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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-19
(45)【発行日】2023-12-27
(54)【発明の名称】振動発電装置
(51)【国際特許分類】
   H02K 35/04 20060101AFI20231220BHJP
【FI】
H02K35/04
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020071361
(22)【出願日】2020-04-10
(65)【公開番号】P2021168571
(43)【公開日】2021-10-21
【審査請求日】2023-03-06
(73)【特許権者】
【識別番号】591032703
【氏名又は名称】群馬県
(73)【特許権者】
【識別番号】596041227
【氏名又は名称】石坂産業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 豊
(72)【発明者】
【氏名】坂田 知昭
(72)【発明者】
【氏名】小松 秀和
(72)【発明者】
【氏名】田島 創
【審査官】保田 亨介
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/142714(WO,A1)
【文献】特開2015-158134(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B06B1/00-3/04
F03G1/00-7/10
G01M5/00-7/08
H02K24/00-27/30
31/00-31/04
35/00-35/06
39/00
47/00-47/30
53/00
99/00
H02N1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動ユニットと、前記振動ユニットと対向するように設けられた1対の固定ユニットとを具備し、前記振動ユニットが振動することにより永久磁石と対向するコイルとの相対運動にて、前記コイルに誘導電流を生じさせるようにした振動発電装置において、
前記振動ユニットと、
保持フレームに保持された1対の前記固定ユニットと、
前記保持フレームを固定する固定ブロックと、
一方の端部は、前記振動ユニットの端部と固着され、他方の端部は押えブロックを介して板バネ固定ねじにて前記固定ブロックに螺着固定された板バネと、
該板バネの長手方向に対し前記振動ユニットと前記押えブロックの間の位置に配設され、中央部に設けられたスリット孔を有するガイドブロックと、
を具備し、前記板バネは前記ガイドブロックの前記スリット孔に挿通され、さらに、前記他方の端部が前記押えブロックから前記振動ユニットとは反対方向に延伸するとともに、前記振動ユニットが振動発生部の振動と共振するように長さ方向に移動可能に固定されたことを特徴とする振動発電装置。
【請求項2】
前記ガイドブロックは前記スリット孔を囲んで少なくとも2つ以上の部品で構成されていることを特徴とする請求項1に記載の振動発電装置。
【請求項3】
前記板バネの前記他方の端部近傍に設けられた調整治具係合孔に、調整治具の係合突起を挿入し、前記振動ユニットの振幅が最大となる共振周波数に合致するように、前記板バネのバネ部有効長Lを調整し、前記押えブロックを介して前記板バネ固定ねじにより前記板バネを前記固定ブロックに螺着固定するようにしたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の振動発電装置。
【請求項4】
前記調整治具は、断面円形のシリンダー開口孔が、中心軸を貫通する円筒形のシリンダーと、前記シリンダー開口孔内を軸線方向に直動する円筒型のピストンとで構成され、前記調整治具により前記振動ユニットの振動を共振周波数に調整可能とすることを特徴とする請求項に記載の振動発電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、共振周波数を調整して振動発電を行う振動発電装置に関し、特に、調整治具を使用して簡単に共振周波数を調整する振動発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エネルギーハーベスティング(環境発電)に関する技術革新がなされる中で、機械の振動や移動機械による振動を利用して発電し、その電力をLED表示器の電源、加速度センサーや温度センサー等の各種センサーの電源、そのセンサー信号を無線送信する無線送信機の電源として使用する技術に関し各種の提案がされている。
