(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-19
(45)【発行日】2023-12-27
(54)【発明の名称】エアゾール容器用キャップ
(51)【国際特許分類】
B65D 83/20 20060101AFI20231220BHJP
B65D 83/16 20060101ALI20231220BHJP
【FI】
B65D83/20 100
B65D83/16 100
(21)【出願番号】P 2022052130
(22)【出願日】2022-03-28
(62)【分割の表示】P 2018010403の分割
【原出願日】2018-01-25
【審査請求日】2022-04-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000112853
【氏名又は名称】フマキラー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】若槻 健
【審査官】長谷川 一郎
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第04513890(US,A)
【文献】米国特許第06145704(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0147898(US,A1)
【文献】実開昭58-156558(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 83/20
B65D 83/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤及び噴射剤が収容された容器本体と該容器本体の上部に設けられた弁機構及びステムを備えたエアゾール容器の上部に取り付けられるエアゾール容器用キャップにおいて、
上記エアゾール容器用キャップは、上記容器本体の上部を覆うように形成されたカバー部材と、上記ステムを押動操作するための操作部材とを備え、
上記操作部材は、上記ステムの上部が嵌合するステム嵌合筒部と、該ステム嵌合筒部に連通する吐出ノズル部と、操作者の指を載置する指載置部と、被係合部とが一体成形されてなるものであり、
上記操作部材の上記吐出ノズル部の基端部には、上記ステム嵌合筒部が形成され、
上記指載置部は、上記ステム嵌合筒部の外周面から延びるように形成され、
上記カバー部材の下部には、上記容器本体の上部に固定される固定部が設けられ、
上記カバー部材の上記固定部よりも上方には、上記操作部材の上記被係合部が係合する係合部が設けられ、
上記操作部材の上記吐出ノズル部の先端部には、下方へ延びるとともに可撓性を有する可撓板部が形成され、該可撓板部の下部に上記被係合部が形成されていることを特徴とするエアゾール容器用キャップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば薬剤等を噴出するエアゾール容器に取り付けられるエアゾール容器用キャップに関するものであり、特に、複数の部材からなる構造の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
一般に、エアゾール容器は、例えば薬剤と薬剤を噴射させるための噴射剤とが収容された容器本体と、この容器本体の上部に設けられた弁機構及びステムとを備えて構成されている。ステムは容器本体の上方へ突出するように設けられており、弁機構によって上方へ付勢されている。このステムを下方へ押動することにより、弁機構が開状態となって容器本体の内部に収容されている薬剤が噴射剤の圧力によってステムから噴出する。
【0003】
上記エアゾール容器には、例えば特許文献1に開示されているようにキャップが取り付けられている。特許文献1のキャップは、ステムを押動操作するための操作部材と、容器本体の上部に嵌合して該容器本体の上部を覆うカバー部材とからなる2部品構成となっている。操作部材には、ステムの上部が嵌合するステム嵌合筒部、ステムの上部に連通するノズル、操作者の指を置く指載置部等が一体成形されている。操作部材とカバー部材とは、熱かしめ等の方法によって一体化されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1のキャップのように、容器本体の上部を覆うカバー部材と、ステムを操作する操作部材とを別部材として組み合わせる構造にすることで、カバー部材及び操作部材のそれぞれの成形自由度を向上させることができる。その結果、キャップのデザインの自由度が向上し、複雑なデザインのキャップを容易に成形することが可能になるので、キャップを一体成形にせず、あえて複数の部材からなるものとする場合がある。
