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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-19
(45)【発行日】2023-12-27
(54)【発明の名称】タイヤ部材の製造方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
   B29C 48/92 20190101AFI20231220BHJP
   B29C 48/25 20190101ALI20231220BHJP
   B29C 48/395 20190101ALI20231220BHJP
   B29D 30/06 20060101ALI20231220BHJP
   B29K 21/00 20060101ALN20231220BHJP
   B29L 30/00 20060101ALN20231220BHJP
【FI】
B29C48/92
B29C48/25
B29C48/395
B29D30/06
B29K21:00
B29L30:00
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022059708
(22)【出願日】2022-03-31
(65)【公開番号】P2023150551
(43)【公開日】2023-10-16
【審査請求日】2023-02-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】辻 三雄
(72)【発明者】
【氏名】久田 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】小野寺 智
【審査官】坂本 薫昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-081545(JP,A)
【文献】特開平08-086635(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 48/25,48/395,48/92
B29D 30/06
B29K 21/00
B29L 30/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数台の押出機によりそれぞれ押出された未加硫ゴムからなる複数種類の構成部材を接合して形成した長尺のタイヤ部材を、所定の品質を把握しつつ製造するタイヤ部材の製造方法において、
前記タイヤ部材を長手方向に搬送しながら、前記タイヤ部材の表面側から前記タイヤ部材の所定長さ範囲に対してX線を照射して、前記所定長さ範囲のX線透過度に基づく画像データを取得する工程を連続的に継続して行って、前記長手方向に隙間なく連続した前記所定長さ範囲の前記画像データを取得し、取得したそれぞれの前記画像データでの濃淡に基づいて、前記所定の品質の前記タイヤ部材の前記長手方向でのバラつきの大きさを把握し、把握した前記バラつきの大きさに基づいて、複数の前記押出機のうちの少なくとも1台に内設されているスクリューの回転数を制御することにより、前記バラつきを是正するタイヤ部材の製造方法。
【請求項2】
前記所定の品質として、特定成分の含有率が他の前記構成部材を形成している未加硫ゴムよりも高い未加硫ゴムにより形成されている特定の前記構成部材の幅方向寸法の前記長手方向での分布を把握する請求項1に記載のタイヤ部材の製造方法。
【請求項3】
前記特定成分がカーボンブラックである請求項2に記載のタイヤ部材の製造方法。
【請求項4】
前記所定の品質として、前記タイヤ部材の質量の前記長手方向での分布を把握する請求項1~3のいずれかに記載のタイヤ部材の製造方法。
【請求項5】
前記長手方向に搬送されている前記タイヤ部材に向かってレーザ光を照射して前記タイヤ部材の外表面で反射した反射光を受光することにより、前記タイヤ部材の横断面積の前記長手方向での分布を把握する請求項1~4のいずれかに記載のタイヤ部材の製造方法。
【請求項6】
前記長手方向に搬送されている前記タイヤ部材の裏面側から前記タイヤ部材に向かってテラヘルツ周波数の電磁波を発信して、前記タイヤ部材に進入して反射した反射波を検出することにより、前記タイヤ部材の裏面側に偏在している少なくとも1種類の前記構成部材の横断面積の前記長手方向での分布を把握する請求項1~5のいずれかに記載のタイヤ部材の製造方法。
【請求項7】
種類の異なる未加硫ゴムからなる構成部材を押出す複数台の押出機を有し、これら複数種類の前記構成部材が接合されて形成されている長尺のタイヤ部材が、所定の品質が把握されつつ製造されるタイヤ部材の製造システムにおいて、
前記タイヤ部材を長手方向に搬送する搬送装置と、前記搬送装置により搬送されている前記タイヤ部材の表面側から前記タイヤ部材の所定長さ範囲に対してX線を照射して前記所定長さ範囲のX線透過度に基づく画像データを取得するX線検査装置と、前記画像データが入力される演算装置と、それぞれの前記押出機に内設されているスクリューの回転を制御する制御装置とを有し、
