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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-19
(45)【発行日】2023-12-27
(54)【発明の名称】臓器灌流装置および制御方法
(51)【国際特許分類】
   A01N 1/02 20060101AFI20231220BHJP
【FI】
A01N1/02
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020173279
(22)【出願日】2020-10-14
(65)【公開番号】P2022064571
(43)【公開日】2022-04-26
【審査請求日】2023-02-01
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度、国立研究開発法人日本医療研究開発機構、医療分野研究成果展開事業 先端計測分析技術・機器開発プログラム「移植用臓器の体外治療を可能にする潅流保存装置の開発と、メタボロミクスを用いた臓器潜在機能の客観的評価基軸の構築」委託研究開発、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】秦 浩一郎
(72)【発明者】
【氏名】宮内 英孝
(72)【発明者】
【氏名】趙 向東
(72)【発明者】
【氏名】國光 健
(72)【発明者】
【氏名】樫原 稔
【審査官】藤代 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-020863(JP,A)
【文献】特開2019-043939(JP,A)
【文献】特開2020-002062(JP,A)
【文献】特開2013-075888(JP,A)
【文献】特表2001-516768(JP,A)
【文献】実開平03-091352(JP,U)
【文献】特開平07-319555(JP,A)
【文献】特表2010-520207(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107467011(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流入血管を有する臓器に灌流液を灌流させる臓器灌流装置であって、
前記臓器を収容する容器と、
前記灌流液を貯液するリザーバーと、
前記リザーバーと前記臓器の流入血管に接続される流路と、
前記流路に設けられた送液部と、
前記リザーバー内の前記灌流液の貯液状況を直接的または間接的に特定するための検出部と、
前記送液部を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、前記検出部の計測値に基づいて前記送液部を駆動することにより、前記リザーバー内の前記灌流液の量を制御する、臓器灌流装置。
【請求項2】
前記流路は、前記リザーバー側から前記臓器側へ前記灌流液を送るための第1流路と、前記臓器側から前記リザーバー側へ前記灌流液を送るための第2流路とを含み、
前記送液部は、前記第1流路に設けられた第1送液部と、前記第2流路に設けられた第2送液部とを含み、
前記制御部は、前記検出部の計測値に基づいて前記第2送液部を駆動することにより、前記リザーバー内の前記灌流液の量を制御する、請求項1に記載の臓器灌流装置。
【請求項3】
前記検出部は、前記第1流路において前記灌流液の流量を計測する第1流量計と、前記第2流路において前記灌流液の流量を計測する第2流量計とを含み、
前記制御部は、前記第1流量計が計測する前記灌流液の流量と前記第2流量計が計測する前記灌流液の流量とが一致するように、前記第2送液部を駆動することにより、前記リザーバー内の前記灌流液の量を制御する、請求項2に記載の臓器灌流装置。
【請求項4】
前記第1流路は、前記灌流液を前記臓器の第1流入血管に送るための第1流入血管用第1流路と、前記灌流液を前記臓器の第2流入血管に送るための第2流入血管用第1流路とを含み、
前記第1送液部は、前記第1流入血管用第1流路に用いる第1流入血管用第1送液部と、前記第2流入血管用第1流路に用いる第2流入血管用第1送液部とを含み、
前記第1流量計は、前記第1流入血管用第1流路に用いる第1流入血管用第1流量計と、前記第2流入血管用第1流路に用いる第2流入血管用第1流量計とを含み、
前記制御部は、前記第1流入血管用第1流量計が計測する前記灌流液の流量と前記第2流入血管用第1流量計が計測する前記灌流液の流量との和と、前記第2流量計が計測する前記灌流液の流量とが一致するように、前記第2送液部を駆動することにより、前記リザーバー内の前記灌流液の量を制御する、請求項3に記載の臓器灌流装置。
【請求項5】
前記検出部は、前記第1流入血管用第1流路において前記灌流液の圧力を計測する第1圧力計と、前記第2流入血管用第1流路において前記灌流液の圧力を計測する第2圧力計とを含み、
前記制御部は、
前記第1圧力計が計測する前記灌流液の圧力が一定になるように、前記第1流入血管用第1送液部を駆動し、
前記第2圧力計が計測する前記灌流液の圧力が規則的に変化するように、前記第2流入血管用第1送液部を駆動する、請求項4に記載の臓器灌流装置。
【請求項6】
前記検出部は、前記リザーバー内の前記灌流液の液面高さを計測する液面センサを含み、
前記制御部は、前記液面センサが計測する前記液面高さが所定の範囲となるように、前記第2送液部を駆動することで、前記液面高さを制御する、請求項2に記載の臓器灌流装置。
