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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-19
(45)【発行日】2023-12-27
(54)【発明の名称】マッサージ用水中油型乳化化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/60 20060101AFI20231220BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20231220BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20231220BHJP
   A61K 8/06 20060101ALI20231220BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20231220BHJP
【FI】
A61K8/60
A61K8/73
A61K8/34
A61K8/06
A61Q19/00
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019207882
(22)【出願日】2019-11-18
(65)【公開番号】P2021080194
(43)【公開日】2021-05-27
【審査請求日】2022-09-14
(73)【特許権者】
【識別番号】592262543
【氏名又は名称】日本メナード化粧品株式会社
(72)【発明者】
【氏名】古賀 一成
【審査官】田中 雅之
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-085365(JP,A)
【文献】特開2019-019077(JP,A)
【文献】特開2019-014709(JP,A)
【文献】Naris Cosmetics, Japan,Skin Exercise Massaging Pack,Mintel GNPD [online],2010年09月,Internet <URL:https://portal.mintel.com>,ID#1477734, [検索日:2023.07.07], 表題部分及び成分
【文献】Nippon Menard Cosmetic, Japan,Eye Cream,Mintel GNPD [online],2018年11月,Internet <URL:https://portal.mintel.com>,ID#6080907, [検索日:2023.07.07], 全文, 全図
【文献】Albion, Japan,Repair Plump Eye Cream,Mintel GNPD [online],2017年10月,Internet <URL:https://portal.mintel.com>,ID#5191493, [検索日:2023.07.07], 全文, 全図
【文献】MDV Consumer Health Care, Japan,Emulsion,Mintel GNPD [online],2017年08月,Internet <URL:https://portal.mintel.com>,ID#4991623, [検索日:2023.07.07], 全文, 全図
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/KOSMET(STN)
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)炭素数が12~18の直鎖飽和脂肪酸から構成されるショ糖脂肪酸エステル 1~ 5重量%
(B)グリコシルトレハロース及び加水分解水添デンプン 0.9~11重量%、
(C)(B)を除く多価アルコール 5~30重量%、及び
(D)油剤 30~50重量%
を含有し、(A)以外に界面活性剤を含有しないマッサージ用水中油型乳化化粧料。
【請求項2】
(A)炭素数が12~18の直鎖飽和脂肪酸から構成されるショ糖脂肪酸エステルがステアリン酸スクロースである請求項1記載のマッサージ用水中油型乳化化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マッサージ用水中油型乳化化粧料に関し、詳しくは、使用時のベースの厚みとのびが良好であり、肌に適度な抵抗を継続して与えることができ、更に洗い流し性の良い化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
マッサージは、手掌や手指を使って皮膚を摩擦することによって、血液やリンパの循環を改善する効果があると期待される行為である。マッサージ用化粧料は、マッサージを行う際に皮膚上に塗布することで、適度な摩擦力を与えることができ、より効果が高く快適な使用感をもたらす化粧料である。
【0003】