前記画像データを取得する工程が連続的に継続して行われて、前記長手方向に隙間なく連続した前記所定長さ範囲の前記画像データが取得されて、取得されたそれぞれの前記画像データでの濃淡に基づいて、前記演算装置により前記所定の品質の前記タイヤ部材長手方向でのバラつきの大きさが算出され、算出された前記バラつきの大きさに基づいて、少なくとも1台の前記押出機に内設されている前記スクリューの回転数が前記制御装置により制御されることで、前記バラつきが是正される構成にしたタイヤ部材の製造システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はタイヤ部材の製造方法およびシステムに関し、さらに詳しくは、複数種類の構成部材を接合した形成した長尺のタイヤ部材を、長手方向での所定の品質のバラつきを小さくして、生産性よく製造できるタイヤ部材の製造方法およびシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
タイヤは、様々な長尺のタイヤ部材が使用されて製造されている。これらタイヤ部材には、種類(配合)の異なるゴムや補強材など、複数種類の構成部材が接合されて形成されているものがある。タイヤの製造ラインでは、これらのタイヤ部材の品質を把握するために種々の検査が行われる。
【0003】
従来、タイヤ部材の品質を検査しつつ製造する方法として、タイヤ部材の横断面での個々の構成部材の形状や寸法などを、製造ラインを止めることなく把握する測定して、その測定結果をタイヤ部材の押出機にフィードバックして適正な押出条件を再設定する製造方法が提案されている(特許文献1参照)。この提案されている製造方法では、タイヤ部材を搬送するベルトコンベヤなどの移送装置を備えた搬送経路に、タイヤ部材を蓄積するバッファ手段(フェスツーン機構)が配置され、その下流側にCTスキャナが配置されている。そして、タイヤ部材の内部をCTスキャナによって検査している間は、タイヤ部材の検査範囲に該当する部分は搬送が一時的に停止される。一方で、バッファ手段の上流側に配置された押出機はタイヤ部材の押出を継続し、押出されたタイヤ部材はバッファ手段によって一時的に蓄積される。このようにして、搬送経路でタイヤ部材をCTスキャナで検査している間も、押出機によるタイヤ部材の押出を中断させずに製造ラインが止まることを回避する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平8-86635号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1で提案されている製造方法では、タイヤ部材の長手方向での所定の品質のバラつきの大きさを精度よく把握するには、タイヤ部材を長手方向に多数の区間に隙間なく細分化し、細分化されたそれぞれの区間に対して搬送を一時的に停止してCTスキャナによる検査を行う必要がある。したがって、検査されたタイヤ部材を、搬送経路を経て次工程に搬送するには、相当の時間を要し生産性を向上させるには不利になる。一方で、生産性を向上させるために、CTスキャナによる検査に伴ってCTスキャナよりも下流側へのタイヤ部材の搬送を一時的に停止する回数を減らすために、検査を行う区間を間引きすると、タイヤ部材の長手方向での所定の品質のバラつきの大きさを精度よく把握することができない。これに伴い、タイヤ部材の長手方向での所定の品質のバラつきを小さくするには不利になる。それ故、タイヤ部材を、長手方向での所定の品質のバラつきを小さくして生産性よく製造するには改善の余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため本発明のタイヤ部材の製造方法は、複数台の押出機によりそれぞれ押出された未加硫ゴムからなる複数種類の構成部材を接合して形成した長尺のタイヤ部材を、所定の品質を把握しつつ製造するタイヤ部材の製造方法において、前記タイヤ部材を長手方向に搬送しながら、前記タイヤ部材の表面側から前記タイヤ部材の所定長さ範囲に対してX線を照射して、前記所定長さ範囲のX線透過度に基づく画像データを取得する工程を連続的に継続して行って、前記長手方向に隙間なく連続した前記所定長さ範囲の前記画像データを取得し、取得したそれぞれの前記画像データでの濃淡に基づいて、前記所定の品質の前記タイヤ部材の前記長手方向でのバラつきの大きさを把握し、把握した前記バラつきの大きさに基づいて、複数の前記押出機のうちの少なくとも1台に内設されているスクリューの回転数を制御することにより、前記バラつきを是正することを特徴とする。
【0007】
本発明のタイヤ部材の製造システムは、種類の異なる未加硫ゴムからなる構成部材を押出す複数台の押出機を有し、これら複数種類の前記構成部材が接合されて形成されている長尺のタイヤ部材が、所定の品質が把握されつつ製造されるタイヤ部材の製造システムにおいて、前記タイヤ部材を長手方向に搬送する搬送装置と、前記搬送装置により搬送されている前記タイヤ部材の表面側から所定長さ範囲に対してX線を照射して前記所定長さ範囲のX線透過度に基づく画像データを取得するX線検査装置と、前記画像データが入力される演算装置と、それぞれの前記押出機に内設されているスクリューの回転を制御する制御装置とを有し、前記画像データを取得する工程が連続的に継続して行われて、前記長手方向に隙間なく連続した前記所定長さ範囲の前記画像データが取得されて、取得されたそれぞれの前記画像データでの濃淡に基づいて、前記演算装置により前記所定の品質の前記タイヤ部材長手方向でのバラつきの大きさが算出され、算出された前記バラつきの大きさに基づいて、少なくとも1台の前記押出機に内設されている前記スクリューの回転数が前記制御装置により制御されることで、前記バラつきが是正される構成にしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、前記タイヤ部材を長手方向に搬送しながら、前記タイヤ部材の表面側から所定長さ範囲に対してX線を照射して取得した前記画像データを用いるので、前記所定の品質の把握のために前記タイヤ部材の搬送を停止させる必要がない。