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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-19
(45)【発行日】2023-12-27
(54)【発明の名称】乗物用シート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/70 20060101AFI20231220BHJP
   A47C 7/28 20060101ALI20231220BHJP
   A47C 7/32 20060101ALI20231220BHJP
【FI】
B60N2/70
A47C7/28 Z
A47C7/32
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022093545
(22)【出願日】2022-06-09
(62)【分割の表示】P 2018073977の分割
【原出願日】2018-04-06
(65)【公開番号】P2022111318
(43)【公開日】2022-07-29
【審査請求日】2022-07-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116034
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 啓輔
(74)【代理人】
【識別番号】100144624
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 達也
(74)【代理人】
【識別番号】100195224
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 宏憲
(72)【発明者】
【氏名】大沼 弘治
(72)【発明者】
【氏名】阿部 龍平
【審査官】松江 雅人
(56)【参考文献】
【文献】特許第7089164(JP,B2)
【文献】特開2014-162431(JP,A)
【文献】特開2014-171506(JP,A)
【文献】特開2015-209086(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第03228495(EP,A1)
【文献】国際公開第2005/108160(WO,A1)
【文献】特開2015-003576(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/70
A47C 7/02-7/35
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向した状態で離間して配置された一対の対向フレームと、
前記一対の対向フレームの対向方向に直交する直交方向に離間して配置され、前記一対の対向フレームを連結する一対の連結フレームと、
前記一対の連結フレームに架設された樹脂部材であって、着座者からの荷重を受ける樹脂部材と、
前記樹脂部材により一部が覆われたワイヤと、を備え、
前記ワイヤは、少なくとも一方の端部が前記樹脂部材から露出していることを特徴とする乗物用シート。
【請求項2】
前記ワイヤは、両方の端部が、前記樹脂部材から露出し、かつ、互いに近接した状態で対向して配置されていることを特徴とする請求項1に記載の乗物用シート。
【請求項3】
前記両方の端部は、連結されていることを特徴とする請求項2に記載の乗物用シート。
【請求項4】
前記両方の端部に係合して前記両方の端部を連結する連結部材を備えることを特徴とする請求項3に記載の乗物用シート。
【請求項5】
前記両方の端部は、かしめ固定されていることを特徴とする請求項3に記載の乗物用シート。
【請求項6】
前記両方の端部は、溶接されていることを特徴とする請求項3に記載の乗物用シート。
【請求項7】
前記樹脂部材は、前記端部を露出させる開口部と、前記開口部の周囲に形成された肉厚の補強部とを有することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の乗物用シート。
【請求項8】
前記連結部材は、肉厚の補強部を有することを特徴とする請求項4に記載の乗物用シート。
【請求項9】
前記端部は、前記ワイヤの前記直交方向に延びる部分から屈曲して着座者側とは反対側に向けて延びていることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の乗物用シート。
【請求項10】
前記樹脂部材は、左右の端部に、左右方向外側にいくにつれて着座者側に位置するように延びる支持部を有し、
