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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】空気供給システム
(51)【国際特許分類】
   B60T 17/00 20060101AFI20231219BHJP
   F04B 39/16 20060101ALI20231219BHJP
   F04B 49/02 20060101ALI20231219BHJP
   B01D 53/26 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
B60T17/00 B
F04B39/16 F
F04B49/02 331Z
B01D53/26 230
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2023069782
(22)【出願日】2023-04-21
(62)【分割の表示】P 2018246459の分割
【原出願日】2018-12-28
(65)【公開番号】P2023099546
(43)【公開日】2023-07-13
【審査請求日】2023-05-22
(73)【特許権者】
【識別番号】510063502
【氏名又は名称】ナブテスコオートモーティブ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106781
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 稔也
(72)【発明者】
【氏名】杉尾 卓也
【審査官】久慈 純平
(56)【参考文献】
【文献】特表2004-526628(JP,A)
【文献】特開2014-79757(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0251645(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 17/00
F04B 39/16
F04B 49/02
B01D 53/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンプレッサから送られた圧縮空気から水分除去する乾燥剤と
前記乾燥剤から前記コンプレッサとは反対方向に出力される空気の流れを許容する逆止弁とを有するエアドライヤを介して前記圧縮空気を上流から下流に流す供給動作を行う空気供給システムであって、
前記供給動作と、非供給動作とを切り替えるとともに、前記非供給動作に、前記圧縮空気を前記下流から前記上流に流すことで前記乾燥剤を再生する再生動作を含める制御装置を備え、
前記制御装置は、前回の再生動作開始前から今回の再生動作開始前までの前記供給動作における前記圧縮空気の通気量が所定の期間での再生に適した通気量である基準通気量に達していない場合には、前記再生動作を行わず、前記乾燥剤内にある前記圧縮空気を排出口から排出するパージ動作のみからなる前記非供給動作を行う
空気供給システム。
【請求項2】
前記制御装置は、前記コンプレッサの回転数を取得可能であり、前記通気量を前記コンプレッサの回転数に基づいて取得する
請求項1に記載の空気供給システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機器に圧縮空気を供給する空気供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
トラック、バス、建機等の車両においては、コンプレッサから送られる圧縮空気を利用して、ブレーキやサスペンション等の空気圧システムが制御されている。この圧縮空気には、大気中に含まれる水分やコンプレッサ内を潤滑する油分等の液状の不純物が含まれている。水分や油分を多く含む圧縮空気が空気圧システム内に入ると、錆の発生やゴム部材の膨潤等を招き、作動不良の原因となる。このため、コンプレッサの下流には、圧縮空気中の水分や油分等の不純物を除去するエアドライヤが設けられている。
【0003】
エアドライヤは、油水分を除去する除湿動作と、乾燥剤に吸着させた油水分を取り除き、油水分をドレンとして放出する再生動作とを行う。例えば、エアドライヤが再生動作を行うための技術の一例が特許文献1に記載されている。
【0004】
