(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-19
(45)【発行日】2023-12-27
(54)【発明の名称】クランク軸の製造方法
(51)【国際特許分類】
B21K 1/08 20060101AFI20231220BHJP
B21J 5/02 20060101ALI20231220BHJP
F02B 77/00 20060101ALI20231220BHJP
F16C 3/08 20060101ALI20231220BHJP
【FI】
B21K1/08
B21J5/02 Z
F02B77/00 J
F16C3/08
(21)【出願番号】P 2020011430
(22)【出願日】2020-01-28
【審査請求日】2022-09-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001553
【氏名又は名称】アセンド弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】大久保 潤一
(72)【発明者】
【氏名】田村 憲司
(72)【発明者】
【氏名】吉永 将大
(72)【発明者】
【氏名】高本 奨
(72)【発明者】
【氏名】薮野 訓宏
【審査官】永井 友子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-215227(JP,A)
【文献】特開2016-215233(JP,A)
【文献】特開2003-136181(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21K 1/08
B21J 5/02
F02B 77/00
F16C 3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クランク軸の製造方法であって、
(a)型鍛造によって、バリ付きの仕上げ鍛造品を成形する工程であって、前記仕上げ鍛造品は、ジャーナルと、ジャーナルに対して偏心したピンと、前記ジャーナルと前記ピンとを連結するアームと、前記アームに連結されたカウンターウエイトと、前記カウンターウエイトの幅方向の端部から前記カウンターウエイトの長手方向の外側に突出する余肉部と、を有する工程と、
(b)前記仕上げ鍛造品から前記バリを除去する工程と、
(c)前記バリが除去された前記仕上げ鍛造品を整形する工程であって、一対の金型を用いて、前記カウンターウエイトの前記長手方向に沿って前記ジャーナルを押圧することにより、前記仕上げ鍛造品の曲がりを矯正し、さらに、前記金型の一部を構成する治具を用いて、前記カウンターウエイトの前記長手方向に沿って前記余肉部を圧下することにより、前記余肉部の材料を前記カウンターウエイトの前記端部に流入させる工程と、を備え
、
前記治具のキャビティは、前記カウンターウエイトの前記ピン側の表面と対向し、前記仕上げ鍛造品の中心軸に垂直な第1の平面と、前記カウンターウエイトの前記ジャーナル側の表面と対向し、前記仕上げ鍛造品の前記中心軸に垂直な第2の平面とを含み、
前記工程(c)では、前記カウンターウエイトのうちで前記材料が流入した前記端部が前記第1の平面と前記第2の平面に接触する、製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クランク軸の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば自動車に搭載されるレシプロエンジンは、燃料の燃焼によるピストンの往復運動を回転運動に変換するために、クランク軸を備える。クランク軸は、ジャーナルと、ピンと、アームと、を有する。ジャーナル、ピン及びアームは、それぞれクランクジャーナル、クランクピン及びクランクアームとも称される。ジャーナルは、クランク軸の主軸部であり、軸心周りに回転する。ピンは、ジャーナルに対して偏心して配置され、コネクティングロッドを介してピストンに接続される。アームは、ジャーナルとピンとを連結する。
【0003】
クランク軸は、型鍛造によって製造することができる。例えば、クランク軸を型鍛造によって製造する場合、まず、加熱されたビレットを予備成形して荒地を得る。次に、型鍛造(荒打ち及び仕上げ打ち)を行って荒地からバリ付きの仕上げ鍛造品を成形する。この仕上げ鍛造品に対してバリ抜きを実施する。その後、バリなしの仕上げ鍛造品の必要箇所(例:ジャーナル、ピン)を押圧し、仕上げ鍛造品を最終製品の寸法及び形状に整形する。
【0004】
クランク軸の製造プロセスに関して、従来、様々な提案がなされている。例えば、国際公開第2010/110133号(特許文献1)は、仕上げ打ち工程においてピンに孔部を形成する方法を提案する。特許文献1において、荒地(予備成形品)は、仕上げ打ちに用いられる金型(鍛造型)のキャビティよりも小さくなるように成形される。そのため、仕上げ打ち工程において予備成形品が金型内に配置された時点では、予備成形品と金型との間にクリアランスが存在する。予備成形品のピンにパンチが挿入されることにより、このクリアランスに材料が充填される。特許文献1によれば、パンチの挿入によってピンに孔部が形成されるため、クランク軸の軽量化を図ることができる。また、金型の閉塞空間内に材料を充填させて鍛造を行うため、クランク軸の寸法精度を向上させることができる。
【0005】
