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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-19
(45)【発行日】2023-12-27
(54)【発明の名称】熱延鋼板の冷却装置および冷却方法
(51)【国際特許分類】
   B21B 45/02 20060101AFI20231220BHJP
【FI】
B21B45/02 320V
B21B45/02 320T
B21B45/02 320G
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020037635
(22)【出願日】2020-03-05
(65)【公開番号】P2021137841
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2022-11-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096389
【弁理士】
【氏名又は名称】金本 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100101557
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100167634
【弁理士】
【氏名又は名称】扇田 尚紀
(74)【代理人】
【識別番号】100187849
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 隆史
(74)【代理人】
【識別番号】100212059
【弁理士】
【氏名又は名称】三根 卓也
(72)【発明者】
【氏名】大門 靖彦
【審査官】長谷部 智寿
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-177186(JP,A)
【文献】特開平01-181913(JP,A)
【文献】実開平02-016210(JP,U)
【文献】特開2018-075590(JP,A)
【文献】特開2019-013967(JP,A)
【文献】実開昭59-001414(JP,U)
【文献】特開2015-160240(JP,A)
【文献】特開2003-094106(JP,A)
【文献】特開2012-091194(JP,A)
【文献】実開昭59-171808(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21B 45/00-45/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱間圧延工程の仕上圧延後に、ランアウトテーブルの搬送ロール上を搬送される熱延鋼板の下面を冷却する熱延鋼板の冷却装置であって、
隣接する前記搬送ロールの間において前記ランアウトテーブルの板幅方向に並んで設けられ、前記熱延鋼板の下面に冷却水を噴射する複数の冷却水ノズルと、
前記冷却水ノズルのから噴射された冷却水の流量を制御する冷却水量制御機構と、を備え、
前記冷却水量制御機構は、
複数の前記冷却水ノズルのそれぞれの上方に設けられ、前記冷却水の流路を形成する複数の遮蔽板を有する遮蔽部と、
前記ランアウトテーブルの板幅方向に沿って延設され、前記遮蔽部の開度を調節する駆動軸を有する開度調節部と、
前記遮蔽部の下方に接続され、前記開度調節部の動力を前記遮蔽部に伝達する動力伝達部と、を備え
前記開度調節部は、
前記遮蔽部を開方向に駆動するための第1の駆動軸と、
前記遮蔽部を閉方向に駆動するための第2の駆動軸と、を備えることを特徴とする、熱延鋼板の冷却装置。
【請求項2】
前記開度調節部はネジ機構を有し、
前記駆動軸の少なくとも一部には駆動ネジ部が形成され、
前記遮蔽部の開度は、前記駆動ネジ部の形成長により調節されることを特徴とする、請求項に記載の熱延鋼板の冷却装置。
【請求項3】
前記駆動ネジ部は、前記ランアウトテーブルの板幅方向において、任意の前記遮蔽部と対応するように複数形成され、
複数の前記駆動ネジ部は、当該任意の前記遮蔽部の開度を調節可能であることを特徴とする、請求項に記載の熱延鋼板の冷却装置。
【請求項4】
前記動力伝達部は、
前記駆動ネジ部に嵌合する中継かさ歯車と、
前記遮蔽板に接続され、前記遮蔽板を水平方向に移動させる接続ナットと、
前記中継かさ歯車の回転を前記接続ナットに伝達する回転伝達軸と、を備え、
前記回転伝達軸は、
前記中継かさ歯車に嵌合する回転伝達かさ歯車部と、
前記回転伝達かさ歯車部を端部に有し、前記接続ナットが螺合して設けられる回転伝達ネジ軸部と、を備えることを特徴とする、請求項またはに記載の熱延鋼板の冷却装置。
【請求項5】
請求項1~のいずれか一項に記載の熱延鋼板の冷却装置を用いた冷却方法であって、
前記冷却水量制御機構において、複数の前記遮蔽部のそれぞれの開度は、前記熱延鋼板の板幅方向における温度分布に基づいて決定され、
前記熱延鋼板の板幅方向における、前記冷却水ノズルによる前記熱延鋼板への冷却水の供給流量を制御することを特徴とする、熱延鋼板の冷却方法。
