(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-19
(45)【発行日】2023-12-27
(54)【発明の名称】垂直共振器面発光レーザおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01S 5/183 20060101AFI20231220BHJP
【FI】
H01S5/183
(21)【出願番号】P 2020030873
(22)【出願日】2020-02-26
【審査請求日】2022-12-12
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和元年7月16にウェブサイトで公開された「2019年第80回応用物理学会秋季学術講演会のウェブプログラム」に発表 〔刊行物等〕 令和元年9月4日に発行の「2019年第80回応用物理学会秋季学術講演会予稿集」に発表 〔刊行物等〕 令和元年9月20に開催された「2019年第80回応用物理学会秋季学術講演会」に発表
(73)【特許権者】
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100109047
【氏名又は名称】村田 雄祐
(74)【代理人】
【識別番号】100109081
【氏名又は名称】三木 友由
(74)【代理人】
【識別番号】100133215
【氏名又は名称】真家 大樹
(72)【発明者】
【氏名】宮本 智之
(72)【発明者】
【氏名】坂元 駿斗
【審査官】村井 友和
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-179293(JP,A)
【文献】特開2011-222899(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0318667(US,A1)
【文献】特開2003-124570(JP,A)
【文献】MAO, Ming-Ming et al.,High Beam Quality of In-Phase Coherent Coupling 2-D VCSEL Arrays Based on Proton-Implantation,IEEE PHOTONICS TECHNOLOGY LETTERS,2014年02月15日,VOL.26, NO.4, ,P.395-397
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/183
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部DBR(Distributed Bragg Reflector)層と、
前記下部DBR層の上に形成される活性層と、
前記活性層の上に形成される上部DBR層と、
を備え、
前記上部DBR層は、
高抵抗領域および前記高抵抗領域により囲まれた低抵抗領域を含み、前記活性層の電流注入領域を規定する電流狭窄構造と、
前記電流狭窄構造よりも浅い位置に形成されたプロトン注入領域と、
を含み、
前記プロトン注入領域は、基板に対して垂直方向に平面視したときに前記電流注入領域とオーバーラップし、かつ出射窓の中心を含んで連続した領域であることを特徴とする垂直共振器面発光レーザ。
【請求項2】
垂直共振器面発光レーザの製造方法であって、
上部DBR
(Distributed Bragg Reflector)層内に、高抵抗領域および前記高抵抗領域により囲まれた低抵抗領域を含み、活性層の電流注入領域を規定する電流狭窄構造を形成するステップと、
前記上部DBR層内の、前記電流狭窄構造よりも浅い領域にプロトンを注入するステップと、
を備
え、
前記プロトンが注入される領域は、基板に対して垂直方向に平面視したときに前記電流注入領域とオーバーラップし、かつ出射窓の中心を含む連続した領域であることを特徴とする製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、垂直共振器面発光レーザに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体レーザのひとつとして、垂直共振器面発光レーザ(VCSEL)がある。VCSELは、半導体基板と垂直方向に形成された共振器を有し、基板と垂直方向にビームを出射する。VCSELは、他の半導体レーザに比べて安価であるため、その用途、市場規模は年々拡大している。
【0003】
図1は、従来のVCSELの断面図である。VCSEL100rは、基板102、下部DBR(Distributed Bragg Reflector)層104、活性層106、上部DBR層108、下部電極110、上部電極112を備える。活性層106の上側には、酸化狭窄層114が形成されている。酸化狭窄層114によって規定される電流注入領域Aに、電流が流れる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【非特許文献】
【0005】
【文献】R. Jager, M. Grabherr, C. Jung, R. Michalzik, G. Reiner, B. Weigl, K.J. Ebeling, "57% wallplug efficiency oxide-confined 850 nm wavelength GaAs VCSELs," Electronics Letters, vol. 33, Issue 4, pp. 330-331, 13 February 1997.
