(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-19
(45)【発行日】2023-12-27
(54)【発明の名称】冷凍システム
(51)【国際特許分類】
F24F 11/54 20180101AFI20231220BHJP
F24F 11/38 20180101ALI20231220BHJP
F24F 11/58 20180101ALI20231220BHJP
【FI】
F24F11/54
F24F11/38
F24F11/58
(21)【出願番号】P 2018203098
(22)【出願日】2018-10-29
【審査請求日】2021-09-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小木曽 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 匡史
(72)【発明者】
【氏名】下田 順一
(72)【発明者】
【氏名】賀川 幹夫
【審査官】町田 豊隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-108281(JP,A)
【文献】特開2006-275411(JP,A)
【文献】特開2005-063385(JP,A)
【文献】特開2015-197242(JP,A)
【文献】特開2006-023051(JP,A)
【文献】特開2011-242004(JP,A)
【文献】特開2012-077986(JP,A)
【文献】特開2004-060943(JP,A)
【文献】特開2009-014233(JP,A)
【文献】特開2015-108487(JP,A)
【文献】特開2018-036740(JP,A)
【文献】特開2011-058743(JP,A)
【文献】特開2011-106784(JP,A)
【文献】特開平07-103540(JP,A)
【文献】特開2005-291642(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11/54
F24F 11/58
F24F 11/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互に通信可能な複数の冷凍装置(1A,1B,1C)と、
複数の冷凍装置(1A,1B,1C)の少なくとも1つに接続され、入力部(2a)及び出力部(2b)を有する操作機器(2)と、
複数の前記冷凍装置のそれぞれに設けられ、前記冷凍装置の運転情報を記憶する記憶部(6)を有する制御装置(
4)と、を備え、
前記入力部(2a)は、前記操作機器(2)が接続された一の冷凍装置の運転情報と他の冷凍装置の
前記運転情報との比較の指示を受け付け、
前記制御装置(
4)は、前記比較の指示により、前記一の冷凍装置の
前記記憶部(6)に記憶された前記運転情報と、当該一の冷凍装置との相互通信で取得された前記他の冷凍装置の
前記記憶部(6)に記憶された前記運転情報とを比較して、所定の比較結果を取得し、
前記出力部(2b)は、前記比較結果を出力する、冷凍システム。
【請求項2】
相互に通信可能な複数の冷凍装置(1A,1B,1C)と、
保守作業者により複数の冷凍装置(1A,1B,1C)の少なくとも1つに接続され、入力部(2a)及び出力部(2b)を有する操作機器(2)と、
複数の前記冷凍装置のそれぞれに設けられ、前記冷凍装置の運転情報を記憶する記憶部を有する第1制御装置(
4)と、
前記操作機器に設けられた第2制御装置(2c)と、を備え、
前記入力部(2a)は、前記操作機器(2)が接続された一の冷凍装置の運転情報と他の冷凍装置の運転情報との比較の指示を受け付け、
前記比較の指示を受け付けた前記操作機器(2)の前記
第2制御装置
(2c)は、前記比較の指示により、前記一の冷凍装置の
前記記憶部に記憶された前記運転情報と、当該一の冷凍装置との相互通信で取得された前記他の冷凍装置の
前記記憶部に記憶された前記運転情報とを比較して、所定の比較結果を取得し、
前記出力部(2b)は、前記比較結果を出力する、冷凍システム。
【請求項3】
前記記憶部(6)が、前記比較結果についての情報を記憶する、請求項
1又は2に記載の冷凍システム。
【請求項4】
