(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】粘性製品用のディスペンサ
(51)【国際特許分類】
B65D 47/34 20060101AFI20231219BHJP
B65D 47/18 20060101ALI20231219BHJP
A45D 40/00 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
B65D47/34 100
B65D47/18 100
A45D40/00 Z
(21)【出願番号】P 2022514223
(86)(22)【出願日】2020-09-01
(86)【国際出願番号】 US2020048855
(87)【国際公開番号】W WO2021046002
(87)【国際公開日】2021-03-11
【審査請求日】2022-03-02
(32)【優先日】2019-09-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590005058
【氏名又は名称】ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー
【氏名又は名称原語表記】THE PROCTER & GAMBLE COMPANY
【住所又は居所原語表記】One Procter & Gamble Plaza, Cincinnati, OH 45202,United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ステファノ バルトルッチ
(72)【発明者】
【氏名】ネイサン ダニエル グラブス
【審査官】矢澤 周一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-088556(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0269229(US,A1)
【文献】特表2015-532627(JP,A)
【文献】国際公開第2016/055388(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 47/34
B65D 47/18
A45D 40/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
製品ディスペンサであって、
製品用のリザーバであって、突出部及びピストン係合機構を有するリザーバと、
キャップと、を備え、前記キャップが、
上端オリフィス及び下端オリフィスを有するピペットと、
前記製品ディスペンサの前記ピペットの前記下端オリフィスを通して前記製品を引き出す吸引を生成するように移動するように構成されているピストンと、
前記ピストンがハウジング内で高位置と低位置との間を摺動するように構成されている前記ピストンのための前記ハウジングと、
前記リザーバの前記ピストン係合機構と係合するように構成されており、また前記ピストンと一緒に移動するように構成されている対応する係合機構と、
ボタンであって、前記ボタンが作動されると、前記ピペットの前記
下端オリフィスを通して前記製品を分注するように構成されているボタンと、
前記ピストンの前記移動及び前記ボタンの移動に応じて体積を変化させるように構成されているチャンバと、を有し、
前記キャップが前記リザーバ上で前記製品ディスペンサを閉鎖する方向に閉栓されると、前記ピストンは、前記ハウジング内で前記高位置まで、前記ハウジングに相対的に前記突出部によって移動されて、前記チャンバの前記体積が減少し、
前記キャップが前記リザーバ上で、前記製品ディスペンサを開放する方向に開栓されると、前記ピストンは、前記ピストン係合機構と前記対応する係合機構との係合によって、前記ハウジング内で低位置まで、前記ハウジングに相対的に移動されて、前記チャンバの前記体積が増加し、
前記キャップのこの開放が、前記ピペット内の前記製品の吸引を生じさせ、
前記ボタンが作動されると、前記チャンバの前記体積が減少し、それによって、前記製品が前記ピペットから分注され、
前記ピストン係合機構及び前記対応する係合機構が、スナップ嵌めである、製品ディスペンサ。
【請求項2】
前記リザーバがまた、外面上にキャップ締結機構を有するネックを有し、前記突出部が、前記ネックから上方に突出している、請求項1に記載の製品ディスペンサ。
【請求項3】
前記突出部が、前記ピストン係合機構を有する、請求項1又は2に記載の製品ディスペンサ。
【請求項4】
前記キャップがまた、格納圧力によって前記対応する係合機構を前記ピストン係合機構と係合するのを補助するように構成されている格納リングを有する、請求項1に記載の製品ディスペンサ。
【請求項5】
前記リザーバがまた、キャップ締結機構を有し、前記キャップがまた、前記リザーバ上の前記キャップ締結機構と係合するように構成されている対応する締結機構を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の製品ディスペンサ。