【請求項7】
前記所定の範囲は、第1液面高さ以上であって第2液面高さ以下の範囲であり、
前記制御部は、前記液面センサが計測した前記液面高さが前記第1液面高さを下回ったときは、前記第2流路における前記灌流液の流量が増加するように前記第2送液部を駆動し、前記液面センサが計測した前記液面高さが前記第2液面高さを上回ったときは、前記第2流路における前記灌流液の流量が減少するように前記第2送液部を駆動することで、前記液面高さを制御する、請求項6に記載の臓器灌流装置。
【請求項8】
前記灌流液中の酸素濃度を上昇させる酸素供給部をさらに備える、請求項1~7のいずれか1項に記載の臓器灌流装置。
【請求項9】
前記リザーバーの設置高さは、前記容器の設置位置よりも高い、請求項1~8のいずれか1項に記載の臓器灌流装置。
【請求項10】
流入血管を有する臓器に灌流液を灌流させる臓器灌流装置を制御する制御方法であって、
前記臓器灌流装置は、
前記臓器を収容する容器と、
前記灌流液を貯液するリザーバーと、
前記リザーバーと前記臓器の流入血管に接続される流路と、
前記流路に設けられた送液部とを備え、
前記送液部を駆動し、前記流路で前記灌流液を送るステップと、
前記リザーバー内の前記灌流液の貯液状況を直接的または間接的に特定するステップと、
前記リザーバー内の前記灌流液の貯液状況に基づいて前記送液部を駆動することにより、前記リザーバー内の前記灌流液の量を制御するステップとを含む、制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、臓器灌流装置および制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
移植のために臓器を摘出し、その機能を維持したまま保存するための装置として、臓器に灌流液を灌流させる臓器灌流装置が開発されている。臓器灌流装置には、灌流液を貯液するリザーバーを備えるものがある。このような臓器灌流装置に関して、特開2020-002062号公報(特許文献1)には、リザーバーから臓器に灌流液を送液する際に、臓器がダメージを受けることを抑制するために、灌流液の圧力が所定の閾値を超えないようにポンプに対してフィードバック制御をする技術が開示されている。
【0003】
しかしながら、特許文献1においては、リザーバーから臓器に流入する灌流液に関して上記のようなポンプの制御をするものの、臓器からリザーバーに流入する灌流液に関しては何らポンプの制御をしていない。このため、リザーバーから臓器に流入する灌流液の量に対して、臓器からリザーバーに流入する灌流液の量が少なくなった場合、リザーバー内の灌流液の液面高さが低下し、最終的にはリザーバーが空になる虞がある。この場合、臓器に灌流液が送られず臓器に空気が入ってしまい、臓器が障害されてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-002062号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような問題を回避するため、多くの臓器灌流装置では、臓器を収容する容器よりも下になるように臓器灌流装置の最下部にリザーバーを設置するなど、構造上液量が不足することのない高さにリザーバーを設置するという対策を取っている。しかしながら、このようにした場合、リザーバーを設置する位置が限られるため、臓器灌流装置の設計の自由度が下がってしまう。設計上、リザーバーの設置高さを低くせざるを得ない場合、たとえば、リザーバー内に試薬を投入しづらくなるなど、リザーバーへのアクセスが不便になる。
【0006】
本開示は、かかる問題を解決するためになされたものであり、本開示の目的はリザーバーの設置高さが臓器を収容する容器の設置高さとの関係で制約を受けないようにする臓器灌流装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示のある局面に従う臓器灌流装置は、流入血管を有する臓器に灌流液を灌流させる。臓器灌流装置は、容器と、リザーバーと、流路と、送液部と、検出部と、制御部とを備える。容器は、臓器を収容する。リザーバーは、灌流液を貯液する。流路は、リザーバーと臓器の流入血管に接続される。送液部は、流路に設けられる。検出部は、リザーバー内の灌流液の貯液状況を直接的または間接的に特定するためものである。制御部は、送液部を制御する。制御部は、検出部の計測値に基づいて送液部を駆動することにより、リザーバー内の灌流液の量を制御する。
【0008】
本開示の別の局面に従う制御方法は、流入血管を有する臓器に灌流液を灌流させる臓器灌流装置を制御する方法である。臓器灌流装置は、容器と、リザーバーと、流路と、送液部とを備える。容器は、臓器を収容する。リザーバーは、灌流液を貯液する。流路は、リザーバーと臓器の流入血管に接続される。送液部は、流路に設けられる。制御方法は、送液部を駆動し、流路で灌流液を送るステップと、リザーバー内の灌流液の貯液状況を直接的または間接的に特定するステップと、リザーバー内の灌流液の貯液状況に基づいて送液部を駆動することにより、リザーバー内の灌流液の量を制御するステップとを含む。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、制御部は、検出部の計測値に基づいて送液部を駆動することにより、リザーバー内の灌流液の量を制御するため、リザーバーの設置高さが臓器を収容する容器の設置高さよりも高いことに起因して、リザーバーが空になるようなことがない。このため、リザーバーの設置高さが臓器を収容する容器の設置高さとの関係で制約を受けないようにする臓器灌流装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施の形態に係る臓器灌流装置のハードウェア構成の一例を示す概略図である。
