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  • 特許-光輝性塗料及び塗装物品 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-19
(45)【発行日】2023-12-27
(54)【発明の名称】光輝性塗料及び塗装物品
(51)【国際特許分類】
   C09D 201/00 20060101AFI20231220BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20231220BHJP
   C09D 7/20 20180101ALI20231220BHJP
   C09D 7/65 20180101ALI20231220BHJP
【FI】
C09D201/00
C09D7/61
C09D7/20
C09D7/65
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2023178836
(22)【出願日】2023-10-17
【審査請求日】2023-10-17
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000224123
【氏名又は名称】藤倉化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100206081
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 央
(74)【代理人】
【識別番号】100188891
【弁理士】
【氏名又は名称】丹野 拓人
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 亮介
(72)【発明者】
【氏名】浅石 智尊
【審査官】牟田 博一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-90739(JP,A)
【文献】特開2020-132998(JP,A)
【文献】国際公開第2022/244483(WO,A1)
【文献】特許第7351579(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アニリン点が40℃以上である炭化水素系溶剤(A)と、
前記炭化水素系溶剤(A)と相溶しない樹脂(B1)と、
前記炭化水素系溶剤(A)および前記樹脂(B1)と相溶し、かつ前記炭化水素系溶剤(A)よりも沸点が低い溶剤(C)と、
鱗片状金属フィラー(D)と、
シロキサン系界面活性剤(E)と、
を含有し、
前記鱗片状金属フィラー(D)が鱗片状インジウム(D1)である、光輝性塗料。
【請求項2】
前記シロキサン系界面活性剤(E)が、ポリエーテル変性シロキサン系界面活性剤(E1)である、請求項1に記載の光輝性塗料。
【請求項3】
基材と、前記基材の表面に形成された塗膜を有し、
前記塗膜が請求項1又は2に記載の光輝性塗料を塗装して得られた塗膜である塗装物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光輝性塗料及び塗装物品に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の内外装部品や各種成形品などの表面の意匠性や高級感を高めるため、これら表面に金属薄膜を形成することがある。金属薄膜を形成する方法としては、金属めっき法や金属蒸着法などが知られているが、これらの方法はメッキ設備や蒸着設備が必要であった。
そこで、近年、作業工程が簡単で、設備や被塗物の大きさに制限がないことなどから、光輝顔料として鱗片状の金属フィラーを配合した光輝性塗料が使用されている。
【0003】
鱗片状の金属フィラーを配合した光輝性塗料によって高輝性を有する塗膜を形成するためには、塗膜表面上に、該表面に対して鱗片状の金属フィラーを平行に配向させる必要がある。塗膜表面に対して鱗片状の金属フィラーを平行に配向させる方法として、光輝性塗料にレオロジーコントロール剤を配合したり、鱗片状の金属フィラーとしてリーフィングタイプの金属フィラーや、蒸着により形成した蒸着金属薄膜を解砕した金属薄片(フレーク)を用いたりする方法が一般的である。
しかし、実際には金属フィラーが塗膜表面に対し不規則に配向することが多く、充分な光輝性を発現することは容易ではなかった。
【0004】
鱗片状の金属フィラーの配向性に優れ、金属光沢感に富む塗膜を形成できる塗料として、例えば特許文献1には、相溶性、沸点の違いを用いて鱗片状アルミニウムを配向させ高輝度塗膜を作成する塗料が提示されている。
特許文献1の塗料によれば、光輝性に優れる塗膜を形成できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-090739号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
鱗片状インジウムは、鱗片状アルミニウムよりも優れた外観の塗膜を形成する光輝性顔料として期待されている。しかし鱗片状インジウムは高価であるため少量で高輝性を有する塗膜を形成することが望まれる。そのためには、塗膜の形成過程において充分に配向させ、塗膜中で薄く整列させることが重要である。
【0007】
そこで、本発明者は、鱗片状アルミニウムを鱗片状インジウムに変更するほかは、特許文献1と同様の組成の光輝性塗料をすることを試みた。しかし、鱗片状インジウムを使用すると、鱗片状アルミニウムを使用した場合のように、充分に配向させることができなかった。
これは、鱗片状インジウムは鱗片状アルミニウムよりも粒径が小さく、かつ比重が大きいためであると考えられる。
本発明は、上記事情に鑑みて、鱗片状金属フィラーとして鱗片状インジウムを使用した場合にも塗膜の形成過程において充分配向させることができ、光輝性に優れる塗膜を形成できる光輝性塗料の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下の態様を有する。