【請求項6】
前記キャップ締結機構及び前記対応する締結機構が、ねじ山である、請求項5に記載の製品ディスペンサ。
【請求項7】
前記ボタンは、前記ピストンが前記ハウジング内で下方位置から上方位置に移動するときに、空気を解放するための弁を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の製品ディスペンサ。
【請求項8】
前記製品ディスペンサが、コイルばね及びベローズを含まない、請求項1~7のいずれか一項に記載の製品ディスペンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャップと、製品用のリザーバと、を備える、製品ディスペンサであって、リザーバが、突出部及びピストン係合機構を有し、キャップが、上端オリフィス及び下端オリフィスを有するピペットと、製品ディスペンサのピペットの下端オリフィスを通して製品を引き出す吸引を生成するように移動するように構成されているピストンと、ピストンがハウジング内で高位置と低位置との間を摺動するように構成されているピストンのためのハウジングと、リザーバのピストン係合機構と係合するように構成されており、またピストンと一緒に移動するように構成されている対応する係合機構と、ボタンであって、ボタンが作動されると、ピペットの端部オリフィスを通して製品を分注するように構成されているボタンと、ピストンの移動及びボタンの移動に応じて体積を変化させるように構成されているチャンバと、を有し、キャップがリザーバ上で製品ディスペンサを閉鎖する方向に閉栓されると、ピストンは、ハウジング内で高位置まで、ハウジングに相対的に突出部によって移動されて、チャンバの体積が減少し、キャップがリザーバ上で、製品ディスペンサを開放する方向に開栓されると、ピストンは、ピストン係合機構と対応する係合機構との係合によって、ハウジング内で低位置まで、ハウジングに相対的に移動されて、チャンバの体積が増加し、キャップのこの開放が、ピペット内の製品の吸引を生じさせ、ボタンが作動されると、チャンバの体積が減少し、それによって、製品がピペットから分注される、製品ディスペンサに関する。
【背景技術】
【0002】
リザーバ及びピペット(製品を分注するための押しボタンを有するキャップに固定された)を備えたディスペンサが知られている。コイルばね又は弾性変形可能なダイヤフラムは、製品をピペットに吸引することを可能にする。しかしながら、ディスペンサ構造に応じて、及び/又は製品がどれだけ強く吸引及び分注されるかに応じて、分注された製品の量は、そのようなディスペンサにおいて容易に変動され得る。したがって、分注において改善された精度を有する粘性製品のディスペンサを提供する必要性が存在する。
【0003】
あるいは、製品でピペットを自動的に充填するためのディスペンサが提案されている。例えば、Chanelの米国特許出願公開第2015/144663(A)号は、粘性製品用の容器であって、製品用の容器と、容器上に螺合するように設計された封止キャップと、ピペットと、ピペット内への製品の吸引を引き起こすことができるピストンと、を含み、キャップが容器上に螺合しているとき、ディスペンサの開放の方向にキャップを螺脱することが、それ自体、吸引を生じさせるピストンの移動を引き起こすように、ディスペンサが配列されている、粘性製品用の容器を開示する。
【0004】
しかしながら、本発明者らは、以下のうちの少なくとも1つについて、上記のChanelの米国特許公開に開示されているものとは異なるディスペンサ構造を提供する必要性を見出した。
ストロークごとにより大きな用量を分注することと、
構造に使用される片の数を減少させることであって、それによって、ディスペンサが、封止機能、及び/又はピストン移動において、改善された安定性を提供し得る、減少させること。
【0005】
また、クリープ/疲労によって引き起こされるピストン移動の不良を防止することを考慮して、プラスチックばね又はベローズを使用せずに、そのようなディスペンサを提供する必要性も存在する。金属コイルばねなどのいかなる金属部品も有しないディスペンサはまた、ディスペンサの他の部品で使用されるプラスチック材料をリサイクルするための容易さを考慮して、望ましい場合がある。これにより、1つのSPIクラスに従ってディスペンサを再利用することを可能にする材料選択が可能になり、各成分は、Society of the Plastics Industryによって定義されるような単一のクラスの再生利用可能な材料からなる群から選択される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許出願公開第2015/144663(A)号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、前述の必要性のうちの少なくとも1つを満たすためにディスペンサを提供する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、製品ディスペンサであって、
