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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】熱膨脹係数の低いガラス繊維
(51)【国際特許分類】
   C03C 13/02 20060101AFI20231219BHJP
【FI】
C03C13/02
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022536657
(86)(22)【出願日】2021-12-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-30
(86)【国際出願番号】 CN2021142138
(87)【国際公開番号】W WO2022148275
(87)【国際公開日】2022-07-14
【審査請求日】2022-06-14
(31)【優先権主張番号】202110010617.1
(32)【優先日】2021-01-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】519433171
【氏名又は名称】タイシャン ファイバーグラス インク
【氏名又は名称原語表記】TAISHAN FIBERGLASS INC.
【住所又は居所原語表記】Dawenkou Industrial Zone, Daiyue District, Taian City, Shandong, China
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】唐 志▲尭▼
(72)【発明者】
【氏名】李 永▲艶▼
【審査官】酒井 英夫
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-518449(JP,A)
【文献】特表2016-529409(JP,A)
【文献】特表2010-535145(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104261686(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 1/00-14/00,
INTERGLAD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱膨脹係数の低いガラス繊維であって、重量パーセントで次の成分、
SiO 55.0~63.0%、
Al17.5~25.0%、
MgO 9.0~16.5%、
2.0~9.0%、
ZnO 0.1~4.5%、
TiO 0.1~4.0%、
ZrO 0.1~3.0%、
0.1~2.0%、
LiO 0.1~2.0%と
その他の避けられない不純物をマージンとして構成しており、
TiO+ZrO+HfOが 1.0~5.0%であり、
ZnO/(TiO+ZrO+H)が 0.5~1.5であり、
SiO+Bが ≧59%である、ことを特徴とする熱膨脹係数の低いガラス繊維。
【請求項2】
重量パーセントで次の成分、
SiO 57.0~62.0%、
Al 18.5~23.0%、
MgO 9.5~13.0%、
3.0~7.0%、
ZnO 1.5~4.0%、
TiO 0.5~2.0%、
ZrO 0.3~2.0%、
0.2~1.5%、
LiO 0.5~2.0%と
その他の避けられない不純物をマージンとして構成する、ことを特徴とする請求項1に記載の熱膨脹係数の低いガラス繊維。
【請求項3】
ZnO、TiO、ZrO及びHの含量の合計は2.0~8.0%である、ことを特徴とする請求項1または2に記載の熱膨脹係数の低いガラス繊維。
【請求項4】
ZnO/(TiO+ZrO+H)は0.5~1.1である、ことを特徴とする請求項3に記載の熱膨脹係数の低いガラス繊維。
【請求項5】
SiOとBの含量の合計は61%以上である、ことを特徴とする請求項1または2に記載の熱膨脹係数の低いガラス繊維。
【請求項6】
SiOとAlの含量の合計は80%以下である、ことを特徴とする請求項1または2に記載の熱膨脹係数の低いガラス繊維。
