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特許7405950微小脈管の高時空分解能超音波イメージングを行うための方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】微小脈管の高時空分解能超音波イメージングを行うための方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/06 20060101AFI20231219BHJP
【FI】
A61B8/06
【請求項の数】 41
(21)【出願番号】P 2022510122
(86)(22)【出願日】2021-06-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-11
(86)【国際出願番号】 US2021037464
(87)【国際公開番号】W WO2021257589
(87)【国際公開日】2021-12-23
【審査請求日】2022-05-17
(31)【優先権主張番号】63/039,549
(32)【優先日】2020-06-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500480919
【氏名又は名称】メイヨ フオンデーシヨン フオー メデイカル エジユケーシヨン アンド リサーチ
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】ファン チェンウ
(72)【発明者】
【氏名】チェン シガオ
【審査官】冨永 昌彦
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2020/0178939(US,A1)
【文献】特表2019-526350(JP,A)
【文献】AVINOAM BAR-ZION; ET AL,SUSHI: SPARSITY-BASED ULTRASOUND SUPER-RESOLUTION HEMODYNAMIC IMAGING,IEEE TRANSACTIONS ON ULTRASONICS, FERROELECTRICS, AND FREQUENCY CONTROL,米国,IEEE,2018年12月,VOL:65, NR:12,PAGE(S):2365 - 2380,http://dx.doi.org/10.1109/TUFFC.2018.2873380
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00-8/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波システムを用いて微小脈管の高時空分解能イメージングを行うための方法であって、
(a)超音波データを取得したときにマイクロバブル造影剤が内部に存在していた被検体の関心領域から前記超音波システムを用いて取得した当該超音波データに、コンピュータシステムを用いてアクセスするステップと、
(b)前記コンピュータシステムを用いて、前記超音波データ中のマイクロバブル信号を当該超音波データ中の他の信号から分離することにより、マイクロバブル信号データを生成するステップと、
(c)前記超音波データを取得するために使用した前記超音波システムの点拡がり関数(PSF)を求めるステップと、
(d)前記マイクロバブル信号データと前記超音波システムの点拡がり関数との相互相関マップを生成するために、前記マイクロバブル信号データの第1のN乗と前記点拡がり関数の第2のN乗とを求めるステップと、
(e)生成した前記相互相関マップに少なくとも部分的に基づいて、高時空分解能の微小脈管画像を生成するステップと、
を有することを特徴とする方法。
【請求項2】
Nは2より大きい、
請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記第1のN乗と前記第2のN乗とは等しい、
請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記マイクロバブル信号データの前記第1のN乗と前記点拡がり関数の前記第2のN乗とが、前記微小脈管画像の鮮鋭度を決定する、
請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記マイクロバブル信号データ及び前記点拡がり関数はガウス分布を有し、
前記マイクロバブル信号データの前記第1のN乗及び前記点拡がり関数の前記第2のN乗は、前記マイクロバブル信号データより鮮鋭なガウス分布と、より小さい半値全幅(FWHM)とを提供する、
請求項3記載の方法。
【請求項6】
前記半値全幅は1/√Nの率で改善される、
請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記点拡がり関数は、シミュレートされた点拡がり関数である、
請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記シミュレートされた点拡がり関数は、多変量ガウス分布に少なくとも部分的に基づいてシミュレートすることにより求められる、
請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記点拡がり関数は、前記超音波システムを用いて小さい点状物体をイメージングすることにより得られた測定結果に基づいて推定される、
請求項1記載の方法。
【請求項10】
前記点拡がり関数は、前記マイクロバブル信号データから導出された個々の分離された
マイクロバブルから求められる、
請求項1記載の方法。
【請求項11】
前記相互相関マップを鮮鋭化するステップをさらに有する、
請求項1記載の方法。
【請求項12】
前記相互相関マップを鮮鋭化するステップは、閾値未満の相関係数値を排除するために当該閾値を前記相互相関マップに適用することを含む、
請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記相互相関マップ中のターゲットを取り出すために前記相互相関マップのノイズ除去処理を行うステップをさらに有する、
請求項1記載の方法。
【請求項14】
前記相互相関マップにおけるマイクロバブル軌跡に基づいて血流血行力学的画像を生成するステップをさらに有する、
請求項1記載の方法。
【請求項15】
前記血流血行力学的画像を生成するステップは、前記マイクロバブル信号データからマイクロバブル流速を推定することを含む、
請求項14記載の方法。
【請求項16】
前記マイクロバブル流速を推定することは、前記相互相関マップのフレーム間における個々のマイクロバブル軌跡を分離することを含む、
請求項15記載の方法。
【請求項17】
前記個々のマイクロバブル軌跡に当てはめ線を適用するステップと、
前記マイクロバブル流速を推定するために、分離された前記マイクロバブル軌跡の向き又は長さのうち少なくとも1つを求めるステップと、
をさらに有する、
請求項16記載の方法。
【請求項18】
前記超音波システムのノイズフロアを求めるステップと、
求めた前記ノイズフロアを、空間的に変動する閾値として使用して、前記マイクロバブル信号データにおけるノイズを抑制するステップと、
をさらに有する、
請求項1記載の方法。
【請求項19】
前記超音波システムの前記ノイズフロアに適用されるスケーリング係数により、前記空間的に変動する閾値を制御する、
請求項18記載の方法。
【請求項20】
前記超音波システムの前記ノイズフロアは、オフにされた状態の前記超音波システムの超音波送信によりデータを受け取ることと、最小限にされた前記超音波送信により受け取ったデータをフィルタリングすることと、の少なくとも1つにより求められる、
請求項18記載の方法。
【請求項21】
微小脈管の高時空分解能イメージングを行うための超音波システムであって、
(a)超音波データを取得したときにマイクロバブル造影剤が内部に存在していた被検体の関心領域から前記超音波システムを用いて取得した当該超音波データにアクセスし、
(b)前記超音波データ中のマイクロバブル信号を当該超音波データ中の他の信号から分離することにより、マイクロバブル信号データを生成し、
(c)前記超音波データを取得するために使用した前記超音波システムの点拡がり関数(PSF)を求め、
(d)前記マイクロバブル信号データと前記超音波システムの点拡がり関数との相互相関マップを生成するために、前記マイクロバブル信号データの第1のN乗と前記点拡がり関数の第2のN乗とを求め、
(e)生成した前記相互相関マップに少なくとも部分的に基づいて、高時空分解能の微小脈管画像を生成する、
ように構成されたコンピュータシステムを備えていることを特徴とする超音波システム。
【請求項22】
Nは2より大きい、
請求項21記載の超音波システム。
【請求項23】
前記第1のN乗と前記第2のN乗とは等しい、
請求項21記載の超音波システム。
【請求項24】
前記マイクロバブル信号データの前記第1のN乗と前記点拡がり関数の前記第2のN乗とが、前記微小脈管画像の鮮鋭度を決定する、
請求項23記載の超音波システム。
【請求項25】
前記マイクロバブル信号データ及び前記点拡がり関数はガウス分布を有し、
前記マイクロバブル信号データの前記第1のN乗及び前記点拡がり関数の前記第2のN乗は、前記マイクロバブル信号データより鮮鋭なガウス分布と、より小さい半値全幅(FWHM)とを提供する、
請求項23記載の超音波システム。
【請求項26】
前記半値全幅は1/√Nの率で改善される、
請求項25記載の超音波システム。
【請求項27】
前記点拡がり関数は、シミュレートされた点拡がり関数である、
請求項21記載の超音波システム。
【請求項28】
前記シミュレートされた点拡がり関数は、多変量ガウス分布に少なくとも部分的に基づいてシミュレートすることにより求められる、
請求項27記載の超音波システム。
【請求項29】
前記点拡がり関数は、前記超音波システムを用いて小さい点状物体をイメージングすることにより得られた測定結果に基づいて推定される、
請求項21記載の超音波システム。
【請求項30】
前記点拡がり関数は、前記マイクロバブル信号データから導出された個々の分離されたマイクロバブルから求められる、
請求項21記載の超音波システム。
【請求項31】
前記コンピュータシステムはさらに、前記相互相関マップを鮮鋭化するように構成されている、
請求項21記載の超音波システム。
【請求項32】
前記コンピュータシステムはさらに、閾値未満の相関係数値を排除するために当該閾値
を前記相互相関マップに適用することにより前記相互相関マップを鮮鋭化するように構成されている、
請求項31記載の超音波システム。
【請求項33】
前記コンピュータシステムはさらに、前記相互相関マップ中のターゲットを取り出すために前記相互相関マップのノイズ除去処理を行うように構成されている、
請求項21記載の超音波システム。
【請求項34】
