(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-19
(45)【発行日】2023-12-27
(54)【発明の名称】鎮痛組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/4706 20060101AFI20231220BHJP
A61K 31/135 20060101ALI20231220BHJP
A61K 31/485 20060101ALI20231220BHJP
A61P 25/04 20060101ALI20231220BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20231220BHJP
【FI】
A61K31/4706
A61K31/135
A61K31/485
A61P25/04
A61P43/00 121
(21)【出願番号】P 2021537448
(86)(22)【出願日】2019-09-04
(86)【国際出願番号】 US2019049457
(87)【国際公開番号】W WO2020051182
(87)【国際公開日】2020-03-12
【審査請求日】2022-06-07
(32)【優先日】2018-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521094942
【氏名又は名称】ロホクラ・リサーチ・コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】タバコフ,ボリス
【審査官】梅田 隆志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/195943(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0204064(US,A1)
【文献】特表2010-508298(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-31/80
A61P 1/00-43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
慢性疼痛に罹患した患者における鎮痛化合物の効果補強において使用するための医薬組成物であって、薬学的に有効量の:
(a)以下の式
【化1】
式中:
R
7
は、フェニルであり;
R
8
は、フェニルであり:
E
1
は、-C(=O)OR
9
であり;
R
9
は、Hであり:
各X
2
及びX
3
は、独立してハロゲンである
のアミノキノリン化合物
を、遊離酸形態で、遊離塩基形態で、又は薬理学的に許容される付加塩として、及び
(b)オキシコドン、メサドン、トラマドール、及びそれらの混合物からなる群より選択される鎮痛剤
を含む
、医薬組成物。
【請求項2】
前記アミノキノリン化合物が、5,7-ジクロロ-4-(3,3-ジフェニルウレイド)キノロン-2-カルボン酸(DCUKA)である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
慢性疼痛に罹患した患者におけるメサドンの効果補強において使用するための医薬組成物であって、薬学的に有効量の、メサドン、及び
以下の式
【化2】
式中:
R
7
は、フェニルであり;
R
8
は、フェニルであり:
E
1
は、-C(=O)OR
9
であり;
R
9
は、Hであり:
各X
2
及びX
3
は、独立してハロゲンである
のアミノキノリン化合物を、遊離酸形態で、遊離塩基形態で、又は薬理学的に許容される付加塩として含む、医薬組成物。
【請求項4】
前記アミノキノリン化合物が、5,7-ジクロロ-4-(3,3-ジフェニルウレイド)キノロン-2-カルボン酸(DCUKA)である、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
慢性疼痛に罹患した患者におけるトラマドールの効果補強において使用するための医薬組成物であって、薬学的に有効量の、トラマドール、及び
以下の式
【化3】
式中:
R
7
は、フェニルであり;
R
8
は、フェニルであり:
E
1
は、-C(=O)OR
9
であり;
R
9
は、Hであり:
各X
2
及びX
3
は、独立してハロゲンである
のアミノキノリン化合物を、遊離酸形態で、遊離塩基形態で、又は薬理学的に許容される付加塩として含む、医薬組成物。
【請求項6】
前記アミノキノリン化合物が、5,7-ジクロロ-4-(3,3-ジフェニルウレイド)キノロン-2-カルボン酸(DCUKA)である、請求項5に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
政府の支援
本発明は、国立衛生研究所からの政府支援(助成金番号R44-AA-009930)によってなされた。米国政府は、本発明において一定の権利を有する。
【0002】
発明の分野
本発明は、アミノキノリン化合物を、オピオイド、ノルエピネフリン/セロトニン再取り込みインヒビター及び/又は非ステロイド系抗炎症薬物(NSAID)と一緒に含む鎮痛組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
損傷の応答における急性疼痛は、個体に対する傷害の程度を軽減するための重要な機構であるが、神経系は、適応性の変化を受けて、損傷が治癒した後の時点を過ぎても十分に知覚される疼痛(慢性疼痛)をもたらす場合がある(Costigan et al.,2009)。この慢性疼痛は、通常は非侵害性である刺激によって起こる場合もあり(異痛症)、又は、侵害性の刺激に対する応答が、大幅に悪化する場合もある(痛覚過敏)。慢性疼痛は、米国内の少なくとも1億人の成人に発症していると推測され、生活の質に悪影響を与える場合がある(Institute of Medicine,2011)。神経障害性の慢性疼痛(神経損傷に起因する)又は他の慢性疼痛の薬理学的治療は、オピエート又はその誘導体の使用に大いに依拠している(Reuben et al.,2015)。これらの薬物は、用量漸増をもたらす耐性/痛覚過敏及びオピエート嗜癖の発症を含む、多くの有害作用を有する(Chou et al.,2015)。オピエートの高用量かつ常習的投与のさらなる副作用としては、便秘、睡眠呼吸障害、骨折、視床下部-下垂体副腎系調節不全及び過剰服用、ならびに心血管系及び免疫系に対する影響が、挙げられる(Baldini et al.,2012)。非ステロイド系抗症薬物(NSAIDs)、抗けいれん薬、筋弛緩薬及び抗うつ薬、ならびに電位感受性カルシウムチャネルを標的する薬物(ガバペンチン及びプレガバリン)を含む他の薬物は、慢性疼痛を治療するために使用されるが、これらの治療は、限定的な緩和を提供する(Lunn et al.,2014;Moore et al.,2014;Schreiber et al.,2015;Smith et al.,2012;Sofat et al.,2017;Lozada,et al.,2008)。さらに、慢性疼痛の治療のためにオピオイドの次によく使われる薬物であるNSAIDの高用量の常習的投与は、副作用として、胃の症状(出血、潰瘍及び胃もたれなど)、腎不全、高血圧又は心臓の症状、体液貯留、皮疹又は他のアレルギー反応を含む、赤血球過多症を伴う(Marcum and Hanlon 2010)。慢性疼痛を治療する薬物の第3のカテゴリーは、より近年に導入された、5-HT及びNE再取り込み系のブロッカーである(Smith et al.,2012;Sofat et al.,2017)。5-HT/NE再取り込みインヒビターもまた、悪心、G.I.障害、睡眠困難な疲労を含む、一連の副作用を示す。より危険なことは、これらの薬物が慢性疼痛を緩和しない場合に、その使用を急いで停止したときの作用である。このような「離脱」作用としては、過度な気分変動、興奮、攻撃性、悪夢、混乱ならびに頭部及び体の他の部分における電気ショック様の感覚が挙げられる(Fava et al.,2018;Carvalho et al.,2016)。全ての場合において、オピエート/オピオイド、NSAID又は5-HT/NE再取り込みインヒビターを用いて、慢性疼痛に対する治療的成功のために用量の漸増を行うと、重篤な副作用の出現をもたらし、この薬物治療の使用を不用意に停止する場合にはより重篤な副作用の出現をもたらす。
【0004】
慢性疼痛の罹患者の大部分は、その疼痛が他の薬物のクラスによって制御されていない場合、長期間にわたって高用量で処方されたオピエート/オピオイドの使用を続ける。慢性疼痛を治療するためのオピエートの使用における顕著な増加及びそれに伴う過剰服用、誤用又は転用の問題の懸念(「オピオイド危機」と呼ばれる)が高まるがゆえに、処方されるオピオイドを最低有効用量かつ最短有効期間に制限することが推奨されており、そして重要なことには、慢性疼痛の病因に関する科学的情報に基づいて新規な非オピオイド薬物治療を開発することが推奨されている(Volkow and McLellan 2016;Taneja et al.,2017;Kirkpatrick et al.,2016)。
【0005】
慢性疼痛に関与することが知られている標的に注目することによって新規かつより良い疼痛薬物治療を生み出すために、多くの試みがなされている(Yekkirala,et al.,2017;Worley 2017)。標的の選択は、慢性疼痛薬物開発努力の主要な眼目であり、ほとんどの計画は、何年にもわたって製薬産業の選択のアプローチである、単一の標的/部位(例えば、レセプター)を使用している(Ramsay et al.,2018)。しかし、単一の分子実体を標的して複雑な生理学系を制御することは、薬剤の効力を限定することになる(Bozic et al.,2013)。より近年には、精神分裂病、ウイルス感染、喘息、心血管疾患、神経変性疾患及びがんの治療のための効果的な多重標的薬物を設計することに一部起因して、認識が変化している(Ramsay et al.,2018)。このような薬物は、単一の標的の完全な阻害よりもむしろ、ネットワーク内での1つ以上の標的の部分的な阻害をもたらす(Zimmerman et al.,2007;Millan,2014;Talevi,2015)。
【0006】
疼痛に関して、末梢レセプターからの感覚情報を処理する系及び感覚ニューロン内及び感覚ニューロン間の情報を変換する系に注目することができる。慢性神経障害性疼痛症候群をもたらす、最も研究されている分子機構のひとつは、末梢の電位感受性ナトリウムチャネル(VSNaC)の活性の上方制御である(Wood et al.,2004;Lai,et al.,2004;Black et al.,2004;Coggeshall et al.,2004;Dib-Hajj et al.,2007)。テトロドトキシン感受性Nav1.7チャネルは、侵害受容ニューロンをゆっくりと処理する突起及び細胞体に沿って配置され、急性疼痛及び慢性疼痛の両方におけるその役割は、動物において遺伝子操作によって、そしてヒトにおいて天然に起こる遺伝的突然変異によって、明らかに実証されている(Black et al.,2004;Wang et al.,2011;Lawrence,2012)。Nav1.7チャネルは、炎症に関連する疼痛に特に結びついており、その上方制御は、慢性疼痛症候群における活動電位の発生及び処理の増大に寄与する(Eijkelkamp et al.,2012)。さらに、Nav1.7チャネルの活性は、軌道電位を増幅し得、そして他の感覚ニューロンVSNaC(テトロドトキシン抵抗性Nav1.8チャネルを含む)の活性化を促進し得る(Dib-Hajj et al.,2007;Choi & Waxman,2011)。Nav1.8チャネルは、炎症性疼痛症状及び神経障害性疼痛症状の両方の発症に結びつけられている。全体として、末梢感覚ニューロンにおけるNav1.7チャネル及びNav1.8チャネルの活性の上方制御は、慢性疼痛症候群の導入及び維持の共通の要素を構成する(Wang et al.,2011;Theile & Cummins,2011;Laedermann et al.,2015)。
【0007】
正常な疼痛感知の生理学及び慢性疼痛現象の伝達における興奮性アミノ酸、グルタミン酸の役割もまた、充分に確立されている(Davies & Lodge,1987;Dickenson & Sullivan,1987;Childers & Baudy,2007)。感覚ニューロンの活性化又は損傷は、末梢ニューロン及び中枢ニューロンの両方からのグルタミン酸の放出の増大を起こし、放出されたグルタミン酸は、近傍のグルタミン酸(NMDA)レセプターに対して作用して、末梢感作に寄与し得る(Fernandez-Montoya et al.,2017;Jang et al.,2004)。背根神経節(DRG)におけるグルタミン酸のNMDAレセプターとの相互作用もまた、感覚シグナルの増幅に関与する(Ferrari et al.,2014;Rozanski et al.,2013)。したがって、NMDAレセプターは、疼痛感覚及びそのCNSへの伝達の開始及び増幅の両方に関与する。NMDAレセプターの上方制御は、感覚神経損傷後の末梢ニューロン及び脊髄の両方においてみられ、そしてその上方制御は、慢性神経障害性疼痛に寄与すると考えられる(Petrenko et al.,2003)。詳細には、GluN2B(NR2B)サブユニット含有NMDAレセプターの量が、慢性疼痛症候群の発症及び維持において最も重要な役割を果たす(Karlsson et al.,2002;Iwata et al.,2007;Gaunitz et al.,2002;Wilson et al.,2005)。
【0008】
この議論に基づき、Nav1.7チャネル活性とNav1.8チャネル活性とを同時に阻害でき、かつNMDAレセプター(詳細には、GluN2Bサブユニットを含むNMDAレセプター)の活性を阻害できる薬物治療は、レセプター/チャネル上方制御を阻害することによる慢性疼痛の発症を予防すること、及び慢性疼痛症候群の発症後であってさえ疼痛を軽減することの両方において、有益であり得る。このような薬物治療は、中枢神経系において作用する必要はなく、中枢感作及び慢性疼痛の発症をもたらす末梢感作を予防しても、及び/又は慢性疼痛シグナルの開始及び脳への伝達を弱める可能性がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【文献】Costigan et al.,2009
【文献】Institute of Medicine,2011
【文献】Reuben et al.,2015
【文献】Chou et al.,2015
【文献】Baldini et al.,2012
【文献】Lunn et al.,2014
【文献】Moore et al.,2014
【文献】Schreiber et al.,2015
【文献】Smith et al.,2012
【文献】Sofat et al.,2017
【文献】Lozada,et al.,2008
【文献】Marcum and Hanlon 2010
【文献】Fava et al.,2018
【文献】Carvalho et al.,2016
【文献】Volkow and McLellan 2016
【文献】Taneja et al.,2017
【文献】Kirkpatrick et al.,2016
【文献】Yekkirala,et al.,2017
【文献】Worley 2017
【文献】Ramsay et al.,2018
【文献】Bozic et al.,2013
【文献】Ramsay et al.,2018
【文献】Zimmerman et al.,2007
【文献】Millan,2014
【文献】Talevi,2015
【文献】Wood et al.,2004
【文献】Lai,et al.,2004
【文献】Black et al.,2004
【文献】Coggeshall et al.,2004
【文献】Dib-Hajj et al.,2007
【文献】Wang et al.,2011
【文献】Lawrence,2012
【文献】Eijkelkamp et al.,2012
【文献】Dib-Hajj et al.,2007
【文献】Choi & Waxman,2011
【文献】Theile & Cummins,2011
【文献】Laedermann et al.,2015
【文献】Davies & Lodge,1987
【文献】Dickenson & Sullivan,1987
【文献】Childers & Baudy,2007
【文献】Fernandez-Montoya et al.,2017
【文献】Jang et al.,2004
【文献】Ferrari et al.,2014
【文献】Rozanski et al.,2013
【文献】Petrenko et al.,2003
【文献】Karlsson et al.,2002
【文献】Iwata et al.,2007
【文献】Gaunitz et al.,2002
【文献】Wilson et al.,2005
【発明の概要】
【0010】
発明の要旨
オピオイド、NE/5-HT再取り込みインヒビター又はNSAIDと組み合わせた、N-置換-4-ウレイド-5,7-ジクロロ-2-カルボキシ(又はカルボキシエステル)キノリン類は、ヒトにおける慢性神経障害性疼痛の治療及び予防において有効である。
【0011】
本発明を具現化する鎮痛組成物は、アミノキノリン化合物を、オピオイド、NE/5-HT再取り込みインヒビター、非ステロイド系抗炎症薬物(NSAID)、又はそれらの組み合わせと共に含む。アミノキノリン化合物は、オピオイド、セロトニン(5-HT)及びノルエピネフリン(NE)の取り込みをブロックする薬剤、ならびにNSAIDの生物活性を増強する。結果として、アミノキノリン化合物の共投与は、所望される鎮痛(抗痛覚過敏)効果のために使用されるオピオイド、NE又は5HT再取り込みブロッカー、又はNSAIDの用量を低減することを可能にする。さらに、アミノキノリン化合物は、慢性疼痛の発症の経過における初期に投与される場合、慢性疼痛の発症及び/又は慢性疼痛症候群の悪化を提示し得る。
【0012】
式(I):
【0013】
【化1】
によって表されるアミノキノリン化合物において、その置換基は、以下のように定義される:R
1は、H、C
2-C
4アルキル、C
2-C