従来、マッサージ用化粧料には、摩擦力を低下させる目的から液状のオイルや固形のバームのような油性成分を多量に配合したものが使用されている。しかしながら、このような油性のマッサージ用化粧料は、使用時や使用後にべたつきを感じたり、使用後に皮膚に油分が残留するという課題がある(特許文献1)。このような問題を解決する方法として、シリコーン等の軽い油を使うことも提案されているが、粘度が低く、皮膚から流れたり広がってしまう問題点がある(特許文献2)。また、みずみずしい感触が得られることから、水性のマッサージ用化粧料も見られる。これらのマッサージ用化粧料には、液状のものや、ゲル状のものがあるが、使用時の摩擦力の低減やベースの厚みが不十分という欠点がある(特許文献3)。加えて、多価アルコールを高配合したマッサージ用化粧料も存在する。これらのマッサージ用化粧料は多価アルコールの水和熱による温感効果で血行促進効果を高めることができるが、のびが重い、べたつく、乾燥する等の問題点があった(特許文献4)。
【0004】
一方で、クリームタイプのマッサージ用化粧料は、塗布しやすく、施術後に適度な保湿感を与えることができる。しかしながら、ベースに十分な厚みを持たせ、使用中の適度な摩擦力や保湿感を与えるために、油剤を多量に配合させると、のびが重すぎたり、使用後に皮膚上に残ってべたつきを感じる場合がある。また、塗布時はベースの厚みが十分であっても、使用中に厚みが減少し、適度な摩擦力を持続することができなくなる場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2005-82481
【文献】特開2001-261542
【文献】特開2001-122722
【文献】特開2010-37272
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、使用時のベースの厚みとのびが良好であり、肌に適度な抵抗を継続して与えることができ、更に洗い流し性の良いマッサージ用水中油型乳化化粧料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
即ち、本発明は、(A)炭素数が12~18の直鎖飽和脂肪酸から構成されるショ糖脂肪酸エステル1~5重量%、(B)グリコシルトレハロース及び加水分解水添デンプン0.9~11重量%、(C)(B)を除く多価アルコール5~30重量%、及び(D)油剤30~50重量%を含有し、(A)以外に界面活性剤を含有しないマッサージ用水中油型乳化化粧料を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明のマッサージ用水中油型乳化化粧料は、使用時のベースの厚みとのびが良好であり、肌に適度な抵抗を継続して与えることができ、更に洗い流し性の良いマッサージ用水中油型乳化化粧料である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の(A)炭素数が12~18の直鎖飽和脂肪酸から構成されるショ糖脂肪酸エステルとしては、例えば、ラウリン酸スクロース、ミリスチン酸スクロース、パルミチン酸スクロース、ステアリン酸スクロース等がある。これらの成分は、単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。のびのなめらかさの観点から、ステアリン酸スクロースが好ましい。
【0010】
(A)炭素数が12~18の直鎖飽和脂肪酸から構成されるショ糖脂肪酸エステルの含有量は、マッサージ用水中油型乳化化粧料に対して、好ましくは1~5重量%であり、更に好ましくは1.5~3重量%である。1重量%未満であると、経時安定性が不良になる場合がある。一方、5重量%を超えると、マッサージ用水中油型乳化化粧料が硬くなりのびが重くなる場合がある。
【0011】
本発明の(B)グリコシルトレハロースは、2つのグルコースがα1位同士で結合したα-D-グルコピラノシル-α-D-グルコピラノシド(α,α-トレハロース)を基本骨格とし、一方のグルコースの4位とα-グルコースの1位が結合したオリゴ糖であり、グルコースの重合度が2~6の三糖ないし七糖の化合物である。より具体的には、重合度2であるα-マルトシルα-グルコシド、重合度3であるα-マルトトリオシルα-グルコシド、重合度4であるα-マルトテトラオシルα-グルコシド、重合度5であるα-マルトペンタオシルα-グルコシド、及び重合度6であるα-マルトヘキサオシルα-グルコシドが挙げられる。
【0012】
(B)加水分解水添デンプンは、デンプンを工業的に酸あるいは酵素によって分解して、更に水素添加することによって得られるもので、デンプンの起源としては、特に限定されるものではないが、例えばジャガイモの塊茎、サツマイモの塊根、トウモロコシ、小麦の種子、キャッサバの根茎等が挙げられる。
【0013】
(B)グリコシルトレハロース及び加水分解水添デンプンの具体的な製品としては、株式会社林原生物化学研究所製の「トルナーレ」が挙げられる。
【0014】