【0003】
一方で、発電効率を上げるためには、振動発生部の振動周波数と振動発電装置の共振周波数を合致させて発電することが最も効率が良いが、振動発生部の振動周波数はバラバラであり、また経時的に変化してしまうこともあるため、振動発電装置の共振周波数を調整して合わせ込む必要がある。
【0004】
特許文献1は、振動ユニットと固定ユニットとを連結する複数のコイルバネを設け、コイルバネと固定ユニットとの連結部分である固定側連結部の位置を、コイルバネの伸縮方向が振動方向に対して斜めになるように連続的に変える連結部位置可変手段を備えたことにより、固定側連結部の位置の変化に伴いコイルバネの振動方向に対する見かけ上のバネ定数を連続的に変えられるので、共振周波数を調整する作業性が向上するとある。
【0005】
特許文献2は、軸方向の両端部にガイド棒を介して設けられ、それぞれが一対の磁石として構成される2つの磁気バネ部と、2つの磁気バネ部の磁石間距離を調整可能な調整機構部を備え、非接触で共振周波数を変更可能な機構を有することにより、所望の共振周波数を得るための調整を容易に行うことができ、かつ、加速度に対する機械的強度の向上を実現できるとある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2018-088771号公報
【文献】特開2015-180134号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1、特許文献2の技術は、ともに、共振周波数を調整する機構が振動発電装置の内部に常設で設けられており、機構が複雑化する上に、装置も大型化し製造コストも上がるという問題があった。特に、工場内の複数箇所に多数の振動発電装置を設置する場合には、この製造コストが上昇することは大きな問題であった。また、振動発電装置の内部に調整機構が設けられており、振動による調整機構部の疲労破壊や摩耗により故障や共振点のズレが発生しやすい問題もあった。
【0008】
本願発明は上記問題を解決し、簡単な機構で安価で信頼性の高い振動発電装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明において、上記目的を達成するために係る手段1は、振動ユニットと、保持フレームに保持された1対の固定ユニットと、保持フレームを固定する固定ブロックと、
一方の端部は、振動ユニットの端部と固着され、他方の端部は押えブロックを介して板バネ固定ねじにて固定ブロックに螺着固定された板バネと、振動ユニットと押えブロックの間の位置で、中央部に設けられたスリット孔を有するガイドブロックとを具備し、
板バネはガイドブロックのスリット孔に挿通され、さらに、その端部が押えブロックから振動ユニットとは反対方向に延伸するとともに、板バネ振動ユニットが振動発生部の振動と共振するように長さ方向に移動可能に配設し固定したことである。
【0010】
本願発明の手段1によれば、板バネガイドブロックのスリット孔に挿通した後、その先の固定ブロックに押えブロックを介して板バネ固定ねじにて螺着固定したことにより、板バネの締め付け具合で振幅が最大となる点すなわち共振点が変化しない利点がある。また、共振周波数を調整する場合は板バネ固定ねじを緩め、振動ユニットとは反対方向に延伸した板バネの端部を工具や治具で把持しながら振動発電装置内部の板バネの長さを、外側から容易に調整する構造としていて、複雑な機構を振動発電装置の内部には設けずに、さらに、振動による部品の破損や摩耗、共振点の変化等の問題も発生しにくくなる利点もあり、簡単な機構で安価で信頼性の高い振動発電装置を提供することができる。さらに、装置が大型化し製造コストも上がるという問題も発生しなくなる利点もある。特に、振動発電装置を複数配置して使用する場合には、製造コストが下がる点は非常に大きな利点である。
【発明の効果】
【0011】
上記の結果、本願発明によれば、簡単な機構で安価で信頼性の高い振動発電装置を提供することができる。
【0012】
(課題を解決するためのその他の手段)