4アルケニル、ハロ、Z
1R
9、又はN(R
10)(R
11)である。R
2は、H、C
1-C
4アルキル、C
2-C
4アルケニル、ハロ、Z
2R
12、N(R
13)(R
14)、又はC
1-C
4アルキル、C
2-C
4アルケニル、ハロ、Z
3R
15、N(R
16)(R
17)からなる群より選択される1つ以上の部分によって置換されるC
1-C
4アルキルであり;各R
3、R
4、R
5、及びR
6は、独立してH、C
1-C
4アルキル、C
2-C
4アルケニル、ハロ、Z
3R
18、又はN(R
19)(R
20)であり;X
1は、N又はCHであり;各R
7及びR
8は、独立してH、C
1-C
6アルキル、C
2-C
4アルケニル、C
2-C
4アルキニル、アリール、又はC
1-C
4アルキル、C
2-C
4アルケニル、ニトロ、ハロ、Z
4R
21、及びN(R
22)(R
23)からなる群より選択される1つ以上の部分によって置換されるC
1-C
6アルキルであるか;又はR
7及びR
8は、X
1と共に5~8員の飽和、不飽和、又は芳香族有機環式部分又は複素環式部分を形成し;各R
9、R
10、R
11、R
12、R
13、R
14、R
15、R
16、R
17、R
18、R
19、R
20、R
21、R
22、及びR
23は、独立してH、C
1-C
4アルキル、又はC
1-C
4アルキル、C
2-C
4アルケニル、C
2-C
4アルキニル、ハロ、ヘテロアリール、Z
5R
24、及びN(R
25)(R
26)からなる群より選択される1つ以上の部分によって置換されるC
1-C
4アルキルである。Z
1、Z
2、Z
3、Z
4、及びZ
5の各々は、独立してO、S、NH、C(=O)O、O-C(=O)、C(=O)、又はC(=O)NHである。R
1がZ
1R
9であり、Z
1がC(=O)Oであり、R
9がH又はC
1-C
2アルキルであり、R
3及びR
5の各々がハロであり、X
1がNであり、かつR
4及びR
6の各々がHであって、次いでR
7及びR
8の少なくとも1つはフェニル、アルコキシ-置換フェニル、又はC
1-C
6アルキル基である場合に、各R
24、R
25、及びR
26は、独立してC
1-C
4アルキルである。
【0014】
式(II):
【0015】
【化2】
のアミノキノリン化合物において、X
1、R
1、R
7及びR
8は、上記式(I)において定義される通りであり、そして各X
2及びX
3は、独立してハロ、ニトロなどの電子求引基であるが、ただし、R
1がZ
1R
9であり、Z
1がC(=O)O又はC(=O)であり、R
9がH又はC
1-C
4アルキルであり、そしてX
1がNである場合に、R
7及びR
8の少なくとも1つは、フェニル又はアルコキシで置換された基ではないという条件の上である。
【0016】
式(III):
【0017】
【化3】
のアミノキノリン化合物において、X
2及びX
3は、各々独立してハロであり、そしてX
1、R
1、R
7、R
8及びR
9の各々は、上述の式(I)及び(II)において定義される通りであるが、ただし、R
9がH又はC
1-C
2アルキルであり、そしてX
1がNである場合、R
7及びR
8の少なくとも1つは、フェニル又はアルコキシで置換されたフェニル基ではないという条件の上である。
【0018】
式(IV):
【0019】
【化4】
のアミノキノリン化合物において、X
2、X
3、R
1、R
7、及びR
8の各々は、上記式(I)及び(II)において定義される通りである。
【0020】
式(V):
【0021】
【化5】
のアミノキノリン化合物において、X
2、X
3、R
7、R
8及びR
9の各々は、上記式(I)及び(II)において定義される通りである。
【0022】
式(VI):
【0023】
【化6】
のアミノキノリン化合物において、R
7は、アルキル、シクロアルキル、アミノアルキル又はフェニルであり;R
8は、H、アルキル、シクロアルキル、アミノアルキル、又はフェニルであり;E
1は、-C(=O)OR
9、-C(=O)R
9、-C(=O)N(R
9)
2、及び-[C(R
9)
2]
n-OR
9であり、「n」は、1、2、3、又は4であり;各R
9は、独立してH、C
1-C
4アルキル、又はC
1-C
4アルキル、C
2-C
4アルケニル、C
2-C
4アルキニル、ハロ、ヘテロアリール、Z
5R
24、及びN(R
25)(R
26)からなる群より選択される1つ以上の部分によって置換されるC
1-C
4アルキルであり;Z
5は、O、S、C(=O)O又はO-C(=O)であり;各R
24、R
25、及びR
26は、独立してC
1-C
4アルキル、アルキルであり;各X
2及びX
3は、独立して電子求引基(好ましくはハロゲン又はニトロ)であり;アルキル、シクロアルキル、アミノアルキル、及びフェニル基は、置換されていなくても、アルキル(1~3炭素)基又はアルキルオキシ基(例えば、1~3炭素のアルキル又はアルコキシ基)によって1回以上置換されていてもよく;そして酸性又は塩基性の官能基が存在する場合、化合物は、遊離の酸性形態であっても、遊離の塩基性形態であっても、又は薬理学的に許容される付加塩であってもよい。E
1がC(=O)OR
9である場合、R
7及びR
8の少なくとも1つは、フェニルではない。
【0024】
本願の鎮痛組成物において使用されるために特に好ましくは、遊離の酸性形態、遊離の塩基性形態、又は薬理学的に許容される付加塩としての式(VI)の化合物であり、ここで:
R7は、アルキル(好ましくは3~6炭素アルキル(alky))、又はフェニルであり;
R8は、アルキル(好ましくは3~6炭素アルキル)、又はフェニルであり;
E1は、-C(=O)R9であるか、又はE1は、-C(=O)OR9であり;
各R9は、H又はC1-C4アルキルであり;そして
各X2及びX3は、独立して電子求引基(好ましくはハロゲン又はニトロ)である。
【0025】
鎮痛組成物の投与は、経口、皮下、静脈内、筋肉内、腹腔内、経皮又は経頬経路であってもよい。
【0026】
一般式(VI)の化合物の非限定の例は、2-カルボキシ-キノリン類の誘導体、例えば、(N,N-ジブチル)-4-ウレイド-5,7-ジクロロ-2-カルボキシ-キノリン(BCUKA)、(N,N-ジフェニル)-4-ウレイド-5,7-ジクロロ-2-カルボキシ-キノリン(DCUKA)、などである。
【0027】
式(VI)のジ-置換-4-ウレイド-5,7-ジクロロ-2-カルボキシ-キノリン化合物は、以下のいくつか又は全てに対する親和性を有する:Nav1.7、Nav1.8、及びNMDAレセプター。これらの化合物は、変性関節疼痛(例えば、骨関節炎)ならびに末梢神経に対する炎症性及び器質的損傷から生じる慢性疼痛症候群の治療に有益な活性を有し、器質的又は熱性の異痛症/痛覚過敏を効果的に緩和する。
【0028】
式(VI)の化合物は、5,7-ジクロロキノロン-2-カルボキシレート中間体(例えば、ジメチルアセチレンジカルボキシレートに対する3,5-ジクロロアニリンのマイケル付加及びその後の生じたアリールマレエートの熱性環化によって得られ得る)の、クロロスルホニルイソシアネートによるアミド化によって、(4-アミノ)-5,7-ジクロロ-2-カルボキシ-キノリンエチルエステル(鍵となる中間体)を生成することによって、調製され得、これは、関連の求電子試薬による反応を通して官能性付与され得る。一置換尿素の調製のために、反応性の尿素中間体が、第一級アミンのカルボニルジイミダゾールによる反応を通して調製される。生じたイミダゾール尿素のアミノ-5,7-ジクロロ-2-カルボキシ-キノリンエチルエステルとの水酸化ナトリウム存在下での反応により、標的の一置換尿素が、エステル加水分解と同時に、キノリンの4位に生じる。保護基、例えば、tert-ブトキシカルボニル(BOC)-保護基の除去は、反応性尿素中間体の合成において使用されるなどの場合、トリフルオロ酢酸(TFA)によって達成されて、所望のTFA塩を生じ得る。
【0029】
二置換尿素誘導体の調製のために、(4-アミノ)-5,7-ジクロロ-2-カルボキシ-キノリンメチル又はエチルエステルは、4-アミノ位にて二置換カルバモイルクロリドによってアセチル化されて、(N,N-二置換)-4-ウレイド-5,7-ジクロロ-2-カルボキシ-キノリンエステルを形成する。任意選択的に、(N,N-二置換)-4-ウレイド-5,7-ジクロロ-2-カルボキシ-キノリン-エステルは、加水分解されて、(N,N-二置換)-4-ウレイド-5,7-ジクロロ-2-カルボキシ-キノリンとなってもよい。
【0030】
DCUKA及びDCUK-OEtは、各々、Nav1.7及びNav1.8に対する親和性を示し、そしてDCUKAはまた、NMDAレセプターに対する親和性を示す。DCUK-OEtはまた、インビボ投与後に生じるカルボキシルエステラーゼ1によるエステル加水分解によって、DCUKAのプロドラッグとしても作用し得る。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】DCUK-OEtが、DCUKAについてのプロドラッグとして作用し得ることを図解する。ラットにDCUK-OEtを噴霧乾燥分散製剤の懸濁剤中で経口投与した場合、データは、DCUKAの血中レベルが、投与されたDCUK-OEtの用量に依存したことを示す。DCUKAのピークレベルは、50mg/kgの用量のDCUK-OEtの投与後には約3μMであり、そして100mg/kgの用量のDCUK-OEtの投与後には約11μMである。
【
図2】DCUKA(50mg/kg)によるシスプラチン誘導型神経障害性疼痛の治療を図示する。がん化学療法剤であるシスプラチンによって処理されたラットにおいて、シスプラチン処理は、器質的疼痛閾値を低下させ、そしてDCUKA処理は、この効果を反転させそして器質的疼痛閾値を対照レベルへと上昇させる。このデータは、シスプラチン処理又はシスプラチン及びDCUKA処理後の器質的疼痛閾値対シスプラチン治療前の器質的疼痛閾値の比を示す。
【
図3】器質的疼痛閾値の変化によって測定した、等モル濃度用量のDCUKA、BCUKA及びガバペンチンが、シスプラチン誘導型神経障害性疼痛を反転させる効果の比較を図示する。
【
図4】完全フロイントアジュバント(CFA)を用いた処理によって誘導された神経障害性疼痛のDCUKA(50mg/kg)による反転を図示する。ラットの肢のCFA処理は、炎症を誘発し、そして器質的疼痛閾値を低下させる。DCUKA処理は、CFA処理ラットにおける器質的疼痛閾値の低下を反転し、閾値をベースラインレベルへ戻す。このデータは、CFA処理又はCFA及びDCUKA処理後の器質的疼痛閾値対CFA処理前の器質的疼痛閾値の比を示す。
【
図5】DCUKA(50mg/kg)及びBCUKA(50mg/kg)の、CFAによるラットの処理によって誘発された神経障害性疼痛を反転させる効果の比較を示す。このデータは、CFA処理又はCFA及びDCUKA若しくはBCUKA処理後の器質的疼痛閾値対ベースライン(CFA前)器質的疼痛閾値の比を示す。
【
図6】DCUKAのCFA誘導型神経障害性疼痛を反転させる用量依存的効果を決定する実験のメタ分析の結果を示す。
【
図7】糖尿病性ニューロパシーによって起こる疼痛のDCUKA(50mg/kg)による治療を図示する。ラットをストレプトゾトシン(STZ)によって処理して糖尿病を誘発する。糖尿病は、ベースライン(STZ治療前)と比較して器質的疼痛閾値を低下させる。DCUKA処理は、ベースラインに対し、器質的疼痛閾値を反転させる。このデータは、STZ処理又はSTZ及びDCUKA処理後の器質的疼痛閾値対STZ前器質的疼痛閾値の比を示す。
【
図8】DCUKAの、STZ誘導型神経障害性疼痛を反転させる用量依存的効果を決定するための、実験のメタ分析の結果を示す。
【
図9】骨関節炎性疼痛のDCUKAによる治療を図示する。ラットを、炎症性反応を開始するモノヨード酢酸(MIA)によって処理した。軟骨損傷及び分解は、慢性神経障害性疼痛をもたらし、これは、MIA又は薬物を投与されていない動物において測定したベースラインと比較して、より低い器質的疼痛閾値として反映される。DCUKAは、用量依存的様式で、器質的疼痛閾値を反転した。このデータは、MIA処理又はMIA及びDCUKA処理後の器質的疼痛閾値対MIA又は薬物を投与されていない動物における器質的疼痛閾値の比を示す。
【
図10A】DCUKAの投与が、モルヒネのCFA誘導型神経障害性疼痛を反転させる能力を増強することを図示する。
【
図10B】DCUK-OEtの投与が、モルヒネのCFA誘導型神経障害性疼痛を反転させる能力を増大することを図示する。
【
図10C】モルヒネが疼痛を反転させるために必要な最大半量有効用量を、DCUK-OEtが有意に低減することを実証する、アイソボログラム分析の結果を示す。
【
図11】DCUKAが、CFA誘導型神経障害性疼痛を反転させるオキシコドンの能力を増強することを示す。
【
図12】DCUKAが、CFA誘導型神経障害性疼痛を反転させるメサドンの能力を増強することを示す。
【
図13】DCUKAが、MIA誘導型骨関節炎性(神経障害性)疼痛を反転させるトラマドールの能力を増強することを示す。
【
図14】DCUKAが、STZ誘導型神経障害性疼痛(糖尿病性ニューロパシー)を反転させるアスピリンの能力を増強することを示す。
【
図15】DCUKAが、CFA誘導型神経障害性疼痛を反転させるジクロフェナクの能力を増強することを示す。
【
図16】CFA注射後のDCUKAの投与が、器質的疼痛閾値における変化によって測定したCFA誘導型神経障害性疼痛の発症を予防することを図示する。
【
図17】がん化学療法剤シスプラチンと同時のDCUKAの投与が、器質的疼痛閾値における変化によって測定したCFA誘導型神経障害性疼痛の発症を予防することを図示する。
【発明を実施するための形態】
【0032】
好ましい実施形態の詳細な説明
本明細書中で記載される鎮痛組成物は、慢性(神経障害性)疼痛症候群の治療に十分に適している。
【0033】
本明細書中に記載の方法は、疼痛緩和を必要とする対象(例えば、ヒト患者又は患畜)を、オピオイド、NE/5-HT再取り込みインヒビター、及び/又は非ステロイド系抗炎症薬物(NSAID)をも含むアミノキノリン含有組成物によって治療することを含む。
【0034】
本願鎮痛組成物における使用のために好適なオピオイドとしては、オピエート(すなわち、モルヒネ、コデイン、パパベリン、テバインなどの天然に存在する植物アルカロイド);半合成のオピオイド、例えば、オキシコドン、ジアモルヒネ、ジヒドロコデイン;ならびに合成のオピオイド、例えば、フェニルピリジン誘導体、例えば、6-アミノ-5-(2,3,5-トリクロロフェニル)-ピリジン-2-カルボン酸メチルアミドなど;フェニルピペリジン誘導体、例えば、フェンタニル、スルフェンタニル、アルフェンタニルなど;モルフィナン誘導体、例えば、レボルファノール、ブトルファノールなど;ジフェニルヘプタン誘導体、例えば、メサドン、プロポキシフェンなど;ベンゾモルファン誘導体、例えば、ペンタゾシン、フェナゾシンなどが、挙げられる。
【0035】
鎮痛組成物における使用のために好適な多重標的薬物としては、オピエートレセプターにおいて及び/又はモノアミン再取り込み輸送体において作用する薬物、すなわち、トラマドールなどが、挙げられる。
【0036】
鎮痛組成物における使用のために好適なNSAIDとしては、アスピリン、酢酸誘導体(例えば、インドメタシン、スリンダク、エトドラク、トルメチン、ケトロラク、ナブメトン、ジクロフェナクなど)、プロピオン酸誘導体(例えば、イブプロフェン、ナプロキセン、フェノプロフェン、ケトプロフェン、フルルビプロフェン、オキサプロジンなど)、エノール酸誘導体(例えば、ピロキシカム、メロキシカム、テノキシカムなど)、フェナム酸誘導体(例えば、メフェナム酸、メクロフェナム酸、フルフェナム酸など)、ならびに上記の薬学的に許容される塩が、挙げられる。
【0037】
本願組成物における使用のために好適なNSAID塩の例は、上記酢酸誘導体の薬学的に許容される塩、例えば、インドメタシン塩(例えば、インドメタシンナトリウム、インドメタシンメグルミンなど)、トルメチン塩(例えば、トルメチンナトリウムなど)、ケトロラク塩(例えば、ケトロラクトロメタミンなど)、ジクロフェナク塩(例えば、ジクロフェナクナトリウム、ジクロフェナクジエチルアミン、ジクロフェナクエポラミンなど)、ならびに上記のプロピオン酸誘導体の薬学的に許容される塩、例えば、イブプロフェン塩(例えば、イブプロフェンリシン、イブプロフェンメチルグルカミンなど)、ナプロキセン塩(例えば、ナプロキセンピペラジンナプロキセンナトリウムなど)、フェノプロフェン塩(例えば、フェノプロフェンカルシウムなど)である。
【0038】
式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)及び(VI)のアミノキノリン化合物は、当業者に公知の任意の従来方法によって調製され得る。例えば、Tabakoffらに対する米国特許第6,962,930号及びTabakoffに対する米国特許第7,923,458号(その全体を援用することにより組み込まれる)は、本発明のものに類似する特定のキノリン化合物アナログの調製を記載し、これは、所望のアミノキノリン化合物の調製に容易に適用可能である。スキーム1は、式(I)のアミノキノリン化合物及び構造的に関連した化合物又はアナログ化合物を4-アミノ-置換キノリン化合物(A)から調製するための一般スキームを提供し、ここで、R置換基は、式(I)におけるものと同じである。化合物(A)のアミノ基は、芳香族アミノ基に対して反応性である脱離基(LG)を含む活性化型アシル化化合物(B)、と反応して、式(I)の化合物を形成する。キノリン環構造の4位においてアミノ基を有する置換されたキノリン化合物、例えば、キノリン環系において種々の置換パターンを有する化合物(A)、及びそれらの調製は、化学分野の当業者に周知である。例えば、Protective Groups in Organic Synthesis、第3版、Green及びWuts編、JohnWiley&Sons、Inc.(1999)(本明細書中で参考として組み込まれる)に記載の保護基は、化合物(A)、化合物(B)の調製において、及び/又は化合物(A)と化合物(B)とのカップリングにおいて、式(I)の化合物の調製及び/又は単離を容易にするために必要であるか、又は所望されて、使用され得る。
【0039】
スキーム1.
