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特許7405958二次電池セパレータ用コート材原料、二次電池セパレータ用コート材、二次電池セパレータ、二次電池セパレータの製造方法、および、二次電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】二次電池セパレータ用コート材原料、二次電池セパレータ用コート材、二次電池セパレータ、二次電池セパレータの製造方法、および、二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/42 20210101AFI20231219BHJP
   H01M 50/434 20210101ALI20231219BHJP
   H01M 50/451 20210101ALI20231219BHJP
   H01M 50/403 20210101ALI20231219BHJP
   C08F 220/56 20060101ALI20231219BHJP
   B32B 5/18 20060101ALI20231219BHJP
   C08F 220/06 20060101ALI20231219BHJP
   H01M 50/443 20210101ALI20231219BHJP
【FI】
H01M50/42
H01M50/434
H01M50/451
H01M50/403 D
C08F220/56
B32B5/18
C08F220/06
H01M50/443 M
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022515345
(86)(22)【出願日】2021-04-09
(86)【国際出願番号】 JP2021014979
(87)【国際公開番号】W WO2021210498
(87)【国際公開日】2021-10-21
【審査請求日】2022-10-07
(31)【優先権主張番号】P 2020074279
(32)【優先日】2020-04-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103517
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 寛之
(74)【代理人】
【識別番号】100149607
【弁理士】
【氏名又は名称】宇田 新一
(72)【発明者】
【氏名】富田 嘉彦
(72)【発明者】
【氏名】松本 剛
(72)【発明者】
【氏名】香川 靖之
(72)【発明者】
【氏名】吉村 寿洋
【審査官】佐宗 千春
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/188722(WO,A1)
【文献】特開2017-147060(JP,A)
【文献】特開2020-087591(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/42
H01M 50/489
H01M 50/434
H01M 50/437
H01M 50/446
H01M 50/451
H01M 50/403
C08F 220/56
B32B 5/18
C08F 220/06
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタクリルアミドに由来する繰り返し単位と、カルボキシ基含有ビニルモノマーに由来する繰り返し単位とを有する水溶性ポリマーを含み、
前記水溶性ポリマーの総量に対して、
前記メタクリルアミドに由来する繰り返し単位の含有率が、60質量%以上97質量%以下であり、
前記カルボキシ基含有ビニルモノマーに由来する繰り返し単位の含有率が、3質量%以上40質量%以下であり、
前記水溶性ポリマーの重量平均分子量が、2万以上20万以下であり、
前記水溶性ポリマーのガラス転移温度が、200℃以上である
ことを特徴とする、二次電池セパレータ用コート材原料。
【請求項3】
さらに、無機充填剤と分散剤とを含む
ことを特徴とする、請求項2に記載の二次電池セパレータ用コート材。
【請求項4】
多孔膜と、
前記多孔膜の少なくとも片面に配置される請求項2または3に記載の二次電池セパレータ用コート材の塗布膜と
を備えることを特徴とする、二次電池セパレータ。
【請求項5】
多孔膜を準備する工程、および、
前記多孔膜の少なくとも片面に、請求項2に記載の二次電池セパレータ用コート材を塗布する工程を備える
ことを特徴とする、二次電池セパレータの製造方法。
【請求項6】
正極と、負極と、前記正極および前記負極の間に配置される請求項4に記載される二次電池セパレータとを備えることを特徴とする、二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池セパレータ用コート材原料、二次電池セパレータ用コート材、二次電池セパレータ、二次電池セパレータの製造方法、および、二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、二次電池内には、正極と負極とを隔離し、電解液中のイオンを通過させるためのセパレータが備えられている。
【0003】
このようなセパレータとしては、例えば、ポリオレフィン多孔膜が知られている。
【0004】
セパレータが、熱による収縮で形状が変化すると、正極と負極との間でショートする可能性があるため、セパレータには耐熱性が要求される。そのため、セパレータに耐熱コート層を設ける場合がある。
【0005】
セパレータに形成される耐熱コート層としては、例えば、バインダー樹脂およびフィラーを含む塗工スラリーを、多孔質フィルムに塗布および乾燥させて得られるコート層が知られている。より具体的には、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)およびアルミナを含む塗工スラリーを、ポリオレフィン樹脂組成物から得られる基材多孔質フィルムに対して塗布および乾燥させて得られる耐熱層が、提案されている(例えば、特許文献1(実施例)参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2013-46901号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一方、二次電池のセパレータは、発電のためにイオンを通過させる必要があるため、透気性が要求される。しかし、上記した耐熱層は、セパレータの透気性を低下させるという不具合がある。
