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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-19
(45)【発行日】2023-12-27
(54)【発明の名称】印刷装置と印刷方法
(51)【国際特許分類】
   B41F 17/14 20060101AFI20231220BHJP
   B41F 35/02 20060101ALI20231220BHJP
   B41N 1/14 20060101ALI20231220BHJP
   B41N 1/16 20060101ALI20231220BHJP
   H05B 33/10 20060101ALI20231220BHJP
   H10K 50/10 20230101ALI20231220BHJP
【FI】
B41F17/14 E
B41F35/02
B41N1/14
B41N1/16
H05B33/10
H05B33/14 A
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019217685
(22)【出願日】2019-12-02
(65)【公開番号】P2021088058
(43)【公開日】2021-06-10
【審査請求日】2022-09-10
(73)【特許権者】
【識別番号】593008427
【氏名又は名称】日本電子精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100183575
【弁理士】
【氏名又は名称】老田 政憲
(72)【発明者】
【氏名】丸野 正徳
(72)【発明者】
【氏名】平田 淳
(72)【発明者】
【氏名】日下 靖之
【審査官】亀田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-237262(JP,A)
【文献】特許第6411254(JP,B2)
【文献】特開2012-020525(JP,A)
【文献】特開平09-214108(JP,A)
【文献】独国特許発明第19600846(DE,C1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41F 17/14
B41F 35/02
B41N 1/14
B41N 1/16
H05B 33/10
H10K 50/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面が平坦な第1版と第2版と、
前記第1版と前記第2版とが、それぞれ別個に表面に配置される第1保持部と第2保持部と 、
前記第1版又は前記第2版にインクを供給するインク供給部と、
前記第1版、または、前記第2版上の前記インクが転写される対象物を保持するステージと 、
粘着テープを表面に有し、前記粘着テープで前記第1版、または、前記第2版の表面の前記インクを除去するクリーニング機構と、を含み、
前記第1版と前記第2版とで前記インクを受け渡しする印刷装置であり、
前記粘着テープは、粘着力20~400N/mを有し、それ自体で、前記第1版、または、前記第2版の表面の前記インクを除去する印刷機。
【請求項2】
表面が平坦な第1版と第2版と、
前記第1版と前記第2版とが、それぞれ別個に表面に配置される第1保持部と第2保持部と 、
前記第1版又は前記第2版にインクを供給するインク供給部と、
前記第1版、または、前記第2版上の前記インクが転写される対象物を保持するステージと 、
粘着テープを表面に有し、前記粘着テープで前記第1版、または、前記第2版の表面の前記インクを除去するクリーニング機構と、を含み、
前記第1版と前記第2版とで前記インクを受け渡しする印刷装置であり、
前記クリーニング機構は、第1クリーニング具と、第2クリーニング具と、その間に位置する第3クリーニング具とを含み、前記第1クリーニング具と、前記第2クリーニング具と、前記第3クリーニング具とが、それぞれ前記粘着テープを介して、前記第1版、または、前記第2版の表面に接して前記インクを除去する印刷装置。
【請求項3】
前記クリーニング機構は、三角柱形状であり、先端が円柱状で回転しない請求項1または2に記載の印刷装置。
【請求項4】
ロール形状の前記第1保持部の径、または、ロール形状の前記第2保持部の径に対して、
ロール形状の前記クリーニング機構の径の比は、2以上であり、
前記クリーニング機構は、前記クリーニング機構と前記第1版との間に位置する前記粘着テープを前記第1版に押し付ける、または、
