(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-19
(45)【発行日】2023-12-27
(54)【発明の名称】内歯車及び遊星歯車機構
(51)【国際特許分類】
F16H 1/28 20060101AFI20231220BHJP
F16H 55/17 20060101ALI20231220BHJP
【FI】
F16H1/28
F16H55/17 Z
(21)【出願番号】P 2020029897
(22)【出願日】2020-02-25
【審査請求日】2022-09-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000107619
【氏名又は名称】スターライト工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074561
【氏名又は名称】柳野 隆生
(74)【代理人】
【識別番号】100177264
【氏名又は名称】柳野 嘉秀
(74)【代理人】
【識別番号】100124925
【氏名又は名称】森岡 則夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141874
【氏名又は名称】関口 久由
(74)【代理人】
【識別番号】100166958
【氏名又は名称】堀 喜代造
(72)【発明者】
【氏名】樋岡 慎一郎
(72)【発明者】
【氏名】林 悠帆
(72)【発明者】
【氏名】河野 宏二
【審査官】小川 克久
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-159583(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0274519(US,A1)
【文献】特開2010-216526(JP,A)
【文献】特開2002-001478(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104235312(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 1/28
F16H 55/17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒形状に形成されるとともに内周面に多数の歯が形成された歯車部と、前記歯車部の軸線方向における一端面に連続する円環部と、前記円環部から軸中心方向に向かって形成される底部と、を有する内歯車であって、
前記円環部の内周面における周方向の少なくとも一部には、隣接する二枚の前記歯の間における端部を閉塞するとともに前記軸線方向に所定の厚みを有する閉塞部が形成され、
前記閉塞部において前記歯の間に
、前記歯車部の軸線方向に向かって表出する閉塞面は、
前記閉塞面と二枚の前記歯との境界部よりも、隣接する二枚の前記歯の間に位置する前記閉塞面の中央部が、前記底部の側に窪んで形成され
、
前記閉塞面は、前記底部の半径方向外側に向かうに従って縮径する円錐形状の一部として形成される、内歯車。
【請求項2】
前記閉塞部の内周面と前記閉塞面とが交差して形成される境界線は、前記閉塞部の内周面上に湾曲して形成される、
請求項1に記載の内歯車。
【請求項3】
前記歯車部の歯底を曲面で形成した、
請求項1又は請求項2に記載の内歯車。
【請求項4】
PEEK、ポリカーボネート、ABS、ポリイミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ乳酸、フェノール樹脂、又は、エポキシ樹脂が素材として採用される、請求項1から請求項3の何れか1項に記載の内歯車。
【請求項5】
請求項1から請求項4の何れか1項に記載の内歯車と、
前記内歯車と噛み合う遊星歯車と、
前記遊星歯車と噛み合う太陽歯車と、を備えた、遊星歯車機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内歯車及び遊星歯車機構に関し、より詳細には、遊星歯車機構等で用いられる内歯車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、太陽歯車、遊星歯車、及び、内歯車を組み合わせた遊星歯車機構が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術に記載の遊星歯車機構等においては、内歯車に過度の応力集中が発生する場合があった。特に、内歯車を樹脂で形成した場合は、応力集中により内歯車の強度に影響が出る可能性があった。
