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特許7406131ガラスロービングクロス及びガラス繊維強化樹脂シート
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-19
(45)【発行日】2023-12-27
(54)【発明の名称】ガラスロービングクロス及びガラス繊維強化樹脂シート
(51)【国際特許分類】
   D03D 15/267 20210101AFI20231220BHJP
   D03D 1/00 20060101ALI20231220BHJP
   B29B 15/12 20060101ALI20231220BHJP
   B29K 105/08 20060101ALN20231220BHJP
【FI】
D03D15/267
D03D1/00 A
B29B15/12
B29K105:08
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021529891
(86)(22)【出願日】2020-03-17
(86)【国際出願番号】 JP2020011827
(87)【国際公開番号】W WO2021002066
(87)【国際公開日】2021-01-07
【審査請求日】2022-08-30
(31)【優先権主張番号】P 2019123341
(32)【優先日】2019-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003975
【氏名又は名称】日東紡績株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】貫井 洋佑
(72)【発明者】
【氏名】坂田 淳也
(72)【発明者】
【氏名】門馬 秀明
【審査官】中西 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-324340(JP,A)
【文献】特開2005-126601(JP,A)
【文献】特開2013-049945(JP,A)
【文献】特開平03-159742(JP,A)
【文献】特表2012-506477(JP,A)
【文献】特開2018-021274(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106906556(CN,A)
【文献】国際公開第2017/168921(WO,A1)
【文献】特開2018-21274(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D03D
B29B
B29K
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
経糸と緯糸とから構成されるガラスロービングクロスであって、
9.5~30.0μmの範囲のフィラメント径Dtを備えるガラスフィラメントが、400~8000本の範囲の集束本数Ftで集束されてなるガラスロービングを経糸とし、
9.5~30.0μmの範囲のフィラメント径Dyを備えるガラスフィラメントが、400~8000本の範囲の集束本数Fyで集束されてなるガラスロービングを緯糸とし、
前記経糸の織密度Wt、及び、前記緯糸の織密度Wyが、それぞれ、2.0~14.0本/25mmの範囲にあり、
経糸平均糸幅Bt、及び、緯糸平均糸幅Byが、それぞれ、500~8000μmの範囲にあり、
経糸拡幅率Et(100×Bt/(Dt×Ft))、及び、緯糸拡幅率Ey(100×By/(Dy×Fy))が、それぞれ、3.0~30.0%の範囲にあり、
経糸方向ガラス占有率Mt(100×Bt/(25000(μm)/Wt))が、90.0~106.0%の範囲にあり、
緯糸方向ガラス占有率My(100×By/(25000(μm)/Wy))が、75.0~99.0%の範囲にあり、
前記経糸及び緯糸として用いられるガラスロービングには、0.01~0.20回/25mmの範囲の撚りがかけられていることを特徴とする、
ガラスロービングクロス。
【請求項2】
請求項1に記載のガラスロービングクロスにおいて、前記Mtが、98.0~105.0%の範囲にあり、
前記Myが、80.0~98.0%の範囲にあることを特徴とする、ガラスロービングクロス。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のガラスロービングクロスにおいて、前記ガラスロービングクロスの強熱減量が、0.16~0.30%であることを特徴とする、ガラスロービングクロス。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載のガラスロービングクロスにおいて、前記Et及びEyが、それぞれ、7.0~11.4%の範囲であることを特徴とする、ガラスロービングクロス。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載のガラスロービングクロスを含む、ガラス繊維強化樹脂シート。
【請求項6】
請求項5に記載のガラス繊維強化樹脂シートにおいて、前記ガラス繊維強化樹脂シートの全量に対する、前記ガラスロービングクロスの質量の割合が、50.0~85.0質量%であることを特徴とする、ガラス繊維強化樹脂シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラスロービングクロス及びガラス繊維強化樹脂シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガラス繊維製品は、樹脂製品の性能を向上させるために種々の用途で広く用いられている。ガラス繊維製品の中で、ガラスロービング(フィラメント径3~30μmのガラスフィラメントが100~10000本集束されてなるガラス繊維糸)を経糸及び緯糸として構成される織物(ガラスロービングクロス)は、プリント配線板に用いられるガラス繊維強化樹脂シートの強化材としての利用が検討されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載されるガラスロービングクロスでは、市場で求められるより薄く平坦性の高いプリント配線基板の製造を可能とするために、拡幅率(=100×ガラスロービングクロスにおけるガラスロービングの糸幅/(ガラスロービングを構成するガラスフィラメントの直径×ガラスロービングを構成するガラスフィラメントの本数);単位%)を極めて高い値(例えば、88.5%以上)とすることが求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-330114号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、金属代替材料として、自動車工業の分野におけるガラス繊維強化樹脂シートの使用が拡大している。自動車工業の分野においては、運転者の安全性や部品の耐久性を確保するために、ガラス繊維強化樹脂シートに高い機械的強度(例えば、曲げ強さや曲げ弾性率)が求められる。また、自動車部品は種々の形状を有するため、自動車部品に用いられるガラス繊維強化樹脂シート、及び、その強化材となるガラス繊維製品には、優れた賦形性が求められる。さらに、自動車の高い生産性にあわせるために、自動車部品に用いられるガラス繊維強化樹脂シートにも高い生産性が求められる。例えば、ガラスロービングクロスの製造段階においては、ガラスロービングクロスに高い製織性が求められ、ガラス繊維強化樹脂シートの製造段階においては、ガラスロービングクロスに高い樹脂含浸性が求められる。
【0005】
これらの特性はプリント配線板では必ずしも求められないか、プリント配線板で求められる水準が自動車部品とは異なることから、プリント配線板に用いられるガラス繊維強化樹脂シート、及び、その強化材としてのガラスロービングクロスでは、これらの特性が不十分であった。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、優れた製織性及び優れた樹脂含浸性を備え、かつ、高い機械的強度及び優れた賦形性を備えるガラス繊維強化樹脂シートを実現可能であるガラスロービングクロス、及び、このガラスロービングクロスを含み、高い機械的強度及び優れた賦形性を備えるガラス繊維強化樹脂シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成するために、本発明のガラスロービングクロスは、経糸と緯糸とから構成されるガラスロービングクロスであって、9.5~30.0μmの範囲のフィラメント径Dtを備えるガラスフィラメントが、400~8000本の範囲の集束本数Ftで集束されてなるガラスロービングを経糸とし、9.5~30.0μmの範囲のフィラメント径Dyを備えるガラスフィラメントが、400~8000本の範囲の集束本数Fyで集束されてなるガラスロービングを緯糸とし、前記経糸の織密度Wt、及び、前記緯糸の織密度Wyが、それぞれ、2.0~14.0本/25mmの範囲にあり、経糸平均糸幅Bt、及び、緯糸平均糸幅Byが、それぞれ、500~8000μmの範囲にあり、経糸拡幅率Et(100×Bt/(Dt×Ft))、及び、緯糸拡幅率Ey(100×By/(Dy×Fy))が、それぞれ、3.0~30.0%の範囲にあり、経糸方向ガラス占有率Mt(100×Bt/(25000(μm)/Wt))が、90.0~106.0%の範囲にあり、緯糸方向ガラス占有率My(100×By/(25000(μm)/Wy))が、75.0~99.0%の範囲にあり、前記経糸及び緯糸として用いられるガラスロービングには、0.01~0.20回/25mmの範囲の撚りがかけられていることを特徴とする。
