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特許7406066積層剥離容器の容器本体の外気導入孔の形成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-19
(45)【発行日】2023-12-27
(54)【発明の名称】積層剥離容器の容器本体の外気導入孔の形成方法
(51)【国際特許分類】
   B26F 1/16 20060101AFI20231220BHJP
   B65D 1/02 20060101ALI20231220BHJP
   B23B 47/34 20060101ALI20231220BHJP
   B23Q 11/00 20060101ALI20231220BHJP
   B26D 7/18 20060101ALI20231220BHJP
【FI】
B26F1/16
B65D1/02 111
B23B47/34 Z
B23Q11/00 M
B26D7/18 G
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019154097
(22)【出願日】2019-08-26
(65)【公開番号】P2021030379
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2022-05-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000104674
【氏名又は名称】キョーラク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】中野 公普
【審査官】矢澤 周一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-081214(JP,A)
【文献】特開2015-160651(JP,A)
【文献】特開2011-218507(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B26F 1/16
B65D 1/02
B23B 47/34
B23Q 11/00
B26D 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
保持工程と、切込形成工程を備える、積層剥離容器の容器本体の外気導入孔の形成方法であって、
前記保持工程では、外殻と内袋が積層されて構成される容器本体を保持治具に保持させ、
前記切込形成工程では、吸引ヘッドを用いて減圧空間を形成した状態で、前記減圧空間内で穴あけドリルを用いて、前記外殻に環状の切り込みを形成して切除片を形成し、
前記吸引ヘッドは、前記吸引ヘッド内の空気及び切粉を吸引するための吸引孔を備え、前記吸引によって前記減圧空間を形成するように構成され、
前記穴あけドリルは、刃部を有する先端部と、前記先端部にまで到達する空洞と、前記空洞を前記減圧空間に連通させる連通孔を備え、
前記切り込みは、前記容器本体を前記保持治具に保持させ、且つ前記先端部及び前記連通孔を前記減圧空間内に配置した状態で、前記穴あけドリルを回転させながら前記刃部を前記外殻に押し付けることによって形成する、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
前記保持治具は、一端に端部開口を有する筒部を備え、
前記端部開口から前記容器本体を前記保持治具内に挿入することによって前記容器本体を前記保持治具に保持し、
前記保持治具は、前記穴あけドリルを挿入するためのドリル開口を前記筒部の側面に備え、
前記ドリル開口を通じて前記穴あけドリルを挿入して前記切り込みを形成する、方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法であって、
前記吸引ヘッドは、前記穴あけドリルを挿通可能なドリル挿通孔を備え、
前記吸引ヘッドは、前記ドリル挿通孔及び前記吸引孔が前記ドリル開口に連通するように密着され、
前記ドリル挿通孔及び前記ドリル開口を通じて前記穴あけドリルを挿入して前記切り込みを形成する、方法。
【請求項4】
請求項1~請求項3の何れか1つに記載の方法であって、
前記連通孔の直径は、2.7~3.5mmである、方法。
【請求項5】
請求項1~請求項4の何れか1つに記載の方法であって、
前記空洞は、前記穴あけドリルの後端にまで到達するように設けられ、
放出工程を備え、