前記端部は、前記ワイヤの前記直交方向に延びる部分から屈曲して左右方向外側に向けて延び、先端部が前記支持部の着座者側とは反対側に配置されていることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の乗物用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着座者からの荷重を受ける線材を備えた乗物用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
乗物用シートとして、例えば、特許文献1には、枠状のクッションフレームと、クッションフレームのフロントパネルとリヤパイプに架設された2本の前後ワイヤと、2本の前後ワイヤと交差するように配置された中央ワイヤおよび架橋ワイヤとを備えたものが開示されている。この技術において、クッションフレームの内側に配置されたワイヤ(線材)は、クッションパッドを介して着座者からの荷重を受ける部材として機能している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-162431号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、クッションフレームの内側に配置された線材を板状の樹脂部材によって覆った状態で互いに連結すると、着座者からの荷重を面で受けることができるようになるので、着座フィーリングを良好なものとすることができる。一方で、特許文献1の中央ワイヤのような線材を樹脂で覆うと、人が座って線材や樹脂部材が撓んだときに、線材の端部のエッジが樹脂部材と擦れて樹脂部材に負担がかかる可能性がある。
【0005】
そこで、本発明は、線材から樹脂部材に負担がかかるのを抑制することができる乗物用シートを提供することを目的とする。
また、本発明は、樹脂部材の剛性を向上させることを目的とする。
また、本発明は、線材の両方の端部を簡単に連結することを目的とする。
また、本発明は、線材の両方の端部をしっかりと連結することを目的とする。
また、本発明は、パッド材が傷むのを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記した目的を達成するため、本発明の乗物用シートは、対向した状態で離間して配置された一対の対向フレームと、前記一対の対向フレームの対向方向に直交する直交方向に離間して配置され、前記一対の対向フレームを連結する一対の連結フレームと、前記一対の連結フレームに架設された架設線材と、着座者側から見て前記架設線材と交差するように配置された補強線材と、前記架設線材および前記補強線材の少なくとも一部を覆った状態で前記架設線材と前記補強線材を連結する板状の樹脂部材と、を備え、前記補強線材は、少なくとも一方の端部が前記樹脂部材から露出していることを特徴とする。
【0007】
このような構成によれば、人が座って補強線材や樹脂部材が撓んでも補強線材の端のエッジと樹脂部材とが擦れないので、補強線材から樹脂部材に負担がかかるのを抑制することができる。
【0008】
前記した乗物用シートにおいて、前記補強線材は、両方の端部が、前記樹脂部材から露出し、かつ、互いに近接した状態で対向して配置されている構成とすることができる。
【0009】
これによれば、架設線材と交差するように配置される補強線材を環状とすることができるので、補強線材の対向方向に延びる部分を直交方向に並ぶように複数設けることができる。これにより、補強線材を覆う樹脂部材の剛性を向上させることができる。
【0010】
前記した乗物用シートにおいて、前記両方の端部は、連結されている構成とすることができる。
【0011】
これによれば、補強線材の剛性を向上させることができるので、補強線材を覆う樹脂部材の剛性をより向上させることができる。
【0012】
前記した乗物用シートは、前記両方の端部に係合して前記両方の端部を連結する連結部材を備える構成とすることができる。
【0013】
これによれば、補強線材の両方の端部を簡単に連結することができる。
【0014】
前記した乗物用シートにおいて、前記両方の端部は、かしめ固定されている構成とすることができる。
【0015】
これによれば、補強線材の両方の端部をしっかりと連結することができる。
【0016】
前記した乗物用シートにおいて、前記両方の端部は、溶接されている構成とすることができる。
【0017】
これによれば、補強線材の両方の端部をしっかりと連結することができる。
【0018】
前記した乗物用シートにおいて、前記樹脂部材は、前記端部を露出させる開口部と、前記開口部の周囲に形成された肉厚の補強部とを有する構成とすることができる。