[1]アニリン点が40℃以上である炭化水素系溶剤(A)と、
前記炭化水素系溶剤(A)と相溶しない樹脂(B1)と、
前記炭化水素系溶剤(A)および前記樹脂(B1)と相溶し、かつ前記炭化水素系溶剤(A)よりも沸点が低い溶剤(C)と、
鱗片状金属フィラー(D)と、
シロキサン系界面活性剤(E)と、
を含有し、
前記鱗片状金属フィラー(D)が鱗片状インジウム(D1)である、光輝性塗料。
[2]前記シロキサン系界面活性剤(E)が、ポリエーテル変性シロキサン系界面活性剤(E1)である、[1]に記載の光輝性塗料。
[3]基材と、前記基材の表面に形成された塗膜を有し、
前記塗膜が[1]又は[2]に記載の光輝性塗料を塗装して得られた塗膜である塗装物品。
【発明の効果】
【0009】
本発明の光輝性塗料によれば、鱗片状金属フィラーとして鱗片状インジウムを使用した場合にも塗膜の形成過程において充分配向させることができ、光輝性に優れる塗膜を形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の光輝性塗料により塗膜が形成されるまでの過程の一例を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書および特許請求の範囲において、ある成分と別のある成分とが「相溶しない」とは、両成分が分離し、両成分の間に界面が形成されることを意味する。
これに対して、ある成分と別のある成分とが「相溶する」とは、両成分が分離せず、両成分の間に界面が形成されないことを意味する。
本明細書および特許請求の範囲において、数値範囲を示す「~」は、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含むことを意味する。
【0012】
本発明の光輝性塗料は、以下に示す(A)成分と、(B1)成分と、(C)成分と、(D)成分と(E)成分とを含有する。光輝性塗料は、必要に応じて以下に示す(B2)成分や任意成分を含有してもよい。なお、(B1)成分と(B2)成分とを総称して「(B)成分」ともいう。
(A)成分:アニリン点が40℃以上である炭化水素系溶剤
(B1)成分:(A)成分と相溶しない樹脂
(B2)成分:(B1)成分を溶解又は分散させる溶剤であって、(A)成分と相溶しない溶剤
(C)成分:(A)成分および(B1)成分と相溶し、かつ(A)成分よりも沸点が低い溶剤
(D)成分:鱗片状金属フィラー
(E)成分:シロキサン系界面活性剤
【0013】
<(A)成分>
(A)成分は、アニリン点が40℃以上である炭化水素系溶剤である。
アニリン点が40℃以上であれば、詳しくは後述するが、塗膜の形成過程において(B)成分と分離し、(A)成分の層(以下、「A層」という。)と(B)成分の層(以下、「B層」という。)とが形成される。アニリン点の上限値については特に制限されないが、90℃が好ましい。アニリン点の高い溶剤は概して分子量が大きく、そのため沸点が高くなる傾向にある。アニリン点が90℃以下であれば、加熱処理によって(A)成分が容易に揮発しやすい。
アニリン点は、JIS K 2256:2013(ISO 2977:1997)に準拠して測定される値である。(A)成分が2種以上の成分を含む場合、混合された状態でのアニリン点が40℃であればよい。
【0014】
なお、(A)成分は塗膜の形成過程において(B)成分と分離した後、加熱処理によって揮発するため、最終的に塗膜には殆ど残らない。すなわち、本発明の光輝性塗料より形成される塗膜は、実質的に(A)成分を含まない。
【0015】
(A)成分としては、脂肪族炭化水素系溶剤、不飽和炭化水素系溶剤などが挙げられる。
脂肪族炭化水素系溶剤としては、組成式Cna2na+2(ただし、na≧6)で表されるパラフィン類、組成式Cnb2nb(ただし、nb≧7)で表される単環ナフテン類およびそのアルキル基付加体、組成式Cnc2nc-2で表される二環ナフテン類およびそのアルキル基付加体が挙げられる。
【0016】
具体的には、ノルマルヘキサン、ノルマルヘプタン、ノルマルオクタン、ノルマルノナン、ノルマルデカン等のノルマルパラフィン類;イソオクタン、イソノナン、イソデカン等のイソパラフィン類;シクロヘプタン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ノニルシクロヘキサン等の単環ナフテン類;デカヒドロナフタレン等の二環ナフテン類などが挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
不飽和炭化水素系溶剤としては、例えばリモネン、ジイソブチレンなどが挙げられる。
(A)成分は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0017】
(A)成分の沸点は、80~220℃が好ましく、100~200℃がより好ましく、120~180℃がさらに好ましい。(A)成分の沸点が上記範囲内であれば、塗膜の形成過程において(B)成分と分離した後、加熱処理によって揮発しやすい。
【0018】
(A)成分の含有量は、光輝性塗料の総質量に対して、5~40質量%が好ましく、10~35質量%がより好ましい。光輝性塗料中の(A)成分の含有量が多すぎると、塗膜の主成分である(B1)成分の割合が少なくなり、所望とする膜厚の塗膜を得るために厚塗り塗装が必要となる場合がある。また、(C)成分の割合が少なくなり、その結果、(A)成分と(B)成分が相溶しにくくなり、均一な光輝性塗料が得られにくくなる場合がある。一方、(A)成分の含有量が少なすぎると、塗膜の形成過程においてA層とB層との界面が充分に形成されにくくなる傾向にある。
【0019】
<(B1)成分>
(B1)成分は、(A)成分と相溶しない樹脂である。
(B1)成分は、本発明の光輝性塗料より形成される塗膜の主成分である。
【0020】
(B1)成分は、(A)成分よりも極性が高いことが好ましい。(B1)成分の極性が(A)成分よりも高ければ、塗膜の形成過程において(A)成分と分離した際に、極性が高く表面張力がより高いB層は、極性が低く表面張力がより低いA層よりも下側(基材側)に位置するので、加熱処理により(A)成分が揮発しやすい。