特開2006-247730号公報(特許文献2)は、アームに設けられたカウンターウエイトを矯正する方法を提案する。特許文献2では、バリなしの仕上げ鍛造品に対し、ツイスト工程でひねりを加え、リストライク工程で曲がり矯正を施す。その後、ピンを挟んで隣り合うカウンターウエイトの間に中間治具を挿入し、これらのカウンターウエイトを両側から加圧治具で加圧拘束することにより、カウンターウエイトの形状を矯正する。
【0006】
特開2012-97888号公報(特許文献3)は、クランク軸本体のアームにカウンターウエイトを接合する方法を提案する。特許文献3では、クランク軸本体及びカウンターウエイトがそれぞれ冷間鍛造で成形される。カウンターウエイトは、アームに対し、溶接及び塑性締結で接合される。特許文献3によれば、溶接による接合部が破壊された場合であっても、塑性締結による接合部によってカウンターウエイトがアームから分離するのを防ぐことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】国際公開第2010/110133号
【文献】特開2006-247730号公報
【文献】特開2012-97888号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
クランク軸において、カウンターウエイトは、クランク軸の回転バランスを保つ錘である。このため、カウンターウエイトのモーメントを確保する観点から、カウンターウエイトの重心はクランク軸の回転軸から遠くにあることが好ましい。
【0009】
特許文献3では、カウンターウエイトがアームと別個に成形される。これに対し、特許文献1及び2では、カウンターウエイトはアームと一体として成形される。この場合、仕上げ打ち工程では、アーム及びカウンターウエイトの縦軸を境に二分割する金型が用いられる。この金型から仕上げ鍛造品を取り出しやすくするため、カウンターウエイトの表面には抜け勾配が与えられる。
【0010】
カウンターウエイトの表面に抜け勾配が与えられることにより、カウンターウエイトの幅方向の端部の厚みは、カウンターウエイトの幅方向の中央部の厚みよりも小さい。つまり、型鍛造時の抜け勾配に起因して、カウンターウエイトの幅方向の端部の重量は小さい。このため、カウンターウエイトの重心はクランク軸の回転軸寄りになりがちである。
【0011】
カウンターウエイトの重心をクランク軸の回転軸から遠ざける手法として、カウンターウエイトの幅を拡大することが考えられる。しかしながら、この場合、カウンターウエイトが増量し、クランク軸も増量する。クランク軸の増量は、レシプロエンジンが搭載される自動車の燃費向上及び軽量化の観点から好ましくない。
【0012】
要するに、カウンターウエイトには、モーメントの確保とともに軽量化が求められる。
【0013】
本発明の1つの目的は、カウンターウエイトのモーメントを確保しつつ、カウンターウエイトを軽量化することができるクランク軸の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の実施形態によるクランク軸の製造方法は、工程(a)と、工程(b)と、工程(c)と、を備える。工程(a)では、型鍛造によって、バリ付きの仕上げ鍛造品を成形する。この仕上げ鍛造品は、ジャーナルと、ピンと、アームと、カウンターウエイトと、余肉部と、を有する。ピンは、ジャーナルに対して偏心する。アームは、ジャーナルとピンとを連結する。カウンターウエイトは、アームに連結される。余肉部は、カウンターウエイトの幅方向の端部からカウンターウエイトの長手方向の外側に突出する。工程(b)では、上記の仕上げ鍛造品からバリを除去する。工程(c)では、バリが除去された仕上げ鍛造品を整形する。工程(c)では、一対の金型を用いて、カウンターウエイトの長手方向に沿ってジャーナルを押圧する。これにより、仕上げ鍛造品の曲がりを矯正する。さらに、上記の金型の一部を構成する治具を用いて、カウンターウエイトの長手方向に沿って余肉部を圧下する。これにより、余肉部の材料をカウンターウエイトの端部に流入させる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の実施形態によるクランク軸の製造方法によれば、カウンターウエイトのモーメントを確保しつつ、カウンターウエイトを軽量化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本実施形態によるクランク軸の製造方法において工程(a)及び(b)を経て得られる仕上げ鍛造品の側面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す仕上げ鍛造品に含まれるクランクウェブの正面図である。
【
図4】
図4は、本実施形態によるクランク軸の製造方法において工程(c)で使用される加工装置の模式図である。
【
図5】
図5は、
図4に示す加工装置に含まれる金型を構成する上型及び治具を構成する上治具の下面図である。
【
図6】
図6は、
図4に示す加工装置に含まれる金型を構成する下型及び治具を構成する下治具の上面図である。
【
図7】
図7は、
図5及び
図6の線VII-VIIにおける金型及び治具の断面図である。
【
図8A】
図8Aは、工程(c)における加工装置の動作を説明するための模式図である。
【
図8B】
図8Bは、工程(c)における加工装置の動作を説明するための別の模式図である。
【
図8C】
図8Cは、工程(c)における加工装置の動作を説明するためのさらに別の模式図である。
【