図2】臓器灌流装置の機能構成の一例を示すブロック図である。
図3】門脈に流入させる灌流液の圧力の目標値を示すグラフである。
図4】動脈に流入させる灌流液の圧力の目標値を示すグラフである。
図5】肝臓に流入させる灌流液の合計流量の目標値を示すグラフである。
図6】リザーバーの液面高さとポンプの回転速度の関係を示すグラフである。
図7】ポンプ制御処理1の一例を示すフローチャートである。
図8】ポンプ制御処理2の一例を示すフローチャートである。
図9】リザーバーの設置位置を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0012】
[臓器灌流装置のハードウェア構成]
図1は、本実施の形態に係る臓器灌流装置1のハードウェア構成の一例を示す概略図である。
【0013】
本実施の形態に係る臓器灌流装置1は、流入血管を有する臓器に灌流液を灌流させる装置である。本実施の形態において、臓器の一例として肝臓10を例に挙げて説明する。肝臓10は、血液が流入する流入血管として動脈と門脈の2つの血管を有する。なお、本実施の形態に適用可能な臓器の他の例として、心臓、腎臓、肺、膵臓、胃、小腸、大腸、精巣、卵巣、眼球などを挙げることができる。上記流入血管の数は臓器によって異なり、たとえば、腎臓、肺、膵臓では1つであり、心臓では3つ(大静脈、肺静脈、冠動脈)である。
【0014】
図1に示すように、臓器灌流装置1は、容器20、30と、リザーバー50と、酸素供給部40と、制御部500と、各種センサとを備える。さらに、臓器灌流装置1は、リザーバー50と臓器10の流入血管に接続される流路と、流路に設けられたポンプとを備える。制御部500は、ポンプを含む臓器灌流装置1を制御する。
【0015】
容器20は、肝臓10を収容する。リザーバー50は、灌流液を貯液する。リザーバー50には図示しない温度機構が接続される。温度機構は、灌流液リザーバー50内に貯留される灌流液を所定の温度(4~37℃の範囲の任意の温度)に保つように構成される。
【0016】
本実施の形態において、流路として、リザーバー50側から臓器10側へ灌流液を送り、さらに、臓器10側からリザーバー50側へ灌流液を送るための管が設けられている。流路は、第1流路と第2流路とを含む。第1流路はリザーバー50側から臓器10側へ灌流液を送るための流路であり、第2流路は臓器10側からリザーバー50側へ灌流液を送るための流路である。
【0017】
本実施の形態においては、第1流路として、灌流液を肝臓10の門脈に送るための門脈流入用流路100と、灌流液を肝臓10の動脈に送るための動脈流入用流路200の2つの流路で構成される。また、本実施の形態においては、第2流路として、肝臓10が排出した灌流液をリザーバー50に送るための流出用流路300が設けられている。具体的には、肝臓10の静脈から排出した灌流液は、容器20内に溜まる。そして、容器20内に溜まった灌流液は、流出用流路300を介してリザーバー50に送られる。なお、第1流路は、1つの流路で構成されてもよく、複数の流路で構成されてもよい。たとえば、心臓に灌流液を灌流させる場合は、大静脈、肺静脈、冠動脈のそれぞれに灌流液を送るための3つの第1流路が構成される。また、第2流路として、肝臓10の静脈とリザーバー50とが直接接続されるように流出用流路300を構成してもよい。
【0018】
臓器灌流装置1は、3つのポンプ101、201、301を備える。ポンプ101は、門脈流入用流路100に設けられ、門脈流入用流路100を用いてリザーバー50から肝臓10の門脈へ灌流液を送る。ポンプ201は、動脈流入用流路200に設けられ、動脈流入用流路200を用いてリザーバー50側から肝臓10の動脈へ灌流液を送る。
【0019】
ポンプ301は、流出用流路300に設けられ、流出用流路300を用いて容器20からリザーバー50へ灌流液を送る。酸素供給部40は、流出用流路300に設けられ、流出用流路300を流れる灌流液に酸素を供給して灌流液中の酸素濃度を上昇させる人工肺である。これに限らず、酸素供給部40は、門脈流入用流路100や動脈流入用流路200に設けられ、門脈流入用流路100や動脈流入用流路200を流れる灌流液に酸素を供給してもよい。
【0020】
流量計103は、門脈流入用流路100において灌流液の流量を計測する。流量計203は、動脈流入用流路200において灌流液の流量を計測する。流量計303は、流出用流路300において灌流液の流量を計測する。
【0021】
圧力計104は、門脈流入用流路100において灌流液の圧力を計測する。圧力計204は、動脈流入用流路200において灌流液の圧力を計測する。バルブ102、202、302は、臓器への気泡の流入を防止するために用いられる。
【0022】
液面センサ400は、リザーバー50内の灌流液の液面高さを計測する。上述のセンサのうち、流量計103、203、303、液面センサ400は、リザーバー50内の灌流液の貯液状況を特定するために用いられる。なお、第1流路が1つである場合は、第1流路側に設置されるポンプ、流量計、圧力計、バルブはそれぞれ1つになる。第1流路が3つである場合は、第1流路側に設置されるポンプ、流量計、圧力計、バルブはそれぞれ3つになる。
【0023】