【0040】
【0041】
本明細書中で使用される場合、用語「アミノキノリン化合物」は、本明細書中で記載される式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)及び(VI)に示される化合物をいう。アミノキノリン化合物は、慢性疼痛及び種々の他の症状のために有用である。
【0042】
用語「アルキル」は、本明細書中で使用される場合、直鎖状、分枝鎖状又は環状(「シクロアルキル」)であり、かつ置換されていないか、又は置換された(すなわち、その1つ以上の水素が別の原子又は分枝によって置き換えられている)飽和炭化水素基(式CnH2n+1で表される)を指す。
【0043】
「アリール」は、6-炭素ベンゼン環又は他の芳香族誘導体の縮合6-炭素環のいずれかをいう(例えば、Hawley’s Condensed Chemical Dictionary (13版),R.J.Lewis,編,J.Wiley & Sons,Inc.,New York (1997))。アリール基としては、非限定で、フェニル及びナフチルが挙げられる。
【0044】
「ヘテロアリール」環は、環内に少なくとも1つの炭素原子を含み、そして環を形成する1つ以上の、典型的には1~4の、炭素原子以外の原子である原子、すなわち、ヘテロ原子(典型的にはO、N又はS)を含む、芳香族環である。ヘテロアリールとしては、非限定で、以下が挙げられる:モルホリニル、ピペラジニル、ピペリジニル、ピリジル、ピロリジニル、ピリミジニル、トリアジニル、フラニル、キノリニル、イソキノリニル、チエニル、イミダゾリニル、チアゾリル、インドリル、ピロリル、オキサゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾチエニル、ベンゾチアゾリル、ベンゾオキサゾリル、イソオキサゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、インダゾリル、インドリニル、インドリル-4,7-ジオン、1,2-ジアルキル-インドリル、1,2-ジメチル-インドリル、及び1,2-ジアルキル-インドリル-4,7-ジオンが挙げられる。
【0045】
「アルコキシ」は、-ORを意味し、ここで、Rは、上で定義されたアルキルであり、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、2-プロポキシなどである。
【0046】
「アルケニル」は、少なくとも1つの二重結合を含む、2~6の炭素原子の直鎖状一価炭化水素ラジカル又は3~6炭素原子の分枝鎖状一価炭化水素ラジカルを意味する(例えば、エテニル、プロペニルなど)。
【0047】
「アルキニル」は、少なくとも1つの三重結合を含む、2~6の炭素原子の直鎖状一価炭化水素ラジカル又は3~6炭素原子の分枝鎖状二価炭化水素ラジカルを意味する(例えば、エチニル、プロピニルなど)。
【0048】
「ハライド」及び「ハロ」は、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素を含むハロゲン原子をいう。
【0049】
置換基の分類は、例えば、C1-6アルキルは公知であり、ここでは、その個々の置換基の員の各々、例えば、C1アルキル、C2アルキル、C3アルキル及びC4アルキルを含むことをいう。
【0050】
「置換された」は、指示された原子上の1つ以上の水素原子が、示された群から選択されたものと置き換えられることを意味し、ただし、この指示された原子の正常の原子価を超えず、そしてこの置換は、安定的な化合物を生じることが条件である。
【0051】
「置換されていない」原子は、その原子価によって支持される水素原子を全て有する。置換基が、例えば、「ケト」である場合、この原子上の2つの水素は、置き換えられる。置換基及び/又は変数の組み合わせは、そのような組み合わせが安定的な化合物を生じる場合にのみ、許容される;「安定的な化合物」又は「安定的な構造」は、反応混合物からの有用な程度の純度までの単離、及び有効な治療剤への製剤化に耐え得るだけ充分に、強固である化合物を意味する。
【0052】
「薬学的に許容される」は、塩又は担体に対する言及において使用される場合、ヒトの体又はその部分への投与又はそれらへの接触のために好適であるとして一般的に許容される物質をいう。薬学的に許容される塩は、親化合物(例えば、式(I)のアミノキノリン化合物)又は何らかの他の治療剤若しくは賦形剤が、その酸又は塩を製造することによって改変されている物質である。薬学的に許容される塩の例としては、限定されないが、塩基性残基(例えば、アミン)の鉱酸塩若しくは有機酸塩、又は酸性残基(例えば、カルボン酸)のアルカリ塩若しくは有機塩が、挙げられる。薬学的に許容される塩としては、例えば、非毒性の無機酸又は有機酸から形成された、親化合物の従来の非毒性塩又は第4級アンモニウム塩が挙げられる。このような従来の非毒性塩としては、無機酸から誘導されるもの(例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、スルファミン酸塩、リン酸塩、硝酸塩など);ならびに有機酸から調製される塩(例えば、酢酸塩、プロピオン酸塩、コハク酸塩、グリコール酸塩、ステアリン酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、アスコルビン酸塩、パモ酸塩、マレイン酸塩、ヒドロキシマレイン酸塩、フェニル酢酸塩、グルタミン酸塩、安息香酸塩、サリチル酸塩、スルファニル酸塩、2-アセトキシ安息香酸塩、フマル酸塩、トルエンスルホン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンジスルホン酸塩、シュウ酸塩、イセチオン酸塩など)が、挙げられる。薬学的に許容される塩は、過度の毒性、刺激、アレルギー反応又は他の問題若しくは合併症を伴うことなく、ヒト及び動物の組織に接触した使用のために好適な、損益比に見合った、化合物のこれらの形態である。
【0053】
本明細書中で提供されるアミノキノリン化合物の薬学的に許容される塩形態は、塩基性部分又は酸性部分を含む親化合物から、従来の化学的方法によって合成される。一般的に、このような塩は、例えば、これらの化合物の遊離酸形態又は遊離塩基形態を、水中若しくは有機溶媒中又はこれらの混合物中の適切な塩基又は酸の理論量と反応させることによって、調製される。一般的に、エーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノール又はアセトニトリルなどの非水性媒体が、好ましい。好適な塩のリストは、Remington’s Pharmaceutical Sciences,第17版,Mack Publishing Company,Easton,Pa.,1985,p.1418(その開示は本明細書中で参考として組み込まれる)において見いだされる。
【0054】
「プロドラッグ」は、このようなプロドラッグが哺乳動物対象に投与された場合に、インビボでアミノキノリン化合物の活性な親薬物を放出する、任意の共有結合した担体である。本発明のアミノキノリン化合物のプロドラッグは、化合物中に存在する官能基を改変する(この改変は、酵素変換を含む、慣用的操作又はインビボでのいずれかで開裂し、親化合物になる)ことによって調製される。プロドラッグとしては、ヒドロキシ基、アミン基又はスルフヒドリル基が任意の基に結合して、哺乳動物対象に投与された場合に開裂して、遊離のヒドロキシル基、アミノ基、又はスルフヒドリル基をそれぞれ形成する化合物が、挙げられる。例又はプロドラッグとしては、限定されないが、本発明のアミノキノリン化合物におけるアルコール官能基及びアミン官能基のアセテート誘導体、ホルメート誘導体及びベンゾエート誘導体などが、挙げられる。本発明のアミノキノリン化合物のプロドラッグとして効果的に機能する化合物は、当該分野で公知の慣用技術を用いて、同定され得る。このようなプロドラッグ誘導体の例については,例えば、(a)Design of Prodrug edited by H.Bundgaard,(Elsevier,1985)and Methods in Enzymology,Vol.42,p.309-396,edited by K.Widderら(Academic Press,1985);(b)A Textbook of Drug Design and Development,edited by Krogsgaard-Larsen and H.Bundgaard,Chapter 5 “Design and Application of Prodrug,” by H.Bundgaard p.113-191(1991);(c)H.Bundgaard,Advanced Drug Delivery Reviews,8,1-38(1992);(d)H.Bundgaardら,Journal of Pharmaceutical Sciences,77:285(1988);and(e)N.Kakeyaら,Chem.Pharm.Bull.,32:692(1984)(これらのそれぞれは、本明細書中で参考として組み込まれる)を参照されたい。
【0055】
さらに、本発明はまた、アミノキノリン化合物の溶媒和物、代謝産物、及び薬学的に許容される塩を含む。
【0056】
用語「溶媒和物」とは、分子と1つ以上の溶媒分子との凝集体をいう。「代謝産物」は、体内でインビボ代謝を介して生成される、特定の化合物又はその塩の薬理学的に活性な生成物である。このような生成物は、例えば、投与された化合物の酸化、還元、加水分解、アミド化、脱アミド化、エステル化、脱エステル化、酵素的開裂などから生じ得る。したがって、本発明は、本発明の化合物を哺乳動物に充分な期間にわたって接触させて、その代謝産物を生じることを含むプロセスによって生成される化合物を含む、アミノキノリン化合物の代謝産物を含む。
【0057】
医薬組成物及び治療レジメン。
1つの局面において、本発明は、薬学的有効量のアミノキノリン化合物を、オピオイド又はNSAIDと共に薬学的に許容される担体(例えば、希釈剤、錯化剤、添加剤、賦形剤、アジュバントなど)中に含む医薬組成物を、提供する。アミノキノリン組成物は、例えば、塩形態、微結晶形態、ナノ結晶形態、ナノ粒子形態、ミクロ粒子形態、及び/又は非晶質形態で存在してもよい。担体は、外用、腸内又は非経口投与に好適な、有機又は無機の担体であってもよい。本発明のアミノキノリン組成物は、例えば、通常の非毒性の、薬学的に許容される担体を用いて、丸剤、ペレット、カプセル、リポソーム、坐剤、鼻腔内スプレー、溶液、乳液、懸濁剤、エアロゾル、標的化化学送達系、このような使用に好適な、薬学的製剤分野で周知の任意の他の形態で、配合されてもよい。使用され得る担体の非限定の例としては、水、グルコース、ラクトース、アカシアゴム、ゼラチン、マンニトール、デンプンペースト、三ケイ酸マグネシウム、タルク、コーンスターチ、ケラチン、コロイド状シリカ、バレイショデンプン、尿素、ならびに調製剤を固体で、半固体で、液体で又はエアロゾル形態で製造するために好適な他の担体が、挙げられる。さらに、補助剤、安定化剤、増粘剤及び着色剤及び香料が、使用されてもよい。
【0058】
医薬組成物は、本明細書中で記載される少なくとも1つのアミノキノリン化合物を、オピオイド、NE-又は5HT取り込みインヒビター及び/又はNSAID及び薬学的に許容される担体、ビヒクル、又は生理学的に許容されるpH(例えば、pH7~8.5)の水性緩衝液などの希釈剤、ポリマーベースのナノ粒子ビヒクル、リポソームなどと組み合わせて、含む。医薬組成物は、任意の好適な投薬形態、例えば、液体、ゲル、固体、クリーム、又はペーストの投薬形態で、送達され得る。1つの実施形態において、組成物は、アミノキノリン化合物の持続性放出を得るために適用されてもよい。
【0059】
いくつかの実施形態において、医薬組成物としては、限定されないが、経口、直腸、鼻内、局所、(経頬及び舌下を含む)、経皮、膣内、非経口(筋肉内、腹腔内、皮下、及び静脈内を含む)、脊髄(硬膜外、髄腔内)、及び中央(側脳室内)投与に好適な形態が挙げられる。組成物は、適切な場合、別個の投薬単位内で便利に提供されてもよい。本発明の医薬組成物は、薬学分野で周知のいずれかの方法によって、調製されてもよい。いくつかの好ましい投与様式としては、静脈内(iv)、局所、皮下、経口及び脊髄が、挙げられる。全身投与のために、アミノキノリン化合物は、一般的に、体重1キログラムあたり約1ミリグラム(mg/kg)~約200mg/kgのアミノキノリン化合物の範囲の投薬量で、対象に投与されるであろう。典型的には、投与される投薬量は、対象において、約100ナノモル濃度(nM)~約100マイクロモル濃度(mM)のアミノキノリン化合物の濃度を提供するために十分であるべきである。
【0060】
経口投与のために好適な医薬組成物としては、それぞれ所定量の1つ以上のアミノキノリン化合物を、粉末又は顆粒として含む、カプセル剤、カシェ剤、又は錠剤が挙げられる。別の実施形態において、経口組成物は、溶液、懸濁剤、又は乳液である。あるいは、鎮痛組成物を含むアミノキノリン化合物が、ボーラス剤、舐剤又はペーストとして低起用されてもよい。経口投与のための錠剤及びカプセル剤は、結合剤、フィラ―、滑沢剤、崩壊剤、着色剤、風味添加剤、保存料、又は湿潤剤などの、従来型の賦形剤を含み得る。錠剤は、所望される場合、当該分野で周知の方法にしたがってコーティングされてもよい。経口液体調製剤としては、例えば、水性又は油性の懸濁剤、溶液剤、乳液、シロップ、又はエリキシル剤が挙げられる。あるいは、組成物は、水又は別の好適なビヒクルでの使用前の構成のために、乾燥製剤として提供されてもよい。このような液体調製剤は、従来型の添加剤、例えば、懸濁化剤、乳化剤、非水性ビヒクル(食用油を含み得る)、保存料などを含んでもよい。典型的には、添加剤、賦形剤などが、経口投与のための組成物中に、組成物中でのその意図される用途又は機能に好適な、薬学製剤分野で周知である濃度範囲で、含まれる。
【0061】
非経口、脊髄、又は中央投与(例えば、ボーラス注射又は連続輸液による)のための医薬組成物が、アンプル、事前充填シリンジ、小容量輸液又は多回用量容器中で、好ましくは、添加された保存料を含む、単位用量形態で提供されてもよい。非経口投与のための組成物は、懸濁剤、溶液、又は乳液であってもよく、賦形剤、例えば、懸濁化剤、安定化剤、及び分散化剤を含んでもよい。典型的には、添加剤、賦形剤などが、非経口投与のための組成物中に、組成物中でのその意図される用途又は機能に好適な、薬学製剤分野で周知である濃度範囲で、含まれる。アミノキノリン化合物は、医学及び薬学分野で周知の慣用的方法によって決定された治療的に有用かつ有効な濃度範囲内で、組成物に含まれる。
【0062】
表皮(粘膜表面又は皮膚表面)への局所投与のための医薬組成物は、軟膏、クリーム、ローション、ゲル、又は経皮パッチとして製剤化され得る。このような経皮パッチは、例えば、リナロール、カルバクロール、チモール、シトラール、メントール、t-アネトールなどの浸透増強剤を含んでもよい。軟膏及びクリームは、例えば、好適な増粘剤、ゲル化剤、着色料などを添加した水性又は油性基剤を含んでもよい。ローション及びクリームは、水性又は油性基剤を含み、典型的には、乳化剤、安定化剤、分散化剤、懸濁化剤、増粘剤、着色剤などの1つ以上をも含む。ゲルは、好ましくは、水性の担体基剤を含み、そしてゲル化剤、例えば、架橋ポリアクリル酸ポリマー、誘導体化多糖類(例えば、カルボキシメチルセルロース)などを含む。典型的には、添加剤、賦形剤などが、局所投与のための組成物中に、組成物中でのその意図される用途又は機能に好適な、薬学製剤分野で周知である濃度範囲で、含まれるであろう。
【0063】
経頬又は舌下投与に好適な医薬組成物投薬形態としては、風味添加基剤(例えば、ショ糖、アカシア、又はトラガカント)中に鎮痛剤を含むロゼンジ;アミノキノリン化合物を不活性基剤(例えば、ゼラチン及びグリセリン又はショ糖及びアカシア)中に含むトローチ;及び活性成分を好適な液体担体中に含むマウスウォッシュが、挙げられる。局所投与のための医薬組成物投薬形態は、所望される場合、浸透増強剤を含んでもよい。典型的には、添加剤、賦形剤などが、局所経口投与のための組成物中に、組成物中でのその意図される用途又は機能に好適な、薬学製剤分野で周知である濃度範囲で、含まれる。鎮痛剤は、医学及び薬学分野で周知の慣用的方法によって決定された治療的に有用かつ有効な濃度範囲内で、組成物に含まれる。