前記クリーニング機構は、前記クリーニング機構と前記第2版との間に位置する前記粘着テープを前記第2版に押し付ける、請求項1~3のいずれか1項に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記第1保持部と前記第2保持部とは、ロール形状、または、平板形状である請求項1~4のいずれか1項に記載の印刷装置。
【請求項6】
前記クリーニング機構は、第1クリーニング具と第2クリーニング具とを含む請求項1~のいずれか1項に記載の印刷装置。
【請求項7】
前記第1クリーニング具と前記第2クリーニング具は、ロール形状である請求項に記載の印刷装置。
【請求項8】
前記第2版の表面は、インク付着性が高い高付着領域と、前記高付着領域より、インク付着性が低い低付着領域とを有し、
前記第1版の表面は、インク付着性が前記高付着領域と前記低付着領域との間の中付着領域を有し、
前記インクが前記第1版の表面に塗布された場合、前記中付着領域と前記高付着領域との間で前記インクを受け渡し、
前記インクが前記第2版の表面に塗布された場合、前記小付着領域と前記中付着領域との間で前記インクを受け渡しする請求項1~7のいずれか1項に記載の印刷装置。
【請求項9】
前記第1版と前記第2版は、シリコーンを含む請求項1~8のいずれか1項に記載の印刷装置。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の装置において、
インク供給部から前記インクを第1保持部の表面の第1版、または、第2保持部の表面の第2版に供給するインク供給工程と、
前記第1版と第2版との間で前記インクの一部を受け渡すパターン形成工程と、
前記一部のインクを対象物へ転写する転写工程と、
前記第1保持部、または、前記第2保持部の表面を粘着テープで清掃する清掃工程と、を含む印刷方法。
【請求項11】
インク供給部から前記インクを第1保持部の表面の第1版、または、第2保持部の表面の第2版に供給するインク供給工程と、
前記第1版と第2版との間で前記インクの一部を受け渡すパターン形成工程と、
前記一部のインクを対象物へ転写する転写工程と、
前記第1保持部、または、前記第2保持部の表面を粘着テープで清掃する清掃工程と、を含む印刷方法であり、
前記粘着テープは、粘着力20~400N/mを有し、それ自体で、前記第1版、または、前記第2版の表面の前記インクを除去する印刷方法。
【請求項12】
インク供給部から前記インクを第1保持部の表面の第1版、または、第2保持部の表面の第2版に供給するインク供給工程と、
前記第1版と第2版との間で前記インクの一部を受け渡すパターン形成工程と、
前記一部のインクを対象物へ転写する転写工程と、
前記第1保持部、または、前記第2保持部の表面を粘着テープで清掃する清掃工程と、を含む印刷方法であり、
前記粘着テープを表面に有し、前記粘着テープで前記第1版、または、前記第2版の表面の前記インクを除去するクリーニング機構を用い、
前記クリーニング機構は、第1クリーニング具と、第2クリーニング具と、その間に位置する第3クリーニング具とを含み、前記第1クリーニング具と、前記第2クリーニング具と、前記第3クリーニング具とが、それぞれ前記粘着テープを介して、前記第1版、または、前記第2版の表面に接して前記インクを除去する印刷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置と印刷方法に関する。特に、表面が平坦な印刷版を用いた印刷装置と印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコーン版を用いた印刷技術がある(特許文献1)。図1(a)~図1(f)の断面図で、この印刷技術を説明する。
図1(a)で第1版14aを準備する。この第1版14aは、シリコーンでできている。第1版14aの表面は、中付着領域22cであり、中程度の付着力を有する。
【0003】
図1(b)で、第1版14aに、インク21を全面に塗布する。
図1(c)で、このインク21の上面より第2版15aを積層する。この第2版15aも、シリコーンでできている。第2版15aの表面は低付着領域22aで、その表面に光照射することで、光照射した表面に、付着力が強い高付着領域22bが形成され、付着力が低い低付着領域22aと付着力の高い高付着領域22bと、に分かれる。
図1(d)で、第2版15aを第1版14aより引き離す。この時、高付着領域22b上のインク21bは、第2版15aに付着し、低付着領域22a上のインク21aは、付着せず、第1版14aに残る。つまり、インク21が、付着しやすい方へ付着する。
【0004】
図1(e)で、図1(d)の第2版15aを、対象物20へ積層させる。その後、第2版15aを取り除く。
結果、図1(f)で、対象物20表面にインク21bが残る。
【0005】
この印刷技術により、対象物20上にインク21bのパターンが形成できる。