【文献】J.-F. Seurin, G. Xu, V. Khalfin, A. Miglo, J. D. Wynn, P. Pradhan, C. L. Ghosh, L. A. D'Asaro, "Progress in high-power high-efficiency VCSEL arrays," Proc. SPIE, vol. 7229, 722903, 6 February 2009.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
VCSELの効率を高めるために、半導体層のドーピング濃度を高め、電極間の抵抗を低減するアプローチを採ることができる。しかしながら、ドーピング濃度を高めると、光の吸収が増加し、効率の改善を妨げる方向に作用する。したがって従来のVCSELでは、効率の改善に限界があった。
【0007】
本発明はかかる状況においてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、効率を改善した面発光レーザの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のある態様は、垂直共振器面発光レーザに関する。垂直共振器面発光レーザは、下部DBR(Distributed Bragg Reflector)層と、下部DBR層の上に形成される活性層と、活性層の上に形成される上部DBR層と、を備える。上部DBR層は、活性層の電流注入領域とオーバーラップする部分に、プロトン注入領域を含む。
【0009】
なお本明細書における上部、下部(上下)は便宜的なものに過ぎず、プロトン注入領域が形成される上部DBR層は、駆動電流が流れるDBR層と把握することができる。
【0010】
電流注入領域は、高抵抗領域と高抵抗領域により囲まれた低抵抗領域を含む電流狭窄構造により規定されてもよい。
【0011】
本発明の別の態様は、垂直共振器面発光レーザの製造方法に関する。製造方法は、上部DBR層の、活性層の電流注入領域とオーバーラップする部分に、プロトンを注入するステップを備える。
【0012】
なお、以上の構成要素を任意に組み合わせたもの、あるいは本発明の表現を、方法、装置などの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0013】
本発明のある態様によれば、垂直共振器面発光レーザの効率を改善できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図2】実施の形態に係るVCSELの断面図である。
【
図3】プロトン注入領域の深さと、抵抗値および光吸収の関係(シミュレーション結果)を示す図である。
【
図5】
図5(a)、(b)は、サンプルAとサンプルBの、I-V特性および出力パワーの電流依存性(測定結果)を示す図である。
【
図6】サンプルAとサンプルBの、出力パワーの分布図である。
【
図7】
図7(a)~(d)は、VCSELの構成例1~4を示す図である。
【
図8】
図8(a)、(b)は、
図7(a)~(d)の構成例1~4における、電気抵抗と光吸収の解析結果を示す図である。
【
図9】
図9(a)~(f)は、VCSELの製造方法を示す図である。
【
図10】
図10(a)~(d)は、
図9(b)のプロトン注入プロセスを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0016】
図2は、実施の形態に係るVCSEL100の断面図である。VCSEL100は、基板102、下部DBR層104、活性層106、上部DBR層108、下部電極110、上部電極112を備える。
【0017】
VCSEL構造および材料は公知技術を用いればよく、特に限定されないが、一例を説明する。たとえば基板102は、III-V族半導体でありGaAs基板であってもよい。基板102の裏面には、n型電極である下部電極110が形成される。下部DBR層104は、n型不純物がドープされたAl0.92Ga0.08As層とAl0.16Ga0.84As層(AlGaAs=アルミニウムガリウムヒ素)の積層構造となっており、100%近い反射率を有する。n型不純物としては、たとえばシリコン(Si)、セレン(Se)などを用いることができる。
