(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-19
(45)【発行日】2023-12-27
(54)【発明の名称】計量装置
(51)【国際特許分類】
G01G 11/16 20060101AFI20231220BHJP
G01G 11/00 20060101ALI20231220BHJP
【FI】
G01G11/16
G01G11/00 N
(21)【出願番号】P 2020013897
(22)【出願日】2020-01-30
【審査請求日】2022-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000147833
【氏名又は名称】株式会社イシダ
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【氏名又は名称】柴山 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100186761
【氏名又は名称】上村 勇太
(72)【発明者】
【氏名】山川 敦史
(72)【発明者】
【氏名】須田 昇嗣
【審査官】岡田 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】特開平9-26352(JP,A)
【文献】特開平10-82688(JP,A)
【文献】米国特許第4463816(US,A)
【文献】特開2002-107207(JP,A)
【文献】特開平8-86685(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01G 1/00-23/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品が搬送される搬送部と、
前記搬送部の上流側に位置し、前記物品の重量を計量する第1計量部と、
前記搬送部の下流側に位置し、前記物品の重量を計量する第2計量部と、
前記第1計量部及び前記第2計量部のそれぞれから出力される信号を受信し、前記物品の重量に対応する計算信号を出力する制御部と、
を備え、
前記第1計量部は、前記物品の計量結果を示す第1アナログ原信号を出力する第1計量セルと、前記第1アナログ原信号を第1デジタル原信号に変換する第1A/D変換部とを有し、
前記第2計量部は、前記物品の計量結果を示す第2アナログ原信号を出力する第2計量セルと、前記第2アナログ原信号を第2デジタル原信号に変換する第2A/D変換部とを有し、
前記制御部は、前記第1計量部から受信する前記第1デジタル原信号と、前記第2計量部から受信する前記第2デジタル原信号との合算信号にフィルタリング処理を実施するフィルタ部を有
し、
前記第1A/D変換部は、前記第1デジタル原信号に対してプレフィルタリング処理を実施し、
前記第2A/D変換部は、前記第2デジタル原信号に対してプレフィルタリング処理を実施し、
前記フィルタ部は、前記プレフィルタリング処理が実施された前記第1デジタル原信号及び前記第2デジタル原信号との前記合算信号に前記フィルタリング処理を実施し、
前記プレフィルタリング処理の処理量は、前記フィルタリング処理の処理量よりも小さい、
計量装置。
【請求項2】
前記制御部は、同時刻に受信した前記第1デジタル原信号と前記第2デジタル原信号とを合算し、前記合算信号を生成する、請求項1に記載の計量装置。
【請求項3】
前記第1A/D変換部は、前記フィルタリング処理よりも高周波帯の信号に対して前記プレフィルタリング処理を実施する、請求項
1または2に記載の計量装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計量装置に関する。
【背景技術】
【0002】