前記運転情報が、前記冷凍装置(1A,1B,1C)の不具合に関する運転情報を含み、前記比較結果が、不具合の原因及び/又は不具合の対処方法についての情報を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の冷凍システム。
【請求項5】
前記運転情報が、前記冷凍装置(1A,1B,1C)の消費電力に関する運転情報を含み、前記比較結果が、前記消費電力の改善についての情報を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の冷凍システム。
【請求項6】
前記運転情報が、機種データを含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の冷凍システム。
【請求項7】
前記運転情報が、運転状態データを含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の冷凍システム。
【請求項8】
前記出力部(2b)が、前記一の冷凍装置の運転情報と比較される前記他の冷凍装置の運転情報のうち、より前記一の冷凍装置の運転情報と一致度が高い運転情報を有する前記他の冷凍装置における比較結果を優先的に出力する、請求項1~7のいずれか1項に記載の冷凍システム。
【請求項9】
前記出力部(2b)が、前記一致度が高い順に複数の比較結果を出力する、請求項8に記載の冷凍システム。
【請求項10】
前記出力部(2b)が、入力された指示に関連するメーカー提供情報を優先的に出力する、請求項1~9のいずれか1項に記載の冷凍システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、冷凍システムに関する。
【背景技術】
【0002】
冷凍装置としての複数の空気調和機と、複数の空気調和機を集中制御する集中制御装置とを備えた空気調和システム(冷凍システム)が知られている(例えば、特許文献1参照)。
この空気調和システムは、各空気調和機に接続された通信子機と、集中制御装置に接続された通信親機とによって、各空気調和機と集中制御装置とが互いに通信可能に構成されている。集中制御装置は、各空気調和機との通信によって、各空気調和機に対する操作および状態の確認を行うことができる。また、集中制御装置は、各空気調和機との通信によって、室内機に行った操作の履歴を記憶したり、室内機に生じた異常を記憶したりすることもできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1記載の空気調和システムは、集中制御装置において、操作データ、状態データ、操作履歴データ、及び異常データ等の各種データが記憶されるので、大容量の記憶装置が必要であり、データ保全等のためのシステム構築も非常に煩雑となる。
【0005】
本開示は、システム構築が煩雑となる集中制御装置を用いずに、各冷凍装置における運転情報を冷凍装置間で相互に利用することができる、冷凍システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本開示の冷凍システムは、
相互に通信可能な複数の冷凍装置と、
複数の冷凍装置の少なくとも1つに接続され、入力部及び出力部を有する操作機器と、
制御装置と、を備え、
前記入力部は、前記操作機器が接続された一の冷凍装置の運転情報と他の冷凍装置の運転情報との比較の指示を受け付け、
前記制御装置は、前記比較の指示により、前記一の冷凍装置の運転情報と、当該一の冷凍装置との相互通信で取得された前記他の冷凍装置の運転情報とを比較して、所定の比較結果を取得し、
前記出力部は、前記比較結果を出力する。
【0007】
このような構成によって、一の冷凍装置と他の冷凍装置との間で運転情報を比較してその比較結果を取得し、当該比較結果を出力することができる。つまり、各冷凍装置における運転情報を冷凍装置間で相互に利用することが可能となる。
【0008】
(2)好ましくは、前記冷凍装置が、前記運転情報を記憶する記憶部を備えている。
このような構成によって、各冷凍装置の記憶部に記憶した運転情報を相互に利用することができる。
【0009】
(3)好ましくは、前記記憶部が、前記比較結果についての情報を記憶する。
このような構成によって、各冷凍装置の記憶部に記憶した比較結果の相互利用が可能になる。
【0010】
(4)好ましくは、前記運転情報が、前記冷凍装置の不具合に関する運転情報を含み、