【0021】
(B1)成分としては、極性が高くなりやすい観点から、分子中にヒドロキシ基、カルボニル基等の官能基(極性基)や、エーテル結合を多数有する樹脂が好ましい。特にヒドロキシ基を有する樹脂が好ましい。このような樹脂としては、例えばポリカーボネートジオール、ポリエステルポリオールなどが挙げられる。
【0022】
ポリカーボネートジオールとしては、ジオール(例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,9-ノナンジオール、ネオペンチルグリコール等)と、カーボネート(例えばジメチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、エチレンカーボネート、ホスゲン等)とを反応させて得られるものなどが挙げられる。
【0023】
ポリエステルポリオールとしては、ジカルボン酸(例えばフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、マレイン酸、フマル酸、アジピン酸、セバシン酸等)と、多価アルコール(例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等)とを反応させて得られるもの;ポリカプロラクトンオリゴマーなどが挙げられる。
【0024】
(B1)成分が、上述したポリカーボネートジオール、ポリエステルポリオール等のヒドロキ基を有する樹脂を含む場合、これらと反応して硬化させる硬化剤を、(B1)成分としてさらに含んでいてもよい。ヒドロキ基を有する樹脂の硬化剤としては。ポリイソシアネート化合物やメラミン樹脂当が挙げられる。
【0025】
ポリイソシアネート化合物としては、例えばペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネートのイソシアヌレート体やビウレット体や多価アルコール付加体、アロファネート結合による変性体などが挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
メラミン樹脂としては、例えばメチル化メラミン樹脂、ノルマルブチル化メラミン樹脂、イソブチル化メラミン樹脂などが挙げられる。
(B1)成分は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0026】
(B1)成分の含有量は、光輝性塗料の総質量に対して、5~50質量%が好ましく、10~40質量%がより好ましい。光輝性塗料中の(B1)成分の含有量が多すぎると、光輝性塗料の粘度が高くなり、平滑な塗装面が得られにくくなる傾向にある。一方、(B1)成分の含有量が少なすぎると、所望とする膜厚の塗膜を得るために厚塗り塗装が必要となる場合がある。厚塗り塗装すると、硬化に時間がかかり、光輝性塗料の一部が流れて(垂れて)溜まり、部分的に膜厚が厚くなることがある。
【0027】
<(B2)成分>
(B2)成分は、(B1)成分を溶解又は分散させる溶剤であって、塗膜の形成過程において(B1)成分とともに、B層を形成する溶剤である。(B2)成分は、(A)成分と相溶しない。
(B2)成分なしでも塗料の粘度が塗装可能な程度に低ければ、(B2)成分は使用しなくてもよい。
【0028】
(B2)成分は塗膜の形成過程において、(A)成分と分離する前または(A)成分と分離した後、加熱処理によって揮発するため、最終的に塗膜には殆ど残らない。すなわち、本発明の光輝性塗料が(B2)成分を含んでいても、この光輝性塗料より形成される塗膜は、実質的に(B2)成分を含まない。
【0029】
(B2)成分としては、極性が高くなりやすい観点から、分子内にケト基、ヒドロキシ基、カルボニル基等の官能基(極性基)、窒素、硫黄等の非共有電子対を有する元素、エーテル結合などを有する溶剤が好ましい。このような溶剤としては、例えば環状カーボネート系溶剤、多価アルコール、ケトン系溶剤、含窒素元素または含硫黄元素の非プロトン性極性溶剤などが挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0030】
環状カーボネート系溶剤としては、例えばエチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどが挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
多価アルコールとしては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、1、2-ブタンジオール、テトラメチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどが挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0031】
ケトン系溶剤としては、例えばダイアセトンアルコール、イソホロンなどが挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
含窒素元素または含硫黄元素の非プロトン性極性溶剤としては、例えばN,N-ジメチルホルムアミド、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、ジメチルスルホキシドなどが挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0032】
(B2)成分の沸点は、(A)成分の沸点よりも高くてもよいし、低くてもよいが、塗膜の形成過程において(A)成分と(B)成分との分離後、加熱処理により上側のA層から優先的に揮発するのが望ましいことから、(B2)成分の沸点は(A)成分の沸点よりも高いことが好ましい。
(B2)成分の沸点は、150~300℃が好ましく、180~250℃がより好ましい。
【0033】