【0008】
本発明のガラスロービングクロスは、前記Dt、Dy、Ft、Fy、Wt、Wy、Bt、By、Et、Ey、Mt及びMyが上述した範囲にあることで、優れた製織性及び優れた樹脂含浸性を備え、当該ガラスロービングクロスを含むガラス繊維強化樹脂シートで高い機械的強度及び優れた賦形性が実現される。ここで、高い機械的強度とは、ガラス繊維強化樹脂シートの曲げ強さが600MPa以上であり、かつ、曲げ弾性率が20.0GPa以上であることを意味する。
【0009】
本発明のガラスロービングクロスにおいて、経糸であるガラスロービングを構成するガラスフィラメントのフィラメント径Dt及び緯糸であるガラスロービングを構成するガラスフィラメントのフィラメント径Dyが、9.5μm未満であると、ガラスロービングクロスの製織性が低下する。一方、本発明のガラスロービングクロスにおいて、前記Dt及びDyが、30.0μm超であると、ガラスロービングクロスの樹脂含浸性が低下する。
【0010】
本発明のガラスロービングクロスにおいて、経糸であるガラスロービングを構成するガラスフィラメントの本数Ft及び緯糸であるガラスロービングを構成するガラスフィラメントの本数Fyが、400本未満であると、ガラスロービングクロスの製織性が低下する。一方、本発明のガラスロービングクロスにおいて、前記Ft及びFyが、8000本超であると、ガラスロービングクロスの樹脂含浸性が低下する。
【0011】
本発明のガラスロービングクロスにおいて、経糸の織密度Wt及び緯糸の織密度Wyが、2.0本/25mm未満であるガラスロービングクロスは製織が困難である。一方、本発明のガラスロービングクロスにおいて、前記Wt及びWyが、14.0本/25mm超であると、ガラスロービングクロスの樹脂含浸性が低下する。
【0012】
本発明のガラスロービングクロスにおいて、経糸平均糸幅Bt及び緯糸平均糸幅Byが、500μm未満であると、ガラスロービングクロスの樹脂含浸性が低下する。一方、前記Bt及びByが8000μm超であると、ガラスロービングクロスの製織性が低下する。
【0013】
本発明のガラスロービングクロスにおいて、前記Dt、Dy、Ft、Fy、Bt及びByに基づき、100×Bt/(Dt×Ft)、により算出される、経糸拡幅率Et、及び、100×By/(Dy×Fy)、により算出される、緯糸拡幅率Eyが、3.0%未満であると、ガラスロービングクロスの樹脂含浸性が低下する。一方、前記Et及びEyが、30.0%超であると、ガラスロービングクロスの製織性が低下する。
【0014】
本発明のガラスロービングクロスにおいて、前記Bt及びWtに基づき、100×Bt/(25000(μm)/Wt)、により算出される、経糸方向ガラス占有率Mtが、90.0%未満であると、本発明のガラスロービングクロスを含むガラス繊維強化樹脂シートが十分な機械的強度を備えず、また、ガラス繊維強化樹脂シートの賦形性が悪化する。一方、前記Mtが、106.0%超であると、ガラスロービングクロスの製織性が悪化する。
【0015】
本発明のガラスロービングクロスにおいて、前記By及びWyに基づき、100×By/(25000(μm)/Wy)、により算出される、緯糸方向ガラス占有率Myが、75.0%未満であると、本発明のガラスロービングクロスを含むガラス繊維強化樹脂シートが十分な機械的強度を備えない。一方、前記Myが99.0%超であると、ガラスロービングクロスの製織性が悪化する。
【0016】
また、本発明のガラスロービングクロスは、前記Mtが、98.0~105.0%の範囲にあり、前記Myが、80.0~98.0%の範囲にあることが好ましい。
【0017】
本発明のガラスロービングクロスは、前記Mt及びMyが上述した範囲にあることで、優れた製織性及び優れた樹脂含浸性を備え、当該ガラスロービングクロスを含むガラス繊維強化樹脂シートでより高い機械的強度及び優れた賦形性が実現される。ここで、より高い機械的強度とは、ガラス繊維強化樹脂シートの曲げ強さが600MPa以上であり、かつ、曲げ弾性率が20.5GPa以上であることを意味する。
【0018】
また、本発明のガラスロービングクロスは、強熱減量が、0.16~0.30%であることが好ましい。
【0019】
本発明のガラスロービングクロスは、前記Mtが、98.0~105.0%の範囲にあり、前記Myが、80.0~98.0%の範囲にあり、強熱減量が上述した範囲にあることで、極めて優れた製織性及び優れた樹脂含浸性を備え、当該ガラスロービングクロスを含むガラス繊維強化樹脂シートで極めて高い機械的強度及び優れた賦形性が実現される。ここで、極めて高い機械的強度とは、ガラス繊維強化樹脂シートの曲げ強さが630MPa以上であり、かつ、曲げ弾性率が20.5GPa以上であることを意味する。
【0020】
また、本発明のガラスロービングクロスは、前記Et及びEyが、それぞれ、7.0~11.4%の範囲にあることが好ましい。
【0021】
本発明のガラスロービングクロスは、前記Et及びEyが上述した範囲にあることで、優れた製織性及び優れた樹脂含浸性がより確実に実現される。
【0022】
本発明のガラス繊維強化樹脂シートは、上述した本発明のガラスロービングクロスを含む。
【0023】
本発明のガラス繊維強化樹脂シートは、ガラス繊維強化樹脂シートの全量に対する、前記ガラスロービングクロスの質量の割合が、50.0~85.0質量%であることが好ましい。
【0024】
本発明のガラス繊維強化樹脂シートによれば、ガラス繊維強化樹脂シートの全量に対する、前記ガラスロービングの質量の割合が上述の範囲であることで、高い機械的強度及び優れた賦形性がより確実に実現される。
【発明を実施するための形態】
【0025】
次に、本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。
【0026】
本実施形態のガラスロービングクロスは、9.5~30.0μmの範囲のフィラメント径Dtを備えるガラスフィラメントが、400~8000本の範囲の集束本数Ftで集束されてなるガラスロービングを経糸とし、9.5~30.0μmの範囲のフィラメント径Dyを備えるガラスフィラメントが、400~8000本の範囲の集束本数Fyで集束されてなるガラスロービングを緯糸とし、前記経糸の織密度Wt、及び、前記緯糸の織密度Wyが、それぞれ、2.0~14.0本/25mmの範囲にあり、経糸平均糸幅Bt、及び、緯糸平均糸幅Byが、それぞれ、500~8000μmの範囲にあり、経糸拡幅率Et(100×Bt/(Dt×Ft))、及び、緯糸拡幅率Ey(100×By/(Dy×Fy))が、それぞれ、3.0~30.0%の範囲にあり、経糸方向ガラス占有率Mt(100×Bt/(25000(μm)/Wt))が、90.0~106.0%の範囲にあり、緯糸方向ガラス占有率My(100×By/(25000(μm)/Wy))が、75.0~99.0%の範囲にあることを特徴とする。
【0027】
本実施形態のガラスロービングクロスは、前記Dt、Dy、Ft、Fy、Wt、Wy、Et、Ey、Mt及びMyが上述した範囲にあることで、優れた製織性及び優れた樹脂含浸性を備え、当該ガラスロービングクロスを含むガラス繊維強化樹脂シートで高い機械的強度及び優れた賦形性が実現される。ここで、高い機械的強度とは、ガラス繊維強化樹脂シートの曲げ強さが600MPa以上であり、かつ、曲げ弾性率が20.0GPa以上であることを意味する。
【0028】
なお、本発明において、曲げ強さと曲げ弾性率とは、それぞれ下記の方法で測定できる。なお、測定に使用する装置に関しては、下記に記載した装置と同等の性能があるものであれば特に限定されない。
【0029】
[曲げ強さ、曲げ弾性率]
曲げ強さと曲げ弾性率とは、JIS K 7017:1999(A法・クラスIII試験片)に準拠し、精密万能試験機(株式会社島津製作所製、商品名:オートグラフAG-5000B)によって測定を行う。
【0030】
また、本実施形態のガラスロービングクロスにおいて、ガラスロービングクロスの製織性と樹脂含浸性とを両立するという観点から、前記Dt及びDyは、10.5~25.0μmの範囲にあることが好ましく、13.0~20.0μmの範囲にあることがより好ましく、15.0~18.0μmの範囲にあることがさらに好ましい。
【0031】
本実施形態のガラスロービングクロスにおいて、前記Dt及びDyは、JIS R 3420:2013に準拠して測定することができる。なお、ガラス繊維強化樹脂シートを300~600℃のマッフル炉で2~24時間程度加熱することで、ガラス繊維強化樹脂シートから、樹脂を含む有機物が付着していないガラスロービングクロスを取り出すことができ、このガラスロービングクロスを用いて、前記Dt及びDyを測定することができる。
【0032】
本実施形態のガラスロービングクロスにおいて、前記Dt及びDyは、同じでも、異なってもよい。
【0033】
また、本実施形態のガラスロービングクロスにおいて、ガラスロービングクロスの製織性と樹脂含浸性とを両立するという観点から、前記Ft及びFyは、800~6000本の範囲にあることが好ましく、1000~5000本の範囲にあることがより好ましく、1500~4500本の範囲にあることがさらに好ましい。
【0034】