製品用のリザーバであって、突出部及びピストン係合機構を有するリザーバと、
キャップと、を備え、キャップが、
上端オリフィス及び下端オリフィスを有するピペットと、
製品ディスペンサのピペットの下端オリフィスを通して製品を引き出す吸引を生成するように移動するように構成されているピストンと、
ピストンがハウジング内で高位置と低位置との間を摺動するように構成されているピストンのためのハウジングと、
リザーバのピストン係合機構と係合するように構成されており、またピストンと一緒に移動するように構成されている対応する係合機構と、
ボタンであって、ボタンが作動されると、ピペットの端部オリフィスを通して製品を分注するように構成されているボタンと、
ピストンの移動及びボタンの移動に応じて体積を変化させるように構成されているチャンバと、を有し、
キャップがリザーバ上で製品ディスペンサを閉鎖する方向に閉栓されると、ピストンは、ハウジング内で高位置まで、ハウジングに相対的に、突出部によって移動されて、チャンバの体積が減少し、
キャップがリザーバ上で製品ディスペンサを開放する方向に開栓されると、ピストンは、ピストン係合機構と対応する係合機構との係合によって、ハウジング内で低位置まで、ハウジングに相対的に移動されて、チャンバの体積が増加し、
キャップのこの開放が、ピペット内の製品の吸引を生じさせ、
ボタンが作動されると、チャンバの体積が減少し、それによって、製品がピペットから分注される、製品ディスペンサに関する。
【0009】
本発明は、以下のうちの少なくとも1つを提供する。
分注中の改善された精度、
ストロークごとのより大きな用量の分注と、
封止機能、及び/又はピストン移動(構造において使用される片の数の減少による)、における改善された安定性、
プラスチックばね又はベローズの非使用による、クリープ/疲労によって引き起こされるピストン移動の不良の防止、
金属コイルばねの非使用によるリサイクルすること、及び単一のクラスの材料を有する単一のリサイクル流に入ることができる材料から作製されること(Society of Plastics Industryによって定義されるように)の容易さ。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】キャップ閉鎖位置にある、本発明の一実施形態によるディスペンサの正面図を示す。
【
図3】キャップのいくつかの部分に焦点を当てた
図2の拡大図を示す。
【
図5】部分的にキャップ開放位置にある
図1のディスペンサの縦断面図を示す。
【
図6】キャップ開放位置にある
図1のディスペンサの縦断面図を示し、キャップ及びリザーバネック部分に焦点を当てる。
【
図7】
図6のディスペンサの縦断面図を示し、ボタンが分注の動作中に少なくとも部分的に押圧される状態で、キャップに焦点を当てる。
【
図8】キャップ及びリザーバネック部分に焦点を当てている、閉鎖位置にある、本発明の別の実施形態によるディスペンサの縦断面図を示し、
図1~
図7に示される実施形態との重要な違いが、ピストン係合機構及び対応する機構としての磁石の使用である。
【
図9】突出部、ピストン係合機構、対応する係合機構、ピストン、ハウジング、及びピペットなどの他の重要な要素を略する一方で、そのような機構に焦点を当てている、代替のキャップ締結機構及び対応する機構としてのバヨネットコネクタを示す。
【
図10】キャップの特定の部分に焦点を当てている、閉鎖位置にある、本発明の別の実施形態によるディスペンサの拡大縦断面図を示し、
図1~
図7に示される実施形態との重要な違いが、一方向弁の追加である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、製品ディスペンサであって
製品用のリザーバであって、突出部及びピストン係合機構を有するリザーバと、
キャップと、を備え、キャップが、
上端オリフィス及び下端オリフィスを有するピペットと、
製品ディスペンサのピペットの下端オリフィスを通して製品を引き出す吸引を生じさせるように移動するように構成されているピストンと、
ピストンがハウジング内で高位置と低位置との間を摺動するように構成されているピストンのためのハウジングと、
リザーバのピストン係合機構と係合するように構成されており、またピストンと一緒に移動するように構成されている対応する係合機構と、
ボタンであって、ボタンが作動されると、ピペットの端部オリフィスを通して製品を分注するように構成されているボタンと、
ピストンの移動及びボタンの移動に応じて体積を変化させるように構成されているチャンバと、を有し、
キャップがリザーバ上で製品ディスペンサを閉鎖する方向に閉栓されると、ピストンは、ハウジング内で高位置まで、ハウジングに相対的に、突出部によって移動されて、チャンバの体積が減少し、