前記放出工程では、前記吸引ヘッドによる吸引を行いながら、前記後端から前記空洞内にエアーを吹き込むことによって前記先端部に保持された切除片を放出させる、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内容物の減少に伴って内袋が収縮する積層剥離容器の容器本体に外気導入孔を形成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、内容物の減少に伴って内袋が収縮する積層剥離容器の容器本体に外気導入孔を形成する方法が開示されている。具体的には、穴あけドリルの刃部を外殻に押し付けることによって外気導入孔を形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-81574号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、吸引ヘッドに吸引装置を連結し、この吸引装置を作動させることによって穴あけドリルの周囲の切子を吸引除去すると共に、穴あけドリルの全長に渡って延びる空洞に吸排気装置を連結し、この吸排気装置を作動させることによって、穴あけドリルの先端部に切除片を保持させている。
【0005】
吸引装置及び吸排気装置による吸引力には若干の変動があるので、特許文献1の構成では、穴あけドリルの周囲と穴あけドリルの空洞内の圧力差が変動してしまい、その結果、切除片が保持されなかたり、切除片が穴あけドリルの空洞内の奥深くまで入り込んでしまったりする場合がある。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、切除片を安定して穴あけドリルに保持可能な、外気導入孔の形成方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、保持工程と、切込形成工程を備える、積層剥離容器の容器本体の外気導入孔の形成方法であって、前記保持工程では、外殻と内袋が積層されて構成される容器本体を保持治具に保持させ、前記切込形成工程では、吸引ヘッドを用いて減圧空間を形成した状態で、前記減圧空間内で穴あけドリルを用いて、前記外殻に環状の切り込みを形成して切除片を形成し、前記吸引ヘッドは、前記吸引ヘッド内の空気及び前記切粉を吸引するための吸引孔を備え、前記吸引によって前記減圧空間を形成するように構成され、前記穴あけドリルは、刃部を有する先端部と、前記先端部にまで到達する空洞と、前記空洞を前記減圧空間に連通させる連通孔を備え、前記切り込みは、前記容器本体を前記保持治具に保持させ、且つ前記先端部及び前記連通孔を前記減圧空間内に配置した状態で、前記穴あけドリルを回転させながら前記刃部を前記外殻に押し付けることによって形成する、方法が提供される。
【0008】
本発明では、先端部及び連通孔を減圧空間内に配置した状態で切除片を形成している。このような構成では、穴あけドリルの空洞内の圧力は、減圧空間内の圧力に連動して変化するので、吸引ヘッドに装着された吸引装置の吸引力が変動したとしても、穴あけドリルの周囲と穴あけドリルの空洞内の圧力差はほとんど又は全く変動しないので、切除片を安定して穴あけドリルの先端部に保持可能である。
【0009】
以下、本発明の種々の実施形態を例示する。以下に示す実施形態は互いに組み合わせ可能である。
【0010】
好ましくは、前記記載の方法であって、前記保持治具は、一端に端部開口を有する筒部を備え、前記端部開口から前記容器本体を前記保持治具内に挿入することによって前記容器本体を前記保持治具に保持し、前記保持治具は、前記穴あけドリルを挿入するためのドリル開口を前記筒部の側面に備え、前記ドリル開口を通じて前記穴あけドリルを挿入して前記切り込みを形成する、方法である。
好ましくは、前記記載の方法であって、前記吸引ヘッドは、前記穴あけドリルを挿通可能なドリル挿通孔を備え、前記吸引ヘッドは、前記ドリル挿通孔及び前記吸引孔が前記ドリル開口に連通するように密着され、前記ドリル挿通孔及び前記ドリル開口を通じて前記穴あけドリルを挿入して前記切り込みを形成する、方法である。
好ましくは、前記記載の方法であって、前記連通孔の直径は、2.7~3.5mmである、方法である。
好ましくは、前記記載の方法であって、前記空洞は、前記穴あけドリルの後端にまで到達するように設けられ、放出工程を備え、前記放出工程では、前記吸引ヘッドによる吸引を行いながら、前記後端から前記空洞内にエアーを吹き込むことによって前記先端部に保持された切除片を放出させる、方法である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態の積層剥離容器1の容器本体3のみを示す正面図である。
図2図1の容器本体3に弁部材5を装着した状態の、A-A断面に対応する断面図である。
図3】保持治具4に容器本体3を保持させる直前の状態を示す断面図(図2と同じ断面)である。
図4】保持治具4に容器本体3を保持させた状態を示す断面図である。
図5図5Aは、保持治具4の断面図(図3と同じ断面)、図5Bは、図5A中のB-B断面図、図5Cは、図5A中の矢印C方向から見た図である。
図6図6Aは、図5Aの右側面図、図6Bは、図5A中のD-D断面図である。
図7】係止片保持溝4iに係止片6を保持した状態を示し、図7Aは、図5Aに対応する断面図であり、図7Bは、図6Aに対応する右側面図である。
図8】容器本体3に穴あけドリル30を当接させた状態を示す断面図である。
図9図8中の領域Aの拡大図である。
図10】穴あけドリル30を示し、図10Aは斜視図、図10B図10Aの先端部30c近傍の拡大図、図10C図10Aの平面図、図10D図10C中のA-A断面図である。