ここで、たとえば、リザーバー50から流出する灌流液の量に対して、リザーバー50に流入する灌流液の量の方が少なければ、リザーバー50内の灌流液の液面高さが下がる。最終的には、リザーバー50が空になり、肝臓10に空気が入るなどの問題が発生する。
【0024】
逆に、リザーバー50から流出する灌流液の量に対して、リザーバー50に流入する灌流液の量の方が多ければ、リザーバー50内の灌流液の液面高さが上がる。最終的には、リザーバーから灌流液が漏れ出すことになる。
【0025】
このような事態を回避するため、本実施の形態においては、臓器灌流装置1を制御する制御部500は、流量計103、203、303、液面センサ400といったセンサの計測値に基づいてポンプ301を駆動することにより、リザーバー50内の灌流液の量を制御する。具体的な方法について、図3図8を用いて後述する。本実施の形態においては、リザーバー50の設置高さは、容器20の設置位置よりも高くしている。
【0026】
以上説明したように、肝臓10の門脈には門脈流入用流路100を介して灌流液が送られ、肝臓10の動脈には動脈流入用流路200を介して灌流液が送られる。肝臓10の静脈から灌流液が流出して容器20内に灌流液が溜まる。容器20内の灌流液は、流出用流路300を介してリザーバー50に送られることになる。また、肝臓10の胆管には胆汁を流出させるための管(胆汁用流路31)を差し込んでいる。肝臓10の胆汁は、胆汁用流路31を介して容器30に送られる。
【0027】
[臓器灌流装置のブロック図]
図2は、臓器灌流装置の機能構成の一例を示すブロック図である。図2に示すように、臓器灌流装置1は、主な構成要素として、制御部500と、ポンプ101、201、301と、流量計103、203、303と、圧力計104、204と、液面センサ400とを備える。制御部500は、演算部であるCPU501(Central Processing Unit)と、RAM(Random Access Memory)502と、記憶装置503とを備える。
【0028】
CPU501は、記憶装置503に記憶されたプログラムを読み出して実行することで、臓器灌流装置1の各部の動作を制御する。たとえば、CPU501は、当該プログラムを実行することによって、ポンプの制御を行う。なお、図2の例では、CPU501が単数である構成を例示しているが、臓器灌流装置1は複数のCPUを有する構成としてもよい。
【0029】
記憶装置503は、ROM(Read Only Memory)やハードディスクなどの不揮発性の記憶装置により実現される。記憶装置503は、CPU501によって実行されるプログラム、またはCPU501によって用いられるデータなどを記憶する。当該プログラムは、非一時的なコンピュータ可読媒体に記憶されていてもよい。
【0030】
制御部500は、流量計103、203、303、圧力計104、204、液面センサ400によって計測された計測値を取得する。制御部500は、これらの計測値に基づき、ポンプ101、201、301に対する指令値を算出する。そして、制御部500は、算出した指令値に基づきポンプ101、201、301を駆動する。
【0031】
なお、制御部500には、表示部および入力部を接続してもよい。表示部は、画像を表示可能な液晶パネルなどで構成される。入力部は、臓器灌流装置1に対するユーザの操作入力を受け付ける。入力部は、典型的には、タッチパネル、キーボード、マウスなどで構成される。
【0032】
たとえば、表示部により、臓器灌流装置1におけるセンサやポンプの駆動の状態を表示するなど臓器灌流装置1の各種情報を表示したり、臓器灌流装置1に対する各種設定を行う画面を表示することができる。また、入力部からの操作入力により臓器灌流装置1に対する各種設定を行うことができる。
【0033】
[各種目標値]
図3は、門脈に流入させる灌流液の圧力の目標値を示すグラフである。図3に示すように、時間が経過しても、圧力計104が計測する灌流液の圧力が一定となるように目標値(指令値)が定められている。制御部500は、圧力計104が計測する灌流液の圧力が一定になるように、ポンプ101を駆動する。
【0034】
具体的には、制御部500は、圧力計104の計測値と目標値との誤差をフィードバックし、圧力計104の計測値が目標値に追従するようにポンプ101の回転速度を制御するフィードバック制御を行う。このようなフィードバック制御の処理は、制御部500の記憶装置503に格納されたプログラムの実行により実現される。
【0035】
図4は、動脈に流入させる灌流液の圧力の目標値を示すグラフである。図4に示すように、時間の経過とともに、制御部は、圧力計204が計測する灌流液の圧力が規則的に変化するように、ポンプ201を駆動する。本実施の形態では、時間の経過とともに、ある値を基準として正弦波を描くように圧力を上下させる。また、正弦波に限らず、圧力計204が計測する灌流液の圧力が拍動するように目標値を定めるようにすればよい。
【0036】
具体的には、制御部500は、圧力計204の計測値と目標値との誤差をフィードバックし、圧力計204の計測値が目標値に追従するようにポンプ201の回転速度を制御するフィードバック制御を行う。
【0037】
図5は、肝臓に流入させる灌流液の合計流量の目標値を示すグラフである。上述のように、制御部500は、流量計103、203、303、あるいは、液面センサ400といったセンサの計測値に基づいてポンプ301を駆動することにより、リザーバー50内の灌流液の量を制御する。
【0038】