インク21の付着性は、高付着領域22b、中付着領域22c、低付着領域22aの順に弱くなる。この順番により、図1(d)で、インク21aが、第1版14aに、インク21bが、第2版15aに残る。
【0006】
さらに、対象物20の表面が、第2版15aの高付着領域22bより、インク21の付着性が高ければ、対象物20の表面に付着する。
この印刷技術では、光技術で第2版15aが作製できるので、大面積のパターンを形成できる。特に、大型デイスプレイなどのパターン形成技術として利用できる。
【0007】
この印刷技術では、版の加工を必要とせず、安価で短時間で、実施できる。第2版15aは、表面が平坦な版である。
なお、図2は、図1において、低付着領域22aと、高付着領域22bとを入れ替えた場合のプロセスを説明する断面図である。この場合、最終的に、第1版14aで対象物20へインク21aが転写される。
また、図3は、図1の第1版14aと図2の版15aとを入れ替えた場合のプロセスを説明する断面図である。
さらに、図4は、図3で低付着領域22aと、高付着領域22bとを入れ替えた場合のプロセスを説明する断面図である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特許6411254号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、現在、この表面が平坦な版を用いて連続して印刷する装置はなかった。
そこで、本願の発明の課題は、平坦な表面を有する印刷版を用いた印刷装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、表面が平坦な第1版と第2版と、上記第1版と上記第2版とが、それぞれ別個に表面に配置される第1保持部と第2保持部と、上記第1版又は上記第2版にインクを供給するインク供給部と、上記第1版、または、上記第2版上の上記インクが転写される対象物を保持するステージと、粘着テープを表面に有し、上記粘着テープで上記第1版、または、上記第2版の表面の上記インクを除去するクリーニング機構と、を含み、上記第1版と上記第2版とで上記インクを受け渡しする印刷装置を用いる。
【0011】
また、上記記載の印刷装置において、インク供給部から上記インクを第1保持部の表面の第1版、または、第2保持部の表面の第2版に供給するインク供給工程と、上記第1版と第2版との間で上記インクの一部を受け渡すパターン形成工程と、上記一部のインクを対象物へ転写する転写工程と、上記第1保持部、または、上記第2保持部の表面を粘着テープで清掃する清掃工程と、を含む印刷方法を用いる。
【発明の効果】
【0012】
本願発明の印刷装置と印刷方法では、上記平坦な表面を有する印刷版を用いた印刷装置と印刷方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】(a)~(f)従来の印刷技術を説明する断面図
図2】(a)~(f)従来の印刷技術を説明する断面図
図3】(a)~(f)従来の印刷技術を説明する断面図
図4】(a)~(f)従来の印刷技術を説明する断面図
図5】実施の形態1の印刷装置の断面図
図6】実施の形態2の印刷装置の断面図
図7】(a)~(c)実施の形態2の印刷装置の断面図
図8】(a)実施の形態3の印刷装置の断面図、(b)実施の形態3の印刷装置のクリーニング具の断面図
図9】実施の形態4の印刷装置の断面図
図10】実施の形態4の印刷装置の断面図
図11】実施の形態5の印刷装置の断面図
図12】実施の形態6の印刷装置の断面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、実施の形態を用いて説明するが、発明は以下には限定されない。
(実施の形態1)フレキソ技術を使用した印刷装置
図5に実施の形態1の印刷装置100の断面図を示す。まず、図1のプロセスを用いた場合で説明する。
【0015】
<印刷装置100の構造>
印刷装置100は、第1保持部14をクリーニングするクリーニング系50aと、第1保持部14と第2保持部15とを含むインクパターン化系50bと、インクが対象物20へ転写される対象物系50cとを含む。
【0016】
(1)クリーニング系50a
クリーニング系50aは、第1保持部14表面の第1版14aを清掃する。クリーニング系50aは、供給部10、ガイド部11、粘着テープ12、クリーニング機構13、ガイド部18、回収部19を含む。
【0017】
供給部10は、粘着テープ12を供給するもので、例えば、ロールの表面に粘着テープ12が巻かれている。以下、ロールは、円柱状のものである。棒状でもよい。
ガイド部11は、粘着テープ12にテンションを掛け、導くもので、例えば、ロールである。