本実施形態のガラスロービングクロスにおいて、前記Ft及びFyは、ガラスロービングクロス中の経糸又は緯糸である、それぞれ少なくとも5本のガラスロービングについて、その断面の画像処理装置による解析、又は、その断面の走査型電子顕微鏡を用いた観察により、ガラスロービングを構成するガラスフィラメントの本数を計測し、平均を取ることで求めることができる。なお、ガラス繊維強化樹脂シートを300~600℃のマッフル炉で2~24時間程度加熱することで、ガラス繊維強化樹脂シートから、樹脂を含む有機物が付着していないガラスロービングクロスを取り出すことができ、このガラスロービングクロスを用いて、前記Ft及びFyを測定することができる。
【0035】
本実施形態のガラスロービングクロスにおいて、前記Ft及びFyは、同じでも、異なってもよい。
【0036】
本実施形態のガラスロービングクロスにおいて、経糸及び緯糸は、例えば、75~15000tex(g/1000m)の範囲の重量を有し、好ましくは、100~9600texの範囲の重量を有し、より好ましくは、150~4800texの範囲の重量を有し、さらに好ましくは、500~2500texの範囲の重量を有し、特に好ましくは、700~2000texの範囲の重量を有する。本実施形態のガラスロービングクロスにおいて、経糸及び緯糸の重量は、同じでも、異なってもよい。
【0037】
本実施形態のガラスロービングクロスにおける経糸及び緯糸の重量は、JIS R 3420:2013に準拠して測定することができる。なお、ガラス繊維強化樹脂シートを300~600℃のマッフル炉で2~24時間程度加熱することで、ガラス繊維強化樹脂シートから、樹脂を含む有機物が付着していないガラスロービングクロスを取り出すことができ、このガラスロービングクロスを用いて、ガラスロービングクロスにおける経糸及び緯糸の重量を測定することができる。
【0038】
また、本実施形態のガラスロービングクロスにおいて、ガラスロービングクロスの製織性と樹脂含浸性とを両立するという観点から、前記Wt及びWyは、3.0~10.0本/25mmの範囲にあることが好ましく、3.5~9.0本/25mmの範囲にあることがより好ましく、3.7~8.0本/25mmの範囲にあることがさらに好ましい。本実施形態のガラスロービングクロスにおいて、前記Wt及びWyは、同じでも、異なってもよい。
【0039】
本実施形態のガラスロービングクロスにおいて、前記Wt及びWyは、JIS R 3420:2013に準拠して測定することができる。なお、ガラス繊維強化樹脂シートを300~600℃のマッフル炉で2~24時間程度加熱することで、ガラス繊維強化樹脂シートから、樹脂を含む有機物が付着していないガラスロービングクロスを取り出すことができ、このガラスロービングクロスを用いて、前記Wt及びWyを測定することができる。
【0040】
本実施形態のガラスロービングクロスにおいて、前記Wt及びWyについて、Wy/Wtが、0.50~2.00の範囲を取ることができる。ガラスロービングクロス使用時の取り扱い性に優れることからは、Wy/Wtは、0.60~1.20の範囲にあることが好ましく、0.70~1.00の範囲にあることがより好ましく、0.75~0.94の範囲にあることがさらに好ましい。
【0041】
本実施形態のガラスロービングクロスにおいて、ガラスロービングクロスの製織性と樹脂含浸性とを両立するという観点から、前記Bt及びByは、1000~7000μmの範囲にあることが好ましく、1800~6500μmの範囲にあることがより好ましく、2500~6000μmの範囲にあることがさらに好ましい。本実施形態のガラスロービングクロスにおいて、前記Bt及びByは、同じでも、異なってもよい。
【0042】
本実施形態において、前記Bt及びByは、ガラスロービングクロス中の経糸又は緯糸である、それぞれ少なくとも5本のガラスロービングについて、それぞれのガラスロービング中の少なくとも5ヶ所以上の糸幅を定規で測定し、平均を取ることで求めることができる。なお、ガラス繊維強化樹脂シートを300~600℃のマッフル炉で2~24時間程度加熱することで、ガラス繊維強化樹脂シートから、樹脂を含む有機物が付着していないガラスロービングクロスを取り出すことができ、このガラスロービングクロスを用いて、前記Bt及びByを測定することができる。
【0043】
本実施形態のガラスロービングクロスにおいて、前記Bt及びByは、経糸及び緯糸となるガラスロービングのフィラメント径及びフィラメントの集束本数、経糸及び緯糸の織密度、織組織、製織時に経糸に加えられる張力条件、製織時の緯糸の打込み条件、製織後に行われてもよい高圧水流や超音波を用いた開繊処理条件等を調整することで制御することができる。
【0044】
本実施形態のガラスロービングクロスにおいて、前記Bt及びByについて、By/Btが、0.50~2.00の範囲を取ることができる。ガラスロービングクロスの取り扱い性及び樹脂含浸性、並びに、ガラス繊維強化樹脂シートの等方性を担保するという観点からは、By/Btは、0.70~1.30の範囲にあることが好ましく、0.80~1.20の範囲にあることがより好ましく、0.90~1.10の範囲にあることがさらに好ましい。
【0045】
本実施形態のガラスロービングクロスにおいて、ガラスロービングクロスの製織性と樹脂含浸性とを両立するという観点から、前記Et及びEyは、5.0~20.0%の範囲にあることが好ましく、6.0~15.0%の範囲にあることがより好ましく、7.0~11.4%の範囲にあることがさらに好ましい。
【0046】
本実施形態のガラスロービングクロスにおいて、当該ガラスロービングクロスを含むガラス繊維強化樹脂シートでより高い機械的強度が実現されることから、前記Mtが98.0~105.0%の範囲にあり、前記Myが80.0~98.0%の範囲にあることが好ましく、前記Mtが98.5~104.5%の範囲にあり、前記Myが85.0~97.0%の範囲にあることがより好ましく、前記Mtが99.0~104.0%の範囲にあり、前記Myが90.0~96.0%の範囲にあることがさらに好ましい。
【0047】
本実施形態のガラスロービングクロスにおいて、前記Et、Ey、Mt及びMyが実現される限り、織組織は限定されず、例えば、平織、綾織及び朱子織を採用することができる。これらの中でも、本実施形態のガラスロービングクロスの織組織としては、綾織を好ましく採用することができ、2/2綾織又は1/3綾織をより好ましく採用することができ、2/2綾織をさらに好ましく採用することができる。
【0048】
本実施形態のガラスロービングクロスは、50~1500μmの範囲の厚さを備え得る。本実施形態のガラスロービングクロスを含むガラス繊維強化樹脂シートの機械的強度及び賦形性を確保するという観点からは、本実施形態のガラスロービングクロスは、75~1200μmの範囲の厚さを備えることが好ましく、200~1000μmの範囲の厚さを備えることがより好ましく、300~900μmの範囲の厚さを備えることがさらに好ましい。
【0049】
本実施形態のガラスロービングクロスの厚みは、JIS R 3420:2013に準拠して測定することができる。なお、ガラス繊維強化樹脂シートを300~600℃のマッフル炉で2~24時間程度加熱することで、ガラス繊維強化樹脂シートから、樹脂を含む有機物が付着していないガラスロービングクロスを取り出すことができ、このガラスロービングクロスを用いて、ガラスロービングクロスの厚みを測定することができる。
【0050】
本実施形態のガラスロービングクロスは、50~1500g/mの範囲の単位面積当りの質量を備え得る。本実施形態のガラスロービングクロスを含むガラス繊維強化樹脂シートの機械的強度及び賦与形を確保するという観点からは、本実施形態のガラスロービングクロスは、75~1200g/mの範囲の単位面積当りの質量を備えることが好ましく、200~1000g/mの範囲の単位面積当りの質量を備えることがより好ましく、300~900g/mの範囲の単位面積当りの質量を備えることがさらに好ましい。
【0051】
本実施形態のガラスロービングクロスの単位面積当りの質量は、JIS R 3420:2013に準拠して測定することができる。なお、ガラス繊維強化樹脂シートを300~600℃のマッフル炉で2~24時間程度加熱することで、ガラス繊維強化樹脂シートから、樹脂を含む有機物が付着していないガラスロービングクロスを取り出すことができ、このガラスロービングクロスを用いて、ガラスロービングクロスの単位面積当りの質量を測定することができる。
【0052】
本実施形態のガラスロービングクロスは、樹脂との密着性向上やガラスロービングの解れ防止という観点から、有機物によって表面処理されていてよい。
【0053】
本実施形態のガラスロービングクロスの表面処理に用いることのできる有機物としては、例えば、シランカップリング剤、樹脂エマルジョン及び界面活性剤を挙げることができる。
【0054】
シランカップリング剤としては、例えば、アミノシラン、ビニルシラン、エポキシシラン、メタクリルシラン、カチオニックシラン、アクリルシラン、フェニルシラン、ハロゲノシラン、ウレイドシラン、メルカプトシラン、スルフィドシラン、イソシアネートシラン、イソシアヌレートシラン、スチリルシランを挙げることができる。前記シランカップリング剤は、これらを単独で使用することもでき、又は、2種類以上を併用することもできる。
【0055】