前記比較結果が、不具合の原因及び/又は不具合の対処方法についての情報を含む。
このような構成によって、一の冷凍装置と他の冷凍装置との間で不具合に関する運転情報を比較し、その比較の結果として、不具合の原因及び/又は不具合の対処方法についての情報を取得することができる。
【0011】
(5)好ましくは、前記運転情報が、前記冷凍装置の消費電力に関する運転情報を含み、
前記比較結果が、前記消費電力の改善についての情報を含む。
このような構成によって、一の冷凍装置と他の冷凍装置との間で消費電力に関する運転情報を比較し、その比較の結果として、消費電力の改善についての情報を取得することができる。
【0012】
(6)好ましくは、前記運転情報が、機種データを含む。
この構成によれば、運転情報が機種データを含むことによって、一の冷凍装置の運転情報と、当該一の冷凍装置と同一機種の他の冷凍装置の運転情報との比較を容易に行うことができる。
【0013】
(7)好ましくは、前記運転情報が、運転状態データを含む。
この構成によれば、運転情報が運転状態データを含むことによって、一の冷凍装置の運転状態データと、他の冷凍装置の運転状態データとを比較し、その比較結果を取得することができる。
なお、運転状態データとは、例えば温度センサ、圧力センサ、電力センサ等の測定データ、圧縮機の回転数、ファンの回転数等の機器の制御データ、冷凍装置の運転時間等をいう。
【0014】
(8)好ましくは、前記出力部が、前記一の冷凍装置の運転情報と比較される前記他の冷凍装置の運転情報のうち、より前記一の冷凍装置の運転情報と一致度が高い運転情報を有する前記他の冷凍装置における比較結果を優先的に出力する。
この構成によれば、一の冷凍装置の運転情報と一致度が高い運転情報を有する他の冷凍装置は、同じ運転状況にある可能性が高いので、当該他の冷凍装置における比較結果を優先的に出力することで、より適切な比較結果を活用することができる。
【0015】
(9)好ましくは、前記出力部が、前記一致度が高い順に複数の比較結果を出力する。
この構成によれば、一致度が高い順に複数の比較結果を出力することによって、複数の比較結果の中からより適切な比較結果を選択して活用することができる。
【0016】
(10)好ましくは、前記出力部が、入力された指示に関連するメーカー提供情報を優先的に出力する。
この構成によれば、冷凍装置のメーカーが提供する情報は重要である可能性が高いので、当該情報を優先的に出力することによって、当該情報をもれなく保守作業者等に伝えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】冷凍システムの一実施形態を示す概略的な構成図である。
【
図2】冷凍装置の冷媒回路を示す概略的な構成図である。
【
図4】不具合解消のための情報利用の処理手順を示すフローチャートである。
【
図5】省エネルギーのための情報利用の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[冷凍システムの構成]
図1は、冷凍システムの一実施形態を示す概略的な構成図である。
図2は、冷凍装置の冷媒回路を示す概略的な構成図である。
本実施形態の冷凍システムは、複数の冷凍装置1A~1Cを有している。各冷凍装置1A~1Cは、例えば室内ユニット21及び室外ユニット22を備えたセパレート型の空気調和装置である。
図2に示すように、冷凍装置1A~1Cは、圧縮機30、四路切換弁32、室外側熱交換器31、膨張弁34,24、及び室内側熱交換器25を冷媒配管23で接続してなるヒートポンプ式の冷媒回路11を備えている。
【0019】
この冷媒回路11は、冷房運転の際に、圧縮機30から吐出される高温高圧の冷媒を四路切換弁32を介して室外側熱交換器31に送り、室外側熱交換器31で凝縮した冷媒を膨張弁24で減圧した後に室内側熱交換器で25蒸発させて圧縮機30に吸入させる冷凍サイクルを行う。また、冷媒回路11は、暖房運転の際に、圧縮機30から吐出される高温高圧の冷媒を四路切換弁32を介して室内側熱交換器25に送り、室内側熱交換器25で凝縮した冷媒を膨張弁34で減圧した後に室外側熱交換器31で蒸発させて圧縮機30に吸入させる冷凍サイクルを行う。各熱交換器25,31には、ファン26,33によって空気流が供給される。
【0020】
