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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】支持装置
(51)【国際特許分類】
   B25B 23/10 20060101AFI20231219BHJP
   B23Q 3/02 20060101ALI20231219BHJP
   B23Q 3/06 20060101ALI20231219BHJP
   B25J 15/08 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
B25B23/10 C
B23Q3/02 A
B23Q3/06 303B
B25J15/08 C
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022508346
(86)(22)【出願日】2021-03-15
(86)【国際出願番号】 JP2021010380
(87)【国際公開番号】W WO2021187419
(87)【国際公開日】2021-09-23
【審査請求日】2022-11-21
(31)【優先権主張番号】P 2020049528
(32)【優先日】2020-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【弁理士】
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】木村 睦
【審査官】亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-173861(JP,A)
【文献】特開2005-169512(JP,A)
【文献】実開平4-32866(JP,U)
【文献】国際公開第2013/005330(WO,A1)
【文献】実開平6-15959(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2011/0203420(US,A1)
【文献】特開昭61-159305(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25B 23/10
B23P 19/06
B25B 1/04 - 1/14
B25B 5/00 - 5/16
B23Q 3/02
B23Q 3/06
B25J 15/08
B24B 41/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円周面(32)を有する支持対象物(W)を支持する支持装置(10)であって、
ベース部(12)と、
前記ベース部に対してスライド可能に設けられ、前記円周面を両側方から挟持する弧状の切欠部(28)が設けられた一対の支持部材(14)と、
前記一対の支持部材を互いに接近する接近方向に付勢する複数の第1の付勢部材(16)と、
前記一対の支持部材の各々の前記切欠部に沿って設けられ、前記支持対象物が前記支持対象物の軸線(34)を中心に回転できるように前記支持対象物を挟持するための複数のベアリング部(18)と、
前記複数のベアリング部が前記支持対象物を挟持するために、前記複数のベアリング部を前記支持対象物に向かって付勢する複数の第2の付勢部材(20)と、
を備え、
前記複数の第1の付勢部材が前記一対の支持部材を付勢する力よりも強い力で前記複数のベアリング部が前記支持対象物を挟持できるように、前記複数の第1の付勢部材の付勢力および前記複数の第2の付勢部材の付勢力が設定されている、支持装置。
【請求項2】
請求項1に記載の支持装置であって、
前記ベース部には、前記ベース部を厚み方向で貫通し、前記支持対象物が前記一対の支持部材または前記複数のベアリング部に挟持された状態のときに前記支持対象物を臨む穴(26)が設けられている、支持装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の支持装置であって、
前記ベース部に設けられ、前記一対の支持部材を互いの前記接近方向に移動させることにより、前記一対の支持部材に前記支持対象物を挟持させるアクチュエータ(22)をさらに備える、支持装置。
【請求項4】
請求項3に記載の支持装置であって、