【請求項6】
前記冷却水量制御機構において、複数の前記遮蔽部のそれぞれの開度は、前記熱延鋼板の板幅に応じて決定され、
前記熱延鋼板の板幅よりも外側に位置する前記遮蔽部においては、前記遮蔽板により形成される前記冷却水の流路を閉止することにより、前記熱延鋼板への冷却水の供給を停止することを特徴とする、請求項に記載の熱延鋼板の冷却方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱間圧延工程の仕上圧延後、搬送ロール上を搬送される熱延鋼板の下面を冷却する冷却装置、および、当該冷却装置を用いる冷却方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱間圧延工程の仕上圧延後、ランアウトテーブル(ROT:Run Out Table)の搬送ロール上を搬送される熱延鋼板では、板幅方向の温度斑が問題となっている。この温度差(温度斑)を修正できなければ、鋼板の板幅方向の強度などが許容範囲に入らず製品欠陥となる。鋼板の板幅方向の温度斑を修正する方法のうち、鋼板の上面側の温度斑を修正する方法に関しては、これまでも数多くの提案がなされているが、鋼板の上面側の温度斑のみを修正したとしても、鋼板の下面側の温度斑は修正されていないため、鋼板の上面側と下面側とで冷却能力の差が発生し、反りなどの問題を引き起こすおそれがある。
【0003】
ところでランアウトテーブルにおいては、熱延鋼板の安定した通板を可能とするために搬送ロール間の距離が狭くなっているが、この搬送ロール上を搬送される熱延鋼板の下面側を冷却するには、この搬送ロール間の隙間に、冷却水を噴射する冷却水ノズルと、この冷却水ノズルに冷却水を供給するヘッダーを有する冷却装置を配置することになる。そのため、鋼板下面側の板幅方向の温度斑を修正するには、狭所に配置可能であり、かつ、冷却水の流量を鋼板下面側の板幅方向の位置に応じて制御可能な冷却装置が必要である。
【0004】
また、冷却水の流量の制御方法としては、例えば、ランアウトテーブルで搬送される熱延鋼板の下面側の冷却装置に設けられた冷却水ノズルを上下運動させることで熱延鋼板に冷却水が衝突する範囲を変更する方法がある。しかしながら、この方法では、冷却水ノズルを下げていくと搬送ロールに冷却水が衝突してしまうため、搬送ロール間の距離を拡げる必要があり、また、このように搬送ロール間の距離を拡げることで通板が不安定となってしまう。あるいは、冷却水ノズルを熱延鋼板の板幅方向に左右運動させることで鋼板下面の板幅方向に均一に冷却水が衝突する方法もあるが、この方法の場合も、ピットの側壁の存在により左右運動の範囲に制限がある。あるいは、このように冷却水ノズルを有する冷却装置を上下運動や左右運動させる場合、取ることができる冷却装置の可動領域にも限界がある。
【0005】
さらに、工場で使用可能な冷却水には、循環使用されることで必然的に混入するスケール等の固形浮遊物や、流路壁に晶出するカルシウム等のミネラル成分が多く含まれる。そのため、冷却水の長期間の使用を想定する場合、固形浮遊物やミネラル成分等による冷却水ノズルの閉塞や、摺動部の摺動不良等の悪影響を極力抑えた構造にしなければならない。したがって、ヘッダーの内部構造を工夫することにより熱延鋼板の板幅方向の流量を制御可能とした冷却装置は、寿命面で問題がある。
【0006】
加えて、熱延鋼板の板幅方向に配置された多数の冷却水ノズルのそれぞれに弁を設けることで、板幅方向の冷却を均一にする方法も考えられるが、この方法は、均一冷却の効果としては十分にあるが、冷却装置の構造が複雑になり、設置コストおよびランニングコストともに高いものとなる。
【0007】
他方、ランアウトテーブルの搬送ロール上を搬送される熱延鋼板の下面の冷却装置および冷却方法として、例えば、特許文献1には、ランアウトテーブルの所定長さの搬送方向区間の下面冷却を、板幅方向に細区分し、圧延材の幅および蛇行に応じて細区分毎に冷却水ノズルのオン・オフの切り替えを制御する熱延鋼板の冷却装置および熱延鋼板の冷却方法が開示されている。
【0008】
また、例えば、特許文献2には、ランアウトテーブルで搬送される鋼板下面の冷却を、搬送ロール間で板幅方向に延設された2重管構造を成す冷却水ヘッダーにより行って、板幅方向の冷却範囲を制御する鋼板の冷却装置が開示されている。特許文献2の冷却水ヘッダーの外管には、板幅方向に並ぶ複数の冷却水ノズルを配し、内管には、周方向に回転可能な管を用い、この内管には、所定の回転角度で冷却水ノズル毎に連通および非連通のいずれかとなる貫通穴が複数形成されている。
【0009】
また、例えば、特許文献3には、ランアウトテーブルの搬送ロール間で板幅方向に延設された鋼板下面側の冷却水ヘッダーの上部に取り付けた遮蔽版を開閉することにより、熱延鋼板の板幅方向の冷却水の遮断および通過を制御する鋼板の下面冷却装置および下面冷却方法が開示されている。
【0010】