キャップがリザーバ上で製品ディスペンサを開放する方向に開栓されると、ピストンは、ピストン係合機構と対応する係合機構との係合によって、ハウジング内で低位置まで、ハウジングに相対的に移動されて、チャンバの体積が増加し、
キャップのこの開放が、ピペット内の製品の吸引を生じさせ、
ボタンが作動されると、チャンバの体積が減少し、それによって、製品がピペットから分注される、製品ディスペンサに関する。
【0012】
好ましくは、本発明において、リザーバはまた、ネックの外面上にキャップ締結機構を有するネックを有し、突出部は、ネックから上方に突出しており、突出部は、ピストン係合機構を有する。
【0013】
好ましくは、本発明において、リザーバは、キャップ締結機構を有し、キャップはまた、リザーバ上のキャップ締結機構と係合するように構成されている対応する締結機構を有する。キャップ締結機構及び対応する締結機構は、任意のもの、例えば、ねじ山及びバヨネットコネクタであり得、好ましくは、特に輸送中のリザーバからのキャップの漏れ及び/又は落下を防止することを考慮してねじ山である。
【0014】
ピストン係合機構及び対応する係合機構は、必要な機能が達成される限り、例えば、スナップ嵌め(ラッチを含む)及び磁石が、好ましくは、スナップ嵌めである限り、任意のものであり得る。リザーバのピストン係合機構は、キャップ閉鎖位置及び部分的キャップ開放位置においてキャップで対応する係合機構と係合し、キャップ開放位置において係脱する。従来の方法では、キャップを有するディスペンサは、開栓によって開放される。開栓する間、ピストン係合機構は、ピストン及びピペットの垂直位置決めがボトルに対して変化しないように、対応する係合機構と係合する。
【0015】
好ましい実施形態では、キャップはまた、キャップが閉鎖位置又は部分開放位置にあるときに、特にピストン係合機構及び対応する係合機構がスナップ嵌めであるときに、格納圧力を適用することによって、ピストン係合機構とピストン係合機構の対応する係合機構との間の偶発的な係脱を防止するように構成されている格納リングを有することができる。
【0016】
本発明のディスペンサでは、キャップを開放する間、ピストンの位置、次いで、ピペットの位置は、ボトルに対して変化しない。これにより、ピペット下端オリフィスが、ボトル表面内部でボトルから最小の距離で、すなわち、最適な位置で、製品装填中のいかなる相対運動もない状態で、位置付けられた状態で、ピペットが、製品を一貫していつも吸引することを確実にする。これにより、あらゆる気泡の侵入が防止され、使用者がキャップを取り出して分注する時点でピペットが適切に充填されることも確実にする。
【0017】
好ましい実施形態では、ボタンは、ピストンがハウジング内で下方位置から上方位置に移動するときに、空気を解放するための弁を有する。
【0018】
好ましい実施形態では、チャンバの体積変化は、コイルばね又はベローズなしで行われる。より好ましくは、本発明のディスペンサは、コイルばね及びベローズを含まない。これにより、キャップに収容された機構が簡略化され、部品点数が減少し、ディスペンサの製造は安価であり、その組み立ては複雑でない。更に、この設計により、キャップをリサイクルするのが容易になり、特に、キャップを機械的にリサイクルすることができる。典型的には、ディスペンサに含まれる金属コイルばねは、一般的に、機械的リサイクルプロセスと適合しないと考えられる。プラスチックコイルばね及びベローズは、機械的リサイクルに適合する設計につながる可能性がある。しかしながら、プラスチックコイルばね及びベローズは、貯蔵中、及び使用中のサイクル負荷の両方を経験した、不可避のクリープ及び疲労により、投与量の不一致を引き起こすことが見出されている。
【0019】
本発明は、例えば、スキンケア及びヘアケアなどの美容ケア製品の分野において特に有用な、ゲル、ローション、血清、又はエッセンスなどの粘性製品用のディスペンサに関する。例えば、粘性製品は、5,000~35,000センチポアズ、好ましくは10,000~20,000センチポアズ(スピンドルを備えたBrookfield LVT粘度計の補助により測定され、かつ毎分3回転の速度で回転する粘度)の粘度を有する。
【実施例】
【0020】
図1~
図7は、本発明のディスペンサの一実施形態を示す。これらの図では、彼ディスペンサ1は、キャップ3が螺合するリザーバ2(又はボトル)を備える。この実施形態では、ディスペンサ、及びその構成要素の大部分は、ディスペンサの軸に対して対称である全体的な形状を有するが、他の実施形態では、いくつかの構成要素、例えば、カバー、ボトル、及び/又はピペットは、対称ではない場合がある。この実施形態では、ディスペンサは、コイルばね又はベローズを有しない。
【0021】
リザーバ2は、例えば、粘性製品であるスキンケア製品を含み、その粘度は、5,000~35,000センチポアズ、好ましくは、10,000~20,000センチポアズである。リザーバ2は、製品を貯蔵するための体積を画定する。