本願発明の手段2は、ガイドブロックはスリット孔部で少なくとも2つ以上の部品に分かれて構成されていることである。本願発明の手段2によれば、ガイドブロックを分割することで、板バネを案内するガイドブロックのスリット孔を簡単に精度良く加工でき、各部品を組み合わせることで板バネの厚さや幅のバラツキに対応でき、さらに、共振周波数を大きく変化させるために、板バネの厚さを変更した場合などに柔軟に対応できる効果がある。
【0013】
特に、ガイドブロックのスリット孔を形成する方法として、板バネと同一の厚さのスペーサーを板バネの両側に配してガイドブロック抑えで挟み込み形成する場合は、板バネを挟む両側のブロックが平面で形成できるため、スリット加工や段差加工などの加工精度の影響が全くない疑似的なスリットが形成でき、さらに追加の利点がある。
【0014】
本願発明の手段は、板バネの端部に設けられた調整治具係合孔に、断面円形のシリンダー開口孔が中心軸を貫通する円筒形のシリンダーと、シリンダー開口孔内を軸線方向に直動する円筒型のピストンとで構成された調整治具の係合突起を挿入し、振動ユニットの振幅が最大となる共振周波数に合致するように、板バネのバネ部有効長L を調整し、押えブロックを介して板バネ固定ねじにより、板バネを固定ブロックに螺着固定するようにしたことである。
【0015】
本願発明の手段によれば、振動ユニットの振幅が最大となる共振周波数に合わせ込む調整は、振動させながらバネ部有効長Lを微妙な長さに合わせこむ調整作業であり、板バネの調整治具係合孔に調整治具の係合突起を挿入し、調整治具を直動することで簡単に調整できる効果がある。特に、調整治具を直動する場合に調整治具の内部に減速機構を設けて微調整できるようにすると、一層調整しやすい効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本願発明の振動発電装置の全体を示す斜視図である。
図2】本願発明の振動発電装置の振動発電部を示す分解斜視図である。
図3図2における板バネ取付けを示す分解斜視図である。
図4図2における板バネ取付けを示すA-A断面斜視図である。
図5図2における板バネ取付けを示す一部分解斜視図である。
図6】本願発明の振動発電装置におけるガイドブロックの第1の変形例を示す分解斜視図である。
図7】本願発明の振動発電装置におけるガイドブロックの第2の変形例を示す分解斜視図である。
図8】本願発明の振動発電装置の共振周波数調整に使用する調整治具の斜視図である。
図9】本願発明の振動発電装置の共振周波数調整に使用する調整治具の分解斜視図である。
図10図8の調整治具の斜視断面図である。
図11】本願発明における振動発電装置に共振周波数調整治具を取付ける状況を示す斜視図である。
図12】本願発明における振動発電装置の共振周波数調整方法の斜視図である。
図13】本願発明における振動発電装置の共振周波数調整後の斜視図である。
図14】本願発明の振動発電装置の共振周波数調整に使用する別の調整治具の分解斜視図である。
図15】本願発明の振動発電装置の共振周波数調整に使用する更に別の調整治具の分解斜視図である。
図16】本願発明の振動発電装置を振動発生場所のフレームに取付けた状態の適用例を示す斜視図である。
図17】本願発明の振動発電装置を床置きとし、フレームに取付けた状態の適用例を示す斜視図である。
図18】本願発明の他の実施態様の振動発電装置の一部分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に本願発明の実施の形態を図1図5に基づいて説明する。図1図2において、振動発電装置10は中央に振動ユニット11を配し、その振動ユニット11を両側から挟み込むように微少な間隔を保って2つの固定ユニット12が配置されて振動発電部20が構成されている。振動ユニット11は図2中で縦方向に長円形の合成樹脂等で作製された絶縁性のボビン26に対して、銅芯線に絶縁被膜を被せて、何重にも積層され巻回されてコイル27が形成されている。
【0018】
振動ユニット11のボビン26の長手方向の一端は、L字状に曲げられた可撓性の板バネ15の端部に対応して、ボビン26の端部26aにて挟むように下方から被着して、板バネ取付ブロック28が取付けられ、L字状に曲げられた板バネ15の取付部15eを挟むようにして固定ねじ29で固定されている。(図3参照)
