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特許7406129フルオロポリマーの製造方法及びフルオロポリマー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-19
(45)【発行日】2023-12-27
(54)【発明の名称】フルオロポリマーの製造方法及びフルオロポリマー
(51)【国際特許分類】
   C08F 2/38 20060101AFI20231220BHJP
   C08F 2/06 20060101ALI20231220BHJP
   C08F 293/00 20060101ALI20231220BHJP
   C08F 214/26 20060101ALI20231220BHJP
【FI】
C08F2/38
C08F2/06
C08F293/00
C08F214/26
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021518405
(86)(22)【出願日】2020-05-08
(86)【国際出願番号】 JP2020018710
(87)【国際公開番号】W WO2020226178
(87)【国際公開日】2020-11-12
【審査請求日】2021-10-27
(31)【優先権主張番号】P 2019088302
(32)【優先日】2019-05-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】中野 麻里奈
(72)【発明者】
【氏名】川部 琢磨
(72)【発明者】
【氏名】東 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】石原 寿美
【審査官】佐藤 貴浩
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第109627374(CN,A)
【文献】特表2017-515948(JP,A)
【文献】特表2015-514854(JP,A)
【文献】特表平07-505429(JP,A)
【文献】PUTS, Gerard et al.,Conventional and RAFT Copolymerization of Tetrafluoroethylene with Isobutyl Vinyl Ether,Macromolecules,2018年,Vol.51,Pages 6724-6739
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 2/00- 2/60
C08F 6/00-246/00
C08F293/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶液重合又は分散重合によりフルオロポリマーを製造する方法であって、
開始剤、連鎖移動剤および溶媒の存在下に
ii)テトラフルオロエチレンと、下記一般式(1)で示されるモノマー及び/又は一般式(2)で示されるモノマーとをランダム共重合する工程、
を含み、
前記連鎖移動剤は、式(c1-1)で表されるジチオエステル化合物、式(c1-3)で表されるジチオカルバメート化合物、式(c1-2)又は式(c1-2’)で表されるトリチオカーボネート化合物、及び、式(c1-4)で表されるキサンテート化合物からなる群より選択される少なくとも1種であり、
前記フルオロポリマーは、テトラフルオロエチレンに基づく重合単位が50~100モル%である
ことを特徴とするブロック共重合が可能なフルオロポリマーの製造方法。
一般式(1):
CF=CR
(式中、Rは、H又はF;Rは-Cl、-R、-COOR、-OCOR、-CONR 、-CN、-COR、-Rf;R、R、R、R及びRは、同一又は異なって、H又は置換基;Rfは、同一又は異なって、置換基を有していてもよく、炭素原子間に酸素原子を含んでいてもよい、含フッ素アルキル基、含フッ素ビニル基又は含フッ素アルコキシ基;R及びRは互いに結合して環を形成してもよい)
一般式(2):
CH=CR
(式中、Rは、R、CFまたはF;Rは-Cl、-R、-COOR、-OCOR、-CONR 、-CN、-COR、Rf;R及びRは、同一又は異なって、H、又は、置換基を有していてもよい炭化水素基又はヘテロ環基;R、R、R及びRは、同一又は異なって、H又は置換基;Rfは、同一又は異なって、置換基を有していてもよく、炭素原子間に酸素原子を含んでいてもよい、含フッ素アルキル基、含フッ素ビニル基又は含フッ素アルコキシ基;R及びRは互いに結合して環を形成してもよい)
【化1】
(式(c1-1)~(c1-4)中、Zc1はアリール基又はアルキル基である。Zc2はアリール基又はアルキル基である。Zc3及びZc4はそれぞれ独立にアルキル基、アリール基又は4-ピリジル基である。Zc3及びZc4は相互に結合して式(c1-3)中のN原子とともに複素環を形成してもよい。Zc5はアリール基又はアルキル基である。Rは、1価の有機基である。式(c1-2’)において、2つのRはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。)
【請求項2】
溶媒が非フッ素系有機溶媒又はフッ素系有機溶媒である請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
Af-CRP
(式中、Afは、テトラフルオロエチレンに由来する単量体単位のみからなるフルオロポリマーセグメント、又は、テトラフルオロエチレンに由来する単量体単位と、下記一般式(1)及び/又は一般式(2)で示されるモノマーに由来する単量体単位とがランダム共重合したフルオロポリマーセグメントであり、テトラフルオロエチレンに基づく重合単位が50~100モル%である。CRPは、下記式(CRP1)~(CRP5)のいずれかである。)で表されるフルオロポリマーであって、
前記フルオロポリマーは、ブロック共重合体の中間体であることを特徴とするフルオロポリマー。
式(CRP1):
-SC(S)Zc11
(式中、Zc11はアルキル基又はアリール基である。)
式(CRP2):
―SC(S)SZc12
(式中、Zc12はアルキル基又はアリール基である。)
式(CRP3):
-SC(S)SRc11
(式中、Rc11は、(i)アルキル基、又は、(ii)アルキル基が有する水素原子の1又は2以上が、フェニル基、シアノ基、ヒドロキシル基、炭素数1~4のアルコキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基、アセトキシ基及び下記c1~c4からなる群から選ばれる少なくとも1種の基で置換された基である。
【化2】
式c1~c4中、*は結合位を示す。式c2中、Aは炭素数2~5のアルキレン基、nは10~300の整数である。)
式(CRP4):
-SC(S)NZc13
(式中、Zc13は、(i)互いに独立に、アルキル基、アリール基又は4-ピリジル基であるか、又は、(ii)互いに結合して式中のN原子とともに複素環を形成する基である。)
式(CRP5):
-SC(S)OZc14
(式中、Zc14はアルキル基又はアリール基である。)
一般式(1):
CF=CR
(式中、Rは、H又はF;Rは-Cl、-R、-COOR、-OCOR、-CONR 、-CN、-COR、-Rf;R、R、R、R及びRは、同一又は異なって、H又は置換基;Rfは、同一又は異なって、置換基を有していてもよく、炭素原子間に酸素原子を含んでいてもよい、含フッ素アルキル基、含フッ素ビニル基又は含フッ素アルコキシ基;R及びRは互いに結合して環を形成してもよい)
一般式(2):
CH=CR
(式中、Rは、R、CFまたはF;Rは-Cl、-R、-COOR、-OCOR、-CONR 、-CN、-COR、Rf;R及びRは、同一又は異なって、H、又は、置換基を有していてもよい炭化水素基又はヘテロ環基;R、R、R及びRは、同一又は異なって、H又は置換基;Rfは、同一又は異なって、置換基を有していてもよく、炭素原子間に酸素原子を含んでいてもよい、含フッ素アルキル基、含フッ素ビニル基又は含フッ素アルコキシ基;R及びRは互いに結合して環を形成してもよい)
【請求項4】
Bf-CRP
(式中、Bfは、テトラフルオロエチレンに由来する単量体単位のみからなるフルオロポリマーセグメントである。CRPは、下記式(CRP1)~(CRP5)のいずれかである。)で表されるフルオロポリマーであって、
前記フルオロポリマーは、ブロック共重合体の中間体であることを特徴とするフルオロポリマー。
式(CRP1):
-SC(S)Zc11
(式中、Zc11はアルキル基又はアリール基である。)
式(CRP2):
―SC(S)SZc12
(式中、Zc12はアルキル基又はアリール基である。)
式(CRP3):
-SC(S)SRc11
(式中、Rc11は1価の有機基である。)
式(CRP4):
-SC(S)NZc13
(式中、Zc13は、(i)互いに独立に、アルキル基、アリール基又は4-ピリジル基であるか、又は、(ii)互いに結合して式中のN原子とともに複素環を形成する基である。)
式(CRP5):
-SC(S)OZc14
(式中、Zc14はアルキル基又はアリール基である。)
【請求項5】
溶液重合又は分散重合によりフルオロポリマーを製造する方法であって、
開始剤、連鎖移動剤および溶媒の存在下に、
(iii)テトラフルオロエチレンを単独重合し、その後、下記一般式(1)及び/又は一般式(2)で示される単量体をブロック共重合する工程、又は、
(iv)下記一般式(1)及び/又は一般式(2)を重合し、その後、テトラフルオロエチレンをブロック共重合する工程、
を含み、
前記連鎖移動剤は、式(c1-1)で表されるジチオエステル化合物、式(c1-3)で表されるジチオカルバメート化合物、式(c1-2)又は式(c1-2’)で表されるトリチオカーボネート化合物、及び、式(c1-4)で表されるキサンテート化合物からなる群より選択される少なくとも1種である
ことを特徴とするフルオロポリマーの製造方法。
一般式(1):
CF=CR
(式中、Rは、H又はF;Rは-Cl、-R、-COOR、-OCOR、-CONR 、-CN、-COR、-Rf;R、R、R、R及びRは、同一又は異なって、H又は置換基;Rfは、同一又は異なって、置換基を有していてもよく、炭素原子間に酸素原子を含んでいてもよい、含フッ素アルキル基、含フッ素ビニル基又は含フッ素アルコキシ基;R及びRは互いに結合して環を形成してもよい)
一般式(2):
CH=CR
(式中、Rは、R、CFまたはF;Rは-Cl、-R、-COOR、-OCOR、-CONR 、-CN、-COR、Rf;R及びRは、同一又は異なって、H、又は、置換基を有していてもよい炭化水素基又はヘテロ環基;R、R、R及びRは、同一又は異なって、H又は置換基;Rfは、同一又は異なって、置換基を有していてもよく、炭素原子間に酸素原子を含んでいてもよい、含フッ素アルキル基、含フッ素ビニル基又は含フッ素アルコキシ基;R及びRは互いに結合して環を形成してもよい)
【化3】
(式(c1-1)~(c1-4)中、Zc1はアリール基又はアルキル基である。Zc2はアリール基又はアルキル基である。Zc3及びZc4はそれぞれ独立にアルキル基、アリール基又は4-ピリジル基である。Zc3及びZc4は相互に結合して式(c1-3)中のN原子とともに複素環を形成してもよい。Zc5はアリール基又はアルキル基である。Rは、1価の有機基である。式(c1-2’)において、2つのRはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。)
【請求項6】
溶媒が非フッ素系有機溶媒又はフッ素系有機溶媒である請求項5記載の製造方法。
【請求項7】
工程(iii)において、溶媒に対する一般式(1)及び/又は一般式(2)で示されるモノマーの濃度が0.1~20モル/Lである請求項5又は6記載の製造方法。
【請求項8】
テトラフルオロエチレンに由来する単量体単位を含むセグメントAと、
一般式(1)及び/又は一般式(2)に由来する単量体単位を含むセグメントBを含むフルオロポリマーであることを特徴とするフルオロポリマー。
一般式(1):
CF=CR
(式中、Rは、H又はF;Rは-Cl、-R、-COOR、-OCOR、-CONR 、-CN、-COR、-Rf;R、R、R、R及びRは、同一又は異なって、H又は置換基;Rfは、同一又は異なって、置換基を有していてもよく、炭素原子間に酸素原子を含んでいてもよい、含フッ素アルキル基、含フッ素ビニル基又は含フッ素アルコキシ基;R及びRは互いに結合して環を形成してもよい)
一般式(2):
CH=CR
(式中、Rは、R、CFまたはF;Rは-Cl、-R、-COOR、-OCOR、-CONR 、-CN、-COR、Rf;R及びRは、同一又は異なって、H、又は、置換基を有していてもよい炭化水素基又はヘテロ環基;R、R、R及びRは、同一又は異なって、H又は置換基;Rfは、同一又は異なって、置換基を有していてもよく、炭素原子間に酸素原子を含んでいてもよい、含フッ素アルキル基、含フッ素ビニル基又は含フッ素アルコキシ基;R及びRは互いに結合して環を形成してもよい)
【請求項9】
セグメントAは、テトラフルオロエチレンに由来する単量体単位のみからなる請求項8記載のフルオロポリマー。
【請求項10】
セグメントBは、ヘキサフルオロプロピレン、クロロトリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、フッ化ビニル、トリフルオロエチレン、フルオロアルキルビニルエーテル、トリフルオロプロピレン、ペンタフルオロプロピレン、トリフルオロブテン、テトラフルオロイソブテン、ヘキサフルオロイソブテン、ビニルエステル類、(メタ)アクリル酸エステル、アクリルアミド、アルケン、ビニルアミド、フルオロアルキルエチレン及び含フッ素アクリレートモノマーからなる群より選択される少なくとも1種に基づく単量体単位を含む請求項8又は9記載のフルオロポリマー。
【請求項11】
セグメントBは、ポリビニルエステル、ポリビニルアミド又はポリビニリデンフルオライドからなるセグメントである請求項8~10のいずれかに記載のフルオロポリマー。
【請求項12】
セグメントAとセグメントBとの質量比(A/B)が99/1~1/99である請求項8~11のいずれかに記載のフルオロポリマー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、フルオロポリマーの製造方法及びフルオロポリマーに関する。
【背景技術】
【0002】
フルオロポリマーの製造方法としては、乳化重合や溶液重合が採用されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、式:CFClO(CF-CF(CF)O)(CFO)CFCOOH(式中、n/m=10であり、600の平均分子量を有する)の酸性末端基を有するパーフルオロポリオキシアルキレンと、n/m=20の、450の平均分子量を有する式:CFO(CFCF(CF)O)(CFO)CFのパーフルオロポリエーテルとを混合することによって予め得られたマイクロエマルション、及び、連鎖移動剤としてのO-エチルS-(1-メトキシカルボニルエチル)ジチオカーボネートの存在下に、テトラフルオロエチレン(TFE)とフッ化ビニリデン(VDF)とヘキサフルオロプロペン(HFP)とを重合したことが記載されている。
【0004】
特許文献2には、制御フリーラジカル共重合によるコポリマーの調製方法であって、開始剤および連鎖移動剤の存在下での、トリフルオロエチレンモノマーと、トリフルオロエチレンとは異なる少なくとも1種類のさらなるモノマーとの、共重合工程を含み、前記連鎖移動剤はキサンテート化合物、トリチオカーボネート化合物または一ヨウ素化化合物であり、ここで、調製されるコポリマーはブロックコポリマーであり、および共重合工程中に存在させるモノマーは、フッ化ビニリデンとトリフルオロエチレンからなるか;またはフッ化ビニリデン、トリフルオロエチレンおよび少なくとも1種類のさらなるモノマーを含み、ならびにモノマーの量に対する連鎖移動剤の量のモル比は0.001から0.020であり、およびコモノマーの量に対するTrFEモノマーの量の初期モル比は10%から90%、好ましくは20%から50%である、方法が記載されている。
【0005】
特許文献3には、特定の有機テルル化合物の存在下に、ハロオレフィンを重合するポリマーの製造方法が記載されている。
【0006】
特許文献4には、オートクレーブ中に溶媒として及びビニルエステル単量体として酢酸ブチルを仕込み、重合開始剤としてパーブチルPV(製品名、日油株式会社製)を加え、オートクレーブを真空置換し、槽温を60℃まで昇温して、これに攪拌下、テトラフルオロエチレンを封入して反応を開始する方法が記載されている。
【0007】
非特許文献1には、溶液重合を用いて、有機溶媒中でTFEとイソブチルビニルエーテルを交互共重合したことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特表2017-515948号公報
【文献】特表2015-514854号公報
【文献】国際公開第2018/164147号
【文献】国際公開第2014/123221号
【非特許文献】
【0009】
【文献】Ameduri、Macromolecules、2018年、51巻、6724頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本開示は、フルオロポリマーの新規な製造方法を提供することを目的とする。また、新規なフルオロポリマーを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示は、溶液重合又は分散重合によりフルオロポリマーを製造する方法であって、開始剤、連鎖移動剤および溶媒の存在下に、(i)テトラフルオロエチレンを単独重合する工程、又は、(ii)テトラフルオロエチレンと、下記一般式(1)で示されるモノマー及び/又は一般式(2)で示されるモノマーとをランダム共重合する工程、を含み、前記連鎖移動剤は、ジチオエステル化合物、ジチオカルバメート化合物、トリチオカーボネート化合物、及び、キサンテート化合物からなる群より選択される少なくとも1種であり、前記フルオロポリマーは、テトラフルオロエチレンに基づく重合単位が50~100モル%であることを特徴とするフルオロポリマーの製造方法に関する。