冷凍装置1A~1Cには、各種のセンサが設けられている。例えば、冷凍装置1A~1Cには、吸込温度(室内温度)を検出する空気温度センサ27、圧縮機30の吐出管及び吸入管における冷媒の温度等を検出する冷媒温度センサ35a,35b、圧縮機30の吸入圧力及び吐出圧力等を検出する圧力センサ36a,36b、冷凍装置1A~1Cの消費電力を検出する電力センサ等が設けられている。これらのセンサで得られた測定データは、後述する制御装置4の記憶部6に記憶される。また、圧縮機30、ファン26,33、膨張弁24,34等の各種機器は、制御装置4によって動作が制御される。この制御に用いられるデータ、例えば圧縮機30及びファン26,33の運転周波数、並びに、膨張弁24,34の開度等の制御データも、制御装置4の記憶部6に記憶される。
【0021】
各冷凍装置1A~1Cは、さらに通信装置3と、制御装置4とを有している。各冷凍装置1A~1Cは、通信装置3を介して相互に通信可能に接続されている。各冷凍装置1A~1Cの通信装置3は、他の冷凍装置1A~1Cの通信装置3のアドレス情報を記憶する記憶部を有している。通信装置3としては、例えば冷凍装置1A~1Cが設置される設備内に構築されたLAN(ローカルエリアネットワーク)に接続する無線又は有線LANアダプタを採用することができる。この場合、各冷凍装置1A~1Cは、LANによって相互に通信可能に接続される。
【0022】
なお、通信装置3は、LAN内に設置されたルータを介してインターネット等の外部のネットワークを経由して、各冷凍装置1A~1Cを相互に通信可能に接続するものであってもよい。また、通信装置3は、3G回線やLTE回線により外部のネットワークを経由して各冷凍装置1A~1Cを相互に接続するものであってもよい。通信装置3は、冷凍装置1A~1Cに内蔵されていてもよいし、外付けされていてもよい。
【0023】
図3は、制御装置4の構成図である。
各冷凍装置1A~1Cの制御装置4は、冷凍装置1A~1Cの内部機器の動作等を制御する。制御装置4は、各種電子部品を実装した制御基板により構成されている。制御装置4は、CPU等を有する演算部5、RAM,ROM、フラッシュメモリ等からなる記憶部6等を備えている。本実施形態では、制御装置4を構成する制御基板は、例えば空気調和装置の室内ユニット21又は室外ユニット22の筐体内に設けられた電装品箱に収容される。ただし、制御装置4を構成する制御基板は、電装品箱の内部に限らず外部に配置されていてもよい。
【0024】
制御装置4は、記憶部6に記憶されたアプリケーションプログラムを演算部5が実行することによって所定の機能を発揮する。特に、本実施形態の制御装置4は、複数の冷凍装置1A~1Cの運転情報を比較し、その比較結果を取得する比較部5aとしての機能を有している。
【0025】
記憶部6には、運転情報として、各種センサの測定データや各種機器の制御データ、運転時間等の運転状態データが記憶される。また、記憶部6には、運転情報として、冷凍装置1A~1Cの型番等の機種データも記憶される。さらに記憶部6には、冷凍装置1A~1Cで生じた不具合に関するデータ(以下、「不具合データ」ともいう)が記憶される。
【0026】
この不具合データは、過去に生じた不具合であって、すでに原因を究明し何らかの対処を行った不具合についてのデータである。具体的に、不具合データは、不具合の発生原因を特定する「原因データ」、及び、不具合解消のための「対処データ」を含む。また、不具合データには、不具合を解消するためにメーカーから提供された対処データ等が含まれていてもよい。不具合データには、不具合に関係する運転情報が対応付けられている。不具合に関係する運転情報とは、例えばその不具合が生じたときに大きく変動したり異常値をとったりするような不具合を特徴づける運転情報である。
【0027】
制御装置4は、入出力インタフェース7をさらに備えている。入出力インタフェース7は、ノート型又はタブレット型のパーソナルコンピュータのような外部端末2を接続するために用いられる。制御装置4は、外部端末2を介して入力された情報に基づいて所定の処理を行い、さらに処理の結果を外部端末2に送信する。この点において、外部端末2は、制御装置4に対して所定の処理を行わせるための操作を行う操作機器を構成している。外部端末2は、所定の情報の入力を受け付ける入力部2aと、処理の結果を出力するための出力部2bとを有している。入力部2aは、キーボード、タッチパネル、又はポインティングデバイス等により構成され、人による操作を介して情報の入力を受け付けることができる。出力部2bは、ディスプレイ等の表示部により構成され、表示によって情報を出力することができる。また、外部端末2は、CPU等の演算部、RAMやROM等のメモリを有する制御装置2cを備えている。この外部端末2の制御装置2cは、入力部2aから入力された情報を制御装置4に送信するための処理や、制御装置4から受信した情報を出力部2bに出力させる処理等を行う。
