(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-19
(45)【発行日】2023-12-27
(54)【発明の名称】場所打ち杭のための鉄筋かご連結体
(51)【国際特許分類】
E02D 5/34 20060101AFI20231220BHJP
【FI】
E02D5/34 Z
(21)【出願番号】P 2019212023
(22)【出願日】2019-11-25
【審査請求日】2022-11-11
(73)【特許権者】
【識別番号】515277300
【氏名又は名称】ジャパンパイル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100193286
【氏名又は名称】圷 正夫
(72)【発明者】
【氏名】板東 真平
【審査官】亀谷 英樹
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-024413(JP,A)
【文献】特開平08-184128(JP,A)
【文献】特開2009-155806(JP,A)
【文献】特開2018-080460(JP,A)
【文献】特開2019-183425(JP,A)
【文献】特開昭59-065149(JP,A)
【文献】特開平10-317488(JP,A)
【文献】特開2009-179961(JP,A)
【文献】特開2019-035306(JP,A)
【文献】国際公開第2008/038410(WO,A1)
【文献】特開2017-186832(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109056705(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 5/22-5/80
E04G 21/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重ね継手にて連結された2つ以上の鉄筋かごを備える場所打ち杭のための鉄筋かご連結体において、
前記2つ以上の鉄筋かごのうち少なくとも
2つの鉄筋かごは、
前記鉄筋かごの長手方向にそれぞれ延在し、前記鉄筋かごの周方向に相互に間隔を存して配置される複数の主筋と、
前記複数の主筋の端部のうち1つ以上に、該主筋の長手方向に沿って溶接又は接着剤により接合された補強材と、
を備え、
前記補強材は、異形棒鋼又は丸鋼によって構成され、
前記主筋の直径をDとし、前記補強材の直径をdとしたとき、次式:
0.5D≦d≦1.5D
で示される関係を満たし、
前記補強材の長さは1d以上15d以下であり、
前記少なくとも2つの鉄筋かごの主筋の端部は相互に隣接するように番線によって結束されて重ね継手を構成し、
前記補強材が接合された前記主筋の端部と前記重ね継手を構成する他の主筋の端部に他の前記補強材が接合されている
ことを特徴とする場所打ち杭のための鉄筋かご連結体。
【請求項2】
前記補強材は、前記鉄筋かごの径方向にて、前記主筋の内側に配置されている
ことを特徴とする請求項1に記載の場所打ち杭のための鉄筋かご連結体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は場所打ち杭のための鉄筋かご、及び、該鉄筋かごの連結体に関する。
【背景技術】
【0002】
場所打ち杭の構築の際、予め略円筒状に組立てられた複数の鉄筋かごを順次、長手方向に連結しながら杭孔内に設置し、その後、杭孔内にコンクリートを打設する。複数の鉄筋かごは、重ね継手等によって連結される(例えば、特許文献1及び2参照)。
一方、場所打ち杭には、地震時等に備えて更なる高強度化が求められており、そのために鉄筋かご同士の連結にも高強度化が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開昭59-188542号公報
【文献】特開2017-186832号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
鉄筋かごを重ね継手によって連結する場合、通常、重ね代として45D(ただし、Dは主筋の直径である)程度が必要とされる。しかしながら、場所打ち杭の高強度化のために、重ね代をより長くする必要に迫られる可能もある。
この一方、場所打ち杭の強度を低下させずに重ね代を短縮することができれば、各鉄筋かごの長さを短くすることができるようになる。この結果、鉄筋かごの重量を軽くすることができ、鉄筋かごの組立や取り扱いが容易になるのみならず、鉄筋かご同士の連結も容易になり、更に鉄筋かごを連結してなる鉄筋かご連結体の軽量化も図ることができる。勿論、重ね代を短縮することができれば、低コスト化を図ることもできる。
【0005】