さらに、例えば、特許文献4には、鋼板の下面に冷却水を噴射する複数のノズルの上方に、各孔部が冷却水を通過させうる複数の孔部を有する有孔遮蔽板を通板幅方向に移動可能に設ける、熱鋼板の下面冷却装置が開示されている。特許文献4の有孔遮蔽板に設けられる孔部は、通板幅方向の端側から幅中央側にかけて板幅方向の孔寸法が大きくなるように形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開2019-013967号公報
【文献】特開2015-160240号公報
【文献】特開2018-075590号公報
【文献】特開2012-091194号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ここで本発明者らは、ランアウトテーブルの搬送ロール上を搬送される仕上圧延後の熱延鋼板1は、図1に示すように、板幅方向において端部(Edge)から所定距離L(例えば100mm程度)内側に入った地点の温度が最も高くなった、略山なり型傾向の温度分布を有することを見出した。これは、熱間圧延工程におけるスラブの加熱時に最も高温となる当該スラブの角部であった部分が、圧延による板厚の減少に伴い、熱延鋼板1の端部から内側まで推移することに起因するものと考えられる。そして、上述のように温度差(温度斑)を修正するためには、図1に示したような温度分布を考慮して、熱延鋼板1の板幅方向の冷却を制御する必要がある。具体的には、熱延鋼板1の板幅方向の温度分布に応じて、例えば冷却水の供給量を制御する必要がある。
【0013】
しかしながら、上記特許文献1、2に記載の冷却装置および冷却方法は、鋼板の板幅方向に冷却水ノズルを多数配設し、それらの冷却水ノズル毎にオン/オフの切り替えを制御するものであり、それらの冷却水ノズル毎に冷却水の供給量を制御できるものではない。すなわち、板幅方向の温度分布に応じた冷却制御を行うものではない。
【0014】
また、上記特許文献3、4に記載の冷却装置および冷却方法では、板幅方向のエッジ側ではノズルを半分遮蔽させた状態とすること、すなわち供給量を減少させることが記載されているが、これは鋼板エッジ部の過冷却を抑制するためのものである。すなわち、板幅方向の温度分布に応じた冷却制御を行うものではない。
【0015】
また更に、上記特許文献1-4においては、製造される鋼板の板幅に応じて冷却領域(冷却水の噴射幅)を制御すること、すなわち、板幅方向に応じて冷却水の供給の制御を行うことが記載されているが、やはり温度分布に応じた冷却制御を行うものではない。
【0016】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、熱間圧延工程の仕上圧延後の熱延鋼板の下面の冷却を適切に行うことが可能な熱延鋼板の冷却装置および冷却方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決する本発明は、熱間圧延工程の仕上圧延後に、ランアウトテーブルの搬送ロール上を搬送される熱延鋼板の下面を冷却する熱延鋼板の冷却装置であって、隣接する前記搬送ロールの間において前記ランアウトテーブルの板幅方向に並んで設けられ、前記熱延鋼板の下面に冷却水を噴射する複数の冷却水ノズルと、前記冷却水ノズルのから噴射された冷却水の流量を制御する冷却水量制御機構と、を備え、前記冷却水量制御機構は、複数の前記冷却水ノズルのそれぞれの上方に設けられ、前記冷却水の流路を形成する複数の遮蔽板を有する遮蔽部と、前記ランアウトテーブルの板幅方向に沿って延設され、前記遮蔽部の開度を調節する駆動軸を有する開度調節部と、前記遮蔽部の下方に接続され、前記開度調節部の動力を前記遮蔽部に伝達する動力伝達部と、を備え、前記開度調節部は、前記遮蔽部を開方向に駆動するための第1の駆動軸と、前記遮蔽部を閉方向に駆動するための第2の駆動軸と、を備えることを特徴としている。
【0018】
本発明によれば、冷却水の流量を調節する遮蔽部は複数の遮蔽板を有しており、冷却水の流量調節に際して回転部を必要としない。これにより、発生したスケール等の巻き込みによる動作不良の発生が抑制され、適切に熱延鋼板の冷却を行うことが可能になる。
【0020】
前記開度調節部はネジ機構を有し、前記駆動軸の少なくとも一部には駆動ネジ部が形成され、前記遮蔽部の開度は、前記駆動ネジ部の形成長により調節されてもよい。また、前記駆動ネジ部を、前記ランアウトテーブルの板幅方向において、任意の前記遮蔽部と対応するように複数形成し、当該任意の前記遮蔽部の開度を調節可能に構成してもよい。
【0021】
本発明によれば、熱延鋼板の板幅方向における任意の遮蔽部の開度を調節することができる。すなわち、熱延鋼板の板幅方向における温度分布に応じて、適切に熱延鋼板の冷却を行うことができる。また、前記駆動ネジ部の形成長に応じて遮蔽部の開度を任意に調節することができ、熱延鋼板の板幅方向における温度分布に応じて、更に適切に熱延鋼板の冷却を行うことができる。
【0022】
前記動力伝達部は、前記駆動ネジ部に嵌合する中継かさ歯車と、前記遮蔽板に接続され、前記遮蔽板を水平方向に移動させる接続ナットと、前記中継かさ歯車の回転を前記接続ナットに伝達する回転伝達軸と、を備え、前記回転伝達軸は、前記中継かさ歯車に嵌合する回転伝達かさ歯車部と、前記回転伝達かさ歯車部を端部に有し、前記接続ナットが螺合して設けられる回転伝達ネジ軸部と、を備えていてもよい。