計量装置の一例として、搬送コンベアによって搬入される物品(計量対象物)の重量を計量する装置が挙げられる。下記特許文献1には、計量した物品の重量に対応する原信号を出力する計量部と、当該計量部から出力された原信号にフィルタリング処理を行うフィルタ部とを備える計量装置が開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、計量される物品が長尺物等である場合、当該物品が搬送される搬送部の上流側と下流側とのそれぞれに計量部が装着されることがある。この場合、物品の重量が決定方法としては、以下の具体例が挙げられる。まず、各計量部にて物品が計量されて得られるアナログ原信号に対してアナログ-デジタル変換処理及びフィルタリング処理を実施したデジタル信号を生成する。続いて、各デジタル信号のタイミングを同期化する。そして、フィルタリング処理及び同期化を実施した各デジタル信号を受信した駆動回路は、当該各デジタル信号を合算することによって、物品の重量の計量結果を導出するための計算信号を出力する。
【0005】
上述した具体例においては、通常、各計量部にて多段階のフィルタリング処理が実施されるので、各デジタル信号のタイミングが互いに大きくずれてしまう。このため上述したように、各デジタル信号を同期化してから合算する必要がある。この場合、計算信号を得るまでの処理が複雑になるので、物品の計量時間が長くなる傾向にある。加えて、各計量部のデジタル信号を同期化する部材を計量装置に設けるため、計量装置の構成が複雑化する傾向にある。
【0006】
本発明の一側面の目的は、物品の重量計量時間の短縮化、並びに構成の簡略化が可能な計量装置の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面に係る計量装置は、物品が搬送される搬送部と、搬送部の上流側に位置し、物品の重量を計量する第1計量部と、搬送部の下流側に位置し、物品の重量を計量する第2計量部と、第1計量部及び第2計量部のそれぞれから出力される信号を受信し、物品の重量に対応する計算信号を出力する制御部と、を備え、第1計量部は、物品の計量結果を示す第1アナログ原信号を出力する第1計量セルと、第1アナログ原信号を第1デジタル原信号に変換する第1A/D変換部とを有し、第2計量部は、物品の計量結果を示す第2アナログ原信号を出力する第2計量セルと、第2アナログ原信号を第2デジタル原信号に変換する第2A/D変換部とを有し、制御部は、第1計量部から受信する第1デジタル原信号と、第2計量部から受信する第2デジタル原信号との合算信号にフィルタリング処理を実施するフィルタ部を有する。
【0008】
この計量装置によれば、第1計量部と第2計量部とのそれぞれは、得られたアナログ原信号に対して最低限のデジタル信号処理を実施する。これにより、第1計量部から出力される第1デジタル原信号と、第2計量部から出力される第2デジタル原信号とのタイミングのずれを最小限に抑えられる。そして、制御部は、第1計量部から受信する第1デジタル原信号と、第2計量部から受信する第2デジタル原信号とを合算した合算信号にフィルタリング処理を実施する。この場合、第1デジタル原信号と第2デジタル原信号とを同期化することなく、上記合算信号を生成できる。これにより、各信号の同期化に要する時間を省略できるので、物品の重量計量時間を短縮化できる。加えて、各デジタル原信号を同期化するための部材を省略できるので、計量装置の構成も簡略化できる。
【0009】
制御部は、同時刻に受信した第1デジタル原信号と第2デジタル原信号とを合算し、合算信号を生成してもよい。この場合、第1デジタル原信号と第2デジタル原信号とのタイミングを同期することなく、合算信号を生成できる。
【0010】
第1A/D変換部は、第1デジタル原信号に対してプレフィルタリング処理を実施し、第2A/D変換部は、第2デジタル原信号に対してプレフィルタリング処理を実施し、フィルタ部は、プレフィルタリング処理が実施された第1デジタル原信号及び第2デジタル原信号との合算信号にフィルタリング処理を実施してもよい。この場合、第1デジタル原信号と第2デジタル原信号とのタイミングを保ちつつ、各デジタル原信号の情報量を低減できる。したがって、各デジタル原信号を受信する制御部の負担を抑制できる。
【0011】
第1A/D変換部は、フィルタリング処理よりも高周波帯の信号に対してプレフィルタリング処理を実施してもよい。この場合、第1デジタル原信号と第2デジタル原信号とのタイミングを良好に保ちつつ、各デジタル原信号の情報量を低減できる。
