(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-19
(45)【発行日】2023-12-27
(54)【発明の名称】3D印刷方法および3D印刷装置
(51)【国際特許分類】
B22F 3/16 20060101AFI20231220BHJP
B29C 64/153 20170101ALI20231220BHJP
B29C 64/268 20170101ALI20231220BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20231220BHJP
B29C 64/321 20170101ALI20231220BHJP
B22F 3/105 20060101ALI20231220BHJP
B22F 12/53 20210101ALI20231220BHJP
B22F 12/55 20210101ALI20231220BHJP
【FI】
B22F3/16
B29C64/153
B29C64/268
B33Y30/00
B29C64/321
B22F3/105
B22F12/53
B22F12/55
(21)【出願番号】P 2019567704
(86)(22)【出願日】2018-06-06
(86)【国際出願番号】 AU2018000090
(87)【国際公開番号】W WO2018223175
(87)【国際公開日】2018-12-13
【審査請求日】2021-05-27
(32)【優先日】2017-06-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】517448973
【氏名又は名称】オーロラ ラブス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110003063
【氏名又は名称】弁理士法人牛木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クック,マルコム ピーター
【審査官】萩原 周治
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/048865(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/205855(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0318251(US,A1)
【文献】国際公開第2017/048919(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0202826(US,A1)
【文献】特開2017-036506(JP,A)
【文献】特開2017-087636(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0124553(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0224718(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 1/00-12/90
B29C 64/00-64/40
B33Y 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動面と、
少なくとも1つのコントロールアームに旋回可能に取り付けられたフレームを備えている印刷ヘッドであって、前記フレームと前記コントロールアームとの間の取付箇所で配置された軸を中心に、前記フレームが回転可能である印刷ヘッドと、
複数の位置で前記フレームに沿って接続された複数の粉体分注機であって、前記印刷ヘッドが前記作動面に対して
実質的に平行に移動するときに、前記作動面上に粉体の複数の層を同時に堆積させるように構成された粉体分注機と、
前記フレームの上方に配設され、
少なくとも2つのエネルギービームを、前記フレームを通過させて粉体の複数の層の
露出面の上
に同時に放射するエネルギー源と、
前記フレームを回転させる手段と、
それぞれの前記エネルギービームが順次堆積される前記粉体のそれぞれの層に選択的に照射されるように、前記エネルギー源の向きを調整する手段と、
を備え、
前記粉体の複数の層が千鳥状に堆積され、前記複数の層におけるそれぞれの層の形成が、そのすぐ下層の前記粉体の層の後に開始され、それぞれの層の最上面が少なくとも部分的に露出されており、これらの層の同時塗布中に、当該それぞれの層の最上面が上に重なる粉体の層で覆われていないようにしており、
前記印刷ヘッドが一方向に移動し、前記粉体分注機が前記粉体の複数の層を堆積させているとき、前記フレームが斜めに傾斜するように構成され、
前記印刷ヘッドが前記一方向と反対方向に移動し、前記粉体分注機が前記粉体の複数の層を堆積させているとき、前記フレームが前記斜めの角度と反対の角度で傾斜するように構成され、