【0019】
一方、固定ユニット12は合成樹脂製のホルダー21に対して長方形棒状のネオジム磁石やサマリウムコバルト磁石などの永久磁石22が2本並列に配置され、それぞれ一定間隔をあけてホルダー21内に埋設されている状態で、左右一対設置されている。即ち、固定ユニット12は振動ユニット11を挟んで反対方向に対向して設けられており、2つの固定ユニット12は板金で構成された保持フレーム13の上部を第1の架橋部材13c、下部を第2の架橋部材13dで連結された箱型構造部13aの内部に位置決めされて保持されている。さらに、保持フレーム13の箱型構造部13aから伸びた2か所の腕の端部13bは固定ブロック14の左右両側の側面14e、14eに固定ユニット取付ねじ31で固定されている。
【0020】
図3図4図5を参照して、振動ユニット11の取り付け部の構成について説明する。一端(上端部)を振動ユニット11に取り付けられた薄板で帯状の板バネ15は、他端の平面内で端部近傍には、後述する調整治具と係合する調整治具係合孔15aが設けられ、調整治具係合孔15aの上方に長円形の開口孔15bは設けられている。開口孔15bの両側は腕部15cでバネ部15dと繋がっており板バネ15が構成されている。板バネ15には可撓性を有する、例えばSUS304―CSPなどのバネ用ステンレス薄板を用いることが好ましい。
【0021】
固定ブロック14の上面14aには、ガイドブロック16がブロック固定ねじ19で固定されており、ガイドブロック16の略中央部には、板バネ15の板厚tと幅Bと略同一寸法のスリット溝幅Tでスリット横幅Wの寸法のスリット孔16aが穿設され、スリット孔16aの稜線には微小な丸み形状の面取部16abが設けられている。この面取部16abは板バネ15の振動の基点となる部分であり、振動による板バネ15の曲げ応力を緩和する役目を果たしている。なお、スリット孔16aのスリット案内面16bと固定ブロック14の取付面14cが同一面になるように、ガイドブロック16はブロック固定ねじ19で固定されている。
【0022】
振動ユニット11の取り付け方法は、図3に示すように板バネ15の開口孔15b側の先端(下方端)をガイドブロック16のスリット孔16aに差し込んで挿入する。このとき、スリット孔16aと板バネ15の寸法は略同一寸法でT、t、W、Bの関係は数1の式(a)となっている。
【数1】

上記の関係により、板バネ15はガタ無くスムースに摺動可能な状態でスリット孔16aに差し込まれる。
【0023】
板バネ15は図4図5に示すように、腕部15cは取付面14cに当接するようにして押えブロック17を介して板バネ固定ねじ18により、固定ブロック14の取付雌ねじ部14bに締め付けられる。このとき、板バネ固定ねじ18のねじ部は開口孔15bを貫通しており、押えブロック17の押え面部17aが腕部15cを押し付けて確実に固定され、板バネ15は図2中でバネ部有効長L、幅Bの板バネとして振動できる形となる。
【0024】
なお、板バネ15の位置が上下に移動したとしても開口孔15bの上面の端部はガイドブロック16のスリット孔16aの上端面から上方にはみ出すことはない。なぜなら、板バネ固定ねじ18により開口孔15bが貫通されているためである。すなわち、板バネ15の振動の基点である支点の位置は常にスリット孔16aの押え位置であり、板バネ15の幅Bの全面で支持されることになる。
【0025】
発電原理は、向かい合う固定ユニット12で発生している磁束に対して振動ユニット11が図2中で円弧上の矢印方向に振動し、磁束の変化により振動ユニット11のコイル27に発生する電磁誘導電流で発電する原理であり、振動発電装置10の発電効率は如何に電磁誘導電流を大きくするかであるが、その為には振動ユニット11が振動発生部の振動に対して、共振して大きく振れる必要がある。
【0026】
図16は各方向に振動するフレーム1に対して取付アングル5を介して本願発明の振動発電装置10を3個、それぞれ固定ブロック14の取付穴14g(図1参照)を用いて、取付けねじ6にて取付けた適用例を示している。また、図17は、本願発明の振動発電装置10をフレーム7、フレーム8に取付け、振動する床に対して床置きできるようにした適用例である。このように、振動発電装置10は各方向からの振動を拾えるように任意の形で設置して発電するが、各方向の振動に対して一番共振し易く調整する必要がある。
