(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-19
(45)【発行日】2023-12-27
(54)【発明の名称】塗装用ローラの長尺柄連結機構
(51)【国際特許分類】
B05C 17/02 20060101AFI20231220BHJP
F16B 7/12 20060101ALI20231220BHJP
F16B 7/18 20060101ALI20231220BHJP
B25G 3/00 20060101ALI20231220BHJP
【FI】
B05C17/02
F16B7/12
F16B7/18 A
B25G3/00 A
(21)【出願番号】P 2019151838
(22)【出願日】2019-08-22
【審査請求日】2022-08-19
(31)【優先権主張番号】P 2018164245
(32)【優先日】2018-09-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000206934
【氏名又は名称】株式会社マルテー大塚
(74)【代理人】
【識別番号】110002446
【氏名又は名称】弁理士法人アイリンク国際特許商標事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100076163
【氏名又は名称】嶋 宣之
(72)【発明者】
【氏名】小野寺 浩明
【審査官】河内 浩志
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3171841(JP,U)
【文献】特開2006-297320(JP,A)
【文献】特開2011-012755(JP,A)
【文献】特表2008-510119(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C7/00-21/00
F16B7/00- 7/22
B25G3/00- 3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の端部を長尺柄に連続させる連結部材と、この連結部材に着脱可能にした連結する継ぎ手部材とを備え、
上記連結部材あるいは上記継ぎ手部材のいずれか一方に、上記長尺柄と軸方向を同じにする挿入穴部を形成し、
上記連結部材あるいは上記継ぎ手部材のいずれか他方に上記挿入穴部に対して軸方向に抜き差し可能にした軸部が形成されるとともに、
上記連結部材あるいは上記継ぎ手部材のいずれか一方には、その挿入穴部に挿入された上記軸部が抜けるのを防止するストッパー機構が設けられ、
上記継ぎ手部材であって、上記軸部もしくは挿入穴部を形成した側とは反対側に、軸部もしくは挿入穴部と軸線を同じにした雄ネジ部が設けられ、
上記雄ネジ部が塗装用ローラのハンドルに形成された雌ネジ部とねじ結合して上記継ぎ手部材が当該ハンドルに連結されるとともに、
上記軸部を上記挿入穴部に挿入したとき、上記連結部材、継ぎ手部材及び連結部材に連続する上記長尺柄のそれぞれが軸方向を同じにして連結される
塗装用ローラの長尺柄連結機構であって、
上記挿入穴部の開口側に拡径部を形成し、この拡径部の内径が挿入穴部の内径よりも大径であり、上記挿入穴部と上記拡径部との境界部分に円周方向に連続する段差面が形成され、
上記段差面には、この段差面と一体形成された複数の弾性片を上記円周方向に沿って連続して起立させるとともに、
これら弾性片の外側面が上記円周方向に連続して形成する外周円の直径よりも上記拡径部の内径を大きくして弾性片の上記外周円と拡径部の内周面との間にすき間が形成される構成にし、
上記弾性片の内側面が上記円周方向に連続して形成される内周円の直径は、上記軸部の外径よりも小さくして、上記軸部が上記弾性片の上記内周円内に圧入されたとき、各弾性片が上記すき間方向にたわんで、上記軸部に対して径方向及び軸方向に弾性力が発揮される塗装用ローラの長尺柄連結機構。