図11図9中の領域Aに対応する部位の拡大図であり、穴あけドリル30によって切り込み15bが形成された状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。また、各特徴について独立して発明が成立する。
【0013】
1.積層剥離容器
図1図2に示すように、本発明の一実施形態の積層剥離容器1は、容器本体3と、弁部材5を備える。容器本体3は、内容物を収容する収容部7と、収容部7から内容物を吐出する口部開口9gを有する口部9を備える。収容部7には、肩部8が設けられている。肩部8の曲率半径は、4mm以下であり、好ましくは1~3mmである。
【0014】
図2に示すように、容器本体3は、収容部7及び口部9において、外殻12と内袋14を備える。内容物の減少に伴って内袋14が外殻12から離れることによって、内袋14が収縮する。
【0015】
外殻12は、例えば、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体などのポリオレフィンで構成される。外殻12は、復元性が高くなるように、内袋14よりも肉厚に形成されることが好ましい。
【0016】
内袋14は、容器外面側に設けられたEVOH層と、EVOH層の容器内面側に設けられた内面層と、EVOH層と内面層の間に設けられた接着層を備える。EVOH層を設けることでガスバリア性、及び外殻12からの剥離性を向上させることができる。接着層は省略してもよい。
【0017】
EVOH層は、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)樹脂からなる層であり、エチレンと酢酸ビニル共重合物の加水分解により得られる。内面層は、積層剥離容器1の内容物に接触する層であり、例えば、上述したポリオレフィンで構成される。接着層は、EVOH層と内面層とを接着する機能を有する層である。
【0018】
口部9には、逆止弁付きのキャップと係合可能な係合部9dが設けられている。キャップは、打栓式で装着するものであってもよく、ネジ式で装着するものであってもよい。
【0019】
図1に示すように、収容部7には凹部7aが設けられており、凹部7aに外気導入孔15が設けられている。外気導入孔15は、外殻12にのみ設けられた貫通孔であり、外殻12と内袋14の間の中間空間21と、容器本体3の外部空間Sとを連通する。凹部7aは、収容部7をシュリンクフィルムで覆う際に弁部材5とシュリンクフィルムの干渉を避けるために設けられるものである。また、凹部7aがシュリンクフィルムで密閉されてしまわないよう、凹部7aから口部9の方向に延びる空気流通溝7bが設けられる。
【0020】
弁部材5は、外殻12と内袋14の間の中間空間21への空気の出入りを調整する機能を有する。
【0021】
2.積層剥離容器の製造方法
次に、本実施形態の積層剥離容器1の製造方法の一例を説明する。
まず、製造すべき容器本体3に対応する積層構造を備えた溶融状態の積層パリソンを押出し、この溶融状態の積層パリソンをブロー成形用の分割金型にセットし、分割金型を閉じる。
次に、容器本体3の口部9側の開口部にブローノズルを挿入し、型締めを行った状態で分割金型のキャビティー内にエアーを吹き込む。次に、分割金型を開いて、ブロー成形品を取り出す。
【0022】
次に、積層剥離容器1の容器本体3の外殻12に外気導入孔15を形成する。外気導入孔15の形成は、保持工程、切込形成工程、放出工程によって行うことができる。以下、各工程について詳細に説明する。なお、保持工程、切込形成工程、及び放出工程のうちの少なくとも一つは、以下に示す方法以外の方法で実施してもよく、省略してもよい。
【0023】
<保持工程>
保持工程では、図3図7に示すように、容器本体3を保持治具4に保持させる。
【0024】
図3図7に示すように、保持治具4は、一端4hに端部開口4aを有する筒部4bを備え、端部開口4aから容器本体3を口部9側から保持治具4内に挿入することによって容器本体3を保持治具4に保持する。また、筒部4bの側面には、穴あけドリル30を挿入するためのドリル開口4cが設けられている。筒部4bの内面には、ドリル開口4cに連通するように、容器本体3と筒部4bの密着面に沿って延びる通気溝4dが設けられている。通気溝4dは、好ましくは、容器本体3を保持治具4に保持したときに外気導入孔15を形成する領域に近接する位置に通気溝4dの端部4d1(図6Bを参照)が配置されるように設けられる。また、通気溝4dは、好ましくは、容器本体3の周方向に沿って延びるように設けられる。さらに、通気溝4dは、好ましくは、容器本体3を囲むように設けられる。通気溝4dを設けることによって、ドリル開口4cを通じた吸引の際に、容器本体3からドリル開口4cに向かう方向の空気の流れが生じやすくなって、外気導入孔15の形成時に発生する切粉が速やかに排出される。通気溝4dには、容器本体3と保持治具4の間の隙間から外気が流れ込む。なお、保持治具4の外部と、通気溝4dを連結する連結溝を別途設けてもよい。この場合、吸引の際の通気溝4d内の空気の流れがよりスムーズになる。
【0025】