前記コンピュータシステムはさらに、前記相互相関マップにおけるマイクロバブル軌跡に基づいて血流血行力学的画像を生成するように構成されている、
請求項21記載の超音波システム。
【請求項35】
前記コンピュータシステムはさらに、前記血流血行力学的画像を生成するために、前記マイクロバブル信号データからマイクロバブル流速を推定するように構成されている、
請求項34記載の超音波システム。
【請求項36】
前記コンピュータシステムはさらに、前記マイクロバブル流速を推定するために、前記相互相関マップのフレーム間における個々のマイクロバブル軌跡を分離するように構成されている、
請求項35記載の超音波システム。
【請求項37】
前記コンピュータシステムはさらに、
前記個々のマイクロバブル軌跡に当てはめ線を適用し、
前記マイクロバブル流速を推定するために、分離された前記マイクロバブル軌跡の向き又は長さのうち少なくとも1つを求める
ように構成されている、
請求項36記載の超音波システム。
【請求項38】
前記コンピュータシステムはさらに、
前記超音波システムのノイズフロアを求め、
求めた前記ノイズフロアを、空間的に変動する閾値として使用して、前記マイクロバブル信号データにおけるノイズを抑制する、
ように構成されている、
請求項21記載の超音波システム。
【請求項39】
前記コンピュータシステムはさらに、前記超音波システムの前記ノイズフロアに適用されるスケーリング係数により、前記空間的に変動する閾値を制御するように構成されている、
請求項38記載の超音波システム。
【請求項40】
前記コンピュータシステムはさらに、オフにされた状態の前記超音波システムの超音波送信によりデータを受け取ることと、最小限にされた前記超音波送信により受け取ったデータをフィルタリングすることと、の少なくとも1つにより、前記超音波システムの前記ノイズフロアを求めるように構成されている、
請求項38記載の超音波システム。
【請求項41】
超音波システムを用いて微小脈管の高時空分解能イメージングを行うための方法であって、
(a)超音波データを取得したときにマイクロバブル造影剤が内部に存在していた被検体の関心領域から前記超音波システムを用いて取得した当該超音波データに、コンピュー
タシステムを用いてアクセスするステップと、
(b)前記超音波データを前記関心領域によって複数のデータサブセットに空間分割するステップと、
(c)前記各データサブセットごとに、前記コンピュータシステムを用いて、空間分割された前記超音波データ中のマイクロバブル信号を空間分割された当該超音波データ中の他の信号から分離することにより、マイクロバブル信号データを生成するステップと、
(d)前記超音波データを取得するために使用した前記超音波システムの前記各データサブセットごとの空間依存性の点拡がり関数(PSF)を求めるステップと、
(e)前記各データサブセットの前記超音波データと前記超音波システムの点拡がり関数との相互相関マップを生成するために、前記各データサブセットごとの前記マイクロバブル信号データの及び前記点拡がり関数のN乗を求めるステップと、
(f)生成した前記相互相関マップに少なくとも部分的に基づいて、前記各データサブセットごとに高時空分解能の微小脈管画像を生成するステップと、
(g)前記各データサブセットの前記微小脈管画像を組み合わせることにより、最終的な高時空分解能の微小脈管画像を生成するステップと、
を有することを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<関連出願の相互参照>
本願は、発明の名称を「Methods for High Spatial and Temporal Resolution Ultrasound Imaging of Microvessels(微小脈管の高時空分解能超音波イメージングを行うための方法)」とする米国仮特許出願第63/039,549号(出願日:2020年6月16日)の利益を主張するものであり、同文献の記載内容は全て、参照により本願の記載内容に含まれるものとする。
【0002】
<連邦政府の支援による研究に関する言明>
本発明は、国立衛生研究所により授与された政府の支援NS111039によりなされたものである。政府は本発明に一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
超音波造影マイクロバブルは、超音波イメージング強調のために臨床現場において一般に使用されている。マイクロバブルの典型的なサイズは1~5μmの範囲であり、これは、典型的には100~800μmのオーダである超音波の波長より格段に小さい。これにより個々のマイクロバブルは、超音波波長と同程度のサイズの点源であってブラーを生じた点源に見える。また、超音波波長の半分より小さいマイクロバブルは個々に解像することができず、超音波の回折限界と称される結果を生じる。
【0004】
今や、造影超音波(CEUS)イメージングは臨床現場において、浅部組織及び深部組織の両方における高感度の血流及び灌流イメージングを非常に高い時間分解能(リアルタイム)で提供するために、幅広く一般的に使用されている。CEUSは相対的な血液体積及び組織灌流の定量的な評価を提供することができるが、未だに空間分解能に限界があり、その空間分解能では微小血管構造をほとんど識別することができない。例えば腫瘍等、組織の多くの病理学的変化は小脈管レベルで生じるので、微小脈管又は毛細脈管レベル(例えば100μm未満等)での脈管構造や血流血行力学的特性のイメージングが臨床現場において望まれている。
【0005】
既に超高分解能の超音波技術が公知となっており、これは、超音波回折限界を超えた微小血管構造のイメージングを行うことができるものであり、このイメージングは、個々のマイクロバブル(MB)のピンポイントの位置特定とMB位置の移動の追跡とに基づいている。空間分解能は改善されるが、微小血管画像を数十秒のデータ取得で生成しなければならない場合には時間分解能が不足するという大きな問題が残り、これにより本技術の臨床現場における実用化のハードルが大きくなる。臨床上関連する取得時間は、1又は2秒のオーダになることがある。そのような時間フレームでは、超高分解能技術は、完全に網羅した脈管内腔画像を提供することができない場合があり、このような超高分解能技術で無理矢理そのようにしようとすると、微小血管の可視化が悪くなってしまうことがある。さらに、超高分解能手法は典型的には、複雑な位置特定と、MB対応付け(pairing)と、追跡アルゴリズムとに頼るものであり、これは大きな計算コストを伴う。
【0006】
よって、高い空間分解能と高い時間分解能の両方を同時に達成できる高精細の超音波微小脈管イメージングを求める要請が未だ存在する。また、臨床CEUS手順と同程度の非常に短時間の中で画像生成を行いたいとの要請もある。
【発明の概要】
【0007】
本願開示は、超音波システムを用いて微小脈管の高時空分解能イメージングを行うための方法を提供することにより、上記の欠点に対応するものである。超音波データには画像記憶システムからアクセスすることができ、又は、マイクロバブル造影剤を投与された被検体の関心領域から他の態様で超音波データを取得することができる。超音波データは、マイクロバブルが関心領域を移動中に、又は他の態様で関心領域内に存在する間に取得される。関心領域は例えば、被検体の微小血管又は他の微小脈管を含むことができる。マイクロバブル画像とシステムの点拡がり関数との相互相関マップを用いて、微小脈管の高分解能かつ高コントラストの画像を生成することができる。相互相関マップの複数のフレーム間で求められたマイクロバブル軌跡から、速度推定を行うこともできる。
【0008】
一実施態様では、超音波システムを用いて微小脈管の高時空分解能イメージングを行うための方法を提供する。本方法は、超音波データを取得したときにマイクロバブル造影剤が内部に存在していた被検体の関心領域から前記超音波システムを用いて取得した当該超音波データに、コンピュータシステムを用いてアクセスするステップを有する。本方法はまた、前記コンピュータシステムを用いて、前記超音波データ中のマイクロバブル信号を当該超音波データ中の他の信号から分離することにより、マイクロバブル信号データを生成するステップを有する。本方法はさらに、前記超音波データを取得するために使用した前記超音波システムの点拡がり関数(PSF)を求めるステップと、前記マイクロバブル信号データと前記超音波システムの点拡がり関数との相互相関マップを生成するステップとを有する。生成した前記相互相関マップに少なくとも部分的に基づいて、高時空分解能の微小脈管画像を生成することができる。
【0009】
一実施態様では、微小脈管の高時空分解能イメージングを行うための超音波システムを提供する。システムはコンピュータシステムを備えており、当該コンピュータシステムは、超音波データを取得したときにマイクロバブル造影剤が内部に存在していた被検体の関心領域から前記超音波システムを用いて取得した当該超音波データに、コンピュータシステムを用いてアクセスするように構成されている。コンピュータシステムはさらに、当該コンピュータシステムを用いて、前記超音波データ中のマイクロバブル信号を当該超音波データ中の他の信号から分離することにより、マイクロバブル信号データを生成するように構成されている。コンピュータシステムはまた、前記超音波データを取得するために使用した前記超音波システムの点拡がり関数(PSF)を求め、前記マイクロバブル信号データと前記超音波システムの点拡がり関数との相互相関マップを生成するように構成されている。生成した前記相互相関マップに少なくとも部分的に基づいて、前記コンピュータシステムにより高時空分解能の微小脈管画像を生成することができる。
【0010】
一実施態様では、超音波システムを用いて微小脈管の高時空分解能イメージングを行うための方法を提供する。本方法は、超音波データを取得したときにマイクロバブル造影剤が内部に存在していた被検体の関心領域から前記超音波システムを用いて取得した当該超音波データに、コンピュータシステムを用いてアクセスするステップを有する。本方法はまた、前記コンピュータシステムを用いて、前記超音波データ中のマイクロバブル信号を当該超音波データ中の他の信号から分離することにより、マイクロバブル信号データを生成するステップと、前記マイクロバブル信号データにおける個々のマイクロバブル軌跡を分離するステップと、を有する。本方法はさらに、分離した前記マイクロバブル軌跡の軌跡パラメータを求めるステップと、分離した前記マイクロバブル軌跡の求めた前記軌跡パラメータに基づいてマイクロバブル流速を推定するステップと、を有する。推定した前記マイクロバブル流速に少なくとも部分的に基づいて、高時空分解能の微小脈管画像を生成することができる。
【0011】