そして、前記長手方向に隙間なく連続した前記所定長さ範囲の前記画像データを取得し、取得したそれぞれの前記画像データでの濃淡に基づいて前記所定の品質を精度よく把握できる。それ故、前記タイヤ部材の長手方向での前記所定の品質のバラつきの大きさを、迅速に精度よく把握するには有利になる。この精度良く把握したバラつきの大きさに基づいて、複数の前記押出機のうちの少なくとも1台に内設されている前記スクリューの回転数を制御して前記所定の品質の前記長手方向でのバラつきを是正する。そのため、前記タイヤ部材の長手方向での前記所定の品質のバラつきを小さくして、前記タイヤ部材を生産性よく製造するには有利になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】タイヤ部材の製造システムの実施形態を側面視で例示する説明図である。
図2図1のテラヘルツ波測定装置およびプロファイルセンサの周辺を拡大して例示する説明図である。
図3図2に例示する範囲を平面視で例示する説明図である。
図4図1のX線検査装置の周辺を拡大して例示する説明図である。
図5図4に例示する範囲を平面視で例示する説明図である。
図6】タイヤ部材を横断面視で例示する説明図である。
図7図6のタイヤ部材の一部を切り欠いて平面視で例示する説明図である。
図8】構成部材、タイヤ部材の断面積の長手方向での分布を例示する説明図である。
図9図1のX線検査装置により取得された画像データを例示する説明図である。
図10図6のタイヤ部材の幅方向位置でのX線の透過線量を例示するグラフ図である。
図11】構成部材M1の幅方向寸法の長手方向での分布を例示するグラフ図である。
図12】タイヤ部材の質量の長手方向での分布を例示するグラフ図である。
図13】タイヤ部材の製造システムの別の実施形態を側面視で例示する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明のタイヤ部材の製造方法および製造システムを、図に示した実施形態に基づいて説明する。
【0011】
図1図5に例示するタイヤ部材の製造システム1の実施形態は、複数種類の構成部材M1~M5を接合することで形成されるタイヤ部材Rの所定の品質を把握しつつ製造する。図中の矢印L、矢印Wはそれぞれ、タイヤ部材Rの長手方向、幅方向を示している。
【0012】
この実施形態では、図6図7に例示するような複数種類の構成部材M(M1~M5)が接合されて形成された長尺のタイヤ部材Rが製造される。タイヤ部材Rは、複数台の押出機8(8a~8e)によりそれぞれ押出された未加硫ゴムからなる複数種類の構成部材M1~M5が接合されたトレッドゴムである。製造されるタイヤ部材Rはトレッドゴムに限定されず、サイドゴムなど、ゴムを主材料にしていてタイヤの製造に用いられる公知の種々の部材である。
【0013】
それぞれの構成部材M1~M5は、種類が異なる未加硫ゴムであり、例えば、同種の原料ゴムに異なる配合剤が配合されている場合、同種の原料ゴムに同じ配合剤が異なる配合量で配合されている場合、異種の原料ゴムに異なる配合剤が配合されている場合、異種の原料ゴムに同じ配合剤が異なる配合量で配合されている場合などが該当する。
【0014】
構成部材Mの種類は複数であればよく5種類に限定されないが、例えば2種類以上8種類以下程度である。タイヤ部材Rのサイズは特に限定されないが、長さは例えば数m以上数百m以下であり、幅は例えば10mm以上2000mm以下、厚さ(最大厚さ)は例えば0.3mm以上100mm以下である。
【0015】
図6図7に例示するタイヤ部材Rでは、シート状の構成部材M2、M3が上下に積層され、その上に構成部材M4が積層され、幅方向両端部には、構成部材M2およびM3の幅方向両端部を覆う構成部材M5が積層されている。そして、タイヤ部材Rの幅方向中央部では構成部材M1が、タイヤ部材Rを上下に(厚さ方向に)貫通している。タイヤ部材Rの表面には構成部材M1、M4、M5が露出し、裏面には構成部材M1、M2、M5が露出していて、この裏面が搬送装置2に当接してタイヤ部材Rが搬送装置2に載置される。タイヤ部材Rが良品であれば、それぞれの構成部材M1~M5は、概ね図6に例示する横断面形状で長手方向Lの全長に延在している。尚、図面では構成部材Mどうしの境界を破線で示している。
【0016】
構成部材M1は、カーボンブラックが多量に配合されていてシリカ無配合のアーストレッドゴムである。構成部材M1は、断面が概ね矩形状で構成部材Mの中で最も厚く、カーボンブラックの含有率(重量割合)が構成部材Mの中で最も高くて比重(密度)が最も小さい部材である。構成部材M1の幅方向寸法は例えば0.5mm以上50mm以下である。