図9A】
図9Aは、工程(c)において治具による余肉部の圧下の様子を説明するための模式図である。
【
図9B】
図9Bは、工程(c)において治具による余肉部の圧下の様子を説明するための別の模式図である。
【
図11】
図11は、工程(c)の後のクランクウェブの背面図である。
【
図13】
図13は、本実施形態の変形例1によるクランク軸の製造方法において加工装置に含まれる金型を構成する上型、及び治具を構成する上治具の下面図である。
【
図14】
図14は、本実施形態の変形例1によるクランク軸の製造方法において加工装置に含まれる金型を構成する下型、及び治具を構成する下治具の上面図である。
【
図16】
図16は、本実施形態の変形例2によるクランク軸の製造方法において加工装置に含まれる金型を構成する上型、及び治具を構成する上治具の下面図である。
【
図17】
図17は、本実施形態の変形例2によるクランク軸の製造方法において加工装置に含まれる金型を構成する下型、及び治具を構成する下治具の上面図である。
【
図19】
図19は、本実施形態の変形例3によるクランク軸の製造方法において工程(c)で使用される加工装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の説明では、本発明の実施形態について例を挙げて説明するが、本発明は以下で説明する例に限定されない。以下の説明において特定の数値や特定の材料を例示する場合があるが、本発明はそれらの例示に限定されない。
【0018】
本実施形態によるクランク軸の製造方法は、工程(a)と、工程(b)と、工程(c)と、を備える。工程(a)では、型鍛造によって、バリ付きの仕上げ鍛造品を成形する。この仕上げ鍛造品は、ジャーナルと、ピンと、アームと、カウンターウエイトと、余肉部と、を有する。ピンは、ジャーナルに対して偏心する。アームは、ジャーナルとピンとを連結する。カウンターウエイトは、アームに連結される。余肉部は、カウンターウエイトの幅方向の端部からカウンターウエイトの長手方向の外側に突出する。工程(b)では、上記の仕上げ鍛造品からバリを除去する。工程(c)では、バリが除去された仕上げ鍛造品を整形する。工程(c)では、一対の金型を用いて、カウンターウエイトの長手方向に沿ってジャーナルを押圧する。これにより、仕上げ鍛造品の曲がりを矯正する。さらに、上記の金型の一部を構成する治具を用いて、カウンターウエイトの長手方向に沿って余肉部を圧下する。これにより、余肉部の材料をカウンターウエイトの端部に流入させる(第1の構成)。
【0019】
第1の構成では、工程(a)及び工程(b)を経ることによって得られたバリなしの仕上げ鍛造品において、型鍛造時の抜け勾配に起因して、カウンターウエイトの幅方向の端部の厚みは、カウンターウエイトの幅方向の中央部の厚みよりも小さい。この仕上げ鍛造品を工程(c)で整形する。このとき、カウンターウエイトの端部から突出する余肉部が治具によって圧下されて、余肉部の材料がカウンターウエイトの端部に流入する。これにより、カウンターウエイトの端部が回転軸方向に膨らみ、その厚みが増量する。別の観点では、カウンターウエイトの厚みが均一化される。この場合、カウンターウエイトの重心がクランク軸の回転軸から遠ざかり、回転軸回りにおけるカウンターウエイトのモーメントが大きくなる。すなわち、第1の構成の製造方法で製造されたクランク軸では、一般的な型鍛造で製造されたクランク軸と比較して、モーメントが同程度であればカウンターウエイトの重量が小さい。したがって、第1の構成によれば、カウンターウエイトのモーメントを確保しつつ、カウンターウエイトを軽量化することができる。
【0020】
第1の構成の製造方法において、好ましくは、治具のキャビティは、カウンターウエイトのピン側の表面と対向する第1の平面を含む。工程(c)では、カウンターウエイトのうちで材料が流入した端部が第1の平面に接触する(第2の構成)。
【0021】
治具による余肉部の圧下により、カウンターウエイトの端部はピン側に向けて変形しやすい。第2の構成によれば、工程(c)で、カウンターウエイトの端部のピン側に向かう変形が第1の平面によって制限される。したがって、寸法精度が向上する。
【0022】
第2の構成の製造方法において、好ましくは、治具のキャビティは、カウンターウエイトのジャーナル側の表面と対向する第2の平面を含む。工程(c)では、カウンターウエイトのうちで材料が流入した端部が第2の平面に接触する(第3の構成)。
【0023】
第3の構成によれば、工程(c)で、さらにカウンターウエイトの端部のジャーナル側に向かう変形が第2の平面によって制限される。したがって、寸法精度が一層向上する。
【0024】
以下に、図面を参照しながら、本実施形態によるクランク軸の製造方法の具体例を説明する。各図において同一又は相当の構成については同一符号を付し、同じ説明を繰り返さない。
【0025】
[クランク軸の製造方法]
本実施形態によるクランク軸の製造方法は、典型的には、熱間鍛造によるクランク軸の製造方法である。本実施形態によるクランク軸の製造方法は、バリ付きのクランク軸の仕上げ鍛造品を成形する工程(a)と、当該仕上げ鍛造品からバリを除去する工程(b)と、バリが除去された仕上げ鍛造品を整形する工程(c)と、を備える。以下、各工程について説明する。
【0026】
工程(a)及び工程(b)