(B2)成分の含有量は、光輝性塗料の総質量に対して、20質量%以下が好ましく、0~10質量%がより好ましい。光輝性塗料中の(B2)成分の含有量が多すぎると、塗膜の主成分である(B1)成分の割合が少なくなり、所望とする膜厚の塗膜を得るために厚塗り塗装が必要となる場合がある。
【0034】
<(C)成分>
(C)成分は、(A)成分および(B1)成分と相溶し、かつ(A)成分よりも沸点が低い溶剤である。
光輝性塗料が(B2)成分を含有する場合、(C)成分は(B2)成分とも相溶することが好ましい。
【0035】
(C)成分は塗膜の形成過程において揮発するため、最終的に塗膜には殆ど残らない。すなわち、本発明の光輝性塗料より形成される塗膜は、実質的に(C)成分を含まない。
(C)成分としては、ケトン系溶剤、アルコール系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤、グリコールエーテル系溶剤、鎖状カーボネート系溶剤などが挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0036】
ケトン系溶剤としては、例えばアセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソブチルケトンなどが挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
アルコール系溶剤としては、例えばメタノール、エタノール、ノルマルプロパノール、イソプロパノール、ノルマルブタノール、イソブタノール、2-ブタノールなどが挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0037】
エーテル系溶剤としては、例えばジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチルイソブチルエーテル、テトラヒドロフラン、シクロペンチルメチルエーテルなどが挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
エステル系溶剤としては、例えばメチルアセテート、エチルアセテート、ノルマルプロピルアセテート、イソプロピルアセテート、ノルマルブチルアセテート、イソブチルアセテート、セカンダリーブチルアセテート、メチルプロピオネート、エチルプロピオネート、ノルマルプロピルプロピオネート、メチル-2-メチルブチレートなどが挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0038】
グリコールエーテル系溶剤としては、例えばエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、モノグライムなどが挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
鎖状カーボネート系溶剤としては、例えばジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネートなどが挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0039】
(C)成分の沸点は(A)成分の沸点よりも低い。光輝性塗料が(B2)成分を含有する場合、(C)成分の沸点は(B2)成分の沸点よりも低くてもよいし、高くてもよいが、低いことが好ましい。
(C)成分の沸点は、125℃以下が好ましく、50~100℃がより好ましい。(C)成分の沸点が125℃以下であれば、塗膜の形成過程において揮発しやすい。
【0040】
(C)成分の含有量は、光輝性塗料の総質量に対して、10~80質量%が好ましく、20~60質量%がより好ましい。光輝性塗料中の(C)成分の含有量が多すぎると、塗膜の主成分である(B1)成分の割合が少なくなり、所望とする膜厚の塗膜を得るために厚塗り塗装が必要となる場合がある。一方、(C)成分の含有量が少なすぎると、(C)成分を含む(A)成分と、(C)成分を含む(B)成分との間に界面が生じて層が形成されることがあり、均一な塗装が困難となる場合がある。
【0041】
<(D)成分>
(D)成分は、鱗片状金属フィラーであって、光輝性塗料より得られる塗膜に光輝性を付与する成分である。
鱗片状金属フィラーとしては、鱗片状インジウム(D1)、鱗片状アルミニウム等が挙げられるが、鱗片状インジウム(D1)は、塗膜の形成過程において配向しにくいこと、高価であるため少量で高輝性を有する塗膜を形成する必要があることから、本発明の適用対象として適している。
【0042】
本発明において、「鱗片状」とは、金属フィラーの厚さに対する平均粒子径の比であるアスペクト比(平均粒子径/厚さ)が2~1,000であるものをいう。
また、「平均粒子径」とは、レーザー回折散乱法(マイクロトラック法)により測定される50%粒径(D50%)のことである。
【0043】
(D)成分の厚さは、0.005~2μmが好ましく、0.01~0.1μmがより好ましい。厚さが0.005μm以上の(D)成分は製造が容易であるとともに、透けにくいので、塗膜の光沢度が高まる。一方、(D)成分の厚さが2μm以下であれば、塗膜の外観を良好に維持できる。特に、(D)成分の厚さが0.1μm以下であれば、より金属調の塗膜が得られやすくなる。
(D)成分の厚さは、電子顕微鏡を用いて測定される。
【0044】
(D)成分の平均粒子径は、0.01~10μmが好ましく、0.01~2μmがより好ましい。(D)成分の平均粒子径が0.01μm以上であれば、厚さが0.01μm以下の(D)成分が得られやすい。一方、(D)成分の平均粒子径が10μm以下であれば、滑らかな金属調の塗膜が得られやすくなる。
【0045】
(D)成分は、有機溶剤に分散したペースト状とされていてもよい。
(D)成分は、鱗片状金属フィラーの表面が、脂肪酸やシランカップリング剤等の表面処理剤によって表面処理されたものや、透明性を有する樹脂で被覆されたものを(D)成分として用いてもよい。