【0027】
本願発明の振動発電装置10では、この共振周波数を調整するために、バネ部15dのバネ部有効長Lを変化させて共振周波数を調整する方式としている。振動する振動部に対して振動発電装置10を設置し、振動ユニット11の振幅を観察しながらバネ部有効長Lを変化させて振幅が最大となる点すなわち共振点を探し、その位置で板バネ固定ねじ18で押えブロック17を固定ブロック14に締め付けて固定することになる。
【0028】
本願発明の振動発電装置10の最大のポイントは、押えブロック17を締め付けて固定した場合に、振幅が最大となる点すなわち共振点が変化しないことである。この理由を説明する。一般に、ガイドブロック16が無い場合には押えブロック17の上縁部が板バネ15の振動基点となっている。バネ部有効長Lを調整するためには押えブロック17が緩んだ状態でないと板バネ15は移動できない。バネ部有効長Lを調整し共振点の位置で押えブロック17を固定ブロック14に締め付けて固定すると、その支点部の締め付け具合でどうしても共振点が変化してしまう問題が発生する。
【0029】
本願発明では、上記問題を解決するために振動基点の締め付け具合が変化しないようにガイドブロック16を設け、板バネ15をスリット孔16aにガタなくスムースに摺動可能に挿嵌したことであり、板バネ15の固定を緩めても共振点が変化しない理由を説明する。板バネ15のバネ部15dは、その一部がガイドブロック16のスリット孔16a内部にガタなく挿嵌されており、板バネ固定ねじ18を緩めて押えブロック17の締め付けをなくしたとしても、バネ部15dはスリット孔16aでしっかり保持されており、振動基点であるガイドブロック16の面取部16abから上部のバネ部有効長Lは板バネ15を長手方向に移動しない限り変化しない。すなわち、押えブロック17の締め付けは、稼働中に板バネ15を長手方向に移動しないように保持するためだけの役割である。
【0030】
本願発明の振動発電装置10において、バネ部有効長Lを変化させる方法について説明する。前述したように、バネ部15dのバネ部有効長Lを変化させて共振周波数を調整する場合には、実際に振動ユニット11を振動させた状態で調整する必要があり簡単には調整できない。そのため本願発明では調整治具を使用して調整する。図8から図10にて調整治具の説明をする。
【0031】
調整治具40は基本の構成としては、断面円形のシリンダー開口孔42eが貫通する円筒形のシリンダー42と、そのシリンダー開口孔42e内を軸線方向に直動する円筒形のピストン41で構成されている(図9参照)。シリンダー42の先端部分には取付アーム部42bが両側に分岐し、その先端部の各々には取付孔42cが設けられている。なお、2つの取付孔42cは一方は円形孔、他方は横長の小判孔であっても良い。また、シリンダー42の胴部外周には2箇所円盤形のフランジ42a,42aが、指が掛けられる程度の間隔であるフランジ空隙42dを有して設けられている。
【0032】
一方、ピストン41は円筒形の外周部に、シリンダー開口孔42eと遊嵌し、ピストン41を軸長手方向に移動の案内をするガイドリング部41eが2箇所間隔を置いて配設されていて、手前端部に親指が入る程度の開口空隙41bを有するリング部41aが一体で設けられている。さらに先端部は、その空洞部41f内に連結ピン45が配設されキャップ43で抜けないように固着されていて(図10参照)、さらに、シリンダー開口孔42e内にピストン41を挿入してから、先端ブロック44を連結ピン45の先端にねじ込み等の手段で取付けられている。先端ブロック44はその平面部に円柱状の係合突起44aが起立して設けられており、板バネ15の下端部の調整治具係合孔15aに挿入嵌合可能である。そして、連結ピン45と一体となって軸周り方向に360°回動可能となっている。
【0033】
つぎに、図11から図13にて調整治具40による調整方法の説明をする。調整治具40を振動発電装置10に取付ける場合、板バネ15の調整治具係合孔15aに、調整治具40の先端ブロック44の係合突起44aを対向させて挿入する(図1図3、及び、図8図10参照)。つぎに、シリンダー42に対してリング部41aを軸長手方向に引いて取付孔42cと、固定ブロック14の調整治具取付穴14dを合わせる(図11参照)。さらに、その状態で治具固定ピン48の両端のコ字状に曲がった円柱状の係合部48aを、取付孔42cに貫通させて調整治具取付穴14dに差し込み、調整治具40を調整治具取付面14fに取付ける。この状態で、調整治具40と振動発電装置10は位置が決まる。なお、調整治具取付穴14dを雌ねじとし、治具固定ピン48の代わりにボルト等で調整治具取付面14fに締め付けても構わない。また、調整治具取付穴14dの代わりに、円柱状のピンを調整治具取付面14fから突設させ、取付孔42cを引っ掛けるように係合させても良い。