【請求項7】
前記ガラス繊維の膨脹係数は2.77×10-6/℃~2.98×10-6/℃の間である、ことを特徴とする請求項1に記載の熱膨脹係数の低いガラス繊維。
【請求項8】
前記ガラス繊維の繊維成形温度は1330℃~1365℃の間である、ことを特徴とする請求項1に記載の熱膨脹係数の低いガラス繊維。
【請求項9】
前記ガラス繊維の結晶化上限温度は1280℃~1325℃の間である、ことを特徴とする請求項1に記載の熱膨脹係数の低いガラス繊維。
【請求項10】
前記ガラス繊維の弾性係数は93GPa以上である、ことを特徴とする請求項1に記載の熱膨脹係数の低いガラス繊維。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス繊維の技術分野、特に、熱膨脹係数の低いガラス繊維に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス繊維の応用はますます広い見通しを持っているが、現在、殆どのガラスシリーズの熱膨脹係数が高いため、電子プリント回路基板(PCB)や自動車工業などの高精度部品への需要が制限されている。熱膨脹係数は、ガラス繊維の重要な熱学的性質であり、ガラス繊維の化学組成に大きく依存している。
【0003】
一般的なガラス繊維シリーズにおいて、Sシリーズのガラスの膨脹係数は約4.0×10-6/℃であり、Dガラスの膨脹係数は約3.5×10-6/℃である。Sシリーズのガラス及びDガラスの膨脹係数は、何れも大きくて高精度部品の需要を満たすことができない。
【0004】
Tガラスの膨脹係数は低いが、TガラスにおけるSiO及びAlの含量が非常に高く(89%以上)、1000ポイズでのTガラスの温度が1460℃を超えており、1000ポイズでの温度と液相線の温度の差(動作温度範囲)が非常に小さいため、加工が非常に難しく、繊維形成率が低くて、工業用途には適さない。
【0005】
中国特許CN103347831Aは、熱膨脹係数が3.0×10-6/℃~3.6×10-6/℃で、繊維成形温度が約1365℃~1400℃で、結晶化上限温度が約1320℃~1370℃で、膨脹係数の低いガラス繊維の組成物及びそれを用いたガラス繊維を開示している。該特許に開示されたガラス繊維の膨脹係数は下がっているものの、それでも高い要求に応えるには不十分である。また、当該ガラス繊維は、弾性率が比較的に低く、繊維成形温度及び結晶化上限温度が依然として比較的に高い。
【0006】
したがって、より高い需要を満たせるためには、ガラス繊維の膨脹係数をさらに下げるとともに、十分な弾性係数を維持することが急務である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ガラス繊維の膨脹係数が十分に低くなくて、製造が困難であり、弾性係数などの機械的性能が、同時に要件を満たすことができない、という従来技術の欠点を補い、従来技術の問題点を解決するために、本発明は、熱膨脹係数の低いガラス繊維を提供する。本発明において、SiO、Al及びMgOが主な三元系であり、この体系では、SiOとAlの含量を制御し、B、ZnO、TiO、ZrO、H及びLiOを添加し、CaO、KO及びNaO成分は確かに添加しない。ガラスの成形過程において、ZnOとTiO、ZrO、Hとがネットワークの本体間で配位補完効果が存在するため、ZnO、TiO、ZrO及びHの含量とZnO/(TiO+ZrO+H)の割合が一定の範囲内にある場合、相乗作用が可能になり、熱膨脹係数を著しく下げると共に、弾性係数を93GPa以上で確保することができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の技術的解決策は、熱膨脹係数の低いガラス繊維が、重量パーセント計で次の成分、SiO55.0~63.0%、
Al17.5~25.0%、
MgO9.0~16.5%、
2.0~9.0%、
ZnO0.1~4.5%、
TiO0.1~4.0%、
ZrO 0.1~3.0%、
HfO 0.1~2.0%、
LiO 0.1~2.0%と