前記アクチュエータを制御することにより、前記一対の支持部材による前記支持対象物の挟持と、前記複数のベアリング部による前記支持対象物の挟持と、を切り替える制御部(24)をさらに備える、支持装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の支持装置であって、
前記支持部材の前記切欠部の表面には、凹凸形状(30)が形成されている、支持装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の支持装置であって、
前記複数のベアリング部は、
前記支持対象物の前記軸線に平行な回転軸(39)を有する転動体(36)と、
前記複数の第2の付勢部材のうちの1つに連結され、前記転動体を回転可能に支持する支持体(38)と、
を有するベアリング部を含む、支持装置。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか1項に記載の支持装置であって、
前記複数のベアリング部の各々は、
一対の前記支持部材に挟まれた前記支持対象物を臨む開口(46)が設けられた収容部(40)と、
前記収容部に収容され、前記開口よりも大きい直径(R42)を有する球体状の転動体(42)と、
前記複数の第2の付勢部材のうちの1つに連結され、前記転動体を転動可能に支持すると共に、前記転動体を前記開口の方に付勢する球体すべり部(44)と、
を有するベアリング部を含む、支持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円周面を有する支持対象物を支持する支持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
支持対象物を支持するために提供されるエアチャック等の支持装置が、一般によく知られている。また、支持対象物と該支持対象物を支持した支持装置とを回転させるロータリージョイントも、一般によく知られている。その一例は、例えば実開平05-053886号公報に開示される。
【発明の概要】
【0003】
一般的な支持装置は、実開平05-053886号公報でも前提的に説明されているように、ロータリージョイントによって支持対象物を回転させるときに該支持対象物と一緒に回転するものである。このような支持装置では、例えばスペースが限られている状況下において、支持装置を回転させずに支持対象物だけを回転させたいといった需要に応えることができなかった。
【0004】
そこで、本発明は、自身は回転することなしに支持対象物を回転可能に支持する支持装置を提供することを目的とする。
【0005】
本発明の一つの態様は、円周面を有する支持対象物を支持する支持装置であって、ベース部と、前記ベース部に対してスライド可能に設けられ、前記円周面を両側方から挟持する弧状の切欠部が設けられた一対の支持部材と、前記一対の支持部材を互いに接近する接近方向に付勢する複数の第1の付勢部材と、前記一対の支持部材の各々の前記切欠部に沿って設けられ、前記支持対象物が前記支持対象物の軸線を中心に回転できるように前記支持対象物を挟持するための複数のベアリング部と、前記複数のベアリング部が前記支持対象物を挟持するために、前記複数のベアリング部を前記支持対象物に向かって付勢する複数の第2の付勢部材と、を備え、前記複数の第1の付勢部材が前記一対の支持部材を付勢する力よりも強い力で前記複数のベアリング部が前記支持対象物を挟持できるように、前記複数の第1の付勢部材の付勢力および前記複数の第2の付勢部材の付勢力が設定されている。
【0006】
本発明によれば、自身は回転することなしに支持対象物を回転可能に支持する支持装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施の形態の支持装置の斜視図である。
図2】実施の形態の支持装置の上面図である。
図3】実施の形態の支持装置の下面図である。
図4】2つの切欠部同士の間に支持対象物が配された状態を示す斜視図である。
図5図2のV-V断面図である。
図6】一対の支持部材による支持対象物の挟持を説明するための第1の図である。
図7】一対の支持部材による支持対象物の挟持を説明するための第2の図である。
図8】複数のベアリング部による支持対象物の挟持を説明するための第1の図である。
図9】複数のベアリング部による支持対象物の挟持を説明するための第2の図である。
図10】変形例1の支持装置の構成を説明するための図である。
図11図10のXI-XI断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の支持装置について、好適な実施の形態を掲げ、添付の図面を参照しながら以下、詳細に説明する。