【0022】
リザーバは、PET、PETG、PMMA、PE、又はPPなどのガラス又はプラスチックで作製され得る。好ましくは、リザーバは、キャップとともにリサイクルされ得るようにPPで作製される。
【0023】
リザーバ2は、リザーバ2と一体に作製されたネック5を有し、ネックは、ネック5の外面上のキャップ締結機構としてねじ山5aを有する。
【0024】
リザーバ2は、突出部6を有し、突出部6の少なくとも頂部6aは、ネック5の出口オリフィスから上方に突出している。好ましくは、突出部6は、実質的に管状の形状を有し、ネック5の内側に収容される。突出部6は、円筒形状を有する頂部6aと、好ましくは実質的に円錐台形である底部6bと、を有する。この円錐台形の底部6bは、ピペット4の外面(拭き取り機能)に自然に付着する過剰な製品を除去することが予想される。好ましくは、突出部6はまた、頂部6aの外側でピストン係合機構としてスナップ嵌め6cを有する。リザーバ2は、突出部6の上端に出口オリフィスを有する。好ましくは、突出部は、リザーバ出口オリフィスに圧入された別個のインサートによって形成される。好ましくは、そのようなインサートは、熱可塑性プラスチック、より好ましくは、LLPDEを使用している。
【0025】
キャップ3は、様々な同軸構成要素、この場合、外側カバー7、対応する締結機構としてのキャップインサート8、ボタン10、ピストン11、ピストンのためのハウジング9、突出部リザーバ12、対応する係合機構としてのスナップ嵌め13、チャンバ14、ガスケット15、及びピペット4で構成されており、これにより、リザーバ2に格納される製品を引き出すことが可能になる。これらの部品のいくつかは、一片に統合され得、例えば、以下の2つ又は3つ(外側カバー7、キャップインサート8、ハウジング9、及びボタン10)が一片にあり得る。あるいは、又は同時に、以下(ピペット4及びピストン11)は、一片にあり得る。
【0026】
外側カバー7は、好ましくは、中空の円筒形状を有し、4及び7~15に番号付けされた上述の要素の全てを収納する。外側カバーは、ABS又はPPで作製され得る。好ましくは、外側カバーは、PPで作製されて、キャップを再生可能にする。
【0027】
カバー7の頂部は、ディスペンサ1の軸に沿って押圧されたときに弾性的に変形可能であるボタン10を通過することができるオリフィスを有する。ボタン10は、外側カバー7に固定されている。好ましくは、ボタンは、押圧時に容易に変形することができ、かつその元の位置を回復させるために十分に強いバウンスを有することができるように、適合性材料から実現される。ボタン材料は、好ましくは不活性であり、製品配合物と適合性があり、製品からの水の損失を最小限に抑え、製品の有効寿命を延長するための低い水蒸気透過率(moisture vapor transmission rate、MVTR)を有する。好ましくは、ボタンは、NBR、SBR、EPDM、又はTPEで作製することができる。より好ましくは、ボタンは、三井化学株式会社によって商業化されたMilastomer(W600NS)などのPPリサイクル流と適合性のあるエラストマー材料で作製することができる。
【0028】
キャップインサート8は、例えば、圧入及び/又は接着剤結合によって、カバー7に堅固に固定される。円形区分を有する円筒形キャップインサート8は、キャップ3によって画定される体積の内部に収容される。それは、ネック5の外面上のねじ山5aと係合することができる、その内面上のねじ山8aを備える。したがって、キャップインサート8は、キャップによってリザーバを閉鎖するために、キャップ3をネック5上に螺合することを可能にする。キャップインサートはまた、ピストン突出部リザーバ12と係合することができるその内面上に格納リング8bを保持する。好ましくは、キャップインサート8は、PPで作製することができる。
【0029】
ハウジング9は、キャップインサートと一体化することができる。好ましくは、ハウジング9は、ボタン10を支持する。ハウジング9はまた、チャンバ14の剛性壁を形成する。好ましくは、ハウジングは、PPで作製することができる。
【0030】
ピペット4は、液体を分注するために液体を貯蔵するための管状の形状を有する細長い本体と、ボタンの作動中に液体を装填及び解放する間に製品を吸引するための下端オリフィスと、を有する。下端は、好ましくは、区分4aの低減を形成するように先細であり、これにより、特にピペットがリザーバ2から出るときに、ピペット内の液体を保持することが可能になる。ピペットの下端は、製品の吸気及び放出を改善するために曲げられ得る。ピペットの上側は、好ましくは、突出部リザーバ12を介してピストン11を接続することができる肩部4bを形成する。ピペット4はまた、チャンバ14に開放するための上端オリフィスを有する。ピペットは、ガラス、TPX、PETG、PS、又はPPで実現することができる。好ましくは、ピペットは、メタロセンPPで作製され、清澄剤を含むことができる。