【0006】
しかしながら、キャップを複数の部材からなるものにすると、エアゾール容器への組付作業が煩雑になるという問題がある。特許文献1では、操作部材とカバー部材とを熱かしめ等の方法によって一体化することで一部品化しているが、この場合、熱かしめ工程が必要になるとともに、樹脂を部分的に溶融する溶融設備も必要になり、結果的にコストアップに繋がる懸念がある。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、操作部材とカバー部材とを備えた構成とする場合に、熱かしめ工程のような溶融設備を用意することなく低コストで操作部材とカバー部材とを一部品化できるようにしてエアゾール容器へのキャップの組付作業を簡単にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明では、エアゾール容器への組付前に操作部材とカバー部材とを係合させることによって一部品化可能にした。
【0009】
第1の発明は、薬剤及び噴射剤が収容された容器本体と該容器本体の上部に設けられた弁機構及びステムを備えたエアゾール容器の上部に取り付けられるエアゾール容器用キャップにおいて、上記エアゾール容器用キャップは、上記容器本体の上部を覆うように形成されたカバー部材と、上記ステムを押動操作するための操作部材とを備え、上記操作部材は、上記ステムの上部が嵌合するステム嵌合筒部と、該ステム嵌合筒部に連通する吐出ノズル部と、操作者の指を載置する指載置部と、被係合部とが一体成形されてなるものであり、上記カバー部材の下部には、上記容器本体の上部に固定される固定部が設けられ、上記カバー部材の上記固定部よりも上方には、上記操作部材の上記被係合部が係合する係合部が設けられていることを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、容器本体の上部を覆うカバー部材と、ステムを押動操作するための操作部材とが別部材とされているので、各々の成形自由度が高まり、キャップのデザインの自由度が向上して複雑なデザインのキャップを容易に成形することが可能になる。
【0011】
そして、操作部材を容器本体に取り付ける前に、操作部材の被係合部をカバー部材の係合部に係合させることで、操作部材とカバー部材とを一部品化することが可能になる。操作部材の被係合部とカバー部材の係合部とは係合による一部品化であることから、従来例のような樹脂の部分的な溶融設備は不要になる。
【0012】
操作部材とカバー部材とを一部品化した後、カバー部材の固定部を容器本体の上部に固定することで、操作部材及びカバー部材がエアゾール容器の上部に取り付けられた状態になる。この状態で、操作部材のステム嵌合筒部にステムの上部が嵌合する。このステム嵌合筒部と指載置部とは一体成形されているので、指載置部に載置した指によってステムを押動操作することが可能になる。ステムが押動操作されると、ステムから吐出した薬剤がステム嵌合筒部及び吐出ノズル部を流通して外部に噴射される。
【0013】
また、上記操作部材の上記吐出ノズル部の先端部には、上下方向に延びる先端板部が一体成形され、上記操作部材の上記ステム嵌合筒部、上記吐出ノズル部及び上記先端板部は、上記カバー部材の内部に配置され、上記カバー部材には、上記吐出ノズル部の先端部及び上記先端板部を露出させるノズル用開口部が形成されていることを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、操作部材の吐出ノズル部の先端部及び先端板部がカバー部材のノズル用開口部から露出することになるので、キャップの吐出部分近傍が立体的なデザインになる。
【0015】
第2の発明は、上記操作部材の上記吐出ノズル部の先端部には、下方へ延びるとともに可撓性を有する可撓板部が形成され、該可撓板部の下部に上記被係合部が形成され、上記操作部材の上記吐出ノズル部の基端部には、上記ステム嵌合筒部が形成され、上記指載置部は、上記ステム嵌合筒部の外周面から延びるように形成されていることを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、指載置部に載置した指によって該指載置部を押動させると、ステム嵌合筒部及び吐出ノズル部が下向きの力を受け、この下向きの力によって可撓板部が撓み変形してステム嵌合筒部及び吐出ノズル部が下方へ変位してステムが押動操作される。従って、被係合部をカバー部材に係合させた状態のまま、ステムの押動操作が可能になる。
【0017】