【0034】
バネ部有効長Lを変化させて共振周波数に調整する方法は、振動している振動ユニット11の板バネ15が図12中で上下に移動できるように板バネ固定ねじ18を緩めて押えブロック17の押し付けを緩める。図12のように調整治具40を取付けたときにバネ部有効長L1であった状態から調整する場合は、振動ユニット11の振幅を見ながらリング部41aを矢印方向に引きピストン41を移動させる。図13のようにバネ部有効長L2のときに振動ユニット11の振幅が最大となり共振周波数に合わせ込んだ後、板バネ固定ねじ18で締め付け押えブロック17を板バネ15に押し付けて固定する。その後、治具固定ピン48を抜き去り調整治具40を取り外す。
【0035】
振動ユニット11は調整治具40を取り外した後も、振動基点である面取部16abを基点にして共振しながら振動を続ける。押えブロック17は、あくまで板バネ15のバネ部有効長L2が上下に変化しないように押し付けるだけであり、押し付けることにより共振点が変化してしまうことはなく、振動基点である面取部16abは変わらない。このことは、押えブロック17の締め付けにかかわらず調整が容易に出来る利点がある。
【0036】
調整後は調整治具40を取り外すことで、調整機構を振動発電装置内に有する特許文献1等の他の方式の振動発電装置に比して、振動中の振動ユニット11は簡単な構成のユニットとなり、振動部の振動による部品の破損や摩耗、共振点の変化等の問題も発生しにくくなる利点もある。さらに、振動発電装置は非常に簡単な構成となり、装置が大型化し製造コストも上がるという問題も発生しなくなる利点もある。特に、振動発電装置10を複数配置して使用する場合には、製造コストが下がる点は非常に大きな利点である。
【0037】
図6は本願発明の実施の形態の第1の変形例である。図2から図5で説明した実施の形態では、板バネ15を支えるガイドブロック16は、その一部に板バネ15の板厚tと幅Bに対応したスリット溝幅Tとスリット横幅Wのスリット孔16aを有する構成として説明したが、精度の高いスリット孔16aを加工することは加工時間と加工コストが掛かる問題もあった。そこで、本願発明の第1の変形例では、ガイドブロック16をスリット孔16a部分で分割した変形例である。
【0038】
固定ブロック14の上面14aにはガイドブロックベース33が2本のブロック固定ねじ19で固定ブロック14に固定されている。ガイドブロックベース33の一面にはそれぞれ板バネ15の板厚t、幅Bに対応して段差高さY、段差幅Xの凹部33bが設けられており、Y、t、X、Bの関係は前述の数1の式(b)となっている。また、凹部33bに対向してガイドブロック押え34が配設されガイドブロックねじ35にて、取付面33aに取付けられ、組立て後に出来るスリット部は溝幅Y、横幅Xの寸法のスリット孔となる。さらに、凹部33bの上面稜線部には微小な丸み形状の面取部33bbが設けられている。また、面取部33bbに対応してガイドブロック押え34の上面稜線部にも微小な丸み形状の面取部34abが設けられている。
【0039】
板バネ15は、この凹部33bとガイドブロック押え34で形成された段差高さY、段差幅Xのスリット部に上方から挿入され、押えブロック17を介して板バネ固定ねじ18で固定ブロック14に固定されている。なお、ガイドブロックベース33は凹部33bの面が固定ブロック14の取付面14cと同一面に調整されて固定されている。
【0040】
このように、本願発明の第1の変形例ではガイドブロックベース33とガイドブロック押え34に分割することで、凹部33の段差加工のみを精度良く加工するだけで済み、非常に簡単に板バネ15を案内するガイドブロックが実現できる効果がある。
【0041】