【0018】
活性層106は、In0.2Ga0.8As/GaAs(インジウムガリウムヒ素/ガリウムヒ素)の多重量子井戸構造を有する。たとえば活性層106は、3層量子井戸構造を有してもよい。多重量子井戸構造の両側には、必要に応じてアンドープのAl0.3Ga0.7As層である下部スペーサ層および上部スペーサ層が形成される。上部DBR層108は、p型不純物がドープされたAl0.92Ga0.08As層とAl0.16Ga0.84As層(AlGaAs=アルミニウムガリウムヒ素)の積層構造であってもよい。p型不純物としては、炭素(C)や亜鉛(Zn)、マグネシウム(Mg)もしくはベリリウム(Be)などを用いることができる。
【0019】
上部DBR層108は、活性層106の電流注入領域Aとオーバーラップする部分Bに、プロトンが注入され、プロトン注入領域120が形成されている。活性層106の電流注入領域Aは、高抵抗領域Xと高抵抗領域Xにより囲まれた低抵抗領域Yを含む電流狭窄構造により規定され、具体的には低抵抗領域Yが、電流注入領域Aに対応する。
【0020】
VCSEL100は、AlAsを含む酸化狭窄層114を含んでもよい。この酸化狭窄層114を、メサの側面から選択的に酸化させることで、高抵抗領域Xが形成され、電流狭窄構造が生成される。
【0021】
P型電極である上部電極112は、上部DBR層108の上側に形成される。
【0022】
以上がVCSEL100の構造である。
【0023】
続いてその動作を説明する。上部電極112から注入される駆動電流IDは、上部DBR層108では、一点鎖線で示すように、プロトン注入領域120の外側のキャリア濃度が高い領域に流れ、酸化狭窄層114の付近から、活性層106の電流注入領域Aに向かって流れはじめる。
【0024】
活性層106の電流注入領域Aに駆動電流IDが流れることにより、活性層106に反転分布が形成され、レーザ発振する。レーザ光は、下部DBR層104と上部DBR層108の間で、電流注入領域Aとオーバーラップする部分において往復して増幅され、その一部が上部DBR層108から取り出される。
【0025】
上部DBR層108の電流注入領域Aとオーバーラップする部分Bに、プロトンを注入することにより、この部分Bのキャリア濃度が低下し、したがって光の吸収、すなわち損失が小さくなる。これにより、VCSEL100の効率を改善することができる。
【0026】
なお、上部DBR層108のプロトン注入領域120のキャリア濃度が低下することにより、その部分の抵抗は高くなるが、駆動電流IDは、一点鎖線で示すように、プロトン注入領域120の外側のキャリア濃度が高い経路を流れることができるため、プロトン注入領域120を形成したことによる、抵抗の増加は無視することができる。あるいは、抵抗の増加が無視できなかったとしても、光吸収の低下による効率の改善が、抵抗増加による効率の低下を上回れば、VCSEL100全体としての効率を改善することができる。
【0027】
さらに、プロトン注入により、光路であるプロトン注入領域120のキャリア濃度を、駆動電流の経路である非注入領域のキャリア濃度と独立に制御できるため、プロトン注入前のキャリア濃度、すなわち非注入領域のキャリア濃度を、従来のそれよりも高め、したがって電流経路の抵抗をさらに下げることも可能である。したがって光吸収の低下の効果に加えて、電流経路の抵抗の効果の組み合わせによって、効率を改善できる。
【0028】
またプロトン注入は、電流狭窄構造の作製に用いられた実績があることから分かるように、半導体レーザの製造プロセスへの導入が容易である。したがって、プロトン注入領域120を形成するための技術的なハードルは低く、またそのコストの増加は非常に小さい。
【0029】
本実施の形態では、プロトン注入を、VCSELの積層構造の製造後に行っているが、比較技術として、VCSELの積層構造の製造段階において、上部DBR層108の中央部と、外周部において、不純物のドーピング濃度を変化させる手法を採ることもできる。しかしながら、トランジスタに比べて巨大な構造を有するVCSELデバイスでは、領域毎にドーピング濃度を選択的に変化させるためには、結晶成長とリソグラフィ、エッチングを複数回組み合わせる必要があり、コスト増は避けられない。これに対して、実施の形態で用いるプロトン注入は、複雑なプロセスを必要としないため、半導体レーザという大きなデバイスに適しているといえる。