【0031】
ピストン11は、キャップインサート8の上側に配置された中空ハウジング9内に摺動可能に格納され、キャップ3がそれぞれボトル上に閉栓、及びボトルから開栓されると上下に移動する。ピストン11はまた、ハウジング9の内面に対して封止する。封止するために、ピストン11は、容器又はハウジング9の内壁との締まり嵌めを有するように成形される。また、ハウジング内壁は、最小限からゼロのドラフトで実現される。したがって、ピストン11は、より広い直径を有し、かつピストン11とハウジング9の内壁との間に可撓性封止を生成するように設計された、1つ以上の封止バンドを有する。ピストンは、一般に、LLDPE、LDPE、HDPE、又はPPなどの適合性熱可塑性物質で実現される。好ましくは、ピストンは、PPコポリマーグレードで作製される。好ましくは、ピストン又はハウジングは、良好な封止接触圧力を維持しながら摺動摩擦を最小限に抑えるための帯電防止剤又は粘着防止剤を含むことができる。
【0032】
ピストン11は、それらが垂直に一緒に移動するように結合されるように、突出部リザーバ12及びピペット4に接続され、好ましくは、それらは、互いに対して自由に回転することができる。ピストン11は、ハウジング9における高位置と低位置との間でボタンに対して軸方向に移動可能であり、チャンバ14の体積を変動させ、流体をピペット4に吸引する。突出部リザーバ12の機能は、ボトル2の突出部6を受容し、閉鎖運動中にピストン11及びピペット4を直接的又は間接的に上に移動させることである。好ましくは、突出部リザーバ12は、ピストン11及びピペット4に堅固に接続されている。好ましくは、突出部リザーバは、PPで作製することができる。
【0033】
キャップ3のスナップ嵌め13は、リザーバ2のスナップ嵌め6cと係合するように構成され、またピストン11と一緒に移動するように構成されている。スナップ嵌めは、キャップ閉鎖位置及び部分的キャップ開放位置に係合したままであり、キャップ開放位置で係脱する。開栓する間、キャップ3の対応するスナップ嵌め13とリザーバ2のスナップ嵌め6cとの間のこのスナップ嵌め係合によって、ピストン11は、ハウジング9内に押し下げられ、チャンバ14の体積は、増加する。閉栓する間、このスナップ嵌め係合によって、ピストン11は、ハウジング9中に押し上げられ、チャンバ14の体積は減少する。好ましくは、キャップ3のスナップ嵌め13はまた、リザーバ2のスナップ嵌め6cから係脱するときに可聴信号を生成するためのリブを含むことができるが、そのようなリブは、本明細書のいずれの図にも示されていない。
【0034】
格納リング8bは、キャップインサート8の一部として形成することができる。格納リング8bは、キャップがボトルネック上に位置し、閉栓及び開栓する間に、リザーバ2のスナップ嵌め6cに対してキャップ3のスナップ嵌め13を押圧する。格納リングの圧縮力は、キャップ閉鎖位置及び部分的キャップ開放位置における、キャップ3のスナップ嵌め13と、リザーバ2のスナップ嵌め6cとの間の偶発的な係脱を防止する。開栓する間、キャップ3のスナップ嵌め13は、格納リング8bの上方を摺動することができる。これにより、格納リング8bによってキャップ3のスナップ嵌め13及びリザーバ2のスナップ嵌め6cに加えられる格納圧力の低減を引き起こし、スナップ嵌めは、使用者によるわずかな垂直力の適用時に係脱される。
【0035】
図3は、キャップの特定の部分、特に格納リング8b及びいくつかの他の関連部品に焦点を当てている
図2の拡大図を示す。
【0036】
この格納リング8bの機能は、キャップ3のカンチレバースナップ嵌め13の半径方向の拡張を防止することである。これにより、大きな垂直引っ張り力が加えられても、スナップ嵌め13がリザーバ2のスナップ嵌め6cから係脱するのを防止する。キャップ3が特定の垂直位置に達すると、この格納リング8bは、スナップ嵌め13の外面から係脱する。これにより、スナップ嵌め13が自由に急激に拡張させておく。この時点で、非常にわずかな引っ張りは、キャップ3の対応するスナップ嵌め13をリザーバ2のスナップ嵌め6cから係脱するのに十分である。
【0037】
格納リング8bは、いくつかの突出部8cを軸に向かって突出させることができる。これらの突出部は、カンチレバースナップ嵌め13の間のスロットのうちの少なくともいくつかに嵌合するように、規則的に離間され、かつ設計されており、この実施形態では、格納リングの突出部は、全てのスロットに嵌合する。突出部8cとスロットとの間のこの係合の重要な機能は、ハウジングに対するピストン回転の程度を最小限に抑える一方で、消費者が、ピストンとハウジングとの間の良好な封止を維持するために、キャップを回転させる(この実施形態では、キャップの螺合及び螺脱)ことである。
【0038】