図7は本願発明の実施の形態の第2の変形例である。本変形例では、上記図6の固定ブロック14とガイドブロックベース33を一体化し、固定ブロック36としたものである。更に、第1の変形例の凹部33bの段差部は両側に2枚のスペーサー37を設け、固定ブロック36に対してスペーサー37を挟んでブロック押え34を反対側からガイドブロックねじ35で固定した構造となっている。
【0042】
固定ブロック36の上方の一部には凸状に突出したガイド部36fが設けられ、その取付面36gの上端の稜線には微小な丸み形状の面取部36gbが形成されている。この取付面36gは板バネ15の取付け面である取付面36cと同一面の広い一体の面である。さらに、スペーサー37はスペーサー板厚Zの薄板でありZ、tの関係は前述の数1の式(c)となっている。組み立てはスペーサー37を両側に間隔Dを空けて合せ面34aで挟みブロック押え34を反対側からガイドブロックねじ35で締め付けて組立てるが、組立て後に出来るスリット部は溝幅Z,横幅Dの寸法のスリット孔となる。なお、D、Bの関係は前述の数1の式(d)となっている。
【0043】
このように、本願発明の第2の変形例では第1の変形例に対して凹部33の段差加工も不要となり、板バネ15の板厚tに対して、スペーサー37のスペーサー板厚Zだけを管理すれば良い上、取付面36gは取付面36cと同一面であり、加工も非常に簡単になる利点がある。また、ガイドブロックベース33も不要で、構成も非常に簡単になる。特に、共振周波数を調整するためにバネ部有効長Lを変えるだけでは不十分な場合には、板バネ15の板厚tを変更する必要があり、この場合にはスペーサー板厚Zの異なるスペーサー37を用意するだけで柔軟に対応できる効果がある。なお、ガイド部36fは固定ブロック36と一体として説明したが、ガイドブロックベース33と同様に別体として分割しても構わない。
【0044】
図8から図10で示す調整治具40はピストン41とシリンダー42が直動で移動する構造となっているが、共振周波数を調整する場合に微調整で移動できると良い場合がある。図14は、本願発明の振動発電装置10において共振振動数を調整するための他の調整治具50を示している。円形のシリンダー開口孔52eが貫通する円筒形のシリンダー52と、そのシリンダー開口孔52e内を軸線方向に移動する円筒形のピストン51で構成されている。
【0045】
ピストン51の外周の一部には雄ねじ部51aが設けられ、内面にナット部53aを有する操作ノブ53が係合し、操作ノブ53を回転することで、ねじの推力でシリンダー51はガイドリング部51eに案内されて軸線方向に移動する。この構造では操作ノブ53が1回転するとシリンダー51はねじのピッチ分移動するだけであり、微調整が可能である。なお、操作ノブ53はスクリューケース54,スクリューキャップ55で保持されて一部が露出した構造となっている。
【0046】
図14の調整治具50は、ねじのピッチ分移動するだけであり微調整が可能である点は利点であるが、バネ部有効長Lを大きく移動させる場合には不向きである。そこで、調整治具40と調整治具50の利点を取り込んだ調整治具60を図15に示し説明する。本調整治具60は円形のシリンダー開口孔62eが貫通する円筒形のシリンダー胴部62aを有するギヤケース62と、そのシリンダー開口孔62e内を軸線方向に移動する円筒形のラックピストン61で構成されている。
【0047】
ラックピストン61の一端にはラック部61fが形成され、他端は円筒状のピストン部61aとなっており、ピストン部61aの外周にはガイドリング部61eが設けられ、円形のシリンダー開口孔62eに案内され軸線方向に移動可能となっている。また、ラック部61fはギヤケース62内に埋設されたギヤAssy.70のラック駆動ギヤ71と係合しており、2つのアイドルギヤ72A、72Bと連結され、最終段としてノブギヤ73に減速されて連結している。
【0048】
なお、ギヤAssy.70の各ギヤはピン74、ピン75に回動自由に軸支されその端部はギヤケース62の軸受部62g、62hと横蓋63の軸受部(図示せず)に軸支されて保持されている。操作ノブ部73bの一部は上蓋64の開口孔64aから露出しており、操作ノブ部73bを回転させることが出来るようになっている。また、シリンダー胴部62aの端部にはシリンダーフランジ部62dが形成され、取付ホルダー65の取付フランジ部65dと固定されている。
【0049】