アミノシランとしては、例えば、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、ウレイドプロピルトリメトキシシラン、ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシランを挙げることができる。
【0056】
ビニルシランとしては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルアセトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
【0057】
エポキシシランとしては、例えば、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランを挙げることができる。
【0058】
メタクリルシランとしては、例えば、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシランを挙げることができる。
【0059】
カチオニックシランとしては、例えば、N-β-(N-ビニルベンジルアミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン塩酸塩、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、3-アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、3-アミノプロピルトリエトキシシラン塩酸塩、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン塩酸塩、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩を挙げることができる。
【0060】
アクリルシランとしては、例えば、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシランを挙げることができる。
【0061】
フェニルシランとしては、例えば、トリメトキシフェニルシラン、トリエトキシフェニルシランを挙げることができる。
【0062】
ハロゲノシランとしては、例えば、(3-クロロプロピル)トリメトキシシラン、(3-クロロプロピル)トリエトキシシランを挙げることができる。
【0063】
ウレイドシランとしては、例えば、3-ウレイドプロピルトリエトキシシランを挙げることができる。
【0064】
メルカプトシランとしては、例えば、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシランが挙げられる。
【0065】
スルフィドシランとしては、例えば、ビス(3-(トリエトキシシリル)プロピル)ジスルフィド、またはビス(3-(トリエトキシシリル)プロピル)テトラスルフィドを挙げることができる。
【0066】
イソシアネートシランとしては、例えば、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシランを挙げることができる。
【0067】
イソシアヌレートシランとしては、例えば、トリス(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレートを挙げることができる。
【0068】
スチリルシランとしては、例えば、スチリルトリメトキシシランを挙げることができる。
【0069】
これらの中でも、熱可塑性樹脂との密着性に特に優れることからは、アミノシランを好ましく用いることができる。
【0070】
樹脂エマルジョンとしては、例えば、酢酸ビニル樹脂エマルジョン、エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂エマルジョン、アクリル樹脂エマルジョン、ポリスチレン樹脂エマルジョン、HIPS樹脂エマルジョン、AS樹脂エマルジョン、ABS樹脂エマルジョン、ACS樹脂エマルジョン、AES樹脂エマルジョン、AAS樹脂エマルジョン、MBS樹脂エマルジョン、ビスフェノールA型エポキシ樹脂エマルジョン、ビスフェノールF型エポキシ樹脂エマルジョン、ビスフェノールA-ビスフェノールF共縮合型エポキシ樹脂エマルジョン、ノボラック型エポキシ樹脂エマルジョン、ビフェニル型エポキシ樹脂エマルジョン、ジシクロペンタジエン-フェノール系共縮合型エポキシ樹脂エマルジョンを挙げることができる。前記樹脂エマルジョンは、これらを単独で使用することもでき、又は、2種類以上を併用することもできる。
【0071】
界面活性剤としては、例えば、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤を挙げることができる。前記界面活性剤は、これらを単独で使用することもでき、又は、2種類以上を併用することもできる。
【0072】
ノニオン系界面活性剤としては、例えば、エチレンオキサイドプロピレンオキサイドアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン-ブロックコポリマー、アルキルポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン-ブロックコポリマーエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸モノエステル、ポリオキシエチレン脂肪酸ジエステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、グリセロール脂肪酸エステルエチレンオキサイド付加物、ポリオキシエチレンキャスターオイルエーテル、硬化ヒマシ油エチレンオキサイド付加物、アルキルアミンエチレンオキサイド付加物、脂肪酸アミドエチレンオキサイド付加物、グリセロール脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル、ソルビトール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、多価アルコールアルキルエーテル、脂肪酸アルカノールアミド、アセチレングリコール、アセチレンアルコール、アセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物、アセチレンアルコールのエチレンオキサイド付加物を挙げることができる。
【0073】
カチオン系界面活性剤としては、例えば、塩化アルキルジメチルベンジルアンモニウム、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、アルキルジメチルエチルアンモニウムエチルサルフェート、高級アルキルアミン塩(酢酸塩や塩酸塩等)、高級アルキルアミンへのエチレンオキサイド付加物、高級脂肪酸とポリアルキレンポリアミンとの縮合物、高級脂肪酸とアルカノールアミンとのエステルの塩、高級脂肪酸アミドの塩、イミダゾリン型カチオン性界面活性剤、アルキルピリジニウム塩を挙げることができる。
【0074】
アニオン系界面活性剤としては、例えば、高級アルコール硫酸エステル塩、高級アルキルエーテル硫酸エステル塩、α-オレフィン硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、脂肪酸ハライドとN-メチルタウリンとの反応生成物、スルホコハク酸ジアルキルエステル塩、高級アルコールリン酸エステル塩、高級アルコールエチレンオキサイド付加物のリン酸エステル塩を挙げることができる。
【0075】
両性界面活性剤としては、例えば、アルキルアミノプロピオン酸アルカリ金属塩等のアミノ酸型両性界面活性剤、アルキルジメチルベタイン等のベタイン型、イミダゾリン型両性界面活性剤等を挙げることができる。
【0076】
本実施形態のガラスロービングクロスの有機物による表面処理は、例えば、後述するガラスロービングの製造時に、集束剤又はバインダーとして、有機物を含む処理液をガラスロービングに塗布することにより行うことができる。また、製織後のガラスロービングクロスを、有機物を含む処理液を備える処理槽に浸漬させた後、乾燥させることによっても、ガラスロービングクロスの表面処理を行うことができる。
【0077】
本実施形態のガラスロービングクロスが有機物によって表面処理される場合、強熱減量は、例えば、0.05~0.50%の範囲を取り得る。極めて優れた製織性及び優れた樹脂含浸性を両立させることができ、ガラスロービングクロスを含むガラス繊維強化樹脂シートで極めて高い機械的強度及び優れた賦形性が実現されることから、本実施形態のガラスロービングクロスの強熱減量は、0.16~0.30%の範囲にあることが好ましい。
【0078】
本実施形態のガラスロービングクロスにおいて、ガラスロービングクロスの強熱減量は、JIS R 3420:2013に準拠して測定することができる。
【0079】
本実施形態のガラスロービングクロスは、前記Mtが上述の範囲にあり、前記Myが上述の範囲にあり、強熱減量が上述した範囲にあることで、極めて優れた製織性及び優れた樹脂含浸性を備え、当該ガラスロービングクロスを含むガラス繊維強化樹脂シートで極めて高い機械的強度及び優れた賦形性が実現される。ここで、極めて高い機械的強度とは、ガラス繊維強化樹脂シートの曲げ強さが630MPa以上であり、かつ、曲げ弾性率が20.5GPa以上であることを意味する。
【0080】
本実施形態のガラスロービングクロスは、無機物によって表面処理されていてもよい。
【0081】