本願開示の上記及び他の側面及び利点は、以下の説明から明らかとなる。以下の説明では、当該説明の一部を構成する添付図面を参照しており、本図面では例示として好適な実施形態が示されている。しかし、この実施形態は必ずしも本発明の全範囲を示すものではないから、本発明の範囲の解釈にあたっては特許請求の範囲を参酌すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】微小脈管の超高分解能画像を生成するための一例の方法の各ステップを記載したフローチャートである。
図2】組織運動に起因して連続した複数の時間フレーム間で運動する微小脈管の一例を示す図である。
図3】べき乗ベースの相互相関法に基づく高精細微小脈管画像を生成するための一例の方法の各ステップを記載したフローチャートである。
図4A】一例のデータと点拡がり関数との間で計算された相互相関計算N乗1次元ガウス分布の非限定的な一例である。
図4B図4Aの相互相関のべき乗の次数とFWHMとの関係の非限定的な一例である。
図5】複数の異なるN乗1次元ガウス分布を用いて計算された、一例のデータと別のN乗点拡がり関数との相互相関の非限定的な一例である。
図6A】非限定的な一例の元のMB超音波画像データの画像である。
図6B】非限定的な一例としての図6Aの1乗ベースの相互相関マップの画像である。
図6C】非限定的な一例としての図6Aの4乗ベースの相互相関マップの画像である。
図6D】非限定的な一例としての図6Aの8乗ベースの相互相関マップの画像である。
図7A】相互相関の閾値鮮鋭化処理を行わない場合の画像の非限定的な一例である。
図7B】0.25に設定して相互相関の閾値鮮鋭化処理を行った場合の画像の非限定的な一例である。
図7C】0.5に設定して相互相関の閾値鮮鋭化処理を行った場合の画像の非限定的な一例である。
図7D】0.75に設定して相互相関の閾値鮮鋭化処理を行った場合の画像の非限定的な一例である。
図8】複数のフレームにわたる非限定的な一例の元のMBデータ及び相互相関マップと、これにより積算によって得られた高精細血流画像と、を示す図である。
図9】膵臓腫瘍及び肝臓の組織で処理された非限定的な一例の元の画像と微小脈管画像とを示す図である。
図10】非限定的な一例の元の画像と閾値処理された画像とを示す図である。
図11】(A)は2つの空間的次元と1つの時間的次元とを有する3次元時空間における非限定的な一例のMB軌跡を示す図である。(B)は(A)の一部の細部図である。(C)は、3次元時空間における分離済みのMB軌跡の非限定的な一例を示す図である。(D)は、アキシャル-時間平面に投影した分離済みのMB軌跡の非限定的な一例を示す図である。(E)は、ラテラル-時間平面に投影した分離済みのMB軌跡の非限定的な一例を示す図である。
図11F】MB速度推定法に基づいて高精細の血行力学的微小脈管画像を生成するための一例の方法の各ステップを記載したフローチャートである。
図12A】ノイズフロア推定に基づく非限定的な一例の空間依存閾値判別法の元のMB画像である。
図12B】ノイズフロア推定に基づく非限定的な一例の空間依存閾値判別法の非限定的な一例の測定されたノイズフロア画像である。
図12C】ノイズフロア推定に基づく非限定的な一例の空間依存閾値判別法の非限定的な一例のノイズフロア画像である。
図12D】ノイズフロア推定に基づく非限定的な一例の空間依存閾値判別法の他の非限定的な一例のノイズフロア画像である。
図12E】残留ノイズ抑制処理前の非限定的な一例の画像である。
図12F】残留ノイズ抑制処理後の非限定的な一例の画像である。
図13】本願開示において記載している方法を実施できる一例の超音波システムのブロック図である。
図14】本願開示において記載している実施形態を実施できる一例のコンピュータシステムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下では、被検体の微小脈管の高時空分解能超音波イメージングを行うためのシステム及び方法について説明する。被検体における高精細の微小脈管イメージングは、微小血管を高分解能かつ高コントラストノイズ比(CNR)でイメージングするために用いることができる。従来の超音波イメージングやCEUSイメージングは、一般に画像を信号強度として表示する。本願開示では、高時空分解能の超音波イメージング技術が相関マップを用いて、大幅に改善された空間分解能及びCNRで画像を生成することができる。マイクロバブル造影剤を投与された被検体の関心領域から超音波データを取得する。超音波データは、関心領域をマイクロバブルが移動中に、又は関心領域内にマイクロバブルが他の態様で存在する間に取得される。関心領域は例えば、被検体の微小血管その他の微小脈管系を含むことができる。マイクロバブル(MB)をイメージングすることにより、各MB画像とシステムの点拡がり関数(PSF)との相互相関マップを生成することができる。その後、特定数の複数のフレームにわたってべき乗ベースの相互相関マップの積算を行うことにより、本願開示において説明するように、微小脈管の高分解能高コントラスト画像を生成することができる。
【0014】
ここで図1を参照すると、例えば米国特許出願公開第16/617,628号明細書等に記載されたような、マイクロバブル造影剤を投与された被検体の微小脈管の超高分解能画像を生成するために超音波システムを用いる一例の方法の各ステップを記載したフローチャートを示しており、同米国特許出願公開明細書の記載内容は、参照により本願の記載内容に含まれるものとする。一般に、高分解能又は超高分解能とは、イメージングシステムにより達成可能な分解能と比較して向上した分解能をいう。例えば、高分解能又は超高分解能の超音波画像とは、回折限界より高精細の分解能を有する画像をいうことができる。
【0015】
本方法は、ステップ102に示されているように、超音波データをコンピュータシステムに入力するステップを有する。ステップ104において、超音波データから組織運動を除去することができる。ステップ106においてマイクロバブル信号を分離することができる。ステップ108においてマイクロバブル信号データのノイズ除去処理を行うことができる。一部の実施態様では、ステップ110においてマイクロバブルの位置を特定し、ステップ112においてマイクロバブルを追跡することができ、これは例えば、下記にて説明する図11Fの速度推定法の後に行うことができる。ステップ114において微小脈管画像を生成し、ステップ116においてこれを処理し、ステップ118において表示又は記憶することができる。
【0016】
一部の実施形態では、超音波データをコンピュータシステムに入力するステップは、事前に取得した超音波データをメモリ又は他のデータ記憶装置から呼び出すことを含むことができ、このメモリ又は他のデータ記憶装置は、コンピュータシステムの一部又はコンピュータシステムとは別体とすることができる。他の一部の実施形態では、超音波データを入力するステップは、超音波システムを用いて当該データを取得し、取得したデータをコンピュータシステムに入力することを含むことができ、コンピュータシステムは超音波システムの一部又は超音波システムとは別体とすることができる。
【0017】
超音波データは、超音波無線周波数(「RF」)データ又は超音波同相直交(「IQ」)データ等とすることができる。一般に、超音波データは1つ又は複数の空間的次元を有し、これにはラテラル次元、アキシャル次元、エレベーション次元、及びこれらの組み合わせを含むことができる。例えば、超音波データは、ラテラル次元及びアキシャル次元等の2つの空間的次元を有することができる。超音波データはまた、例えば低速時間の次元(すなわち、複数の超音波信号を収集する時間的方向)等の時間的次元を有することもできる。
【0018】
上記のように、超音波データは、マイクロバブル造影剤を投与された被検体から取得される。一部の実施形態では、共振超音波周波数がそれぞれ異なる複数の異なるマイクロバブル(例えば、サイズがそれぞれ異なるマイクロバブル等)をイメージングに用いて、特異な超音波周波数(例えば、送信又は受信のいずれかで特異な周波数等)を選択することにより、選択されたマイクロバブルのサブグループのみがイメージングされて、分離されたマイクロバブル源を含む超音波データが形成されるようにすることができる。他の一例として、特定数のマイクロバブルを破裂させるために十分なエネルギーを有する超音波パルスを使用することができ、その際には、破裂したマイクロバブルはマイクロカプセルから自由ガスバブルを放出して、無傷のマイクロバブルとは異なる振幅の超音波信号を発生させる。これにより、高分解能イメージングに使用できる分離されたマイクロバブル源を有効に作ることができる。
【0019】
マイクロバブル信号は、超音波の線形成分及び非線形成分の両方から得ることができる。線形成分は典型的には、適用される超音波の基本周波数であるのに対し、非線形成分は、適用される超音波の高調波周波数、基本周波数、又はその両方とすることができる。例えば、振幅変調方式のイメージング法により生じる非線形性は、基本周波数とすることができる。
【0020】
超音波データは、ステップ104において示されているように、組織運動を除去するように処理される。生体内イメージングの際には、トランスデューサ運動と、循環器系により生じる組織運動(例えば心拍運動や、動脈による拍動運動等)と、呼吸器系により生じる組織運動とが存在し得る。これらの運動の振幅は、解像すべき微小脈管のサイズより有意に大きいので、微小脈管画像に有意なブラーが生じ、血流速度測定の精度が低くなる原因となる。よって、超音波により検出されるマイクロバブル信号を処理して、上述の組織運動を除去することができる。
【0021】
一例として、同一の微小脈管位置から得られたが空間的にミスレジストレーションしたマイクロバブル信号を再アライメントするように、超音波データを処理することができる。例えば、図2に示されているように、例えば呼吸等の生理学的運動に起因して、組織202は別の組織位置204に移動すると共に、ターゲットの微小脈管206は別の微小脈管位置208に移動する。もし、このミスレジストレーション(すなわち位置ずれ、移動)を考慮しなければ、これは最終的な微小脈管画像に誤差を生じさせる原因となる。
【0022】
