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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-19
(45)【発行日】2023-12-27
(54)【発明の名称】熱交換器
(51)【国際特許分類】
   F28D 7/00 20060101AFI20231220BHJP
   B23K 35/30 20060101ALI20231220BHJP
   B23K 35/26 20060101ALI20231220BHJP
   C22C 13/00 20060101ALI20231220BHJP
   C22C 9/02 20060101ALI20231220BHJP
   B23K 1/00 20060101ALI20231220BHJP
【FI】
F28D7/00 A
B23K35/30 310C
B23K35/26 310A
C22C13/00
C22C9/02
B23K1/00 330A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019175363
(22)【出願日】2019-09-26
(65)【公開番号】P2021050889
(43)【公開日】2021-04-01
【審査請求日】2022-06-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菊野 智教
(72)【発明者】
【氏名】末竹 樹
【審査官】河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-224657(JP,A)
【文献】中国特許第105081600(CN,B)
【文献】特開2007-333271(JP,A)
【文献】国際公開第2017/007011(WO,A1)
【文献】特開2005-297011(JP,A)
【文献】特開2019-038002(JP,A)
【文献】国際公開第2010/114874(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 7/00
B23K 35/30
B23K 35/26
C22C 13/00
C22C 9/02
B23K 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1金属管(20)と、第2金属管(30)と、溶融した接合材が凝固することによって形成されて該第1金属管(20)と該第2金属管(30)とを接合する金属製の接合部(J)とを備え、
上記第1金属管(20)を流れる流体を、上記第2金属管(30)を流れる流体と熱交換させる熱交換器(1)であって、
上記接合部(J)は、銅を含み、
上記接合部(J)の溶融温度は、上記第1金属管(20)及び上記第2金属管(30)の焼きなまし温度よりも高く、
接合後の上記第1金属管(20)及び上記第2金属管(30)の引張強さは、質別記号または調質記号Oより大きいことを特徴とする熱交換器。
【請求項2】
請求項1において、
上記接合材は、粒子径が1μm以下の銅粒子を含み、
上記接合材の溶融温度が、上記第1金属管(20)及び上記第2金属管(30)の焼きなまし温度よりも低いことを特徴とする熱交換器。
【請求項3】
請求項1又は2において、
上記接合材は、スズを含むことを特徴とする熱交換器。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1つにおいて、
上記接合部(J)のボイド率が、30体積%以下であることを特徴とする熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、熱交換器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、芯管と巻管とを備える熱交換器が知られている。この熱交換器は、芯管の外周に螺旋状に巻管が巻き付けられている。そして、この熱交換器では、芯管内を流れる流体を、巻管内を流れる流体と熱交換させている。このような熱交換器は、芯管と巻管とをはんだ付けやろう付けすることで接合している。
【0003】