【0017】
構成部材M2は、カーボンブラック配合、シリカ無配合もしくは少量配合の接着用ゴムであり、構成部材Mの中で最も薄いシート状の部材である。構成部材M3は、カーボンブラック配合、シリカ無配合もしくは少量配合のアンダートレッドゴムであり、構成部材M2よりも厚いシート状の部材である。
【0018】
構成部材M4は、カーボンブラックに代えてシリカが多量に配合されているカーボンブラック無配合もしくは少量配合のキャップゴムである。構成部材M4は、構成部材Mの中で構成部材M1に次いで厚い部材であり、その表面には長手方向Lに延在する凹部および凸部を有していて、幅方向位置に応じて厚さが異なっている。構成部材M5は、カーボンブラック配合、シリカ無配合の端部ゴムである。構成部材M5は、タイヤ部材Rの幅方向端面の傾斜面を形成していて、幅方向位置に応じて厚さが異なっている。
【0019】
それぞれの構成部材M1~M5は比重(密度)が異なっていて、それぞれの比重(平均値)は予め把握されている。構成部材Mの中でシリカが最も多く顕著に配合されている構成部材M4は、他の構成部材M1、M2、M3、M5に比して比重が大きい。尚、それぞれの構成部材Mには要求性能に応じて、その他の公知の成分が含有される。また、上述した無配合とは、その成分の配合が皆無の場合だけを意味するのではなく、極微小量が含有される場合も含む。
【0020】
この製造システム1は、複数台の押出機8(8a~8e)と、搬送装置2と、X線検査装置3と、演算装置4と、制御装置9とを有している。この実施形態では、製造システム1はさらに、テラヘルツ波測定装置6、プロファイルセンサ7、巻取り機10、切断機11、振り分けコンベヤ12、排出コンベヤ13を有しているが、これらは任意で備えることができる。
【0021】
演算装置4にはモニタ5が通信可能に接続されている。搬送装置2の搬送方向上流側には押出機8が配置され、搬送方向下流側には、振り分けコンベヤ12を介して、巻取り機10と排出コンベヤ13とが並置されている。搬送装置2による搬送経路には、搬送方向上流側から下流側に向かって、テラヘルツ波測定装置6、プロファイルセンサ7、X線検査装置3の順に配列されているが、配列はこれに限定されずに適宜変更できる。搬送経路のX線検査装置3よりも搬送方向下流側では、搬送装置2の上方に切断機11が配置されている。
【0022】
搬送装置2は、タイヤ部材Rを長手方向Lに搬送する。搬送装置2としては、ベルトコンベヤ装置や多数の回転ローラが配列されたローラコンベヤ装置などの公知の種々の仕様を採用することができる。
【0023】
X線検査装置3は、照射部3aと受光部3bとを有している。照射部3aは搬送装置2に載置されているタイヤ部材Rの上方に配置され、受光部3bはこのタイヤ部材Rの下方に配置されている。したがって、搬送装置2によって搬送されているタイヤ部材Rは、照射部3aと受光部3bとの上下間を通過する。
【0024】
搬送装置2により搬送されているタイヤ部材Rの表面側(図では上側)から、照射部3aはタイヤ部材Rの所定長さ範囲Cに対して、タイヤ部材Rの全幅を網羅するようにX線を照射する。タイヤ部材Rを透過したX線は受光部3bに受光される。そして、X線が照射されたタイヤ部材Rの所定長さ範囲CのX線透過度に基づく画像データDがX線検査装置3により取得される。公知の種々の仕様のX線検査装置3を採用することができる。
【0025】
照射部3aは連続して、或いは、断続的にX線を照射し、長手方向Lに連続する所定長さ範囲Cのそれぞれの画像データDを取得する。長手方向Lに隣接する所定長さ範囲Cどうしは、長手方向Lに多少重複してもよいが、長手方向Lには離間しないようにする。X線を断続的に照射する際には、搬送装置2によるタイヤ部材Rの搬送速度が速くなる程、或いは、所定長さ範囲Cが小さい程、インターバルが短くなって頻繁にX線を照射することになる。換言すると、搬送装置2による搬送速度が遅くなる程、或いは、所定長さ範囲Cが大きい程、X線を断続的に照射する際のインターバルが長くなる。
【0026】
所定長さ範囲Cの大きさ(長さ)や搬送装置2による搬送速度は任意に設定することができるが、所定長さ範囲Cの大きさは例えば50mm(5mm以上1000mm以下)程度である。また、搬送装置2による搬送速度は例えば50mm/s以上1000mm/s以下程度である。また、X線の照射強度(X線管の電圧および電流)は、事前テストなどを行って、検査対象のタイヤ部材Rの仕様に応じて、より鮮明な画像データDを取得できる範囲に設定する。
【0027】
演算装置4には、X線検査装置3により取得された画像データDが逐次、入力される。演算装置4にはその他に種々のデータが入力され、インストールされているプログラムを用いて種々の演算処理が行われる。演算装置4としては、公知のコンピュータを用いることができる。演算装置4は、X線検査装置3とは独立別個に備えてもよく、X線検査装置3の一部として組み込まれた仕様でもよい。
【0028】
モニタ5には、X線検査装置3により取得された画像データD、演算装置4により演算処理されたデータ(画像データなど)が表示される。モニタ5としては、公知の種々の仕様を採用すればよい。
【0029】