【0019】
これによれば、樹脂部材の剛性、詳しくは、補強線材の端部を露出させるための開口部周辺の剛性を向上させることができる。
【0020】
前記した乗物用シートにおいて、前記連結部材は、肉厚の補強部を有する構成とすることができる。
【0021】
これによれば、連結部材の剛性を向上させることができるので、連結部材によって補強線材の両方の端部をしっかりと連結することができる。
【0022】
前記した乗物用シートにおいて、前記端部は、前記補強線材の前記直交方向に延びる部分から屈曲して着座者側とは反対側に向けて延びている構成とすることができる。
【0023】
これによれば、補強線材の端のエッジが樹脂部材の着座者側に配置されるパッド材に接触しにくくなるので、パッド材が傷むのを抑制することができる。
【0024】
前記した乗物用シートにおいて、前記樹脂部材は、左右の端部に、左右方向外側にいくにつれて着座者側に位置するように延びる支持部を有し、前記端部は、前記補強線材の前記直交方向に延びる部分から屈曲して左右方向外側に向けて延び、先端部が前記支持部の着座者側とは反対側に配置されている構成とすることができる。
【0025】
これによれば、補強線材の端のエッジが樹脂部材の着座者側に配置されるパッド材に接触しにくくなるので、パッド材が傷むのを抑制することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、線材から樹脂部材に負担がかかるのを抑制することができる。
【0027】
また、本発明によれば、補強線材の両方の端部を樹脂部材から露出させ、かつ、互いに近接した状態で対向して配置することで、樹脂部材の剛性を向上させることができる。
【0028】
また、本発明によれば、補強線材の両方の端部を連結することで、樹脂部材の剛性をより向上させることができる。
【0029】
また、本発明によれば、補強線材の両方の端部を連結部材によって連結することで、補強線材の両方の端部を簡単に連結することができる。
【0030】
また、本発明によれば、補強線材の両方の端部をかしめ固定することで、補強線材の両方の端部をしっかりと連結することができる。
【0031】
また、本発明によれば、補強線材の両方の端部を溶接することで、補強線材の両方の端部をしっかりと連結することができる。
【0032】
また、本発明によれば、樹脂部材の開口部の周囲に肉厚の補強部を形成することで、樹脂部材の開口部周辺の剛性を向上させることができる。
【0033】
また、本発明によれば、連結部材に肉厚の補強部を設けることで、連結部材によって補強線材の両方の端部をしっかりと連結することができる。
【0034】
また、本発明によれば、補強線材の端部が直交方向に延びる部分から屈曲して着座者側とは反対側に向けて延びる構成とすることで、パッド材が傷むのを抑制することができる。
【0035】
また、本発明によれば、補強線材の端部が直交方向に延びる部分から屈曲して左右方向外側に向けて延びる構成とし、先端部を支持部の着座者側とは反対側に配置することで、パッド材が傷むのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】実施形態に係る乗物用シートを示す図である。
図2】クッションフレームと支持部材を示す図である。
図3】架設線材と補強線材を示す図である。
図4】支持部材の開口部付近を拡大した図である。
図5】支持部材を下から見た図である。
図6図5のX-X断面図である。
図7】第1横ワイヤの端部が下側に延びる形態を示す図(a)と、左右方向外側に延びる形態を示す図(b)である。
図8】第1横ワイヤの端部が連結部材によって連結された形態を示す図(a)と、連結部材を示す図(b)である。
図9】第1横ワイヤの端部がかしめ具によって連結された形態を示す図である。
図10】第1横ワイヤの端部が溶接部によって連結された形態を示す図(a)~(c)である。
図11】第1横ワイヤの端部が溶接部によって連結された形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、添付の図面を参照しながら発明の実施形態について説明する。なお、本明細書において、前後、左右、上下は、シートに座った者(着座者)から見た、前後、左右、上下を基準とする。
図1に示すように、本実施形態の乗物用シートは、自動車の運転席や助手席などで使用される車両用シートSとして構成され、シートクッションS1と、シートバックS2とを備えている。
【0038】