第3の発明は、上記カバー部材の下部は、上記容器本体の上部を囲む筒状部とされ、上記操作部材の上記被係合部は、上記筒状部の内周面に沿うように形成されていることを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、操作部材の被係合部がカバー部材の筒状部の内側に嵌まることになるので、カバー部材の係合部に係合した状態で安定する。
【0019】
第4の発明は、上記操作部材の上記被係合部は、上記筒状部の内周面に沿う環状に形成されていることを特徴とする。
【0020】
この構成によれば、操作部材の被係合部がより一層安定する。
【0021】
第5の発明は、上記カバー部材の上記係合部は、上記筒状部の内周面から該筒状部の径方向内方へ突出する突出部で構成されていることを特徴とする。
【0022】
この構成によれば、突出部が係合部になるので、被係合部を係合部に係合させる操作が容易になるととともに、確実に係合させることが可能になる。
【0023】
第6の発明は、上記カバー部材の上記係合部は、上記操作部材の上記被係合部の下端面に当接するように配置されていることを特徴とする。
【0024】
この構成によれば、カバー部材の係合部が操作部材の被係合部の下端面に当接した状態で操作部材が下方から支持され、操作部材のカバー部材からの離脱が抑制される。
【0025】
第7の発明は、上記操作部材には、上記カバー部材の上記係合部が上記操作部材の上記被係合部の下端面に当接した状態で上記カバー部材に当接して該操作部材の上方への移動を規制するストッパ部が形成されていることを特徴とする。
【0026】
この構成によれば、カバー部材の係合部が操作部材の被係合部の下端面に当接すると、操作部材のストッパ部がカバー部材に当接して操作部材の上方への移動が規制される。
【0027】
第8の発明は、上記カバー部材の上記筒状部の内面には、上記操作部材の上記被係合部の上部が下方から嵌合する嵌合部が形成され、上記被係合部の下部は、上記容器本体の上部に上方から当接することを特徴とする。
【0028】
この構成によれば、カバー部材の固定部を容器本体に固定した状態で、操作部材の被係合部の上部がカバー部材の嵌合部に嵌合し、被係合部の下部が容器本体の上部に当接する。これにより、被係合部がカバー部材と容器本体とで上下方向に挟持されるので、操作部材のがたつきが抑制される。
【発明の効果】
【0029】
第1の発明によれば、エアゾール容器への組付前に操作部材とカバー部材とを係合させることによって一部品化することができるので、低コスト化を図りながらエアゾール容器へのキャップの組付作業を簡単にすることができる。
【0030】
第2の発明によれば、操作部材の吐出ノズル部の先端部に可撓板部を介して被係合部を形成し、吐出ノズル部の基端部にステム嵌合筒部を形成し、指載置部をステム嵌合筒部の外周面から延びるように形成したので、被係合部をカバー部材に係合させた状態のまま、ステムを押動操作することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明の実施形態1にかかるエアゾール製品を前方向から見た斜視図である。
【
図2】エアゾール製品を後方向から見た斜視図である。
【
図8】
図3のVI-VI線に相当するエアゾール容器用キャップの断面図である。
【
図9】
図4のVII-VII線に相当するエアゾール容器用キャップの断面図である。
【
図10】本発明の実施形態2にかかるエアゾール製品の平面図である。
【
図14】
図10のXI-XI線に相当するエアゾール容器用キャップの断面図である。
【
図15】
図10のXII-XII線に相当するエアゾール容器用キャップの断面図である。
【
図16】
図10のXIII-XIII線に相当するエアゾール容器用キャップの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0033】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係るエアゾール容器用キャップ1が取り付けられたエアゾール容器100を前方から見た斜視図であり、
図2は、エアゾール容器100を後方から見た斜視図である。エアゾール容器用キャップ1とエアゾール容器100とでエアゾール製品Aが構成されている。
【0034】
尚、この実施形態の説明では、「前側」とは、使用者がエアゾール容器100を使用する状態で持ったときに薬剤を噴射する方向をいい、「後側」とは、同状態としたときに薬剤の噴射方向と反対側をいい、「右側」とは、同状態としたときに使用者から見て右となる側をいい、「左側」とは、同状態としたときに使用者から見て左となる側をいうものとする。これは説明の便宜を図るために定義するだけであり、どの方向が前や後であってもよい。