【0023】
別な観点による本発明は、上述した熱延鋼板の冷却装置を用いた冷却方法であって、前記冷却水量制御機構において、複数の前記遮蔽部のそれぞれの開度は、前記熱延鋼板の板幅方向における温度分布に基づいて決定され、前記熱延鋼板の板幅方向における、前記冷却水ノズルによる前記熱延鋼板への冷却水の供給流量を制御することを特徴としている。
【0024】
本発明によれば、冷却水ノズルから噴射された冷却水量の制御が、熱延鋼板の板幅方向における温度分布に基づいて決定されるため、適切に熱延鋼板の温度が均一となるように冷却を行うことができる。なお、熱延鋼板の温度分布は、例えば温度計測系により実測されてもよいし、熱延鋼板の材質、板幅及び圧下率等に基づいて事前に予測してもよい。
【0025】
また、前記冷却水量制御機構において、複数の前記遮蔽部のそれぞれの開度は、前記熱延鋼板の板幅に応じて決定され、前記熱延鋼板の板幅よりも外側に位置する前記遮蔽部においては、前記遮蔽板により形成される前記冷却水の流路をを閉止することにより、前記熱延鋼板への冷却水の供給を停止してもよい。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、熱間圧延工程の仕上圧延後の熱延鋼板の下面の冷却を適切に行うことが可能な熱延鋼板の冷却装置および冷却方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】熱延鋼板の板幅方向における温度分布を示す説明図である。
図2】熱間圧延設備の構成の概略を示す説明図である。
図3】本発明の実施形態に係る熱延鋼板の冷却装置の構成の概略を示す平面図である。
図4図3の要部を拡大して示す要部拡大図である。
図5図4に示す熱延鋼板の冷却装置の側面図である。
図6】エプロンに対する貫通孔の形成例を示す平面図である。
図7】本発明の実施形態に係る熱延鋼板の冷却装置の動作例を示す説明図である。
図8】本発明の実施形態に係る熱延鋼板の冷却装置の変形例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する要素においては、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0029】
(熱間圧延設備)
図2は、本実施形態における熱延鋼板1の冷却装置を備える熱間圧延設備10の構成の概略を示す説明図である。
【0030】
図2に示すように、熱間圧延設備10は、加熱炉11と、幅方向圧延機12と、粗圧延機13と、仕上圧延機14と、上側冷却装置15と、本実施形態に係る下側幅方向制御冷却装置16と、下側冷却装置17と、巻取装置18と、を備えている。熱間圧延設備10では、加熱したスラブ2をロールで上下に挟んで連続的に圧延し、最小1mm程度の板厚まで薄くして熱延鋼板1としてこれを巻き取る。
【0031】
加熱炉11は、装入口を介して外部から搬入されてきたスラブ2を所定の温度に加熱処理する。なお、加熱炉11で加熱処理されたスラブ2は、その角部の温度が最も高くなっている。
【0032】
幅方向圧延機12は、図2に示す圧延方向(X軸方向)における加熱炉11と粗圧延機13との間に設けられ、加熱炉11で加熱されたスラブ2を図2に示す板幅方向(Y軸方向)に圧下して、スラブ2が所定の板幅になるように圧延する。
【0033】
粗圧延機13は、幅方向圧延機12の圧延方向下流側に設けられ、板幅方向に圧下されたスラブ2を上下方向(図2のZ軸方向)から圧延し、厚さ30mm~60mm程度の粗バー(シートバー)とする。
【0034】
仕上圧延機14は、粗圧延機13の圧延方向下流側に設けられ、搬送されてきた粗バーをさらに連続して熱間仕上げ圧延し、所定の厚さ(例えば数mm程度)の熱延鋼板1とする。なお、圧延工程によるスラブ2から熱延鋼板1までの断面形状の変化の過程においては、スラブ2の形状において最も高温であった角部が当該圧延工程における板厚の減少に伴い板幅方向の内側まで推移する。すなわち、熱延鋼板1においては、図1に示したように、当該熱延鋼板1の板幅方向の端部から所定距離L(例えば100mm程度)内側に入った部分の温度が最も高くなる。なお、以下の説明においては、かかる熱延鋼板1の板幅方向において温度が最も高くなる位置を、「ピーク温度位置」と呼称する場合がある。
【0035】
上側冷却装置15は、仕上圧延機14の圧延方向下流側において、ランアウトテーブル上を搬送される熱延鋼板1の上方に設けられ、熱間仕上げ圧延された熱延鋼板1を冷却水により冷却する。上側冷却装置15の構成は特に限定されることなく、公知の冷却装置を適用することができる。例えば、上側冷却装置15は、熱間仕上げ圧延された熱延鋼板1の上方から当該熱延鋼板1の上面に向けて鉛直下方に冷却水を噴射する冷却水ノズルを複数有している。冷却水ノズルとしては、例えば、スリットラミナーノズルやパイプラミナーノズルなどが用いられる。
【0036】