一般式(1):
CF=CR
(式中、Rは、H又はF;Rは-Cl、-R、-COOR、-OCOR、-CONR 、-CN、-COR、-Rf;R、R、R、R及びRは、同一又は異なって、H又は置換基;Rfは、同一又は異なって、置換基を有していてもよく、炭素原子間に酸素原子を含んでいてもよい、含フッ素アルキル基、含フッ素ビニル基又は含フッ素アルコキシ基;R及びRは互いに結合して環を形成してもよい)
一般式(2):
CH=CR
(式中、Rは、R、CFまたはF;Rは-Cl、-R、-COOR、-OCOR、-CONR 、-CN、-COR、Rf;R及びRは、同一又は異なって、H、又は、置換基を有していてもよい炭化水素基又はヘテロ環基;R、R、R及びRは、同一又は異なって、H又は置換基;Rfは、同一又は異なって、置換基を有していてもよく、炭素原子間に酸素原子を含んでいてもよい、含フッ素アルキル基、含フッ素ビニル基又は含フッ素アルコキシ基;R及びRは互いに結合して環を形成してもよい)
【0012】
本開示はまた、Af-CRP
(式中、Afは、テトラフルオロエチレンに由来する単量体単位のみからなるフルオロポリマーセグメント、又は、テトラフルオロエチレンに由来する単量体単位と、下記一般式(1)及び/又は一般式(2)で示されるモノマーに由来する単量体単位とがランダム共重合したフルオロポリマーセグメントであり、テトラフルオロエチレンに基づく重合単位が50~100モル%である。CRPは、下記式(CRP1)~(CRP5)のいずれかである。)で表されることを特徴とするフルオロポリマーを提供する。
式(CRP1):
-SC(S)Zc11
(式中、Zc11はアルキル基又はアリール基である。)
式(CRP2):
―SC(S)SZc12
(式中、Zc12はアルキル基又はアリール基である。)
式(CRP3):
-SC(S)SRc11
(式中、Rc11は1価の有機基である。)
式(CRP4):
-SC(S)NZc13
(式中、Zc13は、(i)互いに独立に、アルキル基、アリール基又は4-ピリジル基であるか、又は、(ii)互いに結合して式中のN原子とともに複素環を形成する基である。)
式(CRP5):
-SC(S)OZc14
(式中、Zc14はアルキル基又はアリール基である。)
一般式(1):
CF=CR
(式中、Rは、H又はF;Rは-Cl、-R、-COOR、-OCOR、-CONR 、-CN、-COR、-Rf;R、R、R、R及びRは、同一又は異なって、H又は置換基;Rfは、同一又は異なって、置換基を有していてもよく、炭素原子間に酸素原子を含んでいてもよい、含フッ素アルキル基、含フッ素ビニル基又は含フッ素アルコキシ基;R及びRは互いに結合して環を形成してもよい)
一般式(2):
CH=CR
(式中、Rは、R、CFまたはF;Rは-Cl、-R、-COOR、-OCOR、-CONR 、-CN、-COR、Rf;R及びRは、同一又は異なって、H、又は、置換基を有していてもよい炭化水素基又はヘテロ環基;R、R、R及びRは、同一又は異なって、H又は置換基;Rfは、同一又は異なって、置換基を有していてもよく、炭素原子間に酸素原子を含んでいてもよい、含フッ素アルキル基、含フッ素ビニル基又は含フッ素アルコキシ基;R及びRは互いに結合して環を形成してもよい)
【0013】
本開示は更に、Bf-CRP
(式中、Bfは、テトラフルオロエチレンに由来する単量体単位のみからなるフルオロポリマーセグメントである。CRPは、下記式(CRP1)~(CRP5)のいずれかである。)で表されることを特徴とするフルオロポリマーを提供する。
式(CRP1):
-SC(S)Zc11
(式中、Zc11はアルキル基又はアリール基である。)
式(CRP2):
―SC(S)SZc12
(式中、Zc12はアルキル基又はアリール基である。)
式(CRP3):
-SC(S)SRc11
(式中、Rc11は1価の有機基である。)
式(CRP4):
-SC(S)NZc13
(式中、Zc13は、(i)互いに独立に、アルキル基、アリール基又は4-ピリジル基であるか、又は、(ii)互いに結合して式中のN原子とともに複素環を形成する基である。)
式(CRP5):
-SC(S)OZc14
(式中、Zc14はアルキル基又はアリール基である。)
【0014】
本開示はそして、溶液重合又は分散重合によりフルオロポリマーを製造する方法であって、開始剤、連鎖移動剤および溶媒の存在下に、(iii)テトラフルオロエチレンを単独重合し、その後、下記一般式(1)及び/又は一般式(2)で示される単量体をブロック共重合する工程、又は、(iv)下記一般式(1)及び/又は一般式(2)を重合し、その後、テトラフルオロエチレンをブロック共重合する工程、を含み、前記連鎖移動剤はジチオエステル化合物、ジチオカルバメート化合物、トリチオカーボネート化合物及びキサンテート化合物からなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とするフルオロポリマーの製造方法を提供する。
一般式(1):
CF=CR
(式中、Rは、H又はF;Rは-Cl、-R、-COOR、-OCOR、-CONR 、-CN、-COR、-Rf;R、R、R、R及びRは、同一又は異なって、H又は置換基;Rfは、同一又は異なって、置換基を有していてもよく、炭素原子間に酸素原子を含んでいてもよい、含フッ素アルキル基、含フッ素ビニル基又は含フッ素アルコキシ基;R及びRは互いに結合して環を形成してもよい)
一般式(2):
CH=CR
(式中、Rは、R、CFまたはF;Rは-Cl、-R、-COOR、-OCOR、-CONR 、-CN、-COR、Rf;R及びRは、同一又は異なって、H、又は、置換基を有していてもよい炭化水素基又はヘテロ環基;R、R、R及びRは、同一又は異なって、H又は置換基;Rfは、同一又は異なって、置換基を有していてもよく、炭素原子間に酸素原子を含んでいてもよい、含フッ素アルキル基、含フッ素ビニル基又は含フッ素アルコキシ基;R及びRは互いに結合して環を形成してもよい)
上記溶媒は、非フッ素系有機溶媒又はフッ素系有機溶媒であることが好ましい。
【0015】
上記工程(iii)において、溶媒に対する一般式(1)及び/又は一般式(2)で示されるモノマーの濃度が0.1~20モル/Lであることが好ましい。
【0016】
本開示はまた、テトラフルオロエチレンに由来する単量体単位を含むセグメントAと、
一般式(1)及び/又は一般式(2)に由来する単量体単位を含むセグメントBを含むフルオロポリマーであることを特徴とするフルオロポリマーをも提供する。
一般式(1):
CF=CR
(式中、Rは、H又はF;Rは-Cl、-R、-COOR、-OCOR、-CONR 、-CN、-COR、-Rf;R、R、R、R及びRは、同一又は異なって、H又は置換基;Rfは、同一又は異なって、置換基を有していてもよく、炭素原子間に酸素原子を含んでいてもよい、含フッ素アルキル基、含フッ素ビニル基又は含フッ素アルコキシ基;R及びRは互いに結合して環を形成してもよい)
一般式(2):
CH=CR
(式中、Rは、R、CFまたはF;Rは-Cl、-R、-COOR、-OCOR、-CONR 、-CN、-COR、Rf;R及びRは、同一又は異なって、H、又は、置換基を有していてもよい炭化水素基又はヘテロ環基;R、R、R及びRは、同一又は異なって、H又は置換基;Rfは、同一又は異なって、置換基を有していてもよく、炭素原子間に酸素原子を含んでいてもよい、含フッ素アルキル基、含フッ素ビニル基又は含フッ素アルコキシ基;R及びRは互いに結合して環を形成してもよい)
上記セグメントAは、テトラフルオロエチレンに由来する単量体単位のみからなることが好ましい。
上記セグメントBは、ヘキサフルオロプロピレン、クロロトリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、フッ化ビニル、トリフルオロエチレン、フルオロアルキルビニルエーテル、トリフルオロプロピレン、ペンタフルオロプロピレン、トリフルオロブテン、テトラフルオロイソブテン、ヘキサフルオロイソブテン、ビニルエステル類、(メタ)アクリル酸エステル、アクリルアミド、アルケン、ビニルアミド、フルオロアルキルエチレン及び含フッ素アクリレートモノマーからなる群より選択される少なくとも1種に基づく単量体単位を含むことが好ましい。
上記セグメントBは、ポリビニルエステル、ポリビニルアミド又はポリビニリデンフルオライドからなるセグメントであることが好ましい。
本開示のフルオロポリマーは、上記セグメントAとセグメントBとの質量比(A/B)が99/1~1/99であることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本開示の製造方法は、新規な方法でフルオロポリマーを製造することができる。また、本開示のフルオロポリマーは新規である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本開示を具体的に説明する前に、本明細書で使用するいくつかの用語を定義又は説明する。
【0019】
本明細書において、フッ素樹脂とは、部分結晶性フルオロポリマーであり、フルオロプラスチックスである。フッ素樹脂は、融点を有し、熱可塑性を有するが、溶融加工性であっても、非溶融加工性であってもよい。
【0020】
本明細書において、溶融加工性とは、押出機及び射出成形機等の従来の加工機器を用いて、ポリマーを溶融して加工することが可能であることを意味する。従って、溶融加工性のフッ素樹脂は、後述する測定方法により測定されるメルトフローレートが0.01~500g/10分であることが通常である。
【0021】
本明細書において、フッ素ゴムとは、非晶質フルオロポリマーである。「非晶質」とは、フルオロポリマーの示差走査熱量測定〔DSC〕(昇温温度10℃/分)あるいは示差熱分析〔DTA〕(昇温速度10℃/分)において現われた融解ピーク(ΔH)の大きさが4.5J/g以下であることをいう。フッ素ゴムは、架橋することにより、エラストマー特性を示す。エラストマー特性とは、ポリマーを延伸することができ、ポリマーを延伸するのに必要とされる力がもはや適用されなくなったときに、その元の長さを保持できる特性を意味する。
【0022】
本明細書において、部分フッ素化ゴムとは、フルオロモノマー単位を含み、全重合単位に対するパーフルオロモノマー単位の含有量が90モル%未満のフルオロポリマーであって、20℃以下のガラス転移温度を有し、4.5J/g以下の融解ピーク(ΔH)の大きさを有するフルオロポリマーである。
【0023】
本明細書において、パーフルオロゴムとは、全重合単位に対するパーフルオロモノマー単位の含有量が90モル%以上のフルオロポリマーであって、20℃以下のガラス転移温度を有し、4.5J/g以下の融解ピーク(ΔH)の大きさを有するフルオロポリマーであり、更に、フルオロポリマーに含まれるフッ素原子の濃度が71質量%以上であるポリマーである。本明細書において、フルオロポリマーに含まれるフッ素原子の濃度は、フルオロポリマーを構成する各モノマーの種類と含有量より、フルオロポリマーに含まれるフッ素原子の濃度(質量%)を計算により求めるものである。
【0024】
本明細書において、パーフルオロモノマーとは、分子中に炭素原子-水素原子結合を含まないモノマーである。上記パーフルオロモノマーは、炭素原子及びフッ素原子の他、炭素原子に結合しているフッ素原子のいくつかが塩素原子で置換されたモノマーであってもよく、炭素原子の他、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、燐原子、硼素原子又は珪素原子を有するものであってもよい。上記パーフルオロモノマーとしては、全ての水素原子がフッ素原子に置換されたモノマーであることが好ましい。上記パーフルオロモノマーには、架橋部位を与えるモノマーは含まれない。
【0025】
架橋部位を与えるモノマーとは、硬化剤により架橋を形成するための架橋部位をフルオロポリマーに与える架橋性基を有するモノマー(キュアサイトモノマー)である。
【0026】
本明細書において、ポリテトラフルオロエチレン〔PTFE〕は、全重合単位に対するテトラフルオロエチレンの含有量が99モル%以上であるフルオロポリマーであることが好ましい。
【0027】
本明細書において、フッ素樹脂(但し、ポリテトラフルオロエチレンを除く)及びフッ素ゴムは、いずれも、全重合単位に対するテトラフルオロエチレンの含有量が99モル%未満であるフルオロポリマーであることが好ましい。
【0028】
本明細書において、フルオロポリマーを構成する各モノマーの含有量は、NMR、FT-IR、元素分析、蛍光X線分析をモノマーの種類によって適宜組み合わせることで算出できる。
【0029】
本明細書において、「有機基」は、1個以上の炭素原子を含有する基、又は有機化合物から1個の水素原子を除去して形成される基を意味する。
当該「有機基」の例は、
1個以上の置換基を有していてもよいアルキル基、
1個以上の置換基を有していてもよいアルケニル基、
1個以上の置換基を有していてもよいアルキニル基、
1個以上の置換基を有していてもよいシクロアルキル基、
1個以上の置換基を有していてもよいシクロアルケニル基、
1個以上の置換基を有していてもよいシクロアルカジエニル基、
1個以上の置換基を有していてもよいアリール基、
1個以上の置換基を有していてもよいアラルキル基、
1個以上の置換基を有していてもよい非芳香族複素環基、
1個以上の置換基を有していてもよいヘテロアリール基、
シアノ基、
ホルミル基、
RaO-、
RaCO-、
RaSO-、
RaCOO-、
RaNRaCO-、
RaCONRa-、
RaOCO-、
RaOSO-、及び、
RaNRbSO
(これらの式中、Raは、独立して、
1個以上の置換基を有していてもよいアルキル基、
1個以上の置換基を有していてもよいアルケニル基、
1個以上の置換基を有していてもよいアルキニル基、
1個以上の置換基を有していてもよいシクロアルキル基、
1個以上の置換基を有していてもよいシクロアルケニル基、
1個以上の置換基を有していてもよいシクロアルカジエニル基、
1個以上の置換基を有していてもよいアリール基、
1個以上の置換基を有していてもよいアラルキル基、
1個以上の置換基を有していてもよい非芳香族複素環基、又は
1個以上の置換基を有していてもよいヘテロアリール基、
Rbは、独立して、H又は1個以上の置換基を有していてもよいアルキル基である)
を包含する。
上記有機基としては、1個以上の置換基を有していてもよいアルキル基が好ましい。
【0030】
また、本明細書において、「置換基」は、置換可能な基を意味する。当該「置換基」の例は、脂肪族基、芳香族基、ヘテロ環基、アシル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、スルホニル基、含フッ素スルホニル基、脂肪族オキシ基、芳香族オキシ基、ヘテロ環オキシ基、脂肪族オキシカルボニル基、芳香族オキシカルボニル基、ヘテロ環オキシカルボニル基、カルバモイル基、脂肪族スルホニル基、芳香族スルホニル基、ヘテロ環スルホニル基、脂肪族スルホニルオキシ基、芳香族スルホニルオキシ基、ヘテロ環スルホニルオキシ基、スルファモイル基、脂肪族スルホンアミド基、芳香族スルホンアミド基、ヘテロ環スルホンアミド基、アミノ基、脂肪族アミノ基、芳香族アミノ基、ヘテロ環アミノ基、脂肪族オキシカルボニルアミノ基、芳香族オキシカルボニルアミノ基、ヘテロ環オキシカルボニルアミノ基、脂肪族スルフィニル基、芳香族スルフィニル基、脂肪族チオ基、芳香族チオ基、ヒドロキシ基、シアノ基、スルホ基、カルボキシ基、脂肪族オキシアミノ基、芳香族オキシアミノ基、カルバモイルアミノ基、スルファモイルアミノ基、スルファモイルカルバモイル基、カルバモイルスルファモイル基、ジ脂肪族オキシホスフィニル基、及び、ジ芳香族オキシホスフィニル基を包含する。これらの置換基は、炭素原子に結合する水素原子の一部又は全部がフッ素原子に置換されているものであってもよい。
【0031】
上記脂肪族基は、飽和であっても不飽和であってもよく、また、ヒドロキシ基、脂肪族オキシ基、カルバモイル基、脂肪族オキシカルボニル基、脂肪族チオ基、アミノ基、脂肪族アミノ基、アシルアミノ基、カルバモイルアミノ基等を有していてもよい。上記脂肪族基としては、総炭素原子数1~8、好ましくは1~4のアルキル基、例えば、メチル基、エチル基、ビニル基、シクロヘキシル基、カルバモイルメチル基等が挙げられる。
【0032】
上記芳香族基は、例えば、ニトロ基、ハロゲン原子、脂肪族オキシ基、カルバモイル基、脂肪族オキシカルボニル基、脂肪族チオ基、アミノ基、脂肪族アミノ基、アシルアミノ基、カルバモイルアミノ基等を有していてもよい。上記芳香族基としては、炭素数6~12、好ましくは総炭素原子数6~10のアリール基、例えば、フェニル基、4-ニトロフェニル基、4-アセチルアミノフェニル基、4-メタンスルホニルフェニル基等が挙げられる。
【0033】
上記ヘテロ環基は、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、脂肪族オキシ基、カルバモイル基、脂肪族オキシカルボニル基、脂肪族チオ基、アミノ基、脂肪族アミノ基、アシルアミノ基、カルバモイルアミノ基等を有していてもよい。上記ヘテロ環基としては、総炭素原子数2~12、好ましくは2~10の5~6員へテロ環、例えば2-テトラヒドロフリル基、2-ピリミジル基等が挙げられる。