特許文献1には、芯管と巻管とを備える熱交換器の製造方法が開示されている。特許文献1の製造方法は、芯管に巻管を螺旋状に巻き付ける巻付工程と、芯管のうち巻管が巻き付けられた部分の一部分を加熱する加熱工程と、加熱された芯管と巻管との間へはんだを供給して芯管と巻管とを接合する接合工程とを備えている。そして接合工程の後に、供給したはんだを冷却して固形化し、接合部を形成している。特許文献1の熱交換器では、この接合部を介して熱交換器の芯管と巻管との熱伝導性を確保している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-224657号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、熱交換器の接合材として使用されるはんだの多くは、95%以上がスズで構成されている。スズの熱伝導率は約64W/m・Kであり、スズの熱伝導性は低い。したがって、上記のようなはんだを使用して接合された熱交換器は、接合部にスズを多く含むため、芯管と巻管との間で熱交換効率が低い。
【0006】
本開示の目的は、熱交換器における接合部の熱伝達率を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の第1の態様は、第1金属管(20)と、第2金属管(30)と、溶融した接合材が凝固することによって形成されて該第1金属管(20)と該第2金属管(30)とを接合する金属製の接合部(J)とを備え、上記第1金属管(20)を流れる流体を、上記第2金属管(30)を流れる流体と熱交換させる熱交換器(1)であって、上記接合部(J)は、銅を含み、上記接合部(J)の溶融温度は、上記第1金属管(20)及び上記第2金属管(30)の焼きなまし温度よりも高く、上記第1金属管(20)及び上記第2金属管(30)の引張強さは、質別記号または調質記号Oより大きいことを特徴とする。
【0008】
ところで、銅の熱伝導率は約370W/m・Kであり、銅は熱伝導性が高い。第1の態様では、接合部(J)に銅を含むので、熱交換器(1)における接合部(J)の熱伝達率を向上できる。
【0009】
本開示の第2の態様は、第1の態様において、上記接合材は、粒子径が1μm以下の銅粒子を含み、上記接合材の溶融温度が、上記第1金属管(20)及び上記第2金属管(30)の焼きなまし温度よりも低いことを特徴とする。
【0010】
粒子径が1μm以下の銅粒子を含む銅は、該銅粒子を含まない銅と比較して、溶融温度が低い。第2の態様では、上記第1金属管(20)及び上記第2金属管(30)の焼きなまし温度よりも低い温度で接合材を溶融して、接合部(J)を形成できる。
【0011】
本開示の第3の態様は、第1又は第2の態様において、上記接合材は、スズを含むことを特徴とする。
【0012】
スズは、他の金属に比べ、溶融温度が低く、価格が低い。第3の態様では、接合材の価格を下げつつ、溶融温度を下げることができる。
【0013】
本開示の第4の態様は、第1~第3の態様のいずれか1つにおいて、上記接合部(J)のボイド率が、30体積%以下であることを特徴とする。
【0014】
第4の態様では、接合部(J)のボイド率が高くないので、接合部(J)の強度が維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、実施形態に係る熱交換器の構成を示す全体図である。
図2図2は、熱交換器の要部の構成を示す拡大斜視図である。
図3図3は、熱交換器の要部の拡大断面図である。
図4図4は、接合部における昇温速度とボイド率との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
実施形態について説明する。本実施形態の熱交換器(1)は、例えばヒートポンプ式の給湯装置等に用いられる水熱交換器を構成している。
【0017】
-熱交換器-
本実施形態の熱交換器(1)は、芯管(20)と巻管(30)とを備える。芯管(20)と巻管(30)とは、金属製の接合部(J)によって接合される。熱交換器(1)は、芯管(20)を流れる流体を、巻管(30)を流れる流体と熱交換させる。
【0018】
図1に示すように、熱交換器(1)は、巻管(30)が芯管(20)の外周に巻き付けられている。熱交換器(1)は、芯管(20)を曲げることによって長円形の渦巻形状に成形される。なお、本実施形態では、芯管(20)が本発明の第1金属管に相当し、巻管(30)が本発明の第2金属管に相当する。
【0019】
〈芯管〉