特許文献1に記載の空気供給システムは、コンプレッサが圧縮した空気をエアタンクに貯留する。エアタンク内の空気圧が第1圧力以下であるとき、空気圧が上昇して第2圧力に到達するまで、コンプレッサを駆動して圧縮空気をエアタンクに供給する。空気圧が第2圧力に到達したとき、コンプレッサによる圧縮空気のエアタンクへの供給を停止するとともに、排出弁(パージバルブ)を開弁する。その後、空気圧が第3圧力に低下するまでこの開弁状態を維持することによってエアタンク内の圧縮空気をエアドライヤに通過させて大気に排出する再生動作を行う。そして、エアタンク内の空気圧が第3圧力に到達したとき、排出弁を閉弁する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-229127号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、車両が下り坂を走行するときや車両が渋滞で減速や停車するときには、ブレーキの駆動等によってエアタンクの圧縮空気が消費される。ブレーキの駆動等による圧縮空気の消費は、コンプレッサの圧縮空気をエアタンクに供給させるエアドライヤの供給動作中や、エアタンクの圧縮空気を消費する再生動作中にも行われる。結果として、例えば、特許文献1に記載の技術等では、供給動作では、ブレーキの駆動等で消費された量を含めた圧縮空気が供給動作で供給されて、その供給動作後の再生動作では、エアドライヤの乾燥剤が除湿性能を十分に再生されないおそれがある。また、特許文献1に記載の技術等のように、再生動作が行われるか否かが空気圧で定められると、再生動作と同時にブレーキ等で圧縮空気が大量消費されて、再生動作の終了値まで空気圧が短時間のうちに低下してしまう。つまり、過剰な圧縮空気の供給が、エアドライヤに求められる除湿量を過大にしたり、再生動作中における圧縮空気の大量消費が、エアドライヤの再生量を不足させたりすることによって、エアドライヤの性能が低下するおそれがある。
【0007】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、エアドライヤの性能低下を抑制することのできる空気供給システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成する空気供給システムは、コンプレッサから圧縮空気を乾燥剤と逆止弁とを有するエアドライヤを介して上流から下流に流す供給動作を行う空気供給システムであって、前記供給動作と、非供給動作とを切り替えるとともに、前記非供給動作に前記乾燥剤を再生する再生動作を含める制御装置とを備え、前記制御装置は、前回の再生動作開始前から今回の再生動作開始前までの前記供給動作における前記圧縮空気の通気量が所定の期間での再生に適した通気量よりも多い、もしくは少なければ前記再生動作を行う時間の長さである再生期間を調整する。
【0009】
このような構成によれば、再生期間の長さが、供給動作における圧縮空気の通気量に基づいて所定の期間に対して調整される。これにより、空気供給システムにおいてエアドライヤの性能低下を抑制することができる。
【0010】
好ましい構成として、前記制御装置は、前記コンプレッサの回転数を取得可能であり、前記通気量を前記コンプレッサの回転数に基づいて取得する。
このような構成によれば、圧縮空気の通気量に基づいて再生期間の長さが調整される。
【0011】
好ましい構成として、前記制御装置は、前記通気量が基準とする基準通気量と比較して多いことに応じて、前記再生期間を前記所定の期間よりも長くなるように調整し、前記基準通気量と比較して前記通気量が少ないことに応じて、前記再生期間を前記所定の期間よりも短くなるように調整する。
【0012】
このような構成によれば、通気量と基準通気量との比較に基づいて所定の期間の長さの長短を調整することができる。
上記目的を達成する空気供給システムは、コンプレッサから圧縮空気を乾燥剤と逆止弁とを有するエアドライヤを介して上流から下流に流す供給動作を行う空気供給システムであって、前記供給動作と、非供給動作とを切り替えるとともに、前記非供給動作に前記乾燥剤を再生する再生動作を含める制御装置とを備え、前記制御装置は、前記供給動作が開始されてからの前記圧縮空気の通気量を前記再生動作の開始に応じてリセットするものであり、前記リセット前の前記通気量と前記再生動作が行われる所定の期間での再生に適した通気量との差分を前記リセット後の前記通気量に加算する。
【0013】