【0012】
プレフィルタリング処理の処理量は、フィルタリング処理の処理量よりも小さくてもよい。この場合、第1デジタル原信号と第2デジタル原信号とのタイミングを良好に保ちつつ、各デジタル原信号の情報量を低減できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一側面によれば、物品の重量計量時間の短縮化、並びに構成の簡略化が可能な計量装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、実施形態に係る計量装置の概略構成図である。
【
図2】
図2は、第1計量部、第2計量部及び操作部の機能的な構成を示す図である。
【
図3】
図3は、第2変形例に係る計量装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一側面に係る実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0016】
図1は、本実施形態に係る計量装置を模式的に示す図である。
図1に示される計量装置1は、
図1中の矢印の方向(以下、単に「搬送方向」とする)に測定対象物を搬送しながら計量する装置である。計量装置1は、例えば、生産ラインの最終ラインに配置される装置である。測定対象物は、例えば搬送方向に沿って延在する長尺形状を呈する物品Pである。計量装置1は、搬送部2と、架台3と、第1計量部4と、第2計量部5と、操作部6とを備える。
【0017】
搬送部2は、物品Pを搬送方向に沿って搬送するコンベアであり、第1コンベア部2aと、第2コンベア部2bと、第3コンベア部2cとを備える。第1コンベア部2aと、第2コンベア部2bと、第3コンベア部2cとのそれぞれは、例えば、ローラ、モータ等の回転体、及び搬送ベルトなどを有する。第1コンベア部2a、第2コンベア部2b及び第3コンベア部2cは、搬送方向の上流側から順番に配置される。すなわち、第2コンベア部2bは、搬送方向において第1コンベア部2aと第3コンベア部2cとの間に位置する。第1コンベア部2aは、第2コンベア部2bに物品Pを搬入するコンベアである。第1コンベア部2aは、例えば、図示しない金属検出機等を有してもよい。第2コンベア部2bは、第1コンベア部2aから搬送された物品Pを第3コンベア部2cに搬入するコンベアである。第3コンベア部2cは、第2コンベア部2bから物品Pを搬出するコンベアである。第3コンベア部2cは、例えば、重量が適正範囲から逸脱している物品Pを振り分ける振分機(図示しない)を有する。
【0018】
第2コンベア部2bには、第1計量部4及び第2計量部5が装着されている。このため、搬送部2にて搬送される物品Pは、第2コンベア部2b上にて計量される。また、第2コンベア部2bの上流側及び下流側のそれぞれには、物品Pの有無を検知するセンサが設けられてもよい。この場合、物品Pの全体が第2コンベア部2b上に位置しているか否かを容易に判断できる。
【0019】
架台3は、第1計量部4及び第2計量部5を収容する部材であり、搬送部2の下方にて床Fに固定される。架台3は、第1計量部4及び第2計量部5を収容する本体3a、及び本体3aと床Fとの間に位置する複数の脚3bを有する。
図1においては、本体3aは破線にて示される。
【0020】
第1計量部4は、第2コンベア部2b上に位置する物品Pの重量を計量する部材であり、搬送部2の上流側に位置する。第1計量部4は、負荷に応じた圧縮及び引張を受ける起歪体11と、第2コンベア部2b上に位置する物品Pを計量する計量セル12(第1計量セル)とを備える。起歪体11は、第2コンベア部2bを支持する可動剛体部11aと、架台3に固定される固定剛体部11bとを有する。可動剛体部11aと固定剛体部11bとのそれぞれは、例えば鉛直方向に延在する部材である。可動剛体部11aの一端は第2コンベア部2bの上流側端部に接続され、可動剛体部11aの他端は計量セル12に接続される。固定剛体部11bの一端は計量セル12に接続され、固定剛体部11bの他端は架台3の本体3aに接続される。図示しないが、計量セル12では、起歪体11に貼着された複数のストレインゲージがホイートストンブリッジ回路に接続される。