【0034】
上記アシル基は、脂肪族カルボニル基、アリールカルボニル基、ヘテロ環カルボニル基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、芳香族基、脂肪族オキシ基、カルバモイル基、脂肪族オキシカルボニル基、脂肪族チオ基、アミノ基、脂肪族アミノ基、アシルアミノ基、カルバモイルアミノ基等を有していてもよい。上記アシル基としては、総炭素原子数2~8、好ましくは2~4のアシル基、例えばアセチル基、プロパノイル基、ベンゾイル基、3-ピリジンカルボニル基等が挙げられる。
【0035】
上記アシルアミノ基は、脂肪族基、芳香族基、ヘテロ環基等を有していてもよく、例えば、アセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、2-ピリジンカルボニルアミノ基、プロパノイルアミノ基等を有していてもよい。上記アシルアミノ基としては、総炭素原子数2~12、好ましくは2~8のアシルアミノ基、総炭素原子数2~8のアルキルカルボニルアミノ基、例えばアセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、2-ピリジンカルボニルアミノ基、プロパノイルアミノ基等が挙げられる。
【0036】
上記脂肪族オキシカルボニル基は、飽和であっても不飽和であってもよく、また、ヒドロキシ基、脂肪族オキシ基、カルバモイル基、脂肪族オキシカルボニル基、脂肪族チオ基、アミノ基、脂肪族アミノ基、アシルアミノ基、カルバモイルアミノ基等を有していてもよい。上記脂肪族オキシカルボニル基としては、総炭素原子数2~8、好ましくは2~4のアルコキシカルボニル基、例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニル、(t)-ブトキシカルボニル基等が挙げられる。
【0037】
上記カルバモイル基は、脂肪族基、芳香族基、へテロ環基等を有していてもよい。上記カルバモイル基としては、無置換のカルバモイル基、総炭素数2~9のアルキルカルバモイル基、好ましくは無置換のカルバモイル基、総炭素原子数2~5のアルキルカルバモイル基、例えばN-メチルカルバモイル基、N,N-ジメチルカルバモイル基、N-フェニルカルバモイル基等が挙げられる。
【0038】
上記脂肪族スルホニル基は、飽和であっても不飽和であってもよく、また、ヒドロキシ基、芳香族基、脂肪族オキシ基、カルバモイル基、脂肪族オキシカルボニル基、脂肪族チオ基、アミノ基、脂肪族アミノ基、アシルアミノ基、カルバモイルアミノ基等を有していてもよい。上記脂肪族スルホニル基としては、総炭素原子数1~6、好ましくは総炭素原子数1~4のアルキルスルホニル基、例えばメタンスルホニル等が挙げられる。
【0039】
上記芳香族スルホニル基は、ヒドロキシ基、脂肪族基、脂肪族オキシ基、カルバモイル基、脂肪族オキシカルボニル基、脂肪族チオ基、アミノ基、脂肪族アミノ基、アシルアミノ基、カルバモイルアミノ基等を有していてもよい。上記芳香族スルホニル基としては、総炭素原子数6~10のアリールスルホニル基、例えばベンゼンスルホニル等が挙げられる。
【0040】
上記アミノ基は、脂肪族基、芳香族基、ヘテロ環基等を有していてもよい。
【0041】
上記アシルアミノ基は、例えば、アセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、2-ピリジンカルボニルアミノ基、プロパノイルアミノ基等を有していてもよい。上記アシルアミノ基としては、総炭素原子数2~12、好ましくは総炭素原子数2~8のアシルアミノ基、より好ましくは総炭素原子数2~8のアルキルカルボニルアミノ基、例えばアセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、2-ピリジンカルボニルアミノ基、プロパノイルアミノ基等が挙げられる。
【0042】
上記脂肪族スルホンアミド基、芳香族スルホンアミド基、ヘテロ環スルホンアミド基は、例えば、メタンスルホンアミド基、ベンゼンスルホンアミド基、2-ピリジンスルホンアミド基等であってもよい。
【0043】
上記スルファモイル基は、脂肪族基、芳香族基、ヘテロ環基等を有していてもよい。上記スルファモイル基としては、スルファモイル基、総炭素原子数1~9のアルキルスルファモイル基、総炭素原子数2~10のジアルキルスルファモイル基、総炭素原子数7~13のアリールスルファモイル基、総炭素原子数2~12のヘテロ環スルファモイル基、より好ましくはスルファモイル基、総炭素原子数1~7のアルキルスルファモイル基、総炭素原子数3~6のジアルキルスルファモイル基、総炭素原子数6~11のアリールスルファモイル基、総炭素原子数2~10のヘテロ環スルファモイル基、例えば、スルファモイル基、メチルスルファモイル基、N,N-ジメチルスルファモイル基、フェニルスルファモイル基、4-ピリジンスルファモイル基等が挙げられる。
【0044】
上記脂肪族オキシ基は、飽和であっても不飽和であってもよく、また、メトキシ基、エトキシ基、i-プロピルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、メトキシエトキシ基等を有していてもよい。上記脂肪族オキシ基としては、総炭素原子数1~8、好ましくは1~6のアルコキシ基、例えばメトキシ基、エトキシ基、i-プロピルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、メトキシエトキシ基等が挙げられる。
【0045】
上記芳香族アミノ基、へテロ環アミノ基は、脂肪族基、脂肪族オキシ基、ハロゲン原子、カルバモイル基、該アリール基と縮環したヘテロ環基、脂肪族オキシカルボニル基、好ましくは総炭素原子数1~4の脂肪族基、総炭素原子数1~4の脂肪族オキシ基、ハロゲン原子、総炭素原子数1~4のカルバモイル基、ニトロ基、総炭素原子数2~4の脂肪族オキシカルボニル基を有していてもよい。
【0046】
上記脂肪族チオ基は、飽和であっても不飽和であってもよく、また、総炭素原子数1~8、より好ましくは総炭素原子数1~6のアルキルチオ基、例えばメチルチオ基、エチルチオ基、カルバモイルメチルチオ基、t-ブチルチオ基等が挙げられる。
【0047】
上記カルバモイルアミノ基は、脂肪族基、アリール基、ヘテロ環基等を有していてもよい。上記カルバモイルアミノ基としては、カルバモイルアミノ基、総炭素原子数2~9のアルキルカルバモイルアミノ基、総炭素原子数3~10のジアルキルカルバモイルアミノ基、総炭素原子数7~13のアリールカルバモイルアミノ基、総炭素原子数3~12のヘテロ環カルバモイルアミノ基、好ましくはカルバモイルアミノ基、総炭素原子数2~7のアルキルカルバモイルアミノ基、総炭素原子数3~6のジアルキルカルバモイルアミノ基、総炭素原子数7~11のアリールカルバモイルアミノ基、総炭素原子数3~10のヘテロ環カルバモイルアミノ基、例えば、カルバモイルアミノ基、メチルカルバモイルアミノ基、N,N-ジメチルカルバモイルアミノ基、フェニルカルバモイルアミノ、4-ピリジンカルバモイルアミノ基等が挙げられる。
【0048】
本明細書においては更に、端点によって表わされる範囲には、その範囲内に含まれるすべての数値が含まれる(例えば、1~10には、1.4、1.9、2.33、5.75、9.98等が含まれる)。
【0049】
本明細書においては更に、「少なくとも1」の記載には、1以上の全ての数値が含まれる(例えば、少なくとも2、少なくとも4、少なくとも6、少なくとも8、少なくとも10、少なくとも25、少なくとも50、少なくとも100等)。
【0050】
次に、本開示を具体的に説明する。
【0051】
本開示の製造方法は、溶液重合又は分散重合によりフルオロポリマーを製造する方法であって、開始剤、連鎖移動剤および溶媒の存在下に、(i)テトラフルオロエチレンを単独重合する工程、又は、(ii)テトラフルオロエチレンと、下記一般式(1)及び/又は一般式(2)で示されるモノマーとをランダム共重合する工程、を含み、上記連鎖移動剤は、ジチオエステル化合物、ジチオカルバメート化合物、トリチオカーボネート化合物、及び、キサンテート化合物からなる群より選択される少なくとも1種であり、上記フルオロポリマーは、テトラフルオロエチレンに基づく重合単位が50~100モル%である(以下「本開示の第1の製造方法」という)。
一般式(1):
CF=CR
(式中、Rは、H又はF;Rは-Cl、-R、-COOR、-OCOR、-CONR 、-CN、-COR、-Rf;R、R、R、R及びRは、同一又は異なって、H又は置換基;Rfは、同一又は異なって、置換基を有していてもよく、炭素原子間に酸素原子を含んでいてもよい、含フッ素アルキル基、含フッ素ビニル基又は含フッ素アルコキシ基;R及びRは互いに結合して環を形成してもよい)
一般式(2):
CH=CR
(式中、Rは、R、CFまたはF;Rは-Cl、-R、-COOR、-OCOR、-CONR 、-CN、-COR、Rf;R及びRは、同一又は異なって、H、又は、置換基を有していてもよい炭化水素基又はヘテロ環基;R、R、R及びRは、同一又は異なって、H又は置換基;Rfは、同一又は異なって、置換基を有していてもよく、炭素原子間に酸素原子を含んでいてもよい、含フッ素アルキル基、含フッ素ビニル基又は含フッ素アルコキシ基;R及びRは互いに結合して環を形成してもよい)
【0052】
従来、テトラフルオロエチレン系の重合体においてブロック共重合することは困難であった。本開示の第1の製造方法は、重合方法として溶液重合又は分散重合を選択し、連鎖移動剤として特定の化合物を選択することによって、TFE系の重合体であってもブロック共重合が可能になるフルオロポリマーを製造することができることを見いだし完成されたものである。本開示の第1の製造方法により、特定の連鎖移動剤に基づく末端基を有するフルオロポリマーが得られ、これによりブロック共重合することが可能となる。
【0053】
上記ランダム共重合は、2種以上の単量体単位がランダムに配列するように共重合するものである。
【0054】
上記連鎖移動剤は、ジチオエステル化合物、ジチオカルバメート化合物、トリチオカーボネート化合物、及び、キサンテート化合物からなる群より選択される少なくとも1種である。具体的には式(c1-1)で表されるジチオエステル、式(c1-2)又は式(c1-2’)で表されるトリチオカーボネート、式(c1-3)で表されるジチオカーバメート、式(c1-4)で表されるキサンテートが挙げられる。
【0055】
【化1】
【0056】
式(c1-1)~(c1-4)中、Zc1はアリール基又はアルキル基であり、例えばフェニル基、シアノフェニル基等の炭素数6~20のアリール基、エチル基等の炭素数1~15のアルキル基である。Zc2はアリール基又はアルキル基であり、例えばドデシル基等の炭素数1~15のアルキル基である。Zc3及びZc4はそれぞれ独立にアルキル基、アリール基又は4-ピリジル基であり、例えばメチル基等の炭素数1~15のアルキル基、フェニル基等の炭素数6~20のアリール基である。Zc3及びZc4は相互に結合して式(c1-3)中のN原子とともにピロール環、ピロリドン環等の複素環を形成してもよい。Zc5はアリール基又はアルキル基であり、例えばエチル基、トリフルオロエチル基等の炭素数1~15のアルキル基、フェニル基、パーフルオロフェニル基等の炭素数6~20のアリール基である。
c5において、アリール基はフェニル基、シアノフェニル基又はパーフルオロフェニル基が好ましく、フェニル基又はパーフルオロフェニル基がより好ましい。
上記Zc5において、アルキル基はメチル基、エチル基、ブチル基、ドデシル基、又はトリフルオロエチル基が好ましく、メチル基、エチル基又はトリフルオロエチル基がより好ましい。
【0057】
式(c1-1)~(c1-4)中、Rは、1価の有機基であり、例えば、(i)アルキル基、並びに(ii)アルキル基が有する水素原子の1又は2以上が、フェニル基、シアノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、炭素数1~4のアルコキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基、アセトキシ基及び下記c1~c4からなる群から選ばれる少なくとも1種の基で置換された基が挙げられる。
【0058】
式(c1-2’)において、2つのRはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0059】
でのアルキル基の炭素数は、通常1~18、好ましくは2~12である。
【0060】
【化2】
【0061】
上記式c1~c4中、*は結合位を示す。上記式c2中、Aは炭素数2~5のアルキレン基、nは10~300の整数である。
【0062】
ジチオエステル(c1-1)としては、例えば以下の化合物が挙げられる。
【0063】
【化3】
【0064】
トリチオカーボネート(c1-2)及び(c1-2’)としては、例えば以下の化合物が挙げられる。
【0065】
【化4】
【0066】
【化5】
【0067】
式中、nは10~300の整数である。
【0068】
ジチオカーバメート(c1-3)としては、例えば以下の化合物が挙げられる。
【0069】
【化6】
【0070】
キサンテート(c1-4)としては、例えば以下の化合物が挙げられる。
【0071】
【化7】
【0072】
上記工程(i)及び(ii)において、上記連鎖移動剤の添加量は用いる化合物の連鎖移動定数の大きさにより変わりうるが、重合で使用される全モノマーに対して、0.05~20モル%の範囲で使用されることが好ましい。より好ましくは、0.06モル%以上であり、更に好ましくは0.08モル%以上であり、更により好ましくは0.1モル%以上であり、また、より好ましくは15モル%以下であり、更に好ましくは10モル%以下であり、更により好ましくは6.5モル%以下である。
【0073】
上記連鎖移動剤を用いることによって、可逆的付加開裂連鎖移動重合(RAFT)を行うことができる。RAFTでは、上記連鎖移動剤の存在下、リビングラジカル重合を行うことができる。
【0074】
上記溶液重合又は分散重合は、開始剤の存在下に実施する。好適な開始剤としては、過酸化物及びアゾ化合物並びに酸化還元ベースの開始剤が挙げられる。
過酸化物開始剤の具体例としては、過酸化水素、過酸化ナトリウム若しくは過酸化バリウム、ジアセチルパーオキサイド、ジスクシニルパーオキサイド、ジプロピオニルパーオキサイド、ジブチリルパーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド、ベンゾイルアセチルパーオキサイド、ジグルタル酸パーオキサイド及びジラウリルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド、並びに、過酸及びその塩(例えばアンモニウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩)が挙げられる。過酸の例としては、過酢酸が挙げられる。過酸のエステルも同様に使用することができ、その例としては、tert-ブチルペルオキシアセテート及びtert-ブチルパーオキシピバレートが挙げられる。
無機剤の例としては、例えば、過硫酸、過マンガン酸若しくはマンガン酸のアンモニウム塩、アルカリ塩若しくはアルカリ土類塩、又は、マンガン酸が挙げられる。過硫酸塩開始剤、例えば過硫酸アンモニウム(APS)は、それだけで使用することができるか、又は還元剤と組み合わせて使用されてもよい。好適な還元剤としては、例えば重亜硫酸アンモニウム若しくはメタ重亜硫酸ナトリウム等の重亜硫酸塩、例えばチオ硫酸アンモニウム、カリウム若しくはナトリウム等のチオ硫酸塩、ヒドラジン、アゾジカルボキシレ-ト及びアゾジカルボキシルジアミド(ADA)が挙げられる。使用され得る更なる還元剤としては、例えば、米国特許第5,285,002号明細書に開示されているようなホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム(Rongalit)又はフルオロアルキルスルフィネートが挙げられる。還元剤は典型的には、過硫酸塩開始剤の半減期を減らす。更に、例えば銅、鉄又は銀塩等の金属塩触媒が添加されてもよい。
アゾ化合物としては、例えば、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-シクロプロピルプロピオニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2-(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル、2-フェニルアゾ-4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル、2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス(N,N’-ジメチレンイソブチルアミジン)、2,2’-アゾビス〔2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)-プロピオンアミド〕、2,2’-アゾビス(イソブチルアミド)ジヒドレート、4,4’-アゾビス(4-シアノペンタン酸)、2,2’-アゾビス(2-シアノプロパノール)、ジメチル-2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]が挙げられる。