その他の避けられない不純物をマージンとして構成しており、
うち、TiO+ZrO+H1.0~5.0%
ZnO/(TiO+ZrO+H) 0.5~1.5
SiO+B≧59%である。
【0009】
好ましい実施例として、前記熱膨脹係数の低いガラス繊維は、重量パーセント計で以下の成分、SiO 57.0~62.0%、
Al18.5~23.0%、
MgO9.5~13.0%、
3.0~7.0%、
ZnO1.5~4.0%、
TiO0.5~2.0%、
ZrO 0.3~2.0%、
0.2~1.5%、
LiO 0.5~2.0%、
Fe≦0.3%と
その他の避けられない不純物をマージンとして構成する。
【0010】
好ましい実施例として、ZnO、TiO、ZrO及びHの含量の合計が2.0~8.0%である。
【0011】
さらに好ましい実施例として、ZnO/(TiO+ZrO+H)は0.5~1.1である。
【0012】
好ましい実施例として、SiOとBとの含量の合計が61%以上である。
【0013】
好ましい実施例として、SiOとAlとの含量の合計は80%以下である。SiOとAlとの含量の合計が高すぎると、清澄温度が上昇し、加工が困難になる。
【0014】
好ましい実施例として、前記ガラス繊維の膨脹係数は2.77×10-6/℃~2.98×10-6/℃の間である。
【0015】
好ましい実施例として、前記ガラス繊維の繊維成形温度は1330℃~1365℃の間である。
【0016】
好ましい実施例として、前記ガラス繊維の結晶化上限温度は1280℃~1325℃の間である。
【0017】
好ましい実施例として、前記ガラス繊維の弾性係数は93GPa以上である。
【0018】
本発明のガラス繊維における各成分の説明は、以下のとおりである。
【0019】
SiOは、ガラスグリッドを形成する基本成分であり、Si-O結合の結合強度が大きく安定しており、膨脹係数が非常に小さくて10-7桁に達することができるため、低膨脹ガラスの組成物で最大の割合を占める元素でもある。また、ガラスの機械的強度、化学的安定性及び熱安定性を効果的に向上させる。しかし、溶融温度が高くて繊維成形が難く、適当な含量のみが最高の性能を提供できる。本発明のガラス繊維体系において、SiOの含量は55%~63%であり、好ましくは57%~62%である。
【0020】
は、膨脹係数が低く、フラックス性が良好で、高温溶融条件下でホウ素-酸素三角形として存在するため、ガラスの高温粘度を減少させガラスの清澄温度を下げることができる。低温ガラス状態の場合、ホウ素-ケイ素四面体を形成する傾向は、構造をよりコンパクトにし、ガラスの膨脹係数を下げる。SiOを、適量のBに置き換えることによって、熱膨脹係数を下げるとともに、ガラスの粘度及び清澄温度を下げ、ガラスの溶融及び低気泡率を確保することができる。しかし、酸化ホウ素は、ガラス液を相分離しやすく、同時に揮発しやすくて、揮発物質が耐火材料を腐食する。本発明は、Bの含量が2.0%~9.0%であり、好ましい範囲が3.0%~7.0%であると決定する。
【0021】
Alは、ネットワークの中間体に属し、少量のAl3+を投入すると非架橋酸素を捕捉して、アルミニウム-酸素四面体を形成してシリコン-酸素ネットワークに入り、ガラス構造をコンパクトにして、膨脹係数を下げ、弾性係数を向上させる。ただし、アルミニウム-酸素四面体[AlO]は、シリコン-酸素四面体より体積が大きく、構造が緩いため、Alの含量が多いほど膨脹係数が増加する。したがって、本発明のガラス繊維体系に投入するAlの含量は17.5%~25.0%であり、より好ましい範囲は18.5%~23.0%である。
【0022】
MgOは、外体ネットワークの酸化物に属し、膨脹係数が低く、そのイオン半径が相対的に小さいため、よりコンパクトなガラスネットワーク構造を形成し、ガラスの膨脹係数を下げ、ガラス係数を向上させる。しかし、MgOの含量が多すぎると、結晶化上限温度及び結晶化速度が著しく上昇するため、本発明のガラス繊維体系におけるMgOの含量の範囲は9.0%~16.5%であり、好ましい範囲は9.5%~13.0%である。
【0023】