組織運動により生じたミスレジストレーションを補正するためには、画像レジストレーション及び組織運動補償法を用いることができる。例えば、アフィン変換等の画像強度ベースの画像レジストレーション法を用いて、ミスレジストレーションした画像を平行移動、回転、拡大縮小及びせん断処理することにより元の位置に戻すことができる。他の使用可能な画像レジストレーション法には、画像特徴ベースの画像レジストレーション法、スペクトル-位相ベースの画像レジストレーション法、変換モデルベースの画像レジストレーション法等がある。他の一例として、例えば2次元正規化相互相関等の超音波スペックル追跡ベースの手法を用いて、参照信号と、運動した組織及び微小脈管信号との間の運動ベクトルを推定することができる。その後、推定された運動ベクトルに基づいて運動を逆転させることにより、上述の信号を再アライメントすることができる。さらに他の一例として、参照画像と運動後の画像との間の2次元の位相シフトマップを推定することもでき、これはその後、運動後の画像についてフーリエ領域に適用され、その後に逆フーリエ変換処理を行うことにより運動を補正することができる。非限定的な一例として、超音波マイクロバブル信号の各フレームとマイクロバブル信号の参照フレーム(例えばイメージングシーケンスの最初のフレーム等)との間でマイクロバブル信号レジストレーション処理が行われる。超音波データが高いフレームレートで取得されるので、推定される組織運動は一般に、生理学的に現実的でない高速の組織運動を示唆する鋭いピークを伴うことなく、時間方向において滑らかであると仮定することができる。組織運動のこのような特徴は、組織運動推定の偽のピークを抑制してミスレジストレーションを最小限にするために利用することができる。
【0023】
再び図1を参照すると、超音波データから組織運動が除去された後、ステップ106で示されているように超音波データ中においてマイクロバブル信号が分離される。一般にマイクロバブル信号の分離には、例えば組織信号と、取得フレーム間で位置が変化しない静止状態のマイクロバブルからの信号(例えばマイクロバブルがフレーム間で動かない場合の信号等)等、背景信号からのマイクロバブル信号の分離が含まれる。一部の実施形態では、フレーム間信号差分法、信号の時間方向におけるハイパスフィルタ、特異値分解(「SVD」)ベースのフィルタリング等を用いて、マイクロバブル信号を分離することができる。
【0024】
一例として、マイクロバブル信号を分離するために時間ハイパスフィルタリングを用いることができる。かかる実施態様では、超音波データをフィルタリング処理してマイクロバブル信号を分離するために、移動するマイクロバブル信号の時間周波数より低くかつ静止背景信号の時間周波数より高いカットオフ周波数を用いることができる。
【0025】
他の一例として、SVDベースのフィルタリングを使用することができ、かかるフィルタリングでは、分離された移動するマイクロバブル信号(典型的には中間~高次の特異値に投影される)から背景信号(例えば、典型的には低次の特異値に投影される組織信号や移動しないマイクロバブル信号等)を分離するために特異値カットオフを用いることができる。一例として、マイクロバブル信号を抽出するためにSVDベースのフィルタリングを実装するため、出願係属中の米国特許出願公開第2019/0053780号明細書に記載のブロック適応SVDフィルタ(ブロックごとの適応SVDフィルタ)を用いることができる。同文献の記載内容は全て、参照により本願の記載内容に含まれるものとする。他の一例として、マイクロバブル信号を抽出するためにSVDベースのフィルタリングを実装するため、出願係属中の米国特許出願公開第2018/0220997号明細書に記載の高速SVDフィルタを用いることもできる。同文献の記載内容は全て、参照により本願の記載内容に含まれるものとする。
【0026】
オプションとして、その後に、ステップ108で示されているように、分離されたマイクロバブル信号のノイズ除去処理を行うことができる。本願開示のマイクロバブル微小脈管イメージング技術は、マイクロバブル信号とPSFとのべき乗ベースの相互相関マップに基づいている。このようにして、マイクロバブル信号の各フレームにおいてノイズを除去することは相互相関計算におけるノイズの低減を助けることができ、ひいては、微小脈管イメージングのロバスト性を向上することができる。
【0027】
一般にノイズはマイクロバブル信号と類似する特徴を有し、組織中のより深部の領域においてノイズの方が高強度となってマイクロバブル信号が低強度になると、両者を区別することが困難となり得る。その結果、誤ってノイズ信号がマイクロバブル信号として標識されることがあり、これは微小脈管描写や速度推定が不正確になる原因となる。
【0028】
一例として、強度ベースの閾値判別法を用いてノイズ除去処理を実装することができる。かかる手法は、マイクロバブル信号が背景ノイズ信号より高強度であると仮定できる場合に、比較的正確となる。例えば、選択された値(例えば、-30dBから現在の視野における最大強度値までの値等)より強度値が低い画素を抑制することにより、相当量の背景ノイズを抑制することができる。しかし、かかる手法は、マイクロバブル信号がノイズに類似してしまう領域(例えば組織の深部領域等)では、正確でなくなる可能性がある。また、誤ってマイクロバブル信号を除外したり過度に大量のノイズを保存したりすることを回避するため、閾値を慎重に選択する必要もある。
【0029】
他の一例として、マイクロバブル信号に含まれる時空間的情報に少なくとも部分的に基づいて、マイクロバブル信号のノイズ除去処理を行うことができる。マイクロバブルは血流により移動するので、マイクロバブルの移動は、複数の取得フレームにおいて連続追跡可能な決定論的な現象であるのに対し、ノイズ現象はランダムであり、複数の取得フレームを跨いで観察すると何らトラック状の特徴を示さない。マイクロバブルとノイズとの上述の相違点は、時空間領域においてロバストなノイズ抑制を達成するために利用することができる。一例として、ノイズを含む元のマイクロバブルデータにノンローカルミーン(「NLM」)ノイズ除去フィルタを適用することができる。
【0030】
上記の時空間的ノイズ除去フィルタのもう1つの利点は、ノイズ除去処理が時空間領域で行われるので、その元となるマイクロバブル信号に空間的ブラーがほとんど又は全く生じないことである。同様のノイズ除去効果を達成するために他のノイズ除去法(例えば従来のガウス平滑化、ガウススペクトルアポダイゼーション、ウェーブレット閾値判別、又は反復的な全変動(「TV」)最小化等)を時空間領域において用いることができる。一部の実施態様ではアキシャル-時間マイクロバブル信号データをノイズ除去処理のために用いることができ、また他の複数の実施態様では、ラテラル-時間データ又は完全なアキシャル-ラテラル-時間3次元データをノイズ除去処理のために用いることも可能である。
【0031】
マイクロバブル信号データのノイズ除去処理を行った後、本願開示において詳細に説明する本発明のべき乗ベースの相互相関技術に基づいて微小脈管画像を生成することができる。微小脈管画像は、ステップ118で示されているようにユーザに対して表示することができ、又は、例えば後の解析等の後の使用のために記憶することができる。一部の実施態様では、微小血管モルフォロジー測定値(例えば血管密度や血管ねじれ等)を微小脈管画像から推定することができる。他の一例として、微小脈管血行力学的測定値(例えば血流速度や血液フローボリューム等)を微小脈管画像から推定することができる。例えば、微小脈管画像にターゲット組織のBモード画像を重畳し、又はかかるBモード画像を横に並べて、微小脈管画像を提示することができる。代替的に、血流方向がカラーエンコードされた微小脈管血流速度画像にターゲット組織のBモード画像を重畳し、又はかかるBモード画像を横に並べて、当該微小脈管血流速度画像を提示することができる。かかる実施態様では、多血流方向色相を用いて2より多くの血流方向を示すことができる。
【0032】
ステップ110において従来のマイクロバブル位置特定を行うことができ、かかるマイクロバブル位置特定は、マイクロバブル信号データの各時間フレームにおけるマイクロバブルの位置の特定を含むことができる。例えば、時間の経過と共にマイクロバブルの移動を追跡できるようにするため、分離された各マイクロバブル信号の中心位置を特定する。この位置特定されたマイクロバブルの中心位置を用いて、超高分解能の微小脈管画像を構成し、例えば血流速度等の血行力学的測定値を計算するためにマイクロバブルの移動を追跡することができる。従来の超高分解能イメージング法は、マイクロバブルの中心位置の特定に頼るものとなっている。
【0033】
本願開示では、相関マップを直接用いて、相互相関マップの分解能を向上するためにMB信号及びPSFのN乗を用いることにより、時空間分解能が大幅に向上した画像を生成するシステム及び方法であって、マイクロバブルの中心位置を使用しないシステム及び方法を提供する。以下では、図3を参照して、上述の相互相関ベースの手法の非限定的な一例の各ステップを記載したフローチャートを示す。ステップ310において、例えば画像アーカイブ等から超音波データにアクセスすることができ、又は、マイクロバブル(MB)若しくは他の適切な超音波造影剤を投与されたターゲット組織から超音波データを取得することができる。ステップ320において、例えば組織クラッタフィルタリング技術等を用いて超音波データを処理してMB信号検出を行うことにより、組織信号からMB信号を分離することができる。ステップ330において、前処理を用いて信号雑音比(SNR)を向上させ、高分解能イメージングのためのデータを準備することができる。ステップ340においてPSFを求めることができ、MB画像を生成することができる。ステップ350においてMB画像及びPSFのN乗を求め、これを使用して相互相関マップの分解能を向上させることができる。ここで、Nはべき乗の次数である。MB画像及びPSFのN乗は、最終的な微小脈管画像の鮮鋭度を決定することができる。ステップ360において、各MB画像とシステムのPSFとの相互相関マップを生成することができる。ステップ370において、選択された数の複数のフレームにわたって上述のべき乗ベースの相互相関マップを積算することにより、微小血管の高分解能かつ高コントラストの画像を生成することができる。上記の時空間相互相関マップにおける個々のMB軌跡を用いて、MBの推定移動速度及び推定移動方向を提供することができ、これらは、ステップ380において血流血行力学的画像を生成するために用いることができる。
【0034】
図3の方法は、ブロック処理方式(ブロックごとに処理を行う)で実施することができる。かかるアプローチにより、より小さなデータサブセットで別々に微小脈管画像処理を行うことができ、また、これらのサブセットを全て組み合わせることにより、パフォーマンスが向上した微小脈管画像を生成することができる。
【0035】
引き続き図3を参照すると、ステップ310において超音波データにアクセスし、又は、超音波造影剤を投与されたターゲット組織の関心領域(ROI)から超音波データを取得することができる。任意の適切な造影剤を使用することができ、これにはMB、相変化液滴、ナノ液滴、ガス胞(gas vesicle)等が含まれるが、これらに限定されない。超音波データは任意の適切な形式とすることができ、これには超音波RFデータ、超音波IQデータ、超音波包絡線データ、超音波Bモードデータ等が含まれるが、これらに限定されない。超音波データは任意の適切な検出シーケンスを用いて取得することができ、かかる検出シーケンスには、集束ビームラインイメージング(ラインごとのイメージング)、ワイドビーム・マルチライン取得イメージング、合成平面波イメージング、合成発散波イメージング、合成開口イメージング等が含まれるが、これらに限定されない。超音波データは、例えば基本イメージング等の線形超音波成分に基づいて、又は、パルス反転(「PI」)イメージング、振幅変調(「AM」)イメージング、パルス反転振幅変調(「PIAM」)イメージング、又はこれらの組み合わせ等の非線形超音波成分に基づいて取得することができる。一般に、取得された超音波データは1つ又は複数の空間的次元を有することができ、この空間的次元はラテラル次元、アキシャル次元、エレベーション次元、及びその組み合わせを含むことができる。超音波データはまた、例えば低速時間の次元(すなわち、複数の超音波フレーム又はボリュームを収集する時間的方向)等の時間的次元を有することもできる。
