(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-19
(45)【発行日】2023-12-27
(54)【発明の名称】自律走行システム
(51)【国際特許分類】
G05D 1/02 20200101AFI20231220BHJP
【FI】
G05D1/02 H
G05D1/02 W
(21)【出願番号】P 2020026233
(22)【出願日】2020-02-19
【審査請求日】2022-10-21
(73)【特許権者】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(73)【特許権者】
【識別番号】509202558
【氏名又は名称】JMUディフェンスシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】三村 洋一
(72)【発明者】
【氏名】千葉 拓史
(72)【発明者】
【氏名】大谷 愛斗
(72)【発明者】
【氏名】山崎 峻一
(72)【発明者】
【氏名】西浦 将史
【審査官】西井 香織
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-168588(JP,A)
【文献】特開2003-169768(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/00 - 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長辺と短辺とを有する略矩形の形状の所定の作業領域全体に対して所定の作業機器を用いて所定の作業を行う建設機械を自律走行させる自律走行システムであって、
前記建設機械に取り付けられ、前記建設機械と周囲の障害物との距離を計測する距離センサと、
前記距離センサの計測結果に基づいて、前記建設機械の移動方向を制御する走行制御部と、を備え、
前記走行制御部は、
略矩形の前記作業領域の長辺に平行に前記作業機器が移動するよう前記建設機械の移動方向を制御し、前記作業機器の幅に基づいて前記建設機械の前記短辺方向の移動距離を制御し、前記作業機器が前記作業領域の全領域を通過するよう前記建設機械の移動方向を制御する、
ことを特徴とする自律走行システム。
【請求項2】
前記建設機械の周辺における方向を計測する方向センサを更に備え、
前記走行制御部は、前記方向センサの計測結果に基づいて前記建設機械の移動方向を制御する、
ことを特徴とする請求項
1記載の自律走行システム。
【請求項3】
前記建設機械の加速度を計測する加速度センサまたは前記建設機械の角加速度を計測する角加速度センサの少なくとも一方を更に備え、
前記走行制御部は、前記加速度センサまたは前記角加速度センサの少なくとも一方の計測結果に基づいて前記建設機械の移動方向を制御する、
ことを特徴とする請求項1
または2記載の自律走行システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械を自律走行させる自律走行システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建設現場での作業を効率化するため、建設機械の自律走行技術が開発されている。例えば、下記特許文献1は、移動体の位置を推定するための技術であり、姿勢変化が可能なアームに設けられ、対象物との距離を計測する測域センサがスキャンして得た距離情報が示す対象物の位置に対応する点群情報に基づいてスキャンマッチングを行い、測域センサの移動量を推定するスキャンマッチング処理部と、アームを有する移動体に備えられた当該移動体の移動に関する情報を計測するセンサの計測値に基づいて移動体の移動量を推定するオドメトリ処理部と、アームの姿勢変化の有無に基づく指示情報に基づいて、オドメトリ処理部が推定した移動量とスキャンマッチング処理部が推定した移動量とのうち一方を選択し、選択した移動量に基づいて移動体の位置情報を推定する位置情報推定部と、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来技術では、建設機械の位置を常時確認しながら作業を行っていく。一方で、特に限られたエリア内での作業に置いては、建設機械の位置を常に把握する必要がない場合もあり、より効率的に作業を行う上で改善の余地がある。