【0008】
本発明は、優れた耐熱性および透気性を兼ね備えた二次電池セパレータを得られる、二次電池セパレータ用コート材原料、その二次電池セパレータ用コート材原料を含む二次電池セパレータ用コート材、その二次電池セパレータ用コート材の塗布膜を備える二次電池セパレータ、その二次電池セパレータの製造方法、および、その二次電池セパレータを備える二次電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明[1]は、メタクリルアミドに由来する繰り返し単位と、カルボキシ基含有ビニルモノマーに由来する繰り返し単位とを有する水溶性ポリマーを含み、前記水溶性ポリマーの総量に対して、前記メタクリルアミドに由来する繰り返し単位の含有率が、60質量%以上97質量%以下であり、前記カルボキシ基含有ビニルモノマーに由来する繰り返し単位の含有率が、3質量%以上40質量%以下であり、前記水溶性ポリマーの重量平均分子量が、2万以上20万以下であり、前記水溶性ポリマーのガラス転移温度が、200℃以上である、二次電池セパレータ用コート材原料を含む。
【0010】
本発明[2]は、上記[1]に記載の二次電池セパレータ用コート材原料を含む、二次電池セパレータ用コート材を含む。
【0011】
本発明[3]は、さらに、無機充填剤と分散剤とを含む、上記[2]に記載の二次電池セパレータ用コート材を含む。
【0012】
本発明[4]は、多孔膜と、前記多孔膜の少なくとも片面に配置される上記[2]または[3]に記載の二次電池セパレータ用コート材の塗布膜とを備える、二次電池セパレータを含む。
【0013】
本発明[5]は、多孔膜を準備する工程、および、前記多孔膜の少なくとも片面に、上記[2]または[3]に記載の二次電池セパレータ用コート材を塗布する工程を備える、二次電池セパレータの製造方法を含む。
【0014】
本発明[6]は、正極と、負極と、前記正極および前記負極の間に配置される上記[4]に記載される二次電池セパレータとを備える、二次電池を含む。
【発明の効果】
【0015】
本発明の二次電池セパレータ用コート材原料は、メタクリルアミドに由来する繰り返し単位と、カルボキシ基含有ビニルモノマーに由来する繰り返し単位とを、所定割合で有する水溶性ポリマーを含み、水溶性ポリマーの重量平均分子量およびガラス転移温度が、所定範囲に調整されている。そのため、本発明の二次電池セパレータ用コート材原料によれば、耐熱性および透気性に優れる二次電池セパレータを得られる。
【0016】
本発明の二次電池セパレータ用コート材は、上記の二次電池セパレータ用コート材原料を含むため、耐熱性および透気性に優れる二次電池セパレータを得られる。
【0017】
本発明の二次電池セパレータは、上記の二次電池セパレータ用コート材の塗布膜を備えるため、耐熱性および透気性に優れる。
【0018】
本発明の二次電池セパレータの製造方法によれば、耐熱性および透気性に優れる二次電池セパレータを、効率よく製造できる。
【0019】
本発明の二次電池は、上記の二次電池セパレータを備えているため、耐熱性および透気性に優れ、その結果、耐久性および発電効率に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の二次電池セパレータ用コート材原料は、水溶性ポリマーを含んでいる。
【0021】
水溶性ポリマーは、水溶性ポリマー原料(モノマー組成物)を重合してなる重合体である。
【0022】
なお、水溶性ポリマーとは、水100mlに対しポリマー1gを24時間撹拌溶解させた後、300メッシュの金網でろ過した場合において、残存固形分が0.1%以下であるポリマーと定義される。
【0023】
水溶性ポリマー原料は、必須成分として、メタクリルアミドおよびカルボキシ基含有ビニルモノマーを含有する。好ましくは、水溶性ポリマー原料は、後述する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含有せず、メタクリルアミドおよびカルボキシ基含有ビニルモノマーを含有する。
【0024】
メタクリルアミドは、アクリルアミドと併用されていてもよく、また、メタクリルアミドが、アクリルアミドと併用されることなく、単独で使用されていてもよい。
【0025】
メタクリルアミドは、耐熱性の向上を図る観点から、好ましくは、アクリルアミドと併用されず、単独で使用される。
【0026】
なお、水溶性ポリマー原料に対するメタクリルアミドの含有割合は、後述する。
【0027】
カルボキシ基含有ビニルモノマーは、メタクリルアミドと共重合可能であり、カルボキシ基を含有する共重合性モノマーである。
【0028】
カルボキシ基含有ビニルモノマーとしては、例えば、モノカルボン酸、ジカルボン酸、または、これらの塩などが挙げられる。モノカルボン酸としては、例えば、(メタ)アクリル酸などが挙げられる。ジカルボン酸としては、例えば、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、無水イタコン酸、無水マレイン酸、無水フマル酸などが挙げられる。
【0029】
なお、(メタ)アクリルとは、アクリルおよびメタクリルを含む(以下同様)。
【0030】
これらカルボキシ基含有ビニルモノマーは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0031】
水溶性ポリマー原料が、カルボキシ基含有ビニルモノマーを含有すれば、この二次電池セパレータ用コート材原料を含む二次電池セパレータ用コート材(後述)を用いて得られる二次電池セパレータ(後述)は、耐熱性に優れる。
【0032】