【0028】
本実施形態では、通信装置3を含む複数の冷凍装置1A~1Cと、冷凍装置1A~1Cに接続された外部端末2とによって冷凍システムが構築されている。そして、複数の冷凍装置1A~1Cは、通信装置3により互いに通信することによって、各冷凍装置1A~1Cが保持している情報を相互に利用することができる。具体的に、本実施形態の冷凍装置1A~1Cは、次の2つの目的で互いに情報を利用するように構成されている。
(1)不具合解消のための情報利用
(2)省エネルギーのための情報利用
【0029】
以下、それぞれの情報利用について詳細に説明する。
<不具合解消のための情報利用>
図4は、不具合解消のための情報利用の処理手順を示すフローチャートである。
一般に、冷凍装置1A~1Cにおいて何らかの不具合が生じた場合には、保守作業者が冷凍装置1A~1Cの運転情報を取得し、その運転情報から不具合の原因究明と不具合解消のための対処を行う。例えば、保守作業者は、制御装置4の入出力インタフェース7に外部端末2を接続し、冷凍装置1A~1Cの運転情報を外部端末2で取得する。運転情報は、例えば、冷凍装置1A~1Cの機種データ(型番)、各種センサの測定データ、圧縮機等の機器の制御データ等である。そして、保守作業者は、取得した運転情報から冷凍装置1A~1Cの運転状態を把握し、その運転状態からマニュアル等を参照して不具合の発生原因の調査や不具合解消のための対処を行う。
【0030】
これに対して本実施形態では、一の冷凍装置(例えば、冷凍装置1Aとする)で不具合が生じた場合、保守作業者が、その冷凍装置1Aの制御装置4に接続された外部端末2に、不具合の状況についての入力を行う。例えば、冷房運転時に「部屋が冷えない」、暖房運転時に「部屋が温まらない」、「異音が発生する」、「運転が停止した」といったように不具合の状況を保守作業者が入力する。この入力は、後述するように冷凍装置1A~1C間で運転情報を比較するための指示となる。指示の入力の形態としては、保守作業者が直接的に具体的な内容を入力する形態を採用してもよいし、複数の不具合例の項目を外部端末2の表示部2bに表示させ、いずれかの項目を保守作業者が選択する形態を採用してもよい。また、外部端末2は、指示の入力を受け付ける前に、冷凍装置1Aへのアクセスを許可するための認証情報(ID、パスワード等)の入力を保守作業者に求めてもよい。これにより、アクセス権限を持たない者による冷凍装置1Aへのアクセスを防ぎ、冷凍システムのセキュリティを高めることができる。
【0031】
外部端末2は、入力部2aによって不具合の状況が受け付けられると(
図4のステップS1)、その情報を一の冷凍装置1Aの制御装置4に送信する(ステップS2)。
一の冷凍装置1Aの制御装置4は、外部端末2から不具合の状況についての情報を受信したかどうかを判別し(ステップS11)、当該情報を受信した場合には、その不具合に関係する運転情報を、他の冷凍装置1B,1Cに問い合わせる(ステップS12)。不具合に関係する運転情報は、前述したように各冷凍装置1A~1Cの記憶部6に、不具合データに対応付けられた運転情報として記憶されている。また、問い合わせる運転情報には、他の冷凍装置1B,1Cの機種データも含まれる。
【0032】
一の冷凍装置1Aの制御装置4は、他の冷凍装置1B,1Cから不具合に関係する運転情報と機種データを受信すると(ステップS13)、当該運転情報と、自己の運転情報との比較を行う(ステップS14)。そして、制御装置4は、自己の運転情報と一致度が最も高い他の冷凍装置1B,1Cの運転情報と、この運転情報に対応付けられた不具合データ、つまり不具合の原因データと対処データとを特定する(ステップS15)。そして、制御装置4は、その不具合データを外部端末2に送信する(ステップS16)。
【0033】