具体的には、制御部500は、流量計103が計測する灌流液の流量と流量計203が計測する灌流液の流量との和と、流量計303が計測する灌流液の流量とが一致するように、ポンプ301を駆動することにより、リザーバー50内の灌流液の量を制御する。
【0039】
なお、第1流路が1つの流路で構成される場合は、制御部500は、第1流路に設置された流量計が計測する灌流液の流量と、流量計303が計測する灌流液の流量とが一致するように、ポンプ301を駆動することにより、リザーバー50内の灌流液の量を制御するようにすればよい。
【0040】
ポンプ101の回転速度は、図3に示したように制御される。このように制御された結果として、門脈流入用流路100を流れる灌流液の流量が流量計103によって計測される。ポンプ201の回転速度は、図4に示したように制御される。このように制御された結果として、動脈流入用流路200を流れる灌流液の流量が流量計203によって計測される。
【0041】
流量計103が計測する灌流液の流量と流量計203が計測する灌流液の流量との和(「合計流量」とも称する)は、たとえば、図5に示すようになる。動脈側の圧力が上下するため(図4参照)、図5においても、ある値を基準として正弦波を描くように合計流量は上下している。
【0042】
制御部500は、この合計流量と、流量計303が計測する灌流液の流量とが一致するようにポンプ301を制御する。具体的には、制御部500は、合計流量を目標値として、流量計303の計測値と目標値との誤差をフィードバックし、流量計303の計測値が目標値に追従するようにポンプ301の回転速度を制御するフィードバック制御を行う。
【0043】
このようにポンプ301を制御することで、リザーバー50に流入する灌流液の量とリザーバー50から流出する灌流液の量とが一致する。これにより、結果として、リザーバー50内の灌流液の量が制御され、リザーバー50内の灌流液の液面高さがある一定の高さに保たれることになる。
【0044】
しかし、これに限らず、液面センサ400を用いて、リザーバー50内の灌流液の液面高さが所定の範囲となるように制御されるようにしてもよい。図6は、リザーバーの液面高さとポンプの回転速度の関係を示すグラフである。
【0045】
制御部500は、液面センサ400が計測する液面高さが所定の範囲となるように、ポンプ301を駆動することで、液面高さを制御する。
【0046】
ここで、所定の範囲は、第1液面高さH1以上であって第2液面高さH2以下の範囲である。制御部500は、液面センサ400が計測した液面高さが第1液面高さH1を下回ったときは、流出用流路300における灌流液の流量が増加するようにポンプ301を駆動することで、液面高さを制御する。
【0047】
また、制御部500は、液面センサが計測した液面高さが第2液面高さを上回ったときは、流出用流路300における灌流液の流量が減少するようにポンプ301を駆動することで、液面高さを制御する。
【0048】
具体的には、図6に示すように、制御部500は、液面センサ400が計測した液面高さが第1液面高さH1以上であって第2液面高さH2以下の範囲である場合に、ポンプ301の回転速度がV1となるように制御する(ポンプ301の回転速度がV1となるようにポンプ301に対して入力指令を与える)。
【0049】
たとえば、第1液面高さH1は、リザーバー50内の灌流液の量が20%となる液面高さである。第2液面高さH2は、リザーバー50内の灌流液の量が60%となる液面高さである。
【0050】
制御部500は、液面センサ400が計測した液面高さが第1液面高さH1を下回ったときは、灌流液の流量が増加するようにポンプ301を制御する。具体的には、液面高さがH1であるときにはポンプ301の回転速度がV1となり、液面高さが0であるときにはポンプ301の回転速度がV2(>V1)となるように、ポンプ301を制御してもよい。
【0051】
制御部500は、液面センサ400が計測した液面高さが第2液面高さH2を上回ったときは、灌流液の流量が減少するようにポンプ301を制御する。具体的には、液面高さがH2であるときにはポンプ301の回転速度がV1となり、液面高さがH3であるときにはポンプ301の回転速度が0となるように、ポンプ301を制御してもよい。
【0052】
つまり、液面高さがH1~H2である場合にはポンプの回転速度をV1とする。液面高さがH1を下回った場合はポンプの回転速度をV1から増加させ(最大でV2)、液面高さがH1を下回った場合はポンプの回転速度をV1から減少させる(最大で0)。
【0053】
なお、これに限らず、液面センサ400が計測した液面高さが常に所定の高さとなるように、フィードバック制御を行うようにしてもよい。具体的には、制御部500は、所定の高さを目標値として、液面センサ400の計測値と目標値との誤差をフィードバックし、液面センサ400の計測値が目標値に追従するようにポンプ301の回転速度を制御するフィードバック制御を行う。
【0054】
また、図5を用いて説明したような流量計103、203、303の計測値に基づくポンプ301の制御と、図6を用いて説明したような液面センサ400の計測値に基づくポンプ301の制御とは、いずれか一方の制御を行えばよい。あるいは、これらの制御を組み合わせるようにしてもよい。
【0055】
以上説明したように、制御部500は、流量計103、203、303あるいは液面センサ400といったセンサの計測値に基づいてポンプ301を駆動することにより、リザーバー50内の灌流液の量を制御する。このため、リザーバー50の設置高さが肝臓10を収容する容器20の設置高さよりも高いことに起因して、リザーバー50が空になるようなことがない。これにより、リザーバー50の設置高さが臓器を収容する容器20の設置高さとの関係で制約を受けないようにする臓器灌流装置1を提供することができる。