シートクッションS1の内部には、シートクッションS1のフレームを構成する、図2に示すようなクッションフレームF1が内蔵されている。シートクッションS1は、クッションフレームF1に、ウレタンフォームなどからなるパッド材と、布地や皮革などからなる表皮材を被せることで構成されている。また、図示は省略するが、シートバックS2は、シートバックS2のフレームを構成するバックフレームに、パッド材と、表皮材を被せることで構成されている。
【0039】
クッションフレームF1は、一対の対向フレームの一例としての左右のサイドフレーム11と、一対の連結フレームの一例としてのフロントフレーム12およびリアフレーム13と、パンフレーム14とを備えている。なお、本実施形態では、左右方向が「一対の対向フレームの対向方向」に相当し、前後方向が「対向方向に直交する直交方向」に相当する。また、本実施形態では、上側が「着座者側」に相当し、下側が「着座者側とは反対側」に相当する。
【0040】
左右のサイドフレーム11は、前後に長い長尺状のフレームであり、左右方向において対向した状態で離間して配置されている。各サイドフレーム11は、板金からなり、周縁部が左右方向内側に延出した断面形状を有している。
フロントフレーム12とリアフレーム13は、前後方向に離間して配置されている。フロントフレーム12とリアフレーム13は、金属製のパイプ材からなり、フロントフレーム12が左右のサイドフレーム11の前部同士を連結しており、リアフレーム13がフロントフレーム12の後方に配置され、左右のサイドフレーム11の後部同士を連結している。
パンフレーム14は、左右のサイドフレーム11の前端部同士を連結するように配置されている。パンフレーム14は、板金からなる。
【0041】
枠状のクッションフレームF1の内側、言い換えると、左右のサイドフレーム11の間には、板状の支持部材20が配置されている。支持部材20は、シートクッションS1の図示しないパッド材を介して着座者からの荷重を受ける部材であり、架設線材100と、補強線材200と、板状の樹脂部材300とを備えて構成されている。詳細については後述するが、架設線材100と補強線材200は、金属製の線材からなり、左右のサイドフレーム11の間に配置されている。また、樹脂部材300は、樹脂からなり、インサート成形などにより架設線材100と補強線材200を覆った状態で架設線材100および補強線材200と一体に形成されている。
【0042】
図3に示すように、架設線材100は、フロントフレーム12とリアフレーム13に架設されている。架設線材100は、左右に並んで複数設けられている。具体的に、架設線材100は、左右の第1縦ワイヤ110と、第2縦ワイヤ120とを含む。
【0043】
第1縦ワイヤ110は、左右に離間して配置され、第1延在部111と、第2延在部112と、屈曲部113と、第1傾斜部114と、第1フック部115と、第2傾斜部116と、第2フック部117とを有している。
第1延在部111および第2延在部112は、前後に延びている。
【0044】
屈曲部113は、第1延在部111と第2延在部112の間に位置し、延在部111,112に対して左右方向外側に向けて略U字状に突出している。具体的には、屈曲部113は、延在部111,112に対して左右方向外側の斜め上方に向けて突出している。
【0045】
第1傾斜部114は、第1延在部111の前端から前斜め上方に向けて延び、第2傾斜部116は、第2延在部112の後端から上斜め後方に向けて延びている。
第1フック部115は、第1傾斜部114の前端から延び出て上に向けて凸となる略円弧状に形成され、第2フック部117は、第2傾斜部116の上端から延び出て略円弧状に形成されている。
【0046】
第2縦ワイヤ120は、左右の第1縦ワイヤ110の間に配置され、延在部121と、第1傾斜部124と、第1フック部125と、第2傾斜部126と、第2フック部127とを有している。
延在部121は、前後に延び、左右の第1縦ワイヤ110の延在部111,112に対し略平行に配置されている。また、第1傾斜部124および第1フック部125は、第1縦ワイヤ110の第1傾斜部114および第1フック部115と略同じ形状に形成され、第2傾斜部126および第2フック部127は、第1縦ワイヤ110の第2傾斜部116および第2フック部117と略同じ形状に形成されている。
【0047】
補強線材200は、上側から見て架設線材100と交差するように配置されている。補強線材200は、前後に並んで複数設けられている。具体的に、補強線材200は、第1横ワイヤ210と、第2横ワイヤ220と、第3横ワイヤ230を含む。
【0048】
