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特許7406137モータ、送風装置、及び冷凍サイクル装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-19
(45)【発行日】2023-12-27
(54)【発明の名称】モータ、送風装置、及び冷凍サイクル装置
(51)【国際特許分類】
   H02K 9/06 20060101AFI20231220BHJP
【FI】
H02K9/06 G
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022116261
(22)【出願日】2022-07-21
【審査請求日】2023-07-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】小川 翔平
(72)【発明者】
【氏名】河合 良樹
(72)【発明者】
【氏名】藤井 浩和
(72)【発明者】
【氏名】中増 伸
【審査官】宮崎 賢司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/145219(WO,A1)
【文献】中国実用新案第207853677(CN,U)
【文献】特開2013-150441(JP,A)
【文献】特開2018-038179(JP,A)
【文献】特開2003-143809(JP,A)
【文献】特開2018-117505(JP,A)
【文献】特開2017-204980(JP,A)
【文献】特開2003-088014(JP,A)
【文献】中国実用新案第209930055(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフト(60)と、
前記シャフトに接続され、前記シャフトと共に回転軸(62)を中心に回転する回転子(20)と、
前記回転子の径方向内側に配置される固定子(30)と、
前記回転子の上面を覆う第1カバー(41)と、
前記回転子の側面を覆う第2カバー(42)と、
前記固定子の底面を覆う第3カバー(43)と、
を備え、
前記回転子は、前記固定子の径方向外側に配置される円筒状の磁気部(21)と、前記シャフトと前記磁気部とを接続する複数の接続部(22)と、を有し、
前記接続部の回転方向の前側の第1面(S1)は、前記シャフトから前記接続部が延びる方向である第1方向に沿って見たときに、前記シャフトの前記回転軸を含み前記第1方向に延びる第1平面(P1)に対して傾斜しており
前記第1面は、前記第1平面に対して、前記接続部の逆回転方向に傾斜しており、
前記第1面と前記第1平面との傾斜角(θ)は、10°以上30°以下であり、
前記回転子の径方向内側に配置される前記固定子と、前記第1カバーとの間には、前記回転子の回転によって生じる空気流れ(F1)の第1流路(FC1)が形成され、
前記固定子と、前記第2カバーとの間には、前記回転子の回転によって生じる空気流れ(F2)の第2流路(FC2)が形成され、
前記固定子と前記第3カバーとの間には、前記回転子の回転によって生じる空気流れ(F3)の第3流路(FC3)が形成され、
前記固定子は、
コイル(32)を保持するコイル保持部(34)の径方向外側に、前記回転子の回転によって生じる空気流れ(F2)を通す第1貫通穴(35)を有し、
前記コイル保持部の径方向内側に、前記回転子の回転によって生じる空気流れ(F4)を通す第2貫通穴(36)を有し、
前記第1流路、前記第2流路、前記第1貫通穴、前記第3流路、及び前記第2貫通穴を通る空気流れ(F1~F4)は、前記コイル保持部の周りを循環する、
モータ(10)。
【請求項2】
前記接続部の数は、3個以上15個以下である、
請求項に記載のモータ(10)。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のモータ(10)と、
前記モータによって駆動されるファン(90)と、
を備える、
送風装置(100)。
【請求項4】
請求項に記載の送風装置(100)、
を備える、
冷凍サイクル装置(200)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