なお、「透明」とは(D)成分の表面を被覆した際に(D)成分の金属調を損なわないことを意味し、全光線透過率が50%以上であることが好ましい。
【0046】
(D)成分としては、蒸着による蒸着金属薄膜や圧延による薄膜などを解砕して鱗片状としたものが挙げられる。これらの中でも、より金属調の塗膜が得られやすい点で、蒸着金属薄膜を解砕したものが好ましい。
蒸着金属薄膜は、例えば、ポリエチレンテレフタレート等の基材フィルム上に金属を蒸着し、基材フィルム上に蒸着金属薄膜を形成した後、基材フィルムから剥離することで得られる。蒸着金属薄膜は不定形に解砕され、鱗片状金属フィラーとされる。
【0047】
圧延による薄膜は、不定形または円形(楕円形を含む)に解砕することにより鱗片状金属フィラーとされる。
不定形に解砕した鱗片状金属フィラーを「コーンフレーク状の圧延金属フレーク」ともいい、円形に解砕した鱗片状金属フィラーを「コイン状の圧延金属フレーク」ともいう。コイン状の圧延金属フレークは、滑らかな端部を有し、表面が平滑である。
【0048】
(D)成分の含有量は、光輝性塗料の総質量に対して、0.01~5質量%が好ましく、0.1~2質量%がより好ましい。光輝性塗料中の(D)成分の含有量が多すぎると、(D)成分同士が重なり合いやすくなり、微細な凹凸形状が形成される。凹凸形状が多数形成されると光を乱反射しやすくなる傾向にある。(D)成分の含有量が10質量%以下であれば、凹凸形状が多数形成されるのを抑制できるので、光の乱反射を防止でき、光輝性を良好に維持できる。一方、(D)成分の含有量が少なすぎると、下地を充分に隠ぺいしにくくなる。
【0049】
<(E)成分>
(E)成分は、シロキサン系界面活性剤である。シロキサン系界面活性剤は、ケイ素(Si)と酸素(O)が化学結合により交互に連なったシロキサン結合を主骨格に持つシリコーンの一部に親水性の有機基を導入した構造をもつ界面活性剤である。
シロキサン結合の主骨格は直鎖状でも、分岐鎖状でも、環状でもよい。
【0050】
有機基を導入するための変性方法としては、ポリエーテル変性、ポリエーテル・アルキル共変性、ポリグリセリン変性、ポリエーテル・シリコーン・アルキル変性などが挙げられるが、ポリエーテル変性によることが好ましい。
シロキサン結合の主骨格が直鎖状の場合、変性によって有機基を導入する箇所としては、側鎖、両末端、片末端、側鎖および両末端等の態様が挙げられるが、側鎖に導入することが好ましい。
【0051】
ポリエーテル変性シロキサン系界面活性剤の市販品としては、例えば、BYK(登録商標)-307、BYK-345、BYK-346、BYK-347、BYK-348、BYK-349(いずれもBYK社製)、シルフェイス(登録商標)SAG002、シルフェイスSAG005、シルフェイスSAG0503A、シルフェイスSAG008(いずれも日信化学工業(株)製)等を挙げることができる。これらを2種以上含有してもよい。これらの中でも、BYK-307、BYK-347などが好ましい。
【0052】
(E)成分の含有量は、光輝性塗料の総質量に対して、0.0001~0.015質量%が好ましく、0.0003~0.01質量%がより好ましい。光輝性塗料中の(E)成分の含有量が好ましい下限値以上であれば、高光沢の塗膜が得られる。好ましい上限値以下であれば、A層とB層との界面に形成されるD層の配向性を邪魔せず高光沢の塗膜が得られる。。
【0053】
<任意成分>
光輝性塗料は、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、必要に応じて(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分および(E)成分以外の成分(任意成分)を含有してもよい。
任意成分としては、例えばアニリン点が40℃未満の炭化水素系溶剤(以下、「他の炭化水素系溶剤」ともいう。)、(A)成分および(B1)成分と相溶し、かつ(A)成分よりも沸点が高いもしくは同等の沸点の溶剤、添加剤などが挙げられる。
【0054】
他の炭化水素系溶剤としては、例えばベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、ノルマルプロピルベンゼン、エチルメチルベンゼン、トリメチルベンゼン、インダン、インデン、ジエチルベンゼン、ジメチル-エチルベンゼン、テトラメチルベンゼン、1-メチル-3-プロピルベンゼン、1-メチル-2-ノルマルプロピルベンゼン、メチルインダン、ナフタレン、ペンタン、シクロペンタン、シクロヘキサンなどが挙げられる。また、他の炭化水素系溶剤の混合溶剤として、ミネラルスピリット、ソルベントナフサなどが挙げられる。
【0055】
(A)成分および(B1)成分と相溶し、かつ(A)成分よりも沸点が高いもしくは同等の沸点の溶剤としては、ケトン系溶剤、アルコール系溶剤、エステル系溶剤、グリコールエーテル系溶剤、鎖状カーボネート系溶剤などが挙げられる。
ケトン系溶剤としては、例えばメチルアミルケトン、シクロヘキサノン、ジイソブチルケトン、メチルヘキシルケトンなどが挙げられる。
アルコール系溶剤としては、例えば3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、3-メチル-1-ペンタノール、ノルマルヘキサノール、ノルマルヘプタノールなどが挙げられる。
【0056】
エステル系溶剤としては、例えばアミルアセテート、イソアミルアセテート、ノルマルヘキシルアセテート、3-メトキシブチルアセテート、3-メトキシ-3-メチル-1-ブチルアセテート、エチル-3-エトキシプロピオネート、2-メチルプロピル-2-メチルプロピオネート、エチルラクテートなどが挙げられる。
グリコールエーテル系溶剤としては、例えばジエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノノルマルブチルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノノルマルプロピルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、などが挙げられる。
