(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-19
(45)【発行日】2023-12-27
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 9/22 20060101AFI20231220BHJP
B60C 11/00 20060101ALI20231220BHJP
【FI】
B60C9/22 C
B60C11/00 B
B60C11/00 D
(21)【出願番号】P 2019219665
(22)【出願日】2019-12-04
【審査請求日】2022-11-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】藤城 雅之
【審査官】鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-069408(JP,A)
【文献】特開平02-299903(JP,A)
【文献】特開2013-043612(JP,A)
【文献】特開平04-015106(JP,A)
【文献】特開2018-118579(JP,A)
【文献】特開2006-130942(JP,A)
【文献】特開2006-111715(JP,A)
【文献】特開平5-178003(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 9/00-11/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド部におけるカーカス層の外周側に複数層のベルト層が配置され、該ベルト層の外周側に複数本の補強コードを含むストリップ材をタイヤ周方向に沿って複数周巻回してなるベルトカバー層が配置された空気入りタイヤにおいて、前記ベルト層の幅方向中心位置から両外側へそれぞれ前記ベルト層の幅の25%の位置までの領域をセンター部としたとき、該センター部では前記ストリップ材の周回部分が互いに離間するように配置され、前記センター部において前記ストリップ材のストリップ高さHc及びストリップ間隔Wpが2.0≦(2×Hc+2×Wp)/(Hc×Wp)≦5.5の関係を満足する
と共に、
前記ベルト層の幅方向最外側の両端部から幅方向中心側へそれぞれ前記ベルト層の幅の15%の位置までの領域をショルダー部としたとき、該ショルダー部において前記ストリップ材のストリップ幅Wc及びストリップ間隔Wpが0≦Wp/Wc≦0.5の関係を満足することを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記トレッド部がキャップトレッドゴム層とアンダートレッドゴム層とを有し、該アンダートレッドゴム層は、ゴム100重量部に対して、窒素吸着比表面積N
2SAが33m
2/g~150m
2/gであるカーボンブラックが40重量部~60重量部配合されたゴム組成物からなり、該ゴム組成物の加硫物性として、JIS硬度が50以上であり、100%伸長時のモジュラスが1.5MPa以上であり、300%伸長時のモジュラスが6.0MPa以上であることを特徴とする請求項
1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記ストリップ材の互いに離間した周回部分の相互間に前記アンダートレッドゴム層が充填された状態にあることを特徴とする請求項
2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記ベルト層の外周側に複数本のブリーダーヤーンが配置されていることを特徴とする請求項1~
3のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記ストリップ材が前記補強コードと交差する複数本の緯糸を含み、前記ストリップ材において前記緯糸の打ち込み密度が0.5本/m以上となるように前記緯糸が配置されていることを特徴とする請求項1~
4のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルト層の外周側に複数本の補強コードを含むストリップ材をタイヤ周方向に沿って複数周巻回してなるベルトカバー層が配置された空気入りタイヤに関し、更に詳しくは、ベルトカバー層のストリップ材を間隔を空けて配置することで軽量化を図りつつ、エア溜りの発生を抑制し、耐久性を改善することを可能にした空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤにおいて、トレッド部におけるカーカス層の外周側に複数層のベルト層が配置され、該ベルト層の外周側に複数本の補強コードを含むストリップ材をタイヤ周方向に沿って複数周巻回してなるベルトカバー層が配置されている(例えば、特許文献1参照)。このようなベルトカバー層をベルト層の外周側に配置することにより、高速耐久性に代表されるタイヤ特性を改善することができる。