【0056】
[ポンプ制御処理1]
図7は、ポンプ制御処理1の一例を示すフローチャートである。制御部500は、ポンプ制御処理1を実行する。ポンプ制御処理1は、図3図5を用いて説明したポンプ101、201、301を制御するための処理である。
【0057】
図7に示すように、ポンプ制御処理1を開始すると、制御部500は、S11において、圧力計104の目標値(一定量)に追従させるようにポンプ101を制御し、処理をS12に進める。具体的には、図3で示した目標値に追従させるように、ポンプ101の回転速度を制御するフィードバック制御を行う。
【0058】
制御部500は、S12において、圧力計204の目標値(正弦波)に追従させるようにポンプ201を制御し、処理をS13に進める。具体的には、図4で示した目標値に追従させるように、ポンプ201の回転速度を制御するフィードバック制御を行う。
【0059】
制御部500は、S13において、流量計103の計測値と流量計203の計測値との和を目標値として設定し、処理をS14に進める。具体的には、図5で示したものが目標値として設定される。
【0060】
制御部500は、S14において、流量計303の目標値に追従させるようにポンプ301を制御し、ポンプ制御処理1を終了する。具体的には、図5で示した目標値に追従させるように、ポンプ301の回転速度を制御するフィードバック制御を行う。
【0061】
制御部500は、ポンプ制御処理1を周期的に実行する。たとえば、タイマ割り込み処理が行われるたびに実行してもよいし、各種センサの計測値を取得するタイミングごとに実行するようにしてもよい。
【0062】
[ポンプ制御処理2]
図8は、ポンプ制御処理2の一例を示すフローチャートである。制御部500は、ポンプ制御処理2を実行する。ポンプ制御処理2は、図6を用いて説明したポンプ301を制御するための処理である。ここで、ポンプ101、201は、S11およびS12により制御されているものとする。
【0063】
図7に示すように、ポンプ制御処理2を開始すると、制御部500は、S21において、液面センサ400が計測した液面高さが第2液面高さH2を下回るか否かを判定する。液面センサ400が計測した液面高さが第2液面高さH2を下回る場合(S21でYES)は、処理をS22に進める。液面センサ400が計測した液面高さが第2液面高さH2を下回らない場合(S21でNO)は、処理をS22に進める。
【0064】
制御部500は、S23において、液面センサ400が計測した液面高さが第1液面高さH1を上回るか否かを判定する。液面センサ400が計測した液面高さが第1液面高さH1を上回る場合(S23でYES)は、処理をS24に進める。液面センサ400が計測した液面高さが第1液面高さH1を上回らない場合(S23でNO)は、処理をS25に進める。
【0065】
制御部500は、S22において、ポンプ301の回転速度を増加させ、ポンプ制御処理2を終了する。S22の処理は、図6において液面高さが0~H1の範囲にある場合におけるポンプ301の制御である。
【0066】
制御部500は、S24において、ポンプ301の回転速度を減少させ、ポンプ制御処理2を終了する。S24の処理は、図6において液面高さがH2~H3の範囲にある場合におけるポンプ301の制御である。
【0067】
制御部500は、S25において、ポンプ301の回転速度をV1とし、ポンプ制御処理2を終了する。S25の処理は、図6において液面高さがH1~H2の範囲にある場合におけるポンプ301の制御である。
【0068】
制御部500は、ポンプ制御処理2を周期的に実行する。たとえば、タイマ割り込み処理が行われるたびに実行してもよいし、各種センサの計測値を取得するタイミングごとに実行するようにしてもよい。
【0069】
以上説明したように、制御部500は、ポンプ101を駆動し、リザーバー50から容器20へ門脈流入用流路100で灌流液を送る。ポンプ201を駆動し、リザーバー50から容器20へ動脈流入用流路200で灌流液を送る。ポンプ301を駆動し、容器20からリザーバー50へ流出用流路300で灌流液を送る。
【0070】
制御部500は、流量計103、203、303あるいは液面センサ400といったセンサを用いて、リザーバー50内の灌流液の貯液状況を直接的または間接的に特定している。流量計103、203、303を用いる場合は、リザーバー-50に流入する灌流液の量とリザーバー-50から流出する灌流液の量との差分に基づき、リザーバー50内の灌流液の貯液状況を間接的に特定可能である。液面センサ400を用いる場合は、計測される液面高さに基づきリザーバー50内の灌流液の貯液状況を直接的に特定可能である。そして、制御部500は、リザーバー50内の灌流液の貯液状況に基づいてポンプ301を駆動することにより、リザーバー50内の灌流液の量を制御している。
【0071】
[リザーバーの設置位置]
図9は、リザーバーの設置位置を説明するための図である。図1の例において、リザーバー50の設置高さは、容器20の設置位置よりも高い。
【0072】
これに対して、図9に示すように、リザーバー50の設置高さは、容器20の設置位置よりも低いものであってもよい。このように、リザーバー50の設置高さは、容器20の設置位置よりも高くしてもよいし、容器20の設置位置よりも高くしてもよいし、同じ高さにしてもよい。
【0073】