モータ、送風装置、及び冷凍サイクル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1(特開2003-143809号公報)に示されているように、回転子に内扇ファンを設け、モータ内に空気を吹き出すことにより、固定子の温度上昇を抑制する技術がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1では、内扇ファンを設けるためのスペースが必要となるため、モータの体格が大きくなる、という課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
第1観点のモータは、シャフトと、回転子と、固定子と、を備える。回転子は、シャフトに接続される。回転子は、シャフトと共に回転軸を中心に回転する。固定子は、回転子の径方向内側に配置される。回転子は、磁気部と、複数の接続部と、を有する。磁気部は、円筒状である。磁気部は、固定子の径方向外側に配置される。接続部は、シャフトと磁気部とを接続する。接続部の回転方向の前側の第1面は、シャフトから接続部が延びる方向である第1方向に沿って見たときに、シャフトの回転軸を含み第1方向に延びる第1平面に対して傾斜している。
【0005】
第1観点のモータでは、接続部の回転方向の前側の第1面は、シャフトから接続部が延びる方向である第1方向に沿って見たときに、シャフトの回転軸を含み第1方向に延びる第1平面に対して傾斜している。その結果、モータは、回転子の接続部に傾斜を設けて、モータ内に空気を吹き出すことにより、内扇ファン等のスペースを設けずにモータ内に空気流れを生成し、固定子の温度上昇を抑制することができる。
【0006】
第2観点のモータは、第1観点のモータであって、第1面は、第1平面に対して、接続部の逆回転方向に傾斜している。
【0007】
第2観点のモータは、このような構成により、モータ内により強い空気流れを生成することができる。
【0008】
第3観点のモータは、第1観点又は第2観点のモータであって、第1面と第1平面との傾斜角は、10°以上30°以下である。
【0009】
第3観点のモータは、傾斜角を適切な角度に設定することにより、モータ内により強い空気流れを生成することができる。
【0010】
第4観点のモータは、第1観点から第3観点のいずれかのモータであって、第1カバーをさらに備える。第1カバーは、回転子の上面を覆う。回転子の径方向内側に配置される固定子と、第1カバーとの間には、回転子の回転によって生じる空気流れの第1流路が形成される。
【0011】
第4観点のモータは、回転子の回転によって生じる空気流れが、固定子に隣接する第1流路を流れることにより、固定子の温度上昇を抑制することができる。
【0012】
第5観点のモータは、第1観点から第4観点のいずれかのモータであって、第2カバーをさらに備える。第2カバーは、回転子の側面を覆う。回転子の径方向内側に配置される固定子と、第2カバーとの間には、回転子の回転によって生じる空気流れの第2流路が形成される。
【0013】
第5観点のモータは、回転子の回転によって生じる空気流れが、固定子に隣接する第2流路を流れることにより、固定子の温度上昇を抑制することができる。
【0014】
第6観点のモータは、第1観点から第5観点のいずれかのモータであって、第3カバーをさらに備える。第3カバーは、固定子の底面を覆う。固定子と第3カバーとの間には、回転子の回転によって生じる空気流れの第3流路が形成される。
【0015】
第6観点のモータは、回転子の回転によって生じる空気流れが、固定子に隣接する第3流路を流れることにより、固定子の温度上昇を抑制することができる。
【0016】
第7観点のモータは、第1観点から第6観点のいずれかのモータであって、固定子は、コイルを保持するコイル保持部の径方向外側に、第1貫通穴を有する。第1貫通穴は、回転子の回転によって生じる空気流れを通す。
【0017】
第7観点のモータは、回転子の回転によって生じる空気流れが、固定子のコイル保持部に隣接する第1貫通穴を流れることにより、固定子の温度上昇を抑制することができる。
【0018】
第8観点のモータは、第1観点から第7観点のいずれかのモータであって、固定子は、コイルを保持するコイル保持部の径方向内側に、第2貫通穴を有する。第2貫通穴は、回転子の回転によって生じる空気流れを通す。
【0019】
第8観点のモータは、回転子の回転によって生じる空気流れが、固定子のコイル保持部に隣接する第2貫通穴を流れることにより、固定子の温度上昇を抑制することができる。
【0020】