カルボキシ基含有ビニルモノマーとして、好ましくは、モノカルボン酸が挙げられ、より好ましくは、(メタ)アクリル酸が挙げられ、さらに好ましくは、メタクリル酸が挙げられる。
【0033】
水溶性ポリマー原料が、これらを含有すれば、この二次電池セパレータ用コート材原料を含む二次電池セパレータ用コート材(後述)を用いて得られる二次電池セパレータ(後述)は、より一層耐熱性に優れる。
【0034】
なお、水溶性ポリマー原料に対するカルボキシ基含有ビニルモノマーの含有割合は、後述する。
【0035】
また、水溶性ポリマー原料は、任意成分として、メタクリルアミドおよび/またはカルボキシ基含有ビニルモノマーと共重合可能な共重合性モノマー(以下、水溶性-共重合性モノマーと称する。)を含有することができる。
【0036】
水溶性-共重合性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、官能基含有ビニルモノマー(カルボキシ基含有ビニルモノマーを除く。)、ビニルエステル類、芳香族ビニルモノマー、N-置換不飽和カルボン酸アミド、複素環式ビニル化合物、ハロゲン化ビニリデン化合物、α-オレフィン類、ジエン類、架橋性ビニルモノマーなどが挙げられる。
【0037】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレートなどの炭素数1~4のアルキル部分を有するアルキル(メタ)アクリレート、例えば、n-アミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレートなどの炭素数5~12のアルキル部分を有するアルキル(メタ)アクリレートなどの炭素数1~12のアルキル部分を有するアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0038】
官能基含有ビニルモノマー(カルボキシ基含有ビニルモノマーを除く。)としては、例えば、水酸基含有ビニルモノマー、アミノ基含有ビニルモノマー、グリシジル基含有ビニルモノマー、シアノ基含有ビニルモノマー、スルホン酸基含有ビニルモノマーおよびその塩、アセトアセトキシ基含有ビニルモノマー、リン酸基含有化合物などが挙げられる。
【0039】
水酸基含有ビニルモノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0040】
アミノ基含有ビニルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2-アミノエチル、(メタ)アクリル酸2-(N-メチルアミノ)エチル、(メタ)アクリル酸2-(N,N-ジメチルアミノ)エチルなどが挙げられる。
【0041】
グリシジル基含有ビニルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジルなどが挙げられる。
【0042】
シアノ基含有ビニルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリロニトリルなどが挙げられる。
【0043】
スルホン酸基含有ビニルモノマーとしては、例えば、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、アクリルアミドt-ブチルスルホン酸などが挙げられる。また、上記スルホン酸基含有ビニルモノマーの塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩、例えば、アンモニウム塩などが挙げられる。具体的には、例えば、アリルスルホン酸ナトリウム、メタリルスルホン酸ナトリウム、メタリルスルホン酸アンモニウムなどが挙げられる。
【0044】
アセトアセトキシ基含有ビニルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アセトアセトキシエチルなどが挙げられる。
【0045】
リン酸基含有化合物としては、例えば、2-メタクロイロキシエチルアシッドフォスフェートなどが挙げられる。
【0046】
ビニルエステル類としては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどが挙げられる。
【0047】
芳香族ビニルモノマーとしては、例えば、スチレン、α―メチルスチレン、p-メチルスチレン、ビニルトルエン、クロロスチレンなどが挙げられる。
【0048】
N-置換不飽和カルボン酸アミドとしては、例えば、N-メチロール(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。
【0049】
複素環式ビニル化合物としては、例えば、ビニルピロリドンなどが挙げられる。
【0050】
ハロゲン化ビニリデン化合物としては、例えば、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデンなどが挙げられる。
【0051】
α-オレフィン類としては、例えば、エチレン、プロピレンなどが挙げられる。
【0052】
ジエン類としては、例えば、ブタジエンなどが挙げられる。
【0053】
架橋性ビニルモノマーとしては、例えば、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、ジビニルベンゼン、ポリエチレングリコール鎖含有ジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリストールトリアクリレート、ペンタエリストールテトラアクリレートなど、2つ以上のビニル基を含有するビニルモノマーなどが挙げられる。
【0054】
これら水溶性-共重合性モノマーは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0055】
水溶性-共重合性モノマーとして、好ましくは、親水基を含有する共重合性モノマーが挙げられ、より具体的には、水酸基含有ビニルモノマー、スルホン酸基含有ビニルモノマー、リン酸基含有ビニルモノマーが挙げられ、さらに好ましくは、水酸基含有ビニルモノマーが挙げられる。