【0005】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、本発明の課題は、過度の応力集中が生じることを防止できる内歯車及び遊星歯車機構を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前述の課題解決のために、以下の内歯車を構成した。
【0007】
(1)円筒形状に形成されるとともに内周面に多数の歯が形成された歯車部と、前記歯車部の軸線方向における一端面に連続する円環部と、前記円環部から軸中心方向に向かって形成される底部と、を有する内歯車であって、前記円環部の内周面における周方向の少なくとも一部には、隣接する二枚の前記歯の間における端部を閉塞するとともに前記軸線方向に所定の厚みを有する閉塞部が形成され、前記閉塞部において前記歯の間に、前記歯車部の軸線方向に向かって表出する閉塞面は、前記閉塞面と二枚の前記歯との境界部よりも、隣接する二枚の前記歯の間に位置する前記閉塞面の中央部が、前記底部の側に窪んで形成され、前記閉塞面は、前記底部の半径方向外側に向かうに従って縮径する円錐形状の一部として形成される、内歯車。
【0008】
(2)前記閉塞部の内周面と前記閉塞面とが交差して形成される境界線は、前記閉塞部の内周面上に湾曲して形成される、(1)に記載の内歯車。
【0009】
(3)前記歯車部の歯底を曲面で形成した、(1)又は(2)に記載の内歯車。
【0010】
(4)PEEK、ポリカーボネート、ABS、ポリイミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ乳酸、フェノール樹脂、又は、エポキシ樹脂が素材として採用される、(1)から(3)の何れか一に記載の内歯車。
【0011】
また、本発明は、前述の課題解決のために、以下の遊星歯車機構を構成した。
【0012】
(5)(1)から(4)の何れか一に記載の内歯車と、前記内歯車と噛み合う遊星歯車と、前記遊星歯車と噛み合う太陽歯車と、を備えた、遊星歯車機構。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る内歯車及び遊星歯車機構によれば、過度の応力集中が生じることを防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本実施形態に係る遊星歯車機構を示した斜視図。
【
図2】本実施形態に係る遊星歯車機構を示した分解図。
【
図4】(a)及び(b)はそれぞれ、固定側内歯車を示した部分断面図及び拡大平面図。
【
図6】(a)及び(b)はそれぞれ、は第二実施形態及び第三実施形態に係る内歯車を示した部分断面図。
【
図7】(a)から(d)はそれぞれ、従来技術、第一実施例、第一比較例、及び、第二比較例に係る内歯車の解析モデルを示した図。
【
図8】(a)から(d)はそれぞれ、従来技術、第一実施例、第一比較例、及び、第二比較例に係る内歯車における解析結果を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
まず、
図1及び
図2を用いて、本実施形態に係る遊星歯車機構100の概略構成を説明する。
図1及び
図2に示す如く、遊星歯車機構100は、固定側内歯車11である内歯車10と、出力側内歯車12である内歯車10と、太陽歯車13と、遊星歯車14・14・・と、キャリア15・15と、遊星歯車軸16・16・・と、ボス17・17・・と、を備える。
【0016】
本実施形態において、遊星歯車機構100を構成する各部品の素材は、SUS、アルミニウム、チタン、鉄等の金属、PEEK、PPS、ポリアミド、ポリカーボネート、ABS、ポリアセタール、ポリイミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ乳酸等の熱可塑性樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂等の何れかを採用することが可能である。このうち、高強度、高剛性という理由で、PEEKを採用することが望ましい。ただし、各構成部品の素材は、その用途に応じて適宜選択される。また、各構成部品の素材として、長繊維カーボン繊維、長繊維ガラス繊維等を複合させた強化性プラスチックを用いたり、金属と樹脂の複合体を用いたりしても良い。また、遊星歯車機構100を構成する各部品の歯数及び外径は、実施形態に応じて適宜調整することが可能である。
【0017】