【請求項2】
上記軸部を断面円形にするとともにその円形の一部を軸方向に伸びる軸側平坦面とし、
上記挿入穴部には、上記軸側平坦面と対応する穴側平坦面を形成し、
これら軸側平坦面と穴側平坦面とで回り止め機構を構成するとともに、
上記軸側平坦面には止め穴を形成し、
上記挿入穴部を形成した上記連結部材あるいは上記継ぎ手部材にはストッパー機構を設け、
このストッパー機構は、上記穴側平坦面に対応する位置に上記挿入穴部の径方向に突出可能にしたストッパーピンが設けられ、このストッパーピンを挿入穴部側に突出させたりあるいは引っ込めたりし、
上記挿入穴部側に突出したストッパーピンが上記止め穴にはまり合ったり抜けたりできる構成にした請求項1に記載の塗装用ローラの長尺柄連結機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、塗装用ローラのハンドルに長尺柄を連結する連結機構に関する。
【背景技術】
【0002】
長尺柄を連結する塗装用ローラとして特許文献1に記載されたものが、従来から知られている。この従来の連結機構を示したのが本願に添付した
図6~8である。ただし、
図6に示した塗装用ローラRはこの発明の連結機構でも用いるものである。
上記塗装用ローラRは、
図6~8に示すように、ハンドル1にワイヤー2を固定するとともに、このワイヤー2にローラ部材3を回転自在に設けている。
【0003】
このようにした塗装用ローラRは、原則的には、ハンドル1を直接握って、塗料を含めたローラ部材3を目的の面に転がして使用するものである。したがって、高所の塗装作業では、作業者がはしごや脚立に上って塗装作業をする。
【0004】
しかし、天井のようにほぼ水平な広い塗装面の場合には、脚立の位置を何回も移動させなければならないし、その都度、脚立の上り下りをしなければならない。そのために、作業効率が著しく悪くなるという問題があった。
また、床面を塗装するときには、体をかがめなければならないので、その作業姿勢に無理が生じ、長時間の連続作業ができなくなるという問題があった。
【0005】
そこで、ハンドル1とは別に、
図7に示す長尺柄4を備えるとともに、ハンドル1には雌ネジ部5を形成し、長尺柄4の先端には雌ネジ部5とねじ結合する雄ネジ部6を形成し、天井や床面を塗装するときには、
図8に示すようにハンドル1に長尺柄4を連結できるようにしている。
【0006】
上記のように長尺柄4を連結した塗装用ローラRで天井面を塗装するときには、ローラ部材3に含まれた塗料が長尺柄4の方に流れてくる。この状態でローラ部材3を再び塗料容器につけようとすると、ローラ部材3を下に、長尺柄4を上にと、その高さ方向を逆向きにしなければならない。このように高さ方向を逆にすると、長尺柄4に付着していた塗料が逆流して雌ネジ部5にしみこんでいく。
また、塗装面積が大きくなれば、ローラ部材3と長尺柄4の高さ方向を逆向きにする回数も多くなるので、その分、長尺柄4に付着した塗料が雌ネジ部5にしみこんでいく量も多くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のようにした従来の長尺柄連結機構では、ハンドル1と長尺柄4とをねじ結合しているので、それらのねじの部分に塗料がしみ込んで固まってしまうと、ねじの部分が相対回転できなくなり、結局は、ハンドル1と長尺柄4とを分離できなくなってしまう。
【0009】
特に、長尺柄の直径はそれほど大きくはないので、それを回そうとしても大きなトルクが得られない。このような条件の中で、ハンドル1と長尺柄4とのねじ結合部分で塗料が固まってしまうと、手ではそれらを相対回転させられなくなる。しかも、長尺柄4に塗料が付着していると、その塗料のぬめりなどで手が滑ってしまい、ねじ結合部分の相対回転がますます難しくなる。
【0010】