【0064】
直腸投与のために、鎮痛剤は、固体又は半固体(例えば、クリーム又はペースト)の担体又はビヒクル中で提供される。例えば、このような直腸組成物は、単位用量坐剤として提供されてもよい。好適な担体又はビヒクルとしては、カカオバター及び当該分野でよく使用される他の材料が挙げられる。典型的には、添加剤、賦形剤などが、直腸投与のための組成物中に、組成物中でのその意図される用途又は機能に好適な、薬学製剤分野で周知である濃度範囲で、含まれるであろう。
【0065】
膣内投与に好適な本発明の鎮痛組成物が、本発明のアミノキノリンを当該分野で公知の担体と組み合わせて含むペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、泡又はスプレーとして提供される。あるいは、膣内投与に好適な組成物は、液体又は固体の投薬形態で送達されてもよい。典型的には、添加剤、賦形剤などが、膣内投与のための組成物中に、組成物中でのその意図される用途又は機能に好適な、薬学製剤分野で周知である濃度範囲で、含まれるであろう。
【0066】
鼻腔内投与に好適な鎮痛組成物もまた、本発明に含まれる。このような鼻腔内組成物は、鎮痛剤に加えて、送達ビヒクル及び液体スプレー、分散性粉末又はドロップを含む、送達するために好適なデバイスを含む。ドロップは、分散化剤、可溶化剤、又は懸濁化剤の1つ以上をも含む、水性又は非水性基剤によって製剤化され得る。液体スプレーは、加圧パック、注入器、ネブライザー、又はアミノキノリンを含むエアロゾルを送達する他の便利な手段から、便利に送達される。加圧パックは、好適な高圧ガス(例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素、又は当該分野で周知の他の好適なガスを含む。エアロゾル投薬量は、アミノキノリンの測定された量を送達するために提供されるバルブによって、制御され得る。あるいは、吸入又は吹送による投与のための医薬組成物が、乾燥粉末組成物(例えば、鎮痛剤と乳糖又はデンプンなどの好適な粉末基剤との粉末混合物)の形態で、提供され得る。このような粉末組成物は、例えば、カプセル、カートリッジ、ゼラチンパック、又はブリスターパック(吸入剤又は吹送剤の補助により粉末がこの中から投与される)内の単位投薬形態で、提供され得る。典型的には、添加剤、賦形剤などが、鼻腔内投与のための組成物中に、組成物中でのその意図される用途又は機能に好適な、薬学製剤分野で周知である濃度範囲で、含まれるであろう。
【0067】
慢性疼痛(例えば、神経障害性疼痛)を緩和する方法は、上述の症状のうちの1つに罹患した患者に、有効量のアミノキノリン化合物を、オピオイド及び/又はNSAID及び/又は5-HT/NE取り込みインヒビターと一緒に投与することを含む。好ましくは、鎮痛組成物は、非経口的に又は経腸的に投与される。有効量のアミノキノリン化合物の投薬は、治療される患者各個人の年齢及び症状に依存して変動し得る。アミノキノリン化合物の好適な投薬量は、典型的には、約1mg/kg~約200mg/kgの範囲に及び、アミノキノリン化合物は、オピオイド、NSAID及び/又は5-HT/NE取り込みインヒビター(これらの特定の化合物の推奨用量の十分の一から全用量で)と一緒に投与され得る。このような投薬形態は、1日に1回以上、週に1回以上、月に1回以上などで、投与され得る。
【0068】
本明細書中で使用される場合、用語「軽減する」、「阻害する」、「ブロックする」、「予防する」、「緩和する(alleviating)」、「緩和する(relieving)」、及び「アンタゴニスト」は、組成物について言及する場合、本化合物を含む組成物の適用なしで通常に存在する症状、事象又は活性と比較して、本化合物が、症状、事象又は活性の発症、重篤度、大きさ、容量又は関連の症候を、少なくとも約7.5%、10%、12.5%、15%、17.5%、20%、22.5%、25%、27.5%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、90%、又は100%低下させることを意味する。用語「増加させる」、「上昇させる」、「増大させる」、「上方制御する」、「改善する」、「活性化させる」、「アゴニスト」は、化合物について言及する場合、本組成物の適用なしで通常に存在する症状、事象又は活性と比較して、本化合物が、症状、事象又は活性の発症、重篤度、大きさ、容量又は関連の症候を、少なくとも約7.5%、10%、12.5%、15%、17.5%、20%、22.5%、25%、27.5%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、90%、100%、150%、200%、250%、300%、400%、500%、750%、又は1000%増加させることを意味する。
【0069】
以下の実施例は、本発明の特定の側面を実証するために含まれる。本実施例内に開示される技術(本発明を実施する際に十分に機能することが公知である技術を代表する)は、その実施のために好ましい態様を構成するものと考えられ得ることを、当業者は理解するべきである。しかし、当業者は、本開示の観点において、開示された特定の実施形態において多くの変更がなされ得、本発明の精神及び範囲を逸脱することなく類似又は同様の結果をなおも得ることができることを、理解するべきである。本実施例は、説明のみの目的のために提供されるものであり、限定することを意図しない。
【実施例】
【0070】
増強/相乗確認の方法。
【0071】
薬物効果における増強/相乗の定義は比較的単純であるが、相乗作用を示すためのアプローチは、必ずしも決まっているわけではない。Foucquier及びGued(2015)による方法論の概説は、薬物組み合わせの効力を測定するための分析アプローチに注目しており、現在使用される方法の簡潔な説明を提示している。この方法は、4つのアプローチからなる「効果に基づく戦略」に分類される:(1)閾値以下の組み合わせ;(2)最高単剤アプローチ;(3)走化性応答及び(4)ブリス独立性モデル;ならびに、最初にLoewe(1926)によって述べられ現在ではアイソボログラム分析(Tallarida 2001)と呼ばれる、「用量-効果に基づく戦略」。この「効果に基づく戦略」の中で、4つ全てのアプローチが、記載の薬物組み合わせを用いて増強/相乗作用について試験するために利用されている。4つ全てのアプローチは、一致する結果を提示した。
【0072】
オピオイド/NSAID/5-HT及びNE再取り込みインヒビターの効力を増大するためのDCUKAの使用
以下のデータは、慢性疼痛を軽減するための閾値用量と同等であるDCUKAの用量が、慢性炎症性疼痛のラットモデル(フロイントアジュバントモデル)又は骨関節炎のラットモデル(MIA)において、低用量のオピオイド、NSAID又はノルエピネフリン及び/又はセロトニン(例えば、トラマドール)のシナプス取り込みを阻害することによって疼痛を軽減する化合物と共に投与される場合、慢性疼痛の軽減において、オピオイド、NSAID及び/又はセロトニン/ノルエピネフリン再取り込みインヒビターの効力を増大することを示す。モルヒネ以外のオピオイドに関して、「モルヒネ同等用量尺度」又は「モルヒネミリグラム等量(MME)」の標準が、モルヒネの特定の日用量と当効力である別の鎮痛剤の量を確かめるために、使用され得る。DCUKA、又はDCUK-OEt(DCUKAについてのプロドラッグとして作用する)の、モルヒネと一緒の投与は、モルヒネの効力を、4~5倍増大する。日用量ベースで与えられる別の鎮痛剤の用量(問題の鎮痛剤の、用量及びこの用量の1日当たりに投与される回数)を計算するためにMMEを用いると、疼痛治療のためのDCUKA又はDCUK-OEtの追加は、モルヒネがDCUKA/DCUK-OEtと共に与えられる場合に、モルヒネ用量の低減と同じ様式で鎮痛剤用量の低減を可能にする。
【0073】
DCUKA又はDCUK-OEtを、鎮痛作用を増強するために使用する場合の、与えられる鎮痛剤の用量の計算。
【0074】
DCUKAと共に与えられる場合の別の鎮痛剤の用量は、以下の式によって計算され得る:
オピオイド鎮痛剤の用量=類似の状況で使用されるモルヒネの日用量
÷MME÷DCUKA又はDCUK-OEtの追加の結果としての
オピオイド効力における増大に基づく倍数
例として、オキシコドンの用量を計算するために、以下の情報が使用される:(1)目的のオピオイド(この場合、オキシコドン)についてのMMEは、1.5である(Von Korffら、Clin.J.Pain 24(6):521-527(2008));(2)患者によって報告される疼痛のレベルを治療するために必要なモルヒネの日用量。評価尺度の使用は、この点で重要である(Schneiderら、2003)。中程度から重度の疼痛について、モルヒネ(経口)の単回用量は、10~30mgの間で変動し得、このような用量が、1日に6回摂取される(すなわち、60~180mg/日);(3)オピオイドの用量が疼痛のための投薬レジメンにDCUKAを追加することによって低減し得る倍数。
【0075】
ヒトのための、DCUKAの用量は、1日に2~3回与えられる、150~450mgの間で変動し得る。DCUKAがこのように投与される場合、使用されるオピオイドの用量は、4~5倍低下し得る(この倍数は、
図11及び12におけるデータに基づいて決定される)。疼痛治療専門医は、患者を楽にするために必要な投薬量を調製するために、患者を綿密にモニタリングしなければならない。これは、オピオイド又はDCUKAの用量を、推奨範囲内で増加することによって、達成され得る。
【0076】
実際の用量計算の例
【0077】
オキシコドン/日の開始用量=(60mg[モルヒネ日開始用量])÷(1.5[MME])÷(5=オピオイド低減倍率)=8mg/日
メサドン/日の開始用量=(60)÷(4)÷(5)=3mg/日。
疼痛を制御するために与えられるメサドンは、通常、6週間の期間にわたって上方に用量決定する。DCUKAと共に与えられる用量の低減は、同様に用量決定され得る。
【0078】
慢性疼痛症候群の治療のためにヒトへの使用が認可されている他のオピオイドについて、類似の計算を行い得る。知覚される疼痛の量において個々人の間で有意な差が存在すること、及び、知覚された疼痛もまた、疼痛の原因及び損傷の程度によって変動し得ることは、当業者には明らかなはずである。この実施例は、無痛症/抗痛覚過敏のレベルを維持すると同時に、DCUKAの投与と併せてオピオイドの用量を低減する方法を考慮することができる例証である。疼痛のさらなる制御が必要である場合、DCUKA及び/又はオピオイドの日用量は、徐々に増大し得る(増大は、DCUKA又はオピオイドの日用量における25~50%を含む)。
【0079】
NSAIDのDCUKAと一緒の使用のために、DCUKAと一緒に与えた場合にNSAIDの用量が低減し得る倍数は、約5~約6の範囲内であることを除いて、同じ原則を適用する。
【0080】
ジクロフェナクの日用量=(60mg[モルヒネ日用量])÷(0.10)÷(6)=100mg
ジクロフェナクナトリウムを接種されるヒトについて、推奨は、225mg/日を超えないことである。
【0081】
したがって、DCUKA及びそのプロドラッグ(DCUK-OEt)が、オピオイド及びNSAIDの効力を増大し得るという発見に基づき、オピオイド及びNSAIDの日用量の下方修正は、疼痛緩和を維持しながら副作用の低下をもたらす。
【0082】
NE/5-HT再取り込みインヒビターについての刊行されたMEE値が存在しない場合、骨関節炎(
図9)の治療のためにDCUKAと併せて与えられるトラマドールの効果に対し、本発明者らが提示しているデータを、使用することができる。トラマドールは、オピオイドを弱めるが、NE/5-HT再取り込みインヒビターとしての実質的な効果を有することが示されている(Barber、2011)。他のNE/5-HT再取り込みインヒビターは、デュロキセチン、ベンラファキシン、ミルナシプランなどである。このデータは、2~3回用量/日の150~450mgのDCUKAと一緒にヒトに与える場合、NE/5-HT再取り込みインヒビターの用量を、二分の一にすることができることを示す。
【0083】
実施例1. 式(VI)の化合物の調製
5,7-ジクロロ-4-(3,3-ジフェニルウレイド)キノリン-2-カルボン酸(DCUKA、7a)を含む、第3級ウレイド基を含むキヌレン酸の誘導体を、反応性カルバモイルクロリド中間体(6a-b)の使用を通して、以前に記載されたとおりに合成してもよい(Snellら、2000)。しかし、最終アシル化反応の間に同時に起こるエステル加水分解に起因して、この合成において改善を達成することができる。1つの化合物実施形態である5,7-ジクロロ-4-(3,3-ジブチルウレイド)キノリン-2-カルボン酸(BCUKA、7b)を、スキーム2において説明され図示される通りの合成段階I~IVにおいて、本方法を介して合成した(試薬及び条件(I):MeOH,還流,16h.(II):Ph2O,250℃,2h.(III):(a)ClSO2NCO,MeCN,還流,2h.(b)HCl,MeOH,RT,30min.(IV):NaH,DMF,0℃~RT,16h)。
【0084】
【0085】
合成段階I.
3,5-ジクロロアニリン(1、5.00g、30.9mmol)及びジメチルアセチレンジカルボキシレート(2、3.80ml、30.9mmol)を、無水MeOH(60ml)中にて窒素下で合わせ、そして16時間にわたって還流した。反応混合物を、室温まで冷まし、そして乾燥するまで蒸発させた。得られた黄色固体を、MeOHから再結晶化して(2回)、標的のジメチルアニリノマレエート(3)のシス及びトランスアイソマーの混合物を、薄黄色結晶として得た(5.23g、17.2mmol)。重水素化DMSO中で実施した1HNMRスペクトルにて見出した吸収ピーク値(ppm)は、3.57&3.67(3H,s),3.72&3.80(3H,s),5.35&5.58(1H,s),6.98&7.12(2H,sapp),7.23&7.31(1H,sapp),9.52&9.64(1H,br,s)であった。
【0086】
合成段階II.
ジメチルアニリノマレエート(3、3.50g、11.5mmol)を、ジフェニルエーテル(70ml)に250℃にて少しずつ加えた。得られた溶液の温度を、250℃にて2時間にわたって維持し、その後室温まで冷まして、ヘキサン(100ml)で希釈した。得られた沈殿物を、可溶性の不純物を濾別する前に、濾過によって取り出し、ヘキサン(50ml)で洗浄し、そして還流エタノール中で懸濁した。濾取固体を、真空下で乾燥させて、所望のキノロンカルボキシレート(4)を、オフホワイト固体として得た(3.10g、11.4mmol)。重水素化DMSO中で実施した1HNMRスペクトルにおいて見いだされた吸収ピーク値(ppm)は、3.96(3H,s),6.59(1H,s),7.42(1H,s),7.97(1H,s),12.05(1H,br)であった。このプロセスを、連続流動装置(Cao、2017)を用いて使用して、ジフェニルエーテルの存在下で高温に反して移動させるように、適合し得る。
【0087】
合成段階III.
クロロスルホニルイソシアネート(1.20ml、13.8mmol)を、キノリンカルボキシレート(4、2.50g、9.19mmol)の無水MeCN(35ml)中スラリーに、室温で添加した。この混合物を、1.5時間にわたって還流にし、この時点で加熱を止め、HClの無水MeOH(20ml)中1.0Mの溶液を加えた。反応混合物を、1時間後に沈殿物が形成されるまで撹拌しながら、室温まで冷ました。沈殿物を、濾過して取り出し、MeCNで洗浄し、そして空気乾燥させた。フィルターケークを、水(50ml)中に懸濁し、これに飽和炭酸ナトリウム溶液(約5ml)をpH10まで加え、懸濁剤の粘性を高めた。得られた固体を濾過によって収集し、冷水で洗浄して、真空下で乾燥させて(40℃)、標的アミノキノリン(5)を、オフホワイト固体として得た(1.82g、6.71mmol)。重水素化DMSO中で実施した1HNMRスペクトルにおいて見いだされた吸収ピーク値(ppm)は、p4.05(3H,s),6.04(2H,s),7.33(1H,s),7.47(1H,d,J=1.9Hz),8.10(1H,d,J=1.9Hz)であった。
【0088】
合成段階IV.