テラヘルツ波測定装置6は、テラヘルツ周波数(実質的には0.1THz~10THz)の電磁波(電波)を発信する発信部6aと、タイヤ部材Rの内部に進入して反射した反射波を検出する検出部6bとを有している。この実施形態では、発信部6aおよび検出部6bは、搬送装置2に載置されているタイヤ部材Rの裏面側(図では下側)に配置されている。
【0030】
発信部6aから発信された電磁波は、タイヤ部材Rの内部に進入して、構成部材Mの境界で反射する。境界で反射した反射波は検出部6bにより検出される。テラヘルツ波測定装置6は、反射波の反射角(境界での屈折角)、電磁波の発信から検出までの時間に基づいて、タイヤ部材Rの裏面側に偏在している少なくとも1種類の構成部材Mの横断面積(横断面形状)を算出する。構成部材Mの境界が大きく変動している(凹凸具合が大きい)と反射波が拡散して精度よく構成部材Mの横断面積(横断面形状)を算出できない。そのため、この実施形態では、平坦なシート状の構成部材M2、M3の横断面積(横断面形状)をテラヘルツ波測定装置6により算出にする。テラヘルツ波測定装置6は、公知の仕様のものを採用することができる。
【0031】
プロファイルセンサ7は、レーザ光を照射する照射部7aと、タイヤ部材Rの外表面で反射した反射光を受光する受光部7bとを有している。この実施形態では、照射部7aと受光部7bとの組が、搬送装置2に載置されているタイヤ部材Rの表面側(図では上側)と裏面側(図では下側)とに配置されている。
【0032】
それぞれの照射部7aから照射されたレーザ光は、タイヤ部材Rの外表面(外郭表面)で反射する。この反射した反射光は、組となる受光部7bにより受光される。プロファイルセンサ7は、反射光の反射角、レーザ光の照射から受光までの時間に基づいて、タイヤ部材Rの横断面積(横断面形状)を算出する。プロファイルセンサ7は、公知の仕様のものを採用することができる。
【0033】
押出機8(8a~8e)は、回転駆動されるスクリュー8sが内設されたシリンダを有し、原料ゴムと各種の配合剤とが混練された未加硫ゴムを、スクリュー8sを回転させて適度な粘度にしつつ前方に送って押出ヘッド8Hから押出す。公知の種々の仕様の押出機8を採用することができる。この実施形態では、タイヤ部材Rが5種類の構成部材M1~M5を接合して形成されているので、5台の押出機8a~8eが使用されている。それぞれの押出機8a、8b、8c、8d、8eからはそれぞれ、対応する構成部材M1、M2、M3、M4、M5を形成する異なる種類の未加硫ゴムが押出される。押出機8a~8eにより押出されたそれぞれの未加硫ゴムは、押出ヘッド8Hを通過することで接合されて一体化したタイヤ部材Rとして押出ヘッド8Hから押出される。
【0034】
制御装置9は、それぞれの押出機8のスクリュー8sの回転を制御する。制御装置9は演算装置4と通信可能に接続されていて、演算装置4から様々なデータが入力される。制御装置9は、入力された様々なデータを用いてに基づいてそれぞれの押出機8のスクリュー8sの回転数を制御する。制御装置9としては、公知のコンピュータを用いることができる。
【0035】
巻取り機10は、搬送装置2により搬送されたタイヤ部材Rを巻き取って一時的にストックする。巻取り機10は、タイヤ部材Rをライナとともに巻き取る巻取りドラムを有している。製造されたタイヤ部材Rが次工程で直ちに使用される押出・成形直結ラインなどでは巻取り機10は不要になる。
【0036】
切断機11は、搬送装置2に載置されているタイヤ部材Rを横断して切断する。切断機11としては回転丸刃など公知のカッタが採用される。
【0037】
振り分けコンベヤ12は、一方端部(搬送方向上流側端部)を中心にして上下に旋回する。搬送装置2により搬送されたタイヤ部材Rは、振り分けコンベヤ12の他方端部が下方に旋回すると巻取り機10に導かれ、上方に旋回すると排出コンベヤ13に導かれる。
【0038】
以下、本発明を適用して、タイヤ部材Rの所定の品質の長手方向Lでのバラつきの大きさを把握しつつタイヤ部材Rを製造する手順の一例を説明する。まず、所定の品質として、特定成分(カーボンブラック)の含有率が他の構成部材M2~M5よりも高い未加硫ゴムにより形成されている構成部材M1の幅方向寸法の長手方向Lでの分布を把握する場合を説明する。
【0039】
図1に例示するように、押出機8から押出ヘッド8Hを経て押出されたタイヤ部材Rを、前方に配置されている搬送装置2に載置して長手方向Lに搬送する。この搬送過程では、図2図3に例示するように、タイヤ部材Rを長手方向Lに搬送しながら、テラヘルツ波測定装置6、プロファイルセンサ7を用いて、タイヤ部材Rの品質検査を行う。
【0040】
テラヘルツ波測定装置6では、長手方向Lに搬送されているタイヤ部材Rの裏面側から発信部6aによってタイヤ部材Rに向かって連続的にテラヘルツ周波数の電磁波を発信する。タイヤ部材Rに進入して反射した反射波を検出部6bにより検出する。これにより、テラヘルツ波測定装置6では、構成部材M2、M3の横断面形状(横断面積)が把握される。それ故、図8に例示するように、構成部材M2、M3の横断面積の長手方向Lでの分布が把握される。それぞれの構成部材M2、M3の比重は既知なので、構成部材M2、M3の質量の長手方向Lでの分布も把握されることになる。
【0041】