前記フレームが傾斜する前記角度は、それぞれの粉体分注機からそれぞれ対応している粉末床までの距離が実質的に等しくなるような角度であることを特徴とする3次元物体印刷用の印刷装置。
【請求項2】
前記エネルギービームが前記複数の層における他の層に適用される前に、それぞれの前記エネルギービームが十分な期間それぞれの粉体の層に照射され、前記粉体が加熱されることにより、またはエネルギーを与えられることにより、溶融または焼結させるようにしていることを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記エネルギービームが前記複数の層における他の層に適用される前に、それぞれの前記エネルギービームが十分な期間それぞれの粉体の層に照射され、前記粉体が部分的にのみ、加熱され、またはエネルギーを与えられるようにし、それぞれの面の温度またはエネルギーを、前記粉体が溶融または焼結する点に達するまで徐々に増加させることを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記印刷装置が、エネルギービームを2つ以上の別個のエネルギービームに分割および変換するためのエネルギービーム分割手段を備えることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記印刷装置が、それぞれ別個のエネルギービームを堆積されている粉体の異なる層に向けるように構成された制御機構を備えることを特徴とする請求項4に記載の印刷装置。
【請求項6】
前記エネルギービーム分割手段がビームスプリッターであることを特徴とする請求項4又は5に記載の印刷装置。
【請求項7】
前記複数の粉体分注機同士がお互いに等間隔に配置されることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の印刷装置。
【請求項8】
それぞれのエネルギービームが、レーザービーム、コリメート光ビーム、マイクロプラズマ溶接光、電子ビームおよび粒子加速器で構成されるグループから選択されることを特徴とする請求項
1~7のいずれか1項に記載の印刷装置。
【請求項9】
複数の前記粉体分注機は、複数の位置で前記フレームに沿って支持さ
れ、前記フレームが前記作動面に対して移動するときに、粉体の複数の層のセットを前記作動面に同時に堆積させ、後続の粉体の複数の層のセットを前記粉体の複数の層のセットの上に堆積させるように構成され、
前記粉体の複数の層のセットおよび前記後続の粉体の複数の層のセットにおけるそれぞれの層数が前記粉体分注機の数と等しいことを特徴とする
請求項1~8のいずれか1項に記載の印刷装置。
【請求項10】
前記フレームは、前記作動面に対していずれかの方向に移動するときに、前記粉体の複数の層のセットを堆積させることを特徴とする請求項
9に記載の印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3D印刷方法および3D印刷装置に関する。
【0002】
より具体的には、本発明は、物体の高速での製造用の3D印刷方法および3D印刷装置に関する。
【背景技術】
【0003】
3次元(3D)で印刷された部品により物理的な物体ができ、当該物理的な物体は、連続している薄い材料層を敷設することにより、3Dデジタル画像から作り上げられる。
【0004】
通常、例えば選択的レーザー溶融や選択的レーザー焼結などの様々な手段により、これらの3D印刷された部品を作成でき、当該様々な手段は、粉末床を有することにより、当該粉末床上にエネルギービームが投射され、この粉末床の最上層を溶融させて、基板や下層に溶接できるように行なっている。この溶融過程を繰り返して当該下層に追加の層を追加し、完全に作り上げられるまで、上述の部品を徐々に増大させている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これらの印刷方法は、実行するために非常に時間がかかり、妥当な大きさの物体を作り上げるために数日または数週間かかる虞がある。複雑な構成部品を備えている複合物体に対しては、この問題がひどくなる。このことは、3Dプリンタの有用性を実質的に低下させており、現在、消費者による3D印刷や製造業における3D印刷の大規模採用を遅らせている極めて重要な障害の1つである。
【0006】
本願発明は、従来の3D印刷方法および3D印刷装置の前述の欠点を、少なくとも部分的に克服しようと試みている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の態様の1つによれば、3次元物体印刷用の印刷装置を提供し、当該印刷装置は、
作動面と、
少なくとも1つのコントロールアームに旋回可能に取り付けられたフレームを備えている印刷ヘッドであって、前記フレームと前記コントロールアームとの間の取付箇所で配置された軸を中心に、前記フレームが回転可能である印刷ヘッドと、
複数の位置で前記フレームに沿って接続された複数の粉体分注機であって、前記印刷ヘッドが前記作動面に対して移動するときに、前記作動面上に粉体の複数の層を同時に堆積させるように構成された粉体分注機と、