第1横ワイヤ210は、1本の線材を環状に屈曲させて形成され、第1交差部211と、第2交差部212と、接続部213と、第1延出部215と、第2延出部216とを有している。
第1交差部211は、第2縦ワイヤ120と交差するように第2縦ワイヤ120の上側に配置されている。第1交差部211は、左右に延びる中央部211Aと、中央部211Aの左右の端から左右方向外側の斜め前方に向けて延びて接続部213の前端または第1延出部215の前端につながる連結端部211Bとを有している。
【0049】
第2交差部212は、左右に延び、第1交差部211の後方で第1交差部211と並ぶように配置されている。第2交差部212は、第2縦ワイヤ120と交差するように第2縦ワイヤ120の上側に配置されている。
接続部213は、前後に延び、第1交差部211と第2交差部212の右端同士を接続している。
【0050】
第1延出部215は、第1交差部211の左端から屈曲して後側に向けて延び、第2延出部216は、第2交差部212の左端から屈曲して前側に向けて延びている。第1延出部215および第2延出部216は、前後に並んで配置され、第1延出部215の後端面と第2延出部216の前端面とが近接した状態で前後に対向して配置されている。言い換えると、第1横ワイヤ210は、一方の端部210Aと他方の端部210Bの端面同士が互いに近接した状態で前後に対向して配置されている。
【0051】
接続部213は、右の第1縦ワイヤ110の第1延在部111から第2延在部112にわたって前後に延び、前後の端部が延在部111,112の下側に配置されている。また、第1延出部215は、前端部が左の第1縦ワイヤ110の第1延在部111の下側に配置され、第2延出部216は、後端部が左の第1縦ワイヤ110の第2延在部112の下側に配置されている。これにより、第1横ワイヤ210は、樹脂部材300を介して第1縦ワイヤ110の延在部111,112を下側から支持し、さらに、延在部111,112を介して屈曲部113を下側から支持している。
【0052】
第2横ワイヤ220は、第1横ワイヤ210の前側に配置され、交差部221と、端部222とを有している。
交差部221は、左右に延びている。交差部221は、中央部が第2縦ワイヤ120と交差するように第2縦ワイヤ120の上側に配置され、端部が第1縦ワイヤ110と交差するように第1縦ワイヤ110の上側に配置されている。
端部222は、交差部221の左右の端から屈曲して後側に向けて延びている。
【0053】
第3横ワイヤ230は、第2横ワイヤ220の前側に配置され、中央部231と、第1中間部232と、第2中間部233と、端部234とを有している。
中央部231は、左右に延び、第2縦ワイヤ120と交差するように第2縦ワイヤ120の上側に配置されている。
第1中間部232は、中央部231の左右の端から屈曲して後側に向けて延びている。
第2中間部233は、第1中間部232の後端から屈曲して左右方向外側に向けて延びている。第2中間部233の左右方向外側の端部は、第1縦ワイヤ110と交差するように第1縦ワイヤ110の上側に配置されている。
端部234は、第2中間部233の左右方向外側の端から屈曲して前側に向けて延びている。
【0054】
図2に示すように、樹脂部材300は、架設線材100および補強線材200の少なくとも一部を覆った状態で架設線材100と補強線材200を連結している。詳しくは、架設線材100と補強線材200は、交差する部分が互いに接触しないように所定の間隔をあけた状態で配置され、樹脂部材300は、この状態の架設線材100と補強線材200を覆って連結している。このため、樹脂部材300、詳しくは、樹脂部材300を構成する樹脂は、架設線材100の補強線材200と交差する部分と、補強線材200の架設線材100と交差する部分との間の隙間に入り込んで介在している。
【0055】
樹脂部材300は、板状の本体部310と、左右の支持部340と、第1掛止部350と、第2掛止部360と、開口部370とを有している。
支持部340は、左右方向外側にいくにつれて上側に位置するように延びる略板状の部分であり、本体部310の左右の端部の後側部分に形成されている。具体的には、支持部340は、本体部310の左右の端部の後側部分から左右方向外側の斜め上方に向けて延びるように形成されている。支持部340は、第1縦ワイヤ110の屈曲部113を覆っている。
【0056】
図4に示すように、開口部370は、本体部310の左側の端部の後側部分から、左の支持部340の左右方向内側の端部にわたって形成されている。開口部370は、第1横ワイヤ210の両方の端部210A,210Bを露出させる開口であり、上下に貫通している。言い換えると、補強線材200のうち、第1横ワイヤ210は、両方の端部210A,210Bが、樹脂部材300の開口部370から樹脂部材300の外部に露出している。