プロファイルセンサ7では、長手方向Lに搬送されているタイヤ部材Rに向かって照射部7aによってレーザ光を連続的に照射する。タイヤ部材Rの外表面で反射したレーザ光の反射光を受光部7bにより受光する。これにより、プロファイルセンサ7では、タイヤ部材Rの横断面形状(横断面積)が把握される。それ故、図8に例示するように、タイヤ部材Rの横断面積の長手方向Lでの分布が把握される。
【0042】
その後引き続き、図4図5に例示するように、タイヤ部材Rを長手方向Lに搬送しながら、X線検査装置3を用いて構成部材M1の幅方向寸法の長手方向Lでの分布を把握する。そこで、搬送されているタイヤ部材Rの表面側から所定長さ範囲Cに対して、照射部3aによりX線が照射される。タイヤ部材Rの所定長さ範囲Cを透過したX線は、受光部3bに逐次受光される。
【0043】
これにより、X線検査装置3によって、所定長さ範囲CのX線透過度に基づく図9に例示する画像データDが取得される。このように画像データDを取得する工程を連続的に継続して行うことにより、長手方向Lに隙間なく連続した所定長さ範囲Cの画像データDが取得される。取得したそれぞれの画像データDは、演算装置4に逐次入力され、演算処理されて解析される。演算装置4では、画像データDでの濃淡に基づいて、構成部材M1の幅方向寸法の長手方向Lでのバラつきの大きさ(バラつき具合)が算出される。この演算装置4による算出工程について以下、詳述する。
【0044】
照射部3aから照射されたX線は、タイヤ部材Rを透過して受光部3bにより受光される。タイヤ部材Rが厚くなる程、タイヤ部材RでのX線の減衰がより大きくなる(吸収量が多くなる)ため受光部3bにより受光されるX線量(透過線量)が減少する。また、タイヤ部材RにX線を減衰させ易い成分(原子番号と密度が大きい)の含有量が多いと、受光部3bにより受光されるX線量(透過線量)が減少する。これに伴い、得られる画像データDはより黒色に近くなって濃くなる。一方、タイヤ部材Rが薄くなる程、タイヤ部材RでのX線の減衰がより小さくなる(吸収量が少なくなる)ため受光部3bにより受光されるX線量(透過線量)が増加する。また、タイヤ部材RにX線を減衰させ易い成分の含有量が少なければ、受光部3bにより受光されるX線量(透過線量)が増加する。これに伴い、得られる画像データDはより白色に近くなって淡くなる。
【0045】
シリカはカーボンブラックに比して、X線を顕著に減衰させる(吸収する)成分である。したがって、シリカが含有されている、或いはシリカの含有量が多い構成部材Mは、シリカに代えてカーボンブラックが含有されている、或いはカーボンブラックの含有量が多い構成部材Mよりも、画像データDは黒色に近くなって濃くなる。このように画像データDでの濃淡は、X線が透過する位置でのタイヤ部材Rの厚さおよび含有成分に依存する。
【0046】
図10で一点鎖線Zによって例示するように、このタイヤ部材RのX線の透過線量Zは幅方向Wで変化する。尚、図10ではタイヤ部材Rの幅方向位置を理解し易くするため、タイヤ部材Rの横断面図がグラフの下方に記載されている。この透過線量Zは、X線をタイヤ部材Rの表面側から照射した場合に裏面側で受光されるX線量を示している。この透過線量Zは、X線が透過する位置のタイヤ部材Rの厚さ、比重および減弱係数に基づいて算出することができる。透過線量Zがより大きい幅方向位置になる程、画像データDでは色が濃くなる。
【0047】
それ故、図9に例示する画像データDでは、構成部材M4の最も厚い位置では色が最も濃く、最も薄い位置では色が淡くなっている。構成部材M1は最も厚い部材ではあるが、比重が最も小さい部材であるため、構成部材M1が配置されている位置では画像データDの色は淡くなっている。構成部材M5が配置されている位置では、タイヤ部材Rの幅方向端に向かって画像データDの色は淡くなっている。図9では、色の濃さに応じて斜線の配置ピッチを変化させていて、相対的に色が濃い部分では斜線の配置ピッチを小さくして密に記載している。
【0048】
したがって、図9の画像データDには色が濃い部分と淡い部分が存在していて、色の淡い部分は複数箇所(構成部材M4の最も薄い位置、構成部材M1の位置、構成部材M5の位置)に存在している。したがって、画像データDでの単純な濃淡だけでは、いずれの淡い部分が構成部材M1の存在している位置であるのか識別し難い。ただし、同じ種類の未加硫ゴムで厚さが変化する場合は、透過線量Zの変化は厚さの変化と同様に徐々に変化するので画像データDでの濃淡の変化が緩やかになる。一方、異なる種類の未加硫ゴムでは、含有成分の違いに起因して透過線量Zが大きく変化するので画像データDでの濃淡の変化が急激になる。
【0049】
そこで、この実施形態では、図10に例示するタイヤ部材Rの幅方向Wでの透過線量Zを把握しておき、透過線量Zの差異の大きさを利用する。即ち、それぞれの構成部材Mの透過線量Zを予め把握しておき、図9に例示するように幅方向Wに隣り合う構成部材Mの境界でのその構成部材Mどうしの透過線量Zの差異の大きさの基準範囲を設定する。つまり、幅方向Wでの透過線量Zの変化が基準範囲であれば、構成部材M1とM4とが幅方向Wに隣り合っていることが実質的に保証できるように基準範囲を設定する。
【0050】