第9観点のモータは、第1観点又は第2観点のモータであって、第1カバーと、第2カバーと、第3カバーと、をさらに備える。第1カバーは、回転子の上面を覆う。第2カバーは、回転子の側面を覆う。第3カバーは、固定子の底面を覆う。回転子の径方向内側に配置される固定子と、第1カバーとの間には、回転子の回転によって生じる空気流れの第1流路が形成される。固定子と、第2カバーとの間には、回転子の回転によって生じる空気流れの第2流路が形成される。固定子と第3カバーとの間には、回転子の回転によって生じる空気流れの第3流路が形成される。固定子は、コイルを保持するコイル保持部の径方向外側に、第1貫通穴を有する。固定子は、コイル保持部の径方向内側に、第2貫通穴を有する。第1貫通穴、及び第2貫通穴は、回転子の回転によって生じる空気流れを通す。第1流路、第2流路、第1貫通穴、第3流路、及び第2貫通穴を通る空気流れは、コイル保持部の周りを循環する。
【0021】
第9観点のモータは、回転子の回転によって生じる空気流れが、固定子のコイル保持部の周りを循環することにより、固定子の温度上昇をより抑制することができる。
【0022】
第10観点のモータは、第1観点から第9観点のいずれかのモータであって、接続部の数は、3個以上15個以下である。
【0023】
第10観点のモータは、このような構成により、接続部の樹脂モールド加工を容易に行うことができる。
【0024】
第11観点の送風装置は、モータと、ファンと、を備える。モータは、第1観点から第10観点のいずれかのモータである。ファンは、モータによって駆動される。
【0025】
第12観点の冷凍サイクル装置は、第11観点の送風装置、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】空気調和装置の外観図である。
図2】室外機の断面図である。
図3】モータの斜視断面図である。
図4】固定子の上面図である。
図5】回転子の斜視図である。
図6】回転子の側面図である。
図7】固定子のコイル保持部の周りの空気流れを示す図である。
図8】固定子のコイル保持部の周りを循環する空気流れの風速と、接続部の傾斜角との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
(1)冷凍サイクル装置の構成
冷凍サイクル装置200は、蒸気圧縮式冷凍サイクルを利用して、温度調整対象を冷却したり、加熱したりする装置である。本実施形態では、冷凍サイクル装置200は、温度調整対象としての空調対象空間の空気を冷却したり加熱したりする空気調和装置200である。冷凍サイクル装置200の種類は、空気調和装置200に限定されるものではなく、給湯装置、床暖房装置、冷蔵装置等であってもよい。
【0028】
図1は、空気調和装置200の外観図である。図1に示すように、空気調和装置200は、主として、室内の壁面等に取り付けられる室内機210と、室外に設置される室外機220とを有する。室内機210及び室外機220は、冷媒配管230を介して互いに接続され、これにより、空気調和装置200の冷媒回路が構成される。空気調和装置200は、室内機210が設置される空間において、冷房運転及び暖房運転等を行う。
【0029】
図2は、室外機220の断面図である。図2に示すように、室外機220は、主として、送風装置100と、ケーシング102と、熱交換器104と、圧縮機106と、内部配管と、制御ユニットと、を有する。ケーシング102は、送風装置100、仕切板103、熱交換器104、ベルマウス105、及び圧縮機106等を収容する。内部配管は、空気調和装置200の冷媒回路の一部であり、冷媒回路を循環する冷媒が流れる管である。制御ユニットは、CPU及びメモリ等を有するマイクロコンピュータである。制御ユニットは、送風装置100のモータ10等を制御する。
【0030】
仕切板103は、ケーシング102の内部の空間を、送風室102aと機械室102bとに仕切る。送風装置100、熱交換器104、及びベルマウス105は、送風室102aに配置される。圧縮機106、及び制御ユニットは、機械室102bに配置される。
【0031】
圧縮機106は、空気調和装置200の冷媒回路を循環する冷媒を圧縮する。圧縮機106によって圧縮された冷媒は、冷房運転時には室外機220の熱交換器104に送られ、暖房運転時には室内機210の熱交換器に送られる。
【0032】
熱交換器104は、冷媒と空気との間で熱交換を行う。熱交換器104は、例えば、その長手方向の両端において複数回折り返されている伝熱管と、伝熱管に取り付けられるフィンとから構成される。伝熱管は、空気調和装置200の冷媒回路の一部であり、冷媒回路を循環する冷媒が流れる管である。熱交換器104は、伝熱管の内部を流れる冷媒と、フィンを通過する空気との間で熱交換を行う。熱交換器104は、冷房運転時には凝縮器(放熱器)として機能し、暖房運転時には蒸発器(吸熱器)として機能する。