【0021】
第2計量部5は、第2コンベア部2b上に位置する物品Pの重量を計量する部材であり、搬送部2の下流側に位置する。第2計量部5は、負荷に応じた圧縮及び引張を受ける起歪体21と、第2コンベア部2b上に位置する物品Pを計量する計量セル22(第2計量セル)とを備える。起歪体21は、第2コンベア部2bを支持する可動剛体部21aと、架台3に固定される固定剛体部21bとを有する。可動剛体部21aと固定剛体部21bとのそれぞれは、例えば鉛直方向に延在する部材である。可動剛体部21aの一端は第2コンベア部2bの下流側端部に接続され、可動剛体部21aの他端は計量セル22に接続される。固定剛体部21bの一端は計量セル22に接続され、固定剛体部21bの他端は架台3の本体3aに接続される。計量セル22では、計量セル12と同様に、起歪体21に貼着された複数のストレインゲージがホイートストンブリッジ回路に接続される(図示しない)。
【0022】
操作部6は、搬送部2、第1計量部4及び第2計量部5を操作する部材であり、例えば第2コンベア部2bの近傍に立設される。操作部6は、制御部7と、表示インターフェース8とを有する。
【0023】
制御部7は、計量装置1に含まれる各部材を制御するコントローラであり、操作部6に内蔵される。制御部7は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random AccessMemory)及びROM(Read Only Memory)等によって構成される。制御部7は、例えば、搬送部2の搬送速度等を制御する動作信号を、搬送部2へ出力する。また、例えば、第3コンベア部2cに振分機が設けられている場合であって、制御部7が物品Pの重量が予め設定された適正範囲から逸脱していると判断した場合、制御部7は、当該物品Pを振り分ける(ラインから除外する)ように、振分機に動作信号を出力する。制御部7は、計量装置1に含まれる各部材の制御だけでなく、各種信号の受信/演算/送信、及び各種信号の記録/読み出し等も実施する。制御部7による各種信号の演算の例として、物品Pの計量結果の導出が挙げられる。このため、制御部7は、例えば、搬送部2の制御信号を出力するための駆動回路、第1計量部4及び第2計量部5にて生成される信号から物品Pの重量に対応する計算信号を演算するための駆動回路、当該計算信号に基づいて物品Pの重量を演算するための駆動回路、各信号等を記憶する記憶回路等を有する。
【0024】
表示インターフェース8は、制御部7から出力される表示情報に基づく画像を表示する部材である。表示インターフェース8は、例えば、制御部7にて算出された物品Pの重量を示す重量情報を表示インターフェース8に出力する。本実施形態では、表示インターフェース8は、タッチパネルを有する。これにより、表示インターフェース8が作業者(ユーザ)からの入力を受け付けると、入力内容を示す入力情報は、制御部7に出力される。
【0025】
次に、第1計量部4と、第2計量部5と、制御部7に含まれる一部の駆動回路との機能的な構成と、計量装置1の計量方法とについて、
図2を参照しながら説明する。
図2は、第1計量部、第2計量部及び操作部の機能的な構成を示す図である。
【0026】
図2に示されるように、第1計量部4は、計量セル12と、A/D変換部13(第1A/D変換部)とを有する。計量セル12は、起歪体11から伝達される負荷に応じた電気信号を上記ホイートストンブリッジ回路から取り出す。加えて、計量セル12は、当該電気信号を原信号として出力する。当該原信号は、計量セル12による物品Pの計量結果を示す第1アナログ原信号であり、例えば、物品Pの全体が第2コンベア部2b上に位置しているときに得られる。第1アナログ原信号は、A/D変換部13によって第1デジタル原信号に変換される。
【0027】