本実施形態において、遊星歯車機構100は減速機として用いられる。特に、本実施形態に係る内歯車10は高トルク用途に適しているため、産業用や介護用のロボット、車両等の減速機に用いられることが好ましい。また、遊星歯車機構100の構成部品を樹脂製として減速機を構成した場合は、小型化、軽量化を実現できる点で産業用の協働ロボット、小型EV車両に好適である。
【0018】
遊星歯車機構100には、太陽歯車13における入力部13cに、図示しない入力軸を介して回転力が入力される。遊星歯車機構100においては、太陽歯車13に入力された回転力を後述の如く減速させて、出力側内歯車12を回動させることにより出力する。
【0019】
固定側内歯車11は、減速機として遊星歯車機構100を支持する構造体に固定される。本実施形態に係る固定側内歯車11は、歯数52、外径70mmで形成される。出力側内歯車12は、固定側内歯車11と歯数が異なるとともに、固定側内歯車11と同軸上に隣接して設けられる。本実施形態に係る出力側内歯車12は、歯数45、外径70mmで形成される。
図1及び
図2に示す如く、固定側内歯車11と出力側内歯車12とで遊星歯車機構100のケースが構成される。
【0020】
固定側内歯車11及び出力側内歯車12の内部には、遊星歯車機構100の中心部分に配置される太陽歯車13と、太陽歯車13の周囲に配置される五個の遊星歯車14・14・・と、が収納される。それぞれの遊星歯車14には、固定側内歯車11と噛み合う第一遊星歯車部14aと、出力側内歯車12と噛み合う第二遊星歯車部14bと、が形成される。本実施形態において、第一遊星歯車部14aは歯数18、第二遊星歯車部14bは歯数15で形成されている。
【0021】
また、太陽歯車13には、第一遊星歯車部14aと噛み合う第一太陽歯車部13aと、第二遊星歯車部14bと噛み合う第二太陽歯車部13bと、が形成される。本実施形態において、第一太陽歯車部13aは歯数18、第二太陽歯車部13bは歯数15で形成されている。
【0022】
太陽歯車13と、遊星歯車14・14・・とは、円板形状に形成された二枚のキャリア15・15に上下に挟まれた状態で、固定側内歯車11及び出力側内歯車12の内部に収容される。キャリア15・15には遊星歯車軸16及びボス17を介して遊星歯車14・14・・が相対位置を変えずに回動可能に支持される。具体的には、遊星歯車14・14・・は、遊星歯車軸16を中心として自転可能に、かつ、太陽歯車13を中心として太陽歯車13の周囲を公転可能に構成されている。
【0023】
上記の如く構成された遊星歯車機構100において、太陽歯車13に回転力が入力されると、遊星歯車14・14・・に回転力が伝達される。遊星歯車14の第一遊星歯車部14aは、固定されている固定側内歯車11と噛み合っているため、遊星歯車14は自転すると同時に太陽歯車13の周囲を公転する。この際、遊星歯車14の第二遊星歯車部14bは、固定側内歯車11と歯数の異なる出力側内歯車12と噛み合っているため、固定側内歯車11と出力側内歯車12と歯数の差異により、出力側内歯車12は固定側内歯車11に対して相対的に回転する。
【0024】
このように、遊星歯車機構100においては、太陽歯車13に入力された回転力を減速させて、出力側内歯車12を回動させることにより出力する。本実施形態に係る遊星歯車機構100は、太陽歯車13、遊星歯車14、固定側内歯車11、及び、出力側内歯車12の歯数の関係から、減速比が105になるように構成されている。
【0025】
なお、本実施形態において、内歯車10は遊星歯車機構100を構成する固定側内歯車11及び出力側内歯車12に採用されているが、本発明に係る内歯車の用途は限定されるものではなく、内歯車で構成される他の機構に採用することも可能である。例えば、内歯車と噛み合う遊星歯車と、遊星歯車と噛み合う太陽歯車と、を備えた遊星歯車機構に用いることも可能である。この場合、遊星歯車機構は、2K-H型、3K型、K-H-V型の何れであっても良い。また、本発明に係る内歯車を複合遊星歯車に採用することも可能である。
【0026】
次に、
図3から
図5を用いて、遊星歯車機構100に用いられる内歯車10である固定側内歯車11及び出力側内歯車12の構成について説明する。
図3及び
図5に示す如く、固定側内歯車11及び出力側内歯車12には、同じ形状の閉塞面32等が同様に構成されている。このため、以下では固定側内歯車11について詳細に説明し、出力側内歯車12に関しては詳細な説明を省略する。
【0027】