本実施形態によるクランク軸の製造方法では、まず、工程(a)において、バリ付きの仕上げ鍛造品を成形する。この仕上げ鍛造品は、一般的な型鍛造によって成形される。すなわち、加熱されたビレットを予備成形して荒地を得た後、この荒地に型鍛造(荒打ち及び仕上げ打ち)を行ってバリ付きの仕上げ鍛造品を成形する。その後、工程(b)において、仕上げ鍛造品のバリ抜きを実施し、バリなしの仕上げ鍛造品を得る。
【0027】
図1は、バリ抜き後の仕上げ鍛造品10を模式的に示す側面図である。仕上げ鍛造品10は、最終製品であるクランク軸とほとんど同一の寸法及び形状を有する。仕上げ鍛造品10は、複数のジャーナル11と、複数のピン12と、複数のアーム13と、複数のカウンターウエイト14と、を有する。仕上げ鍛造品10はさらに、後述する余肉部18を有する。
図1では、4気筒エンジン用のクランク軸の仕上げ鍛造品10を例示する。ただし、本実施形態の製造方法で製造されるクランク軸は、4気筒エンジン用のクランク軸に限られない。
【0028】
複数のジャーナル11は、それぞれ、仕上げ鍛造品10の中心軸X1を軸心とする概略円柱状をなす。中心軸X1は、仕上げ鍛造品10から製造されるクランク軸の回転軸X1となる。ジャーナル11は、回転軸X1に沿って配列され、クランク軸の主軸部を構成する。
【0029】
複数のピン12は、それぞれ概略円柱状をなし、ジャーナル11に対して偏心する。すなわち、複数のピン12は、回転軸X1の周りに所定の位相差で配置される。本実施形態において、回転軸X1方向で両端に位置するピン12は、中央の2つのピン12と180°の位相差を有する。
【0030】
アーム13の各々は、回転軸X1方向においてジャーナル11とピン12との間に配置される。アーム13は、ジャーナル11とピン12とを連結する。アーム13は、回転軸X1方向と交差する表面131,132を有する。表面131,132のうち、一方の表面131にはジャーナル11が接続され、他方の表面132にはピン12が接続される。本実施形態では、必要に応じ、回転軸X1方向に並ぶ8枚のアーム13を、フロント16側からフランジ17側に向かって順に、第1~第8アーム13a~13hと称して区別する。
【0031】
カウンターウエイト14の各々は、アーム13と一体で成形される。必要な場合、第1~第8アーム13a~13hの各カウンターウエイト14を第1~第8カウンターウエイト14a~14hと称して区別する。本実施形態では、全てのアーム13がカウンターウエイト14を一体で有する。ただし、カウンターウエイト14は、一部のアーム13にのみ設けられていてもよい。各カウンターウエイト14の形状は、相互に同一であってもよいが、相互に異なっていてもよい。
【0032】
カウンターウエイト14は、回転軸X1方向と交差する表面141,142を有する。一方の表面141は、アーム13のジャーナル11側の表面131と連続する。他方の表面142は、アーム13のピン12側の表面132と連続する。
【0033】
一体で成形されたアーム13及びカウンターウエイト14は、一般に、クランクウェブ15と称される。
図2は、クランクウェブ15をジャーナル11側から見た図である。
図3は、クランクウェブ15をカウンターウエイト14側から見た図である。
図2では、最終製品であるクランク軸の形状を二点鎖線で示す。
【0034】
図2を参照して、本明細書では、説明の便宜上、アーム13、カウンターウエイト14及びクランクウェブ15において、ジャーナル11側の表面を正面、ピン12側の表面を背面と言う場合がある。クランクウェブ15において、ピン12の中心軸X2及び回転軸X1に直交する軸を縦軸Zと定義する。縦軸Zが延びる方向が長手方向であり、縦軸Z及び回転軸X1に垂直な方向が幅方向である。長手方向に関してアーム13側を上、カウンターウエイト14側を下と言い、幅方向の両側を左右と言う場合がある。また、カウンターウエイト14の長手方向に関して、ピン12側(上側)を内側、それとは反対側(下側)を外側と言う場合がある。また、カウンターウエイトの幅方向に関して、縦軸Z側を内側、それとは反対側を外側と言う場合がある。
【0035】
図2に示すカウンターウエイト14は、アーム13から下方に向かって拡幅する。カウンターウエイト14は、正面視で概略扇状をなす。すなわち、カウンターウエイト14は、主として、外側面143aと、端側面143bと、内側面143cと、を有する。外側面143aは、正面視で例えば円弧状をなす。内側面143cは、アーム13の側面につながる。端側面143bは、外側面143aと内側面143cとを滑らかにつなぐ。端側面143bは、平面であってもよいし、凸曲面であってもよい。
【0036】
カウンターウエイト14の幅方向の両端部14sそれぞれから長手方向の外側に余肉部18が突出する。すなわち、余肉部18は、カウンターウエイト14の外側面143aのうちの端側面143b近傍に設けられる。余肉部18はカウンターウエイト14と一体で成形される。
【0037】
本実施形態では、カウンターウエイト14の両端部14sそれぞれに余肉部18が設けられる。ただし、余肉部18はカウンターウエイト14の両端部14sの一方にのみ設けられてもよい。また、余肉部18は、全てのカウンターウエイト14に設けられてもよいし、一部のカウンターウエイト14にのみ設けられてもよい。
【0038】
図3を参照して、カウンターウエイト14の表面141,142には、抜け勾配が与えられている。通常、抜け勾配は最小でも1.0°である。工程(a)の型鍛造時に仕上げ鍛造品を金型から取り出しやすくするためである。このため、カウンターウエイト14の表面141,142は、それぞれ、幅方向の中央から左右に向かって下降傾斜している。このため、カウンターウエイト14の厚み(回転軸X1方向の寸法)は、幅方向の中央部側で大きく、幅方向の両端部14s側で小さい。