このような構成によれば、再生期間で再生不足となった通気量が、次回の通気量に加算されることになるので再生不足が累積的に蓄積されないようになる。よって、エアドライヤの性能低下を抑制することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、エアドライヤの性能低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】空気圧システムに用いられている空気供給システムの一実施形態の概略構成を示すブロック図。
図2】同実施形態における空気供給システムの概略構成を示す構成図。
図3】同実施形態におけるエアドライヤの動作モードを示す図であって、(a)は供給動作を示す図、(b)はパージ動作を示す図、(c)は再生動作を示す図。
図4】同実施形態における通気量と再生動作の延長時間との関係を示すグラフ。
図5】同実施形態における再生動作開始時の空気通気量の超過分を示すグラフ。
図6】同実施形態における再生動作開始時の空気圧の超過分を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1図6を参照して、空気圧システムに含まれる空気供給システムの一実施形態について説明する。空気供給システムは、トラック、バス、建機等の自動車に搭載されている。
【0017】
図1を参照して、空気圧システムの概要について説明する。
空気圧システムは、コンプレッサ4、エアドライヤ11、保護バルブ12、エアタンク13、ブレーキバルブ14、及びブレーキチャンバー15が、順次、各空気供給路4E,11E,12E,13E,14Eを介して接続されている。このうち、コンプレッサ4、エアドライヤ11、及び保護バルブ12は、空気供給システム10を構成する。
【0018】
コンプレッサ4は、自動車のエンジン(図示略)の動力によって駆動され、空気を圧縮して、空気供給システム10に供給する。コンプレッサ4に接続された空気供給路4Eには、エアドライヤ11が設けられている。
【0019】
エアドライヤ11では、コンプレッサ4から送られた圧縮空気が乾燥剤17(図2参照)を通過することによって、不純物が捕捉され、圧縮空気が清浄化される。このように清浄化された圧縮空気は、空気供給路11E、保護バルブ12及び空気供給路12Eを介して、エアドライヤ11からエアタンク13に供給される。
【0020】
エアタンク13は、空気供給路13Eを介して運転者によって操作されるブレーキバルブ14に接続されている。ブレーキバルブ14は、空気供給路14Eを介してブレーキチャンバー15に接続されている。よって、ブレーキバルブ14の操作に応じて、ブレーキチャンバー15に圧縮空気が供給され、サービスブレーキが作動する。
【0021】
また、空気供給システム10は、制御装置としてのECU80を備えている。ECU80は、配線E62,E63を介してエアドライヤ11に電気的に接続されている。また、ECU80は、配線E65を介して圧力センサ65に電気的に接続されている。圧力センサ65は、保護バルブ12における空気圧を検出してECU80に出力する。ECU80は、圧力センサ65の検出信号から、エアタンク13の空気圧に相当する検出空気圧を取得する。また、ECU80は、配線E66を介して温湿度センサ66に電気的に接続されている。温湿度センサ66は、エアタンク13の圧縮空気の湿度を検出してECU80に出力する。また、温湿度センサ66はエアドライヤ11の下流直後に配置することでエアタンク13の圧縮空気の湿度を検出してもよい。さらに、ECU80は、空気供給システム10を搭載する車両の各種信号を取得可能なように車両ECU100に電気的に接続されている。例えば、取得可能な信号には、コンプレッサの回転数が含まれている。
【0022】
ECU80は、演算部、揮発性記憶部、不揮発性記憶部を備えており、不揮発性記憶部に格納されたプログラムに従って、エアドライヤ11に各種動作を指示する信号等を与える。
【0023】
図2を参照して空気供給システム10について説明する。
エアドライヤ11は、メンテナンス用ポートP12を有している。メンテナンス用ポートP12は、メンテナンスの際にエアドライヤ11の乾燥剤17の上流に圧縮空気を供給するためのポートである。
【0024】
ECU80は、配線E63を介してエアドライヤ11の再生制御弁21に電気的に接続され、配線E62を介してエアドライヤ11のガバナ26に電気的に接続される。
エアドライヤ11は、内部11A(図3参照)に乾燥剤17を備えている。乾燥剤17は、上流側にあるコンプレッサ4からの空気供給路4Eと下流側にある保護バルブ12につながる空気供給路11Eとを接続する空気供給通路18の途中に設けられている。
【0025】
