(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】装置診断装置、半導体製造装置システムおよび半導体装置製造システム
(51)【国際特許分類】
H01L 21/02 20060101AFI20231219BHJP
H01L 21/3065 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
H01L21/02 Z
H01L21/302 101G
(21)【出願番号】P 2023506285
(86)(22)【出願日】2022-01-25
(86)【国際出願番号】 JP2022002602
(87)【国際公開番号】W WO2023144874
(87)【国際公開日】2023-08-03
【審査請求日】2023-01-30
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】松倉 聖
(72)【発明者】
【氏名】釜地 義人
(72)【発明者】
【氏名】玉利 南菜子
(72)【発明者】
【氏名】鹿子嶋 昭
(72)【発明者】
【氏名】角屋 誠浩
【審査官】田付 徳雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-270581(JP,A)
【文献】特開2011-238769(JP,A)
【文献】特開2013-135044(JP,A)
【文献】特開2003-077780(JP,A)
【文献】特開2005-109437(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0154052(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/02
H01L 21/3065
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体製造装置の処理室間の性能差が同定される装置診断装置において、
前記半導体製造装置から収集されたデータに対する特徴量が求められ、
前記半導体製造装置の製造条件のパラメータを軸とする2次元以上のグラフに前記特徴量をマッピングすることにより特徴量マップデータが作成され、
前記作成された特徴量マップデータを基に前記性能差が同定さ
れ、
前記グラフは、前記パラメータの各設定値に係る前記製造条件に対応するセルに分割され、
前記マッピングされた特徴量は、前記特徴量に係る前記製造条件に対応する前記セルに格納されることを特徴とする装置診断装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置診断装置において、
前記セルは、前記特徴量の配列データが格納されていることを特徴とする装置診断装置。
【請求項3】
請求項1に記載の装置診断装置において、
前記特徴量マップデータにテンプレートマッチングを適用することにより前記性能差が同定されることを特徴とする装置診断装置。
【請求項4】
請求項1に記載の装置診断装置において、
前記性能差は、異なる処理室間の性能差と、同一処理室の経時変化に伴う性能差と、同一処理室の部品交換または部品洗浄に伴う性能差を含むことを特徴とする装置診断装置。
【請求項5】
請求項1に記載の装置診断装置において、
前記同定された性能差に対応する前記パラメータの補正量が求められることを特徴とする装置診断装置。
【請求項6】
請求項1に記載の装置診断装置において、
前記半導体製造装置は、プラズマエッチング装置であることを特徴とする装置診断装置。
【請求項7】
半導体製造装置がネットワークを介して接続された請求項1に記載の装置診断装置を備えることを特徴とする半導体製造装置システム。
【請求項8】
ネットワークを介して半導体製造装置に接続され、前記半導体製造装置の処理室間の性能差を同定するためのアプリケーションが実装されるプラットフォームを備える半導体装置製造システムにおいて、
前記半導体製造装置から収集されたデータに対する特徴量を求めるステップと、
前記半導体製造装置の製造条件のパラメータを軸とする2次元以上のグラフに前記特徴量をマッピングすることにより特徴量マップデータを作成するステップと、
前記作成された特徴量マップデータを基に前記性能差を同定するステップと、が前記アプリケーションにより実行さ
れ、
前記グラフは、前記パラメータの各設定値に係る前記製造条件に対応するセルに分割され、
前記マッピングされた特徴量は、前記特徴量に係る前記製造条件に対応する前記セルに格納されることを特徴とする半導体装置製造システム。
【請求項9】
半導体製造装置の処理室間の性能差を同定する装置診断方法において、
前記半導体製造装置から収集されたデータに対する特徴量を求めるステップと、
前記半導体製造装置の製造条件のパラメータを軸とする2次元以上のグラフに前記特徴量をマッピングすることにより特徴量マップデータを作成するステップと、
前記作成された特徴量マップデータを基に前記性能差を同定するステップと、を有
し、
前記グラフは、前記パラメータの各設定値に係る前記製造条件に対応するセルに分割され、
前記マッピングされた特徴量は、前記特徴量に係る前記製造条件に対応する前記セルに格納されることを特徴とする装置診断方法。
【請求項10】
請求項
9に記載の装置診断方法において、
前記性能差は、異なる処理室間の性能差と、同一処理室の経時変化に伴う性能差と、同一処理室の部品交換または部品洗浄に伴う性能差を含むことを特徴とする装置診断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体処理装置の診断を行う装置診断装置、半導体製造装置システムおよび半導体装置製造システムに関する。本発明は、特に、装置診断装置による半導体処理装置(半導体装置製造装置)の状態監視および予測システムに関し、半導体装置製造装置から取得されるデータを用いて演算処理を行うことで、同一処理室(チャンバという)の経時変化に伴う性能差、同一チャンバの部品交換または部品洗浄に伴う性能差、または、異なるチャンバ間の性能差を同定する技術、または、同定および補正する技術に適用可能である。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造装置では、経時的な要因によって半導体装置の性能変動が生じる。また、製造装置の消耗品部品の交換や部品の洗浄によってもチャンバの状態変化の要因となって半導体装置の性能変動となる。