【0033】
送風装置100は、主として、モータ10と、ファン90と、を有する。ファン90は、モータ10によって駆動される。ファン90は、空気を所定の方向に送るためのプロペラファンである。ファン90は、熱交換器104による熱交換を促進するための空気流れを生成する。ファン90の回転によって生成される空気流れによって、ケーシング102の外部の空気は、ケーシング102の内部の送風室102aに吸引される。この過程において、空気は、熱交換器104を通過して冷媒と熱交換され、その後、ベルマウス105を通過してケーシング102の外部に吐出される。
【0034】
(2)モータの構成
図3は、モータ10の斜視断面図である。図3に示すように、モータ10は、主として、回転子20と、固定子30と、モータカバー40と、シャフト60と、を有する。
【0035】
以下の説明において、「軸方向」は、回転子20の回転軸62の方向(図3における上下方向)である。「径方向」は、回転子20の回転軸62を中心とする径方向である。「回転方向」は、回転子20が回転軸62を中心に回転する方向である。図3に示すように、上方から見た場合、回転子20は、反時計回りに回転する。
【0036】
モータ10は、アウターロータ型のモータである。言い換えると、固定子30は、回転子20の径方向内側に配置される。
【0037】
(2-1)固定子
図3に示すように、固定子30は、主として、コイル保持部34と、第1貫通穴35と、第2貫通穴36と、を有する。固定子30は、樹脂モールド加工により一体成型される。固定子30の内周部とシャフト60との間には、ベアリング37が配置されている。固定子30は、ベアリング37を介して、シャフト60を支持している。
【0038】
コイル保持部34は、固定子コア31と、コイル32と、インシュレータ33と、結線板50と、を有する。固定子コア31は、導電性を有する軟磁性体である鋼板が積層されて形成されている。固定子コア31は、複数のティースを有する。コイル32は、エナメル樹脂等の絶縁材料で被覆された銅線もしくはアルミ線、銅クラッドアルミ線が、固定子コア31のティースに巻かれて形成されている。インシュレータ33は、絶縁性の樹脂材料により形成されている。インシュレータ33は、固定子コア31とコイル32との間に設けられている。インシュレータ33は、コイル32を流れる電流が固定子コア31に伝わらないように、固定子コア31とコイル32との間を絶縁している。結線板50は、コイル32の巻始め、及び巻終わりの引出線に接続される。結線板50は、リード線を介して、外部電源等に接続される。
【0039】
第1貫通穴35は、コイル保持部34の径方向外側に形成される。第1貫通穴35は、軸方向に固定子30を貫通している。図4は、固定子30の上面図である。図4では、図3における断面を、断面AA’として示している。図4に示すように、固定子30は、6個の第1貫通穴35を有する。第1貫通穴35は、回転子20の回転によって生じる空気流れF2を通す。空気流れF2については、後述する。
【0040】
第2貫通穴36は、コイル保持部34の径方向内側に形成される。第2貫通穴36は、軸方向に固定子30を貫通している。図4に示すように、固定子30は、6個の第2貫通穴36を有する。第2貫通穴36は、回転子20の回転によって生じる空気流れF4を通す。空気流れF4については、後述する。
【0041】
(2-2)回転子
図5は、回転子20の斜視図である。図3及び図5に示すように、回転子20は、主として、磁気部21と、複数の接続部22と、支持部24と、を有する。回転子20は、樹脂モールド加工により一体成型される。回転子20は、支持部24を介して、シャフト60に接続される。これにより、回転子20は、シャフト60と共に回転軸62を中心に回転する。
【0042】
磁気部21は、円筒状である。磁気部21は、固定子30の径方向外側に配置される。磁気部21は、複数の磁石21aを有する。複数の磁石21aは、磁気部21の回転方向に並んで配置されている。
【0043】