調整治具60でピストン61を軸線方向に移動させる場合は、操作ノブ部73bを回転させる。操作ノブ部73bの回転量に対して任意に設定されたギヤAssy.70の減速比によりラック部61fが軸線方向に移動しラックピストン61が駆動される。ギヤAssy.70の減速比は任意に設定できるため、調整治具40の移動量よりも少なく、調整治具50の移動量よりも多く設定が出来、非常に使い易い調整治具が実現できる。
【0050】
他の実施態様として図18に示すように振動発電装置80の構成は、振動ユニット81をホルダー91に固着された永久磁石92とし、固定ユニット82をボビン93に巻回されたコイル94とした組み合わせに入れ替えても良い。図18はホルダー91に保持された永久磁石92を振動ユニット81とし、ボビン93に巻回されたコイル94を、永久磁石92を挟むように対向させ固定ユニット82とした例である。このような構成では、コイル94の端部の配線部分に振動が加わらないため、断線等の心配がなく信頼性が一層向上する利点がある。
【0051】
以上、本願発明の実施の形態や使用時の調整治具に関して詳細に説明してきたが、実施形態はこれに限定されるものでなく、本願発明の要旨を逸脱することなく、その他種々の構成をとり得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0052】
1 :フレーム
5 :取付アングル
6 :取付ねじ
7、8 :フレーム
10 、80 :振動発電装置
11、81 :振動ユニット
12、82 :固定ユニット
13 :保持フレーム
13a :箱型構造部
13b :端部
13c :第1の架橋部材
13d :第2の架橋部材
14 :固定ブロック
14a :上面
14b :取付雌ねじ部
14c :取付面
14d :調整治具取付穴
14e :側面
14f :調整治具取付面
14g :取付穴
15 :板バネ
15a :調整治具係合孔
15b :開口孔
15c :腕部
15d :バネ部
15e :取付部
16 :ガイドブロック
16a :スリット孔
16ab :面取部
16b :スリット案内面
17 :押えブロック
17a :押え面部
18 :板バネ固定ねじ
19 :ブロック固定ねじ
20 :振動発電部
21、91 :ホルダー
22、92 :永久磁石
26、93 :ボビン
26a :端部
27、94 :コイル
28 :板バネ取付ブロック
29 :固定ねじ
31 :固定ユニット取付ねじ
33 :ガイドブロックベース
33a :取付面
33b :凹部
33bb :面取部
34 :ガイドブロック押え
34a :合せ面
34ab :面取部
35 :ガイドブロックねじ
36 :固定ブロック
36c :取付面
36f :ガイド部
36g :取付面
36gb :面取部
37 :スペーサー
40、50、60 :調整治具
41 :ピストン
41a :リング部
41b :開口空隙
41e :ガイドリング部
41f :空洞部
42 :シリンダー
42a :フランジ
42b :取付アーム部
42c :取付孔
42d :フランジ空隙
42e :シリンダー開口孔
43 :キャップ
44 :先端ブロック
44a :係合突起
45 :連結ピン
48 :治具固定ピン
51 :スクリューピストン
51a :雄ねじ部
51e :ガイドリング部
52 :シリンダー
52b :取付アーム部
52c :取付孔
52e :シリンダー開口孔
53 :操作ノブ
53a :ナット部
54 :スクリューケース
55 :スクリューキャップ
56 :キャップ
61 :ラックピストン
61a :ピストン部
61e :ガイドリング部
61f :ラック部
62 :ギヤケース
62a :シリンダー胴部
62d :シリンダーフランジ部
62e :シリンダー開口孔
62g :軸受部
62h :軸受部
63 :横蓋
64 :上蓋
64a :開口孔
65 :取付ホルダー
65b :取付アーム部
65c :取付孔
65d :取付フランジ部
70 :ギヤAssy.
71 :ラック駆動ギヤ
72A、72B :アイドルギヤ
72a :小ギヤ
72b :大ギヤ
73 :ノブギヤ
73a :ギヤ部
73b :操作ノブ部
74、75 :ピン
t :板厚
B :幅
D :間隔
L、L1、L2 :バネ部有効長
T :スリット溝幅
W :スリット横幅
X :段差幅
Y :段差高さ
Z :スペーサー板厚

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18