そして、設定した基準範囲に対応する画像データDの濃淡の差異の範囲を判定基準として演算装置4に記憶する。演算装置4は、それぞれの画像データDに対して幅方向Wでの濃淡の差異の大きさを算出して、その差異が判定基準に入っている位置を検出すると、その検出した幅方向位置が構成部材M1とM4との境界であると判断する。タイヤ部材Rに1本の構成部材M1が長手方向Lに延在しているのであれば、構成部材M1とM4との境界が幅方向Wに間隔をあけた2箇所で検出され、その境界どうしの幅方向Wの間隔が構成部材M1の幅方向寸法として算出される。
【0051】
その結果、図11に例示するように、タイヤ部材Rでの構成部材M1の幅方向寸法の長手方向Lでのバラつきの大きさが算出される。図11の縦軸のMcは、構成部材M1の幅方向寸法の設計値を示していて、製造されたタイヤ部材Rでは構成部材M1の幅方向寸法が、長手方向Lでどの程度変動しているかを把握できる。図11において幅方向寸法がゼロになっている場合は、構成部材M1が長手方向Lの途中で途切れていることを意味する。したがって、図11のデータによれば、構成部材M1の長手方向Lに対する連続性を把握することができる。
【0052】
この実施形態では、照射部3aからタイヤ部材Rの所定長さ範囲Cに対して、タイヤ部材Rの全幅を網羅するようにX線が照射されているが、タイヤ部材Rでの構成部材M1が配置されている幅方向位置は予め把握されている。したがって、X線を照射する幅方向範囲は、構成部材M1が配置されているとして予め把握されている幅方向位置を含む、より狭い範囲に設定することもできる。
【0053】
算出された構成部材M1の幅方向寸法の長手方向Lでのバラつきの大きさが、予め設定された許容範囲内であれば、該当する所定長さ範囲Cは良品部分と判断される。そして、搬送装置2により搬送されたタイヤ部材Rの良品部分は、振り分けコンベヤ12により、巻取り機10に導かれて巻き取られる。押出・成形直結ラインなどの場合は、タイヤ部材Rの良品部分はそのまま次工程に搬送される。
【0054】
算出された構成部材M1の幅方向寸法の長手方向Lでのバラつきの大きさが許容範囲外の場合は、該当する所定長さ範囲C(不良部分)は搬送装置2の上で、切断機11により切断される。そして、その切断された所定長さ範囲C(不良部分)が搬送装置2の搬送方向下流端部まで搬送されると、振り分けコンベヤ12は排出コンベヤ13側に旋回する。これにより、切断された所定長さ範囲C(不良部分)は排出コンベヤ13に載置されて搬送されて、製造ラインから除外される。
【0055】
構成部材M1の幅方向寸法の長手方向Lでのバラつきが過大になると、許容範囲外になる可能性が高くなる。そこで、制御装置9は、上述したように算出されて把握された構成部材M1の幅方向寸法のバラつきの大きさに基づいて、複数の押出機8のうちの少なくとも1台に内設されているスクリュー8sの回転数を制御する。例えば、構成部材M1を形成する未加硫ゴムを押出す押出機8aのスクリュー8sの回転数を制御して、この幅方向寸法のバラつきを是正して設計値Mcにより近づける。構成部材M1の幅方向寸法が設計値Mcに対して過小であれば押出機8aのスクリュー8sの回転数を上げ、幅方向寸法が設計値Mcに対して過大であれば、スクリュー8sの回転数を下げる。押出機8aに限らず、構成部材M1の幅方向寸法の変動により大きく影響する押出機8を優先してそのスクリュー8sの回転数を制御するとよい。
【0056】
上述したように、搬送装置2によって長手方向Lに搬送されている状態のタイヤ部材Rの表面側から所定長さ範囲Cに対してX線を照射して取得した画像データDを用いるので、構成部材M1の幅方向寸法を把握するためにタイヤ部材Rの搬送を停止させる必要はない。そして、長手方向Lに隙間なく連続した所定長さ範囲Cの画像データDを取得して、それぞれの画像データDでの濃淡に基づいて演算装置4により、構成部材M1の幅方向寸法を精度よく把握することができる。したがって、それ故、長手方向Lでの構成部材M1の幅方向寸法のバラつき(即ち、構成部材M1の長手方向Lの連続性)を、迅速に精度よく把握するには有利になる。さらに、精度良く把握した構成部材M1の幅方向寸法のバラつきの大きさに基づいて、上述したようにスクリュー8sの回転数を制御することで、そのバラつきを小さくして、タイヤ部材Rを生産性よく製造するには有利になる。
【0057】
上述の実施形態では、特定成分としてカーボンブラックの含有率が他の構成部材Mを形成している未加硫ゴムよりも高い未加硫ゴムにより形成されている構成部材M1の長手方向での分布を把握する場合を例にしている。この特定成分はカーボンブラックに限らず、目的に応じてその他の成分にすることもできる。また、検査対象とする特定部材は、構成部材M1に限らず、他の構成部材Mにすることもできる。
【0058】
次に、X線検査装置3により検査を行う所定の品質として、タイヤ部材Rの質量の長手方向Lでの分布を把握する場合を説明する。尚、この分布は、上述した構成部材M1の幅方向寸法の長手方向Lでのバラつきの大きさに代えて、或いは、加えて、把握することができる。
【0059】