本実施形態のガラスロービングクロスの表面処理に用いることのできる無機物としては、例えば、コロイダルシリカを挙げることができる。
【0082】
本実施形態のガラスロービングクロスの無機物による表面処理は、有機物による表面処理と同様に行うことができる。
【0083】
本実施形態のガラスロービングクロスにおいて、経糸及び緯糸であるガラスロービングを形成するガラス繊維のガラス組成は特に限定されない。本実施形態のガラスロービングクロスにおいて、ガラス繊維が取り得るガラス組成としては、最も汎用的であるEガラス組成(ガラス繊維の全量に対し、酸化物換算で、52.0~56.0質量%の範囲のSiOと、12.0~16.0質量%の範囲のAlと、合計で20.0~25.0質量%の範囲のMgO及びCaOと、5.0~10.0質量%の範囲のBとを含む組成)、高強度高弾性率ガラス組成(ガラス繊維の全量に対し64.0~66.0質量%の範囲のSiOと、24.0~26.0質量%の範囲のAlと、9.0~11.0質量%の範囲のMgOとを含む組成)、高弾性率易製造性ガラス組成(ガラス繊維の全量に対し、57.0~60.0質量%の範囲のSiOと、17.5~20.0質量%の範囲のAlと、8.5~12.0質量%の範囲のMgOと、10.0~13.0質量%の範囲のCaOと、0.5~1.5質量%の範囲のBとを含み、かつ、合計で98.0質量%以上のSiO、Al、MgO及びCaOを含む組成)、及び、低誘電率低誘電正接ガラス組成(ガラス繊維全量に対し、48.0~62.0質量%の範囲のSiOと、17.0~26.0質量%の範囲のBと、9.0~18.0質量%の範囲のAlと、0.1~9.0質量%の範囲のCaOと、0~6.0質量%の範囲のMgOと、合計で0.05~0.5質量%の範囲のNaO、KO及びLiOと、0~5.0質量%の範囲のTiOと、0~6.0質量%の範囲のSrOと、合計で0~3.0質量%の範囲のF及びClと、0~6.0質量%の範囲のPとを含む組成)を挙げることができる。ガラスロービングクロスを含むガラス繊維強化樹脂シートの機械的強度を向上させるという観点からは、ガラス繊維のガラス組成は、前記高強度高弾性率ガラス組成、又は、高弾性率易製造性ガラス組成であることが好ましい。
【0084】
なお、本実施形態のガラスロービングクロスを構成するガラス繊維において、前述した各成分の含有量の測定は、軽元素であるLiについてはICP発光分光分析装置を用いて、その他の元素は波長分散型蛍光X線分析装置を用いて行うことができる。
【0085】
測定方法としては、初めにガラスバッチ(ガラス原料を混合して調合したもの)、又は、ガラス繊維(ガラス繊維表面に有機物が付着している場合、又は、ガラス繊維が有機物(樹脂)中に主に強化材として含まれている場合には、例えば、300~600℃のマッフル炉で2~24時間程度加熱する等して、有機物を除去してから用いる)を白金ルツボに入れ、電気炉中で1550℃の温度に6時間保持して撹拌を加えながら溶融させることにより、均質な溶融ガラスを得る。次に、得られた溶融ガラスをカーボン板上に流し出してガラスカレットを作製した後、粉砕し粉末化する。軽元素であるLiについてはガラス粉末を酸で加熱分解した後、ICP発光分光分析装置を用いて定量分析する。その他の元素はガラス粉末をプレス機で円盤状に成形した後、波長分散型蛍光X線分析装置を用いて定量分析する。これらの定量分析結果を酸化物換算して各成分の含有量及び全量を計算し、これらの数値から前述した各成分の含有量(質量%)を求めることができる。
【0086】
前述のガラス組成を備えるガラス繊維から構成されるガラスロービングは、以下のように製造される。初めに、ガラス原料となる鉱石に含まれる成分と各成分の含有率、及び、溶融過程における各成分の揮発量に基づき、前述の組成となるように調合されたガラス原料(ガラスバッチ)を溶融炉に供給し、例えば、1450~1550℃の範囲の温度で溶融する。次に、溶融されたガラスバッチ(溶融ガラス)を所定の温度に制御された、ブッシングの400~8000個のノズルチップから引き出して、急冷することで、ガラスフィラメントを形成する。次に、形成されたガラスフィラメントに、塗布装置であるアプリケーターを用いて集束剤又はバインダーを塗布し、集束シューを用いて、ガラスフィラメント400~8000本を集束させながら、巻取り機を用いて、チューブに高速で巻取ることで、ガラスロービング(ガラスダイレクトロービング)が得られる。また、溶融ガラスをブッシングの200~4000個のノズルチップから引き出し、急冷して、ガラスフィラメントを形成し、ガラスフィラメントに集束剤又はバインダーを塗布し、ガラスフィラメント200~4000本を集束させて、チューブに巻き取ることでガラス繊維ストランドを得て、チューブから解舒しながら、このガラス繊維ストランド2~40本を引き揃えることでも、ガラスロービング(ガラス合糸ロービング)が得られる。
【0087】
本実施形態のガラスロービングクロスにおいて、ガラスロービングクロスの樹脂含浸性を高めるという観点からは、本実施形態のガラスロービングクロスの経糸及び緯糸として用いられるガラスロービングは、ガラスダイレクトロービングであることが好ましい。
【0088】
本実施形態のガラスロービングクロスの経糸及び緯糸として用いられるガラスロービングには、0.01~0.20回/25mmの範囲の撚りがかけられていてもよく、0.03~0.18回/25mmの範囲の撚りがかけられていることが好ましく、0.05~0.15回/25mmの範囲の撚りがかけられていることがより好ましい。ここで、ガラスロービングの撚数は、JIS R 3420:2013に準拠して測定することができる。
【0089】
本実施形態のガラスロービングクロスは、前述したガラスロービングを経糸及び緯糸に用いて、レピア織機等の公知の織機により、前述の織密度及び織組織となるように、公知の条件で製織して製造することができる。
【0090】
本実施形態のガラスロービングクロスにおいて、製織前に、巻き返し装置を用いてガラスロービングを巻き返すことでBt及びByを調整することが出来る。また、前記Bt及びByを所望の値とするために、製織後の本実施形態のガラスロービングクロスに、例えば、水流圧力による開繊処理、液体を媒体とした高周波の振動による開繊処理、面圧を有する流体の圧力による開繊処理、ロールによる加圧での開繊処理を行うことが出来る。これらの開繊処理の中では、水流圧力による開繊、又は、液体を媒体とした高周波の振動による開繊を使用することが、経糸及び緯糸のそれぞれにおいて、開繊処理後の糸幅のバラツキを低減可能であるため好ましい。
【0091】
本実施形態のガラス繊維強化樹脂シートは、前述の本実施形態のガラスロービングクロスに加えて、樹脂、又は、樹脂と添加剤とからなる樹脂組成物を含む。
【0092】
本実施形態のガラス繊維強化樹脂シートにおいて、前述の本実施形態のガラスロービングクロスは1枚、又は、2~15枚が積層されて含まれ得る。ガラス繊維強化樹脂シートの機械的強度及び賦形性をバランス良く両立させるという観点からは、本実施形態のガラス繊維強化樹脂シートにおいて、本実施形態のガラスロービングクロスが3~10枚積層されて含まれることが好ましい。
【0093】
本実施形態のガラス繊維強化樹脂シートにおいて、ガラス繊維強化樹脂シートの全量に対する、本実施形態のガラスロービングクロスの質量(ガラスロービングクロスが複数枚含まれる場合にはその合計質量)の割合(以下、ガラス含有率ということもある。)は、10.0~90.0質量%の範囲となり得る。本実施形態のガラス繊維強化樹脂シートの機械的強度及び賦形性をバランス良く両立させるという観点からは、ガラス含有率は、50.0~85.0質量%の範囲にあることが好ましく、55.0~80.0質量%の範囲にあることがより好ましく、60.0~75.0質量%範囲にあることがさらに好ましい。
【0094】
本実施形態のガラス繊維強化樹脂シートにおいて、本実施形態のガラス繊維強化樹脂シートに対する本実施形態のガラスロービングクロスの質量の割合は、JIS K 7052:1999に準拠して算出することができる。
【0095】
本実施形態のガラス繊維強化樹脂シートにおいて、前記樹脂又は前記樹脂組成物は、本実施形態のガラスロービングクロスに、含浸されて含まれても、部分的に含浸されて含まれても、表面に塗布されて含まれていてもよい。また、ガラス繊維強化樹脂シートにおいて、樹脂又は樹脂組成物は、乾燥又は硬化されていても、半乾燥又は半硬化されていてもよい。また、ガラス繊維強化樹脂シートの機械的特性及び品質の安定性を高めるという観点からは、前記樹脂又は前記樹脂組成物は、本実施形態のガラスロービングクロスに、樹脂又は樹脂組成物が含浸され、乾燥又は硬化されていることが好ましい。一方で、ガラス繊維強化樹脂シートの賦形性や取り扱い性を高めるという観点からは、本実施形態のガラスロービングクロスに、樹脂又は樹脂組成物が部分的に含浸して、半乾燥又は半硬化されて、高い柔軟性を備える状態(セミプレグ状態)であることが好ましい。
【0096】
本実施形態のガラス繊維強化樹脂シートにおいて、前記樹脂は、熱可塑性樹脂でも熱硬化性樹脂でもよい。
【0097】