【0003】
近年、空気入りタイヤの軽量化が厳しく求められており、空気入りタイヤを構成する各部材についても質量減の要求が高まっている。ベルトカバー層においても例外ではなく、例えば、ストリップ材を間隔を空けて配置することで軽量化を図ることが提案されている例えば、特許文献2参照)。
【0004】
しかしながら、ベルト層の外周側においてストリップ材を間隔を空けて配置した場合、ストリップ材の互いに離間した周回部分の相互間にエア溜りが発生し易いという欠点がある。そして、トレッド部においてエア溜りが生じると、空気入りタイヤの耐久性が悪化することになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-156887号公報
【文献】特開2017-7376号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、ベルトカバー層のストリップ材を間隔を空けて配置することで軽量化を図りつつ、エア溜りの発生を抑制し、耐久性を改善することを可能にした空気入りタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明の空気入りタイヤは、トレッド部におけるカーカス層の外周側に複数層のベルト層が配置され、該ベルト層の外周側に複数本の補強コードを含むストリップ材をタイヤ周方向に沿って複数周巻回してなるベルトカバー層が配置された空気入りタイヤにおいて、前記ベルト層の幅方向中心位置から両外側へそれぞれ前記ベルト層の幅の25%の位置までの領域をセンター部としたとき、該センター部では前記ストリップ材の周回部分が互いに離間するように配置され、前記センター部において前記ストリップ材のストリップ高さHc及びストリップ間隔Wpが2.0≦(2×Hc+2×Wp)/(Hc×Wp)≦5.5の関係を満足すると共に、
前記ベルト層の幅方向最外側の両端部から幅方向中心側へそれぞれ前記ベルト層の幅の15%の位置までの領域をショルダー部としたとき、該ショルダー部において前記ストリップ材のストリップ幅Wc及びストリップ間隔Wpが0≦Wp/Wc≦0.5の関係を満足することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、ベルト層の外周側に複数本の補強コードを含むストリップ材をタイヤ周方向に沿って複数周巻回してなるベルトカバー層が配置された空気入りタイヤにおいて、センター部ではストリップ材の周回部分が互いに離間するように配置され、ストリップ材のストリップ高さHc及びストリップ間隔Wpが2.0≦(2×Hc+2×Wp)/(Hc×Wp)≦5.5の関係を満足することにより、ストリップ材の使用量を削減して軽量化を図りつつ、エア溜りの発生を抑制し、空気入りタイヤの耐久性を改善することができる。
【0009】
本発明において、ベルト層の幅方向最外側の両端部から幅方向中心側へそれぞれベルト層の幅の15%の位置までの領域をショルダー部としたとき、該ショルダー部においてストリップ材のストリップ幅Wc及びストリップ間隔Wpが0≦Wp/Wc≦0.5の関係を満足することが好ましい。センター部において軽量化とエア溜り抑制効果を両立させる一方で、ショルダー部において0≦Wp/Wc≦0.5の関係を満足することにより、空気入りタイヤの補強効果を十分に確保することができる。
【0010】
本発明において、トレッド部がキャップトレッドゴム層とアンダートレッドゴム層とを有し、該アンダートレッドゴム層は、ゴム100重量部に対して、窒素吸着比表面積N2SAが33m2/g~150m2/gであるカーボンブラックが40重量部~60重量部配合されたゴム組成物からなり、該ゴム組成物の加硫物性として、JIS硬度が50以上であり、100%伸長時のモジュラスが1.5MPa以上であり、300%伸長時のモジュラスが6.0MPa以上であることが好ましい。これにより、アンダートレッドゴム層の加硫時のゴム流れが良好になり、エア溜りの発生を効果的に抑制することが可能になる。その結果として、ストリップ材の互いに離間した周回部分の相互間にはアンダートレッドゴム層が充填された状態となる。