粘着テープ12は、第1保持部14の表面のインクを取り除くための粘着性を有するテープである。
【0018】
粘着テープ12が、強粘着性では、第1版14aが壊れてしまう恐れがある。このため、粘着テープ12として、微粘着の粘着テープを使用する。粘着力は、20~400N/mがよい。また、40~200N/mがよい。さらに、80~160N/mが好ましい。材質はポリオレフィン、ポリプロピレンである。
有機溶剤を使用する清掃は、使用しない。有機溶媒は、体に良くなく、きれいに清掃するまでに時間を要するためである。
【0019】
クリーニング機構13は、粘着テープ12を、第1保持部14の表面に配置された第1版14a(図1)に張り付け、第1版14aの表面のインクを粘着テープ12で奪い取る。結果、第1版14aの表面をクリーニングする。
なお、図5で、インクパターン系50b、クリーニング系50a、対象物系50cは、それぞれ移動可能である。クリーニング系50aは、第2保持部15をクリーニングすることもできる。
【0020】
クリーニング機構13は、粘着テープ12を第1保持部14へ押さえる必要があるため、ある程度強度が必要である。硬度Aとして15°以上が好ましい。ヤング率で示すと、500kPa~50MPaがよい(15°=500kPa)。以下のクリーニング機構、クリーニング具も同様である。クリーニング機構13は、たわまない程度に剛性を持ち、その表面で、粘着テープ12を送るように回転する。なお、粘着テープ12が、クリーニング機構13の表面で滑ってもよい。ただし、クリーニング機構13は、粘着テープ12と保持部表面の版との密着力より小さい粘着力で、粘着テープ12をグリップするような材料でもよい。
ガイド部18は、粘着テープ12にテンションを掛け、導くもので、例えば、ロールである。
【0021】
回収部19は、粘着テープ12を回収するもので、例えば、ロールであり、その表面に粘着テープ12を巻きながら回収する。
(2)インクパターン系50b
インクパターン系50bは、第1保持部14と第2保持部15とインク供給部16とを含む。
(2a)第2保持部15
第2保持部15は、例えば、ロール、または、平板状であり、その表面に、図1で示した第2版15aを有する。ロールの場合で説明する。そのロールは、その表面にパターンに相当するインクを受け取り、対象物20へそのインクを転写するロールである。
【0022】
第2版15aは、シリコーンを表面に有する。第2版15aは、厚みが25μmのシリコーンを、厚み125μmの基材上に有する。
【0023】
第2版15aの材料(基材を除く、以下同じ)としてはシリコーンが最も広く用いられているため、シリコーンからなる第2版15aに関して詳細に述べる。
シリコーンの表面はその組成、架橋密度、架橋度、平均分子量、平均ポア径によって表面の付着性および表面自由エネルギーが変化する。したがって接触角および接触角から見積もられる表面自由エネルギーが同一であっても、上記の物理的因子によって付着性は大きく変化する。したがって、一般的に知られているような表面自由エネルギーの差異のみで転写性が決定されるものではない。さらに溶媒を吸収したシリコーン表面の付着性は一般的に低下する。すなわち、インクが塗布された第1版14aの表面と、インクを受理する第2版15a(図1)の表面が同一の材料からなっていても、第2版15aの表面のインク付着力は、第1版14aの表面のインク付着力よりも小さくすることができる。
【0024】
第2版15aとして用いられるシリコーンとしては主にポリジメチルシロキサンの架橋物が用いられる。シリコーンの硬さは0.5MPaから50MPa程度が望ましい。シリコーンの硬化手法としては常温硬化性、熱硬化性、UV硬化性のいずれであってもよい。第2版15aの表面は、均一な厚みのインクが形成されるように、シート状の第2版15aの場合には平坦に形成され、しかも、表面粗さRaが50nm以下(好ましくは10nm以下)の平滑面に形成される。シリコーンは一般的に伸縮性に富み、パターン歪みが発生しやすいため、シリコーンの背部にプラスチックフィルムやガラスや金属基材を張合わせて固定することが望ましい。また、印圧の調整用に適宜クッション材を用いてもよい。
【0025】
対象物20は、各種製品である。例えば、デイスプレイなどである。材料としては、表面自由エネルギーが比較的高い材料であって、表面平滑性が高ければよく、ガラス、シリコンウエハなどのケイ素化合物、固体金属、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリイミドなどが挙げられる。ポリテトラフルオロエチレンのような低表面自由エネルギー物質は対象物20に向かない。
【0026】
(2b)第1保持部14