芯管(20)は、銅製の円管である。図2に示すように、芯管(20)の内側には、水を通すための断面円形状の水通路(20a)が形成されている。芯管(20)は、所定の長さと所定の直径を有する。本実施形態の芯管(20)の引張強さは、質別記号Oに相当する引張強さよりも大きい。ここで、質別記号は、JIS規格に規定されている記号である。例えば銅材における質別とは、JIS H 0500に規定されているように、伸銅品に特定の物理的または機械的性質を付与するために、必要な処理を施した材料の状態をいう。
【0020】
質別記号Оは、完全に再結晶したもの又は焼きなましたもので、引張強さの値が最も低いことを表している。そして、銅管の質別記号Оより大きい質別記号とは、例えば1/8H,1/4H,1/2H等を意味する(JIS H 0500を参照)。銅管における質別記号1/8Hとは、引張強さが質別Оと1/4Hの中間のように加工硬化したものを意味し、質別記号1/4Hとは、引張強さが質別1/8Hと1/2Hの中間のように加工硬化したものを意味し、質別記号1/2Hとは、引張強さが質別1/4Hと3/4Hの中間のように加工硬化したものを意味する。(JIS H 0500を参照)。
【0021】
〈巻管〉
図2に示すように、本実施形態の熱交換器(1)では、芯管(20)に2本の巻管(30A,30B)が巻き付けられている。第1巻管(30A)と第2巻管(30B)とは、互いに平行となる状態で芯管(20)に巻き付けられ、芯管(20)の中心軸方向に延びる二重螺旋を形成する。図3に示すように、第1巻管(30A)及び第2巻管(30B)は、銅製の円管である。巻管(30)は、芯管(20)よりも外径及び内径が小さい。
【0022】
第1巻管(30A)の内側には、冷媒を通すための断面円形上の第1冷媒通路(30a)が形成されている。同様に、第2巻管(30B)の内部にも冷媒を通すための断面円形上の第2冷媒通路(30b)が形成されている。
【0023】
本実施形態の巻管(30)の引張強さは、芯管(20)と同様に、JIS H 0500に規定された質別記号Оに対応する引張強さよりも大きい。ここで、銅管の質別記号Оより大きい質別記号とは、例えば1/8H,1/4H,1/2H等を意味する(JIS H 0500を参照)。
【0024】
〈接合材〉
接合部(J)は、芯管(20)と巻管(30)との間に溶融した接合材を供給し、溶融した接合材を冷却して凝固させることによって形成される。ここでは、接合材について説明する。
【0025】
接合材は、少なくとも銅粉と、粒子径が1μm以下の銅粒子(以下、銅微粒子という)と、低融点金属粉とを含む。なお、接合材は、粘度を調整するための溶媒を含んでいてもよい。また、接合材は、接合材に含まれる酸素原子を除去するための活性化剤を含んでいてもよい。
【0026】
銅微粒子は、粒子径が1μm以下の銅粒子である。銅微粒子は、その粒子径が1nm以上1μm以下であることが好ましく、1nm以上500nm以下であることがさらに好ましい。
【0027】
ここで、粒子径とは、一次粒子の粒子径のことである。一次粒子の粒子径とは、二次粒子を構成する個々の金属等の微粒子の一次粒子の直径の意味である。該一次粒子径は、電子顕微鏡を用いて測定された値である。一次粒子径は、金属元素微粒子からなるコア部だけでなく、表面に存在する被覆物も含めた径である。
【0028】
ところで、金属微粒子の粒子径がナノメートルサイズまで小さくなると、1粒子あたりの構成原子数が少なくなると共に粒子の体積に対する表面積が急激に増加し、その結果、バルク状態(融点降下が金属粒子径によって顕著に表れない状態)の金属と比較して、融点や焼結温度が低下することが知られている。金属微粒子の粒子径が100nm以下になるとその傾向は顕著になり、特に、金属微粒子の粒子径が10~20nm程度になると、バルク状態の該金属の有する融点より相当に低い温度でもその表面が溶融して、相互に焼結するようになる。この金属微粒子の融点降下の性質により、金属微粒子を含む接合材を加熱した際には、接合材が低温で溶融する一方、接合材が凝固した接合部(J)には融点が高い合金が形成される。
【0029】
銅粉を構成する銅のバルク状態での融点は、約1085℃である。一方、銅微粒子の状態での溶融温度は、約300℃である。銅微粒子の状態の溶融温度は、本実施形態の芯管(20)及び巻管(30)の焼きなまし温度である約400℃~600℃よりも低い。
【0030】
低融点金属粉は、接合材に分散して存在している金属または合金からなる金属粉である。低融点金属粉は、バルク状態の融点が芯管(20)及び巻管(30)の焼きなまし温度よりも低い金属または合金からなる金属粉である。低融点金属粉は、加熱接合の際に、銅微粒子の表面から銅が拡散可能となった状態で銅の全部または一部と、溶融状態で合金を形成して、接合部(J)を形成する。