上述のように、制御部500は、流量計103、203、303あるいは液面センサ400といったセンサの計測値に基づいてポンプ301を駆動することにより、リザーバー50内の灌流液の量を制御している。このため、リザーバー50の設置高さが肝臓10を収容する容器20の設置高さよりも高いことに起因して、リザーバー50が空になるようなことがない。
【0074】
臓器灌流装置1の大きさや臓器灌流装置1の設置位置によっては、リザーバー50の設置高さが、容器20の設置高さよりも高い場合が便利であることも考えられるし、容器20の設置高さよりも低い場合が便利であることも考えられるし、容器20の設置高さと同じである場合が便利であることも考えられる。
【0075】
なお、臓器灌流装置1は、図1図9に示したものに限らない。第1流路は1つあるいは3つであってもよく、流出用流路300は静脈に接続されるものであってもよく、酸素供給部は第1流路に設けられるものであってもよい。また、本実施の形態においては、流量計103、203、303、液面センサ400といったセンサの計測値に基づいて、第2流路に設置されたポンプ301の駆動を制御するようにしたが、これに限らず、これらのセンサの計測値に基づいて、第1流路に設置されたポンプ101、102の駆動を制御するものであってもよい。また、第1流路が3つある場合は、3つの流路に流路計を設置し、これらの流路計で計測された流量の和と、第2流路に設置された流路計303の流量とが一致するように第2流路に設置されたポンプ301の駆動を制御するようにすればよい。
【0076】
[態様]
上述した複数の例示的な実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0077】
(第1項)一態様に係る臓器灌流装置は、流入血管を有する臓器に灌流液を灌流させる。臓器灌流装置は、容器と、リザーバーと、流路と、送液部と、検出部と、制御部とを備える。容器は、臓器を収容する。リザーバーは、灌流液を貯液する。流路は、リザーバーと臓器の流入血管に接続される。送液部は、流路に設けられている。検出部は、リザーバー内の灌流液の貯液状況を直接的または間接的に特定するためのものである。制御部は、送液部を制御する。制御部は、検出部の計測値に基づいて送液部を駆動することにより、リザーバー内の灌流液の量を制御する。
【0078】
第1項に記載の臓器灌流装置によれば、制御部は、検出部の計測値に基づいて送液部を駆動することにより、リザーバー内の灌流液の量を制御するため、リザーバーの設置高さが臓器を収容する容器の設置高さよりも高いことに起因して、リザーバーが空になるようなことがない。このため、リザーバーの設置高さが臓器を収容する容器の設置高さとの関係で制約を受けないようにする臓器灌流装置を提供することができる。
【0079】
(第2項)第1項に記載の臓器灌流装置において、流路は、リザーバー側から臓器側へ灌流液を送るための第1流路と、臓器側からリザーバー側へ灌流液を送るための第2流路とを含む。送液部は、第1流路に設けられた第1送液部と、第2流路に設けられた第2送液部とを含む。制御部は、検出部の計測値に基づいて第2送液部を駆動することにより、リザーバー内の灌流液の量を制御する。
【0080】
第2項に記載の臓器灌流装置によれば、制御部は、検出部の計測値に基づいて第2送液部を駆動することにより、リザーバー内の灌流液の量を制御するため、リザーバーの設置高さが臓器を収容する容器の設置高さよりも高いことに起因して、リザーバーが空になるようなことがない。このため、リザーバーの設置高さが臓器を収容する容器の設置高さとの関係で制約を受けないようにする臓器灌流装置を提供することができる。
【0081】
(第3項)第2項に記載の臓器灌流装置において、検出部は、第1流路において灌流液の流量を計測する第1流量計と、第2流路において灌流液の流量を計測する第2流量計とを含む。制御部は、第1流量計が計測する灌流液の流量と第2流量計が計測する灌流液の流量とが一致するように、第2送液部を駆動することにより、リザーバー内の灌流液の量を制御する。
【0082】
第3項に記載の臓器灌流装置によれば、制御部は、第1流量計が計測する灌流液の流量と第2流量計が計測する灌流液の流量とが一致するように、第2送液部を駆動することにより、リザーバー内の灌流液の量を制御するため、リザーバーの設置高さが臓器を収容する容器の設置高さよりも高いことに起因して、リザーバーが空になるようなことがない。このため、リザーバーの設置高さが臓器を収容する容器の設置高さとの関係で制約を受けないようにする臓器灌流装置を提供することができる。
【0083】
(第4項)第3項に記載の臓器灌流装置において、第1流路は、灌流液を臓器の第1流入血管に送るための第1流入血管用第1流路と、灌流液を臓器の第2流入血管に送るための第2流入血管用第1流路とを含む。第1送液部は、第1流入血管用第1流路に用いる第1流入血管用第1送液部と、第2流入血管用第1流路に用いる第2流入血管用第1送液部とを含む。第1流量計は、第1流入血管用第1流路に用いる第1流入血管用第1流量計と、第2流入血管用第1流路に用いる第2流入血管用第1流量計とを含む。制御部は、第1流入血管用第1流量計が計測する灌流液の流量と第2流入血管用第1流量計が計測する灌流液の流量との和と、第2流量計が計測する灌流液の流量とが一致するように、第2送液部を駆動することにより、リザーバー内の前記灌流液の量を制御する。
【0084】
