4において第2の切削エッジ10と主載置面26との間には、すくい面5が形成されており、このすくい面は第2の切削エッジ10からの距離が大きくなるにつれて基準面Rに近づく。
【0038】
第1の切削エッジ8および第2の切削エッジ10はそれぞれ、交互に配置された主刃12および平刃14を有する。主刃12は、平フライス加工時に主に切屑を取り出すように形成され、平刃14は作成された表面を平滑化するために使用される。主刃12は、切削インサート1のほぼ正方形の基本形状の長い側面エッジに沿って延びている。平刃14は、切削インサート1のほぼ正方形の基本形状の傾斜したコーナーに沿って延びている。
【0039】
特に
図5および
図6に見られるように、第1の切削エッジ8および第2の切削エッジ10は、基準面Rからより大きな距離にある隆起切削コーナー16と、基準面Rからより少ない距離にある下降切削コーナー18と、を交互に有する。主刃12は、それぞれ隆起切削コーナー16から下降切削コーナー18まで延びている。平刃14は、それぞれ下降切削コーナー18から隆起切削コーナー16まで延び、これを越えて隣り合う主刃12へ移行している。平刃14と、隆起切削コーナー16を介して隣り合う主刃12と、はそれぞれ切削エッジ部を形成しており、これは以下により詳細に説明するように、平フライス加工のためのアクティブな切削位置にもたらすことができる。主刃12はそれぞれ下降切削コーナー18を介して隣り合う切削エッジ部の平刃14に境接しており、この切削エッジ部はその後割り出しによって使用することができる。
【0040】
対称軸Sに沿った観察方向では、平刃14と、隆起切削コーナー16を介してこれに隣り合う主刃12とは、それぞれ130°~140°の範囲の内角α‘を互いに囲っている。主刃12は、対称軸Sに沿った観察方向において、下降切削コーナー18を介して隣り合う平刃14と130°~140°の範囲の内角αを囲っている。なお内角αおよびα’は例えば同じであってもよく、特に例えば135°であってもよく、または互いに異なっていてもよい。
【0041】
主刃12は、隆起切削コーナー18からの距離が増大するにつれて基準面Rに近づくように、延びている。主刃12は、
図5および
図6に示すように、好ましくは単調に下降して基準面Rに近づくことができる。図示の実施形態では、主刃12は、上側面2または下側面4を平面図で見たときに、ほぼ直線状に延びている。この実施形態では、主刃12は、対称軸Sに垂直な側面図においても、ほぼ直線状に延びている。しかし主刃12は、上側面2または下側面4の平面図および側面図の両方において、わずかに湾曲した形状を有することもできることに留意されたい。
【0042】
平刃14は、この実施形態では同様に、それが隆起切削コーナー16からの距離が増大するにつれて基準面Rに近づくように、延びる。平刃14はまた、好ましくは単調に下降して、基準面Rに接近することができる。平刃14は、この実施形態では同様に、上側面2または下側面4の平面図および対称軸Sに垂直な側面図の両方において、ほぼ直線状に延びている。平刃14は、わずかに湾曲した形状を有することもできることに留意されたい。
【0043】
特に
図1および
図3に見られるように、主刃12に直接隣接して主すくい面面取り部32が形成されており、これは切削くさびを狙って補強するために使用される。主すくい面面取り部32は0.1~0.4mmの範囲の(主刃に対して垂直に測定した)幅b1を有する。主すくい面面取り部32は、この実施形態では、
図3に見られるように、負の名目上の面取り角度γを有する。しかし正の名目上の面取り角度も可能であることに留意されたい。
【0044】
図1および
図4に見られるように、平刃14に直接隣接して平すくい面面取り部34が形成されている。平すくい面面取り部34は0.1~0.4mmの範囲の幅b2(平刃14に垂直に測定)を有する。この場合、平すくい面面取り部34の幅は特に、例えば主すくい面面取り部32の幅に対応することができる。平すくい面面取り部34は、
図4から分かるように、負の名目上の面取り角度βを有する。平すくい面面取り部34の名目上の面取り角度βは、主すくい面面取り部32の名目上の面取り角度γよりも小さい。本実施形態では、平すくい面面取り部34の名目上の面取り角度βは、主すくい面面取り部32の名目上の面取り角度γよりも、少なくとも8°、好ましくは少なくとも10°、小さい。例えば一例においては、主すくい面面取り部32の名目上の面取り角度γは、約-2.5°とすることができ、平すくい面面取り部34の名目上の面取り角度βは、約-13°とすることができる。
【0045】
主刃12に沿って、特に
図1、
図5および
図6に見られるように、周囲側面6には主逃げ面22が形成されている。図示の実施形態では、主逃げ面22はそれぞれ平坦面として形成され、この面は隆起切削コーナー16から下降切削コーナー18まで割り当てられた主刃12全体に沿って延びている。主逃げ面22は、割り当てられた主刃12からの距離が増大するにつれて、対称軸Sから遠ざかる。換言すれば、主逃げ面22は、