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであり、その目的は、建設現場における作業効率をより向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述の目的を達成するため、本発明にかかる自律走行システムは、所定の作業領域全体に対して所定の作業機器を用いて所定の作業を行う建設機械を自律走行させる自律走行システムであって、前記建設機械に取り付けられ、前記建設機械と周囲の障害物との距離を計測する距離センサと、前記距離センサの計測結果に基づいて、前記建設機械の移動方向を制御する走行制御部と、を備え、前記走行制御部は、前記作業機器が前記作業領域の全領域を通過するよう前記建設機械の移動方向を制御する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、作業領域全体に対して作業機器を用いて所定の作業を行う建設機械を自律走行させるに当たり、建設機械と周囲の障害物との距離を計測する距離センサの計測結果に基づいて、作業機器が作業領域の全領域を通過するよう建設機械の移動方向を制御する。これにより、GPS等の機材を用いることなく作業を自動化することができ、建設現場における作業効率を向上させる上で有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】自律走行システムが適用される建設機械の構成を示す図である。
【
図2】自律走行システムの構成を示すブロック図である。
【
図3】建設機械の清掃作業時の動きの一例を示す説明図である。
【
図4】建設機械の清掃作業時の動きの一例を示す説明図である。
【
図5】建設機械の清掃作業時の動きの一例を示す説明図である。
【
図6】建設機械の清掃作業時の動きの一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に添付図面を参照して、本発明にかかる自律走行システムの好適な実施の形態を詳細に説明する。
図1は、自律走行システムが適用される建設機械の構成を示す図である。
本実施の形態では、建設機械20は、ダム等の建設現場でコンクリートの打設面の清掃作業を行う清掃装置であるものとする。より詳細には、本実施の形態では、建設機械20は、
図3等に示すような矩形の作業領域P内をスイーパ24により清掃する。作業領域Pは、土砂等で形成された型枠F(F1~F4)内に流し込まれたコンクリートの表面である。型枠Fは、作業領域Pに対して高さ50cm程度に形成されている。型枠Fの一部(
図3では紙面上方の長辺F1の中央部)は、作業領域Pへの進入路Aを設けるため除去されている。また、矩形である作業領域Pの長辺をL、短辺をSと表記する。
すなわち、本実施の形態では、建設機械20は、所定の作業領域P全体に対して所定の作業機器(スイーパ24)を用いて所定の作業(清掃作業)を行う。また、作業領域Pは略矩形の形状を有する。
【0009】
図1に示すように、建設機械20は、筐体22、筐体22の前面に位置するスイーパ24、筐体の下面に位置するクローラ26を備える。本実施の形態では、建設機械20に作業員は搭乗せず、自動制御および遠隔操作により作業を行う。
【0010】
筐体22は、有人走行時に作業者が乗車する運転席や建設機械20の操作に用いる操作機構、エンジン202(
図2参照)等を収容する。
スイーパ24は、作業領域内(本実施の形態ではコンクリートの打設面上)に堆積した土砂等の除去対象物を集積する。スイーパ24は、筐体22の左右に取り付けられた2本のアーム242の一端に取り付けられている。アーム242の他端は、筐体22の後部に支軸244を介して取り付けられており、アーム242は図示しないアクチュエータの作動により、支軸244を中心に揺動可能である。よって、スイーパ24は、
図1のように地面に沿って位置する第1の姿勢と、地面より高い箇所に位置する第2の姿勢とを取ることが可能である。
クローラ26は、駆動輪、遊動輪およびこれらの車輪を囲むように配置されたベルト(履帯)を備え、筐体22を所定の方向に移動させる。
【0011】
筐体22の上方には、フレーム28が取り付けられており、フレーム28上にはIMU(Inertial Measurement Unit)30が載置されている。IMU30は、加速度センサ、角
加速度センサ等がパッケージ化されたセンサユニットである。IMU30は後述するコンピュータ40(
図2参照)と接続されており、各センサの計測結果はコンピュータ40に出力される。
IMU30を用いることによって、作業前後における建設機械20の体勢の変化量や進行方向等を把握することができる。例えば、IMU30は、建設機械20の周辺における方向を計測する方向センサとして機能する。建設機械20の方向とは、例えば所定の基準位置における建設機械20の向きに対する変位量として計測できる。