第4項に記載の臓器灌流装置によれば、制御部は、第1流入血管用第1流量計が計測する灌流液の流量と第2流入血管用第1流量計が計測する灌流液の流量との和と、第2流量計が計測する灌流液の流量とが一致するように、第2送液部を駆動することにより、リザーバー内の前記灌流液の量を制御するため、リザーバーの設置高さが臓器を収容する容器の設置高さよりも高いことに起因して、リザーバーが空になるようなことがない。このため、リザーバーの設置高さが臓器を収容する容器の設置高さとの関係で制約を受けないようにする臓器灌流装置を提供することができる。
【0085】
(第5項)第4項に記載の臓器灌流装置において、検出部は、第1流入血管用第1流路において灌流液の圧力を計測する第1圧力計と、第2流入血管用第1流路において灌流液の圧力を計測する第2圧力計とを含む。制御部は、第1圧力計が計測する灌流液の圧力が一定になるように、第1流入血管用第1送液部を駆動する。制御部は、第2圧力計が計測する灌流液の圧力が規則的に変化するように、第2流入血管用第1送液部を駆動する。
【0086】
第5項に記載の臓器灌流装置によれば、臓器にダメージを与えるような過度な圧力をかけることなく、リザーバーの設置高さが臓器を収容する容器の設置高さとの関係で制約を受けないようにする臓器灌流装置を提供することができる。
【0087】
(第6項)第2項に記載の臓器灌流装置において、検出部は、リザーバー内の灌流液の液面高さを計測する液面センサを含む。制御部は、液面センサが計測する液面高さが所定の範囲となるように、第2送液部を駆動することで、液面高さを制御する。
【0088】
第6項に記載の臓器灌流装置によれば、制御部は、液面センサが計測する液面高さが所定の範囲となるように、第2送液部を駆動することで、液面高さを制御するため、リザーバーの設置高さが臓器を収容する容器の設置高さよりも高いことに起因して、リザーバーが空になるようなことがない。このため、リザーバーの設置高さが臓器を収容する容器の設置高さとの関係で制約を受けないようにする臓器灌流装置を提供することができる。
【0089】
(第7項)第6項に記載の臓器灌流装置において、所定の範囲は、第1液面高さ以上であって第2液面高さ以下の範囲である。制御部は、液面センサが計測した液面高さが第1液面高さを下回ったときは、第2流路における灌流液の流量が増加するように第2送液部を駆動し、液面センサが計測した液面高さが第2液面高さを上回ったときは、第2流路における灌流液の流量が減少するように第2送液部を駆動することで、液面高さを制御する。
【0090】
第7項に記載の臓器灌流装置によれば、制御部は、液面センサが計測した液面高さが第1液面高さを下回ったときは、第2流路における灌流液の流量が増加するように第2送液部を駆動し、液面センサが計測した液面高さが第2液面高さを上回ったときは、第2流路における灌流液の流量が減少するように第2送液部を駆動することで、液面高さを制御するため、リザーバーの設置高さが臓器を収容する容器の設置高さよりも高いことに起因して、リザーバーが空になるようなことがない。このため、リザーバーの設置高さが臓器を収容する容器の設置高さとの関係で制約を受けないようにする臓器灌流装置を提供することができる。
【0091】
(第8項)第1項から第7項に記載の臓器灌流装置において、灌流液中の酸素濃度を上昇させる酸素供給部をさらに備える。
【0092】
第8項に記載の臓器灌流装置によれば、灌流液中の酸素濃度を上昇させることで、肝臓の機能を維持したまま肝臓を保存することができる。
【0093】
(第9項)第1項から第8項に記載の臓器灌流装置において、リザーバーの設置高さは、容器の設置位置よりも高い。
【0094】
第9項に記載の臓器灌流装置によれば、リザーバーの設置高さを容器の設置位置よりも高くすることで、リザーバーに対するアクセスが良くなる。
【0095】
(第10項)第10項に記載の制御方法は、流入血管を有する臓器に灌流液を灌流させる臓器灌流装置を制御する方法である。臓器灌流装置は、容器と、リザーバーと、流路と、送液部とを備える。容器は、臓器を収容する。リザーバーは、灌流液を貯液する。流路は、リザーバーと臓器の流入血管に接続される。送液部は、流路に設けられている。制御方法は、送液部を駆動し、流路で灌流液を送るステップと、リザーバー内の灌流液の貯液状況を直接的または間接的に特定するステップと、リザーバー内の灌流液の貯液状況に基づいて送液部を駆動することにより、リザーバー内の灌流液の量を制御するステップとを含む。
【0096】
第10項に記載の制御方法によれば、制御方法は、リザーバー内の灌流液の貯液状況に基づいて送液部を駆動することにより、リザーバー内の灌流液の量を制御するため、リザーバーの設置高さが臓器を収容する容器の設置高さよりも高いことに起因して、リザーバーが空になるようなことがない。このため、リザーバーの設置高さが臓器を収容する容器の設置高さとの関係で制約を受けないようにする臓器灌流装置を提供することができる。
【0097】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0098】
1 臓器灌流装置、10 肝臓、20、30 容器、31 胆汁用流路、40 酸素供給部、50 リザーバー、100 門脈流入用流路、101、201、301 ポンプ、102、202、302 バルブ、103、203、303 流量計、104、204 圧力計、200 動脈流入用流路、300 流入用流路、400 液面センサ、500 制御部、501 CPU、502 RAM、503 記憶装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9