【0009】
[実施の形態]
図1は、実施の形態の支持装置10の斜視図である。図2は、実施の形態の支持装置10の上面図である。図3は、実施の形態の支持装置10の下面図である。なお、以下で説明する上下左右前後の各方向は、各図面に示された矢印に従う。
【0010】
本実施の形態の支持装置10は、円周面32を有する支持対象物W(図4)を支持するために提供される装置である。支持装置10は、ベース部12と、一対の支持部材14と、複数の第1の付勢部材16と、複数のベアリング部18と、複数の第2の付勢部材20と、アクチュエータ22と、制御部24と、を備える。以下、これらの各要素について説明する。
【0011】
ベース部12は、板状の部材であって、材料に金属を含む。本実施の形態で例示するベース部12は左右方向の長手と前後方向の短手とを有するものであるが、ベース部12は長手と短手とを有するものに限定されない。
【0012】
ベース部12の中央には、ベース部12を厚み方向(上下方向)で貫通する穴(第1の開口)26が設けられる。第1の開口26は、後述する一対の支持部材14または複数のベアリング部18により挟持された支持対象物Wに対する視認性の確保と、工具T(図9)等で支持対象物Wにアプローチすることを容易にすることと、を達成するものである。
【0013】
一対の支持部材14(14A、14B)は、左右方向で互いに対向すると共に、互いに対称的に構成される左側の支持部材14Aおよび右側の支持部材14Bを有する。この一対の支持部材14の各々は、ベース部12に対してスライド可能に設けられる略平板状の金属部材であって、弧状の切欠部28が設けられる。この切欠部28は、支持部材14Aにおいては支持部材14Bに対向する右側の側面に設けられ、支持部材14Bにおいては支持部材14Aに対向する左側の側面に設けられる。これにより、2つの切欠部28が左右方向で互いに対向するようになる。
【0014】
切欠部28の表面には、後述するベアリング部18をスライド可能に設けるための放射状の複数の長穴28sが形成される。支持部材14Aに設けられる複数の長穴28sの配置と支持部材14Bに設けられる複数の長穴28sの配置とは対称である。なお、長穴28sに代えて、放射状のスリットを切欠部28に形成してもよい。
【0015】
また、切欠部28の表面には、上下方向に沿った凹凸形状30が形成されていることが好ましい。その理由は後述する。
【0016】
支持対象物Wは、本実施の形態では円形状の頭部を有するネジ部材である。ただし、支持対象物Wはネジ部材に限定されず、例えば単純な円筒状の部材であってもよい。また、支持対象物Wの円周面32には、円形の端面のみならず、円形の断面も意味として含まれる。支持対象物Wは、円周面32の中心を通る軸線34を有する。
【0017】
複数の第1の付勢部材16は、一対の支持部材14を接近方向に付勢するものである。接近方向は、一対の支持部材14の対向方向に平行な方向であって、一対の支持部材14が互いに接近する方向のことを指す。つまり、接近方向とは、支持部材14Aにとっては支持部材14Bに向かう右方向のことを指し、支持部材14Bにとっては支持部材14Aに向かう左方向のことを指す。
【0018】
複数の第1の付勢部材16の各々は、本実施の形態では弾性を有する圧縮コイルばねであるとする。ただし、一対の支持部材14を付勢するものであれば、複数の第1の付勢部材16は圧縮コイルばねに限定されない。
【0019】
本実施の形態では、一対の支持部材14の各々に対して第1の付勢部材16を2つずつ連結する。これらのうち、支持部材14Aに連結される第1の付勢部材16は、一端16aが支持部材14Aの支持部材14Bとは反対側に連結され、他端16bがベース部12に連結される。同様に、支持部材14Bに連結される第1の付勢部材16は、一端16aが支持部材14Bの支持部材14Aとは反対側に連結され、他端16bがベース部12に連結される。
【0020】
図3のように、支持部材14Aに連結される2つの第1の付勢部材16は、支持部材14Aに対し前後方向で互いに一対である。これにより、支持部材14Aに連結された一方の第1の付勢部材16から支持部材14Aに印加される付勢力と他方の第1の付勢部材16から支持部材14Aに印加される付勢力とが均等になる。
【0021】