乾燥剤17は、シリカゲルやゼオライト等であって、圧縮空気を通過させることによって圧縮空気に含まれる水分を除去して乾燥させるとともに、圧縮空気に含まれる油分も除去して空気を清浄化する。乾燥剤17を通過した圧縮空気は、乾燥剤17からみて下流側への空気の流れのみを許容する逆止弁としてのチェックバルブ19を介して保護バルブ12へ供給される。つまり、チェックバルブ19は、乾燥剤17を上流、保護バルブ12を下流としたとき、上流から下流への空気の流れのみを許容する。
【0026】
チェックバルブ19には、チェックバルブ19を迂回(バイパス)するバイパス流路20がチェックバルブ19と並列に設けられている。バイパス流路20には、再生制御弁21が接続されている。
【0027】
再生制御弁21は、配線E63を介してECU80からの電源の入り切り(駆動/非駆動)で動作が切り換わる電磁弁である。再生制御弁21は、電源が切れた状態で閉弁してバイパス流路20を封止し、電源が入った状態で開弁してバイパス流路20を連通させる。例えば、再生制御弁21は、検出空気圧の値が供給停止値を越えたときに駆動される。
【0028】
バイパス流路20は、再生制御弁21と乾燥剤17との間にオリフィス22が設けられている。再生制御弁21が通電されると、保護バルブ12を介してエアタンク13の圧縮空気が、バイパス流路20を介してオリフィス22によって流量を規制された状態で乾燥剤17に送られる。乾燥剤17に送られた圧縮空気は、乾燥剤17の下流側から上流側に向けて乾燥剤17を逆流する。このような処理は、乾燥剤17を再生させる処理であり、ドライヤの再生処理という。このとき、エアタンク13内の乾燥及び清浄化された圧縮空気が、乾燥剤17を逆流することで、乾燥剤17に捕捉された水分及び油分が乾燥剤17から除去される。例えば、再生制御弁21は、所定の期間だけ開弁させられる。所定の期間は、乾燥剤17を再生させることのできる期間であって、論理的、実験的又は経験的に設定される。
【0029】
コンプレッサ4と乾燥剤17との間には、ドレン排出弁25に接続される分岐通路16が設けられている。分岐通路16の末端にはドレン排出口27が設けられている。
乾燥剤17から除去された水分及び油分を含むドレンは、圧縮空気とともにドレン排出弁25に送られる。ドレン排出弁25は、空気圧で駆動する空気圧駆動式の弁であって、空気供給通路18の分岐通路16において、乾燥剤17とドレン排出口27との間に設けられている。ドレン排出弁25は、閉弁位置及び開弁位置の間で位置を変更する2ポート2位置弁である。ドレン排出弁25は、開弁位置でドレンをドレン排出口27へ送る。ドレン排出口27から排出されたドレンは、図示しないオイルセパレータによって回収されてもよい。
【0030】
ドレン排出弁25は、ガバナ26によって制御される。ガバナ26は、配線E62を介してECU80からの電源の入り切り(駆動/非駆動)で動作が切り換わる電磁弁である。ガバナ26は、電源が入れられると、ドレン排出弁25にアンロード信号を入力することで、ドレン排出弁25を開弁させる。また、ガバナ26は、電源が切られると、ドレン排出弁25にアンロード信号を入力せずに大気圧とすることで、ドレン排出弁25を閉弁させる。
【0031】
ドレン排出弁25は、ガバナ26から所定の空気圧のアンロード信号が入力されていない状態で閉弁位置に維持され、ガバナ26からアンロード信号が入力されると開弁位置となる。また、ドレン排出弁25のコンプレッサ4側の入力ポートが上限値を超えて高圧になった場合、ドレン排出弁25が強制的に開弁位置に切り替えられる。
【0032】
コンプレッサ4は、ガバナ26によって圧縮空気を供給する負荷運転と、圧縮空気を供給しない無負荷運転との切り替えが制御される。ガバナ26は、電源が入れられると、コンプレッサ4にアンロード信号を送ることで、コンプレッサ4を無負荷運転とさせる。また、ガバナ26は、電源が切られると、コンプレッサ4にアンロード信号を入力せず大気圧とすることで、コンプレッサ4を負荷運転とさせる。
【0033】
ECU80は、圧力センサ65の検出空気圧に基づいて電源を入れる(駆動する)ことで、ガバナ26をアンロード信号が出力される供給位置にさせる。また、ECU80は、圧力センサ65(図1参照)の検出空気圧に基づいて電源を切る(非駆動にする)ことで、ガバナ26をアンロード信号が出力されない非供給位置にさせる。
【0034】