上述の事情に鑑みて、本発明の少なくとも一実施形態の目的は、重ね継手によって連結される場所打ち杭のための鉄筋かごであって、簡単な構成にて重ね代を短縮可能な鉄筋かごを備え軽量化可能な場所打ち杭のための鉄筋かご連結体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明の少なくとも一実施形態に係る場所打ち杭のための鉄筋かご連結体は、
重ね継手にて連結された2つ以上の鉄筋かごを備える場所打ち杭のための鉄筋かご連結体において、
前記2つ以上の鉄筋かごのうち少なくとも2つの鉄筋かごは、
前記鉄筋かごの長手方向にそれぞれ延在し、前記鉄筋かごの周方向に相互に間隔を存して配置される複数の主筋と、
前記複数の主筋の端部のうち1つ以上に、該主筋の長手方向に沿って溶接又は接着剤により接合された補強材と、
を備え、
前記補強材は、異形棒鋼又は丸鋼によって構成され、
前記主筋の直径をDとし、前記補強材の直径をdとしたとき、次式:
0.5D≦d≦1.5D
で示される関係を満たし、
前記補強材の長さは1d以上15d以下であり、
前記少なくとも2つの鉄筋かごの主筋の端部は相互に隣接するように番線によって結束されて重ね継手を構成し、
前記補強材が接合された前記主筋の端部と前記重ね継手を構成する他の主筋の端部に他の前記補強材が接合されている。
【0009】
上記構成(1)によれば、重ね継手にて連結された鉄筋かご同士の間で、主筋のみならず、補強材も介して力の伝達が行われるので、重ね代を短くしても鉄筋かご同士の間で十分に力を伝達可能であり、場所打ち杭の強度を維持することができる。あるいは、重ね代の長さがそのままであれば、場所打ち杭をより高強度化できる。
(2)幾つかの実施形態では、上記構成(1)において、
前記補強材は、前記鉄筋かごの径方向にて、前記主筋の内側に配置されている。
【発明の効果】
【0010】
本発明の少なくとも一実施形態によれば、重ね継手によって連結される場所打ち杭のための鉄筋かごであって、簡単な構成にて重ね代を短縮可能な鉄筋かごを備え軽量化可能な場所打ち杭のための鉄筋かご連結体が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の少なくとも一実施形態に係る鉄筋かご連結体を用いた場所打ち杭を概略的に示す断面図である。
【
図2】鉄筋かご連結体を構成する1つの鉄筋かごを概略的に示す正面図である。
【
図3】
図2の鉄筋かごを概略的に示す平面図である。
【
図4】
図2の鉄筋かごを概略的に示す斜視図である。
【
図5】
図2の鉄筋かごの1つの主筋、及び、主筋に溶接された補強材を概略的に示す平面図である。
【
図6】
図2の鉄筋かごの1つの主筋の端部、及び、主筋の端部に溶接された補強材を概略的に示す正面図である。
【
図7】重ね継手にて連結された2つの鉄筋かごの概略的な平面図である。
【
図8】重ね継手にて連結された2つの鉄筋かごの一部を概略的に示す正面図である。
【
図9】上かごの主筋と下かごの主筋とを番線(金属線)によって結束した状態を説明するための概略的な平面図である。
【
図10】補強材の効果を説明するための概略図である。
【
図11】本発明の少なくとも一実施形態に係る鉄筋かごを用いた場所打ち杭の杭頭接合部を概略的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0013】
図1は、本発明の少なくとも一実施形態に係る鉄筋かご連結体1を用いた場所打ち杭3を概略的に示す断面図である。
図1に示したように、場所打ち杭3は、杭孔5と、杭孔5内に配置された鉄筋かご連結体1と、杭孔5内に打設されたコンクリート7とによって構成されている。なお、杭孔5は、
図1に示したように拡底孔であってもよいし、ストレート孔であってもよいし、拡頭孔であってもよい。
【0014】
図2は、鉄筋かご連結体1を構成する1つの鉄筋かご9を概略的に示す正面図である。
図3は、鉄筋かご9を概略的に示す平面図である。
図4は、鉄筋かご9を概略的に示す斜視図である。鉄筋かご連結体1は、相互に連結された複数の鉄筋かご9によって構成されている。
図2、
図3及び
図4に示したように、場所打ち杭3のための鉄筋かご9は、複数の主筋11と、補強材13とを備えている。
【0015】
複数の主筋11は、鉄筋かご9の長手方向にそれぞれ延在し、鉄筋かご9の周方向に相互に間隔を存して配置されている。
なお、複数の主筋11は、複数の帯筋(フープ筋)12によって相互に連結されている。複数の帯筋12は、それぞれ鉄筋かご9の周方向に延び、鉄筋かご9の長手方向に相互に離間して配置されている。このように、環状の帯筋12に対し複数の主筋11が連結されることで、鉄筋かご9は全体として略円筒状をなす。
主筋11の径、長さ、材質及び数、並びに、帯筋12の径、材質及び数は、鉄筋かご9の大きさ等に応じて適宜設定可能である。
【0016】
補強材13は、例えば棒形状を有し、複数の主筋11の端部のうち1つ以上に、該主筋11の長手方向に沿って接合されている。本実施形態では、全ての主筋11の両端部に補強材13が溶接により接合されているが、一部の主筋11にのみ補強材13が溶接されていてもよい。