少なくとも1つの粉体の層の上に、少なくとも1つのエネルギービームを放射するエネルギー源と、を備えている。
【0008】
前記エネルギー源は、使用中に、エネルギービームを粉体の2つ以上の層に同時に放射してもよい。
【0009】
あるいは複数のエネルギー源が使用され、それぞれのエネルギー源から少なくとも1つのエネルギービームを放射してもよい。
【0010】
前記エネルギー源は、使用中に、エネルギービームを個々の粉体の層に順番に放射してもよい。
【0011】
前記印刷装置は、エネルギービームを2つ以上の個々のエネルギービームに分割および変換するためのエネルギービーム分割手段を備えてもよい。
【0012】
本願発明の他の態様によれば、3次元物体印刷用の印刷装置を提供し、当該印刷装置は、
作動面と、
フレームを備えている印刷ヘッドであって、前記作動面および前記フレームがお互いに対して回転可能である印刷ヘッドと、
複数の位置で前記フレームに沿って接続された複数の粉体分注機であって、前記印刷ヘッドが前記作動面に対して移動するときに、前記作動面上に粉体の複数の層を同時に堆積させるように構成された粉体分注機と、
少なくとも1つの粉体の層の上に、少なくとも1つのエネルギービームを放射するエネルギー源と、を備えている。
【図面の簡単な説明】
【0013】
以下、添付図面を参照して、本願発明の実施例を説明する:
【
図1】本発明の一実施形態による3D印刷装置の側面図である。
【
図2】
図1の3D印刷装置のさらなる側面図である。
【
図4】本発明のさらなる実施形態による3D印刷装置の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1から
図3を参照すると、本発明の一実施形態による三次元物体印刷用の印刷装置10が示されている。この印刷装置10は、作動面12と、少なくとも1つのコントロールアーム18に旋回可能に取り付けられたフレーム16と、を備えており、フレーム16とコントロールアーム18との間の取付箇所で配置された軸20の周りを、当該フレーム16が回転可能である。
【0015】
印刷装置10は、複数の位置でフレーム16に沿って接続された複数の粉体分注機22をさらに備えており、これらの粉体分注機22は、前記印刷ヘッド14が作動面12に対して移動するときに、作動面12上に粉体24の複数の層を同時に堆積させるように構成されている。印刷装置10は、少なくとも1つの粉体24の層の上に少なくとも1つのエネルギービーム28を放射するエネルギー源26をさらに備えている。
【0016】
より具体的には、合計で3つの粉体分注機22がフレーム16に接続されている。それぞれの粉体分注機22が、フレーム16に固定されたノズルを備えており、当該ノズルは、1つ以上の供給管(図示せず)を用いて、例えば金属粉体などの粉体の供給源に接続されている。
【0017】
粉体分注機22は、これらの粉体分注機22同士がお互いに等間隔に配置されるように、フレーム16に均一に取り付けられている。フレーム16は、一対のコントロールアーム18に旋回可能に取り付けられており、使用中に、当該フレーム16が軸20を中心に作動面12に対して斜めに傾斜するように構成されている。
【0018】
使用中、3つの粉体分注機22は、作動面12上に3層の粉体24を同時に堆積させており、それぞれの層24が実質的に同一の厚さを有している。これらの粉体24の層が千鳥状に(in a staggered manner)堆積され、これらの複数の層24における個々の層24のそれぞれの形成が、そのすぐ下層の個々の粉体の層24の少し後に開始されるようにしている。このことにより、それぞれの層24の最上面が少なくとも部分的に露出されており、これらの層24の同時塗布中に、当該それぞれの層24の最上面が上に重なる粉体24の層で覆われていない、ということが確保される。
【0019】
エネルギービーム28が、レーザービーム、コリメート光ビーム、マイクロプラズマ溶接光、電子ビームおよび粒子加速器のいずれか1つであってもよい。このエネルギービーム28が、当該エネルギービーム28を適切に集束するように構成された集束手段(図示せず)を有し、少なくとも10ワット/mm3のエネルギー密度を生成できるようにすることが好ましい。
【0020】
エネルギービーム28がレーザービームである場合、このレーザービームが、作動面12上に、0.5mm2未満のスポットサイズに集束されてもよい。同様にエネルギービーム28がコリメート光ビームである場合、このコリメート光ビームが、作動面12上に、1mm2未満のスポットサイズに集束されてもよい。
【0021】
さらに、エネルギービーム28がマイクロプラズマ溶接光である場合、このマイクロプラズマ溶接光アークが、作動面12上に、1mm2未満のスポットサイズに集束されてもよい。このようなマイクロプラズマ溶接光は通常、略20,000℃の温度で略0.2mm2のスポットサイズを備えたプラズマガスの集束ビームを生成することができる。
【0022】
使用中に印刷ヘッド14は、作動面12に実質的に平行な横方向に往復して移動する一方で、粉体を堆積させている。例えば