【0011】
ベルト層の外周側には複数本のブリーダーヤーンが配置されていることが好ましい。これにより、ブリーダーヤーンによるエア排出効果を確保し、エア溜りの発生を効果的に抑制することができる。また、ストリップ材は補強コードと交差する複数本の緯糸を含み、ストリップ材において緯糸の打ち込み密度が0.5本/m以上となるように緯糸が配置されていることが好ましい。これにより、緯糸によるエア排出効果を確保し、エア溜りの発生を効果的に抑制することができる。
【0012】
本発明において、カーボンブラックの窒素吸着比表面積N2SAは、JIS-K6217に準拠して測定されるものである。JIS硬度は、JIS-K6253に準拠して、Aタイプのデュロメータを用いて温度20℃の条件にて測定されるデュロメータ硬さである。100%伸長時及び300%伸長時のモジュラスは、JIS-K6251に準拠して、ダンベル状試験片を用いて温度20℃の条件にて測定される所定伸びにおける引張応力である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態からなる空気入りタイヤを示す子午線断面図である。
【
図2】
図1の空気入りタイヤのベルト層及びベルトカバー層を抽出して示す断面図である。
【
図3】
図1の空気入りタイヤのベルトカバー層を構成するストリップ材を一部切り欠いて示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の構成について添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は本発明の実施形態からなる空気入りタイヤを示し、
図2及び
図3はその要部を示すものである。
【0015】
図1に示すように、本実施形態の空気入りタイヤは、タイヤ周方向に延在して環状をなすトレッド部1と、トレッド部1の両側に配置された一対のサイドウォール部2と、サイドウォール部2のタイヤ径方向内側に配置された一対のビード部3とを備えている。
【0016】
一対のビード部3,3間にはタイヤ径方向に延びる複数本のカーカスコードを含むカーカス層4が装架されている。カーカス層4を構成するカーカスコードとしては、ナイロンやポリエステル等の有機繊維コードが好ましく使用される。各ビード部3には環状のビードコア5が埋設されており、そのビードコア5の外周上には断面三角形状のゴム組成物からなるビードフィラー6が配置されている。
【0017】
一方、トレッド部1におけるカーカス層4の外周側には複数層のベルト層7が埋設されている。ベルト層7は、タイヤ径方向内側に位置する内周側ベルト層7Aと、タイヤ径方向外側に位置する外周側ベルト層7Bとを含んでいる。内周側ベルト層7Aは外周側ベルト層7Bよりも広幅である。これらベルト層7はタイヤ周方向に対して傾斜する複数本のベルトコードを含み、かつ層間でベルトコードが互いに交差するように配置されている。ベルト層7において、補強コードのタイヤ周方向に対する傾斜角度は例えば10°~40°の範囲に設定されている。ベルト層7の補強コードとしては、スチールコードが好ましく使用される。
【0018】
ベルト層7の外周側には、高速耐久性の向上を目的として、補強コードをタイヤ周方向に対して5°以下の角度で配列してなるベルトカバー層8が配置されている。ベルトカバー層8は、
図2及び
図3に示すように、複数本の補強コード81を引き揃えてゴム被覆してなるストリップ材80をタイヤ周方向に沿って連続的に複数周巻回したジョイントレス構造を有している。ベルトカバー層8を構成するストリップ材80は、ベルト層7の幅方向の全域にわたって配置されているが、後述するように、その配置形態がベルト層7の幅方向の位置に応じて適正化されている。ベルトカバー層8の補強コードとしては、ナイロンやアラミド等の有機繊維コードが好ましく使用される。
【0019】
また、トレッド部1には、タイヤ外表面に露出するキャップトレッドゴム層1Aと、キャップトレッドゴム層1Aとベルトカバー層8との間に位置するアンダートレッドゴム層1Bとが配置されている。
【0020】
上記空気入りタイヤにおいて、