ここで、前記熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、スチレン/無水マレイン酸樹脂、スチレン/マレイミド樹脂、ポリアクリロニトリル、アクリロニトリル/スチレン(AS)樹脂、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン(ABS)樹脂、塩素化ポリエチレン/アクリロニトリル/スチレン(ACS)樹脂、アクリロニトリル/エチレン/スチレン(AES)樹脂、アクリロニトリル/スチレン/アクリル酸メチル(ASA)樹脂、スチレン/アクリロニトリル(SAN)樹脂、メタクリル樹脂、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリアミド、ポリアセタール、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリカーボネート、ポリアリーレンサルファイド、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリフェニルスルホン(PPSU)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、変性ポリフェニレンエーテル(m-PPE)、ポリアリールエーテルケトン、液晶ポリマー(LCP)、フッ素樹脂、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリアリレート(PAR)、ポリサルフォン(PSF)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリアミノビスマレイミド(PABM)、熱可塑性ポリイミド(TPI)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、エチレン/酢酸ビニル(EVA)樹脂、アイオノマー(IO)樹脂、ポリブタジエン、スチレン/ブタジエン樹脂、ポリブチレン、ポリメチルペンテン、オレフィン/ビニルアルコール樹脂、環状オレフィン樹脂、セルロース樹脂、ポリ乳酸等を挙げることができる。
【0098】
具体的に、ポリエチレンとしては、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超高分子量ポリエチレン等が挙げられる。
【0099】
ポリプロピレンとしては、アイソタクチックポリプロピレン、アタクチックポリプロピレン、シンジオタクチックポリプロピレン及びこれらの混合物等が挙げられる。
【0100】
ポリスチレンとしては、アタクチック構造を有するアタクチックポリスチレンである汎用ポリスチレン(GPPS)、GPPSにゴム成分を加えた耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、シンジオタクチック構造を有するシンジオタクチックポリスチレン等が挙げられる。
【0101】
メタクリル樹脂としては、アクリル酸、メタクリル酸、スチレン、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、脂肪酸ビニルエステルのうち一種を単独重合した重合体、又は二種以上を共重合した重合体等が挙げられる。
【0102】
ポリ塩化ビニルとしては、従来公知の乳化重合法、懸濁重合法、マイクロ懸濁重合法、塊状重合法等の方法により重合される塩化ビニル単独重合体、又は、塩化ビニルモノマーと共重合可能なモノマーとの共重合体、又は、重合体に塩化ビニルモノマーをグラフト重合したグラフト共重合体等が挙げられる。
【0103】
ポリアミドとしては、ポリカプロアミド(ナイロン6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン46)、ポリテトラメチレンセバカミド(ナイロン410)、ポリペンタメチレンアジパミド(ナイロン56)、ポリペンタメチレンセバカミド(ナイロン510)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン612)、ポリデカメチレンアジパミド(ナイロン106)、ポリデカメチレンセバカミド(ナイロン1010)、ポリデカメチレンドデカミド(ナイロン1012)、ポリウンデカンアミド(ナイロン11)、ポリウンデカメチレンアジパミド(ナイロン116)、ポリドデカンアミド(ナイロン12)、ポリキシレンアジパミド(ナイロンXD6)、ポリキシレンセバカミド(ナイロンXD10)、ポリメタキシリレンアジパミド(ナイロンMXD6)、ポリパラキシリレンアジパミド(ナイロンPXD6)、ポリテトラメチレンテレフタルアミド(ナイロン4T)、ポリペンタメチレンテレフタルアミド(ナイロン5T)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド(ナイロン6T)、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド(ナイロン6I)、ポリノナメチレンテレフタルアミド(ナイロン9T)、ポリデカメチレンテレフタルアミド(ナイロン10T)、ポリウンデカメチレンテレフタルアミド(ナイロン11T)、ポリドデカメチレンテレフタルアミド(ナイロン12T)、ポリテトラメチレンイソフタルアミド(ナイロン4I)、ポリビス(3-メチル-4-アミノヘキシル)メタンテレフタルアミド(ナイロンPACMT)、ポリビス(3-メチル-4-アミノヘキシル)メタンイソフタルアミド(ナイロンPACMI)、ポリビス(3-メチル-4-アミノヘキシル)メタンドデカミド(ナイロンPACM12)、ポリビス(3-メチル-4-アミノヘキシル)メタンテトラデカミド(ナイロンPACM14)等の成分のうち1種、もしくは2種以上の複数成分を組み合わせた共重合体やこれらの混合物等を挙げることができる。
【0104】
ポリアセタールとしては、オキシメチレン単位を主たる繰り返し単位とする単独重合体、および、主としてオキシメチレン単位からなり、主鎖中に2~8個の隣接する炭素原子を有するオキシアルキレン単位を含有する共重合体等が挙げられる。
【0105】
ポリエチレンテレフタレートとしては、テレフタル酸又はその誘導体と、エチレングリコールを重縮合することにより得られる重合体等が挙げられる。
【0106】
ポリブチレンテレフタレートとしては、テレフタル酸又はその誘導体と、1,4-ブタンジオールを重縮合することにより得られる重合体等が挙げられる。
【0107】
ポリトリメチレンテレフタレートとしては、テレフタル酸又はその誘導体と、1,3-プロパンジオールを重縮合することにより得られる重合体等が挙げられる。
【0108】
ポリカーボネートとしては、ジヒドロキシジアリール化合物とジフェニルカーボネート等の炭酸エステルとを溶融状態で反応させるエステル交換法により得られる重合体、又は、ジヒドロキシアリール化合物とホスゲンとを反応するホスゲン法により得られる重合体が挙げられる。
【0109】
ポリアリーレンサルファイドとしては、直鎖型ポリフェニレンサルファイド、重合の後に硬化反応を行うことで高分子量化した架橋型ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンサルファイドサルフォン、ポリフェニレンサルファイドエーテル、ポリフェニレンサルファイドケトン等が挙げられる。
【0110】
変性ポリフェニレンエーテルとしては、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレン)エーテルとポリスチレンとのポリマーアロイ、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレン)エーテルとスチレン/ブタジエン共重合体とのポリマーアロイ、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレン)エーテルとスチレン/無水マレイン酸共重合体とのポリマーアロイ、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレン)エーテルとポリアミドとのポリマーアロイ、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレン)エーテルとスチレン/ブタジエン/アクリロニトリル共重合体とのポリマーアロイ等が挙げられる。
【0111】
ポリアリールエーテルケトンとしては、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリエーテルエーテルケトンケトン(PEEKK)等が挙げられる。
【0112】
液晶ポリマー(LCP)としては、サーモトロピック液晶ポリエステルである芳香族ヒドロキシカルボニル単位、芳香族ジヒドロキシ単位、芳香族ジカルボニル単位、脂肪族ジヒドロキシ単位、脂肪族ジカルボニル単位等から選ばれる1種以上の構造単位からなる(共)重合体等が挙げられる。
【0113】
フッ素樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロアルコキシ樹脂(PFA)、フッ化エチレンプロピレン樹脂(FEP)、フッ化エチレンテトラフルオロエチレン樹脂(ETFE)、ポリビニルフロライド(PVF)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレン/クロロトリフルオロエチレン樹脂(ECTFE)等が挙げられる。
【0114】
アイオノマー(IO)樹脂としては、オレフィン又はスチレンと不飽和カルボン酸との共重合体であって、カルボキシル基の一部を金属イオンで中和してなる重合体等が挙げられる。
【0115】