ZnOは、ガラスの膨脹係数が低いだけでなく、フラックスとしても機能できる。適量を添加すると、ガラス組成物の溶融と清澄化を効果的に改善できる。一定の範囲内で、ZnOの含量が多いほど膨脹係数は小さくなる。Znは、ネットワーク構築に関与する亜鉛-酸素四面体[ZnO]、または、ネットワーク外の亜鉛-酸素八面体[ZnO]であり得る2つの配位状態を有する。ZnOが少ない場合、添加されたZnOは、体系内の「遊離酸素」を捕捉して配位数が4に変わり、ネットワーク形成に関与し、ガラス構造を強化し、ネットワークの接続度を向上させ、安定性を高めることでガラスの膨脹係数を下げることができる。ZnOの添加量が一定値を超えると、ZnO含量の増加に伴いガラス内の遊離酸素含量が減少し、[ZnO]/[ZnO]の割合が低下し、ガラスネットワーク構造が破壊され、ガラスの安定性が低下して膨脹係数を増加させる。したがって、本発明において、ZnOの含量の範囲は0.1%~4.5%であり、より好ましい範囲は1.5%~4.0%である。
【0024】
TiOは、中間体の酸化物であり、本発明のガラス体系に含まれるTiOの大部分は、チタン-酸素四面体[TiO]形でネットワーク構造に入り、ごく一部は[TiO]八面体形で構造外に存在する。ネットワークにおける[TiO]は、切断されたネットワークを修復するのに十分な遊離酸素を吸収する。Zr4+は、結合強度が強く配位が高い。本発明のガラス体系において、ZrOは、ネットワークの外体である立方体[ZrO]構造である。H及びZrは、周期表の同じ亜族及び隣接する周期に位置し、Hf4+のイオン半径はZr4+のイオン半径より大きく、本発明のガラス体系において[Hf]立方体の構造である。高い結合強度と配位を備えたZr4+及びHf4+は、ネットワークの空隙に位置して、周囲のSi-O及びB-Oネットワークに蓄積され、膨脹係数を下げる。TiO自体が着色能力を有するため、本発明におけるTiOの含量は0.1%~4.0%に決定し、より好ましい範囲は0.5%~2.0%である。色相が要求される材料分野では、その使用量を可能な限り減らすことができ、ZrOまたはHでTiOを置き換えることができる。ZrOの含量は0.1%~3.0%、好ましい範囲は0.3%~2.0%に限定する。Hの含量は0.1%~2.0%、好ましくは0.2%~1.5%に限定する。
【0025】
LiO:Liは、不活性ガスタイプのイオンに属しておらず、構造内で「蓄積」の役割を果たす。LiでK及びNaを置き換えると、ガラスの化学的安定性を向上させることができる。これは、高温でフラックス及びガラスの溶融を加速させる機能がある。Liの含量が多すぎると、蓄積効果が強すぎてガラス相分離を招く可能性がある。本発明のガラス体系において、添加するLiOの主な機能は、ガラスの清澄温度、成形温度及び結晶化上限温度を低下させることである。本発明では、LiOの含量の範囲が0.1%~2.0%、好ましくは0.5%~2.0%である。
【0026】
本発明のガラス繊維体系は、CaO、KO及びNaOを含まない。これは、上記の3つの元素が確かに膨脹係数を増加させる傾向があり、CaOはネットワークの外体に属し、Ca2+は分極架橋酸素及びSi-O結合の弱体化効果を有するためである。これらは、膨脹係数を向上させる原因になる。KO及びNaOは、ガラスで一般的なアルカリ金属酸化物であり、主に構造内でネットワーク(Si-O結合)を切断する役割を果たしているため、膨脹係数も増加させる。したがって、本発明では、CaO、KO及びNaOを含む成分の添加は禁止する。
【0027】
SiO 及びBの2つの成分は、ガラスの基本ネットワーク構造を確保し、両方とも膨脹係数の低い特性があるため、本発明では、SiO+B≧59.0、より好ましくはSiO+B≧61%に限定する。
【0028】