もし、ねじ結合部分を相対回転できなければ、その結合部分を少し洗浄液に浸しておき、結合部分の塗料を溶かすなどしなければならない。しかし、作業途中で洗浄液に浸すようなことをすれば、その作業効率が極端に悪くなる。
【0011】
一方、強い力でハンドル1を長尺柄4から外そうとすれば、ローラ部材3が不用意に大きく回されたり振れたりしてそこに含まれている塗料が飛散し、せっかくの塗装面を台無しにしたり、他の壁面などを汚したりするなどの問題が発生する。
【0012】
また、塗装現場によっては、ハンドル1と長尺柄4との連結もしくは分離を何回も繰り返す場合がある。このような場合には、それらをスムーズに連結したり分離したりできなければ、作業効率が落ちてしまうという問題も発生する。
【0013】
この発明の目的は、ハンドルと長尺柄とを、スムーズに連結したり分離したりできる塗装用ローラの長尺柄連結機構を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
第1の発明は、連結部材の一方の端部に長尺柄を連続させる構成にしている。なお、長尺柄と連結部材とは、それらが連続する構成であれば、連結部材と長尺柄とを一体にしてもよいし、それらを別部材にしてもよい。
【0015】
また、上記連結部材とこの連結部材に対して着脱可能にした継ぎ手部材とのいずれか一方に挿入穴部が形成され、いずれか他方に軸部が形成されているが、それらは相対的であって、連結部材に挿入穴部が形成されれば継ぎ手部材にはその挿入穴部に挿入される軸部が形成され、連結部材に軸部が形成されれば継ぎ手部材に挿入穴部が形成される。
【0016】
そして、上記連結部材あるいは継ぎ手部材のいずれか一方に、挿入穴部に挿入された軸部が抜けるのを防止するストッパー機構が設けられている。
また、上記継ぎ手部材であって挿入穴部あるいは軸部とは反対側には雄ネジ部を設け、この雄ネジ部が塗装用ローラのハンドルに形成した雌ネジ部とねじ結合できる構成にしている。
そして、上記軸部を上記挿入穴部に挿入したとき、上記連結部材、継ぎ手部材及び連結部材に連続する上記長尺柄のそれぞれが軸方向を同じにして連結される。
さらに、上記挿入穴部の開口側に拡径部を形成し、この拡径部の内径を挿入穴部の内径よりも大径にして、挿入穴部と拡径部との境界部分に、上記開口の円周方向に連続する段差面を形成している。そして、この段差面には、段差面と一体形成した複数の弾性片を上記円周方向に沿って連続して起立させている。
上記のようにした弾性片の外側面が上記円周方向に連続して形成する外周円の直径が、上記拡径部の内径よりも小さくし、弾性片の上記外周円と拡径部の内周面との間にすき間が形成されるようにしている。したがって、各弾性片は、上記すき間の範囲でたわんで反り返えることができる。
しかも、上記弾性片の内側面が上記円周方向に連続して形成する内周円の直径は、上記軸部の外径よりも小さくして、上記軸部が上記内周円内に圧入されたとき、各弾性片が上記すき間方向にたわんで、上記軸部に対して径方向及び軸方向に弾性力が発揮される構成にしている。
【0017】
第2の発明は、上記軸部を断面円形にするとともに、その円形の一部を軸方向に伸びる軸側平坦面としている。また、上記挿入穴部には、上記軸側平坦面と対応する穴側平坦面を形成し、これら軸側平坦面と穴側平坦面とで回り止め機構を構成している。
そして、上記軸側平坦面には止め穴を形成し、上記挿入穴部を形成した連結部材あるいは継ぎ手部材にストッパー機構を設け、このストッパー機構は、上記穴側平坦面に対応する位置に上記挿入穴部の径方向に突出可能にしたストッパーピンが設けられ、このストッパーピンを挿入穴部側に突出させたりあるいは引っ込めたりして、上記挿入穴部側に突出したストッパーピンが上記止め穴にはまり合ったり抜けたりできる構成にしている。
【発明の効果】
【0021】
第1の発明の長尺柄連結機構によれば、継ぎ手部材と連結部材とは、軸部と挿入穴部とを軸方向に相対移動させられるので、それらを軸方向に押したり引いたりする力で両者を連結したり分離したりできる。このように軸方向に押したり引いたりする力は、細い長尺柄4を回すときよりも大きな力を発揮できる。