オレフィン/ビニルアルコール樹脂としては、エチレン/ビニルアルコール共重合体、プロピレン/ビニルアルコール共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体ケン化物、プロピレン/酢酸ビニル共重合体ケン化物等が挙げられる。
【0116】
環状オレフィン樹脂としては、シクロヘキセン等の単環体、テトラシクロペンタジエン等の多環体、環状オレフィンモノマーの重合体等が挙げられる。
【0117】
ポリ乳酸としては、L体の単独重合体であるポリL-乳酸、D体の単独重合体であるポリD-乳酸、又はその混合物であるステレオコンプレックス型ポリ乳酸等が挙げられる。
【0118】
セルロース樹脂としては、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート等を挙げることができる。
【0119】
また、前記熱硬化性樹脂としては、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、エポキシ(EP)樹脂、メラミン(MF)樹脂、フェノール樹脂(PF)、ウレタン樹脂(PU)、ポリイソシアネート、ポリイソシアヌレート、ポリイミド(PI)、ユリア(UF)樹脂、シリコーン(SI)樹脂、フラン(FR)樹脂、ベンゾグアナミン(BR)樹脂、アルキド樹脂、キシレン樹脂、ビスマレイミドトリアジン(BT)樹脂、ジアリルフタレート樹脂(PDAP)等を挙げることができる。
【0120】
具体的に、不飽和ポリエステルとしては、脂肪族不飽和ジカルボン酸と脂肪族ジオールをエステル化反応させることで得られる樹脂が挙げられる。
【0121】
ビニルエステル樹脂としては、ビス系ビニルエステル樹脂、ノボラック系ビニルエステル樹脂が挙げられる。
【0122】
エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールM型エポキシ樹脂(4,4'-(1,3-フェニレンジイソプロピリデン)ビスフェノール型エポキシ樹脂)、ビスフェノールP型エポキシ樹脂(4,4'-(1,4-フェニレンジイソプロピリデン)ビスフェノール型エポキシ樹脂)、ビスフェノールZ型エポキシ樹脂(4,4'-シクロヘキシリデンビスフェノール型エポキシ樹脂)、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、テトラフェノール基エタンノボラック型エポキシ樹脂,縮合環芳香族炭化水素構造を有するノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、キシリレン型エポキシ樹脂やフェニルアラルキル型エポキシ樹脂などのアラルキル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ナフタレンジオール型エポキシ樹脂、2官能ないし4官能エポキシ型ナフタレン樹脂、ビナフチル型エポキシ樹脂、ナフタレンアラルキル型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、フェノキシ型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ノルボルネン型エポキシ樹脂、アダマンタン型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0123】
メラミン樹脂としては、メラミン(2,4,6-トリアミノ-1,3,5-トリアジン)とホルムアルデヒドとの重縮合からなる重合体が挙げられる。
【0124】
フェノール樹脂としては、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールA型ノボラック樹脂等のノボラック型フェノール樹脂、メチロール型レゾール樹脂、ジメチレンエーテル型レゾール樹脂等のレゾール型フェノール樹脂、又は、アリールアルキレン型フェノール樹脂等が挙げられ、この中の一種、もしくは、二種以上を組み合わせたものが挙げられる。
【0125】
ユリア樹脂としては、尿素とホルムアルデヒドとの縮合によって得られる樹脂が挙げられる。
【0126】
前記熱可塑性樹脂又は前記熱硬化性樹脂は、単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0127】
本実施形態のガラス繊維強化樹脂シートで用いられる樹脂は、シート化後の取り扱い性、リサイクル性、成形法の多様性の観点から、熱可塑性樹脂であることが好ましい。熱可塑性樹脂の中でも、機械的強度及び耐熱性等の物性に優れることから、ポリアミド樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、及び、ポリエーテルエーテルケトン樹脂からなる群から選択される樹脂がより好ましい。これらの中でも、汎用性と取扱性に優れることから、ポリアミド樹脂又はポリプロピレン樹脂がさらに好ましくポリアミド樹脂が特に好ましい。
【0128】
前記樹脂組成物が含み得る添加剤としては、強化繊維(例えば、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維等)、充填剤(例えば、ガラスパウダー、タルク、マイカ等)、難燃剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、流動性改良剤、アンチブロッキング剤、潤滑剤、核剤、抗菌剤、顔料等を挙げることができる。前記樹脂組成物中に、これらの添加剤は、樹脂組成物の全量に対して、0.1~50.0質量%の範囲で含まれ得る。
【0129】
本実施形態のガラス繊維強化樹脂シートは、例えば、本実施形態のガラスロービングクロスと樹脂フィルムとを積層して二つのロールの間を通しながら加温、加圧する方法(ダブルベルトプレス法)で得られる。また、本実施形態のガラス繊維強化樹脂シートは、本実施形態のガラスロービングクロスに対して樹脂パウダーを均一に塗布し、加温することで得ることができる。
【0130】
本実施形態のガラス繊維強化樹脂成形品の用途としては、自動車の金属代替材料を挙げられるが、それに限定されない。本実施形態のガラス繊維強化樹脂シートは、例えば、電気電子機器の筐体、家電製品の構造部、スポーツ用品、飛翔体(航空機、ドローン)の構造部や構成部材等に用いることができる。
【0131】
次に本発明の実施例及び比較例を示す。
【実施例
【0132】
[実施例1]
Eガラス組成を有するフィラメント径17μmのガラスフィラメントが2000本集束されて形成され、撚数が0.10回/25mmであって、その質量に対して0.20質量%のシランカップリング剤が付着した、ガラスロービング(ガラスダイレクトロービング)を経糸及び緯糸として用いた。経糸及び緯糸となるガラスロービングを、経糸織密度Wtを7.0本/25mm、緯糸織密度Wyを6.5本/25mmとし、レピア織機を用いて、2/2綾織に製織して、ガラスロービングクロスを得た。このガラスロービングクロスに対して、水流圧力を1.0MPaに設定した水流圧力による開繊処理を行い、実施例1のガラスロービングクロスを得た。
【0133】
実施例1のガラスロービングクロスについて、前述した方法で、経糸平均糸幅Bt、緯糸平均糸幅By、厚さ、単位面積当りの質量、及び強熱減量を測定した。また、実施例1のガラスロービングクロスについて、以下の方法で、製織性及び樹脂含浸性の評価を行った。結果を表1に示す。
[製織性の評価]
毛羽による緯糸打ち込み不良発生回数が1回/50m未満であり、かつ、経糸及び緯糸に目曲りが発生していない場合に、「A」と評価した。製織時の毛羽によるヨコ糸打ち込み不良発生回数が1~5回/50m以上であり、かつ、経糸及び緯糸に目曲りが発生していない場合に、「B」と評価した。製織時の毛羽によるヨコ糸打ち込み不良発生回数が5回/50m以上超であるか、経糸及び緯糸に目曲りが発生している場合に「C」と評価した。
[樹脂含浸性の評価]
実施例1のガラスロービングクロス4枚を積層しながら、ガラス含有率が70.0質量%となるように、これらの層間にポリアミド樹脂粉体(東レ株式会社製、商品名:1001P、表1中「PA」と表記する)を均一に散布した後、高温プレス機で温度250℃、加圧時間10分の条件でプレスを行い実施例1のガラス繊維強化樹脂シートを得た。得られたガラス繊維強化樹脂シート中に、樹脂が含浸せずガラスの透明な状態の部分が残っていない場合に樹脂含浸性を「可」、残っている場合に「不可」とした。
【0134】
実施例1のガラス繊維強化樹脂シートについて、前述した方法で、曲げ強さ及び曲げ弾性率を測定した。また、実施例1のガラス繊維強化樹脂シートについて、以下の方法で、賦形性の評価を行った。結果を表1に示す。
[賦形性の評価]
半球の金属型を用い、ガラス繊維強化樹脂シートに加圧プレスを行った際に、半球状の形状が得られ、ガラス繊維強化樹脂シート中のガラスロービングクロスにしわが無く外観が良好な場合に、「A」と評価した。また、半球状の形状が得られたが、ガラス繊維強化樹脂シート中のガラスロービングクロスにしわが入り外観に不良である場合に、「B」と評価した。また、十分な半球状の形状が得られなかった場合に、「C」と評価した。
[実施例2]
Eガラス組成を有するフィラメント径17μmのガラスフィラメントが2000本集束されて形成され、撚数が0.10回/25mmであって、その質量に対して0.12質量%のシランカップリング剤が付着した、ガラスロービングを経糸及び緯糸として用いた。経糸及び緯糸となるガラスロービングを、経糸織密度Wtを7.0本/25mm、緯糸織密度Wyを6.5本/25mmとし、レピア織機を用いて、2/2綾織に製織して、ガラスロービングクロスを得た。このガラスロービングクロスに対して、水流圧力を1.0MPaに設定した水流圧力による開繊処理を行い、実施例2のガラスロービングクロスを得た。