【0039】
工程(c)
工程(c)では、バリなしの仕上げ鍛造品10を整形する。より詳細には、各ジャーナル11を押圧することにより、仕上げ鍛造品10の曲がりを矯正する。さらにその後、余肉部18を圧下することにより、表面141,142に抜け勾配が存在するカウンターウエイト14を加工する。
【0040】
まず、バリなしの仕上げ鍛造品10を整形するための装置について、
図4を参照しつつ説明する。
図4は、工程(c)で使用される加工装置20の模式図である。
【0041】
図4では、加工装置20が加工する仕上げ鍛造品10を二点鎖線で示す。
図4において、仕上げ鍛造品10は、第3~第6カウンターウエイト14c~14fが上向き、残りのカウンターウエイト14が下向きに位置するように、加工装置20内に配置されている。すなわち、仕上げ鍛造品10が加工装置20内に配置された状態で、カウンターウエイト14の長手方向は加工装置20の上下方向(鉛直方向)と一致し、カウンターウエイト14の幅方向は加工装置20の奥行き方向(水平方向)上下方向(鉛直方向)と一致する。
【0042】
加工装置20は、例えば、ダイクッションを有するプレス機械である。加工装置20は、スライド21aと、ボルスタ21bと、ダイクッションプレート22a,22bと、金型23と、治具24と、弾性部材25a,25bと、を有する。
【0043】
スライド21aは、図示しないガイドに沿って昇降可能に構成されている。スライド21aは、例えば、機械式、油圧式、又は液圧式等の駆動機構によって駆動することができる。ボルスタ21bは、スライド21aの下方に配置されている。
【0044】
スライド21aとボルスタ21bとの間には、ダイクッションプレート22a,22bが配置される。ダイクッションプレート22aは、複数の弾性部材25aを介してスライド21aに接続されている。ダイクッションプレート22bは、複数の弾性部材25bを介してボルスタ21bに接続されている。
【0045】
弾性部材25a,25bは、上下方向に伸縮する部材である。弾性部材25a,25bは、例えば、コイルばねや空気ばね、油圧シリンダ等である。
【0046】
スライド21a、ボルスタ21b、ダイクッションプレート22a,22b、及び弾性部材25a,25bの基本構成は、公知のプレス機械及びダイクッションにおけるスライド、ボルスタ、ダイクッションプレート、及び弾性部材と同様である。そのため、本実施形態ではこれらに関する詳細な説明を省略する。
【0047】
金型23及び治具24は、仕上げ鍛造品10を最終製品の形状及び寸法に整形する。治具24は金型23の一部を構成する。このため、金型23及び治具24は、これらの金型全体で、最終製品の形状及び寸法に対応するキャビティを有する。後述する
図5及び
図6も参照して、金型23は、全てのジャーナル11に対応する領域を包含するように配置される。さらに金型23は、一部のピン12に対応する領域を包含するように配置される。さらに金型23は、全てのアーム13に対応する領域を包含するように配置される。
【0048】
一方、治具24は、回転軸X1方向で互いに隣接するカウンターウエイト14に対応する領域を包含するように配置される。例えば、
図4において、治具24は、第3~第6カウンターウエイト14c~14fが位置する上側、第1及び第2カウンターウエイト14a,14bが位置する下側、及び第7及び第8カウンターウエイト14g,14hが位置する下側に、それぞれ配置される。
【0049】
金型23は、上型23aと、下型23bと、を有する。すなわち、金型23は一対からなる。上型23aは、ダイクッションプレート22aの下面に取り付けられる。下型23bは、ダイクッションプレート22bの上面に取り付けられる。
【0050】
治具24は、上治具24aと、下治具24bと、を有する。上治具24aは下型23bの一部と対になる。下治具24bは上型23aの一部と対になる。上治具24aは、スライド21aの下面に取り付けられる。下治具24bは、ボルスタ21bの上面に取り付けられる。上治具24aの型割り面は、上型23aの型割り面よりも上方に位置する。下治具24bの型割り面は、下型23bの型割り面よりも下方に位置する。
【0051】
図5は、金型23を構成する上型23a、及び治具24を構成する上治具24aの下面図である。
図6は、金型23を構成する下型23b、及び治具24を構成する下治具24bの上面図である。
図7は、
図5及び
図6の線VII-VIIにおける金型23及び治具24の断面図である。
図7には、クランクウェブ15の正面視での輪郭を形成するキャビティが示される。
図7では、最終製品であるクランク軸の形状を二点鎖線で示す。
【0052】
図5に示すように、上型23a及び上治具24aは下面に開放するキャビティを有する。
図6に示すように、下型23b及び下治具24bは上面に開放するキャビティを有する。上型23aと下型23bが接触し、さらに上治具24aと下型23bが接触し、下治具24bと上型23aが接触するとき、上型23a及び上治具24aのキャビティと下型23b及び下治具24bのキャビティによって、最終製品のクランク軸の形状及び寸法に対応するキャビティが形成される。
【0053】