いくつかのスロットを有するカンチレバースナップ嵌め13は、スナップ嵌め13のより屈曲した可撓性を考慮して好ましい。これは、スナップ嵌め13をリザーバ2のスナップ嵌め6cから係脱するために消費者が必要とする力を最小限に抑えるのを補助する。好ましくは、突出部8cは、スロット付きのときにリザーバ2のスナップ嵌め6cを妨げず、すなわち、突出部8cは、リザーバ2のスナップ嵌め6cに対する隙間を有するように内径を有する。
【0039】
ガスケット15は、閉鎖位置にボトル2を密封することである。好ましくは、ガスケットは、積層発泡PE又は発泡PPで作製することができる。
【0040】
チャンバ14は、ボタン10、ハウジング9、ピストン11、及びピペット4の上端オリフィスによって形成された空間である。チャンバは、ピストン11の移動又はボタン10の移動に応じて、その体積を変化させる。この体積変化により、ピペット4は、製品を吸引するか、又はピペット4から製品を分注する。
【0041】
いかなる図にも示されていないが、本発明のディスペンサは、いかなるキャップ締結機構及び対応する締結機構も有しない実施形態を含むことができる。キャップ締結機構及び対応する締結機構を有しないそのような実施形態は、キャップインサート8におけるねじ山8a、及びボトルネック5におけるねじ山5aなしで、
図1~
図7に示されるものとほぼ同一の構造を有することができる。この実施形態では、特に輸送中のボトル2からのキャップ3のいかなる漏れ及び/又は落下も回避するための追加の手段を有することが好ましい。そのような追加の手段は、キャップ及びボトルを互いにしっかりと包装する収縮包装であり得る。一旦収縮包装が取り外されると、キャップは、単純な垂直押しによって開放/閉鎖される。格納リングを有することが依然として好ましいが、この実施形態は、格納リング上のいかなる突出部も伴わずに機能することができる。
【0042】
ピストンの経路は、ピペットによって除去される製品の用量を正確に決定する。この用量の体積は、チャンバ14の最大体積と最小体積との差に依存する。ピストン外径(outer diameter、OD)及びストロークの長さは、用量を所望の体積に調整するために変動させることができる。用量も繰り返し可能であり、すなわち、各除去について、同じ用量の製品がピペットによって吸引され、具体的には、用量の体積は、使用者がキャップ3を操作する方法によって影響を受けない。好ましくは、用量の体積は、0.6~1mlである。
【0043】
ディスペンサの動作は、
図4~
図7で説明されている。ディスペンサ1には粘性製品が充填されていると仮定される。
【0044】
図4は、キャップ閉鎖位置にある
図1のディスペンサの縦断面図を示す。この位置では、キャップ3は、ボトル2上に完全にねじ山を付け、突出部スナップ嵌め6cは、対応するスナップ嵌め13aと係合し、ピストンは、ハウジング内の高位置にあり、チャンバは、減少した体積を有する。
【0045】
図5は、使用者が開栓(この場合は、キャップの螺脱)し始めたが、まだ開栓(この場合は、螺脱)を完了していないとき、部分的キャップ開放位置にある、
図1のディスペンサの縦断面図を示す。キャップインサート8は、この段階でリザーバ2のネック5と係合したままである。この位置では、キャップは、螺脱し始めるが、突出部スナップ嵌め6cは、依然として対応するスナップ嵌め13と係合する。対応するスナップ嵌め13、ガスケット15、突出部レシーバ12、ピストン11、及びピペット4が全て堅固に接続されているため、突出部スナップ嵌め6cと対応するスナップ嵌め13aとの間の係合による螺脱は、ボタン10の位置を変化させずに、ピストン11及びピペット4をハウジング14内で下に移動させ、したがって、チャンバ14の体積を増加させる。チャンバ体積のこの増加により、製品がピペット4に吸引される。
【0046】
図6は、キャップ開放位置にある
図1のディスペンサの縦断面図を示す。
【0047】
キャップインサートねじ山8aが、ボトルネックねじ山5aと係脱するとき、突出部スナップ嵌め5aが、ストッパスナップ嵌め13aと依然として係合されていることが好ましい。そのような場合、使用者が、キャップがボトルから完全に係脱され、かつ/又は用量が分注される準備ができていることを確認することができるように、使用者による穏やかな引っ張りによって係脱されたときにクリック音を生成するように、スナップ嵌め係合は設計されている。
【0048】
この構成では、チャンバ14の体積は最大であり、ピペットには製品が充填される。
【0049】
使用者が、ディスペンサを開放するためにキャップを回転させ続けると、キャップインサート8はネック5から螺脱する。カバー7、キャップインサート8、ハウジング9、ボタン10、ピストン11、突出部リザーバ12、スナップ嵌め13、ガスケット15、及びピペット4によって形成されたアセンブリは、軸を中心に回転して一体に移動する。したがって、
図5によれば、キャップ3は、ねじ山8aに沿ってネック5から螺脱され、キャップ3は、その螺合又はキャップ閉鎖位置から解放され、それによって、使用者がディスペンサ1からキャップ3及びそのピペット4を取り外すことを可能にする。