【0030】
図3は、プロトン注入領域120の深さと、抵抗値および光吸収の関係(シミュレーション結果)を示す図である。プロトン注入領域120のキャリア濃度は、5×10
16(cm
-3)、1×10
17(cm
-3)、2×10
17(cm
-3)、5×10
17(cm
-3)、1×10
18(cm
-3)としている。プロトン注入領域120は、深さ方向について、0~2.5μmの範囲に形成することとした。上部DBR層108におけるプロトン注入領域120以外(非注入領域)のキャリア濃度は2×10
18(cm
-3)としている。プロトン注入領域のキャリア濃度を下げ過ぎると、抵抗値が過剰に増加することから、プロトン注入領域のキャリア濃度は、2×10
17~1×10
18(cm
-3)程度が好ましい。これは、非注入領域のキャリア濃度の1/10~1/2程度に相当する。
【0031】
実際に作製したVCSEL100のサンプルについて説明する。
図4は、サンプルの構造を示す図である。設計パラメータは以下の通りである。
メサの高さ h=3.45μm
メサ直径 φ
1=30μm
出射窓径 φ
2=15μm
選択酸化アパーチャ径 φ
3=10μm
プロトン注入径φ
4=10μm
【0032】
同じ構造で、プロトン注入領域120を形成しないサンプルAと、プロトン注入領域120を形成したサンプルBを作製し、それらの特性を比較した。プロトン注入に関して、注入エネルギーは310keV、ドーズ量は1×1012(cm-2)であり、深さ2.0~2.5μmに、プロトン注入領域120が形成されている。なお、イオン注入(プロトン注入)では注入エネルギーに応じた深さにピーク濃度を持つ注入分布となり、深さ方向にある程度広がりのある濃度分布が形成され、2.0~2.5μmというのは、ある有意な濃度のプロトンが注入された領域を意味する。したがってその深さの範囲ではプロトン注入濃度(より本質的な意義の点からはキャリア濃度)は必ずしも均一ではない。なお、シミュレーションでは、指定した深さ範囲にわたり、キャリア濃度が均一であることを仮定している。
【0033】
図5(a)、(b)は、サンプルAとサンプルBの、I-V特性および出力パワーの電流依存性(測定結果)を示す図である。プロトン注入領域120を形成したサンプルBでは、形成しないサンプルAと比較して、同じ駆動電流を与えたときの出力パワーが飛躍的に増大していることが分かる。
【0034】
図6は、サンプルAとサンプルBの、出力パワーの分布図である。横軸はスロープ効率SEを表す。
【0035】
なお、実験で作成したサンプルAは、従来の構成において良好な特性が得られるように、上部DBR層のキャリア濃度を決めたものであり、サンプルBは、サンプルAと同条件のデバイスに、プロトンを注入したものである。
【0036】
ここで従来構造(つまりサンプルA)では、キャリア濃度を高くしすぎると、光吸収が増えるため、それらのトレードオフを考慮して、キャリア濃度を定める必要があった。これに対して、実施の形態に係るVCSEL100では、非注入領域のキャリア濃度を高くしても、光吸収は増加しない。つまり、上部DBR層のキャリア濃度を従来よりもさらに高めることが可能となる。したがって、最適化設計をしたときの特性は、サンプルBよりもさらに改善される余地がある。
【0037】
続いて、プロトン注入領域120の深さ方向の形成位置に関する検討結果を説明する。
図7(a)~(d)は、VCSEL100の構成例1~4を示す図である。
図7(a)の構成例1では、0-2μmの深さにプロトン注入領域120が形成される。
図7(b)の構成例2では、0-1μmの深さにプロトン注入領域120が形成される。
図7(c)の構成例3では、0.5-1.5μmの深さにプロトン注入領域120が形成される。
図7(d)の構成例4では、1-2μmの深さにプロトン注入領域120が形成される。
【0038】
図8(a)、(b)は、
図7(a)~(d)の構成例1~4における、電気抵抗と光吸収の解析結果を示す図である。iはプロトン注入無し、iiは
図7(b)の構成例、iiiは