第1保持部14は、例えば、ロール、または、平板状であり、インク供給部16より、その表面の第1版14aでインク21を受け取り、第2保持部15へインク21を供給する。第1版14aと第2版15aとでインク21aを受け渡しする。
【0027】
第1版14aもシリコーンである。総厚みは、165μmで、表面にシリコーンを有し、その厚みは40μmである。
【0028】
インク21には反転転写印刷用組成物が好適に用いられる。すなわち表面エネルギー調整剤として界面活性剤を含み、速乾性溶媒および、遅乾性溶媒を含み、さらに、インクの機能性を発現する固形分を含むものである。そのようなインクとしては、限定するものではないが、導電性金属からなる微粒子分散インク、有機半導体インク、酸化物半導体ゾルゲルインク、絶縁性高分子インク等が挙げられる。製造する製品、対象部材ごとで固形分は異なる。
【0029】
本実施の形態による方法におけるインク膜は、半乾燥状態におけるインク粘弾性率によって影響をうけるものの、概ね1μm以下であることが要求される。これは各版間の付着性の差異によってインクの必要部分を受理する工程において、インクの破断を起こす必要があるためである。半乾燥状態にあるインク膜の破断点における歪みが大きければ大きいほど(すなわち、造膜性が高いほど)、インクを受理することが難しくなるためであり、このような場合は、インク厚を薄くする、転写速度を遅くする、または付着力の差を大きくする必要がある。
【0030】
(2c)インク供給部16は、インク21を第1保持部14の表面の第1版14aに均質に供給する。ダイコートやスキージで一定厚みのインク21の層を第1版14aの表面に形成する。なお、下記で説明するが、図2,3のプロセスをする場合は、インク供給部16は、第2保持部15へインク21aを供給する。
(3)対象物系50c
対象物系50cは、対象物20を保持し、移動するステージ17を有する。ステージ17は、移動可能である。ステージ17上に配置された対象物20は、パターン化されたインクを受け取る。
<印刷装置100のプロセス>
(1)インク供給工程
図1(b)と同様に、インク供給部16からインク21を第1保持部14表面の第1版14aの表面全体に供給する。インク供給部16は、例えば、ダイノズルであり、第1保持部14は回転する。結果、一定厚さのインクの層(インク膜)を第1版14aの全面に形成できる。
【0031】
(2)パターン形成工程
第2保持部15と第1保持部14とは同期して回転する。図1(c)~図1(d)と同様に、第1保持部14は、その表面の第1版14aのインク膜の一部を、第2保持部15の表面の第2版15aへ渡す。
【0032】
(3)転写工程
図1(e)~図1(f)と同様に、第2保持部15上の第2版15aは、上記受け取ったインク膜をステージ17上の対象物20へ転写する。
図5では、対象物系50cと第2保持部15とが離れているが、第2保持部15を対象物20へ転写する場合は、対象物系50cと第2保持部15とが相対的に移動でき、対象物20にインク21bを印刷できる。
(4)清掃工程
粘着テープ12は、クリーニング系50aで移動される。粘着テープ12は、クリーニング機構13により、第1保持部14上の第1版14aに押し付けられる。その結果、粘着テープ12は、第1版14a上の残ったインクを除去する。同様に、第2保持部15とクリーニング系50aとが相対移動し、第2保持部15の表面にある第2版15aも清掃できる。
なお、クリーニングが終了すると、クリーニング系50aが、第1保持部14から離れる。この時、ガイド部11,18で両面テープ12は、テンションを維持し、第1保持部14からスムーズに離れる。版のクリーニング状態を保つことができる。
【0033】
図1で示した第1版14aが、第1保持部14の表面に、第2版15aが、第2保持部15の表面に位置している。図1(a)~図1(f)と同様に、インク21をパターン化して、対象物20表面に転写できる。
クリーニング系50aで、第2版15aまたは、第1版14aが清掃されるので、連続して印刷できる。
【0034】
<実施の形態1の効果>
上記構成、プロセスにより、連続してインクをパターン化し、対象物へ塗布できる。
なお、図2~4のプロセスを用いる場合を説明する。
以下の表1で、図1図4のプロセスを比較する。
【表1】
表2で実施の形態1(図5)の場合の各保持部のプロセスを比較する。
【表2】
図5の装置で図1~4のプロセスを実現するには、第1,2保持部とそれにセットされる版との関係は、表3となる。
【表3】
このように配置すれば、図5の装置で、図1図4のプロセスを実現できる。
なお、以下の実施の形態でも、同様に、図1図4のプロセスを実現できる。
(実施の形態2)第1,2クリーニング具