【0035】
(エアゾール容器100の構成)
エアゾール容器用キャップ1の説明の前に、エアゾール容器100について説明すると、
図6及び
図7に示すように、エアゾール容器100は、殺虫剤(薬剤)及び殺虫剤を噴出させるための噴射剤が収容された縦長の容器本体101と、容器本体101の上部に設けられた弁機構101a及びステム102とを備えた周知の構造のものである。容器本体101は、円筒状に形成された耐圧容器である。また、ステム102は、容器本体101の上壁部の略中心部に設けられている。ステム102の下端部は、弁機構101aを介して容器本体101の内部に連通可能となっている。ステム102は、弁機構101aによって容器本体101の上壁部から上方へ突出するように上方へ付勢されており、下方(容器本体101の内方)へ押動可能となっている。
【0036】
ステム102を下方へ押動した状態で弁機構101aが開放されてステム102と容器本体101の内部とが連通状態になり、殺虫剤が噴射剤の圧力によって噴出される。ステム102に対する下方への外力を除くと、ステム102が弁機構101aの付勢力によって元の位置に戻って弁機構101aが閉状態になる。容器本体101に収容する薬剤は、殺虫剤に限られるものではなく、例えば、消臭剤、除菌剤、芳香剤、整髪料等が挙げられる。また、噴射剤は、例えばLPガスやジメチルエーテル等を挙げることができ、特に限定されるものではない。
【0037】
(エアゾール容器用キャップ1の構成)
図1等に示すように、エアゾール容器用キャップ1は、エアゾール容器100の上部に取り付けられる。
図6及び
図7に示すように、エアゾール容器用キャップ1は、エアゾール容器100の容器本体101の上部を覆うように形成されたカバー部材10と、エアゾール容器100のステム102を押動操作するための操作部材20とを備えている。カバー部材10及び操作部材20は、共に樹脂材からなるものであり、例えば射出成形品とすることができる。カバー部材10と操作部材20とは別々に成形された後、後述するように組み合わされてエアゾール容器用キャップ1となる。このように、カバー部材10と操作部材20と別々に成形することにより、カバー部材10及び操作部材20の各々の成形自由度を向上させることができる。その結果、エアゾール容器用キャップ1のデザインの自由度が向上し、複雑なデザインのエアゾール容器用キャップ1を容易に成形することが可能になるので、この実施形態ではエアゾール容器用キャップ1をあえて一体成形せず、複数の部材からなるものとしている。尚、エアゾール容器用キャップ1を構成する部材の数は2つに限られるものではなく、3つ以上であってもよい。
【0038】
(カバー部材10の構成)
図1~
図5等に示すように、カバー部材10は、エアゾール容器100の容器本体101の上部に固定された状態で全体として上方へ膨出する形状とされている。平面視において、カバー部材10の中心部は、エアゾール容器用キャップ1の中心部と略一致しており、ステム102の軸線上に位置することになる。
【0039】
カバー部材10の下部は、容器本体101の上部を囲むように形成された筒状部10aとされている。筒状部10aは容器本体101の形状に対応した略円筒状であり、そのため、カバー部材10の下部の前後方向の寸法と左右方向の寸法とは略等しくなっている。エアゾール容器用キャップ1を容器本体101に取り付ける際には、容器本体101の上部をカバー部材10の筒状部10aの下方から該筒状部10aの内部に挿入する。
【0040】
図6や
図7に示すように、カバー部材10の筒状部10aよりも上側部分は、筒状部10aから上方へ向けてステム102の上端部よりも上まで延び、容器本体101の上部を覆うように形成されている。
図4及び
図6に示すように、カバー部材10の前壁部は、上側へ行くほど後に位置するように傾斜している。また、カバー部材10の後壁部は、上側へ行くほど前に位置するように湾曲している。このため、カバー部材10の前後方向の寸法は、上側へ行くほど短くなる。
【0041】
また、
図3及び
図5に示すように、カバー部材10の左側壁部は、上側へ行くほど右に位置するように湾曲している。また、カバー部材10の右側壁部は、上側へ行くほど左に位置するように湾曲している。このため、カバー部材10の左右方向の寸法も、上側へ行くほど短くなる。
【0042】
図1や
図3に示すように、カバー部材10の前壁部にはノズル用開口部10bが該前壁部を貫通するように形成されている。ノズル用開口部10bは、後述する操作部材20の吐出ノズル部22の先端部及び先端板部25を露出させるための開口部である。ノズル用開口部10bは、