【0012】
また、スイーパ24の前端部および筐体22の後端部下方には、測域センサ32(32A,32B)が取り付けられている。測域センサ32は、光をスキャニングしながら測定対象物までの距離を計測する2次元操作型の光距離センサであり、2次元レーザスキャナ、2D-LiDARセンサ等とも呼ばれる。より詳細には、測域センサ32は、主に建設機械20の前後方向に位置する測定対象物にレーザ光線を照射して反射光が返ってくるまでの時間を測定し、測定対象物までの距離(測定対象物の位置)と測定対象物の形状を計算する。
すなわち、測域センサ32は、建設機械20に取り付けられ、建設機械20と周囲の物体との距離を計測する距離センサとして機能し、また建設機械20が前進または後退する際に進行方向に位置する型枠Fの部分と衝突することを防止する衝突防止センサとして機能する。
【0013】
また、筐体22の後端部上方には、さらに測域センサ33が取り付けられている。測域センサ33は、主に建設機械20の左右方向(幅方向)に位置する測定対象物にレーザ光線を照射して反射光が返ってくるまでの時間を測定し、測定対象物までの距離(測定対象物の位置)と測定対象物の形状を計算する。
すなわち、測域センサ33は、建設機械20の進行方向と直交する幅方向の型枠Fの形状や型枠Fまでの距離を計測する距離センサとして機能する。
【0014】
すなわち、本実施の形態では、建設機械20に計3台の測域センサ32A、32B,33を搭載し、前方の測域センサ32Aでは建設機械20の前方における他の物体(型枠Fや他の障害物)との距離を計測し、後方下部の測域センサ32Bでは建設機械20の後方における他の物体との距離を計測し、後方上部の測域センサ33では建設機械20の幅方向における他の物体との距離を計測する。
なお、スイーパ24を上昇させた場合、測域センサ32Aでは前方の測定ができなくなるため、筐体22の前方にも測域センサを取り付けるようにしてもよい。
測域センサ32,33も後述するコンピュータ40(
図2参照)と接続されており、各測域センサ32,33の計測結果はコンピュータ40に出力される。
【0015】
図2は、自律走行システムの構成を示すブロック図である。
自律走行システム10は、上述した建設機械20(走行機構210)、IMU30、測域センサ32の他、コンピュータ40を含んで構成される。
建設機械20の走行機構210は、エンジン202、油圧ポンプ204、コントロールバルブ206、左右の油圧モータ208(208A,208B)を含んでいる。エンジン202は、油圧ポンプ204、コントロールバルブ206、左右の油圧モータ208(208A,208B)を有する。エンジン202は、燃料の燃焼エネルギーにより回転力を発生させ、油圧ポンプ204を駆動させる。油圧ポンプ204により圧力がかけられた油(圧油)は、コントロールバルブ206を介して油圧モータ208を含む建設機械20の各部(他には、例えばスイーパ24を上げ下げするアクチュエータなど)に送られる。油圧モータ208(208A,208B)は、クローラ26の左右の駆動輪に対応してそれぞれ設けられている。コントロールバルブ206によりそれぞれの油圧モータ208A,208Bに送出する油圧を調整することにより、クローラ26の回転速度、すなわち建設機械20の走行速度や進行方向を制御することができる。
【0016】
コンピュータ40は、CPU、制御プログラムなどを格納・記憶するROM、制御プログラムの作動領域としてのRAM、各種データを書き換え可能に保持するEEPROM、周辺回路等とのインターフェースをとるインターフェース部などを含んで構成される。コンピュータ40は、例えば建設機械20の筐体22内に収容されていてもよいし、建設機械20の外部に設置され無線通信等により他の構成と接続されていてもよい。
【0017】
コンピュータ40は、上記CPUが上記制御プログラムを実行することにより、作業領域検出部400、走行経路算出部402、走行制御部404として機能する。
作業領域検出部400は、建設機械20で行う作業の今回の作業領域を検出する。作業領域検出部400は、例えば作業領域P上の一点で測域センサ32,33を用い、建設機械20から型枠Fまでの距離を周囲360度に渡り計測し、作業領域Pの形状を検出する。ここでは、例えば測域センサ33により作業領域Pの短辺に沿った幅を検出する。または、例えば建設機械20で作業領域P上を所定区間(例えば