【0017】
図5は、鉄筋かご9の1つの主筋11、及び、主筋11に溶接された補強材13を概略的に示す平面図である。
図6は、1つの主筋11の端部、及び、主筋11の端部に溶接された補強材13を概略的に示す正面図である。
図5及び
図6に示したように、主筋11は異形棒鋼である。補強材13は異形棒鋼であるのが好ましいが、丸鋼であってもよい。なお、符号14は溶接部を示している。
【0018】
主筋11と補強材13は、
図5に示したように両側フレア溶接によって溶接されているのが好ましいが、片側フレア溶接によって溶接されていてもよい。
【0019】
例えば、補強材13の長さは、1d以上15d以下に設定される(ただし、dは補強材13の直径である)。また例えば、補強材13の直径dは、0.5D以上1.5D以下に設定される(ただし、Dは主筋11の直径である)。
【0020】
また、
図2、
図3及び
図4では、補強材13が、主筋11に対して鉄筋かご9の径方向内側に溶接されているが、鉄筋かご9の径方向外側に溶接されていてもよく、あるいは鉄筋かご9の周方向に隣接するように溶接されていてもよい。
【0021】
図7は、重ね継手にて連結された2つの鉄筋かご9の概略的な平面図である。
図8は、重ね継手にて連結された2つの鉄筋かご9の一部を概略的に示す正面図である。以下、上側の鉄筋かご9を上かご9aともいい、下側の鉄筋かご9を下かご9bともいう。
重ね継手の場合、上かご9aの主筋11の下側部分と下かご9bの主筋11の上側部分が隣接するように上かご9a及び下かご9bがオーパーラップして配置される。重ね継手の場合、重ね代Lは、従来45Dに設定されるが、本実施形態では、15D以上35D以下、好ましくは、25D以上35D以下に設定される。
なお、補強材13は、上かご9aの主筋11の下側端部、及び、下かご9bの主筋11の上側端部にそれぞれ溶接されているのが好ましい。
本実施形態では、補強材13を主筋11に溶接にて接合する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、接着剤等で接合されていても良い。接着剤等で接合する場合には、補強材13として樹脂製のエンジニアリングプラスチック等を用いてもよい。
【0022】
図9は、上かご9aの主筋11と下かご9bの主筋11とを番線(金属線)15によって結束した状態を説明するための概略的な平面図である。
重ね継手の場合、上かご9aの主筋11と下かご9bの主筋11とは、複数箇所において、番線15によって結束される。
【0023】
図10は、補強材13の効果を説明するための概略図である。重ね継手にて連結された鉄筋かご9同士の間での力の伝達は、主筋11に付着したコンクリート7を介して行われる。上記構成の鉄筋かご9によれば、主筋11のみならず、補強材13も介して力の伝達が行われるので、重ね代Lを短くしても鉄筋かご9同士の間で十分に力を伝達可能であり、場所打ち杭3の強度を維持することができる。あるいは、重ね代Lの長さがそのままであれば、場所打ち杭3をより高強度化できる。
【0024】
図11は、鉄筋かご連結体1を用いた場所打ち杭3の杭頭接合部を概略的に示す断面図である。
図1に示したように、鉄筋かご連結体1のうち最上位の鉄筋かご9の一部は、場所打ち杭3のコンクリート7から上方に向けて突出している。そして、突出している鉄筋かご9の部分は、場所打ち杭3の構築後に打設されるコンクリートによって構成されるフーチング(パイルキャップ)16内に埋設されている。幾つかの実施形態では、フーチング16内に埋設される主筋11の上端部にも長手方向に沿って補強材13が接合されている。
【0025】
上記構成によれば、フーチング16と場所打ち杭3との間での力の伝達が、主筋11のみならず、補強材13も介して行われるので、フーチング16に対する主筋11の定着長さLdを短くすることができる。あるいは、定着長さLdがそのままであれば、場所打ち杭3とフーチング16の接合強度をより高強度化できる。
なお、主筋11の定着長さLdは、杭頭面(場所打ち杭3のコンクリート7の上面)を定着起点とし、杭頭面から主筋11の上端までの長さである。
【0026】
最後に、本発明は上述した幾つかの実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
例えば、上述した鉄筋かご9の主筋11は、鉄筋かご9の周方向に離間して1本ずつ配置されていたが、複数の主筋11からなる束ね筋が配置されていてもよい。そして、束ね筋に補強材13が溶接されていてもよい。
【符号の説明】
【0027】
1 鉄筋かご連結体
3 場所打ち杭
5 杭孔
7 コンクリート
9 鉄筋かご
9a 上かご
9b 下かご
11 主筋
12 帯筋
13 補強材
14 溶接部
15 番線
16 フーチング