実施の形態2を、図6の断面図を用いて説明する。実施の形態1との違いは、クリーニング機構13としてクリーニング具が2つあることである。説明しない事項は、実施の形態1と同様である。なお、第1保持部14の表面には、図示しないが、第1版14aまたは第2版15aがある。表3のプロセスで存在する版が変わる。クリーニング系50aを相対移動することで、第1保持部14、第2保持部15の両方をクリーニングできる。以下、図6で説明するが、表3のように、第1保持部14と第2保持部15とが逆になる場合がある。
【0035】
クリーニング機構13として、第1クリーニング具13aと第2クリーニング具13bがある。
例えば、第1クリーニング具13aと第2クリーニング具13bは、ロール形状である。
第1クリーニング具13aは、第2クリーニング具13bより、第1保持部14の回転方向の上流側にあり、先に、第1保持部14に接する。
第2クリーニング具13bは、第1クリーニング具13aより、第1保持部14の回転方向の下流側にあり、後に、第1保持部14に接する。
【0036】
第1クリーニング具13aは、第1保持部14表面の第1版14aに触れ、粘着テープ12を第1保持部14に張り付ける。
第2クリーニング具13bは、第1保持部14表面の第1版14aから、粘着テープ12をはがす。
【0037】
実施の形態1と異なり、粘着テープ12が、第1保持部14表面の第1版14aに一時付着し、その後、取り除かれる。
実施の形態1と同様、図1図4のプロセスをする場合、第1保持部14表面の版を清掃する。さらに、相対移動して、第2保持部15の表面の版を清掃することもできる。
<クリーニング具の径>
第1クリーニング具13aの径は、第2クリーニング具13bの径より、大きいのが好ましい。第1クリーニング具13aは、第1保持部14表面の第1版14aまたは第2版15aに粘着テープ12をしっかり張り付けるため、より大きな径で、第1保持部14を押し付けるのが好ましい。一方、第2クリーニング具13bは、第1保持部14表面の第1版14aまたは第2版15aの粘着テープ12をすばやく、はがすため、径が小さいほどよい。
【0038】
<第2クリーニング具の径aと第1保持部14の径bとの径の比率>
第2クリーニング具の径aと第1保持部14の径bとの径の比率を、図7(a)~図7(c)で説明する。
図7(a)は、大きな径の第2クリーニング具13bと第1保持部14との位置関係を示す断面図である。図7(c)は、小さな径の第2クリーニング具13bと第1保持部14との位置関係を示す断面図である。図7(b)は、図7(a)と図7(c)の間の大きさの第2クリーニング具13bと第1保持部14との位置関係を示す断面図である。
【0039】
第2クリーニング具の径aと第1保持部14の径bとの径の比率(b/a)と剥離力との関係を調べた。剥離力が大きいと、第1版14aまたは第2版15aにダメージが生じるのでよくない。
【0040】
剥離力は、協和界面科学株式会社の粘着・皮膜剥離解析装置VPA-3を使用して測定した。
【0041】
第1保持部14の半径bを指定して、表4に示すように第2クリーニング具の径の半径aを変えた。
【0042】
粘着テープ12は、ポリオレフィンフィルムの上にアクリル系粘着剤が塗布されたものを使用した。厚みは表4のものを使用した。
【0043】
【表4】
比率が小さいと、剥離時に力がかかるので、第1版14aまたは第2版15aがダメージを受ける。また、粘着テープ12が薄いと、伸びなどのため、飛び上がったり剥離力が不安定で高い。
【0044】
結果、少なくとも比率は、2以上必要である。4以上がよく。さらに8以上が好ましい。粘着テープ12の厚みは、70μm以上厚い必要がある。90μm以上がよく、100μm以上が好ましい。
<実施の形態2の効果>
実施の形態1の効果に加えて、第1保持部14の表面をより清掃でき、パターン形成がより精度よくできる。なお、クリーニング具が1つである実施の形態1でも、比率、粘着テープ厚みは、同様のことが言える。
また、第2保持部15をクリーニングする場合も同様である。クリーニング系50a、第1保持部14、第2保持部15、インク供給部16、対象物系50cはそれぞれ独立して、その位置を変えることができる。
【0045】
(実施の形態3)第2クリーニング具13
実施の形態3を図8(a)の断面図を用いて説明する。実施の形態2との違いは、第2クリーニング具13bの形状と、第2クリーニング具13bが回転しないことである。説明しない事項は、実施の形態1、2と同様である。
【0046】
第2クリーニング具13bは、回転しないが、その表面を粘着テープ12が滑り移動する。第2クリーニング具13bは、三角柱のブロック体で先端に円柱状体がある。実施の形態2で説明した比率を大きくすることができる。