【0056】
水溶性ポリマー原料において、メタクリルアミドの含有割合は、水溶性ポリマー原料の総量100質量部に対して、後述する無機充填剤に対する吸着性を向上させ、優れた耐熱性を得る観点から、例えば、60質量部以上、好ましくは、70質量部以上、より好ましくは、75質量部以上、さらに好ましくは、80質量部以上であり、また、後述する無機充填剤に対する吸着性を向上させ、優れた耐熱性を得る観点から、例えば、97質量部以下、好ましくは、96質量部以下、より好ましくは、95質量部以下である。
【0057】
また、水溶性ポリマー原料において、カルボキシ基含有ビニルモノマーの含有割合は、水溶性ポリマー原料の総量100質量部に対して、後述する無機充填剤に対する吸着性を向上させ、優れた耐熱性を得る観点から、例えば、3質量部以上、好ましくは、4質量部以上、より好ましくは、5質量部以上であり、後述する基材に対する吸着を抑制し、優れた透気性を得る観点から、例えば、40質量部以下、好ましくは、30質量部以下、より好ましくは、25質量部以下、さらに好ましくは、20質量部以下である。
【0058】
また、水溶性ポリマー原料において、水溶性-共重合性モノマーの含有割合は、水溶性ポリマーの水溶性が保たれる範囲であって、例えば、水溶性ポリマー原料の総量100質量部に対して、例えば、37質量部以下、好ましくは、15質量部以下であり、0質量部以上であり、とりわけ好ましくは、0質量部である。
【0059】
すなわち、水溶性ポリマー原料は、水溶性-共重合性モノマーを含有することなく、メタクリルアミドおよびカルボキシ基含有ビニルモノマーからなる組成物であってもよく、また、メタクリルアミドとカルボキシ基含有ビニルモノマーと水溶性-共重合性モノマーとからなる組成物であってもよい。
【0060】
好ましくは、水溶性ポリマー原料は、メタクリルアミドとカルボキシ基含有ビニルモノマーとからなる組成物である。
【0061】
そして、上記の水溶性ポリマー原料を、公知の方法で重合することにより、水溶性ポリマーが得られる。
【0062】
より具体的には、例えば、水に、水溶性ポリマー原料および重合開始剤を配合し、水溶性ポリマー原料を重合させ、その後、必要に応じて熟成させる。
【0063】
重合開始剤としては、特に制限されないが、例えば、過硫酸塩(過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウムなど)、過酸化水素、有機ハイドロパーオキサイド、4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)酸などの水溶性開始剤、例えば、過酸化ベンゾイル、アゾビスイソブチロニトリルなどの油溶性開始剤、さらには、レドックス系開始剤などが挙げられる。
【0064】
これら重合開始剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0065】
重合開始剤として、好ましくは、水溶性開始剤、より好ましくは、過硫酸塩、さらに好ましくは、過硫酸アンモニウムが挙げられる。
【0066】
重合開始剤の配合割合は、水溶性ポリマーの重量平均分子量を後述する範囲に調整する観点から、水溶性ポリマー原料100質量部に対して、例えば、0.01質量部以上、好ましくは、0.1質量部以上、より好ましくは、0.2質量部以上、さらに好ましくは、0.25質量部以上であり、例えば、3質量部以下、好ましくは、2質量部以下である。
【0067】
重合条件および熟成条件は、得られる水溶性ポリマーの重量平均分子量が後述する範囲となるように、適宜設定される。
【0068】
より具体的には、例えば、常圧下において、重合温度が、例えば、30℃以上、好ましくは、50℃以上であり、例えば、95℃以下、好ましくは、85℃以下である。また、重合時間が、例えば、0.5時間以上、好ましくは、1.5時間以上であり、例えば、20時間以下、好ましくは、10時間以下である。
【0069】
熟成時間は、例えば、0.5時間以上、好ましくは、1.5時間以上であり、また、例えば、6時間以下、好ましくは、3時間以下である。
【0070】
また、上記の重合においては、製造安定性の向上を図る観点から、例えば、pH調整剤、例えば、エチレンジアミン四酢酸およびその塩などの金属イオン封止剤、例えば、メルカプタン類、低分子ハロゲン化合物などの分子量調節剤(連鎖移動剤)など、公知の添加剤を適宜の割合で配合することができる。
【0071】
また、上記の重合前または重合後には、アンモニアなどの中和剤を配合し、pHを7以上11以下の範囲に調整することもできる。
【0072】
これにより、水溶性ポリマー原料の重合体として、水溶性ポリマーが得られる。
【0073】
その結果、水溶性ポリマーおよび水溶性ポリマーを含む水溶液(二次電池セパレータ用コート材原料)が得られる。
【0074】
得られる水溶性ポリマーは、メタクリルアミドに由来する繰り返し単位と、カルボキシ基含有ビニルモノマーに由来する繰り返し単位とを有するため、水溶性ポリマーは、後述の非水溶性ポリマーに対して、相対的に、親水性を有する。
【0075】
水溶性ポリマーにおけるメタクリルアミドに由来する繰り返し単位の含有率は、水溶性ポリマー原料中のメタクリルアミドの含有率と、同一である。
【0076】
すなわち、メタクリルアミドに由来する繰り返し単位の含有率は、水溶性ポリマーの総量に対して、後述する無機充填剤に対する吸着性を向上させ、優れた耐熱性を得る観点から、60質量%部以上、好ましくは、70質量%以上、より好ましくは、75質量%以上、さらに好ましくは、80質量%以上であり、97質量%以下、好ましくは、96質量%以下、より好ましくは、95質量%以下である。
【0077】
また、水溶性ポリマーにおけるカルボキシ基含有ビニルモノマーに由来する繰り返し単位の含有率は、水溶性ポリマー原料中のカルボキシ基含有ビニルモノマーの含有率と、同一である。
【0078】