同様に、支持部材14Bに連結される2つの第1の付勢部材16は、支持部材14Bに対し前後方向で互いに一対である。これにより、支持部材14Bに連結された一方の第1の付勢部材16から支持部材14Bに印加される付勢力と他方の第1の付勢部材16から支持部材14Bに印加される付勢力とが均等になる。
【0022】
さらに、支持部材14Aに連結される2つの第1の付勢部材16の組と支持部材14Bに連結される2つの第1の付勢部材16の組とは、左右方向で互いに一対である。これにより、支持部材14Aに印加される付勢力と支持部材14Bに印加される付勢力とが均等になる。
【0023】
図4は、2つの切欠部28同士の間に支持対象物Wが配された状態を示す斜視図である。
【0024】
一対の支持部材14は、複数の第1の付勢部材16を収縮させることにより、図4のように、接近方向とは反対の離間方向に移動することが可能である。複数の第1の付勢部材16の収縮は、後述するアクチュエータ22を用いることで、容易に達成可能である。
【0025】
対向した2つの切欠部28同士の間には、円周面32と該円周面32の中心を通る軸線34とを有する支持対象物Wを配することができる。これにより、支持対象物Wは、2つの切欠部28によって円周面32の両側方から挟まれる。
【0026】
図5は、図2のV-V断面図である。
【0027】
複数のベアリング部18は、切欠部28の複数の長穴28sに設けられる部品である。複数のベアリング部18の各々は、1つの長穴28sにつき1つずつ設けられる。また、その各々は、転動体36と、支持体38と、を有する。
【0028】
これらのうち、転動体36は、例えばこれ自体が1つのラジアルベアリングであって、2つの切欠部28の間に配される支持対象物Wの軸線34(図6)に平行な軸線(回転軸)39を有する部材である。
【0029】
支持体38は、転動体36を回転可能に支持する部材である。支持体38は長穴28sの上方に設けられると共に、長穴28sの短手(図5では紙面の奥行方向および手前方向の幅)よりも大きい幅を有する。このため、支持体38が長穴28sを通って下方に落下することはない。支持体38と支持部材14とは互いに固定されない。これにより、支持体38は支持部材14に対してスライド可能となる。
【0030】
また、この支持体38は、長穴28sを挿通する延在部38aと、支持体38の上下方向での可動幅を制限するフランジ部38bと、を有する。フランジ部38bは、延在部38aの下端側に設けられ、支持部材14の下面に下方から接触することで、スライドする支持体38の上方への移動を規制する。
【0031】
転動体36は、延在部38aの下端に回転可能に連結される。これに関し、例えば転動体36がラジアルベアリングである場合は、該ラジアルベアリングの内輪と延在部38aとを連結すればよい。これにより、ラジアルベアリングの外輪が回転することを許容しつつ、該ラジアルベアリングを支持体38で支持することができる。
【0032】
なお、ベアリング部18の構成は、上記に限定されない。例えば、転動体36はいわゆるコロ(円筒コロ、樽状コロ等)であってもよい。このとき、コロを回転可能に支持する軸受構造を延在部38aに設けることで該コロを回転可能としてもよいし、コロに対して延在部38aを固定し、該延在部38aを回転可能に支持する軸受構造を支持体38に設けてもよい。
【0033】
複数の第2の付勢部材20は、2つの切欠部28の間に配される支持対象物Wに向かって複数のベアリング部18を付勢する部材である。複数の第2の付勢部材20は、支持部材14上であって放射状に設けられた複数の長穴28sの各々の長手方向の延長上に1つずつ配置され、該長手方向に沿って伸縮する。これにより、第2の付勢部材20の伸縮に合わせて、ベアリング部18が長穴28sの長手方向に沿ってスライドするようになる。
【0034】
複数の第2の付勢部材20の付勢力は、複数の第1の付勢部材16が一対の支持部材14を付勢する力よりも強くなるように設定される。複数の第2の付勢部材20の各々は、本実施の形態では圧縮コイルばねであるが、第1の付勢部材16と同様に、圧縮コイルばねに限定されない。
【0035】
第2の付勢部材20は、1つのベアリング部18につき1つ連結される。ベアリング部18は、自己に連結された第2の付勢部材20により第2の付勢部材20に圧縮力が印加されていない状態において転動体36の一部が切欠部28からはみ出た状態で保持される(図3)。
【0036】