第2計量部5は、第1計量部4と同様に、計量セル22と、A/D変換部23(第2A/D変換部)とを有する。計量セル22は、起歪体21から伝達される負荷に応じた電気信号を上記ホイートストンブリッジ回路から取り出す。加えて、計量セル22は、当該電気信号を原信号として出力する。当該原信号は、計量セル22による物品Pの計量結果を示す第2アナログ原信号であり、例えば、物品Pの全体が第2コンベア部2b上に位置しているときに得られる。第2アナログ原信号は、A/D変換部23によって第2デジタル原信号に変換される。
【0028】
操作部6に含まれる駆動回路31は、
図1に示される制御部7の一部であり、デジタル原信号取得部32と、デジタル原信号合算部33と、フィルタ部34とを有する。デジタル原信号取得部32は、第1計量部4から出力される第1デジタル原信号と、第2計量部5から出力される第2デジタル原信号とを受信する。デジタル原信号合算部33は、第1デジタル原信号と第2デジタル原信号とを合算して、合算信号を生成する。第1デジタル原信号と、第2デジタル原信号とのそれぞれに対しては、フィルタリング処理が実施されていない。このため、フィルタリング処理に伴うデータの間引きにて発生するデータ間隔の広がり(すなわち、各信号のタイミングのずれの拡大)が発生しない傾向にある。よって、デジタル原信号合算部33は、第1デジタル原信号と、第2デジタル原信号とのタイミングを同期することなく、これらを合算して合算信号を生成できる。なお、第1デジタル原信号と第2デジタル原信号とのタイミングは、完全に一致しなくともよい。第1デジタル原信号と第2デジタル原信号とのタイミングが所定範囲内であれば、デジタル原信号合算部33が第1デジタル原信号と第2デジタル原信号を受信した順に合算してもよい。この場合、第1デジタル原信号と第2デジタル原信号とのタイミングを同期することなく、合算信号を生成できる。
【0029】
フィルタ部34は、デジタル原信号合算部33にて生成される合算信号にフィルタリング処理を行う。フィルタ部34は、フィルタリング処理により、合算信号のノイズを除去する。フィルタ部34は、互いに異なる特性を示す複数のフィルタリング処理(多段階のフィルタリング処理)を実施してもよい。例えば、フィルタ部34は、予め定められた周波数を超える周波数成分を減衰させるローパスフィルタ、搬送部2に含まれる回転体の周波数のノイズを減衰させるノッチフィルタ(バンドストップフィルタ)、物品Pの重量に応じて各周波数帯域の減衰量を変更可能な3Dフィルタ等を有する。フィルタ部34は、デジタル原信号合算部33から合算信号を受け取ると、当該合算信号に所定のフィルタリング処理を実施し、当該フィルタリング処理後の計算信号を出力する。得られた計算信号は、例えば
図1に示される制御部7に含まれる別の駆動回路、記憶回路等に出力される。計算信号は、物品Pの重量を演算するために整えられた信号波形を有する。このため計算信号は、物品Pの重量に対応する信号と言える。フィルタ部34に含まれる各フィルタの選択は、例えば制御部7による自動設定、表示インターフェース8を介したユーザによる手動設定等が可能である。
【0030】
制御部7は、フィルタ部34から出力される計算信号に基づいて物品Pの重量を算出し、算出した物品Pの重量が予め設定された適正範囲から逸脱しているか否かを判断する。この判断結果に応じて、上述したように、制御部7は、例えば振分機に動作信号を出力する。
【0031】
以上に説明した本実施形態に係る計量装置1によれば、第1計量部4と第2計量部5とのそれぞれは、得られた原信号に対して最低限のデジタル信号処理を実施する。これにより、第1計量部4から出力される第1デジタル原信号と、第2計量部5から出力される第2デジタル原信号とのタイミングのずれを最小限に抑えられる。そして、制御部7に含まれる駆動回路31は、第1計量部4から受信する第1デジタル原信号と、第2計量部5から受信する第2デジタル原信号とを合算した合算信号にフィルタリング処理を実施する。この場合、各デジタル原信号を同期化することなく、上記合算信号を生成できる。これにより、各信号の同期化に要する時間を省略できるので、物品Pの重量計量時間を短縮化できる。
【0032】