【0057】
本体部310の上面には、上側に向けて凸となるリブ311が形成されている。板状の本体部310は、リブ311が設けられた部分が他の部分(リブが設けられていない部分)と比較して肉厚となっている。リブ311は、第1横ワイヤ210の第2交差部212の前後の位置で、本体部310の上面から上に突出するように設けられている。リブ311は、前後に延び、左右に並んで複数設けられている。
【0058】
また、図5および図6に示すように、本体部310および支持部340の下面には、下側に向けて凸となるリブ312,313,341,342が形成されている。板状の本体部310および支持部340は、リブ312,313,341,342が設けられた部分が他の部分(リブが設けられていない部分)と比較して肉厚となっている。本実施形態では、リブ311,312,313,341,342が「肉厚の補強部」に相当する。
【0059】
リブ312は、第1横ワイヤ210の第1交差部211の略前方の位置で、本体部310の下面から下に突出するように設けられている。リブ312は、前後方向および左右方向に対して傾斜するように延び、全体として格子状をなすように複数設けられている。また、リブ313は、第1横ワイヤ210の第1交差部211の後方の位置で、本体部310の下面から下側に向けて突出するように設けられている。リブ313は、前後に延び、左右に並んで複数設けられている。
【0060】
リブ341およびリブ342は、支持部340の下面から下に突出するように設けられている。リブ341は、前後に延び、左右に並んで複数設けられている。また、リブ342は、リブ341と交差するように左右に延び、前後に並んで複数設けられている。
【0061】
リブ311,312,313,341,342は、開口部370の周囲に形成されている。詳しくは、リブ311は、開口部370の後側に形成され、リブ312は、開口部370の前側に形成されている。また、リブ313は、開口部370の左右方向内側に形成され、リブ341,342は、開口部370の左右方向外側に形成されている。
【0062】
図2に示すように、第1掛止部350は、フロントフレーム12に掛止される部分であり、左右に長く延びるように形成されている。第1掛止部350は、縦ワイヤ110,120の第1フック部115,125を覆っている。
第2掛止部360は、リアフレーム13に掛止される部分であり、左右に分かれて3つ形成されている。第2掛止部360は、第1縦ワイヤ110の第2フック部117または第2縦ワイヤ120の第2フック部127を覆っている。
【0063】
以上説明した本実施形態によれば、第1横ワイヤ210の端部210A,210Bが樹脂部材300から露出しているので、車両用シートSに人が座って第1横ワイヤ210や樹脂部材300が撓んでも第1横ワイヤ210の端のエッジと樹脂部材300とが擦れない。これにより、第1横ワイヤ210から樹脂部材300に負担がかかるのを抑制することができる。また、第1横ワイヤ210の端部210A,210Bを露出させることで、第1横ワイヤ210の端部210A,210Bが樹脂部材300に覆われて動きが規制される場合よりも、第1横ワイヤ210を撓みやすくすることができる。そして、端部210A,210Bをどの程度を露出させるかを調整することで、第1横ワイヤ210を覆う樹脂部材300の撓み量を調整することが可能となる。また、第1横ワイヤ210の端部210A,210Bを露出させることで、端部210A,210Bを樹脂部材300の外部から確認することができる。
【0064】
また、第1横ワイヤ210は、両方の端部210A,210Bが、樹脂部材300から露出し、かつ、互いに近接した状態で対向して配置されているので、架設線材100と交差するように配置される第1横ワイヤ210を環状とすることができる。これにより、第1交差部211および第2交差部212のような、第1横ワイヤ210の左右方向に延びる部分を前後方向に並ぶように複数設けることができるため、第1横ワイヤ210を覆う樹脂部材300の剛性を向上させることができる。
【0065】
また、樹脂部材300が開口部370の周囲に形成されたリブ311,312,313,341,342を有するので、樹脂部材300の剛性、特に、第1横ワイヤ210の端部210A,210Bを露出させるための開口部370周辺の剛性を向上させることができる。
【0066】