アクチュエータ22は、ベース部12に設けられ、一対の支持部材14を互いの接近方向に移動させることにより、一対の支持部材14に支持対象物Wを挟持させるものである。アクチュエータ22は、本実施の形態ではその駆動により一対の支持部材14に左右方向の直動力を印加する一対のエアシリンダである。一対のうちの一方のエアシリンダは支持部材14Aに連結され、他方のエアシリンダは支持部材14Bに連結される。
【0037】
なお、アクチュエータ22は、一対の支持部材14を互いの接近方向に移動させるものであれば、一対のエアシリンダに限定されない。例えば、油圧シリンダ、ボールネジ機構、あるいは電動機によりアクチュエータ22を構成してもよい。
【0038】
制御部24は、アクチュエータ22を制御することにより、一対の支持部材14による支持対象物Wの挟持と、複数のベアリング部18による支持対象物Wの挟持と、を切り替えるものである。この切り替えについては後述する。制御部24は、本実施の形態では前述した一対のエアシリンダのコントローラである。
【0039】
本実施の形態では、一対の支持部材14の移動がアクチュエータ22により制御されている状態をアクチュエータ22の「オン状態」と呼ぶ。また、同移動がアクチュエータ22により制御されていない状態をアクチュエータ22の「オフ状態」と呼ぶ。支持装置10が制御部24を備えることにより、このオン状態とオフ状態との切り替えを達成することが容易となる。
【0040】
以上が、本実施の形態の支持装置10の構成の概要である。続いて、この支持装置10における、一対の支持部材14による支持対象物Wの挟持と、複数のベアリング部18による支持対象物Wの挟持と、の切り替えについて説明する。
【0041】
まず、本実施の形態の支持装置10により実現される、一対の支持部材14による支持対象物Wの挟持について説明する。この挟持は、図4の状態から、アクチュエータ22をオン状態にして一対の支持部材14同士を互いに接近させることにより実現する。
【0042】
図6は、一対の支持部材14による支持対象物Wの挟持を説明するための第1の図である。
【0043】
一対の支持部材14同士を互いの接近方向に移動させていくと、まずは転動体36が支持対象物Wに接触する。ここで、アクチュエータ22は、支持部材14Aの複数の第2の付勢部材20の付勢力および支持部材14Bの複数の第2の付勢部材20の付勢力よりも強い力で一対の支持部材14の各々を接近方向に移動させる。これにより、その移動に伴って、転動体36には支持対象物Wから押圧力が印加される。このとき、複数の第2の付勢部材20は、自らが収縮することにより、その押圧力を吸収する。
【0044】
図7は、一対の支持部材14による支持対象物Wの挟持を説明するための第2の図である。
【0045】
複数の第2の付勢部材20が収縮することにより、複数のベアリング部18は支持対象物Wから離れるようにスライドする。そのままアクチュエータ22によって一対の支持部材14を接近方向にさらに移動させ続けると、最終的には、図7のように、一対の支持部材14の各々の切欠部28と支持対象物Wとが接触する。一対の支持部材14による支持対象物Wの挟持は、この状態を維持することにより実現する。
【0046】
図7の挟持状態において、支持対象物Wは一対の支持部材14の各々に設けられた弧状の切欠部28により円周面32の両側方から強固に挟持されており、該支持対象物Wが支持装置10に対して回転することは抑止されている。したがって、支持対象物Wを回転させたくない場合に、図7の挟持状態は好適である。
【0047】
また、このとき、切欠部28の表面に凹凸形状30が形成されていれば、この凹凸が支持対象物Wの滑り止めとして機能する。これにより、一対の支持部材14によって支持対象物Wを回転しないように挟持することが、よりいっそう好適に達成される。
【0048】
図8は、複数のベアリング部18による支持対象物Wの挟持を説明するための第1の図である。
【0049】
次に、複数のベアリング部18による支持対象物Wの挟持について説明する。この挟持は、アクチュエータ22をオフ状態にすることで実現可能である。すなわち、アクチュエータ22をオフ状態にすると、一対の支持部材14は、複数の第1の付勢部材16により、互いの接近方向に向かって付勢される。その結果、アクチュエータ22で移動させたときと同様に、まずは一対の支持部材14に設けられた複数のベアリング部18の転動体36が支持対象物Wに接触する。
【0050】