図3から分かるように、負の名目上の主逃げ角εで延びている。第1の切削エッジ8の主刃12に割り当てられている主逃げ面22は、ほぼ基準面Rまで延び、そこで、第2の切削エッジ10の主刃12に割り当てられた主逃げ面22に、合流する。負の名目上の主逃げ角εに基づいて、第1の切削エッジ8および第2の切削エッジ10の隣り合う主逃げ面22は、
図3に見られるように、互いに180°より大きい外角を囲む。この実施形態では、主逃げ面22はそれぞれほぼ基準面Rまで延び、そこで反対側にある切削エッジの主逃げ面22に合流するが、例えばこれらの間において周囲側面6に1つまたは複数の追加の面を設けることも可能である。
【0046】
平刃14に沿って、特に
図1、
図5および
図6に見られるように、平逃げ面24が周囲側面6に形成されている。図示の実施形態では、平逃げ面24は、それぞれ平坦面として形成されており、割り当てられた平刃14全体に沿って隆起切削コーナー16から下降切削コーナー18まで延びている。平逃げ面24は、割り当てられた平刃14からの距離が増加するにつれて、対称軸Sに近づく。換言すれば、平逃げ面24は、
図4に見られるように、正の名目上の平逃げ角ηで延びる。第1の切削エッジ8の平刃14に割り当てられている平逃げ面24は、ほぼ基準面Rまで延び、そこで第2の切削エッジ10の平刃14に割り当てられている平逃げ面24に合流する。正の名目上の平逃げ角ηに基づいて、第1の切削エッジ8および第2の切削エッジ10の隣り合う平逃げ面24は、この場合
図4に見られるように、互いに、鈍角の外角、すなわち180°より小さい角度を囲む。この実施形態では、平逃げ面24はそれぞれほぼ基準面Rまで延び、そこで反対側にある切削エッジの平逃げ面24に合流するが、例えばその間の周囲側面6に1つまたは複数の追加の面を設けることも可能である。
【0047】
主逃げ面22および平逃げ面24の上述した構成に基づいて、周囲側面6はしたがって、主刃12および主逃げ面22の領域において、外側に向かって凸状に湾曲に形成されており、これに対し、周囲側面6は平刃14および平逃げ面24の領域では内側に向かって凹状に引っ込むように形成されている。
【0048】
平フライス加工のためのフライス工具100を
図7から
図11を参照して以下に説明するが、まず
図7および
図8を参照してフライス工具100の基体101を説明する。
【0049】
フライス工具100は、加工機械のスピンドルとの接続のためのインターフェースを備える第1の端部105を有する基体101を、有する。反対側にある他端では、基体101は、上述した両面切削インサート1を収容するための複数の座部102を備えて形成されている。図中では、全部で7つのこのような座部102を備えた基体101が一例として図示されているが、基体101が7つより多いまたは7つより少ない座部102を有する構成も可能である。座部102は、基体101の周囲に渡って分配して配置されており、以下により詳細に説明するように、それぞれ同じ向きで両面切削インサート1を収容するように、形成されている。
【0050】
特に
図7に見られるように、各座部102は主当接面103を有し、当該主当接面103は両面切削インサート1がその主載置面26の1つでこれに支持されるように形成されている。座部102はさらに、複数の側方の当接面104を有し、当該側方の当接面104は切削インサート1が主逃げ面22でこれに支持されるように形成されている。この場合、側方の当接面104は、切削インサート1が上側面2の主載置面26で座部の主当接面103に当接しているときに、切削インサート1が下側面4に割り当てられた主逃げ面22で支持されるように、またはその逆に、形成されている。負の名目上の主逃げ角εにより、このようにして、切削インサート1を座部102に固定する際の形状結合的な構成要素が達成される。各座部102には、取り付けボルト200のねじ部分を収容するためのねじ穴106が形成されており、当該取り付けボルト200を用いて両面切削インサート1を座部102に取り付けることができる。
【0051】
図7は、基体101の回転軸Zに対して垂直で、座部102の主当接面103の面基準線に対して垂直な観察方向から見た基体101の側面図である。
図7に見られるように、主当接面103は、負の軸方向設置角度δで延びるように、配向される。この場合、軸方向設置角度δは、回転軸Zに対して垂直にかつ主当接面103の面基準線に対して垂直に見たときに、主当接面103が基体101の回転軸Zと共に取り囲む角度である。したがって主当接面103は、基体101もしくはフライス工具100の回転軸Zに関して回転方向にわずかに前方に傾斜している。本実施形態では、軸方向設置角度δは、-1°~-5°の範囲、好ましくは-2°~-4°の範囲にあるように、選択される。したがって、軸方向設置角度δはこの実施形態では負であるように選択され、これにより非アクティブな副刃14および主刃12を確実に保護することが可能になる。他方では軸方向設置角度δはごく僅かに負に選択されるだけであり、これは以下により詳細に説明するように、アクティブな主刃12の方向付けに極めて有利に作用する。
【0052】
主当接面103は更に、特に