図3に示す正面視で略十字形状となるように、カバー部材10の上方及び下方へ向けてそれぞれ延びる部分と、カバー部材10の左側部及び右側部へ向けてそれぞれ延びる部分とで構成されている。
【0043】
図1に示すように、カバー部材10の左側壁部には左側開口部10cが該左側壁部を貫通するように形成されている。また、
図2に示すように、カバー部材10の右側壁部には右側開口部10dが該右側壁部を貫通するように形成されている。左側開口部10c及び右側開口部10dは、カバー部材10の前部近傍から後部近傍まで延びる細長い形状とされており、後側へ行くほど下に位置するように側面視で傾斜している。
【0044】
図2や
図6に示すように、カバー部材10には、操作用開口部10eが該カバー部材10の上壁部から後壁部にかけて形成されている。操作用開口部10eは、後述する操作部材20の指載置部23を露出させるための開口部であり、カバー部材10の上壁部及び後壁部を貫通している。操作用開口部10eの開口幅(左右方向の寸法)は、例えば人差し指の幅と同程度または若干広めに設定されている。操作用開口部10eは、カバー部材10の左右方向中央部に位置しており、前後方向に長い形状とされている。
図6等に示すように、操作用開口部10eの前縁部は、カバー部材10の前後方向中央部近傍、即ちエアゾール容器用キャップ1の前後方向中央部近傍に位置している。操作用開口部10eの後縁部は、カバー部材10の後端部近傍、即ちエアゾール容器用キャップ1の後端部近傍に位置しており、該操作用開口部10eの前縁部よりも下に位置している。従って、操作用開口部10eは、後側へ行くほど下に位置するように、カバー部材10の後側に開口することになるので、使用者がエアゾール容器100の容器本体101を握った状態で例えば人差し指を操作用開口部10eの内部に容易に配置することが可能になる。
【0045】
図8及び
図9に示すように、カバー部材10の筒状部10aの内周面の下端部には、エアゾール容器100の容器本体101の上部に固定される固定部としての複数の容器固定用突起部11が設けられている。容器固定用突起部11は、筒状部10aの径方向内方へ向けて突出する突出部であり、筒状部10aの周方向に互いに間隔をあけて配置されている。各容器固定用突起部11は、筒状部10aの周方向に長い形状とされている。
【0046】
図6及び
図7に示すように、容器固定用突起部11は、容器本体101の上部の外周面に形成された溝に嵌入するように形成されている。容器固定用突起部11が容器本体101の溝に嵌入した状態で該容器本体101に固定される。容器固定用突起部11を容器本体101の溝に嵌入させる際には、容器本体101の上部をカバー部材10の筒状部10aの下方から該筒状部10aの内部に挿入し、強く押し込む。これにより、容器固定用突起部11やその周囲が弾性変形し、容器固定用突起部11が容器本体101の溝に嵌入する。容器固定用突起部11が容器本体101の溝に嵌入すると、通常の使用時には離脱することがないように強固に固定される。
【0047】
図8及び
図9に示すように、カバー部材10の内周面には、容器固定用突起部11よりも上方に、後述する操作部材20の被係合部24が係合する複数の係合凸部(係合部)12が設けられている。係合凸部12は、筒状部10aの径方向内方へ向けて突出しており、筒状部10aの周方向に互いに間隔をあけて配置されている。各係合凸部12は、筒状部10aの周方向に長い形状とされている。係合凸部12と容器固定用突起部11とは上下方向に所定の隙間をあけて配置されている。
【0048】
係合凸部12の長さ(筒状部10aの周方向の寸法)は、容器固定用突起部11の同方向の長さよりも短く設定されている。また、係合凸部12の高さ(筒状部10aの内周面からの突出高さ)は、容器固定用突起部11の高さよりも低く設定されている。係合凸部12の個数は、容器固定用突起部11の個数よりも少なくなっている。係合凸部12は、筒状部10aの左側と右側とにそれぞれ設けられている。係合凸部12の個数は特に限定されるものではないが、筒状部10aの左側と右側とに少なくとも1つずつ設けるのが好ましい。
【0049】
図9に示すように、カバー部材10の筒状部10aの内面には、後述する操作部材20の被係合部24の上部が下方から嵌合する嵌合部13が形成されている。この嵌合部13は、筒状部10aの左側と右側とにそれぞれ形成されており、操作部材20の被係合部24の上部が嵌まる形状の段部や凹部等で構成することができる。
【0050】
図8及び