なお、自己の運転情報と他の冷凍装置の運転情報との「一致」とは、完全な一致又は所定範囲をもって一致することをいう。例えば、自己の運転情報が示す値の±数%の範囲内に他の冷凍装置1B,1Cの運転情報が示す値が含まれる場合、「一致」とすることができる。また、「一致度」とは、比較する全ての運転情報のうち、一致している運転情報の割合をいう。
【0034】
外部端末2は、制御装置4から不具合データを受信したかどうかを判別し(ステップS3)、不具合データを受信した場合には、その不具合データを表示部(出力部)2bに出力する(ステップS4)。
したがって、外部端末2を操作する保守作業者が不具合の状況を入力すると、その結果として、不具合の原因とその対処の内容とを出力として得ることができる。出力された不具合の原因や対処の内容は、当該他の冷凍装置において過去に実際に発生した不具合についてのものであり、かつ一の冷凍装置の運転情報と一致度が高い運転情報を有する他の冷凍装置のものであるため、一の冷凍装置で発生した不具合と同一である可能性が高い。そのため、保守作業者が出力された対処の内容の通りに処置を行うことによって不具合を解消できる可能性も高くなる。また、出力された対処の内容どおりに処置を行うことによって、迅速に不具合に対処することができる。
【0035】
そして、以上のような制御装置4及び外部端末2の処理によって、複数の冷凍装置1A~1Cの間で運転情報を好適に相互利用することができる。そのため、従来技術(上記特許文献1参照)のように集中制御装置を備えなくても、各冷凍装置において運転情報や不具合についての情報を管理しておけばよく、情報の管理が容易となり情報の記憶容量も少なくすることができる。また、従来技術では、集中制御装置がすべての冷凍装置の制御を行うので集中制御装置の負荷が膨大となるが、本実施形態では、各冷凍装置1A~1Cにおいて負荷を分散して処理を行うことが可能となる。
【0036】
なお、一般的な不具合の原因としては、圧縮機30、ファン26,33、弁32,24,34、センサ等の機器の故障、冷媒不足、熱交換器25,31の汚れ等が挙げられる。不具合に対する対処の内容としては、機器の交換、冷媒の補充、熱交換器25,31の清掃等が挙げられる。
【0037】
図4のステップS15において、制御装置4は、自己の運転情報と一致度が高い、複数の他の冷凍装置1B,1Cの運転情報についての不具合データを外部端末2に送信してもよい。そして、外部端末2は、複数の不具合データを一致度が高い順番に出力することができる。この場合、保守作業者は、複数の不具合データの中から適切なものを選択し、より最適な対処を行うことができる。
【0038】
また、冷凍装置の機種が同一である場合、不具合が発生したときの運転状態も同一になる可能性が高い。そのため、一の冷凍装置1Aと他の冷凍装置1B,1Cとの間で比較する運転情報に機種データを含めることで、一の冷凍装置1Aと同一機種の他の冷凍装置1B,1Cで生じた不具合データを特定しやすくすることができる。また、制御装置4は、一の冷凍装置1Aと機種データが一致する他の冷凍装置1B,1Cの不具合データをより優先して特定し、外部端末2に送信するようにしてもよい。
【0039】
なお、前述したように、不具合データには、不具合を解消するためにメーカーから提供された対処データ等が含まれる。そして、メーカーから提供された対処データは、優先的に外部端末2で出力してもよい。メーカーから提供される対処情報は、重要である可能性が高く、また、適切な対処方法を示している可能性が高いからである。
【0040】
<省エネルギーのための情報利用>
次に、省エネルギーのための情報利用について説明する。
前述したように、冷凍装置1A~1Cには、消費電力を検出する電力センサ等が設けられ、その測定データは、制御装置4の記憶部6に記憶されている。本例の冷凍システムは、複数の冷凍装置1A~1Cの間で消費電力の比較を行い、その比較の結果として、消費電力の改善のための情報を出力する。
【0041】
図5は、省エネルギーのための情報利用の処理手順を示すフローチャートである。
例えば、月々の電気料金が大きい一の冷凍装置(例えば、冷凍装置1Aとする)について、消費電力を改善して電気料金の削減を図ろうとする場合、保守作業者等が、当該一の冷凍装置1Aに接続された外部端末2に消費電力の比較を行う旨の指示を入力する。この指示の入力の形態としては、保守作業者が「消費電力の比較」と直接的に入力する形態を採用してもよいし、「消費電力の比較」という項目を外部端末2の表示部2bに表示させ、その項目を保守作業者が選択する形態を採用してもよい。