なお、後述の下側幅方向制御冷却装置16及び下側冷却装置17により十分に熱延鋼板1の冷却効果を得られる場合には、上側冷却装置15は省略されてもよい。
【0037】
下側幅方向制御冷却装置16は、仕上圧延機14の圧延方向下流側において、ランアウトテーブルを搬送される熱延鋼板1の下方に設けられる。下側幅方向制御冷却装置16は、熱間仕上げ圧延された熱延鋼板1の板幅方向温度分布が均一となるように、当該熱延鋼板1の下面に向けて冷却水を噴射することにより冷却を行う。なお、下側幅方向制御冷却装置16の詳細な構成については後述する。
【0038】
下側冷却装置17は、ランアウトテーブルを搬送される熱延鋼板1の下方において、下側幅方向制御冷却装置16の圧延方向下流側に設けられる。下側冷却装置17は、ランアウトテーブル上を搬送される熱延鋼板1の下方から、当該熱延鋼板1の下面に向けて鉛直上方に冷却水を噴射して熱延鋼板1を冷却する冷却装置であり、その構成は特に限定されることなく公知の冷却装置を適用することができる。
【0039】
なお、下側幅方向制御冷却装置16及び下側冷却装置17の構成配分や位置は図示の例には限定されず、熱延鋼板1の板幅方向温度斑を解消、具体的には板幅方向における温度分布を均一化しうる冷却長の下側幅方向制御冷却装置16が存在すればよい。
【0040】
巻取装置18は熱延鋼板1の圧延方向の最下流側に設けられ、上側冷却装置15、下側幅方向制御冷却装置16及び下側冷却装置17により冷却された熱延鋼板1をコイル状に巻き取る。
【0041】
(下側幅方向制御冷却装置16)
次に、本実施形態にかかる下側幅方向制御冷却装置16の構成の一例について説明する。図3は、下側幅方向制御冷却装置16を構成する1つの冷却ユニットの構成の概略を示す平面図である。図4は、図3に示す下側幅方向制御冷却装置16の要部を拡大して示す要部拡大図である。また図5は、図4に示す下側幅方向制御冷却装置16の要部構成を板幅方向から見た側面図である。なお、図3においては図示の明確化のため、平面視において重なって設けられる後述の遮蔽部40及び動力伝達部60において、動力伝達部60を遮蔽部40に対して透過して図示している。
【0042】
また、図3においては下側幅方向制御冷却装置16を構成する1つの冷却ユニットの構成の概略を図示するが、下側幅方向制御冷却装置16は、複数の冷却ユニットが搬送方向(図1に示すX軸方向)に並べて配置されることにより構成される。具体的には、下側幅方向制御冷却装置16は、ランアウトテーブルの搬送方向に並べて配置される搬送ロール19(図5を参照)のそれぞれの間隙に、図3に示す冷却ユニットがそれぞれ配置されることにより構成されている。
【0043】
本実施形態にかかる下側幅方向制御冷却装置16は、熱間圧延工程の仕上圧延後に、ランアウトテーブルの搬送ロール19(図5を参照)上を搬送される熱延鋼板1の下面を冷却する装置であって、冷却機構20と、冷却水量制御機構30とを備えている。
【0044】
冷却機構20は、ランアウトテーブルの搬送ロール19上を搬送される熱延鋼板1の下方から、当該熱延鋼板1の下面に向けて鉛直上方に冷却水を噴射して熱延鋼板1を冷却する一般的な冷却装置であり、その構成は特に限定されることがない。例えば、冷却機構20は、熱延鋼板1の下方から当該熱延鋼板1の下面に向けて鉛直上方に冷却水を噴射する冷却水ノズル21を複数有し、さらに、冷却水ノズル21に冷却水を供給するヘッダー22と、ヘッダー22と外部の給水源(図示せず)とを接続する配管(図示せず)とを有している。複数の冷却水ノズル21は、隣接する搬送ロール19間の狭所において、ランアウトテーブルの板幅方向に並んで配置される。冷却水ノズル21としては、例えば扇形ノズルや円錐型ノズルなどが用いられる。冷却水ノズル21は、例えば板幅方向において50mm間隔で設置されている。
【0045】
冷却機構20は、冷却水量制御機構30により、冷却対象である熱延鋼板1の板幅方向の温度分布に基づいて、冷却水ノズル21から噴射され熱延鋼板1の下面に衝突する冷却水の水量が制御される。また、冷却水量制御機構30により、熱間圧延設備10において圧延される熱延鋼板1の板幅に応じて、冷却水ノズル21から熱延鋼板1の下面への冷却水の噴射が制御される。
【0046】
またヘッダー22と外部の給水源とを接続する配管は、ヘッダー22の両端に接続されており、冷却水ヘッダーの両側(板幅方向の両端)から冷却水が給水されるため、板幅方向で冷却能力に差が生じることを抑制できる。
【0047】
冷却水量制御機構30は、冷却水ノズル21から噴射され熱延鋼板1の下面に衝突する冷却水の水量を制御する機構であり、遮蔽部40と、開度調節部50と、
動力伝達部60と、を有している。
【0048】
遮蔽部40は、複数枚(図示の例では4枚)の遮蔽板41を有している。遮蔽板41は、動力伝達部60を介して開度調節部50から伝達される動力により移動自在に構成されており、これにより当該遮蔽部40の開度、具体的には冷却水の流路となる開口部40aの大きさを調節可能になっている。なお、遮蔽部40を構成する遮蔽板41の数は図示の例には限定されず、任意に設定することができる。遮蔽部40は、例えば複数の冷却水ノズル21にそれぞれ対応して、板幅方向に対して並べて複数設けられている。すなわち遮蔽部40の板幅方向の設置間隔は、冷却水ノズル21の設置間隔と略同一、例えば50mm程度である。