上記開始剤としては、過酸のエステル、過硫酸塩、ジアシルパーオキサイド、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、又は、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)がより好ましく、tert-ブチルパーオキシピバレート、ジベンゾイルパーオキサイド、tert-ブチルペルオキシアセテート、又は、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)が更に好ましい。
【0075】
上記開始剤の添加量は用いる化合物により変わりうるが、連鎖移動剤に対して5.0~1000モル%の範囲で使用される。好ましくは、6.0モル%以上であり、より好ましくは8.0モル%以上であり、更に好ましくは10モル%以上であり、また、好ましくは100モル%以下であり、より好ましくは50モル%以下であり、更に好ましくは30モル%以下である。
【0076】
上記溶媒は、非フッ素系有機溶媒、フッ素系有機溶媒又は水であることが好ましく、非フッ素系有機溶媒又はフッ素系有機溶媒であることがより好ましい。上記非フッ素系容器溶媒としては、酢酸n-ブチル、酢酸t-ブチル、酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸プロピル、炭酸ジメチル等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;ヘキサン、シクロヘキサン、オクタン等の脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;メタノール、エタノール、tert-ブタノール、イソプロパノール等のアルコール類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル類;ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、又はこれらの混合物等が挙げられる。フッ素系有機溶媒としては、HCFC-225、テトラデカフルオロへキサン、フルオロアルカン、ハイドロフルオロエーテル、フルオロアルコール等が挙げられる。
上記溶媒としては、アセトン、炭酸ジメチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、メタノール、テトラデカフルオロへキサン、1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン、メチルノナフルオロブチルエーテル、メチルノナフルオロイソブチルエーテル、1,1,1,2,2,3,4,5,5,5-デカフルオロ-3-メトキシ-4-(トリフルオロメチル)-ペンタン、2,2,2-トリフルオロエタノール、又は、HCFC-225がより好ましく、アセトン、酢酸エチル、テトラデカフルオロへキサン、3M(TM)Novec(TM)7100高機能性液体(スリーエム ジャパン(株)製)、又は、アサヒクリンAK225(AGC(株)製)が更に好ましい。
【0077】
工程(i)における重合温度としては、溶液重合又は分散重合が可能な温度であれば特に限定されないが、例えば、10~150℃であってよい。好ましくは、20~130℃であり、より好ましくは、40~110℃である。
工程(i)における重合圧力としては、溶液重合又は分散重合が可能な温度であれば特に限定されないが、例えば、0.05~5.0MPaGであってよい。好ましくは、0.2~3.5MPaGであり、より好ましくは、0.5~1.2MPaGである。
【0078】
工程(ii)における重合温度としては、溶液重合又は分散重合が可能な温度であれば特に限定されないが、例えば、0.0~150℃であってよい。好ましくは、20~130℃であり、より好ましくは、40~110℃である。
工程(ii)における重合圧力としては、溶液重合又は分散重合が可能な温度であれば特に限定されないが、例えば、0.0~9.8MPaGであってよい。好ましくは、0.2~6.0MPaGであり、より好ましくは、0.5~3.0MPaGである。
【0079】
上記溶液重合及び分散重合は、溶媒中で重合反応を行う重合方法である。
溶液重合は、モノマーが溶媒に可溶であり、重合により形成されたポリマーも溶媒に可溶となるモノマーと溶媒の組み合わせで行われる重合である。
また、分散重合は、モノマーが溶媒に可溶であるが、重合により形成されたポリマーが溶媒に不溶性となるモノマーと溶媒の組み合わせで行われる重合である。
従って、溶液重合であるか、分散重合であるかは使用されるモノマーと溶媒との組合せにより決定される。
【0080】
本開示の第1の製造方法は、テトラフルオロエチレン(TFE)を単独重合する工程(i)、又は、TFEと、一般式(1)及び/又は一般式(2)で示されるモノマーとをランダム共重合する工程(ii)を含む。
【0081】
上記工程(i)は、TFEを単独重合するものである。TFEを単独重合することによりTFE単独重合体(PTFE)が得られる。
【0082】
上記工程(ii)は、TFEと、一般式(1)で示されるモノマー及び/又は一般式(2)で示されるモノマーとをランダム共重合する工程である。
上記工程(ii)は、フルオロポリマーのTFEに基づく重合単位が50モル%以上100モル%未満となるように重合するものであることが好ましい。TFEに基づく重合単位は、51モル%以上が好ましく、55モル%以上がより好ましく、60モル%以上が更に好ましく、65モル%以上が特に好ましい。また、99モル%以下が好ましく、95モル%以下がより好ましく、90モル%以下が更に好ましい。
【0083】
上記工程(ii)は後述する変性PTFEを製造するものであってもよく、その場合、上記工程(ii)は、フルオロポリマーの一般式(1)及び一般式(2)で示されるモノマーに基づく重合単位の合計量が0.00001~1.0質量%となるように重合するものであることが好ましい。上記合計量の下限としては、0.0001質量%がより好ましく、0.001質量%が更に好ましく、0.005質量%が更により好ましく、0.009質量%が特に好ましい。上限としては、0.90質量%が好ましく、0.50質量%がより好ましく、0.40質量%が更に好ましく、0.30質量%が更により好ましく、0.10質量%が殊更に好ましい。
【0084】
一般式(1)におけるR、R、R、R及びRは、同一又は異なって、H又は置換基である。上記置換基としては、上述したものが挙げられるが、中でも、脂肪族基、アシル基、芳香族基、又はヘテロ環基が好ましく、脂肪族基、アシル基、又はヘテロ環基がより好ましく、脂肪族基又はアシル基が更に好ましい。上記R、R、R、R及びRは、炭素数が1~10であることが好ましく、1~8がより好ましく、1~5が更に好ましい。上記脂肪族基、アシル基、芳香族基及びヘテロ環基は、置換基を有していてもよく、炭素原子間に酸素原子を有していてもよい。
、R、R、R及びRは、鎖状でも分岐状でもよく、環状構造を含んでいてもよい。
【0085】
一般式(1)におけるRfとしては、置換基を有していてもよく、炭素原子間に酸素原子を含んでいてもよい、含フッ素アルキル基、含フッ素ビニル基、含フッ素アルコキシ基、含フッ素アルキルオキシアルキル基等が挙げられる。Rfの炭素数は、1~10であることが好ましく、1~8がより好ましく、1~6が更に好ましい。
Rfは、鎖状でも分岐状でもよく、環状構造を含んでいてもよい。
【0086】
上記Rとしては、-H、置換基を有していてもよい炭素数1~10の含フッ素アルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1~10の含フッ素アルコキシ基、-Cl、置換基を有していてもよい炭素数1~10の非含フッ素アルキル基、カルボキシル基、置換基を有していてもよい炭素数1~10のアルキルエステル基、又は、置換基を有していてもよい炭素数1~10の含フッ素アルキルオキシアルキル基であることが好ましく、-H、-CF、-OCF、-OCFCFSOF、-Cl、-CH、-OCHCF、-COOH、-COOCH、-OCFOCF、-OCFCFOCF、-OCFCFCFOCF又は-OCであることが好ましく、-H、-CF、-OCF3、-OC又は-OCFCFSOFであることがより好ましく、-H、-CF、又は、-OCFであることがより好ましい。
【0087】
上記一般式(1)で示されるモノマーとしては、ヘキサフルオロプロピレン[HFP]、クロロトリフルオロエチレン[CTFE]、フッ化ビニリデン[VDF]、トリフルオロエチレン、フルオロアルキルビニルエーテル、トリフルオロプロピレン、ペンタフルオロプロピレン、トリフルオロブテン、テトラフルオロイソブテン及びヘキサフルオロイソブテンからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0088】
上記フルオロアルキルビニルエーテルとしては、例えば、
一般式(110):CF=CF-ORf111
(式中、Rf111は、酸素原子を含んでいてもよい、パーフルオロアルキル基を表す。)で表されるフルオロモノマー、
一般式(120):CF=CF-OCH-Rf121
(式中、Rf121は、炭素数1~5のパーフルオロアルキル基)で表されるフルオロモノマー、
一般式(130):CF=CFOCFORf131
(式中、Rf131は炭素数1~6の直鎖又は分岐状パーフルオロアルキル基、炭素数5~6の環式パーフルオロアルキル基、1~3個の酸素原子を含む炭素数2~6の直鎖又は分岐状パーフルオロオキシアルキル基である。)で表されるフルオロモノマー、及び、
一般式(140):CF=CFO(CFCF(Y141)O)(CF
(式中、Y141はフッ素原子又はトリフルオロメチル基を表す。mは1~4の整数である。nは1~4の整数である。)で表されるフルオロモノマーからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0089】
一般式(110)で表されるフルオロモノマーとしては、Rf111が炭素数1~10のパーフルオロアルキル基であるフルオロモノマーが挙げられる。上記パーフルオロアルキル基の炭素数は、好ましくは1~5である。
【0090】
一般式(110)におけるパーフルオロアルキル基としては、例えば、パーフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロペンチル基、パーフルオロヘキシル基等が挙げられる。
一般式(110)で表されるフルオロモノマーとしては、更に、上記一般式(110)において、Rf111が炭素数4~9のパーフルオロ(アルコキシアルキル)基であるもの、Rf111が下記式:
【0091】
【化8】
【0092】
(式中、mは、0又は1~4の整数を表す。)で表される基であるもの、Rf111が下記式:
【0093】
【化9】
【0094】
(式中、nは、1~4の整数を表す。)で表される基であるもの等が挙げられる。
【0095】
一般式(110)で表されるフルオロモノマーとしては、なかでも、
一般式(160):CF=CF-ORf161
(式中、Rf161は、炭素数1~10のパーフルオロアルキル基を表す。)で表されるフルオロモノマーが好ましい。Rf161は、炭素数が1~5のパーフルオロアルキル基であることが好ましい。
【0096】
フルオロアルキルビニルエーテルとしては、一般式(110)、(130)及び(140)で表されるフルオロモノマーからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0097】
一般式(110)で表されるフルオロモノマーとしては、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)、及び、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)からなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)、及び、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)からなる群より選択される少なくとも1種がより好ましい。
【0098】
一般式(130)で表されるフルオロモノマーとしては、CF=CFOCFOCF、CF=CFOCFOCFCF、及び、CF=CFOCFOCFCFOCFからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0099】
一般式(140)で表されるフルオロモノマーとしては、CF=CFOCFCF(CF)O(CFF、CF=CFO(CFCF(CF)O)(CFF、及び、CF=CFO(CFCF(CF)O)(CFFからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0100】
上記一般式(1)で示されるモノマーとしてはまた、
一般式(200):CF=CF-O-(CF-A
(式中、nは、1~10の整数を表し、Aは、-CHOH、-COOM、-SOM又は-OSOM(Mは、-H、金属原子、-NR 、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム又は置換基を有していてもよいホスホニウムであり、Rは、H又は有機基である。)で表されるモノマー、
一般式(210):CF=CF-O-(CFCFXO)-CFCF-A
(式中、nは、1~10の整数を表し、Xは、F又はCFを表し、Aは、前記定義と同じ。)で表されるモノマーも挙げられる。
一般式(200)及び一般式(210)において、nは、5以下の整数であることが好ましい。Xは、-CFであることが好ましい。
は、H又はC1-10の有機基が好ましく、H又はC1-4の有機基がより好ましく、H又はC1-4のアルキル基が更に好ましい。
上記金属原子としては、アルカリ金属(1族)、アルカリ土類金属(2族)等が挙げられ、Na、K又はLiが好ましい。
Mは、-H、金属原子又は-NR が好ましく、-H、アルカリ金属(1族)、アルカリ土類金属(2族)又は-NR がより好ましく、-H、-Na、-K、-Li又は-NHが更に好ましい。
【0101】
上記一般式(1)で示されるモノマーとしてはまた、下記一般式(220):
【化10】
(式中、Rf、Rf、Rf及びRfは、同一又は異なって、F又は炭素数1~10のパーフルオロアルキル基)で示されるモノマー、下記一般式(230):
【化11】
(式中、Rf及びRfは、F又は炭素数1~10のパーフルオロアルキル基)で表されるモノマーも挙げられる。
【0102】
一般式(1)で示されるモノマーとしては、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)、パーフルオロフッ化スルホニルビニルエーテル、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン又はトリフルオロプロピレンが好ましく、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)、パーフルオロフッ化スルホニルビニルエーテル又はトリフルオロプロピレンがより好ましく、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)又はパーフルオロフッ化スルホニルビニルエーテルが更に好ましい。
一般式(1)で示されるモノマーは、TFEとは異なるモノマーである。
【0103】
一般式(2)におけるはR及びRは、同一又は異なって、H、又は、置換基を有していてもよい炭化水素基又はヘテロ環基である。上記炭化水素基としては、アルキル基、アルキレン基、アリール基、ビニル基等が挙げられる。上記炭化水素基の炭素数は、1~20が好ましく、1~15がより好ましく、1~10が更に好ましい。
上記ヘテロ環基としては、炭素数2~7のラクタム構造を有する基が好ましく、炭素数3~6のラクタム構造を有する基がより好ましく、炭素数4のラクタム構造を有する基が更に好ましい。
及びRは、鎖状でも分岐状でもよく、環状構造を含んでいてもよい。
【0104】
一般式(2)におけるR、R、R及びRは、同一又は異なって、H又は置換基である。上記置換基としては、上述したものが挙げられるが、中でも、脂肪族基、アシル基、芳香族基又はヘテロ環基が好ましく、脂肪族基、アシル基、又はヘテロ環基がより好ましく、脂肪族基又はアシル基が更に好ましい。上記脂肪族基、アシル基、芳香族基及びヘテロ環基は、置換基を有していてもよく、炭素原子間に酸素原子を有していてもよい。上記R、R、R及びRは、炭素数が1~20であることが好ましく、1~15がより好ましく、1~10が更に好ましい。
、R、R及びRは、鎖状でも分岐状でもよく、環状構造を含んでいてもよい。
【0105】
一般式(2)におけるRfとしては、置換基を有していてもよく、炭素原子間に酸素原子を含んでいてもよい、含フッ素アルキル基、含フッ素ビニル基、含フッ素アルコキシ基、含フッ素アルキルオキシアルキル基等が挙げられる。Rfの炭素数は、1~10であることが好ましく、1~8がより好ましく、1~6が更に好ましい。
Rfは、鎖状でも分岐状でもよく、環状構造を含んでいてもよい。
【0106】
上記Rとしては、H、F、CH又はCFであることが好ましく、H、F、又は、CFであることがより好ましい。
【0107】
上記Rとしては、置換基を有していてもよい炭素数1~10の非含フッ素アルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1~10の含フッ素アルキル基、-COOR、-OCOR、-CONR 、-NRCOR、-NR 、又は、炭素数2~7のラクタム構造を有する基が好ましい。
上記R、R及びRは、同一又は異なって、H又は炭素数1~10のアルキル基である。
【0108】