図4に示すように、保持治具4には、口部保持部4eと収容部保持部4fが設けられている。口部保持部4eは、容器本体3の口部9を保持し、収容部保持部4fは、容器本体3の収容部7を保持する。口部保持部4eの内径は、口部9の外径とほぼ等しいため、口部9を口部保持部4eに挿入することによって口部9が保持される。収容部保持部4fは、一端4hに向かって径が大きくなっており、収容部7と略相補形状になっている。収容部7の外面が収容部保持部4fに当接して、収容部7が収容部保持部4fによって保持される。口部保持部4eと収容部保持部4fによって容器本体3を保持することによって、安定した状態で外気導入孔15を形成することが可能になり、外気導入孔15の形状のバラツキが低減される。
【0026】
さらに、保持治具4には、肩部当接部4gが設けられている。肩部当接部4gは、容器本体3の肩部8を当接させる。容器本体3は、肩部8が肩部当接部4gに当接するか、収容部7が収容部保持部4fに当接することによって高さ方向に位置決めされる。
【0027】
さらに、保持治具4には、係止片保持溝4iが設けられている。係止片保持溝4iには、係止片6が保持されている。容器本体3を保持治具4に保持させると、係止片6が容器本体3の空気流通溝7bに係合される。これによって、容器本体3が周方向に位置決めされる。
【0028】
<切込形成工程>
切込形成工程では、図8図11に示すように、吸引ヘッド51を用いて減圧空間51cを形成した状態で、減圧空間51c内で穴あけドリル30を用いて、外殻12の外気導入孔15を形成する位置に、環状(好ましくは、円状)の切り込み15bを形成して切除片15aを形成する(図11を参照)。
【0029】
図9に示すように、吸引ヘッド51は、穴あけドリル30を挿通可能なドリル挿通孔51aと、吸引ヘッド51内の空気及び切粉を吸引するための吸引孔51bを備える。吸引ヘッド51は、ドリル挿通孔51a及び吸引孔51bがドリル開口4cに連通するように保持治具4に密着される。切込形成工程では、ドリル挿通孔51aとドリル開口4cを通じて穴あけドリル30を挿入して切り込み15bを形成する。
【0030】
切粉の吸引は、吸引孔51bを通じて行う。吸引孔51bには、ホース52が連結されており、ホース52には、吸引装置が連結されている。これによって、吸引ヘッド51内の空気及び切粉を吸引することが可能になっている。
【0031】
吸引ヘッド51での吸引によって減圧空間51cが形成される。本実施形態では、吸引ヘッド51がドリル開口4cに密着しているので、減圧空間51cは、吸引ヘッド51内の空間とドリル開口4c内の空間にまたがって形成される。
【0032】
図10に示すように、穴あけドリル30は、刃部30fを有する先端部30cと、先端部30cにまで到達する空洞30gと、空洞30gを減圧空間51cに連通させる連通孔30hと、スピンドル固定部30bを備える。
【0033】
先端部30cは、断面C字状の筒状である。図10Bに示すように、先端部30cには、平坦面30dと切欠部30eが設けられており、切欠部30eの周方向の側面が刃部30fとなっている。
【0034】
平坦面30dの半径方向の幅Wは、0.1~0.2mmが好ましく、0.12~0.18mmがさらに好ましい。幅Wが小さすぎると穿孔時に内袋14が傷つきやすく、幅Wが大きすぎると刃部30fが外殻12に接触しにくくなるので、穿孔をスムーズに行いにくい。切欠部30eを設ける範囲は、30~270度以上が好ましく、45~180度がさらに好ましく、60~120度が好ましく、75~105度がさらに好ましい。この範囲が大きすぎると穿孔時に内袋14が傷つきやすく、この範囲が小さすぎると穿孔をスムーズに行いにくい。この範囲は、具体的には例えば、30、45、60、75、90、105、120、135、150、165、180、195、210、225、240、255、270度であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0035】
また、先端部30cの内面には、先端に向かって広がるテーパー面30kが設けられている。これによって、穿孔時に発生する切除片15aが容器本体3側に残らず、穴あけドリル30側に移行しやすくなっている。
【0036】
連通孔30hは、穴あけドリル30の側面に設けられた貫通孔である。連通孔30hは、先端部30cの近傍に設けられている。連通孔30hを介して空洞30gと減圧空間51cが連通されるので、減圧空間51cが形成されると空洞30gも減圧される。
【0037】
切り込み15bは、図9に示すように、容器本体3を保持治具4に保持させ、且つ先端部30c及び連通孔30hを減圧空間51c内に配置した状態で、穴あけドリル30を回転させながら刃部30fを外殻12に押し付けることによって形成することができる。
【0038】
穴あけドリル30は、スピンドル固定部30bにおいて、単軸移動及び回転が可能なスピンドル50に連結されている。このため、穴あけドリル30を回転させながら、前進又は後退させることが可能になっている。
【0039】