以上、発明の一実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではない。具体的な構成については、下記のように発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。なお、以下では、前記実施形態と同様の構成については同一符号を付して適宜説明を省略し、前記実施形態と異なる点について詳細に説明する。
【0067】
例えば、図7(a)に示すように、第1横ワイヤ210の端部210A,210Bは、
当該第1横ワイヤ210の前後方向に延びる部分、具体的には、第1延出部215および第2延出部216から屈曲して下側に向けて延びていてもよい。また、図7(b)に示すように、第1横ワイヤ210の端部210A,210Bは、第1延出部215および第2延出部216から屈曲して左右方向外側に向けて延び、その先端部が支持部340の下側に位置するように配置されていてもよい。これらのような構成によれば、第1横ワイヤ210の端のエッジが樹脂部材300の上側に配置されるシートクッションS1のパッド材に接触しにくくなるので、パッド材が傷むのを抑制することができる。なお、図7(a),(b)に示す形態において、第1横ワイヤ210は、両方の端部210A,210Bの端面同士ではなく、側面同士が互いに近接した状態で前後に対向して配置されている。
【0068】
また、第1横ワイヤ210の両方の端部210A,210Bは、互いに連結されていてもよい。例えば、車両用シートSは、図8(a),(b)に示すように、第1横ワイヤ210の両方の端部210A,210Bに係合して両方の端部210A,210Bを連結する連結部材410を備えていてもよい。詳しくは、連結部材410は、例えば、樹脂からなり、連結部材本体411と、肉厚の補強部の一例としてのリブ412とを有している。連結部材本体411は、端部210A,210Bに係合可能な略C字状の断面を有する部分である。リブ412は、連結部材本体411の外周面から連結部材本体411の径方向外側に向けて突出するように設けられている。リブ412は、連結部材本体411の外周面に沿って延び、前後に並んで複数設けられている。
【0069】
このように第1横ワイヤ210の端部210A,210Bを互いに連結することで、環状の第1横ワイヤ210の剛性を向上させることができる。これにより、第1横ワイヤ210を覆う樹脂部材300の剛性をより向上させることができる。
【0070】
また、図8(a),(b)に示す形態によれば、連結部材410を係合させるだけで第1横ワイヤ210の両方の端部210A,210Bを連結できるので、端部210A,210Bを簡単に連結することができる。
【0071】
また、連結部材410がリブ412を有することで、連結部材410の剛性を向上させることができる。これにより、連結部材410によって第1横ワイヤ210の両方の端部210A,210Bをしっかりと連結することができる。そして、第1横ワイヤ210の端部210A,210Bをしっかりと連結できることで、環状の第1横ワイヤ210の剛性を一層向上させることができ、これによって、第1横ワイヤ210を覆う樹脂部材300の剛性を一層向上させることができる。
【0072】
また、図9に示すように、第1横ワイヤ210の両方の端部210A,210Bは、かしめ固定されていてもよい。詳しくは、端部210A,210Bは、側面同士が近接した状態で左右(または上下)に対向して配置され、スリーブ状のかしめ具420に前後から挿通されている。そして、かしめ具420が塑性変形されてかしめ具420と圧着されていることで互いに連結されている。このように端部210A,210Bをかしめ固定することで、端部210A,210Bをしっかりと連結することができる。
【0073】
また、図10(a)~(c)および図11に示すように、第1横ワイヤ210の両方の端部210A,210Bは、溶接されていてもよい。例えば、図10(a)に示すように、端部210A,210Bは、側面同士が略接触した状態で左右(または上下)に対向して配置され、前後に延びるビード状の溶接部431によって互いに連結されていてもよい。また、図10(b)に示すように、端部210A,210Bは、略十字状に交差した状態、かつ、側面同士が互いに接触した状態で上下に対向して配置され、図10(c)に示すように、スポット溶接などにより形成された溶接部432によって互いに連結されていてもよい。また、図11に示すように、端部210A,210Bは、第1延出部215および第2延出部216から屈曲して下側に向けて延び、かつ、側面同士が互いに略接触した状態で前後に対向して配置され、上下に延びるビード状の溶接部433によって互いに連結されていてもよい。このように端部210A,210Bを溶接することで、端部210A,210Bをしっかりと連結することができる。