すなわち、カルボキシ基含有ビニルモノマーに由来する繰り返し単位の含有率が、水溶性ポリマーの総量に対して、後述する無機充填剤に対する吸着性を向上させ、優れた耐熱性を得る観点から、3質量%以上、好ましくは、4質量%以上、より好ましくは、5質量%以上であり、後述する基材に対する吸着を抑制し、優れた耐熱性を得る観点から、40質量%以下、好ましくは、30質量%以下、より好ましくは、25質量%以下、さらに好ましくは、20質量%以下である。
【0079】
また、水溶性ポリマーは、上記の水溶性-共重合性モノマーに由来する繰り返し単位を含むことができる。
【0080】
水溶性ポリマーにおける水溶性-共重合性モノマーに由来する繰り返し単位の含有率は、水溶性ポリマー原料中の水溶性-共重合性モノマーの含有率と、同一である。
【0081】
すなわち、水溶性-共重合性モノマーに由来する繰り返し単位の含有率は、水溶性ポリマーの総量に対して、例えば、0質量%以上であり、例えば、27質量%以下、好ましくは、15質量%以下であり、とりわけ好ましくは、0質量%である。
【0082】
また、水溶性ポリマーの重量平均分子量は、後述する多孔膜の細孔に対する浸透を抑制し、優れた透気性を得る観点から、2万以上、好ましくは、3万以上、より好ましくは、4万以上であり、優れた耐熱性を得る観点から、20万以下、好ましくは、18万以下、より好ましくは、15万以下である。
【0083】
なお、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラムによるポリスチレン換算分子量である。重量平均分子量は、後述する実施例に準拠して測定される。
【0084】
また、水溶性ポリマーのガラス転移温度は、優れた耐熱性を得る観点から、200℃以上、好ましくは、210℃以上、より好ましくは、220℃以上、さらに好ましくは、230℃以上、さらに好ましくは、240℃以上であり、通常、400℃以下、好ましくは、300℃以下、より好ましくは、280℃以下である。
【0085】
なお、ガラス転移温度は、FOXの式により算出される(以下同様)。
【0086】
また、水溶性ポリマーの水溶液において、水溶性ポリマーの含有量(固形分濃度)は、例えば、3質量%以上、好ましくは、5質量%以上、より好ましくは、8質量%以上であり、また、例えば、50質量%以下、好ましくは、30質量%以下である。
【0087】
また、水溶液のpH値は、例えば、5以上であり、また、例えば、9以下である。
【0088】
上記のpH値が、上記の範囲内であれば、貯蔵安定性が向上する。
【0089】
また、二次電池セパレータ用コート材原料は、任意成分として、非水溶性ポリマーを含むことができる。
【0090】
非水溶性ポリマーは、非水溶性ポリマー原料(モノマー組成物)を重合してなる重合体である。
【0091】
なお、非水溶性ポリマーとは、水100mlに対しポリマー1gを24時間撹拌溶解させた後、300メッシュの金網でろ過した場合において、残存固形分が90%以上であるポリマーと定義される。
【0092】
非水溶性ポリマー原料は、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含有する。
【0093】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、上記した(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。
【0094】
また、非水溶性ポリマー原料は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合可能な共重合性モノマー(以下、非水溶性-共重合性モノマーと称する。)を含有することができる。
【0095】
非水溶性-共重合性モノマーとしては、例えば、官能基含有ビニルモノマーなどが挙げられる。
【0096】
官能基含有ビニルモノマーとしては、例えば、上記したカルボキシ基含有ビニルモノマー、上記した水酸基含有ビニルモノマー、上記したアミノ基含有ビニルモノマー、上記したグリシジル基含有ビニルモノマー、上記したシアノ基含有ビニルモノマー、上記したスルホン酸基含有ビニルモノマーおよびその塩、上記したアセトアセトキシ基含有ビニルモノマー、リン酸基含有化合物などが挙げられる。さらに、非水溶性-共重合性モノマーとして、上記したビニルエステル類、上記した芳香族ビニルモノマー、上記したN-置換不飽和カルボン酸アミド、アクリルアミドおよび/またはメタクリルアミド、上記した複素環式ビニル化合物、上記したハロゲン化ビニリデン化合物、上記したα-オレフィン類、上記したジエン類、上記した架橋性ビニルモノマーを挙げることもできる。
【0097】
これら非水溶性-共重合性モノマーは、単独使用または2種類以上併用することができる。なお、非水溶性-共重合性モノマーの含有割合は、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0098】
そして、公知の方法によって、上記の非水溶性ポリマー原料を水中で重合することにより、非水溶性ポリマーおよびその分散液が得られる。
【0099】
非水溶性ポリマーは、上記の水溶性ポリマーに対して、相対的に、疎水性を有する。
【0100】
非水溶性ポリマーのガラス転移温度は、例えば、-30℃以上、好ましくは、-20℃以上、好ましくは、-15℃以上であり、また、例えば、80℃以下、好ましくは、50℃以下である。
【0101】
二次電池セパレータ用コート材原料が、非水溶性ポリマーを含む場合には、二次電池セパレータ用コート原料は、水溶性ポリマーおよび非水溶性ポリマーを含む複合樹脂(例えば、樹脂粒子)であってもよく、また、非水溶性ポリマーの存在下で水溶性ポリマー原料を重合して得られる分散液であってもよく、さらに、水溶性ポリマーの存在下で非水溶性ポリマー原料を重合して得られる分散液であってもよい。さらに、二次電池セパレータ用コート材原料は、例えば、個別に得られた水溶性ポリマーの水溶液と非水溶性ポリマーの分散液との混合液であってもよい。
【0102】
二次電池セパレータ用コート材原料が、水溶液および/または分散液である場合には、そのpH値は、例えば、5以上であり、また、例えば、9以下である。
【0103】
上記のpH値が、上記の範囲内であれば、貯蔵安定性が向上する。