鎖状カーボネート系溶剤としては、例えばジエチルカーボネートが挙げられる。
【0057】
添加剤としては、ジブチルスズラウレート等の硬化促進剤、炭酸カルシウム等の体質顔料、カーボン等の着色顔料、ジブチルフタレート等の可塑剤、リン酸エステル等の硬化遅延剤、シリカ粉等の粘性調整剤などが挙げられる。これら添加剤は、(B1)成分と相溶することが好ましい。
【0058】
また、(D)成分がペースト状である場合、(D)成分が分散している有機溶剤は(A)成分、(B2)成分、(C)成分または任意成分のいずれかに含まれ、(D)成分が分散している有機樹脂成分は(B1)成分または任意成分のいずれかに含まれる。また、(D)成分として鱗片状金属フィラーの表面が脂肪酸やシランカップリング剤等の表面処理剤で表面処理されているものを用いる場合、表面処理剤は任意成分に含まれる。
【0059】
また、光輝性塗料は、(A)成分と相溶する樹脂(以下、これを称して「(A)成分と相溶する他の成分」ともいう。)を実質的に含有しないことが好ましい。
(A)成分と相溶する他の成分のうち、樹脂としては例えば低極性アクリル樹脂などが挙げられる。
ここで、「実質的に含有しない」とは、(A)成分と相溶する他の成分の含有量が、光輝性塗料の総質量に対して0.1質量%未満を意味する。
【0060】
<塗膜の形成>
本発明の光輝性塗料により基材の表面に塗膜が形成され、塗装物品が得られるまでの過程の一例を、図1を参照しながら説明する。
なお、以下の説明では、光輝性塗料は(B2)成分も含むものとする。
【0061】
まず、基材20上に本発明の光輝性塗料10を塗装する(工程(a))。光輝性塗料10の塗装方法としては特に制限されず、例えば刷毛、こて、ローラー、スプレー、流し塗り、ディッピングコート、シャワーコート、印刷などの公知の塗装方法を採用できる。
【0062】
基材20上に塗装された直後の光輝性塗料10には、(A)成分と(B)成分と(C)成分と(D)成分13と(E)成分が含まれる。(A)成分および(B)成分は、(C)成分に相溶している。(D)成分は相溶した(A)成分および(B)成分中にランダムに分散している。(E)成分もまた、相溶した(A)成分および(B)成分中にランダムに分散してに存在する。
【0063】
基材20としては、金属基材、プラスチック基材などが挙げられる。
金属基材の材質としては、例えばアルミニウム、鉄、ニッケル、クロム、チタン、銅、銀、亜鉛、スズ、インジウム、マグネシウム、これらの酸化物、およびこれらの合金などが挙げられる。
一方、プラスチック基材の材質としては、例えばポリエステル(例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等)、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリカーボネート、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合樹脂(ABS)、アクリル樹脂、アクリロニトリル-スチレン共重合樹脂、アクリル-スチレン共重合樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂などが挙げられる。
【0064】
ついで、基材20の光輝性塗料10を自然乾燥または加熱処理する(工程(b))。
(C)成分は(A)成分よりも沸点が低いので、光輝性塗料10を自然乾燥または加熱処理すると、(A)成分よりも先に光輝性塗料10中の(C)成分が揮発する。このとき、(B2)成分の沸点が(C)成分よりも低ければ(C)成分と共に(B2)成分も揮発し、(B2)成分の沸点が(C)成分よりも高ければ(C)成分のみが揮発する。
工程(b)において光輝性塗料10を加熱処理する場合、加熱温度は(C)成分の沸点よりも高く、(A)成分の沸点よりも低い温度が好ましい。
【0065】
(A)成分はアニリン点が40℃以上の炭化水素系溶剤であり、かつ(B)成分は(A)成分と相溶しない樹脂であるため、(C)成分が揮発すると、(A)成分と(B)成分とが分離し、(A)成分の層(A層)11と(B)成分の層(B層)12とが形成される。(B1)成分の極性が(A)成分よりも高ければ、図1に示すようにB層12がA層11よりも下側に位置する。また、基材20表面に付着した(B)成分は(A)成分よりも表面張力が高く、(B)成分同士が互いに引き付け合い、B層12を形成しようと働く。その結果、(A)成分がB層12から排斥されるようにして、B層12の基材20と接している面とは反対側(気相側)の表面を覆うようにA層11を形成すると考えられる。そのため基材20を垂直に立てたり、垂直部分を有する基材20に塗装したりしても、基材20上にB層12が形成され、このB層12上にA層11が形成される。
【0066】
通常、互いに相溶しない複数の液相に粉体を添加した場合、粉体は各液相に分散または沈殿するが、(D)成分は(A)成分および(B)成分に対して親和性を有する。よって、工程(b)により(A)成分と(B)成分とが分離し、A層11とB層12とが形成されると、(D)成分13は界面活性剤のようにA層11とB層12との界面に吸着し、A層11とB層12との界面で(D)成分13が局在化する。このとき、(D)成分の配向にはバラツキがある。
【0067】
なお、工程(b)がなされた段階において、(B2)成分の沸点が(C)成分よりも低い場合、B層12は(B1)成分を含み、(B2)成分を含まず、(B2)成分の沸点が(C)成分よりも高い場合、B層12は(B1)成分と(B2)成分とを含む。また、光輝性塗料が(B1)成分と相溶する添加剤を含有する場合、B層12には(B)成分に加えて添加剤も含まれる。光輝性塗料が他の炭化水素系溶剤を含有する場合、他の炭化水素系溶剤の一部は(B)成分に相溶してB層12に含まれる。(B)成分の飽和量を超えた((B)成分に相溶しなかった)残りの他の炭化水素系溶剤は、A層11に含まれる。
【0068】