【0036】
図3のステップ320のMB信号検出、及びMB信号と組織信号との分離は、血流情報を表す信号を抽出して、組織クラッタ及びノイズを表す背景信号を除外することにより行うことができる。血流イメージングは、上記の信号分離によって強調することができる。一般に、MBは脈管内を血液細胞と共に流れ、組織信号とは時空間的特性の点で相違するので、血流イメージングのための適切なクラッタフィルタリング技術を適用してMB信号を抽出することができる。複数の非限定的な例では、フレーム間信号差分法、ハイパス組織クラッタフィルタリング、SVDベース組織クラッタフィルタリング、回帰ベース組織クラッタフィルタリング、固有ベース(Eigen-based)フィルタリング等を用いて、MB信号を得ることができる。例えば、MBの非線形応答を利用してMBからの信号を検出することができると共に組織クラッタを抑制できるCEUS等の一部の実施態様では、クラッタフィルタリング処理が不要となることがある。
【0037】
得られたMB信号の信号雑音比(SNR)が高いことにより、最適化された微小脈管画像を生成することが可能になる。SNRが低いとMBの誤検出が発生し、これにより、最終的な微小脈管画像においてアーティファクトが生じる可能性がある。抽出されたMBデータは、図3のステップ330において前処理にかけることができ、この前処理には、MB信号のノイズ除去処理、強調処理、等化処理等を含むことができる。非限定的な一例では、設定後の強度閾値未満の信号をノイズとみなしてMBデータから除去し、ノイズ背景が抑制された強調MBデータを提供できるように、強度閾値を設定することができる。固定の閾値又は適応閾値を用いることができる。他の非限定的な一例では、MBデータの時空間的特性に基づいてノイズ除去処理を行うことにより、MBデータのSNRを向上することができる。典型的には、複数の超音波フレームにわたるMBの移動は一定であり、かかる移動はランダムなノイズの挙動とは異なるので、時空間的データに対して動作するものであれば、いかなるノイズ除去フィルタも適用することができる。かかるノイズ除去フィルタには、ノンローカルミーン(NLM)ノイズ除去フィルタ、任意の形態の時空間ローパスフィルタ、平滑化フィルタ、メディアンフィルタ、サビツキー・ゴーレイ・フィルタ、ノンローカルミーンフィルタ、振幅閾値判別法等を含むことができるが、これらに限定されない。超音波信号強度は、タイムゲイン補償(TGC)、組織減衰、ビームフォーミングプロセスの効果に起因して空間依存性となり得るため、強度等化処理を用いて後続の処理のためにMB信号の空間依存強度を等化することもできる。MB信号を等化処理するためにノイズ分布を用いる技術等の上述のような技術の非限定的な例は、米国特許出願公開第2019/0053780号明細書に記載されており、同文献の記載内容は参照により本願の記載内容に含まれるものとする。
【0038】
他の非限定的な一例では、超音波システムから超音波画像のノイズフロアを測定し、MB画像中のノイズを抑制するための空間的に変動する閾値として使用することができる。背景ノイズは典型的には空間的に変動するものであり、深部領域では使用されるTGCが大きくなるため、ノイズレベルが高くなる。一部の構成では、空間的に変動するノイズレベルに応じた空間的に変動する閾値を使用して効果的なノイズ抑制を提供することができる。空間的に変動する閾値として超音波システムのノイズフロアを使用して、MB画像のうち当該閾値を下回る画素がノイズとみなされて当該画像から除去されるようにすることができる。下記のように、ノイズフロア画像にスケールを適用して、空間的に変動する閾値を制御することができる。
【0039】
【数1】
【0040】
ここで、MBdenoised(x,y)はノイズ除去処理後のMB画像であり、MBoriginal(x,y)は元のMB画像であり、N(x,y)は空間的に変動するノイズフロアである。αは全体の閾値レベルを決定するスケーリング係数であり、αは任意の正の値とすることができる。背景ノイズが正規分布に従う場合であって、ノイズフロアがノイズの標準偏差として推定される場合、α=1に設定するとノイズ画素の68.2%が除外され、α=2とするとノイズ画素の95.4%が除外され、α=3の場合にはノイズ画素の99.8%が除外されるようにすることができる。実用上は、スケーリング係数が大きいほどより多くのノイズを良好に抑圧することができ、保存されるMB画像の信頼性を高くすることができるが、低強度のMB画像が除去されてしまうというトレードオフが存在する。
【0041】
図12A~12Dを参照すると、ノイズフロア推定に基づく空間依存閾値判別の非限定的な一例が示されている。このノイズフロアは、米国特許出願公開第2019/0053780号明細書に既に開示されている手法等を用いて測定又は推定することができ、同文献の記載内容は全て、参照により本願の記載内容に含まれるものとする。
【0042】
非限定的な一例では、超音波送信をオフにして(例えば、音響出力をゼロに設定する等)、実際の血流信号取得のために使用されるものと同一のシステム構成及びイメージングシーケンスを用いて(トランスデューサ、TGCゲイン設定、受信フィルタ、ビームフォーミング設定等を同一とすることを含む)受信のみを行うことにより、ノイズデータを収集することができる。
【0043】
非限定的な一例では、超音波システムの中で音響出力のオフが不可能又は望ましくない超音波システムがある場合、音響出力を最小限にして空中に送信することによりノイズデータを収集することができる。空中から反射された高強度のエコーはクラッタフィルタリング処理によって除去することができ、純粋なノイズデータを抽出することができる。空中からの高強度のエコーを除去するためには、任意の適切なクラッタフィルタを用いることができ、例えばハイパス組織クラッタフィルタリング、SVDベースの組織クラッタフィルタリング、回帰ベースの組織クラッタフィルタリング、固有ベースのフィルタリング等を用いることができる。収集したノイズデータから、時間方向におけるノイズ測定値の分散、ノイズ標準偏差、ノイズ平均、その他統計的特性として、ノイズフロアを推定することができる。
【0044】
図12E及び図12Fを参照すると、上記のいずれかのノイズ除去法を用いてノイズを抑制した後の残留ノイズ抑制の非限定的な一例を示しており、同例では、未だMB画像に残留ノイズが残っていることがある。典型的には残留ノイズはMB画像内にランダムに分布し、かつその空間的サイズは小さいのに対し、本物のMB信号は典型的にはより高い一貫性を有し、そのサイズは比較的大きいと仮定すると、各MB画像中の分離されたオブジェクトのサイズに基づく閾値判別処理を適用して、特定のサイズ閾値より小さいサイズのオブジェクトを除去することができる。オブジェクトサイズ閾値判別処理の前(図12E)及び後(図12F)のMB画像の非限定的な一例が示されており、両図から、残留ノイズがより良好に抑制されていることが分かる。微小脈管イメージングに際して背景ノイズを最適に抑制するためには、上記のノイズ除去処理法のうち1つを単独で適用し、又は複数を組み合わせて適用することができる。ノイズ抑制法は、従来のどの位置特定及び追跡ベースの超高分解能手法にも適用することができ、これによりノイズ除去処理をより良好に実現することができる。
【0045】
その後、図3中ステップ360で示すように、MBデータの各フレームと求めた点拡がり関数(PSF)との相関又は畳み込みを計算して相互相関係数マップを生成することができる。図3のステップ340で求めたPSFは、イメージング設定、超音波システム、中心周波数、超音波パルス長等に依存し得るものであり、任意の適切な態様で生成することができる。一部の構成では、下記にて説明するように、相互相関マップの複数の異なる時間フレームを速度推定法で使用することができる。
【0046】
PSFを求めることは、メモリ又は他のデータ記憶装置から事前に計算済み若しくは推定済みのPSFを呼び出すこと、又は、必要に応じてPSFを計算若しくは推定することを含むことができる。
【0047】
非限定的な一例では、PSFはシミュレーションから得ることができる。PSFは例えば、多変量ガウス分布又は他の可能な理論的モデルに基づいてシミュレートすることができる。かかる分布が有用である理由は、典型的にはアキシャル分解能より粗い超音波ラテラル分解能を考慮できるからであるが、他の分布を用いてPSFをシミュレートすることも可能である。
【0048】
他の非限定的な一例として、例えば超音波の波長より格段に小さい物体等の非常に小さい点状物体の実測から、PSFを得ることも可能である。例えば、マイクロバブルから測定された信号を、超音波システムのPSFの近似として用いることができる。PSFは点状ターゲットから、同一の超音波システム及びイメージング設定を用いて実測することができる。
【0049】
他の非限定的な一例では、PSFは、微小脈管イメージングのための同一のMBデータセットから導出された個々の分離されたMBから得ることもできる。個々のMB信号を複数選択して組み合わせることにより、より滑らかでより正確なPSFを生成することができる。PSFは、使用されるMBデータに対応する任意の適切なデータ形式とすることができ、例えばRFデータ、超音波IQデータ、超音波包絡線データ、超音波Bモードデータ等とすることができる。正規化され又は正規化されない相関計算を適用して相互相関マップを生成することができる。相関又は畳み込みは、MBデータの空間補間されたバージョンについて行うことができ、これにより、より細かいサンプルサイズを得ることができる。各MBフレームについて、本物のMB信号は高い相関係数を示し得るのに対し、ノイズ背景又は関連性の低い信号は相互相関マップにおいて低い相関係数を有し得る。よって、相互相関マップはMBの有無及びその位置についての情報を提供することができる。
【0050】