【0003】
上記課題への解決策として、特表2018-533196号公報、特開2014-22695号公報、特開2009-295658号公報等が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2018-533196号公報
【文献】特開2009-295658号公報
【文献】特開2014-22695号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特表2018-533196号公報はチャンバ間差の補正システムの提案となっていて、具体的な補正アルゴリズムの言及がない。特開2009-295658号公報は、プラズマ発光強度やプラズマ密度を用いた補正方法が提案されているが、実際のチャンバ間差の同定手法について言及されていない。特開2014-22695号公報では、プラズマ発光強度や高周波電源ピーク間電圧Vppを用いた補正方法が提案されているが、複数パラメータに補正を行う場合、複数パラメータでのチャンバ間差を同時に同定する必要があり、その点についての言及がない。また、補正で使用するセンサーの種類は熟練者の経験則に基づく要因があるため、最適解とは言えない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
半導体装置製造装置の状態監視および予測システムに関し、異なるチャンバ間の性能差、または、同一チャンバの経時変化に伴う性能差、または、同一チャンバの部品交換または部品洗浄に伴う性能差を同定する装置診断装置は、
a)基準チャンバとされる第1半導体装置製造装置または第2半導体装置製造装置において、
複数の製造条件のパラメータを変化させてプラズマ発生させた際に、前記基準チャンバを有する第1半導体装置製造装置または前記第2半導体装置製造装置に搭載されている各種センサーを用いてプラズマ発生状況に関するデータを収集する第1ステップと、
前記収集したデータに対して演算処理を適用して、前記複数の製造条件のパラメータの条件下でのプラズマ発生状況の複数の代表値を計算する第2ステップと、
前記複数の代表値を使用して演算処理を行い、特徴量を計算する第3ステップと、
前記特徴量を前記複数の製造条件のパラメータを軸とした2次元以上のグラフにマッピングして基準チャンバ特徴量マップデータ(D107)を作成する第4ステップと、
b)前記異なるチャンバ間の性能差の補正対象となるチャンバ、または、前記同一チャンバの経時変化に伴う性能差の補正対象となる経時変化した後の前記基準チャンバ、または、前記同一チャンバの部品交換または部品洗浄に伴う性能差の補正対象となる部品交換または部品洗浄した後の前記基準チャンバを有する前記第2半導体装置製造装置において、
複数の製造条件のパラメータを変化させてプラズマ発生させた際に、前記補正対象となるチャンバまたは経時変化した前記基準チャンバを有する前記第2半導体装置製造装置に搭載されている各種センサーを用いてプラズマ発生状況に関するデータを収集する第5ステップと、
前記収集したデータに対して演算処理を適用して、前記複数の製造条件のパラメータの条件下でのプラズマ発生状況の複数の代表値の計算する第6ステップと、
前記複数の代表値を使用して演算処理を行い、特徴量を計算する第7ステップと、
前記特徴量を前記複数の製造条件のパラメータを軸とした2次元以上のグラフにマッピングして補正対象チャンバ特徴量マップデータ(D112)を作成する第8ステップと、
c)前記基準チャンバ特徴量マップデータと前記補正対象チャンバ特徴量マップデータに現れるパターンを基に、前記異なるチャンバ間の性能差、または、前記同一チャンバの経時変化に伴う性能差、または、前記同一チャンバの部品交換または部品洗浄に伴う性能差を同定する第9ステップと、
を具備したアルゴリズムにより前記第2半導体装置製造装置の装置状態を診断する。
【発明の効果】
【0007】
前記手段により、同一チャンバの経時変化に伴う性能差、同一チャンバの部品交換または部品洗浄に伴う性能差、または、異なるチャンバ間の性能差を同定および補正するために必要な情報の最適化、および複数の製造条件のパラメータでのチャンバ間差を同時に同定および補正することが可能となる。これにより、半導体装置製造装置により製造される半導体装置の性能変動を抑制して、半導体装置の性能の均一化を可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明を画像処理分野のテンプレートマッチングを利用したチャンバ間差の同定および補正を行うプラズマ処理装置診断装置に適用した場合のフローチャート。
【
図2】実施例1に関わるプラズマ処理装置とプラズマ処理装置診断装置とを含む半導体装置製造装置システムのハードウェア構成図。
【
図3】実施例1に関わるプラズマ処理装置診断装置の機能ブロック図。
【
図4】実施例1に関わるプラズマ処理装置から取得される各センサー値の時系列データの一例を示す図。
【
図5】本発明に関わる特徴量マップデータ形式の一例を示す図。
【
図6】本発明に関わる特徴量マップデータの各セルに格納されているデータの一例を示す図。
【
図7】実施例1に関わる補正対象チャンバ特徴量マップデータからのサブマップ抽出の一例を示す図。
【
図8】実施例1に関わる基準チャンバ特徴量マップデータとサブマップを使用してテンプレートマッチングを実施した際の結果の一例を示す図。
【
図9】実施例1に関わる半導体装置製造システムの全体的な構成図であり、半導体装置製造システムに含まれるプラズマ処理装置、プラズマ処理装置診断装置と予測結果集約装置のネットワーク構成図。
【
図10】実施例2に関わるテンプレートマッチングで使用する特徴量の最適化を示したフローチャート。
【
図11】実施例2に関わる擬似オフセットから計算される補正量とテンプレートマッチングによって同定した補正量とを比較したグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施例について、図面を用いて説明する。ただし、以下の説明において、同一構成要素には同一符号を付し繰り返しの説明を省略することがある。なお、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。
【実施例1】
【0010】
実施例1にかかる装置診断装置(302:
図3を参照)は、半導体処理装置(半導体装置製造装置201)の状態監視および予測システムに関し、異なる処理室(以下、チャンバという)間の性能差、同一チャンバの経時変化に伴う性能差、または、同一チャンバの部品交換または部品洗浄に伴う性能差、を同定および補正するために必要な情報の最適化、および複数パラメータでのチャンバ間差を同定および補正することが可能である。
【0011】
ここで、異なるチャンバ間の性能差とは、基準とされるチャンバ(基準チャンバと言う)を有する半導体装置製造装置(第1半導体装置製造装置)(200)と、補正対象とされるチャンバ(補正対象となるチャンバ、または、補正対象チャンバと言う)を有する半導体装置製造装置(第2半導体装置製造装置)(201)において、第1半導体装置製造装置(200)に搭載された基準チャンバと、第2半導体装置製造装置(201)に搭載された補正対象となるチャンバと、の間の性能差の事である。
【0012】
性能差とは、基準チャンバを用いた処理と補正対象となるチャンバを用いた処理とにおいて、処理結果(例えば、エッチング、成膜)に差(性能差:例えば、エッチング量の差、成膜した膜厚の差)が発生することである。例えば、基準チャンバ内に発生させたプラズマを用いたプラズマ処理と補正対象となるチャンバ内に発生させたプラズマを用いたプラズマ処理との間に性能差が有るということである。基準チャンバ内に発生させたプラズマを用いたプラズマ処理と補正対象となるチャンバ内に発生させたプラズマを用いたプラズマ処理との間の性能差は、基準チャンバを有する半導体装置製造装置を用いて製造された半導体装置と、補正対象チャンバを有する半導体装置製造装置を用いて製造された半導体装置と、の間に性能差が発生するということである。つまり、基準チャンバ内に発生させたプラズマを用いたプラズマ処理と補正対象となるチャンバ内に発生させたプラズマを用いたプラズマ処理との間の性能差は、半導体装置の性能変動の要因となる。
【0013】
同一チャンバの経時変化に伴う性能差とは、第2半導体装置製造装置(201)のチャンバにおいて、経時変化の前の状態(または、経時変化が少ない状態)のチャンバ(基準チャンバに対応する)と、経時変化した状態の基準チャンバ(補正対象となるチャンバに対応する)と、の間の性能差の事である。
【0014】
同一チャンバの部品交換または部品洗浄に伴う性能差とは、第2半導体装置製造装置(201)のチャンバにおいて、部品交換または部品洗浄の前の状態のチャンバ(基準チャンバに対応する)と、部品交換または部品洗浄の後の状態のチャンバ(補正対象となるチャンバに対応する)と、の間の性能差の事である。
【0015】
実施例にかかる装置診断装置(302)は、異なるチャンバ間の性能差、または、同一チャンバの経時変化に伴う性能差、または、同一チャンバの部品交換または部品洗浄に伴う性能差を同定して、同定した補正量により、補正対象となるチャンバの性能を基準チャンバの性能と同等となるように補正するものである。装置診断装置(302)は、同定した補正量を、第2半導体装置製造装置(201)へ送信する。
【0016】
これにより、第2半導体装置製造装置(201)は、例えば、同定した補正量により補正されたプラズマをチャンバ(補正対象となるチャンバ)内に生成できる。このことは、第2半導体装置製造装置(201)により製造される半導体装置の性能の変動を抑制させて、半導体装置の性能の均一化を可能とする。
【0017】
図1は本発明を画像処理分野のテンプレートマッチングを利用したチャンバ間差の同定および補正を行うプラズマ処理装置診断装置に適用した場合のフローチャートである。
図2は実施例1に関わるプラズマ処理装置とプラズマ処理装置診断装置とを含む半導体装置製造装置システムのハードウェア構成を示した図である。
【0018】
図2に示す半導体装置製造装置システム(半導体製造装置システム)20は、プラズマ処理装置(PPE)201と、計算機(CAL)204とを含む。プラズマ処理装置(PPE)201は半導体装置の製造に使用される半導体製造装置(半導体装置製造装置とも言う)を示している。プラズマ処理装置201は、例えば、プラズマエッチング装置であり、半導体基板に対してプラズマ処理を行うために利用されるチャンバ(処理室、反応容器、反応室、反応炉とも言う)を実装している。計算機(CAL)204は、外部IF(EXIF:外部インターフェイス回路とも言う)205と、プロセッサ(PROC)206と、メモリ(MEM)207と、ストレージ(STG)208と、を有する。計算機204の外部IF205は、この例では、プラズマ処理装置201とLANケーブルまたはUSBケーブル等のネットワーク配線の信号の送信用および受信用の金属配線MLで電気的に接続されている。計算機204は、データ転送(DT)202によってプラズマ処理装置201に搭載されている各種センサーのプラズマ処理時の信号データを外部IF205から受信し、計算機204による計算結果を補正信号送信(CST)203によって外部IF205からプラズマ処理装置201へ送信する。
【0019】
図3は実施例1に関わるプラズマ処理装置診断装置の機能ブロックを示した図である。プラズマ処理装置診断装置(EDE:装置診断装置、診断装置ともいう)302は計算機204上に実装される。診断装置302は、計算機204のプロセッサ206が、例えばストレージ208に格納された診断装置302の機能を実現するソフトウエアプログラムを実行することで、計算機204により実現されるように構成されている。診断装置302は、後述される各機能(303、305、307、311)をハードウェア回路により構成してよい。診断装置302は、データ集録部(DAD)303、データ補正部(DCU)305、装置状態予測計算部(PCU)307、判定および制御部(JCU、以下、判定・制御部と示す)311を有する。
【0020】
データ集録部(DAD)303はデータ転送202によって送信されたデータを受信し、装置データ(DED)304として計算機204上のストレージ208に保存する機能を具備している。
【0021】
データ補正部(DCU)305は装置データ304を補正対象チャンバ特徴量マップデータ(CTCMD)306に変換する機能を具備している。
【0022】