図3の長辺Lに沿って)走行しながら測域センサ32で型枠Fまでの距離を計測してもよい。
【0018】
走行経路算出部402は、作業領域P内での建設機械20の走行経路を算出する。本実施の形態では、作業領域P内の清掃作業を目的としているため、スイーパ24が作業領域P全体をくまなく通過するよう建設機械20の走行経路を設定することが求められる。よって、走行経路算出部402は、例えば型枠の長辺F2に沿って走行し、長辺の端部まで到達した際には、スイーパ24の横幅分だけ型枠F2から短辺方向に移動した上で再度長辺に沿って走行するよう走行経路を算出する。
【0019】
走行制御部404は、距離センサである測域センサ32,33の計測結果に基づいて、建設機械20の移動方向を制御する。この時、走行制御部404は、エンコーダ等により移動距離を計測して自己位置の推定を行ってもよい。
走行制御部404は、走行経路算出部402が算出した経路に沿って建設機械20を移動させる。すなわち、走行制御部404は、スイーパ24が作業領域P全体を通過するよう建設機械20の移動方向を制御する。走行制御部404は、具体的には走行機構210のコントロールバルブ206に制御信号を送信し、左右それぞれの油圧モータ208A,208Bに送出する油圧を調整することにより、建設機械20の移動方向や移動速度を制御する。
【0020】
走行制御部404は、測域センサ32により計測される型枠Fからの距離に基づいて、建設機械20の走行位置(作業領域P内における位置)を検出する。また、走行制御部404は、測域センサ32によって建設機械20の進行方向の前後に障害物(作業者や物体など)がないかを確認しながら建設機械20を走行させる。なお、進行方向に障害物が検知された場合、走行制御部404は、建設機械20を停止させたり、進行方向を変更したりする。また、遠隔地にある作業監視者にアラートを送信するようにしてもよい。
【0021】
また、走行制御部404は、方位センサ(IMU30)の計測結果に基づいて建設機械20の移動方向を制御する。これは、測域センサ32の計測値のみでは、誤差が生じる可能性があるためである。走行制御部404は、移動開始時に建設機械20が向いている方向(例えば真北に対して何度など)を把握し、この方角を維持するように走行することにより、より正確に作業領域P内を移動することができる。
【0022】
同様に、走行制御部404は、IMU30に含まれる加速度センサまたは角加速度センサの少なくとも一方の計測結果に基づいて建設機械20の移動方向を制御する。すなわち、加速度センサや角加速度センサの計測値を二重積分すれば、建設機械20の移動距離または回転角度を算出することができる。走行制御部404でこれらの値を補助的に用いることにより、より正確に作業領域P内を移動することができる。
【0023】
図3から
図6は、建設機械の清掃作業時の動きの一例を示す説明図である。
図3に示すように、建設機械20は、進入路Aを通り作業領域Pに進入する(S1)。作業領域Pへの誘導は、建設機械20の自動走行で行ってもよいし、遠隔操作で行ってもよい。
作業領域Pに進入した建設機械20は、測域センサ32,33を用いて作業領域Pの形状(型枠Fまでの距離)を検出する(S2)。
図3の例では、作業領域Pは略矩形であることを検知し、いずれかの角部から作業を開始するよう走行経路を算出する。
図3の例では、紙面右下の角部N0から紙面左方向に向かって走行するよう経路を設定する。
また、建設機械20は、IMU30を用いて建設機械20の周辺における方向を計測する(S3)。
【0024】
つぎに、
図4に示すように、建設機械20は、作業開始地点である角部N0に後退移動する(S4)。この時、走行制御部404は、後部の測域センサ32B,33で計測した建設機械20と型枠F2との距離(側方距離)、および建設機械20と型枠F3との距離(後方距離)が、それぞれ最低離間距離まで近づくように建設機械20を移動させる。最低離間距離は、例えば建設機械20のいかなる部位も型枠Fと接触しない程度の距離とする。
建設機械20が作業開始地点である角部N0まで移動すると、走行制御部404は、測域センサ32,33で計測した型枠F2との距離を上記最低離間距離に保ったまま建設機械20を前進させる(S5)。すなわち、走行制御部404は、作業領域Pの長辺Lに平行に作業機器(スイーパ24)が移動するよう建設機械20の移動方向を制御する。この時、スイーパ24は、
図1のように地面に沿って位置する第1の姿勢を取る。