【0104】
また、水溶液および/または分散液において、樹脂の含有量(固形分濃度)は、例えば、5質量%以上、また、例えば、50質量%以下である。
【0105】
上記の二次電池セパレータ用コート材原料は、メタクリルアミドに由来する繰り返し単位と、カルボキシ基含有ビニルモノマーに由来する繰り返し単位とを、所定割合で有する水溶性ポリマーを含み、水溶性ポリマーの重量平均分子量およびガラス転移温度が、所定範囲に調整されている。そのため、上記の二次電池セパレータ用コート材原料によれば、耐熱性および透気性に優れる二次電池セパレータを得られる。
【0106】
すなわち、二次電池セパレータ用コート材(後述)では、水溶性ポリマーが無機充填剤(後述)に対して吸着し、水溶性ポリマーが無機充填剤(後述)を結着させることによって、耐熱性の向上が図られる。
【0107】
この点、水溶性ポリマー中のメタクリルアミドに由来する繰り返し単位が過度に少ない場合、水溶性ポリマーの無機充填剤(後述)に対する結着性が十分ではなく、耐熱性を十分に得られない。
【0108】
また、水溶性ポリマー中のメタクリルアミドに由来する繰り返し単位が過度に多い場合、水溶性ポリマー中のカルボキシ基含有ビニルモノマーに由来する繰り返し単位が、少なくなる。
【0109】
そして、例えば、水溶性ポリマー中のカルボキシ基含有ビニルモノマーに由来する繰り返し単位が過度に少ない場合、水溶性ポリマーの無機充填剤(後述)に対する吸着性が十分ではなく、耐熱性を十分に得られない。
【0110】
また、水溶性ポリマー中のカルボキシ基含有ビニルモノマーに由来する繰り返し単位が過度に多い場合、水溶性ポリマーの基材への吸着量が多くなるため、セパレータの透気性を低下させる。
【0111】
さらに、例えば、水溶性ポリマーのガラス転移温度が、過度に低い場合には、セパレータの耐熱性が低下する。
【0112】
また、例えば、水溶性ポリマーの重量平均分子量が過度に小さい場合には、水溶性ポリマーが後述する多孔膜の細孔に対して浸透し、セパレータの透気性を低下させる。
【0113】
また、例えば、水溶性ポリマーの重量平均分子量が過度に大きい場合には、増粘により、水溶性ポリマーの塗工作業性が低下し、塗膜が不均一化するため、セパレータの耐熱性が低下する。
【0114】
これらに対して、メタクリルアミドに由来する繰り返し単位の含有率、カルボキシ基含有ビニルモノマーに由来する繰り返し単位の含有率、重量平均分子量およびガラス転移温度が、それぞれ、所定範囲に調整されていれば、優れた耐熱性および透気性を、バランスよく得られる。
【0115】
本発明の二次電池セパレータ用コート材は、上記の二次電池セパレータ用コート材原料と、必要により、無機充填剤と、分散剤とを含んでいる。
【0116】
二次電池セパレータ用コート材原料の配合割合は、二次電池セパレータ用コート材原料と、無機充填剤と、分散剤との総量(以下、二次電池セパレータ用コート材成分とする。
【0117】
)100質量部(固形分)に対して、例えば、0.1質量部以上(固形分)であり、また、例えば、10質量部以下(固形分)である。
【0118】
無機充填剤としては、例えば、アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、マグネシア、セリア、イットリア、酸化亜鉛、酸化鉄などの酸化物、例えば、窒化ケイ素、窒化チタン、窒化ホウ素などの窒化物、例えば、シリコンカーバイド、炭酸カルシウムなどの炭化物、例えば、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウムなどの硫酸物、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化酸化アルミニウムなどの水酸化物、例えば、タルク、カオリナイト、ディカイト、ナクライト、ハロイサイト、パイロフィライト、モンモリロナイト、セリサイト、マイカ、アメサイト、ベントナイト、アスベスト、ゼオライト、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ藻土、ケイ砂、ガラスなどのケイ酸物、例えば、チタン酸カリウムなどが挙げられ、好ましくは、酸化物、水酸化物、より好ましくは、酸化アルミニウム、水酸化酸化アルミニウムが挙げられる。
【0119】
無機充填剤の配合割合は、二次電池セパレータ用コート材成分100質量部(固形分)に対して、例えば、50質量部以上(固形分)であり、また、例えば、99.7質量部以下(固形分)である。
【0120】
分散剤としては、例えば、ポリカルボン酸アンモニウム、ポリカルボン酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0121】
分散剤がポリカルボン酸アンモニウムであれば、上記の二次電池セパレータ用コート材原料および無機充填剤を均一に分散させることができ、厚みが均一な塗布膜(後述)を得ることができる。
【0122】
分散剤の配合割合は、二次電池セパレータ用コート材成分100質量部(固形分)に対して、例えば、0.1質量部以上(固形分)であり、また、例えば、5質量部以下(固形分)である。
【0123】
二次電池セパレータ用コート材を得るには、まず、水に、無機充填剤および分散剤を上記の割合で配合し、無機充填剤分散液を調製する。
【0124】
次いで、その無機充填剤分散液に、二次電池セパレータ用コート材原料(または二次電池セパレータ用コート材原料を含む分散液)を上記の割合で配合し、撹拌する。
【0125】
撹拌方法は、特に限定されず、例えば、ボールミル、ビーズミル、遊星ボールミル、振動ボールミル、サンドミル、コロイドミル、アトライター、ロールミル、高速インペラー分散、ディスパーザー、ホモジナイザー、高速衝撃ミル、超音波分散、撹拌羽根などによる機械撹拌などが挙げられる。
【0126】
これにより、二次電池セパレータ用コート材が得られる。
【0127】
また、このような二次電池セパレータ用コート材は、水に分散された分散液として得られる。
【0128】