5,7-ジクロロ-4-(3,3-ジブチルウレイド)キノリン-2-カルボン酸(BCUKA、7b)を生じる、アミノキノリン(5)のアシル化及び同時のエステル加水分解を以下のように実施した;N,N-ジブチルカルバモイルクロリド(6b、96mg、0.50mmol)及びアミノキノリン(5、113mg、0.42mmol)を、無水DMF(2ml)中に溶解し、そして0℃まで冷却した。鉱物油中の水素化ナトリウム分散液(60%、35mg、0.83mmol)を添加し、そしてこの混合物を、室温まで温めて、そして16時間にわたって撹拌した。反応を、飽和NH4Cl溶液(1ml)への添加によってクエンチし、その後、pH3まで1.0MHCl水溶液によって調整した。EtOAc(2x10ml)による抽出及びその後の飽和ブライン(5ml)による洗浄及び乾燥(Na2SO4)により、淡黄色油として粗生成物を得た。シリカゲルクロマトグラフィー(9:1 DCM:MeOH)を介した化合物精製により、5,7-ジクロロ-4-(3,3-ジブチルウレイド)キノリン-2-カルボン酸(DBCUKA、7b)を、淡黄色固体(82mg、0.20mmol)として得た。CDCl3中で実施した1HNMRスペクトルにおいて見いだされた吸収ピーク値(ppm)は、1.00(6H,t,J=7.4Hz),1.36-1.45(4H,m),1.64-1.72(4H,m),3.39-3.45(4H,m),5.17(1H,s),7.69(1H,s),8.30(1H,s),9.16(1H,s)であった。
【0089】
カルバモイルクロリドは、その市場での入手可能性が限定的であり、及びその上、(特に加水分解に対する)特に高い反応性及びその後の安定性の低さによって特徴づけられる。このことは、モノ-n-置換カルバモイルクロリドの場合に、特に明白である。したがって、キヌレン酸のモノ-n-置換アナログを調製するために、反応性を弱めた代替のカルバモイルカチオン等価物を利用することが、有益であった。カルバモイルイミダゾール(例えば、9a~d)は、尿素、チオ尿素、カルバメート、チオカルバメート及びアミドを含む種々の官能基の合成のために、好適な反応性の種であることが、示されている(Grzybら、2005)。第2級ウレイド基を含むキヌレン酸の誘導体を、スキーム3で説明され図示される合成段階V~VIIにおいてこのアプローチを使用して調製した(試薬及び条件:(V):CDI,DCM,0℃~RT,16h.(VI):5,NaH,DMF,0℃~RT,16h.(VII)TFA,DCM,RT,16h.)。
【0090】
【0091】
合成段階Vの一般例。
DCM(1ml)中のn-ブチルアミン(8a、100μl、74mg、1.01mmol)を、CDI(0.197g、1.21mmol)のDCM(5ml)中溶液に0℃にて加え、その後、反応混合物を、RTまで温め、一晩混合した。溶液を、DCM(10ml)で希釈し、水(2x10ml)及びブライン(10ml)で洗浄し、乾燥させ(Na2SO4)そして乾燥するまで蒸発させて、標的カルバモイルイミダゾール(9a)を、無色の油として得た(115mg、0.69mmol)。CDCl3中で実施した1HNMRスペクトルにおいて見いだされた吸収ピーク値(ppm)は、0.97(3H,t,J=7.4Hz),1.42(2H,qt,J=7.6,7.3Hz),1.63(2H,tt,J=7.3,7.0Hz),3.44(2H,dt,J=7.0,6.7Hz),6.75(1H,br),7.07(1H,s),7.42(1H,s),8.17(1H,s)であった。
【0092】
N-(3-(ジメチルアミノ)プロピル)-1H-イミダゾール-1-カルボキサミド(9b)を、合成段階Vに記載の通りに、3-ジメチルアミノプロピルアミン(8b)から調製した。CDCl3中で実施した1HNMRスペクトルにおいて見いだされた吸収ピーク値(ppm)は、1.77(2H,tt,J=5.7,5.5Hz),2.32(6H,s),2.56(2H,t,J=5.5Hz),3.54(2H,dt,J=5.9,5.5Hz),7.07(1H,s),7.27(1H,s),8.04(1H,s),9.34(1H,br)であった。
【0093】
tert-ブチル(3-(1H-イミダゾール-1-カルボキサミド)プロピル)カルバメート(9c)を、tert-ブチル(3-アミノプロピル)カルバメート(8c)から、合成段階Vに記載の通りに調製した。CDCl3中で実施した1HNMRスペクトルにおいて見いだされた吸収ピーク値(ppm)は、1.49(9H,s),1.73(2H,tt,J=5.8,5.7Hz),3.30(2H,dt,J=6.4,5.7Hz),3.48(2H,dt,J=6.0,5.8Hz),4.91(1H,br),7.11(1H,s),7.52(1H,s),7.92(1H,br),8.25(1H,s)であった。
【0094】
tert-ブチル(3-(1H-イミダゾール-1-カルボキサミド)プロピル)(メチル)カルバメート(9d)を、N-(3-アミノプロピル)-N-メチルカルバミン酸tert-ブチルエステル(8d)から、合成段階Vに記載の通りに調製した。CDCl3中で実施した1HNMRスペクトルにおいて見いだされた吸収ピーク値(ppm)は、1.49(9H,s),1.74-1.80(2H,br),2.87(3H,s),3.35-3.43(4H,m),7.09(1H,s),7.53(1H,s),8.11(1H,br),8.25(1H,s)であった。
【0095】
合成段階VIの一般例。
合成段階IVにおけるカルバモイルクロリドに類似の様式で、カルバモイルイミダゾール(9a~d)を使用することにより、アミノキノリン(5)のアシル化及び同時のエステル加水分解を含む1工程を可能にし得る。このアプローチは、4-(3-ブチルウレイド)-5,7-ジクロロキノリン-2-カルボン酸(10a)の合成のために、以下の通りに使用される;N-ブチル-1H-イミダゾール-1-カルボキサミド(9a、125mg、0.95mmol)及びアミノキノリン(5、215mg、0.79mmol)を、無水DMF(4ml)中に溶解し、0℃まで冷却した。鉱物油中の水酸化ナトリウム分散液(60%、63mg、1.58mmol)を加え、この混合物を、室温まで温めて、16時間にわたって撹拌した。反応を、飽和NH4Cl溶液(3ml)の添加を介してクエンチし、その後、pH3まで1.0M HCl水溶液を用いて調整した。EtOAc(2x20ml)による抽出後、飽和ブラインで(10ml)洗浄し、そして乾燥させて(Na2SO4)、粗生成物を、淡橙残渣として得た。逆相(C18)シリカゲルクロマトグラフィー(1:1 H2O:MeCN)を介した化合物精製により、4-(3-ブチルウレイド)-5,7-ジクロロキノリン-2-カルボン酸(10a)を、ベージュの固体として得た(142mg、0.39mmol)。重水素化DMSO中で行われた1HNMRスペクトルにおいて見いだされた吸収ピーク値(ppm)は、0.92(3H,t,J=7.3Hz),1.31-1.38(2H,m),1.44-1.52(2H,m),3.16(2H,dt,J=6.6,6.0Hz),7.47(1H,br),7.87(1H,d,J=2.2Hz),8.11(1H,d,J=2.2Hz),8.68(1H,s),9.12(1H,br)であった。
【0096】
5,7-ジクロロ-4-(3-(3-(ジメチルアミノ)プロピル)ウレイド)キノリン-2-カルボン酸(10b)を、N-(3-(ジメチルアミノ)プロピル)-1H-イミダゾール-1-カルボキサミド(9b)から、合成段階VIに記載の通りに調製した。標的化合物の双性イオンの性質に起因して、pH1/2までの酸性化を、TFAによって実施し、その後逆相(C18)クロマトグラフィーを行って、TFA塩形態で生成物を得た。D2O中で実施した1HNMRスペクトルにおいて見いだされた吸収ピーク値(ppm)は、1.87-2.00(2H,m),2.87(6H,s),3.12-3.20(2H,m),3.21-3.31(2H,m),7.13(1H,s),7.48(1H,s),8.06(1H,s)であった。D2O中で実施した19FNMRスペクトルにおいて見いだされた吸収ピーク値(ppm)は、-75.6であった。
【0097】
4-(3-(3-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)プロピル)ウレイド)-5,7-ジクロロキノリン-2-カルボン酸(10c)を、tert-ブチル(3-(1H-イミダゾール-1-カルボキサミド)プロピル)カルバメート(9c)から、合成段階VIに記載の通りに調製した。重水素化DMSO中で実施した1HNMRスペクトルにおいて見いだされた吸収ピーク値(ppm)は、1.39(9H,s),1.60(2H,tt,J=6.8,6.6Hz),2.95-3.02(2H,m),3.12-3.18(2H,m),6.83(1H,br),7.45(1H,br),7.85(1H,s),8.10(1H,s),8.65(1H,s),9.15(1H,br)であった。
【0098】
4-(3-(3-((tert-ブトキシカルボニル)(メチル)アミノ)プロピル)ウレイド)-5,7-ジクロロキノリン-2-カルボン酸(10e)を、tert-ブチル(3-(1H-イミダゾール-1-カルボキサミド)プロピル)メチルカルバメート(9d)から、合成段階VIに記載の通りに調製した。重水素化DMSO中で実施した1HNMRスペクトルにおいて見いだされた吸収ピーク値(ppm)は、1.39(9H,s),1.63-1.71(2H,m),2.79(3H,s),3.08-3.16(2H,m),3.19-3.26(2H,m),7.27(1H,br),7.68(1H,d,J=1.8Hz),8.29(1H,d,J=1.8Hz),8.40(1H,br),8.97(1H,br)であった。
【0099】
合成段階VIIの一般例。
TFA(173μL、2.25mmol)を、Boc-保護アミン(10c、103mg、0.23mmol)のDCM(4ml)中溶液に添加した。室温で16時間にわたる撹拌後、溶媒を、減圧下で除去し、残渣を逆相クロマトグラフィー(C18、1:1 H2O:MeCN)によって直接精製して、4-(3-(3-アミノプロピル)ウレイド)-5,7-ジクロロキノリン-2-カルボン酸(10d)のTFA塩形態を、白色固体(64mg、0.14mmol)として得た。D2O(1.0%TFA)中で実施した1HNMRスペクトルにおいて見いだされた吸収ピーク値(ppm)は、1.61(2H,tt,J=6.9,7.1Hz),2.72(2H,t,J=7.1Hz),3.04(2H,t,J=6.9Hz),7.62(1H,s),7.89(1H,s),8.71(1H,s)であった。
【0100】
5,7-ジクロロ-4-(3-(3-(メチルアミノ)プロピル)ウレイド)キノリン-2-カルボン酸(10f)を、4-(3-(3-((tert-ブトキシカルボニル)(メチル)アミノ)プロピル)ウレイド)-5,7-ジクロロキノリン-2-カルボン酸(10e)から、合成段階VIに記載の通りに調製した。D2O(1.0%TFA)中で実施した1HNMRスペクトルにおいて見いだされた吸収ピーク値(ppm)は、1.81(2H、tt、J=6.8、7.7Hz)、2.55(3H、s)、2.94(2H、t、J=7.8Hz)、3.22(2H、t、J=6.8Hz)、7.78(1H、d、J=1.9Hz)、8.01(1H、d、J=1.9Hz)、8.77(1H、s)であった。D2O中で実施した19FNMRスペクトルにおいて見いだされた吸収ピーク値(ppm)は、-73.4であった。化合物構造を、スキーム4に示す。
【0101】
スキーム4.
【0102】
【0103】
3-(2-ブチリル-5,7-ジクロロキノリン-4-イル)-1,1-ジフェニル尿素の合成
【0104】
【0105】
A. 5,7-ジクロロ-4-(3,3-ジフェニルウレイド)-N-メトキシ-N-メチルキノリン-2-カルボキサミド(11)
カルボニルジイミダゾール(72mg、0.44mmol)及びジイソプロイルエチルアミン(diisoproylethylamine)(115uL、0.66mmol)を、5,7-ジクロロ-4-(3,3-ジフェニルウレイド)キノリン-2-カルボン酸(DCUKA;100mg、0.22mmol)の乾燥N,N-ジメチルホルムアミド中溶液(15mL)に加えた。反応混合物を、室温で窒素下にて2時間にわたって撹拌し、その後、N,O-ジメチルヒドロキシルアミンヒドロクロリド(86mg、0.88mmol)を加えた。得られた淡黄色溶液を、室温でさらに16時間撹拌し、この時点で溶媒を減圧下で除去して、残渣を酢酸エチル(20mL)中に溶解し、そして飽和炭酸水素ナトリウム溶液(2x15mL)及び0.1MHCl(2x15mL)で洗浄して、その後水(15mL)及びブライン(10mL)で洗浄した。有機相を乾燥させ(MgSO4)、乾燥するまで蒸発させた。標的化合物を、シリカ上のクロマトグラフィー(1:1 ヘキサン:EtOAc)による精製後に、白色固体(81mg、0.16mmol,73%)として得た。Rf 0.33(1:1ヘキサン:EtOAc);M.p.207-210℃;1H NMR(400MHz,CDCl3)3.40(3H,s),3.75(3H,br),7.28(1H,s),7.34-7.37(2H,m),7.41-7.49(8H,m),8.03(1H,d,J=2.0Hz),8.87(1H,s),9.39(1H,s).