なお、本実施形態に係る遊星歯車機構100においては、固定側内歯車11と出力側内歯車12との双方に閉塞面32を形成する構成としているが、固定側内歯車11と出力側内歯車12との何れか一方のみに閉塞面32を形成することも可能である。
【0028】
本実施形態に係る内歯車10(固定側内歯車11及び出力側内歯車12)は、
図3及び
図5に示す如く、円筒形状に形成されるとともに内周面に多数の歯21・21・・が形成された歯車部20と、歯車部20の軸線方向(
図3及び
図5中の上下方向)における一端面に連続する円環部30と、円環部30から軸中心方向に向かって形成される底部40と、底部40を貫通する複数個の締結用の締結孔41と、を有する。本実施形態に係る内歯車10における歯21の歯型はインボリュートが採用されている。なお、歯21の歯型として、トリコロイド、サイクロイド等を採用することもできる。また、内歯車をはすば歯車とすることも可能である。
【0029】
図3及び
図4(a)に示す如く、円環部30の内周面には、隣接する二枚の歯21・21の間における端部(底部40側の端部)を閉塞するとともに軸線方向に所定の厚みを有する閉塞部31が形成されている。本実施形態に係る内歯車10において、閉塞部31は円環部30の内周の全域に円環状に形成されている。なお、閉塞部31を円環部30の内周面において周方向の一部にのみ形成することも可能である。この場合、多数の歯21・21・・の一部のみが閉塞部31により端部が閉塞されることになる。
【0030】
本実施形態に係る内歯車10においては
図3及び
図4(a)に示す如く、閉塞部31において歯21・21の間に表出する閉塞面32は、隣接する二枚の歯21・21の間が、二枚の歯21・21との境界部よりも底部40の側に深さ1.3mmで窪んで(凹形状に)形成される。なお、閉塞面32に形成される窪みの深さは実施形態に応じて適宜調整できる。
【0031】
図3及び
図4(a)に示す如く、閉塞面32は全体的に曲面形状に形成される。具体的には、閉塞面32は半径方向外側に向かうに従って縮径する円錐形状の一部(下半部)として形成されている。
【0032】
また、
図4(a)に示す如く、閉塞部31の内周面と閉塞面32とが交差して形成される境界線32aは、閉塞部31の内周面上に湾曲して形成される。
図4(a)では便宜上、底部40に立設される円筒リブRを仮想線で示している。さらに、
図4(b)に示す如く、本実施形態の係る内歯車10は、歯車部20の歯底22を曲率半径0.7の曲面で形成する事で、内歯車における応力集中をより抑制できる。この歯底22の曲率半径は、内歯車の外形や歯数によって適宜選択できる。
【0033】
本願出願人は、本実施形態に係る内歯車10(
図7(b)を参照)と、従来技術に係る内歯車(閉塞部における閉塞面が底部と平行に形成され、歯底に角部が形成される内歯車(
図7(a)を参照))とを比較するために、それぞれの内歯車の解析モデルを作成し、遊星歯車との接触箇所にトルクの付与を行うCAE(computer aided engineering)応力解析を行った。
【0034】
具体的には、従来技術、各比較例、及び、
図1から
図5に記載の遊星歯車機構100(固定側内歯車11を歯数52、外径70mm、出力側内歯車12を歯数45、外径70mm、第一遊星歯車部14aを歯数18、第二遊星歯車部14bを歯数15、第一太陽歯車部13aを歯数18、第二太陽歯車部13bを歯数15とした遊星歯車機構)の解析モデルを
図7(a)~(d)に示す如く作成し、Livermore Software Technology Corporation(米国企業)製のCAEソフトウェアである、「LS‐DYNA(登録商標)」を用いて、材料物性の解析条件を、60℃での曲げ弾性率2020MPa、質量密度1.41g/cm3、ポアソン比0.38で設定し、出力側内歯車12の締結孔41の孔内側を拘束固定した上で、第二遊星歯車部14bから出力側内歯車12にトルク10N・mで負荷がかかる条件にて応力解析を実行した。
【0035】
その結果、
図8(a)に示す如く、従来技術に係る内歯車において歯の周辺に生じる最大第一主応力が33.8MPaであったのに対し、
図8(b)に示す如く、本実施形態に係る内歯車においては歯の周辺に生じる最大第一主応力を18.7MPaとすることができた。即ち、本実施形態に係る内歯車は、従来技術に係る内歯車に対して最大第一主応力を約45%低減させることができた。換言すれば、本実施形態に係る内歯車は、従来技術に係る内歯車と比較して、応力集中を抑制することができた。
【0036】