本発明において、SiO、Al及びMgOが主な三元系であり、この体系においてSiO及びAlの含量を制御し、B、ZnO、TiO、ZrO、H及びLiOを添加し、CaO、KO及びNaO成分を明らかに添加しない。実験では、本発明のガラス体系にZnO、TiO、ZrO及びHを添加することは、その中の1つまたは2つを使用するよりも優れた効果を有すると実証された。また、ZnO、TiO、ZrO及びHの含量とZnO/(TiO+ZrO+HfO)の割合範囲を合理的に制御し、他の成分の含量範囲を最適化すれば、本発明のガラス繊維の膨脹係数が著しく下がると共に、弾性係数を再び93GPa以上で確保することができる。発明者は、ガラス形成の過程において、ZnOとTiO、ZrO及びHとがネットワークの本体間で配位補完効果が存在し、ZnO、TiO、ZrO及びHの含量を合理的に制御し、ZnO/(TiO+ZrO+H)の割合が一定の範囲内にある場合、相乗作用が可能になり、熱膨脹係数を下げ、前記の範囲を超えると、本発明のガラス体系の熱膨脹係数を下げる作用が比較的に小さくなると認めた。
【発明の効果】
【0029】
本発明の有益な効果は、次のとおりである。
1、本発明の膨脹係数の低いガラス繊維は、CaO、KO及びNaO成分を添加せず、同時にB、ZnO、TiO、ZrO及びHを添加して、各元素の割合を最適化することにより、本発明のガラス繊維の膨脹係数を大幅に下げる。本発明のガラス繊維の膨脹係数は2.77×10-6/℃と低い。
【0030】
2、本発明の膨脹係数の低いガラス繊維は、低膨脹係数を確保しながら弾性係数を93GPa以上に達するように維持し、高精度部品の需要に適用される。
【0031】
3、本発明の膨脹係数の低いガラス繊維は、成形温度(lg3.0)が1330℃~1365℃であり、結晶化上限温度が1280℃~1325℃であり、結晶化速度が低い。伸線成形温度と結晶化上限温度の差は、ΔT>43℃で、伸線工程の要件を満たしており、大規模生産が可能である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明の実施形態における技術的解決策は、以下に明確かつ完全に説明され、説明された実施形態は、本発明の全ての実施形態ではなく実施形態の一部にすぎない。本発明の実施形態に基づいて、創造的な努力なしに当業者によって獲得された他のすべての実施形態は、本発明の保護範囲に属するものとする。
【0033】
熱膨脹係数の低いガラス繊維の製造工程には、以下のステップが含まれる。
【0034】
(1)実施式に従って必要な各原材料の質量を計算し、式の要件に従って各原料を混合し均質化した後に得られた、粒子グラデーションが要件に合致する配合材料をキルンヘッドサイロに移送してから、材料投入器を使用して配合材料を均一な速度で全電気溶解炉内に投入する。
【0035】
(2)混合された配合材料は、全電気溶解炉内で溶融して清澄化される。
【0036】
(3)ガラス液を、リークプレートのリークノズルから引き出してガラス繊維を形成する。
【0037】
(4)ガラス繊維を伸線機に牽引して巻き取り、伸線して元の糸または糸の群を形成する。
【0038】
【表1】
【0039】
本発明は、異なる粒度及び粗い粒子のグラデーションを有する原材料を用いて、一方で、原材料の破砕及び粉砕の加工コストを低減し、他方で、原材料を溶融させる時に発生する気泡が排出されやすくなり、ガラス液の清澄化に役立ち、繊維の中空率が低い。ガラス液中の気泡の排出に効果的である。
【0040】
本発明は、全電気溶解炉を使用することにより、溶解炉の溶融温度を上昇させ、エネルギー利用率を向上させ、排気ガスの排出を減らし、溶解炉に対する過酷な要件を低減した。酸化ホウ素は、高温で揮発しやすいため、本発明のガラス体系における酸化ホウ素の含量が高い特性には、全電気溶融がより適している。
【0041】
表2は、本発明の実施形態による熱膨脹係数の低いガラス繊維を示す。表3は、各比較例におけるガラス繊維の組成を示す。
【0042】
【表2】
【0043】
【表3】
【0044】
実施例と比較例のガラス繊維の総合的な性能を検証する際に、次のパラメータを選択する。
【0045】
1)膨脹係数
サンプル調製:式に従ってガラス液体を溶かし、金型に注ぎ、カッターで4*4*25.4mmのストリップサンプルに切断する。
【0046】
室温(25℃)と300℃の間の熱膨脹係数は、Linseis DIL-75垂直熱膨脹計を使用して測定する。
【0047】