加えて、各デジタル原信号を同期化するための部材を省略できるので、計量装置1の構成も簡略化できる。例えば、各計量部がフィルタリング処理を実施するための装置構成、並びに、各計量部に含まれるA/D変換回路のタイマーをリセットするための装置構成等を省略できる。したがって本実施形態によれば、計量装置1の構成を簡略化しつつ、物品Pの重量を高精度にて計算可能になる。
【0033】
以下では、上記実施形態の各変形例について説明する。以下の各変形例において、上記実施形態と重複する箇所の説明は省略する。したがって以下では、上記実施形態と異なる箇所を主に説明する。
【0034】
第1変形例では、各計量部にて生成されるデジタル原信号に対してプレフィルタリング処理が実施される。具体的には、第1変形例では、第1計量部4に含まれる第1A/D変換部13は、第1デジタル原信号に対してプレフィルタリング処理を実施し、第2計量部5に含まれる第2A/D変換部23は、第2デジタル原信号に対してプレフィルタリング処理を実施する。加えて、駆動回路31のフィルタ部34は、プレフィルタリング処理が実施された第1デジタル原信号及び第2デジタル原信号との合算信号にフィルタリング処理を実施する。すなわち、デジタル原信号取得部32は、プレフィルタリング処理が実施された第1デジタル原信号と、プレフィルタリング処理が実施された第2デジタル原信号とを受信する。デジタル原信号合算部33は、プレフィルタリング処理が実施された第1デジタル原信号と、プレフィルタリング処理が実施された第2デジタル原信号とを合算して合算信号を生成する。
【0035】
第1変形例におけるプレフィルタリング処理は、例えば、上記実施形態のフィルタ部34にて実施されるフィルタリング処理の一部に相当する。各計量部にて実施されるプレフィルタリング処理の処理量は、フィルタ部34にて実施されるフィルタリング処理の処理量よりも小さくなるように設定される。例えば、プレフィルタリング処理の処理量は、フィルタリング処理の処理量の50%以下である。この場合、プレフィルタリング処理に伴うデータの間引きにて発生する、第1デジタル原信号と第2デジタル原信号とのデータ間隔の広がり(すなわち、各信号のタイミングのずれの拡大)を良好に抑制できる。
【0036】
プレフィルタリング処理は、フィルタ部34にて実施されるフィルタリング処理よりも高周波帯の信号に対して実施されてもよい。この場合、第1A/D変換部13と第2A/D変換部23とのそれぞれは、例えばローパスフィルタを有する。
【0037】
上述した第1変形例においても、上記実施形態と同様の作用効果が奏される。加えて、各計量部にてプレフィルタリング処理を実施することによって、第1デジタル原信号と第2デジタル原信号とのタイミングを保ちつつ、各デジタル原信号の情報量を低減できる。したがって、各デジタル原信号を受信する制御部7の駆動回路31の負担を抑制できる。
【0038】
第1変形例では、第1A/D変換部13は、フィルタリング処理よりも高周波帯の信号に対してプレフィルタリング処理を実施してもよい。加えて、プレフィルタリング処理の処理量は、フィルタリング処理の処理量よりも小さい。この場合、第1デジタル原信号と第2デジタル原信号とのタイミングを良好に保ちつつ、各デジタル原信号の情報量を低減できる。これにより、各デジタル原信号を受信する駆動回路31の負荷を低減できる。
【0039】
図3は、第2変形例に係る計量装置の概略構成図である。
図3に示される計量装置1Aの第1計量部4Aは、起歪体11及び計量セル12に加えて、第1AFV(Anti Floor Vibration)セル14(外乱振動検出部)を有する。第1AFVセル14は、計量セル12を含む計量装置1の外乱振動を検出する部材であり、固定剛体部11bに設けられる。第1AFVセル14は、床Fから計量装置1Aに伝わる振動、搬送部2の振動等を検出する。第1AFVセル14は、外乱振動を検出し、この外乱振動に対応する第1振動信号を出力する。第1AFVセル14から出力される第1振動信号は、アナログ信号である。第1振動信号は、例えば、第1AFVセル14に含まれるA/D変換装置によってアナログ/デジタル変換される。
【0040】