【0106】
B. 3-(2-ブチリル-5,7-ジクロロキノリン-4-イル)-1,1-ジフェニル尿素(12)
2-メチルテトラヒドロフラン中のn-プロピルマグネシウムクロリド溶液(1.0M、1.12mL、1.12mmol)を、5,7-ジクロロ-4-(3,3-ジフェニルウレイド)-N-メトキシ-N-メチルキノリン-2-カルボキサミド(11、70mg、0.14mmol)の乾テトラヒドロフラン中溶液(10mL)に-10℃、窒素下で滴下した。添加後、反応混合物を、-10℃にて30分間撹拌し、その後、室温まで温めて、さらに3時間撹拌した。反応を、飽和アンモニウムクロリド溶液(10mL)でクエンチし、そして生成物であるケトン12を、酢酸エチル(3x15mL)で抽出した。有機抽出物を、ブライン(10mL)で洗浄し、乾燥させて(MgSO4)、乾燥するまで蒸発させた。残渣を、シリカ上のクロマトグラフィー(4:1ヘキサン:EtOAc)を介して精製して、標的化合物を淡黄色固体として得た(32mg,0.07mmol,47%)。Rf0.45(4:1ヘキサン:EtOAc);M.p.161-164℃;1H NMR(400MHz,CDCl3)1.03(3H,t,J=7.4Hz),1.80(2H,qt,J=7.3,7.4Hz),3.24(2H,t,J=7.3Hz),7.28(1H,s),7.34-7.38(2H,m),7.42-7.49(8H,m),8.09(1H,d,J=2.1Hz),9.15(1H,s),9.31(1H,s)。
【0107】
5,7-ジクロロ-4-(3,3-ジフェニルウレイド)-N-エチルキノリン-2-カルボキサミド(13)の合成
【0108】
【0109】
カルボニルジイミダゾール(143mg、0.88mmol)及びジイソプロピルエチルアミン(diisoproylethylamine)(230uL、1.32mmol)を、5,7-ジクロロ-4-(3,3-ジフェニルウレイド)キノリン-2-カルボン酸(DCUKA;200mg、0.44mmol)の乾燥N,N-ジメチルホルムアミド中溶液(25mL)に加えた。反応混合物を、室温で、窒素下で2時間撹拌し、その後、THF中エチルアミン(2.0M、0.66mL、1.32mmol)を加えた。得られた淡黄色溶液を、室温でさらに16時間撹拌し、この時点で反応は完了した。溶媒を減圧下で除去し、残渣を酢酸エチル(50mL)中に溶解し、そして飽和炭酸水素ナトリウム溶液(2x30mL)及び0.1M HCl(2x30mL)で、その後水(25mL)及びブライン(25mL)で洗浄した。有機相を乾燥させ(MgSO4)、そして乾燥するまで蒸発させた。標的エチルアミド13を、シリカゲルクロマトグラフィー(1:1 ヘキサン:EtOAc)を介して、オフホワイト固体を得た(148mg、0.31mmol、71%)。Rf0.43(1:1 ヘキサン:EtOAc);M.p.202-205℃;1H NMR(400MHz、CDCl3)1.31(3H、t、J=7.2Hz)、3.56(2H、q、J=7.2Hz)、7.28(1H、s)、7.32-7.37(2H、m)、7.41-7.49(8H、m)、7.99(1H、s)、8.01(1H、br)、9.28(1H、s)、9.32(1H、s)。
【0110】
5,7-ジクロロ-4-(3,3-ジフェニルウレイド)-N-イソプロピルキノリン-2-カルボキサミド(14)の合成
【0111】
【化13】
カルボニルジイミダゾール(146mg、0.88mmol)及びジイソプロピルエチルアミン(diisoproylethylamine)(230uL、1.32mmol)を、5,7-ジクロロ-4-(3,3-ジフェニルウレイド)キノリン-2-カルボン酸(DCUKA;200mg、0.44mmol)の乾燥N,N-ジメチルホルムアミド中溶液(25mL)に加えた。反応混合物を、室温で、窒素下で2時間にわたって撹拌し、その後、イソプロピルアミン(110μL、1.32mmol)を加えた。得られた淡黄色溶液を、室温でさらに16時間撹拌し、この時点で溶媒を減圧下で除去して、残渣を酢酸エチル(50mL)中に溶解し、飽和炭酸水素ナトリウム溶液(2x30mL)及び0.1M HCl(2x30mL)で、その後水(25mL)及びブライン(25mL)で洗浄した。有機相を、乾燥させ(MgSO
4)、乾燥するまで蒸発させた。標的イソプロピルアミド14を、シリカゲルクロマトグラフィー(1:1 ヘキサン:EtOAc)を介して、白色固体を得た(182mg、0.37mmol、84%)。Rf0.52(1:1 ヘキサン:EtOAc);M.p.197-199℃;1H NMR(400MHz、DMSO-d6)1.23(6H、d、J=6.8Hz)、4.15(1H、m)、7.34-7.39(2H、m)、7.46-7.55(8H、m)、7.76(1H、d、J=1.9Hz)、8.11(1H、d、J=1.9Hz)、8.55(1H、d、J=8.2Hz)、9.00(1H、s)、9.21(1H、s)。
【0112】
実施例2. DCUK-OEtのDCUKAについてのインビボでのプロドラッグとしての使用
本実施例は、DCUK-OEtのラットへの経口投与後に、エステル加水分解により、DCUKAがインビボで迅速に形成されることを示す。本研究を、NIH Guide for the Care and Use of Laboratory Animalsにしたがって実施した。ポリマーHPMCAS-MG(HPMCAS-MG SDD)を用い、DCUK-OEtの噴霧乾燥分散剤を、Catalent Pharmaにより調製した。このSDDは、100mgのSDDあたり、15mgのDCUK-OEt及び85mgのポリマーを含んでいた。0.5%ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)の調製物を、100mlの水を60~75℃まで加熱することによって調製した。100mlの水の別のアリコートを、5℃まで冷却した。500mgのHPMCを、50mlの湯に撹拌しながら加え、次いで、50mlの冷水を加えた。透明な液体が形成されるまで撹拌を続けた。SDDの懸濁剤を作るために、15mlの0.5% HPMCのアリコートを、1gのSDDを含むバイアルに加えた。混合物を、10mg/mlのDCUK-OEtを含む均一なスラリーが形成されるまで粉砕した。1群につき4匹のラットに、本懸濁剤中50mg/kg又は100mg/kgのDCUK-OEtを経口経管栄養で与えた。血液サンプルを、投薬前0分、投薬後30分、60分、90分、120分及び180分にて頸動脈から収集し、ラットの血液中に存在する酵素によるDCUKAへのインビトロDCUK-OEt加水分解を最小化するためにNaF含有チューブ内に入れた。
【0113】
LC-MS/MS方法によって評価することにより、DCUK-OEt及びDCUKAの全血サンプル中のレベルを測定した。内部標準DCUKA-d10及びDCUKA-OEt-d10を、合成的に調製した(Wempe laboratory、UC Denver School of Pharmacy、Med.Chem.Core Facility)。DCUKA、DCUKA-OEt、DCUKA-d10及びDCUKA-OEt-d10のストック10.0mM DMSO溶液を、標準曲線及び内部標準のために調製し、標準物質及びサンプルを、4:1(メタノール:アセトニトリル、1:1)に希釈した:使用した水(10mM NH4OAc、0.1%ギ酸)溶液を、質量分析機に直接流入させた。
【0114】
Shimadzu HPLC(Shimadzu Scientific Instruments、Inc.;Columbia、MD)及びLeapオートサンプラー(LEAP Technologies;Carrboro、NC)を備えたApplied Biosystems Sciex 4000(Applied Biosystems;Foster City、CA)を、使用した。液体クロマトグラフィーは、カラムガードを備えたAgilent Technologies、Zorbax extended-C18 250x4.6mm、5カラムを40℃にて0.6mL/分の流速で使用した。移動相は、A:10mM(NH4OAc)、H2O中0.1%ギ酸、及びB:50:50ACN:MeOHからなった。使用したクロマトグラフィー方法は、以下の通りであった:95% Aを2.0分;95% Bへの傾斜を7.0分及び9.0分維持、最後に、95% Aに戻して18.0分及び2.0分維持(全ランタイムは20.0分間)。化合物を、以下の条件を用いるエレクトロスプレーイオン化用イオン様式(ESI+)を介してモニタリングした:i)5500Vのイオンスプレー電圧;ii)温度、450oC;iii)カーテンガス(CUR;10に設定)及び衝突活性化型分解(CAD;12に設定)ガスは、窒素;iv)イオン減ガス1(GS1)及び2(GS2);v)入口電位を10Vに設定;vi)四重1(Q1)及び四重3(Q3)を、単位導出に設定;vii)滞留時間を、200msecに設定;及びviii)デクラスタリング電位(DP)、衝突エネルギー(CE)、及び衝突セル出口電位(CXP)は、電圧(V)である。サンプル(10μL)を、以下の定量のための断片化を用いて、LC/MS-MSによって分析した:DCUKA、452→168m/z、tR=5.3分;DCUKA-OEt:480→168m/z、tR=5.6分;内部標準DCUKA-d10:462→178m/z;及び内部標準DCUKA-OEt-d10:490→178m/z。
【0115】
図1は、インビボ投与後に、DCUK-OEtが、DCUKAについてのプロドラッグとして寄与し得ることを図示する。データを、1群あたり3~4匹のラットからの平均±SD値としてプロットする(100mg/kg用量の60分後の1つの外れ値からのデータを含めない)。ポリマーHPMCAS-MGを用いて調製された噴霧乾燥分散製剤である50mg/kg又は100mg/kgのDCUK-OEtを、1群あたり4匹のラットに、HPMC懸濁剤として経管栄養で投与した。血液を、示した時間に頸動脈から得、DCUKAレベルを、LC-MS/MS分析によって決定した。結果は、DCUK-OEtの投与後に得られたDCUKAの血液レベルを示す。DCUK-OEtは、100mg/kg用量の後のみで検出可能であった。DCUK-OEtの最高レベルは、DCUK-OEt投与60分後の0.49μM及び0.24μM、及びDCUK-OEt投与の90分後の0.08μMであった。DCUK-OEtのレベルは、群における4匹目のラットにおいて、検出加減を下回った。対照的に、
図1に示される通り、DCUKAレベルは、DCUK-OEtの50mg/kg後におよそ3μMに、そしてCUK-OEtの100mg/kg後に達した。
【0116】
実施例3. DCUKA、BCUKA及びDCUK-OEtによる神経障害性疼痛の治療
本実施例は、DCUKA、BCUKA及びDCUK-OEtの、神経障害性疼痛を反転する能力を示す(シスプラチン(がん化学療法)、完全フロイントアジュバント(CFA)(炎症性疼痛)、又は糖尿病(ストレプトゾトシン誘導型疼痛)又はモノヨードアセテート(MIA)(骨関節炎性疼痛)によって誘発される器質的又は熱性疼痛として測定される)。
【0117】
全ての研究を、NIH Guide for the Care and Use of Laboratory Animalsにしたがって実施した。
【0118】
薬物。シスプラチン、CFA及びSTZ誘導型疼痛のインビボ研究のために、DCUKA又はBCUKA又はDCUK-OEt、又はガバペンチンを、50%ゼラチン/50%キャノーラ油乳液(この乳液を、ビヒクルとして用いる)中に調製した。ゼラチンを、0.8gのゼラチンKnox(Kraft FoodsNorth America、Tarrytown NY)及び0.06gの酒石酸(McCormick and Co.、Inc.、Hunt Valley、MD)を30mlの精製水に加えることによって調製した。溶液を、98℃にて20分間加熱し、次いで50°Cまで冷却した。6mlの95%アルコール及び水を加え、50mlのゼラチンを作った。種々の量のDCUKA又はBCUKA又はDCUK-OEt、又はガバペンチンを、5mlのキャノーラ油(Safeway Inc.、Pleasanton、CA)に加え、撹拌して、5分間超音波処理し(VWR BIOSONIK IV、70%)、次いで、薬物懸濁剤を、5mlのゼラチンに加えて、撹拌し、超音波処理した。乳液を、所望通りにビヒクルで希釈し、動物への経口投与のために、37°Cまで温めた。経口経管栄養の直前に、乳液を、ボルテックスミキサーを用いて撹拌した。
【0119】
MIA誘導型疼痛のインビボ研究のために、DCUKAを、D-α-トコフェロールポリエチレングリコール1000スクシネート(TPGS 1000)と合わせた。DCUK-OEt(2.5g)を、計量して清潔なガラスビーカーに入れ、TPGS 1000(47.5.ml)をゆっくりと加えた。混合物を、2~3分間にわたって混合し、クリーム状の白色水性懸濁剤を作った。この懸濁剤を、Torpacカプセル(Torpac、Fairfield、NJ)内に封入し、そしてTorpacカプセルシリンジを用いて経口でラットに送達した(Wempeら、2012)。
【0120】
4種の異なる薬剤を使用して、神経障害性疼痛を起こした。シスプラチン(Sigma-Aldrich、St.Louis、MO)を、0.9%生理食塩水溶液中に溶解した。ストレプトゾトシン(Sigma-Aldrich)を、20mMクエン酸ナトリウム緩衝液、pH=4.5中に溶解した。完全フロイントアジュバント(CFA)を、Sigma-Aldrichから得た。モノヨード酢酸ナトリウムを、Sigma-Aldrichから得、生理食塩水中に溶解した。
【0121】
器質的痛覚過敏の測定。これらの研究を、およそ8週齢の雄のSprague-Dawleyラット(Taconic、Germantown PA又はHarlan、Indianapolis IN)にて実施した。ラットを、照明、温度及び湿度を調節したAAALAC-品質認定施設に入れた。疼痛を、電子von Frey麻酔モニタリングデバイス(anesthesiometer)(IITC Life Science)、Woodland Hills、CA)を用いて試験した。ラットを、金属メッシュ床を備えた吊り下げチャンバーに入れ、およそ20分間慣らさせた。器質的刺激を、後ろ足の足底中央部表面に適用した。2つの異なる方法を用いた。第1において、異なる強度範囲(g)の一連のvon Freyフィラメントを使用し、足に適用するフィラメントの強度を上げていった、各フィラメントに起こした力の適用を、電気センサーで表示した。各フィラメントを、足に離脱反応(フィラメント適用後の「ひるみ」)が起きるまで、5回適用した。フィラメントが5回の試験のうち4回で足の離脱を起こした場合、又は最大刺激(体重の10%)に達した場合、試験を停止した。4つの値の平均を使用して、足離脱閾値をgで計算した。第2の方法において、半可撓性のフィラメントを、足の足底中央部表面に対して置き、足の離脱が観察されるまで、圧力を上げた。足離脱における圧力(gの力)(足離脱閾値)を、電気トランスデューサーによって記録した。1回の試験につき5回の測定を行い、平均値を計算した。両方法において、感作を避けるため、測定の間に、3分間の感覚をあけた。
【0122】
DCUKA、BCUKA、DCUK-OEt及びガバペンチンの、シスプラチン、完全フロイントアジュバント(CFA)、ストレプトゾトシン(STZ)又はモノヨードアセテート(MIA)によって起こされた神経障害性疼痛(器質的痛覚過敏)を反転する急性効果
シスプラチン誘導型疼痛に対するDCUKAの急性効果:シスプラチン投与について、2つの方法を用いた。1)シスプラチンを、0.9%生理食塩水中に溶解し(1mg/ml)、そして体重の1.5又は2.5ml/kgの容積で尾静脈内に注射した。シスプラチンの静脈内注射後、同量の生理食塩水の注射を行った(Joseph and Levine、2009)。シスプラチン用量は、各実験において、1.5又は2.5mg/kgであった。2)シスプラチンを、0.9%生理食塩水中に溶解し、1日目、4日目、8日目及び12日目に腹腔内注射した。シスプラチン用量は、それぞれ2mg/kg、1mg/kg、2mg/kg及び2mg/kg、であり、全用量は7mg/kgであった。シスプラチンの新鮮な溶液を、注射前に毎日調製し、そして0.9%生理食塩水(2ml)を、シスプラチン注射後に皮下注射した(腎毒性を回避するため)。全ての実験において、ラットを、シスプラチン処理を何ら行う前に、ベースライン疼痛感受性(器質的疼痛閾値)について試験した。静脈内注射を用いる実験設計は、以下の通りであった:(1)シスプラチン注射の1時間後に開始、ラットに、ビヒクル(キャノーラ油/ゼラチン)を経口で(胃内経管栄養により)、3日間にわたって毎日1日に2回(12時間ごとに)与えた(これらのラットは、シスプラチン誘導型疼痛の予防に対する研究のための対照である。以下を参照)。4日目に、ラットを、再び、器質的疼痛閾値について試験した。5日目に、ラットに、50mg/kg DCUKA又はビヒクルを与え、器質的疼痛閾値を1時間後に試験した。2)シスプラチン処理の4日後、ラットに、種々の用量のDCUKA(12.5、25、50、又は75mg/kg)、又はビヒクルを、胃内経管栄養で与え、器質的疼痛閾値を、1時間後に試験した。3)シスプラチン処理の6日後に、器質的疼痛閾値を測定し、ラットに、50mg/kg DCUKA又はビヒクルを、経口で与えた。器質的疼痛閾値を、1時間後に試験した。4)シスプラチン処理の6日後、ラットに、種々の用量のDCUKA(25、50又は75mg/kg)又はビヒクルを与え、そして1時間後に、器質的疼痛閾値を測定した。シスプラチンを腹腔内投与する実験についての実験設計は、以下の通りである:シスプラチン処理の14日後(1日目、4日目、8日目、12日目)、器質的疼痛閾値を試験した。次いで、ラットに、50mg/kg DCUKA又はビヒクルを、経口で与え、そして器質的疼痛閾値を、1時間後に測定した。データを、DCUKA治療後に測定した器質的疼痛閾値対ベースラインシスプラチン前器質的疼痛閾値(同じ足で測定した)の比として報告した。
【0123】
シスプラチン実験についてのデータ分析:DCUKAの急性効果及びメタ分析:
実験設計に依存して、反復した測定値の一元配置分散分析又は反復した測定値の二元配置分散分析のいずれかからなる(Proc Mixed、SAS v9.3、Cary、NC)。処理及び時間は、試験した主たる固定独立効果であった。1つの実験処理において、2つの間の時間及び相互作用を評価した。1匹の動物に対して、処理前及び処理後ならびに右足及び左足を含む多数回の測定を行うので、動物識別番号を、反復した測定値として使用した。全てのモデルを、処理群間の等分散(分散の均等度についてのBarlett’s検定)及び正規性(Kolmogorov-Smirnov適合度検定)について試験した。データがこれらの仮定を満たしていなかった場合、本発明者らは、したがって、混合モデルにおいて調整した。いくつかの分析は、異なる処理用量間の統計的有意性を比較するために、Fisher’s LSD事後検定を使用し(p値<0.05)、全ての分析は、処理群とベースライン値との間の統計的有意性を比較するために、Fisher’s LSD事後検定を使用した。
【0124】
実験を、以下の要件に適合する場合に、メタ分析に含めた:1.器質的疼痛を、von Frey検定を用いて測定した、2.シスプラチン処理は、首尾よく疼痛を誘発した(器質的疼痛閾値の25%の低下)及び3.器質的疼痛を、DCUKA投与後の90分以内に測定した。5つの異なるクラスレベル、無作為測定値及び反復測定値の両方としての研究識別、及び無作為効果としてのラット識別を有する固定独立変数として、DCUKA用量を用いる混合モデルを、神経障害性疼痛に対する全体的有効性を決定するために使用した(Proc Mixed、SAS v9.3、Cory、NC)。Fisher’s LSD事後検定を、DCUKA用量の対比較のために使用した。
【0125】
DCUKA、BCUKA及びガバペンチンのシスプラチン誘導型疼痛に対する効果の比較。シスプラチンを、1日目(2mg/kg)、4日目(1mg/kg)、8日目(2mg/kg)及び12日目(2mg/kg)(全用量は7mg/kg)に、腹腔内投与した。シスプラチンは毎日調製し、各シスプラチン注射後に、2mlの0.9%生理食塩水を皮下投与した。14日目に、器質的疼痛閾値を測定し、そしてビヒクル(キャノーラ油/ゼラチン)、DCUKA(50mg/kg)、BCUKA(50mg/kg)又はガバペンチン(30mg/kg、DCUKA及びBCUKAに対する等モル濃度用量)をラットに与えた。1及び2時間後、器質的疼痛閾値を、再び試験した。データを、DCUKA、BCUKA又はガバペンチン処理後に測定した器質的疼痛閾値対ベースラインの器質的疼痛閾値(同じ足で測定した)の比として報告する。統計学的分析は、反復した測定に対する二元配置分散分析であった(Proc Mixed、SAS v9.3)。処理及び時間は、主たる固定独立効果であり、相互作用をもまた試験した。動物識別番号を、反復測定値について使用した。Fisher’s LSD事後検定を、処置群内の異なる時間の間の有意性(p<0.05)を比較するために使用した。
【0126】
完全フロイントアジュバント(CFA)誘導型神経障害性疼痛に対するDCUKAの急性効果。ベースライン足離脱閾値の測定後、CFA(0.1ml)を、光の下で、左後ろ足の足底中央部表面にイソフルラン麻酔を皮下投与した(導入のために5%及び維持のために2%)。ラットは、48時間にわたってケージに入った。固い寝床によって起こる圧力神経障害を避けるために、紙の寝床を用いた。CFA注射後48時間目又は60時間目に、ラットに、胃内経管栄養により、ビヒクル(キャノーラ油/ゼラチン)を経口で、又は種々の用量のDCUKAを経口で与え、器質的疼痛閾値を、1時間後に決定した。データを、DCUKA処理後に測定した器質的疼痛閾値対ベースラインの器質的疼痛閾値の比として表す。
【0127】
CFA実験のデータ分析。50mg/kgDCUKAの急性効果及びDCUKA用量応答のメタ分析。各実験を、一元配置分散分析(Proc Glm又はProc Mixed、SAS v9.3、Cary、NC)によって分析した。治療群は、試験した固定独立効果であった。全てのモデルを、処処理群間の等分散(分散の均等度についてのBarlett’s検定)及び正規性(Kolmogorov-Smirnov適合度検定)について試験した。データがこれらの仮定を満たしていなかった場合、混合モデルを使用した。全ての分析は、異なる処理群間の統計的有意性を比較するために、Fisher’s LSD事後検定を使用した(p値<0.05)。
【0128】
CFA誘導型神経障害性疼痛に対するDCUKA及びBCUKAの効果の比較。ベースラインの器質的疼痛閾値を決定し、上述の通り、動物をCFAで処理した。aCFA処理後48時間目に、ラットに、ビヒクル(キャノーラ油/ゼラチン)(n=17)、50mg/kg DCUKA(n=17)又は50mg/kg BCUKA(n=6)を与えた。器質的疼痛閾値を、1時間後に試験し、データを、ビヒクル、DCUKA又はBCUKA処理後の疼痛閾値対同じ足で測定したベースラインの疼痛閾値の比として報告する。一元配置分散分析及びその後にFisher’s LSD事後検定を用いて、統計的有意性を決定した(p<0.05)。
【0129】
ストレプトゾトシン(STZ)誘導型神経障害性疼痛(糖尿病性神経障害性疼痛のモデル)に対するDCUKAの急性効果。ベースライン肢脱離閾値の測定後、ベースライン体重及び血中グルコース濃度を決定した(ASCENSIA CONTOUR Blood Glucose Monitoring System、Bayer、Pittsburgh、PAを用いて、尾の血液において血中グルコースを測定した)。ラットを、一晩絶食させ、ビヒクル(20mMクエン酸ナトリウム、pH4.5、Sigma-Aldrich)、又は50mg/kg ビヒクル中STZを腹腔内注射した。STZ溶液を、毎日調製し、10分間以内に用いた。ラットに、食餌を、STZ処理の30分後に与えた。STZ処理の3日後、血中グルコースレベルを再び測定し、350mg/dlを超える血中グルコースレベルを有するラットを、「糖尿病」と考えた。血中グルコースレベルが350mg/dlを下回る場合同じ手順を用いて、第2用量のSTZ(45mg/kg)をラットに与えた。最初のSTZ処理の14日後、ラットに、ビヒクル(キャノーラ油/ゼラチン)又は種々の用量のDCUKAを経口で与え、器質的疼痛閾値を、これらの処理後の種々の試験した時点で試験した。データを、DCUKA処理後の器質的疼痛閾値対ベースラインの器質的疼痛閾値(同じ足で測定した)の比として表す。
【0130】
個々の実験分析。器質的疼痛閾値対ベースラインの比が対応する処理群平均±2標準偏差の外である場合、データ点を、外れ値として考慮し、データセットから除外した。核実験を、一元配置分散分析(Proc Glm又はProc Mixed、SAS v9.3、Cary、NC)で分析した。処理群は、試験した固定独立効果であった。全てのモデルを、処処理群間の等分散(分散の均等度についてのBarlett’s検定)及び正規性(Kolmogorov-Smirnov適合度検定)について試験した。データがこれらの仮定を満たしていなかった場合、混合モデルを使用した。全ての分析は、異なる処理群間の統計的有意性を比較するために、Fisher’s LSD事後検定を使用した(p値<0.05)。
【0131】
モノヨードアセテート(MIA)誘導型神経障害性疼痛(骨関節炎神経障害性疼痛のモデル)に対するDCUKAの急性効果。ラットを、イソフルランで麻酔し、右膝の毛を剃って、ビヒクル又はMIAを注射し、疾患を誘発した。動物を、疼痛測定を20日目に行うまで、毎週計量した。ベースライン足離脱測定を、MIAで処理していない動物において行った。21日目、動物群に、経口でビヒクル又はDCUKA(1又は2カプセル、p.o.;用量およそ50mg/kg又は100mg/kg)を投薬した。器質的疼痛閾値を、薬物投与の90分後に試験した。試験の最後に、DCUKAレベルをLC-MS/MS分析によって決定するために、尾静脈から血液を採取した。データを、DCUKA処理後の器質的疼痛閾値対薬物又はMIA処理なしの動物において決定した器質的疼痛閾値の比として表す。
【0132】
MIA実験のデータ分析。実験を、一元配置分散分析(Sigma Plot 12)により、そしてHolm-Sidak事後検定を全ての対比較について使用して、分析した。P値<0.05を、統計学的に有意であると考えた。1カプセルのDCUKAの投与は、器質的疼痛閾値に統計学的に有意な効果を奏さなかったので(
図8)、この処理後のKindolorの血中レベルを評価した。1つのカプセルの投与後に、Kindolorの血中レベル<500ng/ml(<1.1mM)が得られたことを決定し、この血中レベルを、MIA誘導型神経障害性疼痛の治療において有効ではないとみなした。
【0133】
図2は、がん化学療法治剤であるシスプラチンによるラットの処理によって起こった神経障害性疼痛を、DCUKA(50mg/kg)処理が反転することを示す。6回の実験を合わせた結果を示す。処理平均±1SEMを、プロットした。対照(0mg/kg DCUKA)と比較して
*P値は、<0.0001。全ての実験において、ラットを、シスプラチン処理の前のベースラインの器質的疼痛閾値について試験した。上述したシスプラチン処理の後、ラットにDCUKAを与え、1時間後に、器質的疼痛閾値を、再び決定した。結果は、ビヒクル又はDCUKA投与1時間後に測定した器質的疼痛閾値対ベースライン(シスプラチン処理前)器質的疼痛閾値の比を示す。
【0134】
図3は、化学療法剤であるシスプラチン.によって誘発された神経障害性疼痛に対する、DCUKA(50mg/kg)、BCUKA(50mg/kg)及びガバペンチン(ニューロンtin、30mg/kg)の効果を図で比較する。平均器質的疼痛閾値±1標準誤差を、各処理群及び時間についてプロットした。対応する処理前群と比較して
*P<0.05。ラットを、シスプラチン処理前に、ベースラインの器質的疼痛閾値について試験し、上述のようにシスプラチンで処理した。シスプラチン処理後、器質的疼痛閾値を測定し、ラットに経口用量のビヒクル、DCUKA、BCUKA、又はガバペンチンを与えた。器質的疼痛閾値を、これらの処理の1及び2時間後に、再び測定した。データは、DCUKA、BCUKA又はガバペンチン投与前ならびに1及び2時間後に測定した器質的疼痛閾値、の比である。シスプラチン処理のみ(「処理前」)は、ベースラインと比較して、器質的疼痛閾値を有意に低下しており、DCUKA及びBCUKAは、器質的疼痛閾値における低下を有意に反転している。ガバペンチンは、DCUKA及びBCUKAの等モル濃度用量において、器質的疼痛閾値におけるシスプラチン誘導型低減を、有意に反転しなかった。
【0135】
図4は、ラットの完全フロイントアジュバント(CFA)による処理によって誘発した神経障害性疼痛(炎症性応答を生じる)を、DCUKAが治療することを図示する。データは、3回の実験を合わせた。各実験において、ベースラインの器質的疼痛閾値(足脱離を起こす力、g)を、まず、電気的von Frey麻酔モニタリングデバイスを用いて測定した。次いで、ラットに、0.1mlの完全フロイントアジュバント(CFA)を、後ろ左足の足底中央部表面に注射した。48~60時間後、CFA誘導型疼痛を発症した際に、ビヒクル(ゼラチン/キャノーラ油乳液)又は50mg/kg DCUKAの経口投与を与えた。1時間後、器質的疼痛閾値を、再び測定した。結果は、ビヒクル又はDCUKA処理後に測定した器質的疼痛閾値対ベースラインの器質的疼痛閾値の比を示す。対比較のための事後Fisher’s LSDt検定は、50mg/kg DCUKAと0mg/kg DCUKAとの間に有意な(
*)相違を示した(p値<0.0001)。CFA処理は、器質的疼痛閾値を、およそ60%低減させ、DCUKA処理は、この効果を反転し、そしてCFA処理された足において、ベースラインレベルと有意差のないレベルにまで、器質的疼痛閾値を増加させた。
【0136】
図5は、CFA処理によって誘発された神経障害性疼痛を、DCUKA(50mg/kg)及びBCUKA(50mg/kg)が治療する効果の比較を図示する。各動物についての器質的疼痛閾値を、足のみに注射したベースラインに対する比で表す。平均器質的疼痛閾値±1標準誤差を、各処理群についてプロットする。ビヒクルと比較し、
*P<0.05。ベースラインの器質的疼痛閾値を測定し、ラットを、上述のようにCFAで処理した。48時間後、ラットに、ビヒクル(キャノーラ油/ゼラチン)、DCUKA又はBCUKAを与え、1時間後に、器質的疼痛閾値を測定した。CFA処理は、器質的疼痛閾値を、ベースラインの約40%低下させ、DCUKA(n=17)又はBCUKA(n=6)による処理は、器質的疼痛閾値を、ベースラインから有意差がないレベルにまで反転させる。
【0137】
CFAによって起こる神経障害性疼痛に対するDCUKAの用量依存的効果を、メタ分析アプローチを用いて決定した。結果を
図6に示す。各動物についての器質的疼痛閾値を、足のみに注射したベースラインに対する比によって表す。平均器質的疼痛閾値±1標準誤差を、各処理群についてプロットした。これは、メタ分析に含まれる5回の研究からの処理平均に基づく。ビヒクル(0mg/kg)処理群と比較して、
*P<0.05。CFAを用いる全ての実験において、ベースラインの器質的疼痛閾値を、電気的von Frey麻酔モニタリングデバイスによって測定した。CFAを、左後ろ足の足底中央部表面に注射し、注射の48時間後、ラットに、経口ビヒクル(ゼラチン/キャノーラ油)又はDCUKAを与えた。器質的疼痛閾値を、ビヒクル又はDCUKA投与の60分後に、再び与えた。メタ分析に含まれる実験について、必要条件は、以下である:1)CFA処理は、少なくとも25%の低下を器質的疼痛閾値において起こした;2)疼痛閾値を、DCUKA又はビヒクル投与の60分後に測定した。異なる用量のDCUKAを試験した5回の実験が、これらの必要条件に合致した。器質的疼痛閾値を、ベースラインの器質的疼痛閾値に対する比として、平均±SEMとして表す。これらは、有意な、DCUKA(F(5,125)=7.71、P<0.0001)の全体的効果である。CFA処理は、器質的疼痛閾値をおよそ60%低下させ、この効果は、30mg/kg用量以上のDCUKAによって有意に反転した。すなわち、疼痛閾値が、ベースラインレベルに戻った。
【0138】
図7は、糖尿病に伴う神経障害性疼痛を、DCUKAが反転することを示す。糖尿病は、ラットにおいて、上述のように、ストレプトゾトシン(STZ)の注射によって誘発される。対比較のための事後Fisher’s LSDt検定は、50mg/kg DCUKAと0mg/kg DCUKAとの間に有意な(
*)相違を示した(相違=0.60、p値<0.0001)。3回の実験から合わせたデータを示す。各実験において、ベースラインの器質的疼痛閾値を、電気的von Frey麻酔モニタリングデバイスを用いて試験した。STZ処理の14日後、ビヒクル(ゼラチン/キャノーラ油)又は40若しくは50mg/kg DCUKA(これらの用量は、効果の有意な相違を有さなかった)を、経口で投与し、90分後に、器質的疼痛を評価した。結果は、ビヒクル/DCUKA処理後の器質的疼痛閾値対ベースラインの器質的疼痛閾値の比を示す。STZは、器質的疼痛閾値を、およそ40%低下させ、そしてこの効果は、DCUKA処理によってベースラインレベルまで反転した。
【0139】
STZ誘導型神経障害性疼痛に対するDCUKAの効果の用量依存性を、メタ分析アプローチによって決定した。メタ分析に含める実験についての必要条件は、以下のとおりである:1)STZ処理が、少なくとも25%の器質的疼痛閾値の低下として測定される神経障害性疼痛を誘発した;2)疼痛を、ビヒクル又はDCUKA処理の90分後に測定した。これらの基準を満たす4回の実験を、メタ分析に含めた。
【0140】
図8は、STZ誘導型神経障害性疼痛を治療するDCUKAの効果の用量依存性を示す。データを、ビヒクル又はDCUKA処理後の器質的疼痛閾値対ベースラインの疼痛閾値(同じ足で測定した)の比として報告する。ビヒクル処理群と比較して、
*P<0.05。器質的疼痛閾値に対し、DCUKAの効果は、全体的に有意であった(F(7、115=8.48、p<0.0001)。STZ処理は、疼痛閾値において、およそ40%の低下を誘発し、30mg/kg以上の用量のDCUKAは、STZの効果を反転して、疼痛閾値を上昇させて、ベースラインレベルにまで戻した。
【0141】
図9は、MIA誘導型神経障害性疼痛を治療するDCUKAの用量依存性を示す。データを、ビヒクル(0カプセル)又はDCUKA処理(1又は2カプセル)後の器質的疼痛閾値対MIA又は薬物で処理していない動物において測定したベースラインの疼痛閾値の平均±SEM比として報告した。ビヒクル群と比較して、
*P<0.05(分散分析及び事後比較)。器質的疼痛閾値に対して、DCUKAの効果は、全体的に有意であった(F(2,26)=4.07、p=0.029)。MIA処理は、疼痛閾値、において、およそ60%の低下をもたらし、およそ100mg/kgのDCUKA用量(2カプセル)は、MIAの効果を有意に反転した。
【0142】
実施例4 DCUKA及びDCUK-OEtは、CFA誘導型神経障害性疼痛に対するモルヒネの効果を増大する。
以下のデータは、モルヒネと一緒の低用量のDCUKAは、炎症性薬剤によって誘発された器質的異痛症及び熱性痛覚過敏性疼痛の軽減に対し相乗効果をもたらすことを実証する。
【0143】
CFA処理及び器質的疼痛閾値の測定は、実施例3に記載される。この実験において、器質的疼痛閾値を、ベースラインにおいて試験した。CFA処理の48時間後、ビヒクル、DCUKA若しくはモルヒネ、又はDCUKAとモルヒネとの組み合わせを、器質的疼痛閾値の測定の30分前に注射した。
【0144】
熱過敏試験(放射熱足離脱試験)。ラットを、透明なプラスチックチャンバー内のガラス表面上に置き、試験の15分前に慣らした。熱感受性を、放射熱刺激に対する足離脱潜性を用いることによって測定した。放射熱源(すなわち、赤外線)を、タイマーで活性化させ、左後ろ足の足底中央部表面に焦点を当てた。足が離脱したときにランプとタイマーとの両方を停止する動き検出器は、足離脱潜性を決定した。この潜性を、薬物又はビヒクルの投与の前後に測定した。33秒間の最大カットオフを、組織損傷を予防するために使用した。この実験において、ラットに、DCUK-OEtを注射し、直後に増大した用量比のモルヒネを注射して、30分後に試験した。