【0049】
開度調節部50は、遮蔽部40を開方向へ駆動する、すなわち開口部40aを拡げるための第1の駆動軸51と、遮蔽部40を閉方向へ駆動する、すなわち開口部40aを狭めるための第2の駆動軸52と、を有している。第1の駆動軸51及び第2の駆動軸52には、それぞれ板幅方向(Y軸方向)における任意の位置に駆動ネジ部51a、52a(例えばウォームギア)が形成されており、当該駆動ネジ部51a、52aが動力伝達部60と嵌合することにより、遮蔽部40の開閉が制御される。すなわち、第1の駆動軸51および駆動ネジ部51aと、第2の駆動軸52および駆動ネジ部52aとは、それぞれ遮蔽部40の開閉動作を逆向きに制御できるように構成されている。なお、図示の例においては、第1の駆動軸51の1箇所、第2の駆動軸52の2箇所にそれぞれ駆動ネジ部51a、52aがそれぞれ逆向きに形成されており、これにより遮蔽部40の開度を、例えば、全閉、半開、全開の3段階とするように決定することができる。
【0050】
なお、第1の駆動軸51及び第2の駆動軸52は、それぞれ板幅方向の異なる位置に駆動ネジ部51a、52aが形成された、他の第1の駆動軸51及び他の第2の駆動軸52と交換可能に構成されている。すなわち開度調節部50は、第1の駆動軸51及び第2の駆動軸52を交換することにより、それぞれの遮蔽部40の開度、換言すれば、板幅方向における熱延鋼板1の下面に噴射される冷却水量分布が、熱延鋼板1の板幅方向における温度分布と対応するように変更可能に構成されている。
【0051】
なお、熱延鋼板1の板幅方向における温度分布は、例えば熱間圧延設備10の任意の位置に設けられる温度計測部(図示せず)により、少なくとも熱延鋼板1の冷却前に実測されてもよいし、例えば熱延鋼板1(スラブ2)の材質、板幅、及び圧下率等により事前に予測してもよい。
【0052】
動力伝達部60は、回転伝達軸61と、中継かさ歯車62と、接続ナット63と、を有している。回転伝達軸61は、回転伝達ネジ軸部61aの両端部に回転伝達かさ歯車部61bが設けられた構造を有しており、図示するように、例えば遮蔽板41のそれぞれと対応するように複数(図示の例では4本)の回転伝達ネジ軸部61aが回転伝達かさ歯車部61bを介して接続され、平面視において略方形状を形成している。中継かさ歯車62は、回転伝達ネジ軸部61aの一端部に設けられた回転伝達かさ歯車部61bと、開度調節部50の駆動ネジ部51aまたは駆動ネジ部52aとが、嵌合するように設けられ、開度調節部50の軸方向移動または軸回転を回転伝達軸61に伝達する。接続ナット63は、それぞれの遮蔽板41の下方において回転伝達ネジ軸部61aに螺合するようにして設けられ、当該回転伝達ネジ軸部61aの回転により遮蔽板41を水平方向に移動させる。
【0053】
すなわち動力伝達部60は、開度調節部50の第1の駆動軸51及び第2の駆動軸52の軸方向移動または軸回転を遮蔽板41に水平方向移動に変換して伝達することで遮蔽板41を移動させ、これにより遮蔽部40の開度、すなわち開口部40aの大きさを調節する。
【0054】
ここで、上述のように動力伝達部60の複数の回転伝達ネジ軸部61aは、互いに回転伝達かさ歯車部61b、さらには中継かさ歯車62を介して接続され、第1の駆動軸51又は第2の駆動軸52の軸方向移動または軸回転により一体となって回転する。この時、駆動ネジ部51a、52aは互いに逆方向(開方向及び閉方向)に遮蔽部40を駆動するため、同一の遮蔽部40に対して同時に駆動ネジ部51a、52aが嵌合された場合、冷却水量制御機構30の故障の原因となり得る。すなわち、駆動ネジ部51a、52aは、板幅方向において互いに重複しない位置に形成される必要がある。
【0055】
さらに、開度調節部50の第1の駆動軸51及び/又は第2の駆動軸52の板幅方向外側端部には、第1の駆動軸51及び第2の駆動軸52を板幅方向(駆動軸の軸方向)に移動させるための移動装置(図示せず)および第1の駆動軸51及び第2の駆動軸52を回転駆動させるための駆動装置(図示せず)が設けられている。これらの移動装置および駆動装置には、第1の駆動軸51及び第2の駆動軸52の移動動作及び回転動作をそれぞれ制御する制御装置(図示せず)が電気的に接続されている。
【0056】
制御装置は、移動装置および駆動装置により熱延鋼板1の板幅に基づいてそれぞれの遮蔽部40が所定の開度となるように開度調節部50を軸方向移動または軸回転させ、熱延鋼板1の下面への冷却水の噴射量を連続的に制御することができる。熱延鋼板1の板幅は、熱間圧延設備10の任意の位置に設けられる板幅検出部(図示せず)により実測してもよいし、圧延時に目標とする熱延鋼板1の板幅(板幅の目標値)に基づいて決定してもよい。
【0057】