(B)グリコシルトレハロース及び加水分解水添デンプンの含有量は、マッサージ用水中油型乳化化粧料に対して好ましくは0.9~11重量%であり、更に好ましくは2.5~9重量%である。0.9重量%未満の場合、十分なベースの厚み、適度な指滑りの持続、適度なのびの良さが得られない場合がある。一方、11重量%を超えると、ベースが厚くなりすぎ、のびが重くなる場合がある。
【0015】
本発明で用いる(C)(B)を除く多価アルコールは、炭素数3~6で水酸基が2個以上の水溶性のアルコール類を指し、具体的には1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブチレングリコール、1,2-ペンタンジオール、ジプロピレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、ソルビトール等が挙げられる。なかでものびの軽さやマッサージ時の厚みにおいて、グリセリン、ジグリセリンが好ましい。
【0016】
(C)(B)を除く多価アルコールの含有量は、マッサージ用水中油型乳化化粧料に対して好ましくは5~30重量%であり、更に好ましくは10~20重量%である。5重量%未満の場合、十分なベースの厚み、適度な指滑りの持続が得られない場合がある。一方、30重量%を超えると、ベースが厚くなりすぎ、のびが重くなる場合がある。
【0017】
本発明で用いる(D)油剤は、特に限定されず、炭化水素、油脂、ロウ、合成エステル、シリコーン、脂肪酸、高級アルコール等が該当する。例えば、スクワラン、ミネラルオイル、ワセリン、パラフィン、マイクロクリスタリンワックス、オリーブ油、アーモンド油、マカデミアナッツ油、メドウフォーム油、トリエチルヘキサノイン、ミツロウ、ラノリン、カルナウバロウ、キャンデリラロウ、ホホバ種子油、パルミチン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ジイソノナン酸ネオペンチルグリコール、エチルヘキサン酸セチル、イソノナン酸イソノニル、ジメチコン、フェニルトリメチコン、シクロメチコン、ステアリン酸、イソステアリン酸、ミリスチン酸、セタノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、セトステアリルアルコール、コレステロール等が挙げられる。
【0018】
(D)油剤の含有量は、マッサージ用水中油型乳化化粧料に対して好ましくは30~50重量%であり、更に好ましくは35~45重量%である。30重量%未満の場合、使用時のベースの厚みが不十分である場合がある。一方、50重量%を超えると、すすぎ時に油膜が残ったり、経時安定性が不良になる場合がある。
【0019】
本発明のマッサージ用水中油型乳化化粧料は、水中油型のクリーム状のマッサージ用化粧料である。また用途に関しては、使用部位の制限はなく、顔用、ボディ用のマッサージ用化粧料として使用することが可能であるが、使用性の観点から、顔用としての用途が好ましい。
【実施例
【0020】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明の技術的範囲がこれらに限定されるものではない。なお、含有量については、他に指定のない限り重量%で表す。
【0021】
表1~3に示すマッサージ用水中油型乳化化粧料を以下に示す方法により調製した。
(調製方法)
成分a部に、70~75℃に加温した成分b部を撹拌しながら少しずつ加えた後、80~85℃に加温した成分c部を加えて乳化し、その後成分d部を加え、30℃まで冷却し調製した。
【0022】
(評価方法)
20名の専門パネルにより、各マッサージ用水中油型乳化化粧料を使用し、「マッサージ時のベースの適度な厚み」、「マッサージ時の適度な指滑りの持続」、「マッサージ時の適度なのび」、「すすぎ後の油膜残りの無さ」について評価を行った。評価は「マッサージ時のベースの適度な厚み」、「マッサージ時の適度な指滑りの持続」、「マッサージ時の適度なのび」については「良い」、「悪い」の2段階、「すすぎ後の油膜残りの無さ」については「無い」、「有る」の2段階で行い、評価基準は以下の通りである。
[マッサージ時の適度なベースの厚みの評価]
◎:16名以上が、ベースの厚みが良いと評価した。
○:11~15名が、ベースの厚みが良いと評価した。
△:6~10名が、ベースの厚みが良いと評価した。
×:ベースの厚みが良いと評価した人が、5名以下。
[マッサージ時の適度な指滑りの持続の評価]
◎:16名以上が、指滑りが良いと評価した。
○:11~15名が、指滑りが良いと評価した。
△:6~10名が、指滑りが良いと評価した。
×:指滑りが良いと評価した人が、5名以下。
[マッサージ時の適度なのびの評価]
◎:16名以上が、のびが良いと評価した。
○:11~15名が、のびが良いと評価した。
△:6~10名が、のびが良いと評価した。
×:のびが良いと評価した人が、5名以下。
[すすぎ後の油膜残りの無さの評価]