【0042】
外部端末2は、入力部2aによって消費電力の比較の指示が受け付けられると(ステップS21)、その指示の情報を一の冷凍装置1Aの制御装置4に送信する(ステップS22)。
一の冷凍装置1Aの制御装置4は、外部端末2から指示の情報を受信したかどうかを判別し(ステップS31)、当該情報を受信した場合には、他の冷凍装置1B,1Cに消費電力を問い合わせる(ステップS32)。例えば、制御装置4は、問い合わせを行った時点の直近の0時~24時の間の消費電力を問い合わせる。
【0043】
一の冷凍装置1Aの制御装置4は、他の冷凍装置1B,1Cから消費電力のデータを受信すると(ステップS33)、当該消費電力と、自己の消費電力との比較を行う(ステップS34)。例えば、制御装置4は、0時~24時における消費電力の平均値の比較を行う。そして、制御装置4は、自己の消費電力よりも低い消費電力を有する他の冷凍装置1B,1Cを特定する(ステップS35)。例えば、そして、制御装置4は、特定された冷凍装置1B,1Cの消費電力のデータを外部端末2に送信する(ステップS36)。
【0044】
外部端末2は、制御装置4からの消費電力のデータを受信したかどうかを判別し(ステップS23)、当該データを受信した場合には、その消費電力のデータを自己の消費電力と比較したかたちで表示部(出力部)2bに出力する(ステップS24)。
図6は、消費電力の比較結果を示す説明図である。
図6において、表示部2bには、一の冷凍装置1Aの消費電力の変化と、他の冷凍装置1B,1Cの消費電力の変化とがグラフで示されている。そのため、一の冷凍装置1Aと他の冷凍装置1B,1Cとの消費電力の違いを一目で把握することができる。そして、他の冷凍装置1B,1Cの消費電力の変化を参考にして、一の冷凍装置1Aの消費電力の改善に役立てることが可能となる。例えば、一の冷凍装置よりも他の冷凍装置で消費電力が低くなる時間帯(例えば、
図6にハッチングを付した時間帯)では、一の冷凍装置においても消費電力を削減できる可能性が高いため、当該時間帯における一の冷凍装置の運転を見直しの対象とすることが考えられる。
【0045】
[本実施形態の作用効果]
(1)本実施形態の冷凍システムは、相互に通信可能な複数の冷凍装置1A~1Cと、複数の冷凍装置1A~1Cの少なくとも1つに接続される入力部2a及び出力部2bを有する外部端末(操作機器)2と、制御装置4とを備えている。そして、入力部2aは、前記外部端末2が接続された一の冷凍装置の運転情報と他の冷凍装置の運転情報との比較の指示を受け付け、制御装置4は、前記比較の指示により、一の冷凍装置の運転情報と、当該一の冷凍装置との相互通信で取得された他の冷凍装置の運転情報とを比較して、所定の比較結果を取得し、出力部2bは、比較結果を出力する。このような構成によって、一の冷凍装置と他の冷凍装置との間で運転情報を比較してその比較結果を取得し、当該比較結果を出力することができる。そのため、各冷凍装置1A~1Cにおける運転情報を冷凍装置1A~1C間で相互に利用することが可能となる。
【0046】
(2)本実施形態の冷凍装置1A~1Cは、運転情報を記憶する記憶部6を備えている。そのため、各冷凍装置1A~1Cの記憶部6に記憶した運転情報の相互利用が可能になる。
【0047】
(3)また、記憶部6は、比較結果についての情報を記憶する。そのため、各冷凍装置1A~1Cの記憶部6に記憶した比較結果の相互利用も可能になる。
【0048】
(4)本実施形態では、各冷凍装置1A~1Cの運転情報が、当該冷凍装置1A~1Cの不具合に関する運転情報を含み、取得される比較結果が、不具合の原因及び/又は不具合の対処方法についての情報を含む。一の冷凍装置において不具合が生じ、その冷凍装置の運転情報が他の冷凍装置で発生した不具合に関する運転情報と所定の程度一致している場合、当該一の冷凍装置の不具合が、当該他の冷凍装置で発生した不具合と同一である可能性が高い。そのため、当該他の冷凍装置で発生した不具合の原因や不具合の対処方法を比較結果として出力することで、その比較結果を当該一の冷凍装置の不具合解消のために役立てることができる。
【0049】