図8に見られるように、負の半径方向設置角度φで延びるように配置されている。座部102での切削インサート1の設置状態では、フライス工具100の回転軸Zと、座部102に固定された切削インサート1のアクティブな隆起切削コーナー16、すなわちアクティブな主刃12とアクティブな副刃18との間に位置する隆起切削コーナー16と、を通って、
図10の右側に示す板状の座部102に例示するように、面ZXが架け渡される。この場合、半径方向設置角度φは、
図8に示すように、この座部102に対して、主当接面103とこの面ZXとの間で測定される。したがって主当接面103は、半径方向に関して後方に傾斜している。この実施形態では半径方向設置角度φは、-15°~-21°の範囲、好ましくは-17°~-19°の範囲にあるように、選択される。したがって半径方向設置角度φはこの実施形態でも負であるが、この場合著しく負であり、すなわち軸方向設置角度δよりも小さい。半径方向設置角度φは、この実施形態では、軸方向設置角度δよりも少なくとも10°小さく、好ましくは少なくとも15°小さくできる。
【0053】
次に、
図9から
図11を参照して、少なくとも1つの切削インサート1が基体101の座部102に取り付けられた場合に実現されるフライス工具100について説明する。切削エッジに生じる位置合わせは、切削インサート1が取り付けられた座部102の例を用いて以下に説明され、この状況は他の座部102に取り付けられた切削インサート1にも対応することは自明である。
【0054】
切削インサート1は、取り付けボルト200を用いて座部102に、以下のように、取り付けられる、すなわち、(上側面2または下側面4のいずれかの)主載置面26が座部102の主当接面103に支持され、2つの主逃げ面22が側方の当接面104に支持されるように、取り付けられる。
【0055】
この設置状況では、切削インサート1の平刃14は、基体101から軸方向に突出するように、配向される。この場合、平刃14は、
図9に見られるように、ほぼ基体101の回転軸Zに対して垂直な面に延びている。回転軸Zに関して半径方向外側では、主刃12が隆起切削コーナー16を介してこの平刃14に接続されている。この平刃14と隆起切削コーナー16を介してこれに接続された主刃12は、アクティブな平刃14とアクティブな主刃12とを形成し、これらが被加工材に係合するようにこれらは配置されている。他の平刃14と主刃12は、「非アクティブ」な平刃と主刃を形成し、これらは被加工材とは係合せず、アクティブな切削エッジ部が摩耗したときに割り出しによって使用できるようにされる。
【0056】
切削インサート1自体に実現される個々の面の前述の名目上の角度および形状を、座部102の向きによって生じる角度および向きと、組み合わせることにより、この実施形態において、被加工材料に対するアクティブな主刃12およびアクティブな副刃14の格別に有利な実質上の配置がもたらされる。これを
図9と
図10を参照して以下により詳細に説明する。
【0057】
設置状態では、アクティブな主刃12は、特に
図9に見られるように、非常に大きな実質上の軸方向角度θで延びている。実質上の軸方向角度θは、この実施形態では、16°~24°の範囲、好ましくは18°~22°の範囲にある。これにより、平フライス加工時に特に滑らかな切削が可能になる。この場合、実質上の軸方向角度θは、回転軸Zが隆起切削コーナー16に隣接するアクティブな主刃12の端部と交差する半径方向の視野方向において、アクティブな主刃12とフライス工具100の回転軸Zとの間で、決定される。
【0058】
アクティブな平刃14に形成される実質上の平逃げ角τは、特に
図9に見られるように、設置状態では、8°~12°の範囲にある。強く負の半径方向の設置状態に基づいて、アクティブな主刃12に形成される実質上の主逃げ角も8°~12°の範囲にある。この場合、好ましくは、例えば実質上の平逃げ角と実質上の主逃げ角は、ほぼ同じ大きさにすることができる。この場合、実質上の主逃げ角は、アクティブ主刃12に割り当てられた主逃げ面22と、フライス工具100が回転軸Zを中心に回転するときに主刃12が生成する包絡線と、の間で測定される。
【0059】
平すくい面面取り部34の上述の構成と、切削インサート1に実現されたその名目上の面取り角度との組み合わせ、主すくい面面取り部32の上述の構成と、切削インサートに実現された名目上の面取り角度との組み合わせ、および、軸方向と半径方向に傾斜した設置位置、により、設置状態において、平すくい面面取り部34の実質上の面取り角度と主すくい面面取り部32の実質上の面取り角度とがほぼ同じ大きさになる。
【0060】
記載された特徴の組み合わせにより、両面切削インサートとしての切削インサートを実現することによって課される制限にもかかわらず、平フライス加工の際に、非常に滑らかな切削、および、格別に安定したフライス加工プロセス、を可能にすることが達成される。
【符号の説明】
【0061】
2 上側面
4 下側面
6 周囲側面
8 切削エッジ
10 切削エッジ
12 主刃
14 平刃
16 切削コーナー
18 切削コーナー
22 主逃げ面
24 平逃げ面
32 主すくい面面取り部
34 平すくい面面取り部
101 基体
102 座部
103 主当接面
S 対称軸
R 基準軸