図2に示すように、ベルト層7の幅方向中心位置から両外側へそれぞれベルト層7の幅WBの25%の位置までの領域をセンター部CEとする。ここで、ベルト層7の幅方向中心位置はタイヤ中心線CLと一致している。また、ベルト層7の幅WBは最も広い内周側ベルト層7Aの幅である。このようにセンター部Ceを規定したとき、センター部Ceではストリップ材80の周回部分が互いに離間するように配置され、センター部Ceにおいてストリップ材80のストリップ高さHc及びストリップ間隔Wpが2.0≦(2×Hc+2×Wp)/(Hc×Wp)≦5.5の関係を満足している。ストリップ高さHcはストリップ材80の厚さである。
【0021】
上記空気入りタイヤでは、ベルト層7の外周側に複数本の補強コード81を含むストリップ材80をタイヤ周方向に沿って複数周巻回してなるベルトカバー層8を配置するにあたって、センター部Ceではストリップ材80の周回部分が互いに離間するように配置され、ストリップ材80のストリップ高さHc及びストリップ間隔Wpが上述の関係を満足することにより、ストリップ材80の互いに離間した周回部分の相互間にアンダートレッドゴム層1Bが円滑に流れ込むので、ストリップ材80の使用量を削減して軽量化を図りつつ、エア溜りの発生を抑制し、空気入りタイヤの耐久性を改善することができる。
【0022】
ここで、(2×Hc+2×Wp)はストリップ材80の周回部分の相互間に形成される空隙部分の断面外周長に相当し、(Hc×Wp)はストリップ材80の周回部分の相互間に形成される空隙部分の断面積に相当するが、両者の比を上記の如く設定することにより、軽量化とエア溜り抑制効果とを両立することができる。(2×Hc+2×Wp)/(Hc×Wp)の値が2.0よりも小さいとエア溜りが発生し易くなるため耐久性が低下し、逆に5.5よりも大きいとタイヤ質量を削減する効果を得ることが困難になる。特に、2.0≦(2×Hc+2×Wp)/(Hc×Wp)≦4.5であることが望ましい。また、軽量化とエア溜り抑制効果を確保する観点から、ストリップ材80のストリップ高さHcは0.5mm~1.0mmの範囲にあることが望ましい。
【0023】
上記空気入りタイヤにおいて、ベルト層7の幅方向最外側の両端部から幅方向中心側へそれぞれベルト層7の幅WBの15%の位置までの領域をショルダー部Shとしたとき、ショルダー部Shにおいてストリップ材80のストリップ幅Wc及びストリップ間隔Wpが0≦Wp/Wc≦0.5の関係を満足していると良い。上述のようにセンター部Ceにおいて軽量化とエア溜り抑制効果を両立させる一方で、ショルダー部Shにおいて0≦Wp/Wc≦0.5の関係を満足することにより、空気入りタイヤの補強効果を十分に確保することができる。ここで、Wp/Wcの値が0.5よりも大きいと空気入りタイヤの補強効果が不十分になる。なお、センター部Ceでは、0.2<Wp/Wc≦1.0の関係を満足していると良い。
【0024】
上記空気入りタイヤにおいて、トレッド部1がキャップトレッドゴム層1Aとアンダートレッドゴム層1Bとを有する場合に、アンダートレッドゴム層1Bは、ゴム100重量部に対して、窒素吸着比表面積N2SAが33m2/g~150m2/gであるカーボンブラックが40重量部~60重量部配合されたゴム組成物から構成されることが好ましい。そして、アンダートレッドゴム層1Bを構成するゴム組成物は、加硫物性として、JIS硬度が50以上(好ましくは、50~80)であり、100%伸長時のモジュラスが1.5MPa以上(好ましくは、1.5MPa~5.5MPa)であり、300%伸長時のモジュラスが6.0MPa以上(好ましくは、6.0MPa~20.0MPa)であると良い。これにより、アンダートレッドゴム層1Bの加硫時のゴム流れが良好になり、ストリップ材80の互いに離間した周回部分の相互間にはアンダートレッドゴム層1Bが充填された状態となり、エア溜りの発生を効果的に抑制することができる。
【0025】
ここで、アンダートレッドゴム層1Bに配合されるカーボンブラックの窒素吸着比表面積N2SAが33m2/gより小さいとゴム組成物に対する補強性が低下し、逆に150m2/gよりも大きいとゴム組成物の流動性が低下する。また、ゴム100重量部に対するカーボンブラックの配合量が40重量部より少ないとゴム組成物に対する補強性が低下し、逆に60重量部よりも多いとゴム組成物の流動性が低下する。更に、アンダートレッドゴム層1Bを構成するゴム組成物のJIS硬度が50未満、100%伸長時のモジュラスが1.5MPa未満、又は、300%伸長時のモジュラスが6.0MPa未満であると、アンダートレッドゴム層1Bとしての機能が低下することになる。
【0026】
上記空気入りタイヤのベルト層7における外側ベルト層7Bについて、ストリップ材80と接する面にブリーダーヤーン90が配置されている。つまり、外側ベルト層7Bとストリップ材80との間にはブリーダーヤーン90が配置されている(