なお、下側幅方向制御冷却装置16は、図5に示すようにエプロン31をさらに備えていてもよい。エプロン31は、隣接する搬送ロール19間の遮蔽板41の上部に設けられ、搬送ロール19上における熱延鋼板1の搬送をガイドする。このエプロン31には、図6に示すように、上下方向に貫通するスリット状の貫通孔32が複数形成されている。冷却水ノズル21から噴射された冷却水は、遮蔽部40の開口部40aを通過し、さらに、貫通孔32を通過した後に、熱延鋼板1の下面に衝突する。
【0058】
なお、スリット状の貫通孔32は、図6に示したように必ずしもエプロン31の長手方向に対して傾斜して配置されている必要はなく、例えば、スリット状の貫通孔32の長手方向とエプロン31の長手方向とが直交していてもよい。ただし、高いレベルで均一な冷却が求められる場合には、傾斜して配置されていることが好ましい。
【0059】
また、エプロン31は、熱延鋼板1の全幅に亘って設けられていてもよく、熱延鋼板1の板幅方向の一部(例えば、中央部のみ)に設けられていてもよい。ただし、熱延鋼板1の板幅方向で均一な冷却を行うという観点からは、エプロン31は、熱延鋼板1の全幅に亘って設けられていることが好ましい。
【0060】
(熱延鋼板の製造方法)
次に、上述のように構成された熱間圧延設備10を用いて行われる熱延鋼板1の製造方法について説明する。
【0061】
熱延鋼板1の製造においては、外部からスラブ2が熱間圧延設備10に搬入され、搬入されたスラブ2は先ず、加熱炉11に搬送される。加熱炉11では、スラブ2を所定の温度に加熱する処理が行われる。
【0062】
加熱炉11における加熱処理が終了したスラブ2は、加熱炉11外へと抽出され、幅方向圧延機12を経て粗圧延工程へと移送される。
【0063】
粗圧延工程においてスラブ2は、先ず、粗圧延機13により30mm~60mm程度の板厚の粗バーに圧延され、続けて、仕上圧延機14において数mm程度の板厚の熱延鋼板1に圧延される。
【0064】
仕上げ圧延された熱延鋼板1は、搬送ロール19により搬送されて、上側冷却装置15、及び、下側幅方向制御冷却装置16若しくは下側冷却装置17により構成される冷却ゾーンに送られる。上側冷却装置15及び下側冷却装置17は、上述のように熱延鋼板1の上下面に向けて冷却水を噴射して熱延鋼板1を冷却する。
【0065】
下側幅方向制御冷却装置16は、下側冷却装置17と同様に、熱延鋼板1の下面に向けて鉛直上方に冷却水を噴射して熱延鋼板1を冷却する。ここで、本実施の形態にかかる下側幅方向制御冷却装置16においては、少なくとも熱延鋼板1の冷却前に予め実測または予測された温度分布に基づいて、熱延鋼板1の下面に対して噴射する冷却水量の幅方向分布を決定する。
【0066】
具体的には、図1に示したように熱間圧延後の熱延鋼板1は、板幅方向において端部から所定距離L(例えば100mm程度)内側に入った地点がピーク温度位置となる。そこで本実施形態に係る下側幅方向制御冷却装置16においては、図7(a)に示すように、熱延鋼板1に噴射される冷却水量分布が当該熱延鋼板1の温度分布と一致するような配置の駆動ネジ部51a、52aを有する、第1の駆動軸51及び第2の駆動軸52を選定する。すなわち、熱延鋼板1の端部から所定距離L内側に入った部分に位置する冷却水ノズル21からの冷却水量が最も多く(遮蔽部40が全開)、他の冷却水ノズル21からの冷却水量(冷却量)が均一となるような(遮蔽部40が半開)、第1の駆動軸51及び第2の駆動軸52を選定する。
【0067】
またさらに、本実施形態に係る下側幅方向制御冷却装置16においては、熱間圧延設備10で製造される熱延鋼板1の製造板幅が変更される場合、その変更された板幅に基づいて、熱延鋼板1の下面に対して噴射する冷却水量の幅方向分布を決定する。
【0068】
具体的には、製造される熱延鋼板1の製造板幅が図7(a)の状態から幅狭に変更された場合、図7(b)に示すように、開度調節部50の第1の駆動軸51及び第2の駆動軸52を軸方向移動または軸回転させ、駆動ネジ部51a、52aを熱延鋼板1の板幅方向に移動させ、それぞれの遮蔽部40の開度を調節する。換言すれば、熱延鋼板1の下面に噴射される冷却水量分布を板幅方向に移動させ、熱延鋼板1の板幅よりも外側に位置する冷却水ノズル21からは冷却水が噴射されないように、すなわち、熱延鋼板1の板幅よりも外側に位置する遮蔽部40が全閉となるように、各遮蔽部40の開度を調節する。
【0069】
このように、熱間圧延後の熱延鋼板1の板幅方向の温度分布に基づいて第1の駆動軸51及び第2の駆動軸52を選定し、また開度調節部50を駆動して熱延鋼板1の製造板幅に基づいて遮蔽部40の開度を調節する。これにより、熱延鋼板1の板幅方向における冷却量を適切に制御し、板幅方向温度斑を解消することができる。
【0070】
冷却された熱延鋼板1は、その後、巻取装置18によりコイル状に巻き取られる。これにより、一連の熱延鋼板1の製造が終了する。
【0071】
(本実施形態に係る下側幅方向制御冷却装置16の効果)
以上のようにして、冷却水量制御機構30は、熱延鋼板1の板幅方向における温度分布に基づいて、冷却水ノズル21による熱延鋼板1の下面への冷却水の噴射水量を制御する。
【0072】