【0031】
低融点金属粉は、加熱接合する際に、一般的なはんだを溶融する温度で溶融させるため、バルク状態の融点が400℃以下の金属または合金からなる。また、低融点金属粉は、銅と合金を形成することができる。具体的には、低融点金属粉は、低温での材料間の接合が可能なスズ金属粉、又は銅、銀、リン、アルミニウム及びビスマスの中から選択される少なくとも1種がスズと固溶しているスズ合金粉であることが好ましい。また、低融点金属粉の粒子径は、加熱接合の際に速やかに溶融状態を形成できる粒子径であることが好ましい。具体的には、低融点金属粉は、その粒子径が500nm超え50μm以下であることが好ましく、1μm超え50μm以下であることがさらに好ましい。
【0032】
また、銅粉の粒子径も、低融点金属粉と同様に、加熱接合の際に速やかに溶融状態を形成できる粒子径であることが好ましい。具体的には、銅粉は、その粒子径が500nm超え50μm以下であることが好ましく、1μm超え50μm以下であることがさらに好ましい。
【0033】
まとめると、接合材は、銅微粒子と、銅と、低融点金属粉であるスズとを含み、接合材の溶融温度は、芯管(20)及び巻管(30)の焼きなまし温度よりも低い。
【0034】
接合材において、銅微粒子の含有量は、0.5~80質量%が好ましく、1~30質量%がより好ましい。銅微粒子の割合が0.5質量%未満であると接合層の融点向上効果が低下する虞がある。一方、銅微粒子の割合が80質量%を超えると銅微粒子同士の凝集が生じて低融点金属粉との合金層形成が不十分になる虞がある。
【0035】
接合材において、銅微粒子と低融点金属粉を合わせた金属量の割合は、5~95質量%が好ましく、30~90質量%がより好ましい。この金属量の割合が5質量%未満であると接合層の膜厚が不均一となって、クラックやボイドが発生する虞がある。一方、この金属量の割合が95質量%を超えると活性化剤の還元作用が低下して強度が不十分な接合状態になる虞がある。なお、銅微粒子と低融点金属粉の割合は、形成される合金・金属種に応じた値を用いることが望ましい。
【0036】
〈接合部〉
接合部(J)は、溶融した接合材が凝固することによって形成される。具体的には、図3に示すように、接合部(J)は、芯管(20)と巻管(30)との隙間を埋めるように形成され、芯管(20)及び巻管(30)の外面に密着し、芯管(20)及び巻管(30)を接合している。接合部(J)は、銅及びスズを含む合金である。
【0037】
芯管(20)と巻管(30)とを加熱して接合する際に、銅微粒子が銅粉及び低融点金属粉に溶け込み、接合部(J)には、銅微粒子が消失する。そのため、接合部(J)は、銅微粒子の融点降下の効果を得ることができなくなる。したがって、接合部(J)の溶融温度は芯管(20)及び巻管(30)の焼きなまし温度よりも高くなる。
【0038】
接合部(J)には、接合材の昇温速度及び加熱温度、該加熱温度の保持時間といった接合条件を変更することにより、30体積%以下のボイド率の接合層が形成される。図4に示すように、本実施形態の接合部(J)について、昇温速度を約0.8K/s、約1.5K/s、2.5K/sとして形成した接合部(J)のボイド率を調べたところ、どの昇温速度においても、その平均値(図4におけるダイヤ印)は30体積%以下であることが確認された。
【0039】
-熱交換器の動作-
次に、熱交換器(1)の動作について説明する。
【0040】
図1に示すように、熱交換器(1)では、芯管(20)の一端から水通路(20a)に給湯用の水(W1)が流入する。そして、芯管(20)内の水通路(20a)に水(W1)が流れる。第1冷媒通路(30a)及び第2冷媒通路(30b)を流れる高温の冷媒(例えばCО)の熱が、第1巻管(30A)及び第2巻管(30B)、接合部(J)、芯管(20)、水通路(20a)内を流れる水(W1)の順に伝わり、水(W1)が加熱されて効率よく昇温される。そして、水通路(20a)を流れる間に加熱された水(W1)は、所望の温度の湯(W2)として、芯管(20)の他端から外部に供給される。
【0041】
-熱交換器の製造方法-
次に、熱交換器(1)の製造方法について説明する。
【0042】
まず、巻付工程において、巻管(30)が芯管(20)に螺旋状に巻き付けられ、芯管(20)と巻管(30)とが組み合わせられる。
【0043】