(5)本実施形態では、各冷凍装置1A~1Cの運転情報が、冷凍装置1A~1Cの消費電力に関する運転情報を含み、取得される比較結果が、消費電力の改善についての情報を含んでいる。そのため、例えば、一の冷凍装置の消費電力をより消費電力が少ない他の冷凍装置と比較して、その比較結果として消費電力の改善についての情報を出力することで、その比較結果を一の冷凍装置における消費電力の改善のために役立てることができる。
【0050】
(6)本実施形態では、各冷凍装置1A~1Cの運転情報が、機種データを含む。
一の冷凍装置に不具合が生じた場合、当該一の冷凍装置と同一の機種であれば同じような運転状態となり、必要な対処の方法も同一となる可能性が高い。そのため、運転情報に機種データを含むことによって、一の冷凍装置の運転情報と、当該一の冷凍装置と同一機種の他の冷凍装置の運転情報との比較を容易に行うことができ、当該他の冷凍装置で発生した不具合の原因や対処方法等を比較結果として出力することで、その比較結果を当該一の冷凍装置における不具合の解消に役立てることができる。
【0051】
(7)本実施形態では、各冷凍装置1A~1Cの運転情報が、運転状態データを含む。冷凍装置に不具合が発生した場合、空気の吹出温度や圧縮機の圧力等の運転状態データに何らかの変化が現れるので、一の冷凍装置で不具合が発生した場合、当該一の冷凍装置の運転状態データと、他の冷凍装置で不具合が発生したときの運転状態データとを比較し、両者が所定の程度一致する場合には、当該他の冷凍装置で発生した不具合の原因や対処方法等の比較結果として出力することで、当該比較結果を一の冷凍装置における不具合解消のために役立てることができる。
【0052】
(8)本実施形態における出力部2bは、一の冷凍装置の運転情報と比較される他の冷凍装置の運転情報のうち、より一の冷凍装置の運転情報と一致度が高い運転情報を有する他の冷凍装置における比較結果を優先的に出力する。一の冷凍装置の運転情報と一致度が高い運転情報を有する他の冷凍装置は、同じ運転状況にある可能性が高いので、当該他の冷凍装置における比較結果を優先的に出力することで、より適切な比較結果を活用することができる。
【0053】
(9)本実施形態における出力部2bは、一致度が高い順に複数の比較結果を出力する。そのため、一致度が高い順に複数の比較結果を出力することによって、複数の比較結果の中からより適切な比較結果を選択して活用することができる。
【0054】
(10)本実施形態における出力部2bは、入力された指示に関連するメーカー提供情報を優先的に出力する。そのため、冷凍装置のメーカーが提供する情報は重要である可能性が高いので、当該情報を優先的に出力することによって、当該情報をもれなく保守作業者等に伝えることができる。
【0055】
本開示は前述した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内において種々の変更が可能である。
例えば、上記実施形態では、外部端末2に不具合の状況を入力していたが、これに加えてあらかじめ取得した運転状況データ等の比較に用いられる運転情報を保守作業者が外部端末2に入力してもよい。
【0056】
外部端末2の出力部2bは、ディスプレイ等の表示部に限らず、紙によって出力したり、電子メール等のデータ通信によって出力したりするものであってもよい。また、外部端末2は、複数の冷凍装置1A~1Cのいずれか少なくとも一つに接続されればよい。
【0057】
複数の冷凍装置1A~1Cの運転情報の比較は、外部端末2の制御装置2cが行ってもよい。すなわち、外部端末2の制御装置2cが、前述したような比較部の機能を備えていてもよい。この場合、一の冷凍装置の運転情報と他の冷凍装置の運転情報とが外部端末2に送信され、外部端末2の制御装置2cにおいて運転情報の比較と、比較の結果の取得とが行われる。また、入力部及び出力部を有する操作機器は、冷凍装置の室内ユニット21に設けられたリモートコントローラにより構成したり、室内ユニット21又は室外ユニット22に収容された操作盤等によって構成したりすることもできる。
【0058】
複数の冷凍装置1A~1Cは、例えばビルやショッピングセンタのような同一の設備内に設置されたものであってもよいし、遠隔の場所にある異なる設備に設置されたものであってもよい。
【符号の説明】
【0059】
1A,1B,1C:冷凍装置
2:外部端末(操作機器)
2a:入力部
2b:出力部
2c:制御装置
4:制御装置
6:記憶部