図3参照)。ブリーダーヤーン90はベルト層7Bに含まれるベルトコードに沿った角度で配置されていても、ストリップ材80と直交する角度で配置されていても良い。これにより、ブリーダーヤーン90によるエア排出効果を確保し、エア溜りの発生を効果的に抑制することができる。ブリーダーヤーン90には綿やポリエステル等の紡績糸が好ましく使用される。
【0027】
上記空気入りタイヤにおいて、
図3に示すように、ベルトカバー層8に使用されるストリップ材80は、引き揃えられた複数本の補強コード81と、これら補強コード81に対して交差する複数本の緯糸82を含んでいるが、このようなストリップ材80において緯糸82の打ち込み密度が0.5本/m以上となるように緯糸82が配置されているのが良い。つまり、ストリップ材80の長手方向における緯糸82の配置間隔は2m以下であると良い。これにより、緯糸82によるエア排出効果を確保し、エア溜りの発生を効果的に抑制することができる。緯糸82の打ち込み密度が0.5本/mよりも小さいと、緯糸82によるエア排出効果が不十分になる。特に、緯糸82の打ち込み密度は1.0本/m~2.0本/mであることが望ましい。
【実施例】
【0028】
タイヤサイズ215/60R16で、トレッド部におけるカーカス層の外周側に複数層のベルト層が配置され、該ベルト層の外周側に複数本の補強コードを含むストリップ材をタイヤ周方向に沿って複数周巻回してなるベルトカバー層が配置された空気入りタイヤにおいて、ベルトカバー層の構造を種々異ならせた基準例1~2、実施例1~6及び比較例1~3のタイヤを製作した。
【0029】
基準例1~2、実施例1~6及び比較例1~3において、センター部及びショルダー部におけるストリップ材のストリップ幅Wc、ストリップ間隔Wp、ストリップ高さHc、Wp/Wc、空隙部分の断面積(Hc×Wp)、空隙部分の断面外周長(2×Hc+2×Wp)、(2×Hc+2×Wp)/(Hc×Wp)、アンダートレッドゴム層を構成するゴム組成物におけるカーボンブラック(窒素吸着比表面積N2SA:42m2/g)の配合量、アンダートレッドゴム層を構成するゴム組成物のJIS硬度、100%伸長時のモジュラス、300%伸長時のモジュラスを表1のように設定した。
【0030】
これら試験タイヤについて、下記の評価方法により、タイヤ質量、エア溜り発生量、耐久性を評価し、その結果を表1に併せて示した。
【0031】
タイヤ質量:
各試験タイヤの質量を測定した。評価結果は、基準例1を100とする指数にて示した。この指数値が小さいほど軽量であることを意味する。
【0032】
エア溜り発生量:
各試験タイヤを加硫後に分解し、エア溜りの発生量を測定した。評価結果は、基準例1を100とする指数にて示した。この指数値が小さいほどエア溜り発生量が少ないことを意味する。
【0033】
耐久性:
各試験タイヤをリムサイズ16×6 1/2JJのホイールに組み付けてドラム耐久試験機に装着し、空気圧:220kPa、荷重:JATMA最大負荷能力の88%、初期速度:120km/hの条件にて走行試験を開始し、20分毎に速度を10km/hずつ増加させ、トレッド部に故障が発生するまでの走行距離を計測した。評価結果は、基準例1を100とする指数にて示した。この指数値が大きいほど耐久性が優れていることを意味する。
【0034】
【0035】
表1から判るように、基準例1のタイヤは、ベルトカバー層のストリップ材が間隔を空けて配置されているため、基準例2に比べて軽量であるが、エア溜りの発生量が増大し、耐久性が低下していた。これに対して、実施例1~6のタイヤは、軽量化の効果を享受しながら、基準例1との対比において、エア溜りの発生を抑制し、耐久性を改善することができた。
【0036】
一方、比較例1のタイヤは、センター部における(2×Hc+2×Wp)/(Hc×Wp)の値が大き過ぎるため、タイヤ質量を軽減する効果が不十分であった。比較例2,3のタイヤは、センター部における(2×Hc+2×Wp)/(Hc×Wp)の値が小さ過ぎるため、エア溜りの発生量が増大し、耐久性も低下していた。
【符号の説明】
【0037】
1 トレッド部
1A キャップトレッドゴム層
1B アンダートレッドゴム層
2 サイドウォール部
3 ビード部
4 カーカス層
5 ビードコア
6 ビードフィラー
7 ベルト層
7A 内周側ベルト層
7B 外周側ベルト層
8 ベルトカバー層
80 ストリップ材
81 補強コード
82 緯糸
90 ブリーダーヤーン