接続部22は、支持部24を介して、シャフト60と磁気部21とを接続する。図5に示すように、接続部22の数は、10個である。接続部22の数は、接続部22の樹脂モールド加工を容易にするため、3個以上15個以下であることが好ましい。図6は、回転子20の側面図である。図6に示すように、接続部22の回転方向の前側の第1面S1は、シャフト60から接続部22が延びる方向である第1方向(径方向)に沿って見たときに、シャフト60の回転軸62を含み第1方向に延びる第1平面P1に対して、接続部22の逆回転方向に傾斜している。その結果、接続部22が回転することにより、下向きの空気流れF0が生じる。後述する検証の結果、第1面S1と第1平面P1との傾斜角θは、10°以上30°以下であることが好ましい。
【0044】
(2-3)モータカバー
図3に示すように、モータカバー40は、回転子20と、固定子30と、を覆っている。モータカバー40は、樹脂材料により形成されている。モータカバー40は、室外機220のケーシング102に対して防振部材を介して固定される。防振部材は、ゴム等で形成され、モータ10の振動を吸収する機能を有する。
【0045】
モータカバー40は、主として、第1カバー41と、第2カバー42と、第3カバー43と、第4カバー44と、を有する。
【0046】
第1カバー41は、回転子20の上面を覆う。回転子20の径方向内側に配置される固定子30と、第1カバー41との間には、回転子20の回転によって生じる空気流れF1の第1流路FC1が形成される。第1流路FC1については、後述する。
【0047】
第2カバー42は、回転子20の側面(径方向外面)を覆う。回転子20の径方向内側に配置される固定子30と、第2カバー42との間には、回転子20の回転によって生じる空気流れF2の第2流路FC2が形成される。第2流路FC2については、後述する。
【0048】
第3カバー43は、固定子30の底面(下面)を覆う。固定子30と第3カバー43との間には、回転子20の回転によって生じる空気流れF3の第3流路FC3が形成される。第3流路FC3については、後述する。
【0049】
第4カバー44は、回転子20の支持部24の上部を覆う。
【0050】
(2-4)シャフト60
シャフト60は、金属製の円柱状の部材である。シャフト60は、軸方向のモータ10とは反対側の端部において、ファン90と連結される。
【0051】
固定子30は、結線板50を介して外部からコイル32に供給される電力によって、回転子20を回転させるための磁場を発生させる。回転子20は、固定子30から発生する磁場によって回転する。回転子20に接続されるシャフト60は、回転軸62を中心に回転する。モータ10は、シャフト60を支持しつつ、シャフト60を介して回転力をファン90に伝達する。これにより、モータ10は、回転軸62周りにファン90を回転させる。このとき、固定子30に電力が供給されることにより、固定子30(特に、コイル保持部34)の温度が上昇する。
【0052】
(3)回転子の回転によって生じる空気流れ
図7は、回転子20の回転によって生じる空気流れF1~F4が、固定子30のコイル保持部34の周りを循環することを示す図である。図6及び図7に示すように、回転子20が回転軸62を中心に回転すると、下向きの空気流れF0が生じる。
【0053】
空気流れF0が固定子30の上面と衝突すると、径方向外向きの空気流れF1が生じる。言い換えると、固定子30と、第1カバー41との間には、空気流れF1の第1流路FC1が形成される。
【0054】
空気流れF1が、第1カバー41の下部又は第2カバー42の上部と衝突すると、下向きの空気流れF2が生じる。言い換えると、固定子30と、第2カバー42との間には、空気流れF2の第2流路FC2が形成される。その後、空気流れF2は、第1貫通穴35を通過する。
【0055】
空気流れF2が第3カバー43の上面と衝突すると、径方向内向きの空気流れF3が生じる。言い換えると、固定子30と、第3カバー43との間には、空気流れF3の第3流路FC3が形成される。
【0056】
空気流れF3が固定子30の内周部に到達すると、空気流れF3は第2貫通穴36に侵入し、第2貫通穴36を上向きに通過する空気流れF4が生じる。
【0057】
空気流れF4が固定子30の上面に到達すると、空気流れF4は空気流れF1と合流する。
【0058】
その結果、第1流路FC1、第2流路FC2、第1貫通穴35、第3流路FC3、及び第2貫通穴36を通る、回転子20の回転によって生じる空気流れF1~F4は、固定子30のコイル保持部34の周りを循環する。これにより、コイル保持部34の温度上昇が抑制される。
【0059】
(4)検証