上記一般式(2)で示されるモノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン等のアルケン類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、n-酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、吉草酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、カプリン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ミリスチン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、パラ-t-ブチル安息香酸ビニル、シクロヘキサンカルボン酸ビニル、アジピン酸ビニル、アクリル酸ビニル、メタクリル酸ビニル、クロトン酸ビニル、ソルビン酸ビニル、桂皮酸ビニル、ウンデシレン酸ビニル、ヒドロキシ酢酸ビニル、ヒドロキシプロピオイン酸ビニル、ヒドロキシ酪酸ビニル、ヒドロキシ吉草酸ビニル、ヒドロキシイソ酪酸ビニル、ヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸ビニル等のビニルエステル類;エチルアリルエーテル、プロピルアリルエーテル、ブチルアリルエーテル、イソブチルアリルエーテル、シクロヘキシルアリルエーテル等のアルキルアリルエーテル類;エチルアリルエステル、プロピルアリルエステル、ブチルアリルエステル、イソブチルアリルエステル、シクロヘキシルアリルエステル等のアルキルアリルエステル類等が挙げられる。
上記一般式(2)で示されるモノマーとしてはまた、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル等の(メタ)アクリル酸エステル;イタコン酸;グリシジルビニルエーテル、グリシジルアリルエーテル等のグリシジル基を有するフッ素非含有モノマー;アミノアルキルビニルエーテル、アミノアルキルアリルエーテル等のアミノ基を有するフッ素非含有モノマー;(メタ)アクリルアミド、メチロールアクリルアミド等のアミド結合を有するフッ素非含有モノマー等が挙げられる。
【0109】
上記一般式(2)で示されるモノマーとしては、フッ化ビニル、フルオロアルキルエチレン、一般式(100):CH=CFRf101(式中、Rf101は炭素数1~12の直鎖又は分岐したフルオロアルキル基)で表されるフルオロモノマー、一般式(300):CH=CFCF-O-(CF(CF)CFO)-CF(CF)-A(式中、nは0又は1~10の整数を表し、Aは、-CHOH、-COOM、-SOM又は-OSOM(Mは、-H、金属原子、-NR 、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム又は置換基を有していてもよいホスホニウムであり、Rは、H又は有機基である。)で表されるフルオロモノマー、及び、含フッ素アクリレートモノマー等も挙げられる。
上記一般式(300)において、nは、0又は1~5の整数であることが好ましく、0、1又は2であることがより好ましく、0又は1であることが更に好ましい。Rとしては、H又はC1-10の有機基が好ましく、H又はC1-4の有機基がより好ましく、H又はC1-4のアルキル基が更に好ましい。上記金属原子としては、アルカリ金属(1族)、アルカリ土類金属(2族)等が挙げられ、Na、K又はLiが好ましい。上記Mとしては、-H、金属原子又は-NR が好ましく、-H、アルカリ金属(1族)、アルカリ土類金属(2族)又は-NR がより好ましく、-H、-Na、-K、-Li又は-NHが更に好ましい。
【0110】
一般式(100)で表されるフルオロモノマーとしては、Rf101が直鎖のフルオロアルキル基であるフルオロモノマーが好ましく、Rf101が直鎖のパーフルオロアルキル基であるフルオロモノマーがより好ましい。Rf101の炭素数は1~6であることが好ましい。一般式(100)で表されるフルオロモノマーとしては、CH=CFCF、CH=CFCFCF、CH=CFCFCFCF、CH=CFCFCFCFH、CH=CFCFCFCFCF等が挙げられ、なかでも、CH=CFCFで示される2,3,3,3-テトラフルオロプロピレンが好ましい。
【0111】
フルオロアルキルエチレンとしては、
一般式(170):CH=CH-(CF-X171
(式中、X171はH又はFであり、nは3~10の整数である。)で表されるフルオロアルキルエチレンが好ましく、CH=CH-C、及び、CH=CH-C13からなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましい。
【0112】
上記含フッ素アクリレートモノマーとしては、一般式(240):
CH=C(-X241)-C(=O)-O-Y241-Rf241
(式中、X241は、H、CH、F又はCl;Y241は、単結合、炭素数1以上の脂肪族基;Rf241は、炭素数1~8の脂肪族基又は炭素数1~8のフルオロアルキル基)
で表されるものが好ましい。
【0113】
241は、例えば、炭素数1~20の直鎖状又は分岐状脂肪族基(特に、アルキレン基)、例えば、式-(CH-(式中、xは1~10である。)で示される基であってよい。
【0114】
Rf241は、パーフルオロアルキル基であることが好ましい。Rf241の炭素数は、4~8が好ましく、4~6がより好ましい。Rf241としては、-CFCFCFCF、-CFCF(CF、-C(CF、-(CFCF、-(CFCF(CF、-CFC(CF、-CF(CF)CFCFCF、-(CFCF、-(CFCF(CF、-(CFCF(CF、-C17等が挙げられる。
【0115】
含フッ素アクリレートモノマーの具体例としては、例えば以下のものを例示できるが、これらに限定されるものではない。
CH=C(-H)-C(=O)-O-(CH-Rf241
CH=C(-CH)-C(=O)-O-(CH-Rf241
CH=C(-Cl)-C(=O)-O-(CH-Rf241
(式中、Rf241は、上記のとおり)
【0116】
上記アミド結合を有するフッ素非含有モノマーとしては、例えば、上記-CONR 、-NRCOR、又は、炭素数2~7のラクタム構造を有する基を有するモノマーが好ましい。上記アミド結合は、カルボニル基と窒素原子の間の結合をいう。
【0117】
上記アミド結合を有するフッ素非含有モノマーとしては、N-ビニル-β-プロピオラクタム、N-ビニル-2-ピロリドン、N-ビニル-γ-バレロラクタム、N-ビニル-2-ピペリドン、N-ビニル-ヘプトラクタムなどのN-ビニルラクタム化合物、N-ビニルホルムアミド、N-メチルーN-ビニルアセトアミドなどの非環状のN-ビニルアミド化合物、N‐アリル‐N‐メチルホルムアミド、アリル尿素などの非環状のN-アリルアミド化合物、1-(2-プロペニル)-2-ピロリドンなどのN-アリルラクタム化合物、(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド等のアクリルアミド化合物が挙げられる。
【0118】
上記アミド結合を有するフッ素非含有モノマーとしては、また、
【化12】
(式中、R及びRは独立にH又は炭素数1~10のアルキル基)で示される化合物、
【化13】
(式中、Rは独立にH又は炭素数1~10のアルキル基)で示される化合物等も挙げられる。
【0119】
上記アミド結合を有するフッ素非含有モノマーとしては、なかでも、N-ビニルラクタム化合物又は非環状のN-ビニルアミド化合物が好ましく、N-ビニル-β-プロピオラクタム、N-ビニル-2-ピロリドン、N-ビニル-γ-バレロラクタム、N-ビニル-2-ピペリドン、及び、N-ビニル-ヘプトラクタムからなる群より選択される少なくとも1種がより好ましく、N-ビニル-2-ピロリドン、及び、N-ビニル-2-ピペリドンからなる群より選択される少なくとも1種が更に好ましく、N-ビニル-2-ピロリドンが特に好ましい。
【0120】
上記Rとしては、-OCOCH、-H、-COOCH、-NH(C)、-C、-CH又は、下記式(3):
【化14】
で示される基であることが好ましく、-OCOCH、-H、-COOCH又は上記式(3)で示される基であることがより好ましく、-OCOCH、-H又は、上記式(3)で示される基であることが更に好ましい。
【0121】
一般式(2)で示されるモノマーとしては、ビニルエステル類、(メタ)アクリル酸エステル、アルケン、アミド結合を有するフッ素非含有モノマー、フルオロアルキルエチレン又は含フッ素アクリレートモノマーが好ましく、ビニルエステル類、(メタ)アクリル酸エステル、アルケン、N-アクリルアミド化合物、N-ビニルアミド化合物、N-ビニルラクタム化合物、フルオロアルキルエチレン又は含フッ素アクリレートモノマーがより好ましく、酢酸ビニル、N-ビニルピロリドン、エチレン、アクリル酸メチル、N-イソプロピルアクリルアミド又はCH=CH-Cが更に好ましく、酢酸ビニル、N-ビニルピロリドン、エチレン又はアクリル酸メチルが特に好ましい。
【0122】
一般式(1)又は一般式(2)で示されるモノマーとしては、特に、HFP、CTFE、VDF、フッ化ビニル、トリフルオロエチレン、フルオロアルキルビニルエーテル、トリフルオロプロピレン、ペンタフルオロプロピレン、トリフルオロブテン、テトラフルオロイソブテン、ヘキサフルオロイソブテン、ビニルエステル類、(メタ)アクリル酸エステル、アルケン、アミド結合を有するフッ素非含有モノマー、フルオロアルキルエチレン及び含フッ素アクリレートモノマーからなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、HFP、CTFE、VDF、フルオロアルキルビニルエーテル、トリフルオロプロピレン、ペンタフルオロプロピレン、トリフルオロブテン、テトラフルオロイソブテン、ヘキサフルオロイソブテン、ビニルエステル類、(メタ)アクリル酸エステル、N-アクリルアミド化合物、アルケン、N-ビニルアミド化合物、N-ビニルラクタム化合物、フルオロアルキルエチレン及び含フッ素アクリレートモノマーからなる群より選択される少なくとも1種がより好ましく、HFP、VDF、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)、パーフルオロフッ化スルホニルビニルエーテル、エチレン、N-ビニルアミド化合物、N-ビニルラクタム化合物、及び、酢酸ビニルからなる群より選択される少なくとも1種が更に好ましく、HFP、VDF、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)、パーフルオロフッ化スルホニルビニルエーテル、エチレン、N-ビニルアミド化合物、N-ビニルピロリドン、及び、酢酸ビニルからなる群より選択される少なくとも1種が特に好ましい。
【0123】
本開示の第1の製造方法によって得られるフルオロポリマーとしては、例えば、後述する本開示の第1のフルオロポリマー、本開示の第2のフルオロポリマー等が挙げられる。
【0124】
本開示のフルオロポリマーは、下記式:
Af-CRP
(式中、Afはテトラフルオロエチレンに由来する単量体単位のみからなるフルオロポリマーセグメント、又は、テトラフルオロエチレンに由来する単量体単位と、一般式(1)及び/又は一般式(2)で示されるモノマーに由来する単量体単位とがランダム共重合したフルオロポリマーセグメントであり、テトラフルオロエチレンに基づく重合単位が50~100モル%である。CRPは、下記式(CRP1)~(CRP5)のいずれかである。)で表されるフルオロポリマー(以下「本開示の第1のフルオロポリマー」ともいう)である。
式(CRP1):
-SC(S)Zc11
(式中、Zc11はアルキル基又はアリール基である。)
式(CRP2):
―SC(S)SZc12
(式中、Zc12はアルキル基又はアリール基である。)
式(CRP3):
-SC(S)SRc11
(式中、Rc11は1価の有機基である。)
式(CRP4):
-SC(S)NZc13
(式中、Zc13は、(i)互いに独立に、アルキル基、アリール基又は4-ピリジル基であるか、又は、(ii)互いに結合して式中のN原子とともに複素環を形成する基である。)
式(CRP5):
-SC(S)OZc14
(式中、Zc14はアルキル基又はアリール基である。)
【0125】
従来、テトラフルオロエチレン系の重合体においてブロック共重合することは困難であった。本開示の第1のフルオロポリマーは、上記特定の基を末端に有することによって、ブロック共重合が可能となる。従って、本開示の第1のフルオロポリマーは、ブロック共重合体を製造するための中間体として有用である。
また、本開示の第1のフルオロポリマーは、中間体だけでなく、後述するような用途にそのまま使用することもできる。
【0126】
式(CRP1)中のZc11としては、上述した式(c1-1)中のZc1と同様のものが挙げられる。
式(CRP2)中のZc12としては、上述した式(c1-2)中のZc2と同様のものが挙げられる。
式(CRP3)中のRc11としては、上述した式(c1-2’)中のRと同様のものが挙げられる。
式(CRP4)中のZc13としては、上述した式(c1-3)中のZc3及びZc4と同様のものが挙げられる。
式(CRP5)中のZc14としては、上述した式(c1-4)中のZc5と同様のものが挙げられる。
上記CRPとしては、重合速度の観点から、CRP5が好ましい。
【0127】
上記式(CRP1)~(CRP5)は、本開示の第1の製造方法において記載した連鎖移動剤に由来する基である。言い換えると、上記式(CRP1)~(CRP5)は、上記連鎖移動剤の構造の少なくとも一部がフルオロポリマー(好ましくはフルオロポリマーの主鎖末端)に組み込まれた部分である。
【0128】
本開示の第1のフルオロポリマーは、テトラフルオロエチレンに基づく重合単位が50~100モル%である。テトラフルオロエチレンに基づく重合単位は51~100モル%が好ましく、55~100モル%がより好ましく、60~100モル%が更に好ましく、65~100モル%が特に好ましい。
【0129】
上記Afは、テトラフルオロエチレンに由来する単量体単位のみからなるフルオロポリマーセグメントであることが1つの態様である。
【0130】
上記Afがテトラフルオロエチレンに由来する単量体単位のみからなるフルオロポリマーセグメントであるフルオロポリマーは、いわゆる、PTFEである。以下、PTFEについて説明する。
【0131】
本開示の製造方法により得られるPTFEは低分子量PTFEであってもよいし、高分子量PTFEであってもよい。
分子量60万以下の低分子量PTFE(PTFEマイクロパウダーとも呼ばれる)は、化学的安定性に優れ、表面エネルギーが極めて低いことに加え、フィブリル化が生じにくいので、滑り性や塗膜表面の質感を向上させること等を目的とした添加剤として、プラスチック、インク、化粧品、塗料、グリース、オフィスオートメーション機器部材、トナー等の製造に好適である(例えば、特開平10-147617号公報参照。)。
上記重合により得られる低分子量PTFEを粉末として用いる場合、PTFEの分散液を凝析させることで粉末粒子とすることができる。
【0132】
高分子量PTFEとは、非溶融加工性及びフィブリル化性を有するPTFEを意味する。他方、低分子量PTFEとは、溶融加工性を有し、フィブリル化性を有しないPTFEを意味する。
上記非溶融加工性とは、ASTM D-1238及びD-2116に準拠して、結晶化融点より高い温度でメルトフローレートを測定できない性質を意味する。
フィブリル化性の有無は、TFEの重合体から作られた粉末である「高分子量PTFE粉末」を成形する代表的な方法である「ペースト押出し」で判断できる。通常、ペースト押出しが可能であるのは、高分子量のPTFEがフィブリル化性を有するからである。ペースト押出しで得られた未焼成の成形物に実質的な強度や伸びがない場合、例えば伸びが0%で引っ張ると切れるような場合はフィブリル化性がないとみなすことができる。
上記高分子量PTFEは、標準比重(SSG)が2.130~2.280であることが好ましい。上記標準比重は、ASTM D4895-89に準拠して成形されたサンプルを用い、ASTM D-792に準拠した水置換法により測定する。「高分子量」とは、上記標準比重が上記の範囲内にあることを意味する。
上記低分子量PTFEは、380℃における複素粘度が1×10~7×10Pa・sである。「低分子量」とは、上記複素粘度が上記の範囲内にあることを意味する。
【0133】
上記高分子量PTFEは、上記低分子量PTFEよりも複素粘度が極めて高く、その正確な複素粘度を測定することは困難である。他方、上記低分子量PTFEの複素粘度は測定可能であるが、上記低分子量PTFEからは、標準比重の測定に使用可能な成形品を得ることが難しく、その正確な標準比重を測定することが困難である。従って、上記高分子量PTFEの分子量の指標として、標準比重を採用し、上記低分子量PTFEの分子量の指標として、複素粘度を採用する。なお、上記高分子量PTFE及び上記低分子量PTFEのいずれについても、直接に分子量を特定できる測定方法は知られていない。
【0134】
上記高分子量PTFEは、ピーク温度が333~347℃であることが好ましく、335~345℃であることがより好ましい。上記低分子量PTFEは、ピーク温度が322~333℃であることが好ましく、324~332℃であることがより好ましい。上記ピーク温度は、300℃以上の温度に加熱した履歴がないPTFEについて示差走査熱量計〔DSC〕を用いて10℃/分の速度で昇温したときの融解熱曲線における極大値に対応する温度である。
【0135】
上記高分子量PTFEは、300℃以上の温度に加熱した履歴がないPTFEについて示差走査熱量計〔DSC〕を用いて10℃/分の速度で昇温したときの融解熱曲線において、333~347℃の範囲に少なくとも1つ以上の吸熱ピークが現れ、上記融解熱曲線から算出される290~350℃の融解熱量が62mJ/mg以上であることが好ましい。