【0074】
また、前記実施形態で説明した樹脂部材300の構成は一例であり、本発明は前記実施形態に限定されない。例えば、前記実施形態では、肉厚の補強部として、リブ311,312,313,341,342を例示したが、これに限定されず、補強部は、ボスなどであってもよい。また、補強部は、リブ状やボス状ではなく、他の部分よりも板厚が厚い部分として構成されていてもよい。また、樹脂部材が十分な剛性を有するのであれば、補強部を設けない構成としてもよい。また、図7(a)を参考にして説明すると、樹脂部材300は、例えば、開口部370を備えずに、第1横ワイヤ210の端部が、支持部340の下側において、本体部310の側面から左右方向外側に突出することで、樹脂部材300から露出する構成であってもよい。また、樹脂部材は、例えば、支持部340を備えない構成であってもよい。なお、前述した補強部の変形例は、図8で説明した連結部材の補強部についても同様である。
【0075】
また、前記実施形態で説明した架設線材100および補強線材200の構成は一例であり、本発明は前記実施形態に限定されない。例えば、架設線材および補強線材の数は、前記実施形態で説明した構成よりも多くてもよいし、少なくてもよい。また、架設線材は、例えば、Sバネなどであってもよい。また、図3を参考にして説明すると、第1横ワイヤ210(補強線材)は、例えば、右側部分(213)が、左側部分と同様に、前後(215と216)に分かれているような構成、つまり、2本の線材からなる構成であってもよい。この場合、2本の線材の右側の各端部も、左側の各端部と同様に、樹脂部材から露出する構成としてもよい。
【0076】
また、前記実施形態では、第1横ワイヤ210の両方の端部210A,210Bが樹脂部材300から露出していたが、これに限定されない。例えば、第1横ワイヤ210は、一方の端部のみが樹脂部材300から露出している構成であってもよい。また、前記実施形態では、補強線材200のうち、第1横ワイヤ210の端部のみが樹脂部材300から露出していたが、これに限定されない。例えば、第1横ワイヤ210の代わりに、または、第1横ワイヤ210とともに、第2横ワイヤ220および/または第3横ワイヤ230の端部が樹脂部材300から露出している構成であってもよい。
【0077】
また、前記実施形態では、架設線材が架設される一対の連結フレームが、フロントフレーム12とリアフレーム13であったが、これに限定されない。例えば、一対の連結フレームは、パンフレーム14とリアフレーム13であってもよい。
【0078】
また、前記実施形態では、一対の対向フレームとしてシートクッションS1の左右のサイドフレーム11を例示し、一対の連結フレームとしてシートクッションS1のフロントフレーム12およびリアフレーム13を例示したが、これに限定されない。例えば、一対の対向フレームが、シートバックS2の左右のフレームであり、一対の連結フレームが、シートバックS2の上下のフレームである構成としてもよい。この場合には、上下方向が「対向方向に直交する直交方向」に相当し、前側が「着座者側」に相当し、後側が「着座者側とは反対側」に相当する。
【0079】
また、一対の対向フレームが、シートクッションS1のフロントフレーム12およびリアフレーム13であり、一対の連結フレームが、左右のサイドフレーム11である構成としてもよい。この場合には、前後方向が「一対の対向フレームの対向方向」に相当し、左右方向が「対向方向に直交する直交方向」に相当する。また、一対の対向フレームが、シートバックS2の上下のフレームであり、一対の連結フレームが、シートバックS2の左右のフレームである構成としてもよい。この場合には、上下方向が「一対の対向フレームの対向方向」に相当する。
【0080】
また、前記実施形態では、乗物用シートとして自動車に搭載される車両用シートSを例示したが、これに限定されず、自動車以外の乗物、例えば、鉄道車両や船舶、航空機などに搭載されるシートであってもよい。
【0081】
また、前記した実施形態および変形例で説明した各要素を、任意に組み合わせて実施してもよい。
【符号の説明】
【0082】
11 サイドフレーム
12 フロントフレーム
13 リアフレーム
100 架設線材
200 補強線材
210 第1横ワイヤ
210A 端部
210B 端部
300 樹脂部材
311 リブ
312 リブ
313 リブ
340 支持部
341 リブ
342 リブ
370 開口部
S 車両用シート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11