【0145】
図10Aは、それぞれでは無痛覚をもたらす効果がないDCUKA及びモルヒネの用量の併用が、炎症誘導型慢性疼痛の完全な反転をもたらすことを実証する。これらのデータは、Foucquier & Guedj(2015)によって議論された「効果に基づく戦略」アプローチのそれぞれによって決定される通り、DCUKA及びモルヒネの組み合わせが、各薬物単独の相加効果よりも大きな効果を有するという結論と一致する。この図は、薬物の非有効用量の組み合わせが、充分な効果をもたらす、「閾値以下の組み合わせ」アプローチを説明する。
図10B及び10Cは、どちらかの薬剤が単独でもたらす効果と比較して、DCUK-OEt及びモルヒネの組み合わせが、相加効果を超える効果を提供する証拠を、提示する。この場合、CFA処理によって発症した熱性痛覚過敏を、試験した。モルヒネに対する抗痛覚過敏応答のED
50は、>30:1のモルヒネに対する用量比でDCUK-OEtを投与することにより、有意に低下した。例えば、0.2mg/kgの用量のモルヒネは、およそ20%の抗痛覚過敏応答をもたらす。6.4mgのDCUK-OEtと組み合わせると、応答は、40%に増大する。DCUK-OEtは、一元配置分散分析及び事後Dunnett’s検定により、モルヒネ単剤と比較して、モルヒネの抗痛覚過敏作用について、DCUK-OEt/モルヒネ用量比が、18:1(HP<0.7)及び32:1(
*P<0.05)にてED50を低下させた。
【0146】
実施例5 DCUKAは、オキシコドン及びメサドンがFA誘導型神経障害性疼痛を治療する効果を増大する。
以下のデータは、低用量のオキシコドン又はメサドンが炎症性薬剤によって発症した器質的異痛症を軽減する効果を、低用量のDCUKAが増強することを実証する。データを、処理された足における薬物又はビヒクル(VEH)処理後の器質的疼痛閾値対フロイントアジュバント(FA)による処理前の器質的疼痛閾値の平均±SEM比として提示する。ビヒクル処理群と比較して、P<0.05(n=8/群、分散分析及び事後比較)。
【0147】
ベースライン器質的疼痛試験の後、ラットの右後ろ足に、不完全フロイントアジュバント(FA)及びマイコバクテリウム・ブチリカム(Mycobacterium butyricum)の混合物(完全フロイントアジュバントに類似している)を注射した。72時間後、実施例3に記載のVon Frey試験手順の完全版を用いて、器質的疼痛試験を繰り返した。ラットを、3.16~5.18絶対閾値の範囲の一連のvon Frey ヘア(hairs)を用いて試験した。各ヘアを3回適用し、どの硬さのヘアにラットが100%応答するものであるかを決定した。データを、Psychofitプログラムによって分析した。4日目に、個々の薬物に対する応答を決定するために、ラットの群に、ビヒクル又はDCUKAの用量(1又は2カプセル、p.o.、実施例3に記載の通り)又はオキシコドンの用量(0.1、0.25又は1mg/kg ip)又はメサドンの用量(1.5、2.5又は3.5mg/kg ip)を与え、そしてvon Frey試験を、投薬の75~90分後に実施した。8日目に、低用量(1カプセル)のDCUKA及び低用量のオキシコドン又はメサドンの組み合わせの効果を、評価した。ラットに、DCUKA+ビヒクル、オキシコドン+ビヒクル、メサドン+ビヒクル、又はDCUKA+オキシコドン又はDCUKA+メサドンを、研究の初期段階から決定した用量を用いて与えた。
図11は、DCUKA(1カプセル)及びオキシコドン(0.1mg/kg)の、それぞれでは抗痛覚過敏をもたらすために有効でない用量の組み合わせが、炎症誘導型慢性疼痛の軽減をもたらすことを実証する。これらのデータは、Foucquier及びGuedj(2015)によって議論された「効果に基づく戦略」アプローチの4つ全てによって決定される通り、DCUKAとオキシコドンとの組み合わせが、各薬物単体の相加効果よりも大きな効果を有するという結論と、一致する。この図は、薬物の非有効用量の組み合わせが、充分な効果をもたらす、「閾値以下の組み合わせ」アプローチを説明する。実線は、フロイントアジュバント及びビヒクルで処理された動物における.ベースラインの器質的疼痛閾値比を示す。この線を上回る増加は、DCUKA又はオキシコドン単剤の(有意でない)効果を示す。破線は、薬物組み合わせの予想される相加効果を示す。破線を上回る薬物組み合わせ(すなわち、DCUKA+オキシコドン0.1mg/kg)の増大した効果は、「正の組み合わせ効果」を示す(Foucquier and Guedj、2015)。
【0148】
図12は、メサドン(1.5又は3.5mg/kg)が炎症誘導型慢性疼痛を軽減する効果を、DCUKA(1カプセル)が増強することを実証する。データを、薬物又はビヒクル(VEH)処理後に処理された足における器質的疼痛閾値対フロイントアジュバント(FA)による処理前の器質的疼痛閾値の平均±SEM比で表す。DCUKA/VEH又はメサドン1.5mg/kg単剤と比較して、
*P<0.05である;DCUKA/VEH又はメサドン3.5mg/kg単剤と比較して、
**P<0.05である;VEH(n=8/群、分散分析及び事後比較)と比較して+P<0.05である。
【0149】
これらのデータは、Foucquier及びGuedj(2015)によって議論された「効果に基づく戦略」アプローチのそれぞれによって決定される通り、DCUKAとメサドンとの組み合わせが、各薬物単体の相加効果よりも大きな効果を有するという結論と、一致する。1.5mg/kgのメサドンについて、この図は、薬物の非有効用量の組み合わせが、充分な効果をもたらす、「閾値以下の組み合わせ」アプローチを説明する。黒の実線は、フロントアジュバント及びビヒクルで処理された動物におけるベースラインの器質的疼痛閾値比を示す。この線を上回る増大は、DCUKA又はメサドン(1.5mg/kg)単剤の(有意ではない)効果を表す。灰色の線は、DCUKAと1.5mg/kgメサドンとの組み合わせの予測される相加効果を示す。DCUKAとメサドン1.5mg/kgとの組み合わせの増大した効果は、「正の組み合わせ効果」を示す(Foucquier and Guedj、2015)。3.5mg/kgメサドンについて、図は、薬物組み合わせの効果は個々の成分によってもたらされる効果よりも大きい「最高単剤」アプローチを説明する。破線は、3.5mg/kgメサドン及びDCUKAの予測される相加効果を示す。この線を上回る薬物組み合わせの増大した効果は、「正の組み合わせ効果」を反映する(Foucquier and Guedj、2015)。
【0150】
実施例6 DCUKAは、MIA誘導型神経障害性疼痛を治療するトラマドールの効果を増大する。
以下のデータは、慢性疼痛の別のモデルであるMIA骨関節炎性モデルにおいて、低用量のDCUKAが、低用量の別の麻薬鎮痛剤(トラマドール)と共に、相乗して痛覚過敏を軽減することを実証する。トラマドールは、mオピエートレセプターにおいて作用し、セロトニン及びノルエピネフリン再取り込みインヒビターでもある。
【0151】
実施例3に記載の通り、MIAの投与後、ラットの、異なる用量のDCUKAの急性効果について、MIA処理の21日後に、最初に試験した。結果を
図13に示す。1カプセルのDCUKA(およそ50mg/kg)の投与は、MIA誘導型疼痛に有意に効果を及ぼさなかった。投薬の2~2.5時間後のDCUKAの血中レベルは、このとき、<500ng/ml(<1.1μM)であると測定した。DCUKAのこの血中レベルは、MIA誘導型神経障害性疼痛の軽減に有効ではないと考えられていた。ラットを、MIAによる処理の29日後に、再び器質的疼痛閾値について試験した(疼痛閾値を、28日目に再評価し、初期試験と20日目との間に有意な差はないことを決定した)。ラットに、実施例3に記載のように、ビヒクル、1カプセル(低用量)のDCUKA、p.o.、5mg/kg(低用量)p.o.トラマドール又は1カプセルのDCUKA+5mg/kgトラマドールを、器質的疼痛閾値の測定の90分前に与え、実施例2に記載のLC-MS/MS方法による、DCUKAレベルの評価のための試験の後で、頸動脈から血液を採取した。
【0152】
データ分析。データを、薬物処理後の器質的疼痛閾値に対する、MIAなし、薬物なし処理のベースラインの器質的疼痛閾値の比として表す。DCUKA+トラマドール群の2つの外れ値のデータを、分析から除去する。DCUKA<500ng/mlの血中レベル(MIA誘導型神経障害性疼痛の反転に有効でないことが既に判明しているレベル)を有する動物は、「低用量」のDCUKAを与えられているとみなされる。これらの動物由来のデータを、一元配置分散分析及び全ての対比較のためのHolm-Sidak試験による、群間の相違の分析のために使用した。
【0153】
図13は、それ自体は器質的疼痛閾値に対しビヒクルと比較して有意な効果を有さない、DCUKAの用量(1カプセル、ここで、DCUKAの血中レベルは<500ng/mlである)及びトラマドール(5mg/kg)が、合わさった際に、MIA処理によって起こる疼痛閾値の低下の有意な反転をもたらすことを実証する。データを、低用量のDCUKA、低用量(5mg/kg)のトラマドール、又は低用量のDCUKAと低用量のトラマドールとの組み合わせによる処理後の器質的疼痛閾値対MIA処理前の器質的疼痛閾値の平均±SEMとして表す。全ての他の群と比較して、
*P<0.05(分散分析及び事後比較)。
【0154】
これらのデータは、Foucquier及びGuedj(2015)によって議論された「効果に基づく戦略」アプローチのそれぞれによって決定される通り、DCUKAとトラマドールとの組み合わせが、各薬物単体の相加効果よりも大きな効果を有するという結論と、一致する。図は、薬物組み合わせの効果は個々の成分によってもたらされる効果よりも大きい「最高単剤」アプローチを説明する。実線は、MIA及びビヒクルで処理された動物におけるベースラインの器質的疼痛閾値比を示す。トラマドールの(有意でない)効果は、ベースラインを上回る増加によって示され、この増加は、破線によって示される。破線を上回る薬物組み合わせの効果は、「正の組み合わせ効果」を反映する(Foucquier and Guedj、2015)。
【0155】
実施例7 DCUKAは、アスピリンがSTZ誘導型神経障害性疼痛を治療する効果を増大する。
以下のデータは、慢性疼痛、別のモデルであるSTZ糖尿病性ニューロパシーモデルにおいて、DCUKAは、別の鎮痛剤(アスピリン)と相乗して異痛症を軽減し得ることを実証する。
【0156】
実施例3に記載のように、ストレプトゾトシン(STZ)の投与後、ラットを、von Frey装置.を用いて異痛症について試験した。試験の60分前、ラットを、4つの群に分けた。群1には、ビヒクルを与え;群2には、DCUKAを与え;群3には、アスピリンを与え;そして群4には、DCUKAとアスピリンとの組み合わせを与えた。
【0157】
図14は、それぞれでは異痛症に対し何ら有意な効果を有さないDCUKA(12.5mg/kg)又はアスピリン(25mg/kg)の用量を組み合わせると、反応亢進を完全に反転する、すなわち、疼痛閾値をベースラインレベルに戻すことを実証する。これらのデータは、Foucquier及びGuedj(2015)によって議論された「効果に基づく戦略」アプローチのそれぞれによって決定される通り、DCUKAとアスピリンとの組み合わせが、各薬物単体の相加効果よりも大きな効果を有するという結論と、一致する。この図は、薬物の非有効用量の組み合わせが、充分な効果をもたらす、「閾値以下の組み合わせ」アプローチを説明する。
【0158】
実施例8 FA誘導型神経障害性疼痛を治療する効果を、DCUKAが増強する。
以下のデータは、低用量のジクロフェナクが炎症性薬剤によってもたらされた器質的異痛症を軽減する効果を、低用量のDCUKA(1カプセル、実施例1に記載の通り)が増強することを実証する。データを、薬物又はビヒクル(VEH)処理後の処理された足における器質的疼痛閾値対フロイントアジュバント(FA)による処理前の器質的疼痛閾値の、平均±SEM比として表す。DCUKA又はジクロフェナク1.5mg/kg単剤と比較して*P<0.05;DCUKA又はジクロフェナク10mg/kg単剤と比較して**P<0.05(分散分析及び事後比較)。
【0159】
ラットを、フロイントアジュバントにより処理し、実施例2及び5で記載されるように、器質的疼痛について試験した。ラットの群に、4日目に、異なる用量のジクロフェナクを与え、DCUKA及びジクロフェナクの組み合わせ効果を試験する実験のための適切な用量を決定した。異なる群のラットを、4日目に、1カプセルのDCUKA又は低用量のジクロフェナク単剤及び組み合わせの投与に対して、試験した。
図15は、DCUKAが、炎症誘導型慢性疼痛を軽減するジクロフェナクの効果を増強することを示す。これらのデータは、Foucquier及びGuedj(2015)によって議論された「効果に基づく戦略」アプローチのそれぞれによって決定される通り、DCUKAとジクロフェナクとの組み合わせが、各薬物単体の相加効果よりも大きな効果を有するという結論と、一致する。1.5mg/kgのジクロフェナクについて、この図は、薬物の非有効用量の組み合わせが、充分な効果をもたらす、「閾値以下の組み合わせ」アプローチを説明する。黒の実線は、フロントアジュバント及びビヒクルで処理された動物におけるベースラインの器質的疼痛閾値比を示す。この線を上回る増大は、DCUKA又はジクロフェナク(1.5mg/kg)単剤の(有意ではない)効果を表す。灰色の線は、DCUKAと1.5mg/kgジクロフェナクとの組み合わせの予測される相加効果を示す。灰色の線を上回る、DCUKAとジクロフェナク1.5mg/kgとの組み合わせの増大した効果は、「正の組み合わせ効果」を示す。10mg/kgジクロフェナクについて、図は、薬物組み合わせの効果は個々の成分によってもたらされる効果よりも大きい「最高単剤」アプローチを説明する。破線は、DCUKA及びジクロフェナク10mg/kgの予測される相加効果を示す。この破線を上回る薬物組み合わせの増大した効果は、「正の組み合わせ効果」を示す(Foucquier and Guedj、2015)。
【0160】
実施例9 シスプラチン及びCFA誘導型神経障害性疼痛の、DCUKAによる予防。
以下のデータは、損傷後だが神経障害性疼痛の発症より前の、DCUKAによる動物の処理が、疼痛の発症を予防し得ることを示す。ラットを、シスプラチン又はCFAで処理し、そして器質的疼痛閾値を、実施例3に記載された通りに測定した。
【0161】
CFA誘導型神経障害性疼痛のDCUKAによる予防。器質的疼痛閾値のベースライン測定後に、ラットを、上述の通り、CFAで処理した。CFA注射の後、ラットに、ビヒクル(キャノーラ油/ゼラチン)(n=7)又は50mg/kg DCUKA(n=7)を、経口で、胃内経管栄養によって与えた。次いで、ラットに、ビヒクル又はDCUKAによる3回以上の処理を、12時間間隔で受けさせた。CFA処理の60時間後、器質的疼痛閾値を、再び試験した。
【0162】
シスプラチン誘導型神経障害性疼痛の、DCUKAによる予防。器質的疼痛閾値のベースライン測定の1日後、ラットに、シスプラチンをi.p.注射した。シスプラチン注射を、4日目、8日目、及び12日目に再び与えた。最初のシスプラチン注射の1時間後に開始して、ラットに、50mg/kg DCUKA又はビヒクルを、胃内経管栄養を介して、毎日2回、14日間にわたって与えた。最後の処理の後(15日目)、器質的疼痛閾値を、再び試験した。次いで、疼痛閾値を、さらに処理することなく、4週間にわたって週1回、試験した。
【0163】
図16は、DCUKAが、CFAによる神経障害性疼痛の発症を予防できることを示す。
データは、CFA処理の60時間後の器質的疼痛前の閾値対CFAベースラインの器質的疼痛閾値の比を示す。CFA処理は、およそ70%、疼痛閾値を有意に低下させた。しかし、動物にDCUKAを試験前に毎日与えた場合、閾値は低下しなかった(P=0.16)し、ベースラインの疼痛閾値に近似したままだった。すなわち、DCUKAは、炎症性薬剤の投与後に与えた場合に、炎症性疼痛の発症を予防する能力を有する。スチューデントt検定を使用して、群の間の疼痛閾値を比較し、そして対t検定を使用して、群内の疼痛閾値を比較した。
【0164】
図17は、シスプラチンの投与と疼痛試験との間の期間にわたって反復したDCUKA処理が、ラットシスプラチン誘導型神経障害性疼痛モデルにおいて疼痛の発症を予防したことを説明する。データを、器質的疼痛閾値(足脱離閾値)の平均±SEMで表す。シスプラチンの注射は、慢性的にビヒクルで処理されたラットにおいて何日にもわたる器質的疼痛閾値の有意な低下をもたらした。反復したDCUKA処理により、シスプラチン投与前のベースラインと比較して疼痛閾値の有意な低下があった。この結果は、DCUKAが、化学療法誘導型神経障害性疼痛の発症を予防する能力を有することを示し、これは、化学療法剤の投与後に得られる。
【0165】
二元配置反復測定分散分析は、2つの処理、DCUKA及びビヒクルの間の統計学的に有意な相違(P=0.023)を明らかにした。グラフ中に示される個々のP値は、DCUKA対ビヒクルについてのものであり、多重比較方法によって計算した。また、シスプラチン投与前0日目と比較して、シスプラチン及びビヒクルの群(15、19、25、32日目)における疼痛閾値に有意な相違が検出されたが、シスプラチン注射前の0日目の値と比較して、シスプラチン及びDCUKAの群の間の疼痛閾値には、有意な相違はなかった。
【0166】
本発明の好ましい実施形態は、本発明者らに公知である、本発明を実施するためのベストモードを含めて、本明細書中の上で記載されている。これらの好ましい実施形態の本発明の範囲内の変型が、上の記載を読めば、当業者に明らかであろう。したがって、本発明は、本明細書に添付の特許請求の範囲によって規定される主題の全ての改変及び均等物を含む。さらに、上述の要素の、その全ての可能性のある変型における任意の組み合わせが、本明細書中でそうでないと指示されていない限り、又は明らかに文脈が矛盾しない限り、本発明によって包含される。
【0167】
参考文献。以下に列挙する各文書は、本明細書中でその全体が参考として組み込まれる。
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