また、二次電池セパレータ用コート材には、必要により、親水性樹脂、増粘剤、湿潤剤、消泡剤、pH調整剤などの添加剤を、適宜の割合で配合することができる。
【0129】
これら添加剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0130】
上記の二次電池セパレータ用コート材は、上記の二次電池セパレータ用コート材原料を含むため、耐熱性および透気性に優れる二次電池セパレータを得られる。
【0131】
そして、この二次電池セパレータ用コート材は、二次電池セパレータのコート材として、好適に用いることができる。
【0132】
本発明の二次電池セパレータは、多孔膜を準備する工程、および、多孔膜の少なくとも片面に、上記のセパレータ用コート材を塗布する工程を備える製造方法により製造することができる。
【0133】
多孔膜を準備する工程では、多孔膜を準備する。
【0134】
多孔膜は、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン多孔膜、例えば、芳香族ポリアミド多孔膜などが挙げられ、好ましくは、ポリオレフィン多孔膜が挙げられる。多孔膜は、必要に応じて、表面処理されていてもよい。表面処理としては、例えば、コロナ処理およびプラズマ処理が挙げられる。
【0135】
多孔膜の厚みは、例えば、1μm以上、好ましくは5μm以上であり、また、例えば、40μm以下、好ましくは20μm以下である。
【0136】
次いで、多孔膜の少なくとも片面に、上記のセパレータ用コート材を塗布する工程では、多孔膜の少なくとも片面に、上記のセパレータ用コート材の分散液を塗布し、その後、必要により、乾燥させ、これにより塗布膜を得る。
【0137】
塗布方法としては、特に制限がなく、例えば、グラビアコーター法、小径グラビアコーター法、リバースロールコーター法、トランスファロールコーター法、キスコーター法、ディップコーター法、マイクログラビアコート法、ナイフコーター法、エアドクタコーター法、ブレードコーター法、ロッドコーター法、スクイズコーター法、キャストコーター法、ダイコーター法、スクリーン印刷法、スプレー塗布法などが挙げられる。
【0138】
乾燥条件として、乾燥温度は、例えば、40℃以上であり、また、例えば、80℃以下である。
【0139】
塗布膜の厚みは、例えば、1μm以上、好ましくは、3μm以上であり、また、例えば、10μm以下、好ましくは、8μm以下である。
【0140】
これにより、多孔膜と、多孔膜の少なくとも片面に配置される上記した二次電池セパレータ用コート材の塗布膜とを備えた二次電池セパレータが製造される。
【0141】
なお、上記した説明では、多孔膜の少なくとも片面に、二次電池セパレータ用コート材の塗布膜を配置したが、多孔膜の両面に、上記の塗布膜を配置することもできる。
【0142】
上記の二次電池セパレータは、上記の二次電池セパレータ用コート材の塗布膜を備えるため、耐熱性および透気性に優れる。
【0143】
また、上記の二次電池セパレータの製造方法によれば、耐熱性および透気性に優れる二次電池セパレータを、効率よく製造できる。
【0144】
そして、この二次電池セパレータは、二次電池のセパレータとして、好適に用いることができる。
【0145】
本発明の二次電池は、正極と、負極と、正極および負極の間に配置される上記の二次電池セパレータと、正極、負極および上記の二次電池セパレータに含浸される電解質とを備える。
【0146】
正極としては、例えば、正極用集電体と、正極用集電体に積層される正極活物質とを備える公知の電極が用いられる。
【0147】
正極用集電体としては、例えば、アルミニウム、チタン、ステンレス鋼、ニッケル、焼成炭素、導電性高分子、導電性ガラスの導電材料などが挙げられる。
【0148】
正極活物質としては、特に制限されないが、例えば、リチウム含有遷移金属酸化物、リチウム含有リン酸塩、リチウム含有硫酸塩など、公知の正極活物質が挙げられる。
【0149】
これら正極活物質は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0150】
負極としては、例えば、負極用集電体と、負極用集電体に積層される負極活物質とを備える公知の電極が用いられる。
【0151】
負極用集電体としては、例えば、銅やニッケルの導電材料などが挙げられる。
【0152】
負極活物質としては、特に制限されないが、グラファイト、ソフトカーボン、ハードカーボンなどの炭素活物質などが挙げられる。
【0153】
これら負極活物質は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0154】
電解質として、二次電池として、リチウムイオン電池が採用される場合には、例えば、リチウム塩が、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、エチルメチルカーボネート(EMC)などのカーボネート化合物に溶解された溶液が挙げられる。
【0155】
そして、二次電池を製造するには、例えば、二次電池のセパレータを、正極と、負極との間に挟み込み、これらを電池筐体(セル)に収容して、電解質を電池筐体に注入する。
【0156】
これにより、二次電池を得ることができる。
【0157】
上記の二次電池は、上記の二次電池セパレータを備えているため、耐熱性および透気性に優れ、その結果、耐久性および発電効率に優れる。
【実施例
【0158】
以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。また、以下の記載において特に言及がない限り、「部」および「%」は質量基準である。
【0159】
1.二次電池セパレータ用コート材原料の調製
【0160】
製造実施例1
【0161】
攪拌機、還流冷却付きのセパラブルフラスコに、蒸留水を392.0部仕込み、窒素ガスで置換した後、80℃に昇温した。次いで、過硫酸アンモニウムを0.6部添加してから下記モノマー組成物を3時間かけて連続的に添加し、さらに3時間保持して、アンモニア水にてpH9.0に調整して、重合を完結させた。水を適量加え、固形分が15.0%である水溶性ポリマーの水溶液を得た。