ここでは、回転子20の回転数を一定としたときの、固定子30のコイル保持部34の周りを循環する空気流れF1~F4の風速と、接続部22の傾斜角θとの関係を、熱流体解析を用いて検証した。図8は、固定子30のコイル保持部34の周りを循環する空気流れF1~F4の風速と、接続部22の傾斜角θとの関係を示す図である。図8に示すグラフの縦軸は、図7に示す観測点Pにおける空気流れの風速である。風速の大きさは、百分率によって示している。図8に示すグラフの横軸は、接続部22の傾斜角θの角度である。
【0060】
図8に示すように、傾斜角θが0°のとき、空気流れの風速は約90%であった。傾斜角θを0°から大きくしていくと、空気流れの風速は増加していき、傾斜角θが約16°のとき、空気流れの風速は最大となった。さらに傾斜角θを大きくしていくと、空気流れの風速は減少していき、傾斜角θが約30°を超えると、空気流れの風速は約100%を維持するようになった。
【0061】
検証の結果、傾斜角θが10°以上30°以下であるときの空気流れの風速は、傾斜角θが0°のときの風速と比較して、約13%増加することが判明した。そのため、固定子30のコイル保持部34の周りを循環する空気流れF1~F4の風速を増加させて、固定子30のコイル保持部34の温度上昇をより抑制するためには、傾斜角θは、10°以上30°以下(特に、10°以上25°以下)であることが好ましい。
【0062】
(5)特徴
(5-1)
従来、回転子に内扇ファンを設け、モータ内に空気を吹き出すことにより、固定子の温度上昇を抑制する技術がある。
【0063】
従来の技術では、内扇ファンを設けるためのスペースが必要となるため、モータの体格が大きくなる、という課題がある。
【0064】
本実施形態のモータ10は、シャフト60と、回転子20と、固定子30と、を備える。回転子20は、シャフト60に接続される。回転子20は、シャフト60と共に回転軸62を中心に回転する。固定子30は、回転子20の径方向内側に配置される。回転子20は、磁気部21と、複数の接続部22と、を有する。磁気部21は、円筒状である。磁気部21は、固定子30の径方向外側に配置される。接続部22は、シャフト60と磁気部21とを接続する。接続部22の回転方向の前側の第1面S1は、シャフト60から接続部22が延びる方向である第1方向に沿って見たときに、シャフト60の回転軸62を含み第1方向に延びる第1平面P1に対して傾斜している。
【0065】
本実施形態のモータ10では、接続部22の回転方向の前側の第1面S1は、シャフト60から接続部22が延びる方向である第1方向に沿って見たときに、シャフト60の回転軸62を含み第1方向に延びる第1平面P1に対して傾斜している。その結果、モータ10は、回転子20の接続部22に傾斜を設けて、モータ10内に空気を吹き出すことにより、内扇ファン等のスペースを設けずにモータ内に空気流れF1~F4を生成し、固定子30の温度上昇を抑制することができる。
【0066】
(5-2)
本実施形態のモータ10では、第1面S1は、第1平面P1に対して、接続部22の逆回転方向に傾斜している。その結果、モータ10は、モータ10内により強い空気流れF1~F4を生成することができる。
【0067】
(5-3)
本実施形態のモータ10では、第1面S1と第1平面P1との傾斜角θは、10°以上30°以下である。その結果、モータ10は、傾斜角θを適切な角度に設定することにより、モータ10内により強い空気流れF1~F4を生成することができる。
【0068】
(5-4)
本実施形態のモータ10は、第1カバー41をさらに備える。第1カバー41は、回転子20の上面を覆う。回転子20の径方向内側に配置される固定子30と、第1カバー41との間には、回転子20の回転によって生じる空気流れF1の第1流路FC1が形成される。
【0069】
その結果、モータ10は、回転子20の回転によって生じる空気流れF1が、固定子30に隣接する第1流路FC1を流れることにより、固定子30の温度上昇を抑制することができる。
【0070】
(5-5)
本実施形態のモータ10は、第2カバー42をさらに備える。第2カバー42は、回転子20の側面を覆う。回転子20の径方向内側に配置される固定子30と、第2カバー42との間には、回転子20の回転によって生じる空気流れF2の第2流路FC2が形成される。
【0071】
その結果、モータ10は、回転子20の回転によって生じる空気流れF2が、固定子30に隣接する第2流路FC2を流れることにより、固定子30の温度上昇を抑制することができる。
【0072】
(5-6)