また、この時走行制御部404は、IMU30の計測結果に基づいて、移動開始時に計測した方位を保つようにする。また、建設機械20がX,Y,Z方向に対してどれだけ傾斜しているのかについてもIMU30で計測し、建設機械20の進行方向を把握することができる。
【0025】
走行制御部404は、前部の測域センサ32Aで計測した建設機械20と型枠F4との距離(前方距離)が最低離間距離まで近づくと(S6)、
図5に示すように、型枠F3方向(紙面右側)に向かって建設機械20を後退させる。また、型枠F3方向に後退する途中で、建設機械20と型枠F2との距離が建設機械20の幅(より詳細にはスイーパ24の幅)だけ増加するように、建設機械20を短辺に沿った方向(紙面上方向)に移動させる(S7)。
この結果、建設機械20が型枠F3近傍まで到達した際には(S8)、型枠F3との距離(後方距離)は最低離間距離となり、型枠F2との距離はM(≒スイーパ24の幅)となる。すなわち、走行制御部404は、作業機器の幅に基づいて建設機械20の短辺方向の移動距離を制御する。これにより、既に作業した領域からずれた位置に建設機械20を配置することができる。
【0026】
その後、
図6に示すように、走行制御部404は、測域センサ32,33で計測した型枠F2との距離を上記距離Mに保ったまま建設機械20を前進させる(S9)。そして前部の測域センサ32Aで計測した建設機械20と型枠F4との距離(前方距離)が最低離間距離まで近づくと(S10)、型枠F3方向(紙面右側)に向かって建設機械20を後退させる。以下、
図5と同様に、型枠F3方向に後退する途中で、建設機械20と型枠F2との距離が建設機械20の幅(より詳細にはスイーパ24の幅)だけ増加するように、建設機械20を短辺に沿った方向(紙面上方向)に移動させる。この結果、建設機械20が型枠F3近傍まで到達した際には、型枠F2との距離はおよそ2M(≒スイーパ24の幅の2倍)となる。
このように、走行制御部404は、建設機械20の前進と後退とをくり返して、スイーパ24が作業領域P全体を通過するよう建設機械20を移動させる。
その後、建設機械20が作業領域P全体を移動して作業が終了した場合、または作業途中に除去対象物でスイーパ24が満杯になった場合は、例えば遠隔操作等により建設機械20を作業領域Pの外にある除去対象物保存エリアに移動させ、スイーパ24から除去対象物を排出させる。
【0027】
なお、
図3~
図6では、建設機械20が紙面右側から左側に移動する様子のみ図示したが、この場合、型枠F3付近にスイーパ24が通過していない箇所が生じる(例えば
図4のS4において建設機械20の筐体22の直下にあたる領域)。よって、建設機械20を紙面右側から左側に移動させて1回目の清掃作業を行った後、紙面左側から右側に移動させて2回目の清掃作業を行うようにしてもよい。これにより、1回目の清掃作業で清掃できなかった領域を漏れなく清掃することができる。
また、
図3~
図6では、型枠F4近傍(紙面左側)に到達した建設機械20を後退させて型枠F3近傍(紙面右側)に移動させるものとしたが、これに限らず、例えば型枠F4近傍で建設機械20を180度回転させて前進させることにより型枠F3近傍に移動させるようにしてもよい。
【0028】
以上説明したように、実施の形態にかかる自律走行システム10は、作業領域P全体に対してスイーパ24を用いて清掃作業を行う建設機械20を自律走行させるに当たり、建設機械20と周囲の障害物との距離を計測する距離センサの計測結果に基づいて、スイーパ24が作業領域Pの全領域を通過するよう建設機械20の移動方向を制御する。これにより、GPS等の機材を用いることなく作業を自動化することができ、建設現場における作業効率を向上させる上で有利となる。
また、加速度センサや角加速度センサ、方位センサをするIMU30を更に備えることにより、建設機械20の移動をより高精度に制御することができ、建設現場における作業効率をより向上させる上で有利となる。
【0029】
なお、本発明にかかる自律走行システムが適用される建設機械は、清掃装置に限らず、従来公知の様々な用途の建設機械に適用可能であるが、特に予め定められた作業領域全体に対して所定の作業を行う建設機械(例えばロードローラなど)に好適である。
【符号の説明】
【0030】
10 自律走行システム
20 建設機械
22 筐体
24 スイーパ
26 クローラ
28 フレーム
30 IMU
32(32A,32B),33 測域センサ
40 コンピュータ
400 作業領域検出部
400 作業領域検出部
402 走行経路算出部
404 走行制御部
F(F1~F4) 型枠
P 作業領域