【0136】
上記PTFEは水性分散液やファインパウダーとして用いることができる。
PTFEのファインパウダーは、成形用として好ましく、好適な用途としては、航空機及び自動車等の油圧系、燃料系のチューブ等が挙げられ、薬液、蒸気等のフレキシブルホース、電線被覆用途等が挙げられる。
【0137】
PTFEの水性分散液は、また、非イオン性界面活性剤を加えることにより、安定化して更に濃縮し、目的に応じ、有機又は無機の充填剤を加えた組成物として各種用途に使用することも好ましい。上記組成物は、金属又はセラッミクスからなる基材上に被覆することにより、非粘着性と低摩擦係数を有し、光沢や平滑性、耐摩耗性、耐候性及び耐熱性に優れた塗膜表面とすることができ、ロールや調理器具等の塗装、ガラスクロスの含浸加工等に適している。
上記水性分散液からPTFEのオルガノゾルを調製することもできる。上記オルガノゾルは、上記PTFE及び有機溶剤を含むことができ、上記有機溶剤としては、エーテル系溶媒、ケトン系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤、エステル系溶剤、脂肪族炭化水素系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤、ハロゲン化炭化水素系溶剤が挙げられ、N-メチル-2-ピロリドン、ジメチルアセトアミド等を好適に使用できる。上記オルガノゾルの調製は、例えば、国際公開第2012/002038号に記載の方法により実施できる。
【0138】
上記PTFEの水性分散液又は上記PTFEのファインパウダーは、加工助剤として使用することも好ましい。加工助剤として使用する場合、上記水性分散液又は上記ファインパウダーをホストポリマー等に混合することにより、ホストポリマー溶融加工時の溶融強度向上や、得られたポリマーの機械的強度、電気特性、難燃性、燃焼時の滴下防止性、摺動性を向上することができる。
【0139】
上記PTFEの水性分散液又は上記PTFEファインパウダーは、電池用結着剤、防塵用途として使用することも好ましい。
【0140】
本開示の製造方法で得られたPTFEファインパウダーから、未焼成テープ(生テープ)を得ることもできる。
【0141】
上記PTFEの水性分散液又は上記PTFEファインパウダーは、また、PTFE以外の樹脂と複合させてから加工助剤として使用することも好ましい。上記水性分散液又は上記ファインパウダーは、例えば、特開平11-49912号公報、米国特許第5804654号明細書、特開平11-29679号公報、特開2003-2980号公報に記載されたPTFEの原料として好適である。上記水性分散液又は上記ファインパウダーを使用した加工助剤は、上記各刊行物に記載された加工助剤に比べてもなんら劣るものではない。
【0142】
上記PTFEの水性分散液は、溶融加工性フッ素樹脂の水性分散液と混合して凝析させることにより、共凝析粉末とすることも好ましい。上記共凝析粉末は、加工助剤として好適である。
上記溶融加工性フッ素樹脂としては、例えば、FEP、PFA、ETFE、エチレン/TFE/HFP共重合体[EFEP]等が挙げられるが、中でもFEPが好ましい。
上記水性分散液は、上記溶融加工性フッ素樹脂を含むことも好ましい。上記溶融加工性フッ素樹脂としては、例えば、FEP、PFA、ETFE、EFEP等が挙げられる。上記溶融加工性フッ素樹脂を含む上記水性分散液は、塗料として使用できる。上記溶融加工性フッ素樹脂は、上記PTFEの粒子同士を充分に融着させることができるので、造膜性を向上させ、得られる被膜に光沢を出すことができる。
上記共凝析粉末を添加するフッ素非含有樹脂は、パウダー状であってもよいし、ペレット状であってもよいし、エマルションであってもよい。上記添加は、各樹脂を充分に混合する点で、押出混練、ロール混練等の公知の方法により剪断力を与えながら行うことが好ましい。
【0143】
上記PTFEの水性分散液は、塵埃抑制処理剤として使用することも好ましい。上記塵埃抑制処理剤は、発塵性物質と混合し、該混合物に20~200℃の温度で圧縮-せん断作用を施すことによりPTFEをフィブリル化して発塵性物質の塵埃を抑制する方法、例えば特許第2827152号公報、特許第2538783号公報等の方法において、用いることができる。
上記PTFEの水性分散液は、例えば、国際公開第2007/004250号に記載の塵埃抑制処理剤組成物に好適に用いることができ、国際公開第2007/000812号に記載の塵埃抑制処理方法にも好適に用いることができる。
【0144】
上記塵埃抑制処理剤は、建材分野、土壌安定材分野、固化材分野、肥料分野、焼却灰及び有害物質の埋立処分分野、防爆分野、化粧品分野、猫砂に代表されるペット排泄用の砂等の塵埃抑制処理に好適に用いられる。
【0145】
上記PTFEの水性分散液は、分散紡糸法(Dispersion Spinning method)によりPTFE繊維を得る原料として使用することも好ましい。上記分散紡糸法とは、上記PTFEの水性分散液とマトリックス高分子の水性分散液とを混合し、当該混合物を押出加工して中間体繊維構造物を形成し、該中間体繊維構造物を焼成することによって上記マトリックス高分子を分解及びPTFE粒子の焼結を行ってPTFE繊維を得る方法である。
【0146】
重合により得られる高分子量PTFE粉末は、延伸性及び非溶融加工性を有し、延伸体(多孔体)の原料としても有用である。
この延伸体が膜である場合(PTFE延伸膜またはPTFE多孔膜)、公知のPTFE延伸方法によって延伸することができる。延伸することにより高分子量PTFEは容易にフィブリル化し、結節と繊維からなるPTFE多孔体(膜)となる。
好ましくは、シート状または棒状のペースト押出物を押出方向にロール延伸することで、一軸延伸膜を得ることができる。
更に、テンター等により幅方向に延伸して、二軸延伸膜も得ることができる。
延伸前に半焼成処理を行うことも好ましい。
【0147】
このPTFE延伸体は、高い空孔率を持つ多孔体であり、
エアフィルター、薬液フィルター等の各種精密濾過フィルターの濾材、高分子電解質膜の支持材等として好適に利用できる。
また、繊維分野、医療分野、エレクトロケミカル分野、シール材分野、空気濾過分野、換気/内圧調整分野、液濾過分野、一般消費材分野等で使用する製品の素材としても有用である。
以下に、具体的な用途を例示する。
【0148】
エレクトロケミカル分野
誘電材料プリプレグ、EMI遮蔽材料、伝熱材料等。より詳細には、プリント配線基板、電磁遮蔽シールド材、絶縁伝熱材料、絶縁材料等。
シール材分野
ガスケット、パッキン、ポンプダイアフラム、ポンプチューブ、航空機用シール材等。
【0149】
空気濾過分野
ULPAフィルター(半導体製造用)、HEPAフィルター(病院・半導体製造用)、円筒カートリッジフィルター(産業用)、バグフィルター(産業用)、耐熱バグフィルタ-(排ガス処理用)、耐熱プリーツフィルター(排ガス処理用)、SINBRANフィルター(産業用)、触媒フィルター(排ガス処理用)、吸着剤付フィルター(HDD組込み)、吸着剤付ベントフィルター(HDD組込み用)、ベントフィルター(HDD組込み用他)、掃除機用フィルター(掃除機用)、汎用複層フェルト材、GT用カートリッジフィルター(GT向け互換品用)、クーリングフィルター(電子機器筐体用)等。
【0150】
換気/内圧調整分野
凍結乾燥用の容器等の凍結乾燥用材料、電子回路やランプ向けの自動車用換気材料、容器キャップ向け等の容器用途、タブレット端末や携帯電話端末等の小型端末を含む電子機器向け等の保護換気用途、医療用換気用途等。
【0151】
液濾過分野
半導体液ろ過フィルター(半導体製造用)、親水性PTFEフィルター(半導体製造用)、化学薬品向けフィルター(薬液処理用)、純水製造ライン用フィルター(純水製造用)、逆洗型液ろ過フィルター(産業排水処理用)等。
【0152】
一般消費材分野
衣類、ケーブルガイド(バイク向け可動ワイヤ)、バイク用衣服、キャストライナー(医療サポーター)、掃除機フィルター、バグパイプ(楽器)、ケーブル(ギター用信号ケーブル等)、弦(弦楽器用)等。
【0153】
繊維分野
PTFE繊維(繊維材料)、ミシン糸(テキスタイル)、織糸(テキスタイル)、ロープ等。
【0154】
医療分野
体内埋設物(延伸品)、人工血管、カテーテル、一般手術(組織補強材料)、頭頸部製品(硬膜代替)、口内健康(組織再生医療)、整形外科(包帯)等。
【0155】
上記Afがテトラフルオロエチレンに由来する単量体単位のみからなるフルオロポリマーセグメントであるフルオロポリマーは、本開示の第1の製造方法において、工程(i)を含む方法により製造することができる。
【0156】
上記Afは、テトラフルオロエチレンに由来する単量体単位と、一般式(1)及び/又は一般式(2)で示されるモノマーに由来する単量体単位とがランダム共重合したフルオロポリマーセグメントであることが1つの態様である。
上記一般式(1)で示されるモノマー及び/又は一般式(2)で示されるモノマーとしては、本開示の第1の製造方法において記載したものと同じである。
この場合、上記Afは、TFEに基づく重合単位が50モル%以上100モル%未満であることが好ましい。TFEに基づく重合単位は、51モル%以上が好ましく、55モル%以上がより好ましく、60モル%以上が更に好ましく、65モル%以上が特に好ましい。また、99モル%以下が好ましく、95モル%以下がより好ましく、90モル%以下が更に好ましい。
【0157】
上記AfがTFEに由来する単量体単位と、一般式(1)及び/又は一般式(2)で示されるモノマーに由来する単量体単位とがランダム共重合したフルオロポリマーセグメントである場合、上記フルオロポリマーは、TFEと、一般式(1)及び/又は一般式(2)で示されるモノマーとのコポリマーであり、例えば、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン-パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体(PFA)、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、TFE/VDF共重合体等の溶融加工性フッ素樹脂;テトラフルオロエチレン-プロピレンゴム(FEPM)等のフッ素ゴム;等が挙げられる。
【0158】
上記FEPの好ましい単量体組成(質量%)は、TFE:HFP=(60~95):(5~40)、より好ましくは(85~92):(8~15)である。上記FEPとしては、また、更に第3成分としてパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)類を用い、全単量体の0.1~2質量%である範囲内で変性させたものであってもよい。
【0159】
上記FEPは、例えば、電線、発泡電線、ケーブル、ワイヤ等の被覆材、チューブ、フィルム、シート、フィラメント等の種々の成形品の製造に供することができる。
【0160】
上記PFAの好ましい単量体組成(モル%)は、TFE:パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)=(90~99.7):(0.3~10)、より好ましくは(97~99):(1~3)である。上記パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)としては、式:CF=CFORf(式中、Rfは炭素数1~6のパーフルオロアルキル基)で表されるものを使用することが好ましい。
【0161】
上記PFAから種々の成形品を得ることができる。成形品の例をあげると、シート、フィルム、パッキン、丸棒、角棒、パイプ、チューブ、丸槽、角槽、タンク、ウェハーキャリア、ウェハーボックス、ビーカー、フィルターハウジング、流量計、ポンプ、バルブ、コック、コネクター、ナット、電線、耐熱電線などがある。これらのうち、特に薬液の不透過性が要求される各種の化学反応装置、半導体製造装置、さらには酸系またはアルカリ系の薬液供給装置などに使用するチューブ、パイプ、タンク、コネクターなどに好適に使用できる。
【0162】
更に、PFA単独で、又は、必要に応じて、ポリエーテルスルホン、ポリアミドイミド、ポリイミド、金属粉末等を加えて、有機溶媒中に溶解または分散させることで、プライマー組成物を得ることもできる。このプライマー組成物を金属表面に施し、かくして形成されたプライマー層上に溶融加工性フッ素樹脂組成物を施し、プライマー層と共に溶融加工性フッ素樹脂組成物層を焼成することからなる金属表面へのフッ素樹脂の被覆方法にも用いることができる。
【0163】
上記ETFEの好ましい単量体組成(モル%)は、TFE:エチレン=(50~99):(50~1)である。上記ETFEとしては、また、更に第3モノマーを用い、全単量体の0~20質量%である範囲内で変性させたものであってもよい。好ましくは、TFE:エチレン:第3モノマー=(63~94):(27~2):(1~10)である。上記第3モノマーとしては、パーフルオロブチルエチレン、パーフルオロブチルエチレン、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8-トリデカフルオロオクタ-1-エン、2,3,3,4,4,5,5-ヘプタフルオロ-1-ペンテン(CH=CFCFCFCFH)、2-トリフルオロメチル-3,3,3-トリフルオロプロペン((CFC=CH)が好ましい。
【0164】
上記ETFEは、押出成形してシートにすることもできる。例えば、ETFE粉末、またはETFEのペレットを溶融させ、ダイから連続的に押し出し、冷却して得られるシート状の成形品にすることができる。ETFEには添加剤が添加されていてもよい。
添加剤としては、公知のものを適宜用いることができる。具体例としては、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、赤外線吸収剤、難燃剤、難燃フィラー、有機顔料、無機顔料、染料等が挙げられる。耐候性が優れる点からは無機系添加剤が好ましい。
上記ETFEのシートにおける添加剤の含有量は、ETFEのシートの総質量に対し、20質量%以下が好ましく、10質量%以下が特に好ましい。
上記ETFEのシートは、機械的強度および外観に優れることから、膜構造建築物(運動施設、園芸施設、アトリウム等)用の膜材(屋根材、天井材、外壁材、内壁材、被覆材等)として好適である。
また、膜構造建築物の膜材だけではなく、たとえば、屋外使用板材(防音壁、防風フェンス、越波柵、車庫天蓋、ショッピングモール、歩行路壁、屋根材)、ガラス飛散防止フィルム、耐熱・耐水シート、建材等(テント倉庫のテント材、日よけ用膜材、明かり取り用の部分屋根材、ガラスに替わる窓材、防炎仕切り用膜材、カーテン、外壁補強、防水膜、防煙膜、不燃透明仕切り、道路補強、インテリア(照明、壁面、ブランド等)、エクステリア(テント、看板等)等)、生活レジャー用品(釣りざお、ラケット、ゴルフクラブ、映写幕等)、自動車用材料(幌、制振材、ボディ等)、航空機材料、船舶材料、家電外装、タンク、容器内壁、フィルタ、工事用膜材、電子材料(プリント基板、配線基板、絶縁膜、離型膜等)、太陽電池モジュールの表面材料、太陽熱発電用のミラー保護材、ソーラー温水器の表面材等に有用である。
【0165】
上記TFE/VDF共重合体の好ましい単量体組成(モル%)は、TFE:VDF=(50~90):(10~50)である。TFE/VDF共重合体としては、また、更に第3モノマーを用い、全単量体の0~50モル%である範囲内で変性させたものであってもよい。好ましくは、TFE:エチレン:第3モノマー=(50~85):(10~44.9):(0.1~10)である。
上記第3モノマーとしては、
式: CX1112=CX13(CX1415n1116
(式中、X11~X16は同一又は異なってH、F又はClを表し、n11は0~8の整数を表す。但し、TFE及びVDFを除く。)で示されるモノマー、又は、
式: CX2122=CX23-O(CX2425n2126
(式中、X21~X26は同一又は異なってH、F又はClを表し、n21は0~8の整数を表す。)で示されるモノマーが好ましい。
また、第3モノマーはフッ素非含有エチレン性単量体でもよい。上記フッ素非含有エチレン性単量体は、耐熱性や耐薬品性を維持する点で、炭素数6以下のエチレン性単量体から選ばれることが好ましい。例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、2-ブテン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アルキルビニルエーテル(メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル等)、マレイン酸、イタコン酸、3-ブテン酸、4-ペンテン酸ビニルスルホン酸、アクリル酸、メタクリル酸等が挙げられる。
得られたTFE/VDF共重合体を、アンモニア水、アンモニアガス又はアンモニアを生成しうる窒素化合物と接触させることによりアミド化処理してもよい。
【0166】
上記TFE/VDF共重合体は、紡糸延伸方法によりTFE/VDF共重合体繊維を得る原料として使用することも好ましい。上記紡糸延伸方法とは、TFE/VDF共重合体を溶融紡糸してから冷却固化して未延伸糸を得た後、該未延伸糸を加熱筒状体中に走行させて延伸することによりTFE/VDF共重合体繊維を得る方法である。
【0167】
上記TFE/VDF共重合体を、有機溶剤に溶解させて、上記TFE/VDF共重合体の溶液を得ることもできる。上記有機溶剤としては、例えば、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド等の含窒素系有機溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶剤;更に、それらの混合溶剤等の低沸点の汎用有機溶剤を挙げることができる。上記溶液は、電池用結着剤として使用できる。