次に、溶融接合材生成工程が行われる。溶融接合材生成工程では、接合材を溶融温度以上にまで加熱して、接合材を溶融させることによって溶融接合材を生成する。このときの接合材の溶融温度は、芯管(20)及び巻管(30)の焼きなまし温度よりも低い。
【0044】
次に、接合材供給工程が行われる。接合材供給工程では、溶融接合材が芯管(20)と巻管(30)との間に供給される。
【0045】
次に、接合工程が行われる。接合工程では、芯管(20)及び巻管(30)の間に供給された溶融接合材が冷却され凝固することによって接合部(J)が形成される。
【0046】
-実施形態の特徴(1)-
本実施形態の熱交換器(1)は、芯管(20)と、巻管(30)と、溶融した接合材が凝固することによって形成されて該芯管(20)と該巻管(30)とを接合する金属製の接合部(J)とを備え、芯管(20)を流れる流体を、巻管(30)を流れる流体と熱交換させる。そして、熱交換器(1)の接合部(J)は、銅を含み、接合部(J)の溶融温度は、芯管(20)及び巻管(30)の焼きなまし温度よりも高く、芯管(20)及び巻管(30)の引張強さは、質別記号または調質記号Oより大きい。
【0047】
ところで、銅の熱伝導率は約370W/m・Kであり、銅は熱伝導性が高い。本実施形態の熱交換器(1)では、接合部(J)に銅を含むので、一般的なはんだに比べて、熱交換器(1)における接合部(J)の熱伝達率を向上できる。
【0048】
-実施形態の特徴(2)-
本実施形態の熱交換器(1)の接合材は、粒子径が1μm以下の銅粒子を含み、該接合材の溶融温度が、芯管(20)及び巻管(30)の焼きなまし温度よりも低い。
【0049】
粒子径が1μm以下の銅粒子を含む銅は、該銅粒子を含まない銅と比較して、溶融温度が低い。本実施形態の熱交換器(1)では、芯管(20)及び巻管(30)の焼きなまし温度よりも低い温度で接合材を溶融して、接合部(J)を形成できる。
【0050】
例えば、銅を多く含むリン銅ろうを用いて芯管(20)と巻管(30)とをろう付けで接合すれば、銅を多く含む接合部(J)が形成され、接合部(J)の熱伝達率が高くなる。しかし、該ろうの溶融温度は800℃以上なので、該溶融温度で芯管(20)及び巻管(30)を接合すると、両管(20,30)が焼きなまされ、両管(20,30)の引張強さが低下する。
【0051】
一方、本実施形態の接合部(J)を形成する接合材は、1μm以下の銅粒子を含んでおり、その溶融温度は約300℃である。接合材を溶融させて接合部(J)を形成する過程において、芯管(20)及び巻管(30)の温度は、その焼きなまし温度よりも低く保たれる。このため、熱伝達率の高い接合部(J)を、芯管(20)及び巻管(30)の引張強さを低下させずに形成できる。
【0052】
-実施形態の特徴(3)-
本実施形態の熱交換器(1)の接合材は、スズを含む。
【0053】
スズは、他の金属に比べ、溶融温度が低く、価格が低い。本実施形態の熱交換器(1)では、接合材の価格を下げつつ、溶融温度を下げることができる。
【0054】
-実施形態の特徴(4)-
本実施形態の熱交換器(1)における接合部(J)のボイド率が、30体積%以下である。
【0055】
本実施形態の熱交換器(1)では、接合部(J)のボイド率が高くないので、接合部(J)の強度が維持できる。
【0056】
《その他の実施形態》
上記実施形態については、以下のような構成としてもよい。
【0057】
上記実施形態の熱交換器(1)において、芯管(20)及び巻管(30)はステンレス製であってもよい。この場合、芯管(20)及び巻管(30)の引張強さは、調質記号Оに対応する引張強さより大きい。ここで調質記号とは、JIS G 4313に規定されている記号である。
【0058】
以上、実施形態および変形例を説明したが、特許請求の範囲の趣旨および範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。また、以上の実施形態および変形例は、本開示の対象の機能を損なわない限り、適宜組み合わせたり、置換したりしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0059】
以上説明したように、本開示は、熱交換器について有用である。
【符号の説明】
【0060】
1 熱交換器
20 芯管(第1金属管)
20a 水通路
30 巻管(第2金属管)
30a 第1冷媒通路
30b 第2冷媒通路
J 接合部
図1
図2
図3
図4