図9に示すように、カバー部材10の上壁部には、操作用開口部10eの前縁部から下方へ突出する突出板部14が形成されている。突出板部14は、操作用開口部10eの前縁部に沿って左右方向に延びている。この突出板部14には操作部材20の一部が下方から当接するようになっている。
【0051】
(操作部材20の構成)
図8及び
図9に示すように、操作部材20は、その全体がカバー部材10の内部に収容されるように設けられている。操作部材20は、エアゾール容器100のステム102の上部が嵌合するステム嵌合筒部21と、該ステム嵌合筒部21に連通する吐出ノズル部22と、操作者の指を載置する指載置部23と、被係合部24と、先端板部25と、可撓板部26とが一体成形されてなるものである。少なくともステム嵌合筒部21、吐出ノズル部22及び先端板部25は、カバー部材10の内部に配置され、この実施形態では、指載置部23、被係合部24及び可撓板部26もカバー部材10の内部に配置される。
【0052】
ステム嵌合筒部21は、平面視でエアゾール容器用キャップ1の中央部に位置しており、ステム102と同心上で上下方向に延びている。ステム嵌合筒部21の下端部は開口しており、
図6及び
図7に示すようにステム102の上端部を差し込んで嵌合させることができるようになっている。ステム102の上端部がステム嵌合筒部21に嵌合した状態でステム嵌合筒部21を下方へ押動すると、ステム102を下方へ押動させることができるように、両者の嵌合力が設定されている。また、ステム102の上端部がステム嵌合筒部21に嵌合した状態では、ステム102の外周面とステム嵌合筒部21の内周面との間の気密性が確保されるようになっている。ステム嵌合筒部21の上端部は閉塞されている。
【0053】
吐出ノズル部22は、ステム嵌合筒部21の上下方向中間部から前方へ向けて延びる筒状部で構成されている。つまり、吐出ノズル部22の基端部(後端部)には、ステム嵌合筒部21が形成されることになる。
図8に示すように、吐出ノズル部22の上流端(後端部)はステム嵌合筒部21の上下方向中間部に連通している。吐出ノズル部22内の流路径は、ステム嵌合筒部21内の流路径よりも小さく設定されている。吐出ノズル部22の下流端(前端部、先端部)は、カバー部材10の前壁部から該カバー部材10の前方へは突出しないように、該カバー部材10の内部に位置している。吐出ノズル部22の下流端はエアゾール容器用キャップ1の前方へ向けて開口しており、薬剤及び噴射剤が噴射される噴射口22aとされている。
【0054】
吐出ノズル部22の先端部には、上下方向に延びる先端板部25が一体成形されている。先端板部25は、吐出ノズル部22の先端部から上方へ延びる部分と、左方向へ延びる部分と、右方向へ延びる部分とを有している。この先端板部25は、カバー部材10のノズル用開口部10bを該カバー部材10の内側から覆うように配置されている。先端板部25における上方へ延びる部分がノズル用開口部10bの上方へ延びる部分を覆い、また、先端板部25における左方向へ延びる部分がノズル用開口部10bの左方向へ延びる部分を覆い、また、先端板部25における右方向へ延びる部分がノズル用開口部10bの右方向へ延びる部分を覆っている。
【0055】
吐出ノズル部22の先端部及び先端板部25は、カバー部材10のノズル用開口部10bから露出するが、カバー部材10の前壁部からは突出しないように配置されている。これにより、エアゾール容器用キャップ1の前面には、ノズル用開口部10bの内部に段差ができることになり、立体的な外観とすることができる。
【0056】
指載置部23は、ステム嵌合筒部21の外周面から後方へ向けて延びるように形成されており、カバー部材10の操作用開口部10eの内部に配置されている。指載置部23の前端部は、ステム嵌合筒部21の外周面の後側部分に連なっている。指載置部23の後端部は、カバー部材10の後端部近傍まで延びており、カバー部材10の操作用開口部10eの後端部に達している。
【0057】
吐出ノズル部22の先端部には、下方へ延びるとともに可撓性を有する可撓板部26が形成されている。可撓板部26の肉厚は、指載置部23の肉厚よりも薄く設定されており、可撓板部26は指載置部23よりも小さな力で弾性変形するようになっている。可撓板部26の下部に被係合部24が形成されている。従って、可撓板部26は、吐出ノズル部22と被係合部24との間に介在することになる。この可撓板部26を吐出ノズル部22と被係合部24との間に介在させることにより、例えば被係合部24を固定した状態で吐出ノズル部22を揺動させることが可能になる。
【0058】