本実施形態によれば、上述のように熱延鋼板1の板幅方向における温度分布と一致した冷却水量分布となるように、第1の駆動軸51及び第2の駆動軸52を選定することにより、適切に熱延鋼板1の温度斑を解消することができる。
【0073】
また本実施形態によれば、上述のように熱延鋼板1の板幅に応じて熱延鋼板1の下面への冷却水量分布の制御を行うため、熱延鋼板1の板幅の変化に追従してさらに適切に熱延鋼板1の温度斑を解消することができる。
【0074】
また、本実施形態にかかる下側幅方向制御冷却装置16によれば、隣接する搬送ロール19間の狭所において、冷却水ノズル21の上方に遮蔽部40を設け、かかる遮蔽部40の開閉を、開度調節部50及び動力伝達部60により実現する。より具合的には、遮蔽部40の位置を固定したまま、開度調節部50を軸方向移動または軸回転させることのみにより、冷却水ノズル21から熱延鋼板1の下面に噴射される冷却水量を制御する。したがって、下側幅方向制御冷却装置16の設置に広いスペースを必要とせず、コンパクトな装置となる。
【0075】
なお、上記実施形態においては、熱間圧延工程後の熱延鋼板1が、図1に示したような、略山なり型傾向の温度分布を有する場合を例に説明を行ったが、熱延鋼板1の板幅方向における温度分布は、例えば熱延鋼板1(スラブ2)の材質や圧延条件等により変化する場合がある。
【0076】
ここで本実施形態によれば、第1の駆動軸51及び第2の駆動軸52は、それぞれ板幅方向の異なる位置に駆動ネジ部51a、52aが形成された、他の第1の駆動軸51及び他の第2の駆動軸52と交換可能に構成されている。これにより、熱延鋼板1の板幅方向の温度分布が変化した場合であっても、第1の駆動軸51、第2の駆動軸52を交換することのみによって、適切に当該温度分布の変化に対応させて温度斑を解消することができる。
【0077】
具体的には、上記実施形態においては駆動ネジ部51a、52aを、それぞれ第1の駆動軸51に1箇所、第2の駆動軸52に2箇所設けたが、かかる駆動ネジ部51a、52aの形成位置、形成長及び形成数が異なる駆動軸を用意することにより、熱延鋼板1の温度分布に好適に対応することができる。例えば、図8(a)に示すように、駆動ネジ部51a、52aの形成位置を変えることにより開閉対象として対応する遮蔽部40を決定することができる。また例えば、図8(b)に示すように、駆動ネジ部51a、52aの形成長を変えることにより、遮蔽部40の開度の変化量を決定することができる。また例えば、図8(c)に示すように、駆動ネジ部51a、52aの形成数を変えることにより、同時に開閉する遮蔽部40の数を決定することができる。
【0078】
なお、上述のように1の駆動軸に対して複数の駆動ネジ部51a、52aを形成する場合には、当該駆動ネジ部51a、52aの形成間隔は遮蔽部40の設置間隔(例えば50mm程度)と略同一とすることが望ましい。すなわち、1の駆動ネジ部51a、52aが1の遮蔽部40に対応するように、駆動ネジ部51a、52aを形成することが望ましい。
【0079】
なお、上記実施形態では熱延鋼板1の搬送をガイドするエプロン31を遮蔽板41の上方において、当該遮蔽板41とは別体として設けたが、エプロン31の一部が、遮蔽部40を構成していてもよい。「エプロン31の一部が、遮蔽部40を構成する」とは、例えばエプロン31と遮蔽板41とが一体に設けられ、エプロン31の一部が開度調節部50の動作により開閉することをいう。このように、エプロン31の一部が、遮蔽部40を構成していることにより、下側幅方向制御冷却装置16をよりコンパクトにすることができるとともに、遮蔽部40への熱延鋼板1からの衝撃に対する強度を高めることができる。さらに、エプロン31と遮蔽部40が一体に構成されることから、遮蔽部40の位置ずれを防止することもできる。
【0080】
なお、上記実施形態では、開度調節部50及び動力伝達部60はネジ機構を有し、開度調節部50の駆動ネジ部51a、52aと動力伝達部60の中継かさ歯車62とが嵌合することで遮蔽部40の開度を決定したが、開度調節部50及び動力伝達部60の構造はこれに限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明は、熱間圧延工程の仕上圧延後、搬送ロール上を搬送される熱延鋼板の下面を冷却する冷却装置、および、当該冷却装置を用いる冷却方法に有用である。
【符号の説明】
【0082】
1 熱延鋼板
2 スラブ
10 熱間圧延設備
11 加熱炉
12 幅方向圧延機
13 粗圧延機
14 仕上圧延機
15 上側冷却装置
16 下側幅方向制御冷却装置
17 下側冷却装置
18 巻取装置
19 搬送ロール
20 冷却機構
21 冷却水ノズル
22 ヘッダー
30 冷却水量制御機構
31 エプロン
32 貫通孔
40 遮蔽部
40a 開口部
41 遮蔽板
50 開度調節部
51 第1の駆動軸
51a 駆動ネジ部
52 第2の駆動軸
52a 駆動ネジ部
60 動力伝達部
61 回転伝達軸
61a 回転伝達ネジ軸部
61b 回転伝達かさ歯車部
62 中継かさ歯車
63 接続ナット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8