装置状態予測計算部(PCU)307は補正対象チャンバ特徴量マップデータ306と基準チャンバ特徴量マップデータ(RCMD)308を使用して、基準チャンバ特徴量マップデータと前記補正対象チャンバ特徴量マップデータに現れるパターンを基に、プラズマ処理時に設定するマイクロ波強度、コイル電流、圧力、高周波バイアスパワー等の設定値であるレシピパラメータを補正対象チャンバの設定値からどれだけずらすことによって補正対象チャンバと基準チャンバのプラズマ処理が同じ結果となるかの補正量を同定する機能を具備している。レシピパラメータ補正量同定部(CIU)309は前記レシピパラメータが補正対象チャンバ特徴量マップデータ306と基準チャンバ特徴量マップデータ308の間でどれだけずれているかの計算実行部であり、計算結果を装置状態予測計算結果データ(CRD)310としてストレージ208に保存する機能を具備している。
【0023】
判定・制御部(JCU)311は装置状態予測計算結果データ310からプラズマ処理装置201に送信する電文を作成し、送信する機能を具備している。補正量送信部(CAT)312は、作成された前記電文を、外部IF205を介して、プラズマ処理装置201に送信する機能を具備している。
【0024】
図1のフローチャートは、診断装置302により実行されるアルゴリズムを示している。
図1のフローチャートに基づく診断装置302の動作は以下のとおりである。
【0025】
まず、診断装置302は、基準チャンバC101において、ステップS103、S105、S106を実行することで、基準チャンバ特徴量マップデータD107を作成する。基準チャンバ特徴量マップデータD107の作成は、前記のように診断装置302によって実行されても良く、もしくは、基準チャンバ装置データD104を別の方法で集録して、診断装置302が実装されている計算機とは別の計算機のストレージ上に格納し、前記計算機上でS103、S105、S106のステップを実行することで作成しても良い。
【0026】
チャンバ補正を実施したいタイミングとなった際に、診断装置302は、補正対象チャンバC102において、ステップS108、S110、S111を実行することで、補正対象チャンバ特徴量マップデータD112を作成する。
【0027】
診断装置302は、基準チャンバ特徴量マップデータD107と補正対象チャンバ特徴量マップデータD112を使用して、ステップS113、S114、S115を実行して、レシピパラメータの補正量を同定し(ステップS116、データD117)、最後にプラズマ処理装置201へ信号を送信する(ステップS118)。
【0028】
これにより、診断装置302は、外部IF205を介してプラズマ処理装置201へ信号として同定した補正量を送信する。同定した補正量を信号として受信したプラズマ処理装置201は、同定した補正量に基づいてチャンバ内にプラズマを発生させるための製造条件の各種パラメータを補正することができる。これにより、異なるチャンバ間の性能差、または、同一チャンバの経時変化に伴う性能差、または、同一チャンバの部品交換または部品洗浄に伴う性能差を補正したプラズマをプラズマ処理装置201のチャンバ内に生成できる。このことは、プラズマ処理装置201により製造される半導体装置の性能の変動を抑制させて、半導体装置の性能の均一化を可能とするという特異な効果を奏する。
【0029】
ここで補正対象チャンバは基準チャンバと異なるチャンバであっても良く、また基準チャンバと同一のチャンバで経時または部品交換または部品洗浄によって状態が変化したチャンバであっても良い。
【0030】
各ステップの詳細は以下のとおりである。
【0031】
S103(第1ステップ):基準チャンバC101において、複数のレシピパラメータ設定値を特定の値域で特定の間隔で変更しながらプラズマを発生させてプラズマ処理を行い、プラズマ処理装置(半導体装置製造装置200, 201)に搭載されている各種センサーを用いてその際のプラズマ発生状況に関するデータを収集し、基準チャンバ装置データD104として保存する。
【0032】
S105(第2ステップ):基準チャンバ装置データD104を使用して、ステップS103で変更した複数のレシピパラメータの各設定値でのプラズマ処理時に収集されたセンサー値の代表値を計算する。つまり、収集したデータ(基準チャンバ装置データD104)に対して演算処理を適用して、複数の製造条件のパラメータの条件下でのプラズマ発生状況の複数の代表値を計算する。
【0033】
S106(第3ステップ、第4ステップ):ステップS105によって計算された代表値から基準チャンバ特徴量マップデータD107を作成し、保存する。つまり、複数の代表値を使用して演算処理を行い、特徴量が計算される(第3ステップ)。そして、計算された特徴量を複数の製造条件のパラメータを軸とした2次元以上のグラフにマッピングして基準チャンバ特徴量マップデータを作成する(第4ステップ)。
【0034】
S108(第5ステップ):補正対象チャンバC102において、S103と同じ方法で、複数のレシピパラメータ設定値を特定の値域で特定の間隔で変更しながらプラズマを発生させてプラズマ処理を行い、プラズマ処理装置(半導体装置製造装置)201に搭載されている各種センサーを用いてその際のプラズマ発生状況に関するデータを収集し、補正対象チャンバ装置データD109として保存する。
【0035】
S110(第6ステップ):補正対象チャンバ装置データD109を使用して、ステップS105と同じ方法で、S108で変更した複数のレシピパラメータの各設定値でのプラズマ処理時に収集されたセンサー値の代表値を計算する。
【0036】
S111(第7ステップ、第8ステップ):ステップS110によって計算された代表値を使用して、ステップS106と同じ方法で補正対象チャンバ特徴量マップデータD112を作成し、保存する。つまり、複数の代表値を使用して演算処理を行い、特徴量が計算される(第7ステップ)。そして、計算された特徴量を複数の製造条件のパラメータを軸とした2次元以上のグラフにマッピングして補正対象チャンバ特徴量マップデータD112を作成する(第8ステップ)。
【0037】
S113:基準チャンバ特徴量マップデータD107、補正対象チャンバ特徴量マップデータD112のデータ点数が少ない場合は、内挿または外挿を行う。
【0038】
S114:補正対象チャンバ特徴量マップデータD112の一部の領域をサブマップとして抽出する。
【0039】
S115:ステップS114で抽出したサブマップと基準チャンバ特徴量マップデータを使用して、テンプレートマッチングを実施し、サブマップが基準チャンバ特徴量マップデータ上のどの位置にマッチするかを調べる。