ついで、A層11とB層12とを自然乾燥または加熱処理する(工程(c))。
工程(c)により(A)成分が揮発する。A層11中に他の炭化水素系溶剤が含まれている場合は、工程(c)において他の炭化水素系溶剤も揮発する。B層12中に(B2)成分や他の炭化水素系溶剤が含まれている場合は、工程(c)において(B2)成分や他の炭化水素系溶剤も揮発する。その結果、A層11が消失し、基材20上にはB層12が残る。工程(c)後のB層12には、(B1)成分と必要に応じて添加剤とが含まれ、(B2)成分は概ね除去される。
【0069】
また、(A)成分が揮発していくと、A層11は薄くなり、やがて消失するが、その過程で(D)成分13はB層12の表面上で該表面に対して平行に配向し、B層12の表面上に(D)成分13からなる平滑な膜が形成される。こうして、基材20上に、B層12と、B層12の表面上に形成された(D)成分13からなる平滑な膜とを備えた光輝性塗膜30が形成され、塗装物品が得られる。
【0070】
工程(c)において加熱処理する際の加熱温度は、(A)成分の沸点よりも高い温度が好ましい。
(B2)成分の沸点が(A)成分よりも高い場合、工程(c)における加熱温度は(B2)成分よりも高い温度が好ましい。また、工程(c)において加熱温度を段階的に上げてもよい。例えば、(A)成分の沸点よりも高く、(B2)成分の沸点よりも低い温度で加熱処理した後、(B2)成分の沸点よりも高い温度でさらに加熱処理してもよい。
【0071】
B層12の表面上の(D)成分13は外的要因により傷がついたり、劣化したりしやすいため、光輝性塗膜30の表面(基材20とは反対側の面)にはクリヤ塗料を塗装して、クリヤ塗膜を形成しておくことが好ましい。
【0072】
<作用効果>
本発明の光輝性塗料においては、(A)成分および(B)成分が(C)成分に相溶し、(D)成分が塗料中で分散し、(E)成分は塗料中に分散して存在しているが、上述したように、塗膜の形成過程において、まず(C)成分が揮発して、(A)成分と(B)成分とが分離する。このとき、A層とB層との界面において(D)成分がある程度局在化する。ついで、(A)成分が揮発することで(D)成分がB層の表面上で該表面に対して略完全に平行に配向し、B層の表面上に(D)成分の膜が形成される。
【0073】
(E)成分が存在すると、(D)成分が鱗片状インジウム(D1)であっても、充分に配向する理由は定かではないが、工程(b)の際、B層が平滑になることから、(D)成分がレベリングされて平行に配向されやすくなるためと推測される。
このように、(D)成分はB層の表面上で該表面に対して平行に配向するので、優れた光輝性を発現できる。よって、本発明の光輝性塗料によれば、(D)成分が鱗片状インジウム(D1)であっても、光輝性に優れる塗膜(光輝性塗膜)を形成できる。
【0074】
上述したように、(D)成分は(A)成分および(B)成分に対して親和性を有するので、(A)成分と(B)成分とが分離したときに、A層とB層との界面において(D)成分が局在化すると考えられる。(D)成分以外の光輝性顔料(例えば、パール顔料など)を用いた場合は、A層とB層との界面での光輝性顔料の局在化は起こりにくい。
【0075】
また、塗膜が充分な光輝性を発現するには、塗膜の表面上で(D)成分が塗膜の表面に対して平行に配向している必要がある。本発明では、(A)成分と(B)成分とが分離し、(D)成分がA層とB層との界面で局在化した後、(A)成分が揮発してA層が消失する際に、(D)成分がB層の表面上で該表面に対して平行に配向する。(A)成分が揮発してA層が消失するとき、B層上に(D)成分以外の成分が残存していない方が、(D)成分はB層の表面に対してより平行に配向しやすい。B層上に(D)成分以外の成分が残存しないようにするためには、上述したように、光輝性塗料は(A)成分と相溶する他の成分を実質的に含有しないことが好ましい。
【実施例
【0076】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例および比較例において使用した原料は、以下の通りである。
【0077】
「使用原料」
<(A)成分>
・A-1:メチルシクロヘキサン(アニリン点:40℃、沸点:101℃)。
・A-2:エチルシクロヘキサン(アニリン点:43℃、沸点:132℃)。
・A-3:脂肪族石油系炭化水素(エクソンモービル社製、「Exxsol(登録商標) DSP 145/160」、アニリン点:66℃、沸点:146~158℃)。
・A-4:脂肪族石油系炭化水素と芳香族石油系炭化水素の混合物(東燃ゼネラル石油株式会社製、「T-SOL(登録商標) 3040 FLUID」、アニリン点:52℃、沸点:159~187℃)。
・A-5:脂肪族石油系炭化水素(エクソンモービル社製、「Isopar(登録商標) G」、アニリン点:83℃、沸点:166~176℃)。
【0078】
<(AX)成分>
・AX-1:キシレン(アニリン点:28℃、沸点:144℃)。
・AX-2:芳香族石油系炭化水素(出光興産株式会社製、「イプゾール(登録商標)100」、アニリン点:0℃未満、沸点:159~172℃)。
【0079】
<(B1)成分>
・B1-1:ポリカーボネートジオール(旭化成株式会社製、「デュラノール(登録商標) T5651」)。
・B1-2:イソシアヌレート型のヘキサメチレンジイソシアネート(旭化成株式会社製、「デュラネート TPA-100」)。
・B1-3:ポリカプロラクトンジオール(株式会社ダイセル製、「プラクセル(登録商標) 210」)。B1-3はポリエステルポリオールである。
なお、B1-1、B1-2およびB1-3は、前記A-2~A-5と相溶しない樹脂である。
【0080】
<(B1X)成分>
・B1X-1:アクリルポリオール(東亞合成株式会社製、「ARUFON(登録商標) UH-2041」)。
なお、B1X-1は、前記A-4と相溶する樹脂である。
【0081】
<(B2)成分>
・B2-1:プロピレンカーボネート(沸点:240℃)。
・B2-2:プロピレングリコール(沸点:188℃)。