【0022】
したがって、挿入穴部と軸部との間に塗料がしみ込んだとしても、軸部を挿入穴から強い力でそれを引き抜いて分離できる。このように挿入穴部と軸部との間に塗料がしみ込んでも、それを大きな力で分離できるので、例えば、従来のように、作業途中でそれらを洗浄液に浸すような無駄な時間を費やしたり、ローラ部材が不用意に回されたり振れたりしてそこに含まれている塗料が飛散するようなことがない。
【0023】
しかも、ハンドルに雌ネジ部が形成されている既成の塗装用ローラのハンドルに加工を加えることなくそのまま使うことができる。
さらに、連結部材あるいは継ぎ手部材には、挿入穴部に挿入された軸部が抜けるのを防止するストッパー機構を設けたので、塗装作業中に塗装用ローラと長尺柄とが不用意に分離することはない。
また、弾性片が段差面を介して本体と一体に形成されているので、連結部材を耐溶剤性の材質で構成することによって、塗料に含まれる溶剤の影響でその弾性力が減衰されることはない。また、弾性片は段差面と一体なので、それらを別部材にした場合と異なり、組付け性が問題にならないし、それらを紛失することもない。
さらに、複数の弾性片の総合的な弾性力を軸部に作用させられるので、個々の弾性片の弾性力が多少ばらついても、全体的にはその弾性力を安定化させることができる。
【0024】
第2の発明の長尺柄連結機構によれば、軸側平坦面と穴側平坦面とを一致させて軸部を挿入穴部に挿入すれば、ストッパーピンと止め穴との相対位置を必然的に定めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】第1実施形態の長尺柄の一部とともに連結部材の断面を示した図である。
【
図8】従来の長尺柄を塗装用ローラのハンドルに連結した状態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下にこの発明の参考例となる第1実施形態と、この発明の実施例となる第2実施形態とを説明する。
図1~
図3はこの発明の第1実施形態を示すもので、
図1においては長尺柄4の先端部分のみを示している。そして、この長尺柄4は従来の構造と基本的には同じであって、その先端に雄ネジ部6を形成している。そして、長尺柄4の構造は、
図7,8に示した従来のものと同一である。
【0029】
また、連結部材Aは筒状の本体8からなり、この本体8の一方の開口には雌ネジ部9を形成し、この雌ネジ部9に長尺柄4の雄ネジ部6がねじ結合される構成にしている。
なお、
図1中符号10は、本体8であって雌ネジ部9に対応する外周部分に軸方向に長さを保った滑り止め溝で、本体8の周方向にほぼ等間隔に複数形成したものである。このようにした滑り止め溝10は、この滑り止め溝10が形成された部分を握って、本体8を長尺柄4と相対回転させるとき、滑り止め機能を発揮するものである。
【0030】
連結部材Aの本体8の上記雌ネジ部9とは反対側には挿入穴部11を形成するとともに、この挿入穴部11の開口部分には上記挿入穴部11の内径よりも大きくした拡径部12を連続させている。したがって、この拡径部12と挿入穴部11との間の境界部分には、それら挿入穴部と拡径部との段差分に相当した段差面13が円周方向に連続的に形成される。このようにした段差面13は軸線にほぼ直交する。
さらに、挿入穴部11内には軸方向に伸びる肉厚部14を円周方向に1か所形成し、この肉厚部14を段差面13に臨ませるとともに、この肉厚部14の内面を穴側平坦面15としている。
なお、上記穴側平坦面15は必要に応じて複数個所設けてもよい。
【0031】
上記のようにした肉厚部14には、ストッパーピン16を挿入穴部11の直径方向に貫通させるとともに、このストッパーピン16の先端を挿入穴部11内に突出させたり、挿入穴部11から退避させたりするレバー17を本体8の外部に設けている。