【0040】
ステップS114、S115をループして、複数のサブマップを使用してテンプレートマッチングを実施し、複数の結果を取得する。
【0041】
S116:取得した複数のテンプレートマッチング結果から最終的な補正量を決定(同定)し、結果データ(補正量データとも言う)D117として保存する。つまり、ステップS113-S116(第9ステップ)では、基準チャンバ特徴量マップデータと前記補正対象チャンバ特徴量マップデータに現れるパターンを基に、異なるチャンバ間の性能差、または、同一チャンバの経時変化に伴う性能差、または、同一チャンバの部品交換または部品洗浄に伴う性能差が同定される。同定された最終的な補正量は結果データD117として保存される。
【0042】
S118(第10ステップ):プラズマ処理装置201へ送信する内容を決定し、送信する。
【0043】
図4は、実施例1に関わるプラズマ処理装置から取得される各センサー値の時系列データの一例を示している。
図4には、ステップS103、S108で取得される装置データ304の各センサー値の時系列データの一例が示されている。
図4において、縦軸はセンサー値(VS)を示し、横軸は時間(t)を示す。ここで、期間T401はレシピパラメータの設定直後の過渡状態領域、期間T402は定常領域、期間T403、T404はプラズマ処理終了直前の領域をそれぞれ示している。ステップS105、およびS110では、
図4のような時系列データからの代表値算出を各センサーについてそれぞれ実施する。ここで、代表値とは時系列データの特定時間領域での平均値や標準偏差等の統計データを使用しても良く、ある時間におけるセンサー値を使用しても良い。
【0044】
図5は、本発明に関わる特徴量マップデータ形式の一例を示す図である。
図6は、本発明に関わる特徴量マップデータの各セルに格納されているデータの一例を示す図である。
【0045】
図5には、ステップS106、S111において作成される特徴量マップデータの一例として3次元の特徴量マップデータ3DMPが示されている。特徴量マップデータ3DMPにおいて、高さ方向、幅方向、奥行き方向にそれぞれ異なるレシピパラメータA(PA)、B(PB)、C(PC)の設定値を対応させている。つまり、レシピパラメータA(PA)、B(PB)、C(PC)は、複数の製造条件のパラメータの軸とされている。
図5に示す特徴量マップデータ3DMPの高さ方向は、レシピパラメータA(PA)の最小値(MIN_PA)から最大値(MAX_PA)の設定可能範囲PASRを示している。特徴量マップデータ3DMPの幅方向は、レシピパラメータB(PB)の最小値(MIN_PB)から最大値(MAX_PB)の設定可能範囲PBSRを示している。特徴量マップデータ3DMPの奥行き方向は、レシピパラメータC(PC)の最小値(MIN_PC)から最大値(MAX_PC)の設定可能範囲PCSRを示している。レシピパラメータA、B、CはステップS103
、S108で変更した複数のレシピパラメータであり、例えば、レシピパラメータAがマイクロ波強度、レシピパラメータBがコイル電流、レシピパラメータCが圧力とすることができる。レシピパラメータA、B、Cは、これに限らず、他のパラメータを利用することも可能である。
【0046】
ここで、一つの小立方体C501は、レシピパラメータA、B、Cのある設定値と
なるプラズマ処理条件を表している。
図6は、
図5での一つの小立方体C501
の内部で保持している配列データA601を表している。配列データ(特徴量配
列)A601は、この例では、10個の特徴量(
a1-a10)の配列とされている。
【0047】
ステップS106、S111ではレシピパラメータの各設定条件において計算された代表値を使用して特徴量を計算し、
図5の特徴量マップデータ3DMP上でレシピパラメータの設定条件が対応する位置の小立方体の内部に特徴量配列として格納していく。ここで、代表値から特徴量を計算する方法は、複数の代表値を使用して四則演算を実施することで特徴量を計算しても良く、代表値をそのまま特徴量として使用しても良い。また、特徴量配列の各要素について、特徴量マップデータ3DMPの全小立方体での値を使用して正規化する等の変換を実施した値を最終的な特徴量として特徴量配列に格納しても良い。
図6の特徴量配列(
a1-a10)の中の要素には、例えば、コイル電圧、マグネトロン電流、バルブ開度等が特徴量として格納される。本処理は画像において、各ピクセル位置にR、G、Bの輝度情報を対応させる処理と同様の処理と考えると想像しやすい。この処理によって、チャンバマッチの課題に対して画像処理の解決方法を適用することができるようになる。また、特徴量がレシピパラメータA、B、Cに依存して変化する傾向があった場合にも、得られた特徴量の値からレシピパラメータA、B、Cの値を同時に推測することができるようになる。ここで、本実施例では3次元の特徴量マップデータ3DMPを例示しているが、2次元以上であれば同様の効果を得ることが可能である。
【0048】
図7は、実施例1に関わる補正対象チャンバ特徴量マップデータからのサブマップ抽出の一例を示す図である。
図7は、
図5の特徴量マップデータ3DMPを前から見た場合の2次元マップM701、上から見た場合の2次元マップM702を示している。ステップS114では、
図5のデータ形式となっている補正対象チャンバ特徴量マップデータD112から
図7の太線で囲まれた領域B703をサブマップとして抽出する。これにより、サブマップB703は中心の小立方体C704がレシピパラメータ設定値(A0, B0, C0)となる3x3x3の3次元特徴量マップデータとなる。ここで、S113で補正対象チャンバ特徴量マップデータD112に内挿または外挿を施している場合には、前記内挿または外挿処理後の補正対象チャンバ特徴量マップデータからサブマップを抽出する。また、抽出するサブマップB703のサイズは3x3x3に限定されず、例えば3x4x5のような3次元のマップや、3x4 x1のような2次元のマップや、1x1x3のような1次元のマップでも良い。
【0049】
図8は、実施例1に関わる基準チャンバ特徴量マップデータとサブマップを使用してテンプレートマッチングを実施した際の結果の一例を示す図である。
図8は、基準チャンバ特徴量マップデータとステップS114で抽出したサブマップB703を使用してテンプレートマッチングを実施した際の結果である。