図3を参照して、エアドライヤ11の供給動作、パージ動作及び再生動作について説明する。供給動作は、圧縮空気をエアタンク13に供給する動作である。パージ動作は、パージ処理等のためにコンプレッサを停止させている動作である。再生動作は、乾燥剤17を再生処理する動作である。再生動作とパージ動作は、非供給動作を構成する。
【0035】
図3(a)を参照して、供給動作では、ECU80が再生制御弁21及びガバナ26をそれぞれ閉弁する(図において「CLOSE」と記載)。このとき、再生制御弁21及びガバナ26はそれぞれ、ECU80からの駆動信号(電源)が供給されない。よって、ガバナ26は下流側に接続されるコンプレッサ4のポート及びドレン排出弁25のポートをそれぞれ大気開放する。供給動作では、コンプレッサ4が圧縮空気を供給しており(図において「ON」と記載)、エアドライヤ11に供給された圧縮空気(図において「IN」と記載)は、水分、油分が乾燥剤17で除去されて、保護バルブ12を介してエアタンク13に供給される(図において「OUT」と記載)。
【0036】
図3(b)を参照して、パージ動作では、ECU80が再生制御弁21を閉弁し、ガバナ26を開弁する(図において「OPEN」と記載)。このとき、ガバナ26は、ECU80からの駆動信号(電源)が供給されることで開弁して、下流側に接続されるコンプレッサ4のポート及びドレン排出弁25のポートをそれぞれ上流側(保護バルブ12側)に接続する。パージ動作では、ガバナ26からのアンロード信号(図において「CONT」と記載)でコンプレッサ4が無負荷運転状態とされている(図において「OFF」と記載)とともに、乾燥剤17内や空気供給通路18にある圧縮空気が水分や油分等とともにドレン排出口27から排出される。
【0037】
図3(c)を参照して、再生動作では、ECU80が再生制御弁21及びガバナ26をそれぞれ開弁する。このとき、再生制御弁21及びガバナ26にECU80からの駆動信号(電源)が供給される。再生動作では、ガバナ26からのアンロード信号でコンプレッサ4が無負荷運転状態とされる。また、再生動作では、再生制御弁21とドレン排出弁25とが開弁されることで保護バルブ12側の圧縮空気が乾燥剤17を下流から上流に向けて逆流して、乾燥剤17の再生処理が行われる。つまり、乾燥剤17を下流から上流に流通した圧縮空気が水分や油分等とともにドレン排出口27から排出される。
【0038】
図4図6を参照して、空気供給システム10の動作について説明する。
ECU80には、コンプレッサ4による空気供給を開始させる空気圧である供給開始値CI(図6参照)と、コンプレッサ4による空気供給を停止させる空気圧である供給停止値CO(図6参照)とが設けられている。また、ECU80には、圧縮空気の通気量の基準とする基準通気量VO(図5参照)が設けられている。換言すると、基準通気量VOは、所定の期間での再生に適した通気量である。また、ECU80には、図4のグラフL1に示すように、圧縮空気の通気量が基準通気量VOを越えた差分に対して必要とされる延長時間Taが設定されている。ECU80は、所定の期間に延長時間Taを加えた長さを再生期間とする。つまり、延長時間Taを含む再生期間は圧縮空気の通気量で決めてもよい。ECU80には、所定の期間であるときの回復量(通気量換算値)、及び延長時間Taに対応する回復量(通気量換算値)が設定されている。例えば、圧縮空気の通気量が基準通気量VOを越えた分に対して、通気量に対して必要な再生時間がマップでの補間による補正時間により設定されている。ECU80には、所定の期間から補正された再生期間が設定されている。
【0039】
例えば、供給停止値CO、供給開始値CI、基準通気量VO、再生時間マップは、ECU80の不揮発性記憶部等に記憶されるとよい。なお、圧縮空気の通気量は、コンプレッサ4の累積回転数とコンプレッサ4のシリンダ室の容量とから算出される。また、通気量は、前回の再生動作開始前から今回の再生動作開始前までの供給動作においてコンプレッサ4から吐出された圧縮空気の量である。
【0040】
図4のグラフL1に示すように、延長時間Taは、例えば、基準通気量VOを越えた差分(例えば、図5の差分ΔV1、差分ΔV2、及び差分ΔV3)の大きさに対して比例的に増加する。ECU80は、延長時間Taをマップや数式として保持していてよい。
【0041】