【0032】
上記のようにしたレバー17は回動支点18を中心に回動自在であって、図示していないスプリングのばね力で、通常は図示の位置を保ち、ストッパーピン16を挿入穴部11内に突出させている。そして、レバー17を、支点18を中心に上記スプリングのばね力に抗して回動させると、ストッパーピン16が挿入穴部11から退避する構成にしている。
【0033】
一方、上記連結部材Aに連結される継ぎ手部材Bは、フランジ部21を挟んでその軸方向の一方を軸部19とし、他方を雄ネジ部20としている。しかも、上記軸部19とフランジ部21との間には、軸部19の外径よりも大きく、フランジ部21の外径よりも小さい外径を保持した大径部19aを設けるとともに、この大径部19aを連結部材Aの拡径部12に挿入可能にしている。
【0034】
上記軸部19は断面形状を円形にするとともに、その外径を挿入穴部11とほぼ同じにして、軸部19が挿入穴部11にスムーズに挿入されるようにしている。さらに、この軸部19の円形の一部を、
図3に示すように軸方向に伸びる軸側平坦面22とし、この軸側平坦面22にはストッパーピン16が挿入される止め穴23が形成されている。したがって、軸部19の軸側平坦面22と挿入穴部11の穴側平坦面15とを合わせて軸部19を挿入穴部11に挿入すれば、ストッパーピン16と止め穴23とが同一面側に位置する。
なお、この軸側平坦面22は、上記穴側平坦面15と個数も場所も対応させている。
【0035】
上記フランジ部21の外径は、上記拡径部12の外径とほぼ一致させ、軸部19を挿入穴部11の軸方向に押し込んだとき、フランジ部21が拡径部12の縁に当たるとともに、それらが当たった位置で、それ以上軸部19を押し込めない状態になる。
なお、符号19bは、軸部19の先端に形成した面取り部である。
【0036】
上記大径部19aにはパッキン24をはめるが、このパッキン24は、
図2に示すように、筒部24aとこの筒部24aの開口部分に形成したつば部24bとからなる。そして、上記筒部24aの外径は、連結部材Aの上記拡径部12の内径よりもわずかに大きくし、この筒部24aを弾圧しながら拡径部12に圧入できる寸法関係を維持している。
【0037】
一方、つば部24bは、継ぎ手部材Bのフランジ部21を連結部材Aの拡径部12の外径に押し付けてこのつば部24bを弾圧したとき、上記ストッパーピン16と止め穴23との相対位置が一致するようにしている。
したがって、レバー17を上記スプリングのばね力に抗して回動し、ストッパーピン16を上記した退避状態に保って継ぎ手部材Bの軸部19を、連結部材Aの挿入穴部11に挿入するとともに、つば部24bを弾圧した状態でレバー17を開放すれば、ストッパーピン16が図示していないスプリングのばね力で挿入穴部11側に突出して、ストッパーピン16が止め穴23にはまることになる。
なお、これらストッパーピン16と止め穴23とで、この発明のストッパー機構を構成するものである。
【0038】
上記のようにしてパッキン24を弾圧した状態でそれを拡径部12に押し込めば、筒部24aによって径方向の弾性力が作用するとともに、つば部24bによって軸方向の弾性力が作用することになる。
したがって、連結部材Aの拡径部12の内径と、大径部19aの外径との間に多少の寸法誤差があったとしても、上記筒部24aの軸方向の弾性力でその寸法誤差は吸収される。このようにがたつきがあってもそれが吸収されるので、例えば継ぎ手部材Bの雄ネジ部20に連結された塗装用ローラRに対するがたつきが吸収される。もし、長尺柄4の先端における塗装用ローラRががたつくと、塗装作業に支障をきたすが、上記パッキン24の弾性力で作業に対する悪影響を防止できる。
【0039】