図1において、印刷ヘッド14が印刷装置10の左側から右側に移動するように示されており、フレーム16が作動面12に対して時計回りの角度で傾斜している。この構成において、印刷ヘッド14が粉体の最初の3つの層を堆積していることが示されている。
【0023】
図2において、粉体の最初の3層が完全に堆積され、かつ、エネルギービーム28により完全に処理されており、印刷ヘッド14が印刷装置10の右側から左側へ移動するように示されている一方で、フレーム16が作動面12に対して反時計回りの角度で傾斜している。この構成において印刷ヘッド14が、最初の3つの層の上に、さらに粉体の3つの層を堆積するように示されている。
【0024】
粉体24の層が堆積されている一方で、エネルギービーム28がエネルギー源26から放射され、粉体24のそれぞれの層の露出した最上面に向けられて、粉体を選択的に溶融または焼結し、それにより、3D物体の一部を形成している。この過程が追加の通路のために繰り返され、追加の層を加えて、完成するまで当該3D物体を徐々に作り上げている。
【0025】
図1に表現されるように、エネルギー源26が、ラスターとして作動するように構成されてもよく、粉体24の複数の層が同時に堆積されている一方で、エネルギービーム28が順次的な方法で、複数の層24の最上部の露出面のそれぞれに選択的に向けられるように、エネルギー源28の向きが調整されるようにしている。
【0026】
例えばエネルギービーム28が、最初に、粉体24の複数の層の最下層の最上面に向けられてもよい。この最下層の最上面がエネルギービーム28により十分に処理された後、その次に、第2のエネルギービーム28が粉体24の複数の層の次の隣接層の最上面に向けられるように、エネルギー源26の向きが調整される。このことが、次の通路が実施される前に、必要に応じて、全ての粉体の複数の堆積層が十分に処理されるまで続けられる。
【0027】
エネルギー源26がラスターとして作動する実施形態において、エネルギービーム28が、必要に応じて十分な期間それぞれの粉体の層のそれぞれの露出面に照射されて、このエネルギー源26が複数の層における次の層のために方向転換される前に、当該粉体が加熱されることにより、またはエネルギーを与えられることにより、溶融または焼結させるようにしてもよい。
【0028】
あるいは、エネルギー源26が当該次の層のために方向転換される前に、このエネルギービーム28が、より短い期間、粉体のそれぞれの露出面に照射されて、当該粉体が部分的にのみ、加熱され、またはエネルギーを与えられるようにしてもよい。この方法において、これらの複数の層24に亘って、エネルギー源26を速やかに繰り返し循環させ、それぞれの繰り返し毎に、追加のエネルギーがそれぞれの露出面に放射されるようにしている。このことにより、処理されるそれぞれの露出面の温度またはエネルギーを、当該粉体が溶融または焼結する点に達するまで徐々に増加させている。
【0029】
図1から
図3に示される実施形態において、粉体24の3つの層を作動面12に同時に堆積させるために、3つの粉体分注機22が印刷ヘッド14に取り付けられている。このことにより、従来技術の印刷装置や印刷方法と比較して、印刷生産性の水準が3倍に向上している。
【0030】
しかしながら、別の個数の粉体分注機22(例えば、10個の粉体分注機22)が使用されてもよいことは理解されよう。より一般的には、N個の粉体分注機22(ここでN>2)を使用し、N層の粉体を同時に堆積させて、印刷の生産性においてN倍の増加をもたらしてもよい。
【0031】
図4を参照すると、印刷装置10のさらに別の実施形態が示されている。この印刷装置10は、当該印刷装置10がエネルギービーム分割手段30をさらに備えることを除いて、全ての材料に関して
図1から
図3に示されるものと同一である。
【0032】
エネルギービーム分割手段30は、エネルギー源26から放射された単一のエネルギービーム28を複数の別個の指向性エネルギービームに分割するように構成されている。エネルギービーム分割手段30は、制御機構(図示せず)と連動して作動しており、使用中、エネルギービーム分割手段30から放射されたそれぞれの指向性エネルギービームが、堆積されている粉体24の異なる層に同時に向けられる、ということを当該エネルギービーム分割手段30が提供している。
【0033】
エネルギービーム分割手段30がビームスプリッターであってもよい。
【0034】
エネルギービーム分割手段30が振動磁場であってもよい。
【0035】
当業者には明らかであるような変更や変形は、本願発明の範囲におけるものと見なされる。
【0036】
本発明の前述の記載において、言語表現や必要な示唆のために、文脈が他に必要とする場合を除き、用語“comprise”や、例えば“comprises”や“comprising”などの変形は包括的な意味で使用され、すなわち、記載された特徴の存在を特定しているが、本発明の様々な実施形態において、さらなる特徴の存在や追加を除外するものではない。