図5を参照して、上型23aのキャビティは、ジャーナル底面231を含む。ジャーナル底面231は、ジャーナル11に対応する位置に配置される。ジャーナル底面231は、最終製品のジャーナルの形状及び寸法に対応する半円筒状をなす。本実施形態では、上型23aのキャビティは、ピン底面332を含む。上型23aのピン底面332は、下向きのカウンターウエイト14と一体のアーム13に接続されたピン12に対応する位置に配置される。ピン底面332は、最終製品のピンの形状及び寸法に対応する半円筒状をなす。
図6に示す下型23bのキャビティも同様のジャーナル底面231及びピン底面332を含む。ただし、下型23bのピン底面332は、上向きのカウンターウエイト14と一体のアーム13に接続されたピン12に対応する位置に配置される。
【0054】
さらに、
図5を参照して、上治具24aのキャビティは第1の平面333を含む。上治具24aのキャビティにおいて、第1の平面333は、上向きのカウンターウエイト14のピン12側の表面142に対応する位置に配置される。上治具24aと下型23bが接触するとき、第1の平面333は、上向きのカウンターウエイト14のピン12側の表面142と対向する。第1の平面333は、仕上げ鍛造品10の中心軸X1に垂直な面である。仕上げ鍛造品10の中心軸X1に垂直な面は、仕上げ鍛造品10の中心軸X1に対して厳密に垂直な面のみならず、当該垂直な面に対して0.5°以下の小さな勾配で傾いた面を含む。すなわち、第1の平面333には、仕上げ鍛造品10の抜け勾配に対応する大きな勾配は与えられていない。別の観点では、第1の平面333は平坦な壁面である。
図6に示す下治具24bのキャビティも同様の第1の平面333を含む。ただし、下治具24bのキャビティにおいて、第1の平面333は、下向きのカウンターウエイト14のピン12側の表面142に対応する位置に配置される。
【0055】
図5に示す上治具24aのキャビティは、ピン底面332を含む。上治具24aのピン底面332は、上向きのカウンターウエイト14と一体のアーム13に接続されたピン12に対応する位置に配置される。
図6に示す下治具24bのキャビティも同様のピン底面332を含む。ただし、下治具24bのピン底面332は、下向きのカウンターウエイト14と一体のアーム13に接続されたピン12に対応する位置に配置される。
【0056】
さらに、
図5を参照して、上治具24aのキャビティは第2の平面334を含む。上治具24aのキャビティにおいて、第2の平面334は、上向きカウンターウエイト14のジャーナル11側の表面141に対応する位置に配置される。上治具24aと下型23bが接触するとき、第2の平面334は、上向きのカウンターウエイト14のジャーナル11側の表面141と対向する。第2の平面334は、仕上げ鍛造品10の中心軸X1に垂直な面である。すなわち、第2の平面334には、仕上げ鍛造品10の抜け勾配に対応する勾配は与えられていない。別の観点では、第2の平面334は平坦な壁面である。
図6に示す下治具24bのキャビティも同様の第2の平面334を含む。ただし、下治具24bのキャビティにおいて、第2の平面334は、下向きのカウンターウエイト14のジャーナル11側の表面141に対応する位置に配置される。
【0057】
図7を参照して、金型23及び治具24のキャビティはカウンターウエイト底面335を含む。カウンターウエイト底面335は、カウンターウエイト14に対応する位置に配置される。カウンターウエイト底面335は、最終製品のカウンターウエイトの形状及び寸法に対応する形状及び寸法を有する。より具体的には、カウンターウエイト底面335は、外側底面335aと、端側底面335bと、内側底面335cと、を有する。外側底面335aの形状及び寸法は、カウンターウエイト14の外側面143aの形状及び寸法と一致する。端側底面335bの形状及び寸法は、カウンターウエイト14の端側面143bの形状及び寸法と一致する。内側底面335cの形状及び寸法は、カウンターウエイト14の内側面143cの形状及び寸法と一致する。
【0058】
上治具24aのキャビティにおいて、外側底面335aは、上向きのカウンターウエイト14の外側面143aに対応する位置に配置される。端側底面335bは、上向きのカウンターウエイト14の端側面143bに対応する位置に配置される。一方、下型23bのキャビティにおいて、内側底面335cは、上向きのカウンターウエイト14の内側面143cに対応する位置に配置される。
【0059】
下治具24bのキャビティにおいて、外側底面335aは、下向きのカウンターウエイト14の外側面143aに対応する位置に配置される。端側底面335bは、下向きのカウンターウエイト14の端側面143bに対応する位置に配置される。一方、上型23aのキャビティにおいて、内側底面335cは、下向きのカウンターウエイト14の内側面143cに対応する位置に配置される。
【0060】
次に、
図8A~
図10を参照して、加工装置20を用いて、バリなしの仕上げ鍛造品10を整形する方法について説明する。
図8A~
図10は、工程(c)で仕上げ鍛造品10を整形する際、加工装置20の動作を説明するための模式図である。
【0061】
図8Aに示すように、まず、バリなしの仕上げ鍛造品10を加工装置20内に配置する。仕上げ鍛造品10は、下型23bのキャビティ上に載置される。このとき、下型23bの型割り面(水平面)上にカウンターウエイト14の縦軸Z(
図2)が位置する。カウンターウエイト14は、中心軸X1の上方又は下方に位置付けられる。すなわち、カウンターウエイト14の長手方向は上下方向(鉛直方向)に位置する。