本実施形態のモータ10は、第3カバー43をさらに備える。第3カバー43は、固定子30の底面を覆う。固定子30と第3カバー43との間には、回転子20の回転によって生じる空気流れF3の第3流路FC3が形成される。
【0073】
その結果、モータ10は、回転子20の回転によって生じる空気流れF3が、固定子30に隣接する第3流路FC3を流れることにより、固定子30の温度上昇を抑制することができる。
【0074】
(5-7)
本実施形態のモータ10では、固定子30は、コイル32を保持するコイル保持部34の径方向外側に、第1貫通穴35を有する。第1貫通穴35は、回転子20の回転によって生じる空気流れF2を通す。
【0075】
その結果、モータ10は、回転子20の回転によって生じる空気流れF2が、固定子30のコイル保持部34に隣接する第1貫通穴35を流れることにより、固定子30の温度上昇を抑制することができる。
【0076】
(5-8)
本実施形態のモータ10では、固定子30は、コイル32を保持するコイル保持部34の径方向内側に、第2貫通穴36を有する。第2貫通穴36は、回転子20の回転によって生じる空気流れF4を通す。
【0077】
その結果、モータ10は、回転子20の回転によって生じる空気流れF4が、固定子30のコイル保持部34に隣接する第2貫通穴36を流れることにより、固定子30の温度上昇を抑制することができる。
【0078】
(5-9)
本実施形態のモータ10では、第1流路FC1、第2流路FC2、第1貫通穴35、第3流路FC3、及び第2貫通穴36を通る空気流れF1~F4は、コイル保持部34の周りを循環する。その結果、モータ10は、回転子20の回転によって生じる空気流れF1~F4が、固定子30のコイル保持部34の周りを循環することにより、固定子30の温度上昇をより抑制することができる。
【0079】
(5-10)
本実施形態のモータ10では、接続部22の数は、3個以上15個以下である。その結果、モータ10は、接続部22の樹脂モールド加工を容易に行うことができる。
【0080】
(5-11)
本実施形態の送風装置100は、モータ10と、ファン90と、を備える。ファン90は、モータ10によって駆動される。
【0081】
(5-12)
本実施形態の空気調和装置200は、送風装置100を備える。
【0082】
(6)変形例
(6-1)変形例1A
本実施形態では、モータ10は、アウターロータ型のモータが採用される、室外機220の送風装置100において、ファン90を駆動するために用いられた。しかし、モータ10は、アウターロータ型のモータが採用される、室内機210の送風装置、空気清浄機の送風装置、及び扇風機等において、ファンを駆動するために用いられてもよい。
【0083】
(6-2)
以上、本開示の実施形態を説明したが、特許請求の範囲に記載された本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【符号の説明】
【0084】
10 モータ
20 回転子
21 磁気部
22 接続部
30 固定子
32 コイル
34 コイル保持部
35,36 第1貫通穴,第2貫通穴
41~43 第1カバー~第3カバー
60 シャフト
62 回転軸
90 ファン
100 送風装置
200 空気調和装置(冷凍サイクル装置)
F1~F4 空気流れ
FC1~FC3 第1流路~第3流路
S1 第1面
P1 第1平面
θ 傾斜角
【先行技術文献】
【特許文献】
【0085】
【文献】特開2003-143809号公報
【要約】
【課題】回転子に内扇ファンを設け、モータ内に空気を吹き出すことにより、固定子の温度上昇を抑制する技術では、内扇ファンを設けるためのスペースが必要となるため、モータの体格が大きくなる、という課題がある。
【解決手段】モータは、シャフト60と、回転子20と、固定子と、を備える。回転子20は、シャフト60と共に回転軸62を中心に回転する。固定子は、回転子20の径方向内側に配置される。回転子20は、円筒状の磁気部21と、複数の接続部22と、を有する。磁気部21は、固定子の径方向外側に配置される。接続部22は、シャフト60と磁気部21とを接続する。接続部22の回転方向の前側の第1面S1は、シャフト60から接続部22が延びる方向である第1方向に沿って見たときに、シャフト60の回転軸62を含み第1方向に延びる第1平面P1に対して傾斜している。
【選択図】図6
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8