◎:16名以上が、すすぎ後の油膜残りが無いと評価した。
○:11~15名が、すすぎ後の油膜残りが無いと評価した。
△:6~10名が、すすぎ後の油膜残りが無いと評価した。
×:すすぎ後の油膜残りが無いと評価した人が、5名以下。
【0023】
【表1】
※1 トルナーレ:株式会社林原生物化学研究所製
(グリコシルトレハロース:47%、加水分解水添デンプン:27%、精製水:26%)
【0024】
表1の結果より、各実施例に示した量のラウリン酸スクロース、パルミチン酸スクロース、ステアリン酸スクロースを含有した場合、評価した全ての項目において満足する結果が得られた。また、実施例2、4、5の結果より、同じ含有量の炭素数が12~18の直鎖飽和脂肪酸から構成されるショ糖脂肪酸エステルのなかでも、ステアリン酸スクロースを用いた場合に高い評価が得られた。一方、比較例1~3に示したように、炭素数が12~18の直鎖飽和脂肪酸から構成されるショ糖脂肪酸エステルの代わりにオレイン酸スクロース、ステアリン酸ポリグリセリル-10及びPEG-10フィトステロールを用いた場合、マッサージ時のベースの厚み、適度な指滑りの持続の項目について満足する結果が得られなかった。
【0025】
【表2】
【0026】
表2の結果より、各実施例に示した量の(B)グリコシルトレハロース及び加水分解水添デンプンと、(C)(B)を除く多価アルコールを含有した場合は、評価した全ての項目において満足する結果が得られた。一方、比較例4~7に示したように、所定の量を含有しない場合は、マッサージ時のベースの厚み、適度な指滑りの持続、適度なのびの項目で満足する結果が得られなかった。
【0027】
【表3】
【0028】
表3の結果より、各実施例に示した量の油剤を用いた場合、評価したすべての項目において満足する結果が得られた。一方で、比較例8、9に示すように、所定の量を含有しない場合は、マッサージ時のベースの厚み、すすぎ後の油膜残りの無さの項目について満足する結果が得られなかった。
【0029】
以下に、本発明に係るマッサージ用水中油型乳化化粧料の実施例を示す。
【0030】
(実施例20;マッサージクリーム)
(成分) (重量%)
1.グリセリン 5.0
2.ステアリン酸スクロース 3.0
3.精製水 2.0
4.ミネラルオイル 20.0
5.マカデミアナッツ油 5.0
6.ワセリン 5.0
7.ベヘニルアルコール 0.5
8.セタノール 0.3
9.精製水 残 余
10.エデト酸二ナトリウム二水塩 0.1
11.カルボマー 0.1
12.キサンタンガム 0.1
13.グリコシルトレハロース ※1 0.94
14.加水分解水添デンプン ※1 0.54
15.精製水 ※1 0.52
16.ジプロピレングリコール 7.0
17.BG 5.0
18.メチルパラベン 0.2
19.精製水 1.0
20.アルギニン 0.1
21.植物抽出エキス 適 量
22.香料 適 量
(調製方法)
成分1~3の混合物に、70~75℃で加温した成分4~8の混合物を撹拌しながら加えた後、80~85℃で加温した成分9~18を撹拌しながら加え乳化する。その後、成分19、20の混合物を成分1~18に加えた後、成分21、22を加え、30℃まで冷却する。
【0031】
(実施例21;マッサージクリーム)
(成分) (重量%)
1.グリセリン 5.0
2.ステアリン酸スクロース 1.0
3.ラウリン酸スクロース 0.5
4.精製水 2.0
5.ミネラルオイル 20.0
6.オリーブ油 5.0
7.ミリスチン酸オクチルドデシル 5.0
8.マイクロクリスタリンワックス 5.0
9.ベヘニルアルコール 0.5
10.セタノール 0.3
11.精製水 残 余
12.エデト酸二ナトリウム二水塩 0.1
13.カルボマー 0.4
14.グリコシルトレハロース ※1 3.76
15.加水分解水添デンプン ※1 2.16
16.精製水 ※1 2.08
17.ジグリセリン 10.0
18.BG 5.0
19.メチルパラベン 0.2
20.精製水 1.0
21.AMPD 0.2
22.植物抽出エキス 適 量
23.香料 適 量
(調製方法)
成分1~4の混合物に、70~75℃で加温した成分5~10の混合物を撹拌しながら加えた後、80~85℃で加温した成分11~19を撹拌しながら加え乳化する。その後、成分20、21の混合物を成分1~19に加えた後、成分22、23を加え、30℃まで冷却する。
【0032】
実施例20、21について、前記の評価方法と同様に評価を行った結果、マッサージ時のベースの厚み、マッサージ時の適度な指滑りの持続、マッサージ時の適度なのび、すすぎ後の油膜残りの無さに優れたマッサージ用水中油型乳化化粧料を得た。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明によればマッサージ用水中油型乳化化粧料に関し、詳しくは、使用時のベースの厚みとのびが良好であり、肌に適度な抵抗を継続して与えることができ、更に洗い流し性の良いマッサージ用水中油型乳化化粧料を提供できる。