【0062】
図8Aの例では、第3~第6カウンターウエイト14c~14fが中心軸X1よりも上方に位置付けられている。残りのカウンターウエイト14は、中心軸X1よりも下方に位置付けられている。このため、治具24は、中心軸X1の上方と下方にそれぞれ配置されている。
【0063】
加工装置20内に仕上げ鍛造品10を配置したら、スライド21aを下降させる。これにより、
図8B及び
図9Aに示すように、ダイクッションプレート22a、上型23a及び上治具24aが下降し、まず上型23aが下型23bに接触する。これにより、金型23が閉じられる。このとき、仕上げ鍛造品10のジャーナル11は、ジャーナル底面231により、カウンターウエイト14の長手方向に沿って押圧される。これにより、仕上げ鍛造品10の曲がりが矯正される。一方、上治具24aは下型23bと接触していない。下治具24bも上型23aと接触していない。すなわち、仕上げ鍛造品10のカウンターウエイト14は治具24から離間している。ただし、カウンターウエイト14の内側面143cは、上型23a及び下型23bそれぞれの内側底面335cと接触している。
【0064】
スライド21aをさらに下降させると、伸張状態にあった弾性部材25a,25bが圧縮される。これにより、
図8C及び
図9Bに示すように、上型23aが下型23bに接触した状態のまま、上治具24aが下降して下型23bに接触し、下治具24bが上型23aに接触する。これにより、金型23及び治具24の全体が閉じられる。このとき、仕上げ鍛造品10のカウンターウエイト14は、治具24のカウンターウエイト底面335により、カウンターウエイト14の長手方向に沿って圧下される。厳密には、仕上げ鍛造品10の余肉部18が圧下される。
【0065】
その際、仕上げ鍛造品10のピン12は、ピン底面332によって押圧される。この押圧により、仕上げ鍛造品10の曲がりが一層矯正される。
【0066】
図9A~
図10は、治具24による余肉部18の圧下の様子を説明するための模式図である。
図9Aには、余肉部の圧下前の様子が示される。
図9B及び
図10には、加工後の様子が示される。
図10は、
図9Bの線X-Xにおける断面図である。
図9Bでは、加工前の余肉部18を二点鎖線で示す。
【0067】
図9A及び
図9Bを参照して、上治具24aの下降に伴い、カウンターウエイト底面335のうちの外側底面335aが余肉部18に接触し、その余肉部18を圧下する。このとき、余肉部18には、外側底面335aからカウンターウエイト14に向けて圧力が与えられる。カウンターウエイト14の端側面143bは治具24の端側底面335bによって拘束される。カウンターウエイト14の内側面143cは下型23bの内側底面335cによって既に拘束されている。これにより、余肉部18の材料は、カウンターウエイト14に向けて流動し、カウンターウエイト14の端部14sに流入する(
図9B中の矢印参照)。その結果、
図10に示すように、カウンターウエイト14の端部14sが回転軸X1方向に膨らみ、カウンターウエイト14の端部14sが厚肉化される。すなわち、カウンターウエイト14の厚みが均一化される。
【0068】
その際、カウンターウエイト14における回転軸X1方向に膨らんだ端部14sは、第1の平面333に接触する。これにより、端部14sのピン12側に向かう膨らみ変形が第1の平面333によって制限される。すなわち、端部14sの過剰な膨らみ変形が抑えられる。このため、カウンターウエイト14のピン12側の表面142の寸法精度が確実に確保される。
【0069】
また、カウンターウエイト14における回転軸X1方向に膨らんだ端部14sは、第2の平面334に接触する。これにより、端部14sのジャーナル11側に向かう膨らみ変形が第2の平面334によって制限される。すなわち、端部14sの過剰な膨らみ変形が抑えられる。このため、カウンターウエイト14のジャーナル11側の表面141の寸法精度が確実に確保される。
【0070】
このように金型23及び治具24の全体が閉じられた後、スライド21aを上昇させる。これにより、上治具24aが下型23bから離間するとともに下治具24bが上型23aから離間し、さらに上型23aが下型23bから離間する。その後、加工装置20から仕上げ鍛造品10を取り出す。これにより、工程(c)における仕上げ鍛造品10の整形が完了する。
【0071】
図11及び
図12は、それぞれ、工程(c)の後のクランクウェブ15の背面図及び底面図である。
図11及び
図12を参照して、カウンターウエイト14の端部14sが回転軸X1方向に膨らんでいる。すなわち、カウンターウエイト14の端部14sにおいて、ジャーナル11側及びピン12側それぞれの表面141,142から抜け勾配がなくなり、厚みが増量されている。別の観点では、カウンターウエイト14の端部14sが厚肉化されている。
【0072】
[本実施形態の効果]
本実施形態によるクランク軸の製造方法では、バリを除去した後の仕上げ鍛造品10に整形を行う。このとき、カウンターウエイト14の端部14sから突出する余肉部18を治具24によって圧下する。これにより、余肉部18の材料がカウンターウエイト14の端部14sに流入し、カウンターウエイト14の端部14sが厚肉化される。この場合、カウンターウエイト14の重心が回転軸X1から遠ざかり、回転軸X1回りにおけるカウンターウエイト14のモーメントが大きくなる。このため、カウンターウエイト14を増量せずに所望のモーメントを確保することが可能となり、カウンターウエイト14のモーメント確保及び軽量化の双方を実現することができる。