また、本願出願人は、第一比較例として、閉塞部における閉塞面が本実施形態と同じ曲面形状に形成され、歯底に角部が形成される内歯車(
図7(c)を参照)についても同条件で解析を行った。その結果、
図8(c)に示す如く、第一比較例に係る内歯車においては歯の周辺に生じる最大第一主応力が29.8MPaであった。即ち、閉塞面を曲面形状とすることにより、内歯車における応力集中を抑制できることが判明した。
【0037】
また、本願出願人は、第二比較例として、閉塞部における閉塞面が本実施形態と同じ曲面形状に形成され、歯底に本実施形態よりも小さい曲率の曲面が形成される内歯車(
図7(d)を参照)についても解析を行った。その結果、
図8(d)に示す如く、第二比較例に係る内歯車においては歯の周辺に生じる最大第一主応力が20.8MPaであった。即ち、歯底を曲面形状とすることにより、内歯車における応力集中をより抑制できることが判明した。
【0038】
次に、
図6(a)及び(b)を用いて、内歯車の別実施形態である、第二実施形態に係る内歯車110、及び、第三実施形態に係る内歯車210について説明する。
【0039】
第二実施形態に係る内歯車110は、
図6(a)に示す如く、円筒形状に形成されるとともに内周面に多数の歯121・121・・が形成された歯車部120と、歯車部120の軸線方向における一端面に連続する円環部130と、円環部130から軸中心方向に向かって形成される底部140と、を有する。
【0040】
円環部130の内周面には、隣接する二枚の歯121・121の間における端部を閉塞するとともに軸線方向に所定の厚みを有する閉塞部131が形成されている。閉塞部131において歯121・121の間に表出する閉塞面132は、隣接する二枚の歯121・121の間が、二枚の歯121・121との境界部よりも底部140の側に窪んで(凹形状に)形成される。
【0041】
本実施形態においては
図6(a)に示す如く、内歯車110の中心を通る面で切断した際の閉塞面132の断面形状が曲線形状となるように形成される。このように、閉塞面の形状は第一実施形態の如く円錐形状に限定されず、他の形状とすることができる。具体的には、閉塞面を円錐台形状、多角錐形状等とすることができる。また、閉塞面を半径方向外側に向かうに従って段階的に形成し、二段階以上の多段階に形成することも可能である。但し、応力集中を抑制するという観点では、閉塞面の少なくとも一部が曲面形状に形成されることが好ましく、閉塞面を円錐形状に形成することがより好ましい。
【0042】
第三実施形態に係る内歯車210は、
図6(b)に示す如く、円筒形状に形成されるとともに内周面に多数の歯221・221・・が形成された歯車部220と、歯車部220の軸線方向における一端面に連続する円環部230と、円環部230から軸中心方向に向かって形成される底部240と、を有する。
【0043】
円環部230の内周面には、隣接する二枚の歯221・221の間における端部を閉塞するとともに軸線方向に所定の厚みを有する閉塞部231が形成されている。閉塞部231において歯221・221の間に表出する閉塞面232は、隣接する二枚の歯221・221の間が、二枚の歯221・221との境界部よりも底部240の側に窪んで(凹形状に)形成される。
【0044】
本実施形態においては
図6(b)に示す如く、閉塞部231の内周面と閉塞面232とが交差して形成される境界線232aは、閉塞部231の内周面上で直線と曲線とが組み合わされた形状に形成される。より具体的には、境界線232aは、頂点部分が曲線形状に形成された二等辺三角形となるように形成されている。このように、境界線の形状は第一実施形態の如く曲線形状に限定されず、複数の曲線と直線と組み合わせた他の形状とすることができる。但し、応力集中を抑制するという観点では、境界線を歯の先端辺から連続する曲線形状とすることが好ましい。
【符号の説明】
【0045】
10 内歯車 11 固定側内歯車
12 出力側内歯車 13 太陽歯車
13a 第一太陽歯車部 13b 第二太陽歯車部
13c 入力部 14 遊星歯車
14a 第一遊星歯車部 14b 第二遊星歯車部
15 キャリア 16 遊星歯車軸
17 ボス 20 歯車部
21 歯 22 歯底
30 円環部 31 閉塞部
32 閉塞面 32a 境界線
40 底部 41 締結孔
100 遊星歯車機構
110 内歯車(第二実施形態)
120 歯車部 121 歯
130 円環部 131 閉塞部
132 閉塞面 140 底部
210 内歯車(第三実施形態)
220 歯車部 221 歯
131 閉塞部 232 閉塞面
232a 境界線 240 底部
R 円筒リブ