2)ガラス繊維の成形温度(lg3.0)は、ガラスの粘度が1000ポイズときの温度である。
【0048】
3)清澄温度は、粘度が100ポイズときの温度である。
【0049】
4)ガラスの液相線温度は、すなわち、ガラスが結晶化し始める臨界温度であり、一般的にガラスの結晶化温度の上限である。
【0050】
5)ΔTは、成形温度と液相線温度の差である。
【0051】
6)弾性係数は、ASTM D2343規格に従って万能電子試験機で測定する。
【0052】
表4は、各実施例と比較例のガラス繊維性能のパラメータを示す。
【0053】
【表4】
【0054】
表4から、次のことがわかる。
1.実施例1及び実施例10から、チタン、ジルコニウム、ハフニウムの含量の割合が一定の範囲にある場合、ガラス繊維の膨脹係数は著しく低下し、ハフニウムの含量が少ない場合、ガラス繊維の膨脹係数が増加することが分かる。
【0055】
2.実施例1と比較例1、比較例2及び比較例3から、ガラス繊維の「チタンをジルコニウムとハフニウムに置き換え」または「ジルコニウムをチタンとハフニウムに置き換え」または「ハフニウムをチタンとジルコニウムに置き換え」れば、成形温度、清澄温度及び液相線温度の変化は明らかではないが、膨脹係数が著しく上昇し、弾性係数が低くなる傾向があることが分かる。
【0056】
3.実施例1と比較例4から、亜鉛の一部をマグネシウムに置き換えて、亜鉛とチタン-ジルコニウム-ハフニウムの合計との割合が小さすぎる(0.32)場合、成形温度及び清澄温度の変化は大きくないが、膨脹係数は大きく増加することが分かる。
【0057】
4.実施例1と比較例5から、チタン-ジルコニウム-ハフニウムの一部を亜鉛と置き換え、亜鉛とチタン-ジルコニウム-ハフニウムの合計との割合が大きすぎる(1.76)場合、成形温度及び清澄温度の変化は大きくないが、液相線温度の上昇が顕著になり、また膨脹係数が大きく増加することが分かる。
【0058】
5.実施例1と比較例6、比較例7及び比較例8から、チタン-ジルコニウム-ハフニウムの全てをホウ素と亜鉛に置き換える場合、または、チタン-ジルコニウム-ハフニウムの全てをシリコン-アルミニウムに置き換える場合、または、チタン-ジルコニウム-ハフニウムの全てをホウ素に置き換える場合、すなわち、チタン-ジルコニウム-ハフニウムの含量が0である場合、ガラス繊維の膨脹係数が著しく増加し、液相線温度が著しく上昇し、作動温度範囲が著しく減少し、弾性係数も減少する傾向があることが分かる。
【0059】
6.比較例9、比較例10及び比較例11は、いずれも従来ガラス繊維の種類であり、Sガラス及びEガラスは、膨脹係数が非常に大きいが、Tガラスは、シリコン-アルミニウム含量が非常に高く、膨脹係数が低くなっているが、成形温度及び清澄化温度が非常に高く、また作動温度範囲が小さくて、加工が非常に難しい。
【0060】
上記の実験結果によると、発明者は、ZnOとTiO、ZrO及びHがガラス繊維の膨脹係数に非常に重要な影響を及ぼすと認めている。これは、ガラス形成過程で、ZnOとTiO、ZrO及びHとがネットワークの本体間で配位補完効果が存在し、ZnOとTiO、ZrO及びHの含量を合理的に制御し、ZnO/TiO+ZrO+H)の割合が一定の範囲内にある場合、相乗作用が可能になり、熱膨脹係数を下げることができるが、一定の範囲を超えると、ガラス繊維の熱膨脹係数を下げる効果は比較的に小さくなる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明の膨脹係数の低いガラス繊維は、CaO、KO及びNaO成分を添加せず、同時にB、ZnO、TiO、ZrO及びHを添加し、各元素の割合を最適化することによって、ガラス繊維の膨脹係数を著しく減少させ、弾性係数が93GPa以上に達し、高精度部品の要求に適する。前記膨脹係数の低いガラス繊維は、成形温度(lg3.0)が1330℃~1365℃であり、結晶化上限温度が1280℃~1325℃であり、結晶化速度が低い。伸線成形温度と結晶化上限温度の差がΔT>43℃で、伸線工程の要件を満たしており、大規模生産が可能である。