相互相関マップの分解能を向上するためには、相互相関マップを計算する前に、図3のステップ350においてMBデータのN乗とPSFのN乗とを求めることができる。ここでNは任意の正の値とすることができ、複数の非限定的な例では、Nは1,2,3,4等とすることができる。N=1の場合、データのべき乗は元のデータと同じとなる。MBデータのN乗と、これに対応するPSFのN乗とについて相関処理を行うことの一利点は、相互相関マップの各MBについて、より鮮鋭なMBターゲットを得ることができることである。一部の構成では、MBデータのべき数とPSFのべき数とを等しくすること、又は異なることができる。本願開示の複数の非限定的な例では、これら2つのべき数を、下記の例における同一の値に設定する。
【0051】
図4Aを参照すると、非限定的な一例の1次元モデルを用いて、N乗法の分解能向上を説明することができる。この1次元モデルは、元のMB信号410が1次元ガウス分布であること、よってPSFも1次元ガウス分布であることを仮定したものである。ガウス分布とガウス分布(MB信号とPSF)の相互相関又は畳み込みもガウス分布となるが、その幅はより大きくなる。元のMBデータに相関計算を直接適用すると、例えば1次の相関420のように、元のMB信号より悪い分解能の相互相関マップが生成される。これとは対照的に、ガウス分布のN乗の相互相関をとると、より小さい半値全幅(FWHM)を有するより鮮鋭な分布曲線を提供することができる。同図の非限定的な一例のグラフに示すように、4次の相関430、6次の相関440、10次の相関450,及び20次の相関460から分かるように、べき乗次数Nが増加すると共に、相互相関分布曲線の鮮鋭度が次第に増していく。
【0052】
図4Bを参照すると、非限定的な一例のFWHMグラフが示されており、同図では相互相関分布のFWHMとべき乗次数Nとの定量的関係が示されている。元の線510は元のMB分布のFWHMを示しており、それに対して相互相関線520は、種々のN乗により得られた相互相関分布のFWHMを示す。N>2のときに相互相関分布は元のMB分布より鮮鋭になり始める。ガウスモデルでは、FWHMは1/√Nの率で改善することができる。本願開示の方法は、2次元又は3次元以上の次元のデータに適用することができる。
【0053】
図5を参照すると、一部の構成では、MBデータのべき数とPSFのべき数とは異なることができる。図5は、MBデータ及びPSFのべき乗次数が異なるべき乗ベースの手法の分解能改善の複数の非限定的な例を示す。同図の非限定的な例のグラフに示されているように、MBデータのべき乗次数とPSFのべき乗次数とを同一にする必要なく、相互相関分布曲線はべき乗次数の増加と共に次第に鮮鋭度を増していく。
【0054】
図6A~6Dを参照すると、異なる次数でN乗手法により得られる非限定的な例の画像が示されている。図6Aには元の2次元MB信号が示されている。その1乗により得られた相互相関マップが図6Bに示されており、図6Cには4乗により得られた相互相関マップ、図6Dには元のMB信号の8乗により得られた相互相関マップが示されている。べき乗次数が大きくなるほど各MBのターゲット分布は小さくなり、ひいては、得られる相互相関マップの鮮鋭度も増すことができる。従来の超高分解能イメージングでは各MBの中心の一点のみがラベリングされるが、これにより、図6Aに示す例では、多数の非ゼロ画素を含む非常にまばらな画像となる。従来は、視覚的に滑らかな超高分解能画像を得るためには数百万ものMBを積算しなければならない場合があり、これは非常に長い取得時間を要することがある。このような従来法の分解能の向上は、非常に長い取得時間をかけないと達成されなかった。
【0055】
それに対して、本願開示のべき乗相関法は、べき数の選択により分解能を変えることができる。べき乗相関マップにおける鮮鋭化した各MBは、引き続き多数の高分解能画素を有することができる。視覚的に滑らかな高分解能の微小脈管画像を形成するために積算ステップにおいて必要とされるMB数を低減することができる。データ取得時間を短縮することができ、また、長い取得時間をかける必要なく高い空間分解能を達成することができる。
【0056】
図7A~7Dを参照すると、相互相関の非限定的な一例の閾値鮮鋭化画像が示されている。一部の構成では、画像の鮮鋭度をより高めるため、得られた相互相関マップに閾値判別処理を適用して、選択された閾値を下回る相関係数値を除外することができる。閾値手法を用いると、個々のMBごとに小さいターゲットを相互相関マップにおいて生成することができる。図7A~7Dには相互相関マップに対する閾値判別の非限定的な例が複数示されており、これらの図では、閾値を大きくするほど、生成されるMBターゲットは小さくなっている。よって、閾値が微小脈管画像の最終的な分解能を制御することができる。
【0057】
一部の構成では、ノイズ除去処理を適用して、相互相関マップ中の疑わしいターゲットを除去することができる。本物のMB信号は典型的には、十分に発達したガウス形状を有し、ノイズや関連性の低い信号は相互相関マップにおいて不規則なモルフォロジーとして現れるので、上述の本物のMB信号の十分に発達したガウス形状を利用することができ、ターゲットサイズは小さくなり得る。上述のようにして、これら不所望の信号はターゲットモルフォロジー又はターゲットサイズに基づいて識別することができ、また相関マップから除去することができる。非限定的な一例では、閾値判別処理を適用して、特定の閾値より小さいサイズのオブジェクトを除去すると共に、より大きいサイズのオブジェクトを相互相関マップに保存することにより、MB検出の信頼性や確かさを向上することができる。
【0058】
図8を参照すると、図3のステップ370における高分解能かつ高コントラストの微小脈管画像の生成の非限定的な一例を示しており、この生成は、選択された数のフレームにわたって相互相関マップを積算することにより行われる。従来のパワードップラー血流画像820は、選択された数量のフレーム810にわたって元のMB信号をそのまま直接積算することにより生成されたものであり、その分解能は超音波の波長とイメージング設定とによって制限され得る。非限定的な一例では、上記の積算はべき乗ベースの相互相関マップ830に基づいて行うことができ、これにより、イメージングシステムの限界を超えた分解能の微小脈管画像840を生成することができる。最終的な微小血管画像の分解能は、上記のべき乗次数と相互相関マップの閾値判別処理とによって制御することができる。一部の構成では、臨床用途の要求を満たすようにユーザが最終的な分解能を選択又は調整できるようにするため、ユーザに対してユーザインタフェースを提供することができる。
【0059】
体内(in vivo)用途では、走査中に生じる組織運動又は超音波プローブの動きによって最終的な微小脈管画像にブラーが生じることがあり、これにより本方法の性能が悪化してしまう。一部の構成では、運動レジストレーション処理を導入して組織運動を除去し、ブラーを回避することができる。画像レジストレーション処理は、元の取得された超音波データ及び/又はクラッタフィルタリング処理されたMBデータから運動推定に基づいて行うことができる。任意の適切な画像レジストレーションアルゴリズムを適用することができ、これには、グローバル又はローカル相互相関法、グローバル又はローカル位相相関ベースの手法、グローバル又はローカルのオプティカルフロー法等が含まれるが、これらに限定されない。
【0060】
図9を参照すると、約2秒のデータ長を用いて本願開示の方法により得られた2つの体内微小脈管画像についての非限定的な例の複数の画像と、従来のコントラスト強調血流画像とを、対比して示す。膵臓の微小脈管画像920が従来の膵臓血流画像910に対して改善されているのが示されており、また、肝臓微小脈管画像940が従来の肝臓血流画像930に対して改善されていることも示されている。
【0061】
一部の構成では、偽のMB信号やノイズを抑制するため、積算の前に追加の画質制御を適用することができる。本物のMBターゲットは、複数の隣り合うフレームにわたって常時移動し、これにより相関マップの3次元時空間マトリクス(例えば画像830に示すマトリクス等)において連続的なMB軌跡を生じ得る。これとは対照的に、ランダムなノイズ又は関連性の低い信号は連続的に移動しないので、長い軌跡ではなく孤立したターゲットとして時空間マトリクスに現れるということがあり得る。軌跡が長いほど、信号が有効なMBである信頼性が高くなる。よって、3次元時空間マトリクスにおいて閾値判別処理を行い、選択された閾値より小さいサイズ又は長さのターゲットを除外して、微小脈管イメージングのMB検出の信頼性や確かさを向上させることができる。
【0062】
図10を参照すると、ターゲットサイズ閾値判別に基づく画質制御調整された画像の複数の非限定的な例が示されている。高精細画像を得るためのノイズ抑制の向上は、選択された画素数より小さいサイズのオブジェクトの除去として観察することができる。画質制御はまた、上述の除去後に得られる積算された2次元微小脈管画像においても行うことができる。非限定的な一例では、積算された2次元画像は、例えば10フレームの相関マップ等、特定数の相関マップから生成することができ、また、閾値判別処理を適用して小さいターゲットを除外し、この2次元微小脈管画像においてMB軌跡を保存することもできる。他の非限定的な一例では、同一の処理を繰り返すことができ、例えば、オーバーラップを有し又は有しない次の10フレームの相関マップに同一処理を適用すること等が可能である。これら別々の閾値判別処理された微小脈管画像の全部を組み合わせ又は積算することにより、最終的な微小脈管画像を得ることができる。
【0063】
図11を参照すると、(A)には3次元時空間におけるMB軌跡の非限定的な一例が示されており、この3次元時空間は2つの空間的次元と1つの時間的次元とを有する。この3次元時空間における各分離されたMB軌跡は、時間経過に伴うMBの空間的移動軌跡である。一部の構成では、MB移動軌跡解析を用いて、図3のステップ380に示すように3次元時空間マトリクスに基づき各MBの流速及び移動方向を測定することができる。例えば流速、流動方向、流動ベクトル等の血流血行力学的特性の高分解能画像(例えば血流血行力学的画像)を生成することができる。
【0064】
一部の構成では、速度推定を行う前に、3次元時空間に画質制御処理を適用して、短い又は小さい軌跡を除去し、長い又は大きい軌跡のみを保存することができ、これにより速度推定のロバスト性を向上することができる。図11の(B)は、3次元時空間における一例のMB軌跡を概略的に示す図である。図11(B)では、MBは第1のフレーム1115から第Nのフレーム1125までの間移動し、各楕円1110は、相互相関マップの複数の各フレームにおけるMBを表している。これらのMB楕円1110は、時空間において1つの連続した軌跡を構成する。軌跡の向き及び長さは、MBの移動速度及び移動方向により定まり得る。軌跡の向き及び長さを測定することにより、MB流速を正確に推定することができる。軌跡の向き及び長さを測定するためには、任意の適切な手法を用いることができる。
【0065】