【0050】
図7は、
図6のディスペンサの縦断面図を示し、ボタン10が分注の動作中に少なくとも部分的に押圧される状態である。ピペット4の内部に装填された製品は、ボタン10をカバー7に対して押すことによって分注される。このようにボタン10を押圧することは、ピストン11及びピペット4の位置が変化させないため、チャンバの体積が減少させ、ピペット4に格納された製品の排出を引き起こす。
【0051】
次いで、ディスペンサ1が完全に閉鎖する、すなわち、
図1及び
図4に示されるようにキャップ閉鎖位置になるまで、キャップ3をリザーバ2上に螺合して戻す。この段階で、キャップは、螺合し始め、キャップインサート8は、リザーバ2のネック5と係合し始める。突出部6は、突出部リザーバ12を押し始める。突出部リザーバ12として、ピストン11及びピペット4は全て、堅固に接続されるので、キャップ3を螺合することにより、ピストン11及びピペット4がハウジング14内に上に移動させるため、チャンバ14の体積を減少させる。
【0052】
図8は、閉鎖位置にある、本発明の別の実施形態によるディスペンサの縦断面図を示し、
図1~
図6に示される実施形態との重要な違いが、ピストン係合機構及び対応する機構としての磁石16の使用である。磁力は、螺脱する間のピストンの摩擦力を克服するのに十分に高くなければならないが、使用者がわずかな垂直引っ張りによってその摩擦力を破壊することができるように十分に低くなければならない。しかしながら、ディスペンサは、機械的リサイクルを考慮して、磁石を含まないことが好ましい場合がある。
【0053】
図9は、突出部、ピストン係合機構、対応する係合機構、ピストン、ハウジング、及びピペットなどの他の重要な要素を略する一方で、代替のキャップ締結機構及び対応する機構としてのバヨネットコネクタ17を示す。
【0054】
図10は、キャップの特定の部分に焦点を当てている、閉鎖位置にある、本発明の別の実施形態によるディスペンサの拡大縦断面図を示し、
図1~
図7に示される実施形態との重要な違いが、ピストンがハウジング内で下方位置から上方位置に移動するときに、すなわち、製品ディスペンサを閉鎖する方向に閉栓する間にピペット及びチャンバ内に含まれる空気を通気するときに、空気を解放するための、ボタン10内の一方向弁10aの追加である。この空気解放機構がない場合、ピペットは、分注後に閉栓している間に空気をリザーバの中に通気することを開始し得、その空気が、ピペット下端オリフィスの周りに一時的な空気ポケットを生成し得、それが次の装填又はその後に吸引され得、ひいてはそれが、特に、製品がより高い粘度を有する場合に、次回又はその後にあまり正確ではない分注を引き起こし得る。
【0055】
この一方向弁10aでは、ソフト弁は、分注後にリザーバ上で閉栓されたときにピストンが上方に移動するにつれて、
図10に示される経路を通してチャンバ及び/又はピペット内に閉じ込められた空気を解放するように、屈曲する。
【0056】
一方向弁は、例えば、フラップ、傘、ダックビル、ボール、又はディスク弁などの従来の可撓性、弾性、低圧の一方向弁など任意のものであり得る。あるいは、一方向弁は、作動時に使用者の指又は手で覆われ、解放上で覆われていないボタン表面の一部のベントによって提供され得る。より好ましくは、一方向弁は、1つ以上の傘弁からなる。
【0057】
本明細書に開示される寸法及び値は、列挙された正確な数値に厳密に限定されるものとして理解されるべきではない。その代わりに、特に指示がない限り、そのような寸法は各々、列挙された値とその値を囲む機能的に同等な範囲との両方を意味することが意図される。例えば、「40mm」と開示された寸法は、「約40mm」を意味することが意図される。
【0058】
相互参照される文書又は関連特許若しくは出願を含めた、本明細書に引用される全ての文書は、明示的に除外されるか又は特に限定されない限り、参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる。いかなる文献の引用も、本明細書中で開示又は特許請求される任意の発明に対する先行技術であるとはみなされず、あるいはそれを単独で又は他の任意の参考文献(単数又は複数)と組み合わせたときに、そのようないかなる発明も教示、示唆又は開示するとはみなされない。更に、本文書における用語の任意の意味又は定義が、参照により組み込まれた文書内の同じ用語の任意の意味又は定義と矛盾する場合、本文書においてその用語に与えられた意味又は定義が適用されるものとする。
【0059】
本発明の特定の実施形態を例示及び説明してきたが、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく様々な他の変更及び修正を行うことができる点は当業者には明白であろう。したがって、本発明の範囲内にある全てのそのような変更及び修正を添付の特許請求の範囲に網羅することが意図される。