【0135】
実施例2のガラスロービングクロスについて、実施例1と全く同様にして、経糸平均糸幅Bt、緯糸平均糸幅By、厚さ、単位面積当りの質量、及び強熱減量を測定し、製織性及び樹脂含浸性の評価を行った。結果を表1に示す。
【0136】
次に、実施例2のガラスロービングクロスを用いた以外は、実施例1と全く同様にして実施例2のガラス繊維強化樹脂シートを作成した。実施例2のガラス繊維強化樹脂シートについて、曲げ強さ及び曲げ弾性率を測定し、賦形性の評価を行った。結果を表1に示す。
[実施例3]
Eガラス組成を有するフィラメント径17μmのガラスフィラメントが2000本集束されて形成され、撚数が0.10回/25mmであって、その質量に対して0.40質量%のシランカップリング剤が付着した、ガラスロービングを経糸及び緯糸として用いた。経糸及び緯糸となるガラスロービングを、経糸織密度Wtを7.0本/25mm、緯糸織密度Wyを6.5本/25mmとし、レピア織機を用いて、2/2綾織に製織して、ガラスロービングクロスを得た。このガラスロービングクロスに対して、水流圧力を1.0MPaに設定した水流圧力による開繊処理を行い、実施例3のガラスロービングクロスを得た。
【0137】
実施例3のガラスロービングクロスについて、実施例1と全く同様にして、経糸平均糸幅Bt、緯糸平均糸幅By、厚さ、単位面積当りの質量、及び強熱減量を測定し、製織性及び樹脂含浸性の評価を行った。結果を表1に示す。
【0138】
次に、実施例3のガラスロービングクロスを用いた以外は、実施例1と全く同様にして実施例3のガラス繊維強化樹脂シートを作成した。実施例3のガラス繊維強化樹脂シートについて、曲げ強さ及び曲げ弾性率を測定し、賦形性の評価を行った。結果を表1に示す。
[実施例4]
Eガラス組成を有するフィラメント径17μmのガラスフィラメントが2000本集束されて形成され、撚数が0.10回/25mmであって、その質量に対して0.20質量%のシランカップリング剤が付着した、ガラスロービングを経糸及び緯糸として用いた。経糸及び緯糸となるガラスロービングを、経糸織密度Wtを7.0本/25mm、緯糸織密度Wyを6.5本/25mmとし、レピア織機を用いて、1/3綾織に製織して、ガラスロービングクロスを得た。このガラスロービングクロスに対して、水流圧力を1.0MPaに設定した水流圧力による開繊処理を行い、実施例4のガラスロービングクロスを得た。
【0139】
実施例4のガラスロービングクロスについて、実施例1と全く同様にして、経糸平均糸幅Bt、緯糸平均糸幅By、厚さ、単位面積当りの質量、及び強熱減量を測定し、製織性及び樹脂含浸性の評価を行った。結果を表1に示す。
【0140】
次に、実施例4のガラスロービングクロスを用いた以外は、実施例1と全く同様にして実施例4のガラス繊維強化樹脂シートを作成した。実施例4のガラス繊維強化樹脂シートについて、曲げ強さ及び曲げ弾性率を測定し、賦形性の評価を行った。結果を表1に示す。
[比較例1]
Eガラス組成を有するフィラメント径17μmのガラスフィラメントが2000本集束されて形成され、撚数が0.10回/25mmであって、その質量に対して0.20質量%のシランカップリング剤が付着した、ガラスロービングを経糸及び緯糸として用いた。経糸及び緯糸となるガラスロービングを、経糸織密度Wtを7.0本/25mm、緯糸織密度Wyを6.5本/25mmとし、レピア織機を用いて、2/2綾織に製織して、ガラスロービングクロスを得た。このガラスロービングクロスに対して、水流圧力を3.0MPaに設定した水流圧力による開繊処理を行い、比較例1のガラスロービングクロスを得た。
【0141】
比較例1のガラスロービングクロスについて、実施例1と全く同様にして、経糸平均糸幅Bt、緯糸平均糸幅By、厚さ、単位面積当りの質量、及び強熱減量を測定し、製織性及び樹脂含浸性の評価を行った。結果を表1に示す。
【0142】
次に、比較例1のガラスロービングクロスを用いた以外は、実施例1と全く同様にして比較例1のガラス繊維強化樹脂シートを作成した。比較例1のガラス繊維強化樹脂シートについて、曲げ強さ及び曲げ弾性率を測定し、賦形性の評価を行った。結果を表1に示す。
[比較例2]
Eガラス組成を有するフィラメント径17μmのガラスフィラメントが2000本集束されて形成され、撚数が0.10回/25mmであって、その質量に対して0.20質量%のシランカップリング剤が付着した、ガラスロービングを経糸及び緯糸として用いた。経糸及び緯糸となるガラスロービングを、経糸織密度Wtを7.0本/25mm、緯糸織密度Wyを6.5本/25mmとし、レピア織機を用いて、平織に製織して、ガラスロービングクロスを得た。このガラスロービングクロスに対して、水流圧力を1.0MPaに設定した水流圧力による開繊処理を行い、比較例2のガラスロービングクロスを得た。
【0143】
比較例2のガラスロービングクロスについて、実施例1と全く同様にして、経糸平均糸幅Bt、緯糸平均糸幅By、厚さ、単位面積当りの質量、及び強熱減量を測定し、製織性及び樹脂含浸性の評価を行った。結果を表1に示す。
【0144】
次に、比較例2のガラスロービングクロスを用いた以外は、実施例1と全く同様にして比較例2のガラス繊維強化樹脂シートを作成した。比較例2のガラス繊維強化樹脂シートについて、曲げ強さ及び曲げ弾性率を測定し、賦形性の評価を行った。結果を表1に示す。
[比較例3]
Eガラス組成を有するフィラメント径17μmのガラスフィラメントが1000本集束されて形成され、撚数が0.10回/25mmであって、その質量に対して0.20質量%のシランカップリング剤が付着した、ガラスロービングを経糸及び緯糸として用いた。経糸及び緯糸となるガラスロービングを、経糸織密度Wtを14.0本/25mm、緯糸織密度Wyを13.0本/25mmとし、レピア織機を用いて、1/3綾織に製織して、ガラスロービングクロスを得た。このガラスロービングクロスに対して、水流圧力を1.0MPaに設定した水流圧力による開繊処理を行い、比較例3のガラスロービングクロスを得た。
【0145】
比較例3のガラスロービングクロスについて、実施例1と全く同様にして、経糸平均糸幅Bt、緯糸平均糸幅By、厚さ、単位面積当りの質量、及び強熱減量を測定し、製織性及び樹脂含浸性の評価を行った。結果を表1に示す。
【0146】
次に、比較例3のガラスロービングクロスを用いた以外は、実施例1と全く同様にして比較例3のガラス繊維強化樹脂シートを作成した。比較例3のガラス繊維強化樹脂シートについて、曲げ強さ及び曲げ弾性率を測定し、賦形性の評価を行った。結果を表1に示す。
【0147】
【表1】
【0148】
表1に示されるように、9.5~30.0μmの範囲のフィラメント径Dtを備えるガラスフィラメントが、400~8000本の範囲の集束本数Ftで集束されてなるガラスロービングを経糸とし、9.5~30.0μmの範囲のフィラメント径Dyを備えるガラスフィラメントが、400~8000本の範囲の集束本数Fyで集束されてなるガラスロービングを緯糸とし、前記経糸の織密度Wt、及び、前記緯糸の織密度Wyが、それぞれ、2.0~14.0本/25mmの範囲にあり、経糸平均糸幅Bt、及び、緯糸平均糸幅Byが、それぞれ、500~8000μmの範囲にあり、経糸拡幅率Et(100×Bt/(Dt×Ft))、及び、緯糸拡幅率Ey(100×By/(Dy×Fy))が、それぞれ、3.0~30.0%の範囲にあり、経糸方向ガラス占有率Mt(100×Bt/(25000(μm)/Wt))が、90.0~106.0%の範囲にあり、緯糸方向ガラス占有率My(100×By/(25000(μm)/Wy))が、75.0~99.0%の範囲にある実施例1~4に表されるガラスロービングクロスは、優れた製織性及び優れた樹脂含浸性を備えており、当該ガラスロービングクロスを含むガラス繊維強化樹脂シートは、曲げ強さが600MPa以上であり、かつ、曲げ弾性率が20.0GPa以上である高い機械的強度、及び、優れた賦形性を備えている。
【0149】
また、前記Mtが、98.0~105.0%の範囲にあり、前記Myが、80.0~98.0%の範囲にある実施例1~3にあらわされるガラスロービングクロスは、優れた製織性及び優れた樹脂含浸性を備えており、当該ガラスロービングクロスを含むガラス繊維強化樹脂シートは、曲げ強さが600MPa以上であり、かつ、曲げ弾性率が20.5GPa以上であるより高い機械的強度、及び、優れた賦形性を備えている。
【0150】
さらに、前記Mtが、98.0~105.0%の範囲にあり、前記Myが、80.0~98.0%の範囲にあり、強熱減量が0.16~0.30%の範囲にある実施例1に表されるガラスロービングクロスは、極めて優れた製織性及び優れた樹脂含浸性を備えており、当該ガラスロービングクロスを含むガラス繊維強化樹脂シートは、曲げ強さが630MPa以上であり、かつ、曲げ弾性率が20.5GPa以上である極めて高い機械的強度、及び、優れた賦形性を備えている。
【0151】
一方、比較例1~3のガラスロービングクロスは、上述の要件を満たさないため、十分な製織性又は樹脂含浸性を備えないか、当該ガラスロービングクロスを含むガラス繊維強化が十分な機械的強度又は賦形性を備えない。