非限定的な例では、各MB軌跡について、3次元時空間における当該軌跡上の全ての離散的なサンプル/画素に対して当てはめを適用することにより、MB移動速度を測定することができる。任意の当てはめを適用することができ、これには線形当てはめ、線形回帰、スプライン当てはめ、二乗当てはめ双曲線当てはめ等が含まれるが、これらに限定されない。図11(C)は3次元時空間における一例のMB軌跡のサンプル/画素を示しており、これら軌跡サンプル全てに対する線形当てはめが、速度ベクトルの定量的な測定結果(大きさ及び方向を含む)を提供することができる。非限定的な一例では、時間方向に対する当てはめ線の傾きがMB速度の推定大きさを提供することができ、空間領域における当てはめ線の角度がMB移動方向の情報を与える。
【0066】
一部の構成では、MB軌跡サンプルを図11(D)に示すように2次元のアキシャル時間平面に投影することや、図11(E)に示すように2次元のラテラル時間平面に投影することができる。これらの投影は別個に行うことができ、両2次元平面におけるサンプルに対する当てはめにより、アキシャル方向及びラテラル方向に沿った速度の測定結果が別個に提供される。図11(D)及び(E)の当てはめ線は、MB軌跡サンプルに基づく当てはめ線である。これらの当てはめ線の傾きは、両方向におけるMBの推定速度を与える。速度推定のロバスト性をさらに向上させるための非限定的な一例では、MB軌跡の離散的なサンプル/画素に重み付き当てはめを適用することである。任意の適切な重み付き当てはめを用いることができ、これには、重み付き線形当てはめ、重み付き線形回帰、重み付きスプライン当てはめ、重み付き二乗当てはめ双曲線当てはめ等が含まれるが、これらに限定されない。軌跡サンプルには、任意の適切な重みを適用することができる。非限定的な一例では、軌跡サンプルには当該軌跡サンプルそのものの相互相関係数により重み付けすることができ、又は、当該相互相関係数のk乗により重み付けすることができる。ここで、kは任意の値とすることができる。
【0067】
各MB軌跡について、当てはめ相関係数(R)、決定係数(R)、当てはめ誤差の平均、標準偏差若しくは分散、又は他の統計的特性を、当てはめロバスト性の指標として用いることができる。当てはめのロバスト性が低いMB軌跡を除去することにより、速度推定のためのさらなる画質制御を適用することができる。この当てはめのロバスト性が低いことは、低い相関係数(R)若しくは決定係数(R)又は大きい当てはめ誤差等により示唆される。所望の当てはめロバスト性の特定には、閾値を設定し、設定された当該閾値を満たさず当てはめのロバスト性が低いMB軌跡、相関係数(R)が低いMB軌跡、決定係数(R)が低いMB軌跡、又は当てはめ誤差が大きいMB軌跡を除去することを含むことができる。一部の構成では、(それぞれ1つのMBに対応する)各軌跡について測定された速度情報(例えば速度の大きさ又は方向等)は時空間で記憶することができ、その後にこれを使用して、同一の微小脈管を通る全てのMB軌跡の速度値を組み合わせることにより最終的な微小脈管速度画像を生成することができる。
【0068】
一部の構成では、各軌跡の測定された速度情報は、時空間において縮小された(shrinked)軌跡に割り当てることも可能であり、これにより最終的な微小脈管速度画像の空間分解能をさらに向上させることができる。一部の構成では、時空間における全ての速度軌跡の時間方向における単純な平均又は重み付き平均をとることにより、最終的な微小脈管速度画像を生成することができる。重み付き平均に際しては、任意の可能な重み付け手法により速度軌跡に重み付けすることができ、これには、軌跡サンプルそのものの相互相関係数、当てはめ相関係数(R)、決定係数(R)、当てはめ誤差の平均、標準偏差又は分散等が含まれるが、これらに限定されない。複数の非限定的な例では、微小脈管画像から微小血管モルフォロジー測定結果(例えば血管密度や血管ねじれ等)及び微小脈管血行力学的測定結果(例えば血流速度及び血液フローボリューム等)を推定することができる。微小脈管画像は、ターゲット組織のBモード画像を重畳若しくは透明重畳して、又は当該Bモード画像を横に並べて一緒に提示することができる。他の非限定的な一例では、血流方向がカラーエンコードされ又はカラーエンコードされていない微小脈管速度画像にターゲット組織の微小脈管モルフォロジー画像若しくはBモード画像を重畳若しくは透明重畳し、又は当該微小脈管モルフォロジー画像若しくはBモード画像を横に並べて、微小脈管速度画像を一緒に提示することができる。多血流方向色相を用いて2より多くの血流方向を示すことができる。
【0069】
他の非限定的な一例では、3次元時空間における各MB軌跡を2次元の空間領域に投影することができ、また、当該各MB軌跡の投影領域(投影面積)を用いてMBの移動速度及び移動方向を推定することができる。MBの移動速度が速いほど、当該MBに係る投影領域は大きくなり、逆に移動速度が遅いほど投影領域は小さくなり得る。各分離されたMB軌跡の投影領域を計算することにより、MBの推定速度を得ることができる。一部の構成では、軌跡の投影領域(A1)と個々のMB領域(面積A0、例えば図11(B)における1つの楕円1110の面積等)の関係に基づいて速度を推定することができる。A1/A0の比により、MBの推定移動速度を得ることができる。
【0070】
非限定的な一例では、各MB楕円1110の特徴点に当てはめ線1120を適用することができ、また、速度推定のために当てはめ線1120の長さ及び角度を求めることができる。任意の当てはめを適用することができ、これには線形当てはめ、スプライン当てはめ、二乗当てはめ双曲線当てはめ等が含まれるが、これらに限定されない。本願開示ではMB楕円の任意の適切な特徴点を使用することができ、これには、MB楕円の平均中心、前記MB楕円の重み付き平均、前記MB楕円における相互相関の最大位置、前記MB楕円の焦点、前記MB楕円のエッジ等が含まれるが、これらに限定されない。
【0071】
一部の構成では、時間方向に対する当てはめ線の傾きがMB速度の推定大きさを与えることができ、それに対して、空間領域における当てはめ線の角度はMB移動方向の情報を与える。一部の構成では、最初にMB特徴点を2次元のアキシャル-時間平面と2次元のラテラル-時間平面とに別々に投影することができ、そして、これら2つの2次元平面における当てはめが、アキシャル方向とラテラル方向とにおける速度の測定結果を別個に提供する。
【0072】
速度推定のロバスト性をさらに向上させるためには、特徴点の重み付き当てはめを適用することができる。任意の適切な重み付き当てはめを使用することができ、これには、重み付き線形当てはめ、重み付き線形回帰、重み付きスプライン当てはめ、重み付き二乗当てはめ双曲線当てはめ等が含まれるが、これらに限定されない。特徴点には、任意の適切な重みを適用することができる。各MB軌跡について、当てはめ相関係数(R)、決定係数(R)、当てはめ誤差の平均、標準偏差若しくは分散、又は他の統計的特性を、当てはめロバスト性の指標として用いることができる。当てはめのロバスト性が低いMB軌跡を除去することにより、速度推定のためのさらなる画質制御を適用することができる。この当てはめのロバスト性が低いことは、低い相関係数(R)若しくは決定係数(R)又は大きい当てはめ誤差により示唆される。非限定的な一例では、軌跡の最初のMB楕円と最後のMB楕円1110の特徴点間の距離及び角度を用いて、当該軌跡の長さ及び向きの大まかな推定を行うことができる。このようにして、最初のMB楕円及び最後のMB楕円1110の特徴点の計算を行うだけで足り、これにより計算負荷を軽減することができる。
【0073】
速度推定方法の非限定的な例の各ステップを、図11Fのフローチャートに示す。ステップ1150において、例えば画像記憶アーカイブ等から、時空間におけるマイクロバブル軌跡にアクセスし、又は画像データからマイクロバブル軌跡を取得する。ステップ1155において、個々のマイクロバブル軌跡を分離することができる。ステップ1160において、マイクロバブル軌跡に当てはめ線を適用することができる。一部の構成では、この当てはめ線は、例えば上記のラテラル又はアキシャル投影平面等の複数の投影平面に適用することができる。ステップ1165において、選択された軌跡の向き及び長さを求めることができる。ステップ1170において、短い軌跡を除去し、又は当てはめ線に対する当てはめが不十分な軌跡を除去すること等により、オプションの画質制御を行うことができ、これにより速度推定のロバスト性を向上させることができる。選択された軌跡の求めた向き及び長さに基づいて、マイクロバブル流速を推定することができる。その後、ステップ1180及び1185において微小血管画像及び血流血行力学的画像を生成することができる。
【0074】
一部の構成では、視野(FOV)データの全部を使用することができる。しかし一部の構成では、FOVデータを、空間的なオーバーラップを有し又は有しないデータの複数のサブセットに空間的に分割し、本願開示における高精細微小脈管イメージング方法を各サブセットに別個に適用することが有利となり得る。これら全てのデータサブセットから分離された微小脈管画像の全部を組み合わせることにより、最終的な高分解能の微小脈管画像を得ることができる。任意の適切なデータ分離法を用いることができ、また、任意の適切な重み付け関数を適用することができる。非限定的な一例では、元のデータを、空間的なオーバーラップを有し又は有しない複数の小さいブロックに空間的に分割することができる。非限定的な一例では、例えば米国仮特許出願第62/975,515号に記載のデータ分離法のように、元のデータを、空間的なオーバーラップを有する複数の小さいブロックに空間的に分割することができ、重み付け関数を用いて各データサブセットに空間的に重み付けする。同文献の記載内容は、参照により本願の記載内容に含まれるものとする。
【0075】
複数のサブセットへのデータの分離は、組織クラッタフィルタリングを行う前の元のデータについて、又は組織クラッタフィルタリングを行った後のMBデータについて行うことができ、及び/又は、これらの組み合わせを行うことができる。元のデータを使用する場合、各データサブセットに対して別々に、例えば組織クラッタフィルタリング等のMB信号検出プロセスを適用することができる。元のデータを複数のサブセットに分割することにより、適応的な前処理ユニットを適用することができ、この前処理ユニットは各サブセットごとに固有のものとすることができる。非限定的な一例では、適応的な強度閾値を使用し、特定の閾値未満の信号がノイズとみなされてMBデータの各サブセットから除外されるようにすることができる。データの各サブセットに対する閾値は、MBデータのローカルの統計情報に基づいて適応的に決定することができる。一部の構成では、上記の閾値は、各データサブセットのヒストグラムに基づいて適応的に推定することができる。一部の構成では、上記の閾値は、MBデータの各サブセットの全エネルギーに基づいて適応的に求めることができる。