【0162】
メタクリルアミド95.0部
【0163】
メタクリル酸5.0部
【0164】
25%アンモニア水5.0部
【0165】
蒸留水500.0部
【0166】
また、得られた水溶液に含まれる水溶性ポリマーの重量平均分子量を、GPC装置(装置名:P KP-22、フロム社製)を用いて求めた。
【0167】
なお、測定条件は下記の通りであり、標準ポリエチレングリコール/ポリエチレンオキサイド換算により重量平均分子量を求めた。
【0168】
・サンプル濃度:0.1(w/v)%
【0169】
・サンプル注入量:100μL
【0170】
・溶離液:0.2M NaNO/アクリロニトリル(AN)=90/10
【0171】
・流速:1.0ml/min
【0172】
・測定温度:40℃
【0173】
・カラム:ShodexohPAK SB-806M HQ×2
【0174】
また、得られた水溶液に含まれる水溶性ポリマーのガラス転移温度(Tg)を、下記のFOX式により算出した。
【0175】
1/Tg=W/Tg+W/Tg+・・・+W/Tg(1)
[式中、Tgは共重合体のガラス転移温度(単位:K)、Tg(i=1、2、・・・n)は、単量体iが単独重合体を形成するときのガラス転移温度(単位:K)、W(i=1、2、・・・n)は、単量体iの全単量体中の質量分率を表す。]
製造実施例2~製造実施例5、および、製造比較例1~製造比較例6
【0176】
配合処方を、表1の記載に従って変更した以外は、製造実施例1と同様に処理して、セパレータ用コート材原料を製造した。また、製造実施例1と同様に、水溶性ポリマーの重量平均分子量を測定し、水溶性ポリマーのガラス転移温度を算出した。
【0177】
2.二次電池セパレータ用コート材および二次電池セパレータの製造
【0178】
実施例1
【0179】
顔料として、水酸化酸化アルミニウム(大明化学社製、ベーマイトGradeC06、粒子径:0.7μm)100質量部、分散剤として、ポリカルボン酸アンモニウム水溶液(サンノプコ社製、SNディスパーサント5468)3.0質量部(固形分換算)を、110質量部の水に均一に分散させて顔料分散液を得た。次いで、この顔料分散液に製造実施例1で製造した水溶液を、固形分換算で5質量部となるよう添加し、更に固形分が40%となるよう水を加えて調整し、15分間撹拌して二次電池セパレータ用コート材を調製した。
【0180】
一方、ポリオレフィン樹脂多孔膜の表面を、コロナ処理した。より具体的には、ポリオレフィン樹脂多孔膜として、品番SW509C+(膜厚9.6μm、空隙率40.6%、透気度158g/100ml、面密度5.5g/m、常州星源新能源材料有限公司)を準備した。次いで、ポリオレフィン樹脂多孔膜の表面を、A4サイズにカットし、その後、ポリオレフィン樹脂多孔膜の表面を、スイッチバック自動走行式コロナ表面処理装置(ウェッジ株式会社製)により、出力0.15KW、搬送スピード3.0m/s×2回、および、コロナ放電距離9mmの条件で、コロナ処理した。
【0181】
次いで、ワイヤーバーを用いて、コロナ処理したポリオレフィン樹脂多孔膜の表面に、上記の二次電池セパレータ用コート材を塗工した。塗工後、50℃で乾燥することにより、ポリオレフィン樹脂多孔膜の表面に5μmの塗布膜を形成した。
【0182】
これにより、二次電池セパレータを製造した。
【0183】
実施例2~実施例5、および、比較例1~比較例6
【0184】
製造実施例1で製造した水溶液に代えて、製造実施例2~製造実施例5、および、製造比較例1~製造比較例6で製造した水溶液を用いた以外は、実施例1と同様に処理して、二次電池セパレータを製造した。
【0185】
比較例7
【0186】
製造実施例1で製造した水溶液に代えて、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC、第一工業製薬株式会社製商品名セロゲン3H、重量平均分子量約11万)を用いた以外は、実施例1と同様に処理して、二次電池セパレータを製造した。
【0187】
3.評価
【0188】
(耐熱性)
各実施例および各比較例の二次電池セパレータを5cm×5cmに切り出し、これを試験片とした。この試験片を150℃×1時間オーブン内に放置した後、各辺の長さを測定し、熱収縮率を算出した。また、耐熱性に関して次の基準で優劣を評価した。その結果を表1に示す。
【0189】
A:熱収縮率が15%未満であった。
【0190】
B:熱収縮率が15%以上25%未満であった。
【0191】
C:熱収縮率が25%以上60%未満であった。
【0192】
D:熱収縮率が60%以上であった。
【0193】
(イオン透過性)
各実施例および各比較例の二次電池セパレータについて、旭精工社製の王研式透気度平滑度試験機により、JIS-P-8117に準じて測定した透気抵抗度を求めた。透気抵抗度が小さいほど、イオン透過性に優れると評価した。また、イオン透過性に関して次の基準で優劣を評価した。その結果を表1に示す。
【0194】
A:透気抵抗度が180s/100mL未満であった。
【0195】
B:透気抵抗度が180s/100mL以上220s/100mL未満であった。
【0196】
C:透気抵抗度が220s/100mL以上300s/100mL未満であった。
【0197】
D:透気抵抗度が300s/100mL以上であった。
【0198】
【表1】
【0199】
なお、表中の略号の詳細を下記する。
【0200】
Mam:メタクリルアミド
【0201】
Mac:メタクリル酸
【0202】
HEMA:2-ヒドロキシエチルメタクリレート
【0203】
AM:アクリルアミド
【0204】
なお、上記発明は、本発明の例示の実施形態として提供したが、これは単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。当該技術分野の当業者によって明らかな本発明の変形例は、後記特許請求の範囲に含まれるものである。
【産業上の利用可能性】
【0205】
本発明の二次電池セパレータ用コート材は、二次電池が要求される各種産業分野において、好適に用いられる。