なお、図8(b)に第2クリーニング具13bの拡大図を示す。第2クリーニング具13bの端部に、小さな円柱体を設けている。円柱体を回転させてもよい。円柱体を固定し、その表面を粘着テープ12が滑っていってもよい。固定する場合は、円柱体の一部があればよい。
なお、上記は、第1保持部14を清掃する場合であったが、第2保持部15を清掃する場合も同様である。また、第1クリーニング具13a、クリーニング機構13、第3クリーニング具13c(実施の形態6)が、この実施の形態3の第2クリーニング具13bと同様でもよい。
クリーニング系50aは、常時、第1保持部14を清掃しているのではなく、定期的に清掃する。
【0047】
(実施の形態4)ロールでなく平板の例
実施の形態4の印刷装置400を、図9の断面図を用いて説明する。説明しない事項は上記と同様である。
実施の形態1(図5)との違いは、第1保持部14、または、第2保持部15がロール形状でなく平板形状であることである。
図9では、第1保持部14が平板形状であり、第2保持部15がロール形状である。第1保持部14は、相対的に移動し、クリーニング機構13と接し、また、第2保持部15とも接する。上記実施の形態と同様に、対象物20に印刷ができる。
図10では、第1保持部14がロール形状であり、第2保持部15が平板形状である。第2保持部15は、上下方向に移動し、第1保持部14と接する。また、水平状態に移動、上下方向に移動し、対象物20とも接する。上記実施の形態と同様に、対象物20に印刷ができる。
図示はしないが、第1保持部14と第2保持部15とが平板形状でもよい。
上記同様に印刷を実施できる。
【0048】
(実施の形態5)クリーニング系50
実施の形態5の印刷装置500を図11の断面図を用いて説明する。説明しない事項は上記と同様である。
実施の形態1(図5)との違いは、クリーニング系50aが2つあることである。
第1保持部14と第2保持部15とを、別々のクリーニング系50でクリーニングできる。長期間、各要素の移動が少なくクリーニングができる。
この例では、2つのクリーニング系50であるが、1つのクリーニング系50に合体し、回収部19、供給部10がそれぞれ1つ、ガイド部11、18、クリーニング機構13がそれぞれ2つとしてもよい。クリーニング機構13は、実施の形態2のものでもよい。
なお、他の実施の形態でも、第1保持部14と第2保持部15とを、別々のクリーニング系50でクリーニングするのが好ましい。タクト(時間)や、機構の複雑さの観点から、別々のクリーニング系50を設けるのが好ましい。
【0049】
(実施の形態6)第3クリーニング具13c
実施の形態6の印刷装置600を図12の拡大断面図を用いて説明する。説明しない事項は上記と同様である。図12は、第1保持部14の周辺の拡大図である。
実施の形態2(図6)との違いは、クリーニング具が3つあることである。
第1クリーニング具13aと第2クリーニング具13bとの間に、第3クリーニング具13cが位置する。第3クリーニング具13cは、粘着テープ12を第1保持部14へ押し付ける。
第1クリーニング具13aと第2クリーニング具13bとの間で、粘着テープ12が少し、第1保持部14から浮く場合がある。それを防止して、確実にクリーニングをする。
【0050】
(全体として)
各実施の形態は組み合わせできる。例えば、実施の形態2の比率は、実施の形態1,3でも有効である。ロールは回転しても、しなくともよい。
なお、ロール状の供給部10の粘着テープ12がなくなる直前に、ロール状の新供給部10の粘着テープ12を、旧供給部10の粘着テープ12に張り付け、旧供給部10と新供給部10とを交換するのがよい。なお、旧供給部10の粘着シー12が巻かれた芯は、つぶされ、新供給部10が配置される機構が好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本願発明の印刷装置は、フレキソ版、凹版など各種版を使用する印刷装置として利用される。
【符号の説明】
【0052】
10 供給部
11 ガイド部
12 粘着テープ
13 クリーニング機構
13a 第1クリーニング具
13b 第2クリーニング具
14 第1保持部
14a 第1版
15 第2保持部
15a 第2版
16 インク供給部
17 ステージ
18 ガイド部
19 回収部
20 対象物
21 インク
21a インク
22a 高粘着領域
22b 低粘着領域
22c 中粘着領域
50a クリーニング系
50b インク供給系
50c 対象物系
100、200、300、400、500 印刷装置
図1
図2
図3
図4
図5
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図7
図8
図9
図10
図11
図12