一方、上記つば部24bは、拡径部12の開口縁とフランジ部21との間に挟まれて弾圧されることによって、連結部材Aと継ぎ手部材Bの両者を軸方向に分離する弾性力を発揮し、それらのがたつきを吸収できる。このようにがたつきを吸収できるので、ストッパーピン16に対して止め穴23を多少大きめにしてもよくなり、止め穴23の厳密な加工精度が求められなくなり、その分、製造効率を上げることができる。
【0040】
上記のようにした長尺柄連結機構は、先ず、継ぎ手部材Bの雄ネジ部20を塗装用ローラRのハンドル1に形成された雌ネジ部5にねじ結合して、継ぎ手部材Bをハンドル1に連結する。
また、長尺柄4の雄ネジ部6を連結部材Aの雌ネジ部9にねじ結合して、長尺柄4と連結部材Aとを連結する。
【0041】
次に、連結部材Aの挿入穴部11に、継ぎ手部材Bの軸部19を挿入するとともに、そのフランジ部21と連結部材Aの拡径部12の開口縁との間で、パッキン24のつば部24bを強く弾圧するまで軸部19を挿入穴部11に押し込む。この過程では、ストッパーピン16を強制的に退避させておくとともに、止め穴23と一致した段階で、レバー17を開放してストッパーピン16を止め穴23にはめる。
【0042】
上記のようにストッパーピン16が止め穴23にはまった状態では、パッキン24のつば部24bの弾性力が軸部19の軸方向に作用するので、ストッパーピン16が止め穴23から抜けたりがたついたりすることが防止されるとともに、長尺柄4とハンドル1との相対回転も防止される。そのために、塗装用ローラRのローラ部材3の向きなどが安定し、塗装作業がやりやすくなる。
なお、上記穴側平坦面15、軸側平坦面22、ストッパーピン16及び止め穴23が相まってこの発明の回り止め機構を構成する。
【0043】
一方、長尺柄4をハンドル1から外すときには、レバー17を図示していないスプリングのばね力に抗して回動して、ストッパーピン16を挿入穴部11から退避させるとともに、継ぎ手部材Bの軸部19と連結部材Aの挿入穴部11とを軸方向に相対移動させて、言い換えると、継ぎ手部材Bと連結部材Aとを反対方向に引っ張って両者を分離させる。
【0044】
そして、ハンドル1側に残った継ぎ手部材Bは、そのままハンドル1に取り付けたままにしておいてもよいし、塗装作業終了後にゆっくりと洗浄液に浸してそれらを分離してもよい。
なお、上記第1実施形態では、長尺柄4と連結部材Aとを別部材にしたが、長尺柄4の先端に連結部材Aと同一の構成を一体的に設けるようにしてもよい。
【0045】
図4,5に示した第2実施形態は、連結部材Aのみを第1実施形態と相違させたもので、継ぎ手部材Bは第1実施形態におけるパッキン24を不要にした以外はすべて同じである。つまり、第2実施形態の継ぎ手部材Bには、先端に面取り部19bを備えた軸部19と、大径部19aとを備えている。また、この軸部19には、連結部材Aの穴側平坦面15と対応づけられた軸側平坦面22を設けるとともに、この軸側平坦面22には連結部材Aのストッパーピン16と対応づけられた止め穴23を形成し、さらに、大径部19aと雄ネジ部20との間にフランジ部21を設けている。
【0046】
また、この第2実施形態の連結部材Aも、拡径部12における構成が第1実施形態の連結部材Aと相違するのみで、その他の構成はすべて第1実施形態と同じである。
つまり、この第2実施形態の連結部材Aは、本体8に挿入穴部11を形成し、挿入穴部11に連続する拡径部12を形成し、これら挿入穴部11と拡径部12との境界部分に段差面13を形成している。また、上記挿入穴部11に設けた肉厚部14に設けた穴側平坦面15と、この穴側平坦面14を貫通するとともに止め穴23と対応づけられたストッパーピン16と、このストッパーピン16を挿入穴部11に突出させたり退避させたりするレバー17とを設けている。しかも、これらストッパーピン16と止め穴23とが相まって、この発明のストッパー機構を構成する点も、第1実施形態と同じである。
【0047】