【0168】
上記TFE/VDF共重合体の水性分散液をポリオレフィン樹脂からなる多孔性基材上にコーティングし複合多孔膜として使用することも好ましい。水性分散液に無機粒子、及びまたは有機系粒子を分散させ、多孔性基材上にコーティングし複合多孔膜として使用することも好ましい。このようにして得られた複合多孔膜はリチウム二次電池のセパレーターなどの使用することができる。
【0169】
上記溶融加工性フッ素樹脂の粉末は、粉体塗料として好適に利用できる。上記溶融加工性フッ素樹脂粉末からなる粉体塗料を基材に適用すると、表面が平滑な皮膜を得ることができる。平均粒径が1μm以上100μm未満である溶融加工性フッ素樹脂粉末は、特に静電塗装に使用する粉体塗料として好適であり、平均粒径が100μm以上1000μm以下である溶融加工性フッ素樹脂粉末は、特に回転塗装又は回転成形に使用する粉体塗料として好適である。
上記溶融加工性フッ素樹脂粉末は、上述した本開示の製造方法で得られた溶融加工性フッ素樹脂を乾燥させて粉体化することによって粉末を得る方法により製造できる。
【0170】
上記フッ素ゴムとしては、部分フッ素化ゴムであってもよいし、パーフルオロゴムであってもよい。
部分フッ素化ゴムとしては、テトラフルオロエチレン(TFE)/プロピレン(Pr)系フッ素ゴム、テトラフルオロエチレン(TFE)/プロピレン/ビニリデンフルオライド(VdF)系フッ素ゴムからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0171】
上記テトラフルオロエチレン/プロピレン系フッ素ゴムは、テトラフルオロエチレン45~70モル%、プロピレン55~30モル%、及び、架橋部位を与えるフルオロモノマー0~5モル%からなる共重合体であることが好ましい。
【0172】
上記フッ素ゴムは、パーフルオロゴムであってもよい。上記パーフルオロゴムとしては、TFEを含むパーフルオロゴム、例えばTFE/一般式(160)、(130)又は(140)で表されるフルオロモノマー共重合体及びTFE/一般式(160)、(130)又は(140)で表されるフルオロモノマー/架橋部位を与えるモノマー共重合体からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
【0173】
その組成は、TFE/PMVE共重合体の場合、好ましくは、50~90/10~50(モル%)であり、より好ましくは、55~80/20~45であり、更に好ましくは、55~70/30~45である。
【0174】
TFE/PMVE/架橋部位を与えるモノマー共重合体の場合、好ましくは、50~89.9/10~49.9/0.01~4(モル%)であり、より好ましくは、55~77.9/20~49.9/0.1~3.5であり、更に好ましくは、55~69.8/30~44.8/0.2~3である。
【0175】
TFE/炭素数が4~12の一般式(160)、(130)又は(140)で表されるフルオロモノマー共重合体の場合、好ましくは、50~90/10~50(モル%)であり、より好ましくは、60~88/12~40であり、更に好ましくは、65~85/15~35である。
【0176】
TFE/炭素数が4~12の一般式(160)、(130)又は(140)で表されるフルオロモノマー/架橋部位を与えるモノマー共重合体の場合、好ましくは、50~89.9/10~49.9/0.01~4(モル%)であり、より好ましくは、60~87.9/12~39.9/0.1~3.5であり、更に好ましくは、65~84.8/15~34.8/0.2~3である。
【0177】
上記架橋部位を与えるフルオロモノマーとしては、CF=CFOCFCF(CF)OCFCFCN、CF=CFOCFCF(CF)OCFCFCOOH、CF=CFOCFCF(CF)OCFCFCHI、CF=CFOCFCFCHI、CH=CFCFOCF(CF)CFOCF(CF)CN、CH=CFCFOCF(CF)CFOCF(CF)COOH、CH=CFCFOCF(CF)CFOCF(CF)CHOH、CH=CHCFCFI、CH=CH(CFCH=CH、CH=CH(CFCH=CH、及び、CF=CFO(CFCNからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、CF=CFOCFCF(CF)OCFCFCN及びCF=CFOCFCFCHIからなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましい。
【0178】
これらの組成の範囲を外れると、ゴム弾性体としての性質が失われ、樹脂に近い性質となる傾向がある。
【0179】
上記パーフルオロゴムとしては、TFE/一般式(140)で表されるフルオロモノマー/架橋部位を与えるフルオロモノマー共重合体、TFE/一般式(140)で表されるパーフルオロビニルエーテル共重合体、TFE/一般式(160)で表されるフルオロモノマー共重合体、及び、TFE/一般式(160)で表されるフルオロモノマー/架橋部位を与えるモノマー共重合体からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0180】
上記パーフルオロゴムとしては、国際公開第97/24381号、特公昭61-57324号公報、特公平4-81608号公報、特公平5-13961号公報等に記載されているパーフルオロゴムも挙げることができる。
【0181】
上記フッ素ゴムは、高温における圧縮永久歪みに優れる点から、ガラス転移温度が-70℃以上であることが好ましく、-60℃以上であることがより好ましく、-50℃以上であることが更に好ましい。また、耐寒性が良好であるという点から、5℃以下であることが好ましく、0℃以下であることがより好ましく、-3℃以下であることが更に好ましい。
【0182】
上記ガラス転移温度は、示差走査熱量計(メトラー・トレド社製、DSC822e)を用い、試料10mgを10℃/minで昇温することによりDSC曲線を得て、DSC曲線の二次転移前後のベースラインの延長線と、DSC曲線の変曲点における接線との2つの交点の中点を示す温度として求めることができる。
【0183】
上記フッ素ゴムは、耐熱性が良好な点で、170℃におけるムーニー粘度ML(1+20)が30以上であることが好ましく、40以上であることがより好ましく、50以上であることが更に好ましい。また、加工性が良好な点で、150以下であることが好ましく、120以下であることがより好ましく、110以下であることが更に好ましい。
【0184】
上記フッ素ゴムは、耐熱性が良好な点で、140℃におけるムーニー粘度ML(1+20)が30以上であることが好ましく、40以上であることがより好ましく、50以上であることが更に好ましい。また、加工性が良好な点で、180以下であることが好ましく、150以下であることがより好ましく、110以下であることが更に好ましい。
【0185】
上記フッ素ゴムは、耐熱性が良好な点で、100℃におけるムーニー粘度ML(1+10)が10以上であることが好ましく、20以上であることがより好ましく、30以上であることが更に好ましい。また、加工性が良好な点で、120以下であることが好ましく、100以下であることがより好ましく、80以下であることが更に好ましい。
【0186】
上記ムーニー粘度は、ALPHA TECHNOLOGIES社製 ムーニー粘度計MV2000E型を用いて、170℃又は140℃、100℃において、JIS K6300に従い測定することができる。
【0187】
上記フッ素ゴムは、硬化剤、充填剤等を加え、フッ素ゴム組成物に加工することができる。
【0188】
上記硬化剤としては、ポリオール、ポリアミン、有機過酸化物、有機スズ、ビス(アミノフェノール)テトラアミン、又は、ビス(チオアミノフェノール)等が挙げられる。
【0189】
上記フッ素ゴム組成物は、上述のフッ素ゴムからなるものであるので、乳化剤を含有せず、成形加工時に架橋し易い点で優れている。
【0190】
上記フッ素ゴムを用いて成形加工することによりフッ素ゴム成形体を得ることができる。上記成形加工する方法としては、特に限定されず、上述の硬化剤を用いて行う公知の方法が挙げられる。
【0191】
上記フッ素ゴム成形体は、シール、ガスケット、電線被覆、ホース、チューブ、積層体、アクセサリー等として好適であり、特に半導体製造装置用部品、自動車部品、等に好適である。
【0192】
上記工程(ii)で得られるフルオロポリマーは、99.0質量%以上のTFEに由来する単量体単位と、1.0質量%以下の一般式(1)及び/又は一般式(2)で示されるモノマーに由来する単量体単位とを含む変性PTFEであってもよい。
この場合、上記一般式(1)及び一般式(2)で示されるモノマーの合計量は、工程(ii)で得られるフルオロポリマーに対して、0.00001~1.0質量%の範囲であることが好ましい。上記合計量の下限としては、0.0001質量%がより好ましく、0.001質量%が更に好ましく、0.005質量%が更により好ましく、0.009質量%が特に好ましい。上限としては、0.90質量%が好ましく、0.50質量%がより好ましく、0.40質量%が更に好ましく、0.30質量%が更により好ましく、0.10質量%が殊更に好ましい。
【0193】
上記Afが、テトラフルオロエチレンに由来する単量体単位と、一般式(1)及び/又は一般式(2)で示されるモノマーに由来する単量体単位とがランダム共重合したフルオロポリマーセグメントであるフルオロポリマーは、本開示の第1の製造方法において、工程(ii)を含む方法により製造することができる。
【0194】
本開示のフルオロポリマーは、
Bf-CRP
(式中、Bfは、テトラフルオロエチレンに由来する単量体単位のみからなるフルオロポリマーセグメントである。CRPは、下記式(CRP1)~(CRP5)のいずれかである。)で表されるものである(以下「本開示の第2のフルオロポリマー」ともいう)。
式(CRP1):
-SC(S)Zc11
(式中、Zc11はアルキル基又はアリール基である。)
式(CRP2):
―SC(S)SZc12
(式中、Zc12はアルキル基又はアリール基である。)
式(CRP3):
-SC(S)SRc11
(式中、Rc11は1価の有機基である。)
式(CRP4):
-SC(S)NZc13
(式中、Zc13は、(i)互いに独立に、アルキル基、アリール基又は4-ピリジル基であるか、又は、(ii)互いに結合して式中のN原子とともに複素環を形成する基である。)
式(CRP5):
-SC(S)OZc14
(式中、Zc14はアルキル基又はアリール基である。)
【0195】
従来、テトラフルオロエチレン系の重合体においてブロック共重合することは困難であった。本開示の第2のフルオロポリマーは、上記特定の基を末端に有することによって、ブロック共重合が可能となる。従って、本開示の第2のフルオロポリマーは、ブロック共重合体を製造するための中間体として有用である。
【0196】
式(CRP1)中のZc11としては、上述した式(c1-1)中のZc1と同様のものが挙げられる。
式(CRP2)中のZc12としては、上述した式(c1-2)中のZc2と同様のものが挙げられる。
式(CRP3)中のRc11としては、上述した式(c1-2’)中のRと同様のものが挙げられる。
式(CRP4)中のZc13としては、上述した式(c1-3)中のZc3及びZc4と同様のものが挙げられる。
式(CRP5)中のZc14としては、上述した式(c1-4)中のZc5と同様のものが挙げられる。
上記CRPとしては、重合速度の観点から、CRP5が好ましい。
【0197】
上記式(CRP1)~(CRP5)は、本開示の第1の製造方法において記載した連鎖移動剤に由来する基である。言い換えると、上記式(CRP1)~(CRP5)は、上記連鎖移動剤の構造の少なくとも一部がフルオロポリマー(好ましくはフルオロポリマーの主鎖末端)に組み込まれた部分である。
【0198】
上記Bfは、テトラフルオロエチレンに由来する単量体単位のみからなるフルオロポリマーセグメントである。本開示の第2のフルオロポリマーは、いわゆるPTFEであり、本開示の第1のフルオロポリマーについて記載したPTFEの特徴を全て適用できる。
【0199】
本開示の第2のフルオロポリマーは、本開示の第1の製造方法において、工程(i)を含む方法により製造することができる。
【0200】
本開示の製造方法はまた、溶液重合又は分散重合によりフルオロポリマーを製造する方法であって、開始剤、連鎖移動剤および溶媒の存在下に、(iii)テトラフルオロエチレンを単独重合し、その後、下記一般式(1)及び/又は一般式(2)で示される単量体をブロック共重合する工程、又は、(iv)下記一般式(1)及び/又は一般式(2)を重合し、その後、テトラフルオロエチレンをブロック共重合する工程、を含み、前記連鎖移動剤はジチオエステル化合物、ジチオカルバメート化合物、トリチオカーボネート化合物及びキサンテート化合物からなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とするフルオロポリマーの製造方法(以下「本開示の第2の製造方法」ともいう)。
一般式(1):
CF=CR
(式中、Rは、H又はF;Rは-Cl、-R、-COOR、-OCOR、-CONR 、-CN、-COR、-Rf;R、R、R、R及びRは、同一又は異なって、H又は置換基;Rfは、同一又は異なって、置換基を有していてもよく、炭素原子間に酸素原子を含んでいてもよい、含フッ素アルキル基、含フッ素ビニル基又は含フッ素アルコキシ基;R及びRは互いに結合して環を形成してもよい)
一般式(2):
CH=CR
(式中、Rは、R、CFまたはF;Rは-Cl、-R、-COOR、-OCOR、-CONR 、-CN、-COR、Rf;R及びRは、同一又は異なって、H、又は、置換基を有していてもよい炭化水素基又はヘテロ環基;R、R、R及びRは、同一又は異なって、H又は置換基;Rfは、同一又は異なって、置換基を有していてもよく、炭素原子間に酸素原子を含んでいてもよい、含フッ素アルキル基、含フッ素ビニル基又は含フッ素アルコキシ基;R及びRは互いに結合して環を形成してもよい)
【0201】
従来、テトラフルオロエチレン系の重合体においてブロック共重合することは困難であった。本開示の第2の製造方法は、重合方法として溶液重合又は分散重合を選択し、連鎖移動剤として特定の化合物を選択することによって、TFE系の重合体であってもブロック共重合が可能になることを見いだし、完成されたものである。本開示の第2の製造方法により、テトラフルオロエチレン系の重合体で、ブロック共重合体を製造することができる。
【0202】
本開示の第2の製造方法において、開始剤、連鎖移動剤、溶媒、一般式(1)又は一般式(2)で示される単量体としては、本開示の第1の製造方法に記載したものと同じである。
【0203】
上記工程(iii)において、テトラフルオロエチレンを単独重合する方法は、本開示の第1の製造方法の工程(i)と同様に行うことができる。上記連鎖移動剤の存在下でテトラフルオロエチレンを単独重合する方法によって、上述した本開示の第1及び第2のフルオロポリマーのように、末端にCRPを有するポリマーが得られ、これにより、一般式(1)及び/又は一般式(2)で示される単量体をブロック共重合することができる。上記工程(iii)は、開始剤、連鎖移動剤および溶媒の存在下に、テトラフルオロエチレンの単独重合し、その後、一般式(1)及び/又は一般式(2)で示される単量体をブロック共重合する工程であって、上記単独重合を開始剤、連鎖移動剤および溶媒の存在下に行えばよく、上記ブロック共重合は開始剤、連鎖移動剤および溶媒の存在下に行わなくてもよい。
【0204】
上記工程(iii)において、上記連鎖移動剤の添加量は用いる化合物の連鎖移動定数の大きさにより変わりうるが、テトラフルオロエチレンに対して、0.05~20モル%の範囲で使用されることが好ましい。好ましくは、0.06モル%以上であり、より好ましくは0.08モル%以上であり、更に好ましくは0.1モル%以上であり、また、好ましくは15モル%以下であり、より好ましくは10モル%以下であり、更に好ましくは6.5モル%以下である。
【0205】
上記工程(iii)において、上記開始剤の添加量は用いる化合物により変わりうるが、連鎖移動剤に対して5.0~1000モル%の範囲で使用される。好ましくは、6.0モル%以上であり、より好ましくは8.0モル%以上であり、更に好ましくは10モル%以上であり、また、好ましくは100モル%以下であり、より好ましくは50モル%以下であり、更に好ましくは30モル%以下である。
【0206】
上記工程(iii)において、上記単独重合と一般式(1)及び/又は一般式(2)で示される単量体のブロック共重合は連続的におこなってもよいし、上記単独重合で得られたポリマーを回収し、回収したポリマーを溶媒に添加してから一般式(1)及び/又は一般式(2)で示される単量体を添加して重合を行ってもよい。
【0207】
上記工程(iii)において、一般式(1)及び/又は一般式(2)で示される単量体のブロック共重合の温度は、ブロック共重合が可能な温度であれば特に限定されないが、例えば、0~150℃であってよい。好ましくは、20~130℃であり、より好ましくは、40~110℃である。
【0208】
上記工程(iii)において、一般式(1)及び/又は一般式(2)で示される単量体のブロック共重合の圧力は、ブロック共重合が可能な圧力であれば特に限定されないが、例えば、0~9.8MPaGであってよい。好ましくは、0.2~6.0MPaGであり、より好ましくは、0.5~3.0MPaGである。
【0209】