被係合部24は、カバー部材10の筒状部10aの内周面に沿うように形成されている。具体的には、被係合部24は、筒状部10aの内周面に沿う環状をなしており、この実施形態では、筒状部10aが円筒状であることから、被係合部24は円環状とされている。被係合部24の外周面と、カバー部材10の筒状部10aの内周面との間には僅かな隙間を形成することができる。
【0059】
カバー部材10の係合凸部12は、操作部材20の被係合部24の下端面に当接するように配置されている。すなわち、操作部材20の被係合部24の下端面がカバー部材10の係合凸部12に当接することにより、被係合部24が係合凸部12に係合した状態になり、被係合部24がカバー部材10に対して下方へ移動するのが阻止される。被係合部24を係合凸部12に係合させる際には、被係合部24を筒状部10aの下方から該筒状部10aに挿入して押し込むことにより、被係合部24や係合凸部12を弾性変形させる。被係合部24や係合凸部12の形状が復元することで、被係合部24が係合凸部12に係合する。係合凸部12が複数個あるので、被係合部24の複数箇所に係合することになり、被係合部24が安定する。
【0060】
また、
図7に示すように、操作部材20の被係合部24の下部は、容器本体101の上部に上方から当接するようになっている。被係合部24の下部が容器本体101の上部に当接した状態で、被係合部24の上部はカバー部材10の嵌合部13に嵌まり、これにより、被係合部24は容器本体101の上部とカバー部材10の嵌合部13とによって上下方向に挟持されることになる。
【0061】
ステム嵌合筒部21の上端部には、カバー部材10の突出板部14の直下方に位置するようにストッパ部21aが形成されている。ストッパ部21aは、カバー部材10の係合凸部12が操作部材20の被係合部24の下端面に当接した状態でカバー部材10の突出板部14の下端面に当接して該操作部材20の上方への移動を規制するための部分である。指載置部23に対して操作力が作用していないときには、ストッパ部21aが突出板部14の下端面に当接するように、各部の形状及び寸法が設定されている。このとき、ステム102は押動されておらず、弁機構101aが閉状態になる。
【0062】
(殺虫剤の噴射)
次に、殺虫剤を噴射する場合について説明する。まず、使用者はエアゾール容器100の容器本体101を握り、例えば人差し指を操作用開口部10eの内部に配置して操作部材20の指載置部23に載置する。そして、指載置部23に対して下向きの力を作用させると、ステム嵌合筒部21及び吐出ノズル部22を介して可撓板部26に力が伝わり、この可撓板部26が撓むことによって指載置部23及びステム嵌合筒部21の下方への傾動が許容される。これにより、ステム嵌合筒部21がステム102を下方へ押動して弁機構101aが開放され、ステム102と容器本体101の内部とが連通状態になり、殺虫剤が噴射剤の圧力によって噴出される。殺虫剤及び噴射剤は、ステム嵌合筒部21及び吐出ノズル部22の内部を流通して噴射口22aから噴射される。
【0063】
(エアゾール容器用キャップ1の取付要領)
次に、エアゾール容器用キャップ1をエアゾール容器100に取り付ける要領について説明する。エアゾール容器用キャップ1をエアゾール容器100に取り付ける前に、エアゾール容器用キャップ1を構成しているカバー部材10と操作部材20とを一体化する。このとき、操作部材20をカバー部材10の筒状部10aの下方から該カバー部材10の内部に挿入していく。すると、操作部材20の被係合部24の上端部が、カバー部材10の係合凸部12に対して下方から当接することになるが、操作部材20を挿入方向に押し込むことで、被係合部24や係合凸部12が弾性変形して被係合部24が係合凸部12を乗り越え、その後、被係合部24や係合凸部12の形状が復元することで、被係合部24が係合凸部12に係合する(
図8及び
図9に示す)。これにより、操作部材20がカバー部材10の内部で保持されてカバー部材10と操作部材20とが一体化する。
【0064】
その後、エアゾール容器用キャップ1をエアゾール容器100に取り付ける。すなわち、容器本体101の上部をカバー部材10の筒状部10aの下方から該筒状部10aの内部に挿入し、強く押し込む。すると、容器固定用突起部11及びその周囲が弾性変形して容器固定用突起部11が容器本体101の溝に嵌入し、エアゾール容器用キャップ1がエアゾール容器100に取り付けられる(
図6及び
図7に示す)。この状態では、操作部材20の被係合部24が容器本体101の上部とカバー部材10の嵌合部13とによって上下方向に挟持されるので、操作部材20が安定する。また、ストッパ部21aが突出板部14の下端面に当接しているので、操作部材20がぐらつくこともない。