ここで、前述の通り、複数のベアリング部18を支持対象物Wに向かって押し出す複数の第2の付勢部材20の付勢力は、複数の第1の付勢部材16が一対の支持部材14を付勢する力よりも強い。したがって、アクチュエータ22がオフ状態の場合、複数のベアリング部18は、図7のときのように押し込まれることなく、各々が有する転動体36によって支持対象物Wを挟持することが可能である。このようにして、複数のベアリング部18による支持対象物Wの挟持は実現する。
【0051】
図9は、複数のベアリング部18による支持対象物Wの挟持を説明するための第2の図である。
【0052】
図8の状態では、支持対象物Wが軸線34を中心に回転するとき、転動体36も自己の回転軸を中心にして一緒に回転する。つまり、図8の状態では、支持装置10全体として回転することなしに、支持対象物Wを回転可能に支持することが可能である。
【0053】
これにより、例えば図9に示すように、支持対象物Wであるネジ部材を支持装置10で回転可能に支持しつつ、他部材W’に締結する作業を容易に行うことができる。このとき、ベース部12に第1の開口26が設けられていれば、ベース部12側から支持対象物Wまで該第1の開口26を通じてネジ締め用の工具Tで容易にアクセスすることができる。支持装置10は締結作業中に回転しないので、一箇所に容易に固定することができ、スペースが限られている場所であっても良好な作業性で締結作業を遂行することを可能にする。
【0054】
このように、本実施の形態によれば、自身は回転することなしに支持対象物Wを回転可能に支持する支持装置10が提供される。また、本実施の形態の支持装置10の構成によれば、支持対象物Wを回転しないように支持することもできる。さらに、本実施の形態の支持装置10の構成によれば、支持対象物Wを回転可能に支持することと、回転しないように支持することとを、任意に使い分けることもできる。
【0055】
[変形例]
以上、本発明の一例として実施の形態が説明された。上記実施の形態には、多様な変更または改良を加えることが可能である。また、その様な変更または改良を加えた形態が本発明の技術的範囲に含まれ得ることは、請求の範囲の記載から明らかである。
【0056】
(変形例1)
以下、変形例1の支持装置10について説明する。ただし、実施の形態で既に説明した同名同符号の要素については、その説明を適宜割愛する。
【0057】
図10は、変形例1の支持装置10の構成を説明するための図である。図11は、図10のXI-XI断面図である。
【0058】
ベアリング部18の構成は、実施の形態に限定されない。例えば、ベアリング部18は、収容部40と、転動体42と、球体すべり部44と、を有してもよい。以下、便宜的に、本変形例のベアリング部18をベアリング部18’とも記載する。
【0059】
収容部40は、転動体42を収容するために設けられるものであって、一対の支持部材14に挟まれた支持対象物Wを臨む開口(第2の開口)46が設けられる。この収容部40は、一対の支持部材14に設けられる複数の空洞であってもよい。
【0060】
収容部40のうち、収容された転動体42と接触する内側の表面は、転動体42が後述の転動を好適に行えるように、滑らかであることが好ましい。
【0061】
本変形例の転動体42は、球体状であって、第2の開口46よりも大きい直径を有する部材である(R42>R46)。転動体42は、前述の通り収容部40に収容される。転動体42は、本実施の形態では金属をその材料に含む。
【0062】
球体すべり部44は、収容部40内において第2の付勢部材20に連結される部材であって、転動体42を転動可能に支持しつつ転動体42を第2の開口46の方に付勢する部材である。球体すべり部44は、本実施の形態では皿状の形状を有する。
【0063】
また、球体すべり部44のうち、転動体42と接触する表面は、収容部40の内側の表面と同様に、滑らかであることが好ましい。
【0064】
複数のベアリング部18’は、支持対象物Wを回転可能に挟持することが可能である。すなわち、本変形例の構成では、転動体42は球体すべり部44を介して第2の付勢部材20によって第2の開口46の方へと押圧され、その一部が第2の開口46から収容部40の外部に露出する。その結果、複数のベアリング部18’の各々の転動体42と支持対象物Wとが接触する。
【0065】
ここで、アクチュエータ22がオフ状態であれば、実施の形態と同様の理由により、複数の第1の付勢部材16に付勢された一対の支持部材14ではなく、複数の第2の付勢部材20に付勢された複数の転動体42が支持対象物Wを挟持する。