第2実施形態における連結部材Aの拡径部12であって円周方向に連続する段差面13には、複数の弾性片25を上記円周方向に沿って連続して起立させている。なお、これら弾性片25は、段差面13を介して本体8と一体に設けている。そして、これら各弾性片25の先端には、軸部19の面取り部19bを導入するための円弧部25aを形成している。
このようにした弾性片25は、それら弾性片25の外側面が上記円周方向に連続して形成される外周円の直径を上記拡径部12の内径よりも小さくして、弾性片25と拡径部12の内面との間にすき間26が形成されるようにしている。したがって、各弾性片25は上記すき間26の方向にたわむことができる。
【0048】
また、各弾性片25の内側面が上記円周方向に連続して形成される内周円の直径を、軸部19の大径部19a外径よりも小さくしている。したがって、軸部19の大径部19aを上記内周円に圧入したとき、大径部19aが円弧部25aに当たって弾性片25が押し広げられ、各弾性片25が上記すき間26方向にたわむことになる。
【0049】
また、上記各弾性片25のうち上記円周方向における90度の間隔を保って位置する4つの弾性片25の根元には止め段部27を形成している。この止め段部27は、上記内周円に圧入された軸部19の位置決めをするもので、軸部19がこの止め段部27に当たってそれ以上押し込めない位置において、上記ストッパーピン16と止め穴23とが対応するようにしている。
【0050】
なお、この第2実施形態においても、上記連結部材Aに挿入穴部11が形成され、継ぎ手部材Bに軸部19が形成されているが、それらの構成は相対的であって、いずれか一方に挿入穴部11を形成し、いずれか他方に軸部19が形成されていればよい。この点も第1実施形態と同じである。
【0051】
次に、連結部材Aと継ぎ手部材Bとを連結する過程を説明する。
まず、連結部材Aの挿入穴部11に、継ぎ手部材Bの軸部19を挿入するが、このとき、大径部19aが各弾性片25に形成した円弧部25aに摺接して各弾性片25の上記内周円を拡径する。したがって、各弾性片25はすき間26の方向にたわみ、各弾性片25には軸部19に圧接する方向の弾性力が作用する。
【0052】
そして、軸部19が各弾性片25の止め段部27に当たった段階で、ストッパーピン16と止め穴23とがはまり合うことになる。なお、このように軸部19を挿入穴部11に挿入する過程では、ストッパーピン16を強制的に退避させておく。そして、ストッパーピン16と止め穴23とが一致した段階でレバー17を開放し、ストッパーピン16を止め穴23にはめる。
【0053】
上記のようにストッパーピン16が止め穴23にはまった状態では、軸部19に対して各弾性片25の弾性力が径方向に作用するととも軸方向にも作用することになる。したがって、これら弾性片25は第1実施形態のパッキン24と同一の作用効果を発揮する。ただし、弾性片25が本体8と一体に形成されているので、連結部材Aを耐溶剤性の材質で構成することによって、塗料に含まれる溶剤の影響でその弾性力が減衰されることはない。また、弾性片25は段差面13と一体なので、それらを別部材にした場合と異なり、組付け性が問題にならないし、それらを紛失することもない。
【0054】
さらに、複数の弾性片25の総合的な弾性力を軸部19に作用させられるので、個々の弾性片25の弾性力が多少ばらついても、全体的にはその弾性力を安定化させることができる。
なお、この第2実施形態においても上記穴側平坦面15及び軸側平坦面22が相まってこの発明の回り止め機構を構成する。
【産業上の利用可能性】
【0055】
塗装用ローラで天井面や床面を塗装するために長尺柄を連結して使用する場合に適している。
【符号の説明】
【0056】
R…塗装用ローラ、1…ハンドル、4…長尺柄、5…雌ネジ部、A…連結部材、11…挿入穴部、15…穴側平坦面、16…ストッパーピン、B…継ぎ手部材、19…軸部、20…雄ネジ部、22…軸側平坦面、23…止め穴、24…パッキン、25…弾性片、26…すき間