図8において、縦軸はマッチング指標(MI)を示し、横軸は基準チャンバ特徴量マップデータ上でのサブマップ走査位置(SSP)を示している。ステップS115で実施するテンプレートマッチングは、基準チャンバ特徴量マップデータD107上でステップS114で抽出したサブマップB703を走査させ、それぞれの走査位置(SSP)においてマッチング指標(MI)を計算し、
図8のような結果を得る。ここで、S113で内挿または外挿を基準チャンバ特徴量マップデータD107に施している場合には、前記内挿または外挿処理後の基準チャンバ特徴量マップデータ上で、前記内挿または外挿処理後の補正対象チャンバ特徴量マップデータから抽出したサブマップを走査する。また、
図8においてマッチング指標MIが最小となる走査位置P801は、サブマップB703の特徴量配列と基準チャンバ特徴量マップデータD107の走査位置P801での特徴量配列の値が一番近くなった点(マッチング点)である。
【0050】
走査位置P802は
図7で示したサブマップB703が抽出された補正対象チャンバ特徴量マップデータD112上での領域と同じ場所となる基準チャンバ特徴量マップデータD107上での走査位置を表している。基準チャンバC101と補正対象チャンバC102でチャンバ間差がない場合には走査位置P802においてマッチング指標MIが最小となるはずである。そのため、P801とP802の走査位置の違いがチャンバマッチにおいて同定したい補正量となる。走査位置P801におけるサブマップB703中心の小立方体C704のレシピパラメータA, B, Cの設定値を(A1, B1, C1)と表現すると、走査位置P802におけるサブマップB703の中心の小立方体C704のレシピパラメータA,B,Cの設定値が
図5より(A0, B0, C0)であるため、基準チャンバC101と補正対象チャンバC102の間の同定したい補正量(V
A, V
B, V
C)は以下の数式1で算出される。
【0051】
(VA, VB, VC)=(A0-A1, B0-B1, C0-C1) (数式1)
ここで、マッチング指標はSum of Absolute Difference(SAD)、Sum of Squared Difference(SSD)のような指標を使用しても良く、Normalized Cross Correlation(NCC)やZero-mean Normalized Cross Correlation(ZNCC)のような指標を使用しても良い。また、ここではマッチング点の決定方法をマッチング指標が最小値となる走査位置としているが、例えばマッチング指標最小値近傍領域において回帰モデルを用いてフィッティングを行ってマッチング点を精密に決定するような方法を実施しても良い。
【0052】
ステップS114、S115を一つのサブマップ(B703)で完了した後、再びステップS114に戻って補正対象チャンバC102の前記サブマップB703とは別の領域から別のサブマップを抽出し、ステップS115にて再びテンプレートマッチングを実施して補正量を同定する。このように種々(複数)のサブマップを使用してテンプレートマッチングを実施し、補正量を同定する。
【0053】
ステップS116では、ステップS114、S115を前記のように繰り返し実施した際に得られる複数の補正量に対して平均値計算によって最終的な補正量を算出し、ステップS114、S115の繰り返しによって得られる複数のテンプレートマッチング結果および補正量同定結果を結果データD117として保存する。ここで、ステップS114、S115の繰り返しによって得られる複数のテンプレートマッチング結果から、マッチング点でのマッチング指標の値が特定の閾値以下の結果だけを選定するといった処理によって信頼性の高いマッチング点のみを収集し、それらの平均値計算によって最終的な補正量を算出しても良い。また、ここでは最終的な補正量を平均値によって求めいているが、例えば中央値計算や最頻値計算を実施して最終的な補正量算出を実施しても良い。
【0054】
ステップS118では、結果データD117からプラズマ処理装置201へ送信する電文の内容を決定し、外部IF205から前記電文の内容をプラズマ処理装置201へ送信する。ここで、ステップS116で算出された補正量を電文として送信しても良いし、各レシピパラメータの補正量絶対値のいずれかがある閾値以上の場合には、そのレシピパラメータに関連する部品交換を促す内容を電文として送信しても良い。また、ステップS116で信頼性の高いマッチング点情報が得られなかった場合には、テンプレートマッチング失敗の内容を電文として送信しても良い。
【0055】
図9は、実施例1に関わる半導体装置製造システムの全体的な構成図であり、半導体装置製造システムに含まれるプラズマ処理装置、プラズマ処理装置診断装置と予測結果集約装置のネットワーク構成図を示す図である。
図9は、各プラズマ処理装置(PPE)201a、201b、201cに接続されたプラズマ処理装置診断装置(EDE)PC901、PC902、PC903と、前記複数のプラズマ処理装置診断装置PC901、PC902、PC903の予測結果の集約を行う予測結果集約装置(FRA)PC905とのネットワーク構成図である。
【0056】
図9に示すように、半導体装置製造システム900は、半導体装置製造装置システム(半導体製造装置システム)20a、20b、20cと、予測結果集約装置(FRA)PC905と、半導体装置製造装置システム20a、20b、20cおよび予測結果集約装置PC905とが接続されたネットワークNW904と、を有する。半導体装置製造装置システム20aは、
図2および
図3で説明したように、プラズマ処理装置(PPE)201aとプラズマ処理装置診断装置(EDE)PC901とを有する。同様に、半導体装置製造装置システム20bは、プラズマ処理装置(PPE)201bとプラズマ処理装置診断装置(EDE)PC902とを有する。半導体装置製造装置システム20cは、プラズマ処理装置(PPE)201cとプラズマ処理装置診断装置(EDE)PC903とを有する。
【0057】
ここで、プラズマ処理装置(201a、201b、201c)は、第2半導体装置製造装置に対応させることができる。一方、後述するプラズマ処理装置(PPE)200は、第1半導体装置製造装置に対応させることができる。
【0058】
各プラズマ処理装置201a、201b、201cにはプラズマ処理装置診断装置PC901、PC902、PC903がそれぞれ1台ずつ接続されている。プラズマ処理装置診断装置PC901、PC902、PC903のおのおのは