図7(c)の構成例、ivは
図7(d)の構成例、vは
図7(a)の構成の解析結果を示す。
【0039】
この解析結果から、デバイスの表面近傍の近い領域に注入せず、より深い位置に注入した構造を採用すれば、さらに特性が改善されることが分かる。
【0040】
なおこの解析例は、通常のVCSELのドーピング濃度に対してプロトン注入を行った想定であり、プロトン注入を行うことで必ず高抵抗領域が多くなっており、基準の試料(i)よりも必ず抵抗が高くなっている。
本実施の形態では、プロトン注入により、光路であるプロトン注入領域120のキャリア濃度を、駆動電流の経路である非注入領域のキャリア濃度と独立に制御できるため、プロトン注入前のキャリア濃度、すなわち非注入領域のキャリア濃度を、従来のそれよりも高め、したがって電流経路の抵抗をさらに下げることも可能である。このような構造は、上の解析例の対象となっておらず、この解析よりもさらに特性を改善する余地がある。
【0041】
続いてVCSEL100の製造方法を説明する。
図9(a)~(f)は、VCSEL100の製造方法を示す図である。はじめに
図9(a)に示すように、基板102、下部DBR層104、活性層106、上部DBR層108、保護膜109を含む積層構造101を形成する。積層構造101の製造方法は公知技術を用いればよい。保護膜109は、半導体表面の保護のために形成される。その限りでないが、保護膜109は、除去が容易であり、半導体への負荷、浸食が少ないSiO
2(ガラス)を含んでもよい。
【0042】
続いて、
図9(b)に示すように、プロトン注入領域120が形成される。続いて
図9(c)に示すように、メサ構造130が形成される。続いて、
図9(d)に示すように、選択的酸化プロセスにより、酸化狭窄層114を形成する。そして
図9(e)に示すように、メサ構造130にポリマー132を塗布する。そして、
図9(f)に示すように、上部電極112および下部電極110を形成する。
【0043】
図10(a)~(d)は、
図9(b)のプロトン注入プロセスを示す図である。
図10(a)に示すように、VCSELの積層構造101の上に、レジスト140が塗布される。続いて、
図10(b)に示すように、レジスト140が露光、現像され、パターニングされ、開口142が形成される。そして、
図10(c)では、レジスト140の上からプロトンが照射され、レジスト140の開口142から、上部DBR層108にプロトンが注入され、プロトン注入領域120が形成される。そして
図10(d)では、レジスト140が除去され、さらに保護膜109も除去され、
図9(c)の状態となる。
【0044】
なお
図9(a)~(f)の製造方法では、メサを形成する前に、プロトンを注入したが、その限りでなく、プロトンの注入の順番は限定されない。たとえばプロトン注入を、メサ形成後に行ってもよいし、さらに酸化狭窄層114の形成後に行ってもよい。
【0045】
また、
図10(a)~(d)ではレジストを用いてプロトン注入を行ったが、メタルマスクを用いてプロトン注入を行ってもよい。
【0046】
実施の形態では、下部電極(n型電極)110を基板102の裏面に形成したが、その限りでない。たとえば、基板102と下部DBR層104の間、もしくは下部DBR層の上側にn型コンタクト層を挿入し、メサ部において露出したn型コンタクト層の上側に、n型電極を形成してもよい。下部DBR層として、誘電体DBR層を採用してもよい。
【0047】
上部DBR層108は、半導体DBR層と、その上に設けられた誘電体DBR層の積層構造であってもよい。この場合、半導体DBR層に、プロトン注入領域を形成すればよい。
【0048】
実施の形態にもとづき、具体的な語句を用いて本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用を示しているにすぎず、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が認められる。
【符号の説明】
【0049】
100 VCSEL
102 基板
104 下部DBR層
106 活性層
108 上部DBR層
110 下部電極
112 上部電極
114 酸化狭窄層
120 プロトン注入領域
130 メサ構造
132 ポリマー