穴あけドリル30を回転させながら平坦面30dを外殻12に押し付けると、平坦面30dが外殻12に少しめり込む。その結果、外殻12が部分的に切欠部30eに入り込んで、刃部30fが外殻12に接触して、外殻12が切り込まれる。図11に示すように、平坦面30dが外殻12と内袋14の境界に到達すると、外殻12に環状の切り込み15b及び切除片15aが形成される。切除片15aは、切り込み15bによって形成される部位であり、これを除去することによって外気導入孔15が形成される。
【0040】
切除片15aは、空洞30gの減圧による吸引力と、切除片15aと先端部30cの内面の間の摩擦力によって先端部30cに保持される。本実施形態の構成では、空洞30g内の圧力は、減圧空間51c内の圧力に連動して変化するので、吸引ヘッド51に装着された吸引装置の吸引力が変動したとしても、穴あけドリル30の周囲と穴あけドリル30の空洞30g内の圧力差はほとんど又は全く変動しないので、切除片15aを安定して先端部30cに保持可能である。
【0041】
連通孔30hの直径は、例えば2.5~4.0mmであり、2.7~3.5mmが好ましい。この直径が小さすぎると、空洞30g内の減圧度が不十分で、切除片15aの保持が不十分になりやすい。一方、この直径が大きすぎると、空洞30g内の減圧度が高くなりすぎて切除片15aが空洞30g内の奥深くに入り込みやすく、放出工程で切除片15aを放出させにくくなる。この直径は、具体的には例えば、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4.0mmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0042】
<放出工程>
切込形成工程の後、穴あけドリル30を後退させ、空洞30g内にエアーを吹き込むことによって、先端部30cに保持された切除片15aを穴あけドリル30の先端から放出させることができる。放出した切除片15aは、吸引ヘッド51を通じて吸引することができる。
【0043】
空洞30gは、穴あけドリル30の後端30iにまで到達しており(つまり、空洞30gは、穴あけドリル30の全長に渡って設けられており)、エアーは、後端30iから吹き込まれる。これによって、吸引ヘッド51による吸引を行いながら、穴あけドリル30から切除片15aを放出させることが可能になる。この場合、スピンドル50の全長に渡って延びる空洞50gを設け、スピンドル50の後端には、ロータリージョイントを介して吹込装置を連結し、この吹込装置からエアーを吹き込むことが好ましい。
【0044】
以上の工程で、外殻12への外気導入孔15の形成が完了する。この後に、内袋14を外殻12から予備剥離する予備剥離工程を必要に応じて行ったり、外気導入孔15に弁部材5を挿入したりして、積層剥離容器1の製造を完了する。
【0045】
3.その他の実施形態
・上記実施形態では、ドリル開口4cを有する筒状の保持治具4を用いたが、保持治具4は、容器本体3が保持可能なものであれば別の構成ものであってもよい。
・上記実施形態では、吸引ヘッド51を保持治具4に密着させているが、吸引ヘッド51を容器本体3に直接密着させてもよい。また、切子の除去及び切除片15aの保持に十分な程度に減圧空間51cが形成可能であれば、吸引ヘッド51と、容器本体3又は保持治具4の間に隙間があってもよい。
【実施例
【0046】
図8図9に示す構成の装置を用いて、直径4.4mmの外気導入孔15を形成した。実施例1~3では、穴あけドリル30の連通孔30hの直径は、それぞれ、2.5mm、3.0mm、4.0mmとした。
【0047】
実施例1では、先端部30cでの切除片15aの保持が若干弱かった。一方、実施例3では、切除片15aが先端部30c内に若干深く入りすぎる場合があった。実施例2では、切除片15aが先端部30cに適切に保持され、空洞30g内にエアーを吹き込むことによって切除片15aを先端部30cからスムーズに放出させることができた。この結果から、連通孔30hの直径は、2.7~3.5mmが好ましいことが分かった。
【符号の説明】
【0048】
1 :積層剥離容器
3 :容器本体
4 :保持治具
4a :端部開口
4b :筒部
4c :ドリル開口
4d :通気溝
4d1 :端部
4e :口部保持部
4f :収容部保持部
4g :肩部当接部
4h :一端
4i :係止片保持溝
5 :弁部材
6 :係止片
7 :収容部
7a :凹部
7b :空気流通溝
8 :肩部
9 :口部
9d :係合部
9g :口部開口
12 :外殻
14 :内袋
15 :外気導入孔
15a :切除片
15b :切り込み
21 :中間空間
30 :ドリル
30b :スピンドル固定部
30c :先端部
30d :平坦面
30e :切欠部
30f :刃部
30g :空洞
30h :連通孔
30i :後端
30k :テーパー面
50 :スピンドル
51 :吸引ヘッド
51a :ドリル挿通孔
51b :吸引孔
51c :減圧空間
52 :ホース
A :領域
S :外部空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11