図3に示したプラズマ処理装置診断装置(EDE)302である。プラズマ処理装置診断装置PC901、PC902、PC903は、例えば、LANケーブルのような通信配線を用いたネットワークNW904に接続されている。さらに、予測結果集約装置PC905がネットワークNW904には接続されている。
【0059】
予測結果集約装置PC905は、プラズマ処理装置診断装置PC901、PC902、PC903で計算された対応するプラズマ処理装置(201a、201b、201c)の状態予測結果を集約する。
【0060】
図9に示すようなネットワークを構成する半導体製造装置システム900によれば、技術者は予測結果集約装置PC905にアクセスするだけで、各プラズマ処理装置(201a、201b、201c)の状態を監視および比較することが可能となる。また、例えば、基準チャンバ特徴量マップデータD107を予測結果集約装置PC905から各プラズマ処理装置診断装置PC901、PC902、PC903へ配布することも可能となる。
【0061】
つまり、基準チャンバ特徴量マップデータD107は、基準チャンバC101を含むプラズマ処理装置(PPE)200に接続されたプラズマ処理装置診断装置PC910により作成される。作成された基準チャンバ特徴量マップデータD107は、プラズマ処理装置診断装置PC910から予測結果集約装置PC905に送信されて、予測結果集約装置PC905に保存することができるように構成されている。プラズマ処理装置診断装置PC910は、ステップS103、S105、S106を実行すると見なすことも可能である。ここで、プラズマ処理装置診断装置PC910を使用せずに、別の方法で基準チャンバ装置データD104を集録し、プラズマ処理装置診断装置PC910と異なる計算機上のストレージに基準チャンバ装置データD104を格納して、プラズマ処理装置診断装置PC910とは異なる前記計算機上でステップS103、S105、S106を実行して基準チャンバ特徴量マップデータD107を作成しても良い。このようにプラズマ処理装置診断装置PC910を使用せずに、基準チャンバ特徴量マップデータD107を作成する場合には、基準チャンバ特徴量マップデータD107は、プラズマ処理装置診断装置PC910から予測結果集約装置PC905への送信によって予測結果集約装置PC905に保存する方法はせずに、例えばポータブルストレージに基準チャンバ特徴量マップデータD107を保存して、前記ポータブルストレージを予測結果集約装置PC905に接続して、基準チャンバ特徴量マップデータD107を前記ポータブルストレージから予測結果集約装置PC905へコピーすることで、予測結果集約装置PC905に基準チャンバ特徴量マップデータD107を保存しても良い。
【0062】
プラズマ処理装置(PPE)200とプラズマ処理装置診断装置PC910とを含む半導体装置製造装置システム915は、
図9に一点鎖線LL91で示される様に、プラズマ処理装置診断装置PC910がネットワークNW904に接続される様に構成されてもよい。あるいは、プラズマ処理装置診断装置PC910がネットワークNW904に接続されずに、
図9に二点鎖線LL92で示される様に、プラズマ処理装置診断装置PC910が他のネットワークによって予測結果集約装置PC905に接続される様に構成されてもよい。なお、予測結果集約装置PC905に基準チャンバ特徴量マップデータD107が格納されている場合、半導体装置製造装置システム915は予測結果集約装置PC905に接続されていなくてもよい。なお、基準チャンバ特徴量マップデータD107の更新作業が発生する場合、半導体装置製造装置システム915と予測結果集約装置PC905とをネットワークにより電気的に接続するのが好ましい。
【0063】
また、
図9の記載の半導体製造装置システム900は、ネットワークNW904を介して半導体製造装置(201a、201b、201c)に接続され、半導体製造装置(201a、201b、201c)の処理室間の性能差を同定するためのアプリケーションが実装されるプラットフォームを備える半導体装置製造システムと見なすことができる。そして、半導体製造装置(201a、201b、201c)から収集されたデータに対する特徴量を求めるステップと、半導体製造装置(201a、201b、201c)の製造条件のパラメータを軸とする2次元以上のグラフに特徴量をマッピングすることにより特徴量マップデータを作成するステップと、作成された特徴量マップデータを基に性能差を同定するステップと、がこのアプリケーションにより実行される。このアプリケーションは、
図2のメモリ(MEM)207またはストレージ(STG)208に格納され、プロセッサ(PROC)206により実行される。
【実施例2】
【0064】
本実施例2は、実施例1における基準チャンバ特徴量マップデータD107、補正対象チャンバ特徴量マップデータD112の内部に格納する特徴量についてチャンバ間の性能差の同定において、同定精度の高い特徴量を選定する特徴量最適化方法に関する。
【0065】
図10は本実施例2のフローチャートである。
図10のフローチャートは、診断装置302により実行されるチャンバ間差補正のための特徴量最適化アルゴリズムである。
図10において、
図1と同一符号のついた構成要素は
図1と同じステップ、または同じ形式のデータを表す。つまり、
図10のS103, D104, S105, S106, S108, D109, S110, S111、S113-S116は
図1と同じであり、
図10のD121, D122, D123, S124が
図1から変更されたデータおよびステップである。
図1から変更があるステップのみ以下に示す。
【0066】
基準チャンバC119、補正対象チャンバC120の関係は、同一のチャンバで、経時変化が少ない状態である。補正対象チャンバC120には、プラズマ処理装置201の内部制御パラメータを編集することで補正量同定対象のレシピパラメータに擬似的にオフセットが生じる状態としている。一方、基準チャンバC119は、プラズマ処理装置201の内部制御パラメータを編集することなく、補正量同定対象のレシピパラメータに擬似的なオフセットが生じない状態としている。
【0067】
基準チャンバ特徴量マップデータD121、補正対象チャンバ特徴量マップデータD122は、テンプレートマッチングで使用する特徴量の候補となるものをすべて特徴量配列の要素として保持したデータである。