【0076】
一部の構成では、超音波集束やビームフォーミング開口等により空間的位置ごとにPSFが異なるように、PSFは空間的に変動することができる。空間的に別々の相互相関マップを計算するために、データの異なるサブセットごとに異なるPSFを使用することができる。データの各サブセットごとに固有のPSFを用いることは、ローカル化された各データセットごとに分解能の向上及び最適化を達成するために有利となり得る。空間的に異なるPSFは、モデル当てはめによる推定、実測、同一のMBデータセットから直接の導出、又はこれらの組み合わせにより求めることができる。
【0077】
本願開示はMBイメージングの方法を説明しているが、当業者であれば、例えば相変化液滴やナノ液滴等の他の任意の種類の超音波造影剤を用いた超音波イメージングに本方法を適用すること、又は、造影剤を用いない非造影超音波イメージングに適用できることが明らかである。本願開示の方法は2次元イメージングへの適用を開示するものであるが、3次元(3D)又はそれ以上の次元のイメージングにも適用可能である。非限定的な一例では、本方法は容易に3次元に拡張することができ、3次元で相互相関計算を行うために3次元PSFを生成することができる。本願開示で提案する方法は、米国仮特許出願第62/861,580号に開示されているMB信号分離と組み合わせることができ、元のMBデータは、MBの集中がそれぞれまばらな複数のサブセットに分離され、これによりイメージング性能の向上を図ることができる。同文献の記載内容は、参照により本願の記載内容に含まれるものとする。本願にて開示するべき乗ベースの相互相関法も、例えば位置特定及び追跡ベースの超高分解能手法(米国特許出願第16/617,628号)等の超高分解能手法と組み合わせることができ、これにより、相互相関マップでのMB位置特定の性能(正確さ及び精度)を向上させることができる。
【0078】
図13は、本願開示の方法を実施できる超音波システム1300の一例を示す。超音波システム1300は、別々に駆動される複数のトランスデューサエレメント1304を有するトランスデューサアレイ1302を備えている。トランスデューサアレイ1302は、直線アレイ、曲線アレイ、フェーズドアレイ等を含めた任意の適切な超音波トランスデューサアレイを含むことができる。また、トランスデューサアレイ1302は1次元トランスデューサ、1.5次元トランスデューサ、1.75次元トランスデューサ、2次元トランスデューサ、3次元トランスデューサ等を含むことも可能である。
【0079】
送信器1306により通電されると、特定のトランスデューサエレメント1304が超音波エネルギーのバーストを生成する。調査対象又は被検体から反射してトランスデューサアレイ1302に戻った超音波エネルギー(例えばエコー等)は各トランスデューサエレメント1304によって電気信号(例えばエコー信号等)に変換され、スイッチのセット1310によって別々に受信器1308に印加されることができる。送信器1306、受信器1308及びスイッチ1310はコントローラ1312の制御下で動作し、このコントローラ1312は1つ又は複数のプロセッサを備えることができる。一例として、コントローラ1312はコンピュータシステムを備えることができる。
【0080】
送信器1306は、無集束又は集束した超音波を送信するようにプログラミングされることができる。一部の構成では、送信器1306は発散波、球面波、円柱波、平面波、又はこれらの組み合わせを送信するようにプログラミングされることも可能である。また、送信器1306は、空間的又は時間的にエンコードされたパルスを送信するようにプログラミングされることも可能である。
【0081】
受信器1308は、目下のイメージングタスクのための適切な検出シーケンスを実現するようにプログラミングされることができる。一部の実施形態ではこの検出シーケンスは、ラインごとの走査、合成平面波イメージング、合成開口イメージング、合成発散ビームイメージングのうち1つ又は複数を含むことができる。
【0082】
一部の構成では、送信器1306及び受信器1308は高いフレームレートを実現するようにプログラミングされることができる。例えば、少なくとも100Hzの取得パルス繰り返し周波数(PRF)に対応するフレームレートを実現することができる。一部の構成では、超音波システム1300は時間方向におけるエコー信号の少なくとも100の集合体(ensemble)をサンプリング及び記憶することができる。
【0083】
走査は、選択されたイメージングシーケンスに従い1つの送信プロセス中に各スイッチ1310をその送信位置に設定して、トランスデューサエレメント1304を通電するために送信器1306をオンすることにより、行うことができる。その後、スイッチ1310を受信位置に設定し、1つ又は複数の検出されたエコーに応じてトランスデューサエレメント1304により生成された連続するエコー信号が測定されて、受信器1308に印加される。各トランスデューサエレメント1304からの別々のエコー信号は、受信器1308において組み合わせて1つのエコー信号とすることができる。
【0084】
エコー信号は処理ユニット1314に送られて処理され、又はエコー信号から生成された画像が処理される。この処理ユニット1314は、ハードウェアプロセッサとメモリとによって具現化することができる。一例として、処理ユニット1314は本願開示の方法を用いて画像を生成することができる。処理ユニット1314によってエコー信号から生成された画像は、表示システム1316上で表示することができる。
【0085】
図14を参照すると、本願開示の方法を実施できるコンピュータシステム1400の一例のブロック図が示されている。コンピュータシステム1400は一般に、入力部1402と、少なくとも1つのハードウェアプロセッサ1404と、メモリ1406と、出力部1408と、を備えている。よって、コンピュータシステム1400は一般に、ハードウェアプロセッサ1404とメモリ1406とによって具現化される。
【0086】
一部の実施形態では、コンピュータシステム1400は超音波システムのコントローラ又は処理ユニットとすることができる。コンピュータシステム1400はまた、一部の例では、ワークステーション、ノートブックコンピュータ、タブレットデバイス、モバイルデバイス、マルチメディアデバイス、ネットワークサーバ、メインフレーム、1つ若しくは複数のコントローラ、1つ若しくは複数のマイクロコントローラ、又は他の任意の汎用若しくは特定用途計算機によって具現化することも可能である。
【0087】
コンピュータシステム1400は自律的若しくは半自律的に動作することができ、又は、実行可能なソフトウェア命令をメモリ1406若しくはコンピュータ読取り可能な媒体(例えばハードドライブ、CD-ROM、フラッシュメモリ等)から読み込むことができ、又は、ユーザから入力部1402を介して命令を受け取ることができ、又は、例えば他のネットワーク接続されたコンピュータ若しくはサーバ等、コンピュータ若しくはデバイスに論理的に接続された他のソースから入力部1402を介して命令を受け取ることができる。よって、一部の実施形態ではコンピュータシステム1400は、コンピュータ読取り可能な記憶媒体を読み取るための任意の適切な装置を備えることもできる。
【0088】
一般に、コンピュータシステム1400は本願開示の方法やアルゴリズムを実施するようにプログラミングされ、又は他の態様で構成されている。例えば、コンピュータシステム1400は本願開示の方法により画像を生成するようにプログラミングされることができる。
【0089】
入力部1402は、所望に応じて、コンピュータシステム1400の動作のための任意の適切な形状又は形態をとることができ、これには、タスクの実行、データ処理、又はコンピュータシステム1400の動作に対応したパラメータの選択、入力、又は他の態様での指定を行う能力が含まれる。一部の側面では、入力部1402は、例えば超音波システムを用いて取得されたデータ等のデータを受け取る構成とすることができる。かかるデータは、上記のように処理されて画像を生成することができる。さらに、入力部1402は、上記の方法を使用して画像を生成するために有用と考えられる任意の他のデータ又は情報を受け取る構成とすることもできる。
【0090】
コンピュータシステム1400を動作させるためのタスクの処理の中でも、1つ又は複数のハードウェアプロセッサ1404は、入力部1402を用いて受け取ったデータに対して任意の数の後処理ステップを実行する構成とすることも可能である。
【0091】
メモリ1406は、ソフトウェア1410と、例えば超音波システムを用いて取得されたデータ等のデータ1412を記憶することができ、また、処理済みの情報、命令、及び1つ又は複数のハードウェアプロセッサ1404により処理されるデータを記憶し呼び出す構成とすることができる。一部の側面では、ソフトウェア1410は、本願開示の実施形態による画像の生成向けの命令を含むことができる。
【0092】
また、出力部1408は所望に応じて任意の形状又は形態をとることができ、また、画像(例えば微小脈管画像等)を表示するように構成することもでき、さらに、他の所望の情報も表示することができる。
【0093】
一部の実施形態では、本願にて記載されている機能及び/又は処理を実施するための命令を記憶するために、任意の適切なコンピュータ読取り可能媒体を使用することができる。例えば、一部の実施形態では、コンピュータ読取り可能媒体は一時的又は非一時的な媒体とすることができる。非一時的なコンピュータ読取り可能媒体は例えば、磁気媒体(例えばハードディスク、フロッピーディスク等)、光学媒体(例えばコンパクトディスク、デジタルビデオディスク、ブルーレイディスク等)、半導体媒体(例えばランダムアクセスメモリ(「RAM」)、フラッシュメモリ、電気プログラマブルリードオンリーメモリ(「EPROM」)、電気消去可能プログラマブルリードオンリーメモリ(「EEPROM」)等)、送信中に過渡的ではなく若しくは性能のいかなる外形も欠けない任意の適切な媒体、及び/又は任意の適切な有形媒体等の媒体を含むことができる。他の一例として、一時的なコンピュータ読取り可能媒体はネットワーク上、配線内、導体内、光ファイバ内、回路上、若しくは送信中に過渡的ではなく若しくは性能のいかなる外形も欠けない任意の適切な媒体上の信号、及び/又は任意の適切な無形媒体を含むことができる。
【0094】
本願開示は1つ又は複数の好適な実施形態を説明したが、明示的に記載したものの他、多くの均等態様、代替態様、変形態様、改良態様が可能であり、これらの態様は本発明の範囲に属することが明らかである。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図7A
図7B
図7C
図7D
図8
図9
図10
図11
図11F
図12A
図12B
図12C
図12D
図12E
図12F
図13
図14