・B2-3:1,4-ブタンジオール(沸点:230℃)。
なお、B2-1、B2-2およびB2-3は、前記B-1~B-3と相溶する一方、前記A-1~A-5と相溶しない溶剤である。
【0082】
<(B2X)成分>
・B2X-1:ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(沸点:217℃)。 なお、B2X-1は、前記B-1、B-2と相溶する溶剤である。
【0083】
<(C)成分>
・C-1:アセトン(沸点:56℃)。
<(CX)成分>
・CX-1:プロピレングリコールモノエチルエーテル(沸点:133℃)。
【0084】
<(D)成分>
・D-1:蒸着インジウムフレーク(尾池工業株式会社製、「リーフパウダー(登録商標) 49CJ―1120」、平均粒子径:1μm、厚さ:0.1μm、アスペクト比(平均粒子径/厚さ)10:、不揮発分:20質量%)。
【0085】
<(DX)成分>
・DX-1:パールマイカ(Merck社製、「Iriogin 111 WNT」)。
【0086】
<(E)成分>
・E-1:ポリエーテル変性シロキサン系の界面活性剤(BYK社製「BYK‐307」)。
・E-2:ポリエーテル変性シロキサン系の界面活性剤(BYK社製「BYK‐347」)。
・E-3:ポリエーテル変性シロキサン系の界面活性剤(日信化学社製「SAG005」)。
・E-4:ポリエステル変性シロキサン系の界面活性剤(BYK社製「BYK‐313」)。
【0087】
<(EX)成分>
・EX-1:アクリル系界面活性剤(BYK社製「BYK‐350」)。
・EX-2:アクリル系界面活性剤(BYK社製「BYK‐392」)。
【0088】
<任意成分>
・DBTDL:ジブチルスズジラウレート。
なお、DBTDLは(A)成分と相溶しない添加剤である。
【0089】
「実施例1~15、比較例1~13」
表1~4に示す配合組成に基づいて各成分を混合し、光輝性塗料を調製した。表1~4における空欄は、当該成分が配合されていないことを示す。
なお、表1~4中、(D)成分の配合量は不揮発分(すなわち、蒸着インジウムフレークまたはパールマイカ)の量である。また、「(D)由来」は(D)成分又は(DX)成分中に含まれる揮発分((C)成分または任意成分に相当)である。
また、表1~4中、(E)成分の配合量は不揮発分の量である。また、「(E)由来」は(E)成分又は(EX)成分中に含まれる揮発分((C)成分または任意成分に相当)である。
【0090】
アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂製の板(ABS板)に、スプレーを用いて工程(c)後の膜厚が20μmになるように光輝性塗料を塗装した(工程(a))。ついで、ABS板上の光輝性塗料を温度23℃、湿度50%RHの条件で10分間乾燥させた後(工程(b))、さらに温度80℃の条件で1時間乾燥させ(工程(c))、塗膜を形成した。
得られた塗膜について、以下のようにして光輝性を評価した。結果を表1~4に示す。
【0091】
<光輝性の評価>
(外観評価)
形成した塗膜の外観を目視にて観察し、以下の評価基準にて評価した。
◎:近景、遠景ともにはっきりと映り込む。
○:近景ははっきりと映り込むが、遠景がややぼやける。
△:近景ははっきりと映り込むが、遠景がぼやける。
×:近景がぼやける。
【0092】
(光沢度の測定)
形成した塗膜について、20°の光沢度をJIS Z 8741に準拠して、鏡面光沢計(BYK-Gardner社製、「マイクロ-トリ-グロスμ」)を用いて測定した。光沢度は数値が大きいほど光沢が高い(光輝性に優れる)ことを示す。
【0093】
【表1】
【0094】
【表2】
【0095】
【表3】
【0096】
【表4】
【0097】
表1、2から明らかなように、各実施例で得られた光輝性塗料より形成された塗膜は、光輝性に優れていた。
一方、表3、4から明らかなように、(E)成分を含まない比較例1~3の場合、A層とB層との界面に(D)成分が均一に配向されず、塗膜のエッジ部分の(D)成分が多く溜まってしまった部分でクラックが発生した。
【0098】
アニリン点が40℃未満であるAX-1またはAX-2を用いた比較例4、5の場合、(A)成分と(B)成分とが分離しなかったため、A層とB層との界面が充分に形成されず、(D)成分が局在化しなかった。
(A)成分と相溶するB1X-1を用いた比較例6の場合、(A)成分と(B)成分とが分離しなかったため、A層とB層との界面が充分に形成されず、(D)成分が局在化しなかった。
【0099】
(A)成分を含まない比較例7、8の場合、A層とB層との界面が形成されず、(D)成分が局在化しなかった。
(A)成分よりも沸点が高いCX-1を用いた比較例9の場合、(A)成分と(B)成分とが分離しなかったため、A層とB層との界面が充分に形成されず、(D)成分が局在化しなかった。
【0100】
パール顔料であるDX-1を用いた比較例11の場合、A層とB層との界面は形成されたものの、この界面にDX-1が局在化しなかった。
そのため、比較例1~9、11で得られた光輝性塗料より形成された塗膜は、光輝性に劣っていた。
(C)成分を用いなかった比較例10の場合、塗料中で(A)成分と(B)成分とが分離してしまい、塗装できなかった。
【符号の説明】
【0101】
10 光輝性塗料
11 A層
12 B層
13 (D)成分
20 基材
30 光輝性塗膜
【要約】
【課題】鱗片状金属フィラーとして鱗片状インジウムを使用した場合にも塗膜の形成過程において充分配向させることができ、光輝性に優れる塗膜を形成できる光輝性塗料を提供する。
【解決手段】アニリン点が40℃以上である炭化水素系溶剤(A)と、前記炭化水素系溶剤(A)と相溶しない樹脂(B1)と、前記炭化水素系溶剤(A)および前記樹脂(B1)と相溶し、かつ前記炭化水素系溶剤(A)よりも沸点が低い溶剤(C)と、鱗片状金属フィラー(D)と、シロキサン系界面活性剤(E)と、を含有し、前記鱗片状金属フィラー(D)が鱗片状インジウム(D1)である、光輝性塗料。
【選択図】図1
図1