【0065】
さらに、操作部材20の被係合部24を、容器本体101の上部とカバー部材10の嵌合部13とによって上下方向に挟持するようにしているので、操作部材20の被係合部24と、カバー部材10の係合凸部12との係合は、それほど強固でなくてもよく、例えば、仮止めしておく程度の係合力で済む。これにより、被係合部24と係合凸部12とを係合させる際に加えなければならない力が小さくて済むので、キャップ1の組立作業が容易になる。また係合力が小さくて済むので、係合凸部12を小さくすることができる。
【0066】
(実施形態の作用効果)
以上説明したように、この実施形態に係るエアゾール容器用キャップ1によれば、エアゾール容器100の容器本体101の上部を覆うカバー部材10と、ステム102を押動操作するための操作部材20とが別部材とされているので、各々の成形自由度が高まり、エアゾール容器用キャップ1のデザインの自由度が向上して複雑なデザインのエアゾール容器用キャップ1を容易に成形することが可能になる。
【0067】
そして、操作部材20を容器本体101に取り付ける前に、操作部材20の被係合部24をカバー部材10の係合凸部12に係合させることで、操作部材20とカバー部材10とを一部品化することが可能になる。操作部材20の被係合部24とカバー部材10の係合凸部12との係合による一部品化であることから、従来例のような溶融設備は不要になり、低コスト化を図ることができる。
【0068】
操作部材20とカバー部材10とを一部品化した後、カバー部材10の容器固定用突起部11を容器本体101の上部に固定することで、取付途中に操作部材20とカバー部材10とが分離することはなく、操作部材20及びカバー部材10をエアゾール容器100の上部に簡単に取り付けることができる。
【0069】
(実施形態2)
図10は、本発明の実施形態2にかかるエアゾール容器用キャップ1が取り付けられたエアゾール容器100の平面図である。この実施形態2では、実施形態1のものに対し、カバー部材10と操作部材20とを一体化する構造が異なるだけであり、他の部分は実施形態1と同じであることから、以下、実施形態1と同じ部分には同じ符号を付して説明を省略し、異なる部分について詳細に説明する。
【0070】
図14~
図16に示すように、この実施形態2では、操作部材20の可撓板部26の下部に、基板部27が一体成形されている。基板部27は、上下方向に延びるとともに、カバー部材10の筒状部10aの内周面に沿って延びている。
図16に示すように、基板部27の周方向の一部には、被係合部27aが上方へ突出するように形成されている。一方、カバー部材10の内面には、被係合部27aの形成位置に対応する部分に凹部(係合部)17が形成されている。凹部17は下方に開放されており、この凹部17に被係合部27aが下方から挿入されると、凹部17の内面に被係合部27aが接触して係合するようになっている。このときの係合力は凹部17の内面と被係合部27aの外面との間に働く摩擦力によって得ることができる他、凹部17の内面及び被係合部27aの外面に凹凸形状を設けて両者を係合させることによって得ることもできる。
【0071】
この実施形態2の場合も、操作部材20とカバー部材10とを備えた構成とする場合に、熱かしめ工程のような溶融設備を用意することなく低コストで操作部材20とカバー部材10とを一部品化することができ、エアゾール容器100へのエアゾール容器用キャップ1の組付作業を簡単にすることができる。
【0072】
(その他の実施形態)
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【0073】
例えば、実施形態1のカバー部材10及び操作部材20の係合構造と、実施形態2のカバー部材10及び操作部材20の係合構造とを兼ね備えたエアゾール容器用キャップ1とすることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0074】
以上説明したように、本発明に係るエアゾール容器用キャップは、例えば薬剤を噴射するエアゾール容器に取り付けて使用することができる。
【符号の説明】
【0075】
1 エアゾール容器用キャップ
10 カバー部材
10b ノズル用開口部
11 容器固定用突起部(固定部)
12 係合凸部(係合部)
13 嵌合部
17 凹部(係合部)
20 操作部材
21 ステム嵌合部
21a ストッパ部
22 吐出ノズル部
23 指載置部
24 被係合部
25 先端板部
26 可撓板部
27a 被係合部
100 エアゾール容器
101 容器本体
101a 弁機構
102 ステム