計量装置1Aの第2計量部5Aは、第1計量部4Aと同様に、起歪体21及び計量セル22に加えて、第2AFVセル24を有する。第2AFVセル24は、計量セル22を含む計量装置1の外乱振動を検出する部材であり、固定剛体部21bに設けられる。第2AFVセル24は、床Fから計量装置1Aに伝わる振動、搬送部2の振動等を検出する。第2AFVセル24は、外乱振動を検出し、この外乱振動に対応する第2振動信号を出力する。第2AFVセル24から出力される第2振動信号は、アナログ信号である。第2振動信号は、例えば、第2AFVセル24に含まれるA/D変換装置によってアナログ/デジタル変換される。
【0041】
デジタル変換された第1振動信号及び第2振動信号のそれぞれに対しては、例えば、対応するA/D変換装置にてノイズを除去するフィルタリング処理が実施されるが、これに限られない。例えば、デジタル変換された第1振動信号及び第2振動信号に対しては、
図2に示されるフィルタ部34にてフィルタリング処理が実施されてもよいし、制御部7に含まれる駆動回路31とは別の駆動回路にてフィルタリング処理が実施されてもよい。これらの場合、デジタル変換された第1振動信号及び第2振動信号が合算された後、制御部7内にて合算された信号に対してフィルタリング処理が実施されてもよい。もしくは、デジタル変換された第1振動信号及び第2振動信号のそれぞれに対して、対応するA/D変換装置にてプレフィルタリング処理が実施され、プレフィルタリング処理が実施された第1振動信号及び第2振動信号が合算された後、制御部7にて合算された信号に対してフィルタリング処理が実施されてもよい。以上に示したいずれかの手法にてフィルタリング処理が実施された合算信号に基づいて、外乱振動に起因する補正信号を生成する。
【0042】
第2変形例では、制御部7は、フィルタ部34から出力される計算信号と、上記補正信号とに基づいて物品Pの重量を算出する。具体的には、制御部7は、計算信号から上記補正信号を減算して、外乱振動に起因する計算信号の誤差を補正した計算信号を生成する。ここで、計算信号の特性と補正信号の特性とは互いに異なっている。このため、制御部7は、予め補正信号に所定の係数を加えて調整する。制御部7は、補正後の計算信号に基づいて物品Pの重量を求め、物品Pの重量を示す重量情報を表示インターフェース8に出力する。
【0043】
上述した第2変形例においても、上記実施形態と同様の作用効果が奏される。加えて、外乱振動に起因する計算信号の誤差を補正した計算信号にて物品Pの重量を算出することによって、物品Pの重量を精度よく計量できる。
【0044】
第3変形例では、デジタル原信号合算部33は、同時刻に受信した第1デジタル原信号と第2デジタル原信号とを合算して、合算信号を生成する。このような第3変形例においても上記実施形態と同様の作用効果が奏される。また、デジタル原信号合算部33は、第1デジタル原信号と第2デジタル原信号とのタイミングを同期することなく、同時刻に受信したこれらのデジタル原信号を合算して合算信号を生成できる。なお、各計量部にて生成されるデジタル原信号に対してプレフィルタリング処理が実施される場合は、デジタル原信号合算部33で同時刻に受信し、且つ、プレフィルタリング処理が実施された各デジタル原信号を合算してもよい。
【0045】
以上、本発明の一側面に係る計量装置の実施形態及びその各変形例について説明したが、本発明の一側面は、上記実施形態及び上記変形例に限定されない。例えば、上記第1変形例と上記第2変形例とは、互いに組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0046】
1,1A…計量装置、2…搬送部、3…架台、4,4A…第1計量部、5,5A…第2計量部、6…操作部、7…制御部、8…表示インターフェース、11,21…起歪体、11a,21a…可動剛体部、11b,21b…固定剛体部、12,22…計量セル、13…A/D変換部(第1A/D変換部)、14…第1AFVセル、23…A/D変換部(第2A/D変換部)、24…第2AFVセル、31…駆動回路、32…デジタル原信号取得部、33…デジタル原信号合算部、34…フィルタ部、P…物品。