【0073】
[本実施形態の変形例1]
図13~
図15を参照して、本実施形態の変形例1によるクランク軸の製造方法について説明する。
図13及び
図14は、工程(c)で使用される加工装置20に含まれる金型23及び治具24の模式図である。
図13には、上型23a及び上治具24aの下面図が示される。
図14には、下型23b及び下治具24bの上面図が示される。
図15は、治具24による余肉部18の圧下の様子を説明するための模式図である。
図15には、加工後の様子が示される。
【0074】
図13に示すように、上治具24aのキャビティは、第1の平面233、及びカウンターウエイト底面335(外側底面335a及び端側底面335b)を含む。ただし、上治具24aのキャビティにおいて、カウンターウエイト14のジャーナル11側の表面141に対応する位置は開放されて、大きく凹んでいる。別の観点では、第2の平面のような壁面が設けられていない。
図14に示す下治具24bのキャビティも上治具24aのキャビティと同様である。
【0075】
図15を参照して、工程(c)では、余肉部18が治具24によって圧下されたとき、カウンターウエイト14の端部14sは回転軸X1方向のジャーナル11側に自由に膨らむ。この場合であっても、カウンターウエイト14の端部14sが厚肉化される。すなわち、カウンターウエイト14の厚みが均一化される。
【0076】
[本実施形態の変形例2]
図16~
図18を参照して、本実施形態の変形例2によるクランク軸の製造方法について説明する。
図16及び
図17は、工程(c)で使用される加工装置20に含まれる金型23及び治具24の模式図である。
図16には、上型23a及び上治具24aの下面図が示される。
図17には、下型23b及び下治具24bの上面図が示される。
図18は、治具24による余肉部18の圧下の様子を説明するための模式図である。
図18には、加工後の様子が示される。
【0077】
図16に示すように、上治具24aのキャビティは、カウンターウエイト底面335(外側底面335a及び端側底面335b)を含む。ただし、上治具24aのキャビティにおいて、カウンターウエイト14のジャーナル11側の表面141に対応する位置は開放されて、大きく凹んでいる。さらに、上治具24aのキャビティにおいて、カウンターウエイト14のピン12側の表面142に対応する位置は開放されて、大きく凹んでいる。別の観点では、第1の平面及び第2の平面のような壁面が設けられていない。
図17に示す下治具24bのキャビティも上治具24aのキャビティと同様である。
【0078】
図18を参照して、工程(c)では、余肉部18が治具24によって圧下されたとき、カウンターウエイト14の端部14sは回転軸X1方向のジャーナル11側及びピン12側に自由に膨らむ。この場合であっても、カウンターウエイト14の端部14sが厚肉化される。すなわち、カウンターウエイト14の厚みが均一化される。
【0079】
[本実施形態の変形例3]
図19を参照して、本実施形態の変形例3によるクランク軸の製造方法について説明する。
図19は、工程(c)で使用される加工装置20の模式図である。
図19では、加工装置20が加工する仕上げ鍛造品10を二点鎖線で示す。
【0080】
図19に示すように、上治具24aのキャビティにおいて、上向きのカウンターウエイト14と一体のアーム13のうちで同一のピン12に接続された2つのアーム13の間に対応する位置が開放されている。別の観点では、上向きのカウンターウエイト14と一体のアーム13に接続されたピン12に対応する位置には、ピン底面が設けられていない。
【0081】
下治具24bのキャビティにおいて、下向きのカウンターウエイト14と一体のアーム13のうちで同一のピン12に接続された2つのアーム13の間に対応する位置が開放されている。別の観点では、下向きのカウンターウエイト14と一体のアーム13に接続されたピン12に対応する位置には、ピン底面が設けられていない。
【0082】
図19に示す金型23及び治具24(加工装置20)を使用した工程(c)では、上記と同様に、仕上げ鍛造品10の余肉部18が治具24によって圧下される。また、仕上げ鍛造品10のジャーナル11が金型23のジャーナル底面231によって押圧される。この場合、仕上げ鍛造品10のピン12への押圧は行われないが、ジャーナル11への押圧により、仕上げ鍛造品10の曲がりが矯正される。
【0083】
その他、本発明は上記の実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の変更が可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0084】
10:仕上げ鍛造品
11:ジャーナル
12:ピン
13:アーム
14:カウンターウエイト
14s:端部
143a:外側面
143b:端側面
143c:内側面
15:クランクウェブ
18:余肉部
20:加工装置
23:金型
23a:上型
23b:下型
231:ジャーナル底面
24:治具
24a:上治具
24b:下治具
332:ピン底面
333:第1の平面
334:第2の平面
335:カウンターウエイト底面
335a:外側底面
335b:端側底面
335c:内側底面
25a,25b:弾性部材