図6のグラフL3を参照して、ECU80は、圧力センサ65の検出した空気圧である検出空気圧と供給開始値CIとを比較する。そして、ECU80は、検出空気圧が供給開始値CI以下(時間t1)になると、エアタンク13に圧縮空気を供給させるため、エアドライヤ11を供給動作とさせる。これにより、エアドライヤ11のガバナ26が閉弁されてアンロード信号の出力が停止される。コンプレッサ4はアンロード信号の停止に応じて負荷運転を行う(時間t1から時間t2を介して時間t21まで)。エアタンク13は、エアドライヤ11の供給動作の継続により検出空気圧が上昇する。そして、ECU80は、検出空気圧が供給停止値COに到達する(時間t21)と供給動作を終了する。
【0042】
図5のグラフL2を参照して、ECU80は、検出空気圧が供給停止値COに到達したが、圧縮空気の通気量が基準通気量VOに達していないとき(例えば時間t21)、再生動作を行わず、パージ動作のみからなる非供給動作を行う。このように、ECU80は、検出空気圧が供給停止値COに到達したとしても、乾燥剤17の通気量が基準通気量VOに達するまで供給動作と、再生動作を伴わない非供給動作とを繰り返す。すなわち、エアドライヤ11は、再生動作が行われるまで、乾燥剤17を通過して除湿処理される圧縮空気の量(通気量)が累積的に増加する(例えば、時間t1から時間t5まで)。なお、ECU80は、エアドライヤ11の通気量を、再生動作によってリセットする、又は、所定の値に再設定する。
【0043】
ところで、図6のグラフL3に示すように、エアドライヤ11は、供給動作の間、空気圧が供給停止値COになるまで、ブレーキ等で消費された量を含めた圧縮空気を供給する(時間t3から時間t5まで)。このため、図5に示すように、通気量が基準通気量VOを越えてもなお、供給動作が継続し(時間t4から時間t5まで)、エアドライヤの乾燥剤の除湿性能が低下したままになるおそれがある。つまり、基準通気量VOを越えた圧縮空気の供給によってエアドライヤ11の除湿量が基準とする基準通気量VOを超える。
【0044】
また、エアドライヤ11は、再生動作を実行する空気圧の範囲が供給開始値CIから供給停止値COまでと定められている。このため、再生動作中にブレーキ等で圧縮空気が大量消費されることに伴う圧力低下に応じて、再生動作の時間が短くなり、所定の期間で再生されるよりも少ない再生量で再生動作が終了する。つまり、再生動作が行われたとしてもエアドライヤ11の再生量が不足することがある。
【0045】
このように、再生動作は、通気量が過大であれば、所定の期間では再生量が不足し、再生動作の実行時間が短くなれば、再生量が不足し、いずれにしても、エアドライヤ11の除湿性能を低下させるおそれがある。
【0046】
そこで、図5に示すように、ECU80は、基準通気量VOを越えてから再生動作が開始されるまで(時間t4から時間t5まで)の通気量を超過分ΔV1として検出し、この超過分ΔV1に対応する延長時間Taを所定の期間に加算した時間の間、再生動作が行われる。これにより、再生動作が超過分ΔV1に対する通気量に対応する時間を含むかたちで行われる。
【0047】
また、ECU80は、再生期間が所定の期間であるときの回復量(通気量換算)、及び延長時間に対応する回復量(通気量換算)に基づいて再生動作における乾燥剤17の再生量を取得する。そして、ECU80は、直前の再生開始時(時間t4)の通気量から、取得した上記再生量を減算して未再生分の通気量を得る。再生動作直後(時間t6)の乾燥剤17の通気量VI1として設定する。例えば、ECU80は、一旦リセットした通気量に未再生分の通気量を加算することで、未再生分がある場合、通気量VI1の再設定には未再生分が残るようにしている。
【0048】
以降、供給動作が終了するとき、ECU80は、通気量が基準通気量VOに達していない場合、再生動作を行わず、パージ動作のみからなる非供給動作を行う。ECU80は、再生動作を行わないとき、乾燥剤17を通過して除湿処理される圧縮空気の量(通気量)を累積させる。一方、ECU80は、通気量が基準通気量VOを越えるとき、基準通気量VOを越えてから再生動作が開始されるまでの通気量を、例えば超過分ΔV2,ΔV3として検出する。そして、ECU80は、所定の期間に、超過分ΔV2,ΔV3に対応する延長時間Taを加算して、再生期間とする。これにより、通常の通気量と、超過分ΔV2,ΔV3に対応する通気量とが加算された通気量に対応する再生量で乾燥剤17の除湿性能が再生される。
【0049】
また、ECU80は、再生動作後の通気量VI2,VI3を再設定する。ECU80は、再生動作に対応する通気量を算出する。通気量には、所定の期間に対応する再生量(通気量換算値)、及び延長時間Taに対応する再生量(通気量換算値)が含まれる。ECU80は、直前の再生開始時における乾燥剤17の通気量の値から、再生動作に対応する再生量を減算することで、再設定用の通気量VI2,VI3を取得する。