本開示の第2の製造方法において、上記工程(iii)は、溶媒に対する一般式(1)及び/又は一般式(2)で示されるモノマーの濃度が0.1~20モル/Lであることが好ましい。より好ましくは、0.3~18モル/Lであり、更に好ましくは、0.5~15モル/Lである。
【0210】
上記工程(iii)は1回行ってもよいし、2回以上行ってもよい。2回以上行うことによって複数のブロック(セグメント)を有するブロック共重合体を製造できる。
【0211】
上記工程(iv)は、開始剤、連鎖移動剤および溶媒の存在下に、下記一般式(1)及び/又は一般式(2)を重合し、その後、テトラフルオロエチレンをブロック共重合する工程である。上記工程(iv)において、上記一般式(1)及び/又は一般式(2)の重合を開始剤、連鎖移動剤および溶媒の存在下に行えばよく、上記ブロック共重合は開始剤、連鎖移動剤および溶媒の存在下に行わなくてもよい。
下記一般式(1)及び/又は一般式(2)の重合を上記連鎖移動剤の存在下で行うことにより、末端にCRPを有するポリマーが得られ、これにより、テトラフルオロエチレンをブロック共重合することができる。上記TFEのブロック共重合は、TFEのみをブロック共重合するものであることが好ましい。
【0212】
上記工程(iv)において、上記連鎖移動剤の添加量は用いる化合物の連鎖移動定数の大きさにより変わりうるが、一般式(1)及び一般式(2)で示される単量体の合計量に対して、テトラフルオロエチレンに対して、0.05~20モル%の範囲で使用されることが好ましい。より好ましくは、0.06モル%以上であり、更に好ましくは0.08モル%以上であり、更により好ましくは0.1モル%以上であり、また、より好ましくは15モル%以下であり、更に好ましくは10モル%以下であり、更により好ましくは6.5モル%以下である。
【0213】
上記工程(iv)において、上記開始剤の添加量は用いる化合物により変わりうるが、連鎖移動剤に対して5.0~1000モル%の範囲で使用される。好ましくは、6.0モル%以上であり、より好ましくは8.0モル%以上であり、更に好ましくは10モル%以上であり、また、好ましくは100モル%以下であり、より好ましくは50モル%以下であり、更に好ましくは30モル%以下である。
【0214】
上記工程(iv)において、一般式(1)及び/又は一般式(2)を重合する温度は、例えば、0~150℃であってよい。好ましくは、20~130℃であり、より好ましくは、40~110℃である。
【0215】
上記工程(iv)において、一般式(1)及び/又は一般式(2)を重合する圧力は、例えば、0~9.8MPaGであってよい。好ましくは、0.2~6.0MPaGであり、より好ましくは、0.5~3.0MPaGである。
【0216】
上記工程(iv)において、一般式(1)及び/又は一般式(2)の重合と、TFEのブロック共重合は連続的におこなってもよいし、一般式(1)及び/又は一般式(2)の重合で得られたポリマーを回収し、回収したポリマーを溶媒に添加してからTFEを添加して重合を行ってもよい。
【0217】
上記工程(iv)において、テトラフルオロエチレンをブロック共重合する温度は、例えば、10~150℃であってよい。好ましくは、20~130℃であり、より好ましくは、40~110℃である。
【0218】
上記工程(iv)において、テトラフルオロエチレンをブロック共重合する圧力は、例えば、0.05~5.0MPaGであってよい。好ましくは、0.2~3.5MPaGであり、より好ましくは、0.5~1.2MPaGである。
【0219】
上記工程(iv)は1回行ってもよいし、2回以上行ってもよい。2回以上行うことによって複数のブロック(セグメント)を有するブロック共重合体を製造できる。
【0220】
本開示の第2の製造方法によって得られるフルオロポリマーとしては、例えば、後述する本開示の第3のフルオロポリマー等が挙げられる。
【0221】
本開示のフルオロポリマーは、テトラフルオロエチレンに由来する単量体単位を含むセグメントAと、一般式(1)及び/又は一般式(2)に由来する単量体単位を含むセグメントBを含むフルオロポリマーであることを特徴とするフルオロポリマー(以下「本開示の第3のフルオロポリマー」とも記載する)。
一般式(1):
CF=CR
(式中、Rは、H又はF;Rは-Cl、-R、-COOR、-OCOR、-CONR 、-CN、-COR、-Rf;R、R、R、R及びRは、同一又は異なって、H又は置換基;Rfは、同一又は異なって、置換基を有していてもよく、炭素原子間に酸素原子を含んでいてもよい、含フッ素アルキル基、含フッ素ビニル基又は含フッ素アルコキシ基;R及びRは互いに結合して環を形成してもよい)
一般式(2):
CH=CR
(式中、Rは、R、CFまたはF;Rは-Cl、-R、-COOR、-OCOR、-CONR 、-CN、-COR、Rf;R及びRは、同一又は異なって、H、又は、置換基を有していてもよい炭化水素基又はヘテロ環基;R、R、R及びRは、同一又は異なって、H又は置換基;Rfは、同一又は異なって、置換基を有していてもよく、炭素原子間に酸素原子を含んでいてもよい、含フッ素アルキル基、含フッ素ビニル基又は含フッ素アルコキシ基;R及びRは互いに結合して環を形成してもよい)
【0222】
上記セグメントAは、TFEに由来する単量体単位を含むものである。セグメントAは、TFEに由来する単量体単位のみからなることが好ましい。上記セグメントAは、TFE単独重合体(PTFE)からなるポリマーセグメントであり、上述したPTFEの特徴を全て採用できる。
【0223】
セグメントBは、一般式(1)及び/又は一般式(2)に由来する単量体単位を含むものであればよいが、特に、HFP、CTFE、VDF、フッ化ビニル、トリフルオロエチレン、フルオロアルキルビニルエーテル、トリフルオロプロピレン、ペンタフルオロプロピレン、トリフルオロブテン、テトラフルオロイソブテン、ヘキサフルオロイソブテン、ビニルエステル類、(メタ)アクリル酸エステル、アルケン、アミド結合を有するフッ素非含有モノマー、フルオロアルキルエチレン及び含フッ素アクリレートモノマーからなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、HFP、CTFE、VDF、フルオロアルキルビニルエーテル、トリフルオロプロピレン、ペンタフルオロプロピレン、トリフルオロブテン、テトラフルオロイソブテン、ヘキサフルオロイソブテン、ビニルエステル類、(メタ)アクリル酸エステル、N-アクリルアミド化合物、アルケン、N-ビニルアミド化合物、N-ビニルラクタム化合物、フルオロアルキルエチレン及び含フッ素アクリレートモノマーからなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、HFP、VDF、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)、パーフルオロフッ化スルホニルビニルエーテル、エチレン、N-ビニルアミド化合物、N-ビニルラクタム化合物、及び、酢酸ビニルからなる群より選択される少なくとも1種が更に好ましく、HFP、VDF、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)、パーフルオロフッ化スルホニルビニルエーテル、エチレン、N-ビニルアミド化合物、N-ビニルピロリドン、及び、酢酸ビニルからなる群より選択される少なくとも1種が特に好ましい。
【0224】
上記セグメントBを構成する重合体としては、一般式(1)及び/又は一般式(2)で示されるモノマーに基づく重合単位を含むものであれば限定されないが、例えば、ポリ酢酸ビニル等のポリビニルエステル;ポリ(N-ビニルピロリドン)等のポリビニルアミド;PVDF等のポリフルオロオレフィン等が特に好ましい。
【0225】
本開示の第3のフルオロポリマーは、セグメントA及びセグメントBを含む。本開示の第3のフルオロポリマーは、下記式:
-A-L-B-
(式中、AはセグメントAであり、BはセグメントBであり、Lは連結基を表す。)の構造を含むことが好ましい。
上記Lは、単結合であってもよいし、2価の有機基であってもよい。Lにおける2価の有機基としては、アルキレン基、オキシアルキレン基等が挙げられる。
上記Lは単結合であることが好ましい。
本開示の第3のフルオロポリマーは、上記セグメントAとセグメントBが単結合により結合した-A-B-構造を含むことが好ましい。
セグメントAとセグメントBが単結合により結合しているとは、セグメントAの端部を構成する単量体単位(例えば、TFEに由来する単量体単位)と、セグメントBの端部を構成する単量体単位(例えば、一般式(1)及び/又は一般式(2)で示される単量体に由来する単量体単位)とが直接結合していることを意味する。このような構成は、本開示の第2の製造方法によって実現できる。
【0226】
本開示の第3のフルオロポリマーにおいて、-A-L-B-構造は少なくとも1つ存在すればよく、2以上あってもよいし、3以上あってもよい。すなわち、本開示の第3のフルオロポリマーは、少なくとも1つのセグメントAと少なくとも1つのセグメントBがL(好ましくは単結合)により結合していればよく、-A-L-B-が2回以上繰り返されたものであってよく、3回以上繰り返された構造を有するものであってもよい。例えば、-A-L-B-、-B-L-A-、-A-L-B-L-A-、-B-L-A-L-B-、-A-L-B-L-A-L-B-、-B-L-A-L-B-L-A-等の構成であってもよい。
【0227】
本開示の第3のフルオロポリマーは、上記セグメントAとセグメントBとの質量比(A/B)が99/1~1/99であってよい。
【0228】
本開示の第3のフルオロポリマーは、TFEに由来する単量体に基づく単量体単位を含むセグメントAと、一般式(1)及び/又は一般式(2)で示される単量体に基づく単量体単位を含むセグメントBの両方の性質を併せ持つことができる。このようなフルオロポリマーは、例えば、フッ素樹脂を複合するための相溶化剤、接着剤としての用途が期待される。
また、本開示の第3のフルオロポリマーは、本開示の第1及び第2のフルオロポリマーにおいて記載した各フルオロポリマーの用途にも採用できる。
【実施例
【0229】
次に実施例を挙げて本開示を更に詳しく説明するが、本開示はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0230】
実施例の各数値は以下の方法により測定した。
H-NMR測定(溶液)条件:400MHz(テトラメチルシラン=0ppm)
19F-NMR測定(溶液)条件:400MHz(トリクロロフルオロメタン=0ppm)
19F-NMR測定(固体)条件:282MHz、回転数30kHz(CFCFCF=-120ppm)
【0231】
実施例1
反応器に、重合開始剤として0.031gのt-ブチルパーオキシピバレート、連鎖移動剤として0.37gのO-エチルS-(1-メトキシカルボニルエチル)ジチオカーボネート、溶媒として39mLのアサヒクリンAK-225(商品名;AGC社製)、および2.3gのテトラフルオロエチレンを導入し、80℃まで加熱攪拌した。反応終了後、反応器を冷却し、ガス抜きをし、ポリマー分散体を回収した。分散体を濾別し、乾燥させ、1.8gの白色固体を得た。固体19F-NMR測定より、基準としてCF連鎖由来のピークを-120ppmとしたときに、-CF-S-由来のピークが-85ppmに見えたことから、ポリマー末端に連鎖移動剤切片(-SC(S)OC)が導入されたことを確認した。-120ppmのピーク積分値と-85ppmのピーク積分値の比から見積もられる重合度は、16であった。
固体19F-NMR δppm:-73、-85(CFS)、-105~-125(CH(CH)CF、CFCFCF)、-128(CFCFH)、-136(CFH)
【0232】
実施例2
反応器に、0.016gのAIBN、2.0gの実施例1のポリマー、5mLの酢酸エチル、および5.0gの酢酸ビニルを導入し、65℃まで加熱攪拌した。その後、ポリマー溶液を回収した。不溶物の濾過、及び再沈殿後の洗浄によりホモポリマーを除去して、5.8gの目的のブロック共重合体を得た。19F-NMR測定より、-85ppmの-CF-S-由来のピークが消失し、H-NMR測定より、酢酸ビニルが重合して生じる骨格(1.5~2.3ppm、4.7~5.1ppm)の存在を確認した。
19F-NMR(CDCl)δppm:-105~-125(CFCH、CH(CH)CF、CFCFCF
【0233】
実施例3
反応器に、重合開始剤として0.027gのt-ブチルパーオキシピバレート、連鎖移動剤として0.12gのO-エチルS-(1-メトキシカルボニルエチル)ジチオカーボネート、溶媒として15mLのアサヒクリンAK-225(商品名;AGC社製)、および0.7gの酢酸ビニルと、1.9gのテトラフルオロエチレンを導入し、70℃まで加熱攪拌した。反応終了後、反応器を冷却し、ガス抜きをし、ポリマー分散体を回収した。分散体を濾別し、乾燥させ、1.1gの白色固体を得た。固体19F-NMR測定より、CF連鎖由来および共重合由来のピークが-100~-130ppmに、-CF-S-由来のピークが-85ppmに見えたことから、ポリマー末端に連鎖移動剤切片(-SC(S)OC)が導入されたことを確認した。
固体19F-NMR δppm:-73、-85(CFS)、-100~-130(CFCH、CH(OAc)CF、CH(CH)CF、CFCFCF、CFCFH)、-136(CFH)
【0234】
実施例4
反応器に、重合開始剤として0.027gのt-ブチルパーオキシピバレート、連鎖移動剤として0.12gのO-エチルS-(1-メトキシカルボニルエチル)ジチオカーボネート、溶媒として15mLのアサヒクリンAK-225(商品名;AGC社製)、および1.5gのテトラフルオロエチレンと、0.45gのビニリデンフルオライドを導入し、70℃まで加熱攪拌した。反応終了後、反応器を冷却し、ガス抜きをし、ポリマー分散体を回収した。分散体を濾別し、乾燥させ、1.0gの白色固体を得た。固体19F-NMR測定より、CF連鎖由来および共重合由来のピークが-100~-125ppmに、-CF-S-由来のピークが-85ppmに見えたことから、ポリマー末端に連鎖移動剤切片(-SC(S)OC)が導入されたことを確認した。
固体19F-NMR δppm:-73、-85(CFS)、-95(CHCFCH)、-100~-125(CFCFCH、CH(CH)CF、CFCFCF)、-128(CFCFH)、-136(CFH)
【0235】
実施例5
反応器に、重合開始剤として0.027gのt-ブチルパーオキシピバレート、連鎖移動剤として0.12gのO-エチルS-(1-メトキシカルボニルエチル)ジチオカーボネート、溶媒として15mLのアサヒクリンAK-225(商品名;AGC社製)、および0.9gのN-ビニルピロリドンと、1.9gのテトラフルオロエチレンを導入し、70℃まで加熱攪拌した。反応終了後、反応器を冷却し、ガス抜きをし、ポリマー分散体を回収した。分散体を濾別し、乾燥させ、1.2gの白色固体を得た。固体19F-NMR測定より、CF連鎖由来および共重合由来のピークが-110~-125ppmに、-CF-S-由来のピークが-85ppmに見えたことから、ポリマー末端に連鎖移動剤切片(-SC(S)OC)が導入されたことを確認した。
固体19F-NMR δppm:-73、-85(CFS)、-105~-125(CFCH、CH(NCO)CF2、CH(CH)CF、CFCFCF)、-128(CFCFH)、-136(CFH)
【0236】
実施例6
反応器に、0.024gのt-ブチルパーオキシピバレート、2.0gの実施例1のポリマー、60mLの炭酸ジメチル、および19gのビニリデンフルオライドを導入し、70℃まで加熱攪拌した。反応終了後、反応器を冷却し、ガス抜きをし、ポリマー分散体を回収した。分散体を乾燥させ、洗浄によりホモポリマーを除去して、10gの目的のブロック共重合体を得た。固体19F-NMR測定より、-85ppmの-CF-S-由来のピークが消失し、ビニリデンフルオライドが重合して生じる骨格(-90~-100ppm、-110~-120ppm)の存在を確認した。
固体19F-NMR δppm:-90~-100(CHCFCH)、-110~-125(CFCFCH、CFCFCF
【0237】
実施例7
反応器に、0.024gのt-ブチルパーオキシピバレート、2.0gの実施例1のポリマー、60mLの酢酸エチル、および6.6gのビニリデンフルオライドと、12gのヘキサフルオロプロピレンを導入し、60℃まで加熱攪拌した。反応終了後、反応器を冷却し、ガス抜きをし、ポリマー分散体を回収した。分散体を乾燥させ、洗浄によりホモポリマーを除去して、12gの目的のブロック共重合体を得た。固体19F-NMR測定より、-85ppmの-CF-S-由来のピークが消失し、ビニリデンフルオライドとヘキサフルオロプロピレンが共重合して生じる骨格(-100~-120ppm)の存在を確認した。
固体19F-NMR δppm:-70~-80(CF(CF))、-90~-100(CHCFCH)、-100~-125(CHCFCF、CFCF(CF)、CFCFCF)、-185(CF(CF))
【0238】
実施例8
反応器に、0.024gのt-ブチルパーオキシピバレート、2.0gの実施例1のポリマー、60mLのアセトン、および6.5gのN-ビニルピロリドンを導入し、70℃まで加熱攪拌した。6時間後、ポリマー溶液を回収した。不溶物の濾過、及び洗浄によりホモポリマーを除去して、6.9gの目的のブロック共重合体を得た。19F-NMR測定より、-85ppmの-CF-S-由来のピークが消失し、H-NMR測定より、N-ビニルピロリドンが重合して生じる骨格(1.2~2.6ppm、3.0~4.4ppm)の存在を確認した。
19F-NMR(CDCl)δppm:-105~-125(CFCH、CH(CH)CF、CFCFCF