事前に、多数のタイヤ部材Rのサンプルについて上述した画像データDを同条件下で取得する。また、それぞれのサンプルの単位長さ当たりの質量データを取得する。これらの画像データDおよび質量データを教師データとして機械学習させることにより、検査対象として取得した画像データDから、その画像データDに対応する所定長さ範囲Cの単位長さ当たりの質量を推定する予測モデル(コンピュータプログラム)を生成して、演算装置4に記憶する。
【0060】
画像データDでの濃淡は、上述したようにタイヤ部材Rの厚さおよび含有成分に依存して変化するので、その濃淡の分布はその画像データDに対応するタイヤ部材Rの部分(所定の長さ範囲C)の単位長さ当たりの質量と相関関係がある。そこで、例えば画像データDを多数の微小領域に細分化して、それぞれの微小領域の濃淡の程度およびそれぞれの微小領域の位置などと、その画像データDに対応する単位長さ当たりの質量との相関関係を機械学習させて得ることで推定モデルを生成する。機械学習の手法としては、ニューラルネットワークを用いたディープラーニングなど公知の種々の手法を用いることができる。
【0061】
搬送されているタイヤ部材Rのそれぞれの所定長さ範囲Cの質量を推定する際には、X線検査装置3により逐次取得された画像データDを推定モデルに入力して演算装置4により演算処理する。これにより、それぞれの所定長さ範囲Cの質量が推定、算出される。
【0062】
その結果、図12に例示するように、タイヤ部材Rの質量(単位長さ当たりの質量)の長手方向Lでのバラつきの大きさが算出される。図12の縦軸のRaは、タイヤ部材Rの質量(単位長さ当たりの質量)の許容範囲を示していて、図12によれば、製造されたタイヤ部材Rでは、その質量が長手方向Lでどの程度変動しているかを把握できる。図12において質量が許容範囲Ra内の場合は、該当する所定長さ範囲Cは良品部分として判断され、許容範囲Ra外になった場合は、該当する所定長さ範囲Cは不良部分として判断される。
【0063】
この実施形態でも先の実施形態と同様に、良品部分に該当する所定長さ範囲Cは振り分けコンベヤ9により巻取り機7に導かれる。不良部分に該当する所定長さ範囲Cは搬送装置2の上で、切断機8により切断されて、振り分けコンベヤ9により排出コンベヤ10に導かれて製造ラインから除外される。
【0064】
タイヤ部材Rの質量の長手方向Lでのバラつきが過大になると、許容範囲Ra外になる可能性が高くなる。そこで、制御装置9は、上述したように算出されて把握されたタイヤ部材Rの質量のバラつきの大きさに基づいて、複数の押出機8のうちの少なくとも1台に内設されているスクリュー8sの回転数を制御する。この制御を行うことで、タイヤ部材Rの質量の長手方向Lでのバラつきを是正して、質量を許容範囲Raに維持する。
【0065】
この実施形態では、X線検査装置3によって構成部材M1の幅方向位置および幅方向寸法が把握され、プロファイルセンサ7によってタイヤ部材Rの横断面形状が把握されるので、構成部材M1の横断面積、質量も把握できる。また、テラヘルツ波測定装置6によって構成部材M2、M3の横断面積、質量が把握される。したがって、把握されるタイヤ部材Rの横断面積(質量)から構成部材M1、M2、M3の横断面積(質量)を差し引くと、構成部材M4とM5を合計した横断面積(質量)が判明する。構成部材M5の横断面積(質量)は構成部材M4に対して非常に小さいので、構成部材M4の横断面積(質量)も概ね把握できる。そこで、把握された構成部材M2、M3、M4のそれぞれの横断面積(質量)の長手方向Lでのバラつきの大きさに基づいて、上述した構成部材M1の幅方向寸法のバラつきの是正と同様に、複数の押出機8のうちの少なくとも1台に内設されているスクリュー8sの回転数を制御装置9により制御して、それぞれの横断面積(質量)のバラつきを是正することができる。その結果、タイヤ部材Rの質量の長手方向Lでのバラつきが是正される。
【0066】
図13に例示する製造システム1の実施形態は、搬送装置2の長手方向Lに離間した2箇所に、テラヘルツ波測定装置6、プロファイルセンサ7、X線検査装置3の一群が配置されている。即ち、この実施形態では、図1に例示する製造システム1に対して、搬送装置2の搬送方向下流側に、テラヘルツ波測定装置6、プロファイルセンサ7、X線検査装置3の一群が追加されている。
【0067】
搬送装置2の搬送方向上流側に配置されているテラヘルツ波測定装置6、プロファイルセンサ7、X線検査装置3の一群は、先の実施形態と同様に機能する。即ち、この一群はタイヤ部材Rの品質を検査し、その検査結果を制御装置9によるスクリュー8sの回転数の制御のためにフィードバックする。一方、搬送方向下流側に配置されている一群は、タイヤ部材Rの品質を検査して、検査結果が許容範囲を満たすか否かを単純に判定する機能を有する。
【符号の説明】
【0068】
1 製造システム
2 搬送装置
3 X線検査装置
3a 照射部
3b 受光部
4 演算装置
5 モニタ
6 テラヘルツ波測定装置
6a 発信部
6b 検出部
7 プロファイルセンサ
7a 照射部
7b 受光部
8(8a~8e) 押出機
8s スクリュー
8H 押出ヘッド
9 制御装置
10 巻取り機
11 切断機
12 振り分けコンベヤ
13 排出コンベヤ
R タイヤ部材
M1、M2、M3、M4、M5 構成部材
C 所定長さ範囲
D 画像データ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13