【0050】
以上説明したように、本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
(1)再生期間の長さが、供給動作における圧縮空気の通気量に基づいて所定の期間に対して調整される。これにより、空気供給システムにおいてエアドライヤの性能低下を抑制することができる。
【0051】
(2)圧縮空気の通気量に基づいて再生期間の長さが調整される。
(3)通気量と基準通気量との比較に基づいて所定の期間の長さを調整することができる。
【0052】
(4)圧力センサにより検出された再生開始空気圧に基づいて再生期間が調整される。
(5)再生期間で再生不足となった通気量(未再生分)が、次回の通気量に加算されることになるので再生不足が累積的に蓄積されないようになる。
【0053】
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0054】
・エアタンク13は、ブレーキバルブ14以外の圧縮空気を消費する機器、例えばパーキングブレーキ等に圧縮空気を供給してもよい。
・圧力センサ65は、エアタンク13の空気圧に相当する空気圧を検出することができるのであれば、チェックバルブ19よりも下流の任意の位置における空気圧を検出してもよい。例えば、圧力センサは、エアタンク内の空気圧を検出してもよい。これにより、エアタンク内の検出空気圧に基づいて、供給動作、非供給動作、再生動作を制御することができてもよい。
【0055】
・上記実施形態では、所定の期間に延長時間Taを加算して再生期間とする場合について例示したが、これに限らず、所定の期間から短縮時間を減算して再生期間としてもよい。例えば、図4のグラフL1を通気量「0」よりも左方向に延ばした領域となる通気量の不足分について、通気量の不足分に対応する再生動作の時間を短縮時間とすることができる。
【0056】
・上記実施形態では、通気量をコンプレッサ4の累積回転数とシリンダ室の容量とから算出する場合について例示したが、これに限らず、通気量が把握できるのであれば、通気量を流量計等で計測してもよい。
【0057】
・上記実施形態では、再生動作開始時の超過分の通気量に応じて再生期間を延長する場合について例示したが、これに限らず、再生動作開始時の超過分を含む通気量から、通常の再生期間で再生動作を行ってもよい。このとき、再生動作開始時の通気量から通常の再生期間に対応する通気量を減算するようにすることで、未再生分の通気量が次回に引き継がれるようにしてもよい。通気量に未再生分が引き継がれることで、次回の再生までの通気量が減るので乾燥剤の性能低下を抑制することができるようになる。
【0058】
・再生開始時の通気量が所定値(基準通気量VO)未満である場合、再生時間を短くしてよい。
また、再生開始時の空気圧が供給停止値CO未満である場合、再生時間を長くしたりしてもよい。
【0059】
・上記実施形態では、乾燥剤17を有する構成としたが、さらに濾過部を有する構成であってもよい。
・上記実施形態では、乾燥剤17が設けられる場合について例示したが、これに限らず、乾燥剤17の上流にオイルミストセパレータが設けられてもよい。
【0060】
オイルミストセパレータは、圧縮空気との衝突により気液分離を行う乾燥剤を備え、コンプレッサ4から送られる圧縮空気に含まれる油分を捕捉する。乾燥剤は、金属材を圧縮成形したものでもよいし、スポンジなどの多孔質材でもよい。このオイルミストセパレータが設けられることで圧縮空気の清浄性能をより高めることができる。
【0061】
・上記実施形態では、空気供給システム10は、トラック、バス、建機等の自動車に搭載されるものとして説明した。これ以外の態様として、空気供給システムは、乗用車、鉄道車両等、他の車両に搭載されてもよい。
【符号の説明】
【0062】
4…コンプレッサ、10…空気供給システム、11…エアドライヤ、11A…内部、12…保護バルブ、13…エアタンク、14…ブレーキバルブ、4E,11E,12E,13E,14E…空気供給路、15…ブレーキチャンバー、16…分岐通路、17…乾燥剤、18…空気供給通路、19…チェックバルブ、20…バイパス流路、21…再生制御弁、22…オリフィス、25…ドレン排出弁、26…ガバナ、27…ドレン排出口、65…圧力センサ、66…温湿度センサ、80…ECU、100…車両ECU、E62,E63,E65,E66…配線、P12…メンテナンス用ポート。
図1
図2
図3
図4
図5
図6