【0068】
ステップS124:すべての候補特徴量についてテンプレートマッチングを実施した際の結果データとしての補正量データD123を用いて、擬似オフセットから計算される補正量とテンプレートマッチングによって同定した補正量を比較して特徴量最適化を実施する。つまり、擬似的に生じさせたオフセット値から計算される性能差と同定した性能差を比較して、両者が近くなる特徴量を最適化された特徴量として選定する。この様な特徴量の最適化手法によって、最適化された特徴量を選定して使用することができる。選定された最適な特徴量を
図1に示すアルゴリズムに使用することで、精度の高い補正量データを同定できる。精度の高い補正量データは、
図1のアルゴリズムのステップS118によって、プラズマ処理装置201へ送信する電文の内容とされる。電文の内容は診断装置302の外部IF205(
図3参照)からプラズマ処理装置201へ送信される。
【0069】
つまり、実施例2にかかる装置診断装置(302)は、異なるチャンバ間の性能差、または、同一チャンバの経時変化に伴う性能差、または、同一チャンバの部品交換または部品洗浄に伴う性能差を高い精度で同定するために、特徴量の最適化を実施する。実施例2の最適化によって選定した特徴量を実施例1にかかる装置診断装置(302)で使用することで、異なるチャンバ間の性能差、または、同一チャンバの経時変化に伴う性能差、または、同一チャンバの部品交換または部品洗浄に伴う性能差を高い精度で同定することが可能となり、同定した精度の高い補正量により、補正対象となるチャンバの性能を基準チャンバの性能と同等となるように補正する。装置診断装置(302)は、同定した精度の高い補正量を、第2半導体装置製造装置(201)へ電文として送信する。
【0070】
これにより、異なるチャンバ間の性能差、または、同一チャンバの経時変化に伴う性能差、または、同一チャンバの部品交換または部品洗浄に伴う性能差を補正したプラズマをプラズマ処理装置201のチャンバ内に生成できる。このことは、プラズマ処理装置201により製造される半導体装置の性能の変動を抑制させて、半導体装置の性能の均一化を可能とするという特異な効果を奏する。
【0071】
図11はレシピパラメータに擬似的に与えたオフセットから計算される補正量(CCA)を横軸にとり、テンプレートマッチングによって同定した補正量(ICA)を縦軸にとって、補正量データD123をプロットしたグラフである。白丸で表示された結果R1001は有効でない特徴量を使用した際に同定される補正量データであり、黒丸で表示された結果R1002は有効な特徴量を使用した際に同定される補正量データである。また、
図11のグラフにおいて、点線L11の傾き(TI)は1である(TI=1)。
図10のステップS124では、このような結果を使用して擬似オフセットから計算される補正量とテンプレートマッチングによって同定された補正量の差が小さくなる特徴量が有効な特徴量として最適化を実施する。最適化手法としては、同定した補正量を予測値として決定係数が1に近くなる特徴量を選定しても良く、また機械学習手法を用いて最適な特徴量の探索を実施しても良い。
【0072】
本発明にかかる装置診断装置の特徴についてまとめると、以下となる。
【0073】
1)半導体製造装置の処理室(チャンバ)間の性能差が同定される装置診断装置において、
前記半導体製造装置から収集されたデータに対する特徴量が求められ、
前記半導体製造装置の製造条件のパラメータを軸とする2次元以上のグラフに前記特徴量をマッピングすることにより特徴量マップデータが作成され、
前記作成された特徴量マップデータを基に前記性能差が同定される。
【0074】
2)上記1)の装置診断装置において、
前記特徴量マップデータにテンプレートマッチングを適用することにより前記性能差が同定される。
【0075】
3)上記1)の装置診断装置において、
前記性能差は、異なる処理室間の性能差と、同一処理室の経時変化に伴う性能差と、同一処理室の部品交換または部品洗浄に伴う性能差を含む。
【0076】
4)上記1)の装置診断装置において、
前記同定された性能差に対応する前記パラメータの補正量が求められる。
【0077】
5)上記1)の装置診断装置において、
前記半導体製造装置は、プラズマエッチング装置である。
【0078】
6)半導体製造装置システムは、半導体製造装置がネットワークを介して接続された上記1)の装置診断装置を備える。
【0079】
7)ネットワークを介して半導体製造装置に接続され、前記半導体製造装置の処理室間の性能差を同定するためのアプリケーションが実装されるプラットフォームを備える半導体装置製造システムにおいて、
前記半導体製造装置から収集されたデータに対する特徴量を求めるステップと、
前記半導体製造装置の製造条件のパラメータを軸とする2次元以上のグラフに前記特徴量をマッピングすることにより特徴量マップデータを作成するステップと、
前記作成された特徴量マップデータを基に前記性能差を同定するステップと、が前記アプリケーションにより実行される。
【0080】
8)半導体製造装置の処理室間の性能差を同定する装置診断方法は、
前記半導体製造装置から収集されたデータに対する特徴量を求めるステップと、
前記半導体製造装置の製造条件のパラメータを軸とする2次元以上のグラフに前記特徴量をマッピングすることにより特徴量マップデータを作成するステップと、
前記作成された特徴量マップデータを基に前記性能差を同定するステップと、を有する。
【0081】
9)上記8)において、
前記性能差は、異なる処理室間の性能差と、同一処理室の経時変化に伴う性能差と、同一処理室の部品交換または部品洗浄に伴う性能差を含む。
【符号の説明】
【0082】
20、20a、20b、20c:半導体装置製造装置システム(半導体製造装置システム)
200:プラズマ処理装置(第1半導体装置製造装置)
201、201a、201b、201c:プラズマ処理装置(第2半導体装置製造装置)
302、PC901、PC902、PC903:プラズマ処理装置診断装置(装置診断装置)
D107、D121:基準対象チャンバ特徴量マップデータ
D112、D122:補正対象チャンバ特徴量マップデータ
PC905:予測結果集約装置
C101、C119:基準チャンバ
C102、C120:補正対象チャンバ
900:半導体装置製造システム