【0066】
転動体42は、自身が転動可能であるため、自身が接触している支持対象物Wが回転することを許容する。したがって、本変形例においても、支持装置10は、自身は回転することなしに、支持対象物Wを回転可能に支持することが可能である。
【0067】
[実施の形態から得られる発明]
上記実施の形態および変形例から把握しうる発明について、以下に記載する。
【0068】
円周面(32)を有する支持対象物(W)を支持する支持装置(10)であって、ベース部(12)と、前記ベース部(12)に対してスライド可能に設けられ、前記円周面(32)を両側方から挟持する弧状の切欠部(28)が設けられた一対の支持部材(14)と、前記一対の支持部材(14)を互いに接近する接近方向に付勢する複数の第1の付勢部材(16)と、前記一対の支持部材(14)の各々の前記切欠部(28)に沿って設けられ、前記支持対象物(W)が前記支持対象物(W)の軸線(34)を中心に回転できるように前記支持対象物(W)を挟持するための複数のベアリング部(18)と、前記複数のベアリング部(18)が前記支持対象物(W)を挟持するために、前記複数のベアリング部(18)を前記支持対象物(W)に向かって付勢する複数の第2の付勢部材(20)と、を備え、前記複数の第1の付勢部材(16)が前記一対の支持部材(14)を付勢する力よりも強い力で前記複数のベアリング部(18)が前記支持対象物(W)を挟持できるように、前記複数の第1の付勢部材(16)の付勢力および前記複数の第2の付勢部材(20)の付勢力が設定されている。
【0069】
これにより、自身は回転することなしに支持対象物(W)を回転可能に支持する支持装置(10)が提供される。
【0070】
前記ベース部(12)には、前記ベース部(12)を厚み方向で貫通し、前記支持対象物(W)が前記一対の支持部材(14)または前記複数のベアリング部(18)に挟持された状態のときに前記支持対象物(W)を臨む穴(26)が設けられてもよい。これにより、支持対象物(W)に対する視認性の確保と、工具(T)等で支持対象物(W)にアプローチすることを容易にすることと、が達成される。
【0071】
前記ベース部(12)に設けられ、前記一対の支持部材(14)を互いの前記接近方向に移動させることにより、前記一対の支持部材(14)に前記支持対象物(W)を挟持させるアクチュエータ(22)をさらに備えてもよい。これにより、アクチュエータ(22)をオン状態にすることで、支持対象物(W)が回転しないように支持することができる。
【0072】
前記アクチュエータ(22)を制御することにより、前記一対の支持部材(14)による前記支持対象物(W)の挟持と、前記複数のベアリング部(18)による前記支持対象物(W)の挟持と、を切り替える制御部(24)をさらに備えてもよい。これにより、支持対象物(W)が回転可能に支持される状態と、回転しないように支持される状態と、を容易に切り替えることができる。
【0073】
前記支持部材(14)の前記切欠部(28)の表面には、凹凸形状(30)が形成されてもよい。これにより、凹凸形状(30)が滑り止めとして機能するので、支持対象物(W)を回転しないように支持することがより好適に達成される。
【0074】
前記複数のベアリング部(18)は、前記支持対象物(W)の前記軸線(34)に平行な回転軸(39)を有する転動体(36)と、前記複数の第2の付勢部材(20)のうちの1つに連結され、前記転動体(36)を回転可能に支持する支持体(38)と、を有するベアリング部(18)を含んでもよい。これにより、軸線(34)に平行な回転軸(39)を有する転動体(36)が、支持対象物(W)を回転可能に挟持する。
【0075】
前記複数のベアリング部(18)の各々は、一対の前記支持部材(14)に挟まれた前記支持対象物(W)を臨む開口(46)が設けられた収容部(40)と、前記収容部(40)に収容され、前記開口(46)よりも大きい直径(R42)を有する球体状の転動体(42)と、前記複数の第2の付勢部材(20)のうちの1つに連結され、前記転動体(42)を転動可能に支持すると共に、前記転動体(42)を前記開口(46)の方に付勢する球体すべり部(44)と、を有するベアリング部(18)を含んでもよい。これにより、収容部(40)内で転動する転動体(42)が、支持対象物(W)を回転可能に挟持する。
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