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特許7406285ビリルビン誘発性神経機能障害、黄疸を伴う精神疾患、又はビリルビンUDP-グルクロン酸転移酵素遺伝子変異に起因する精神疾患を治療、予防又は管理するための医薬組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-19
(45)【発行日】2023-12-27
(54)【発明の名称】ビリルビン誘発性神経機能障害、黄疸を伴う精神疾患、又はビリルビンUDP-グルクロン酸転移酵素遺伝子変異に起因する精神疾患を治療、予防又は管理するための医薬組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/496 20060101AFI20231220BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20231220BHJP
   A61P 25/18 20060101ALI20231220BHJP
【FI】
A61K31/496
A61P25/00
A61P25/18
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2023036505
(22)【出願日】2023-03-09
【審査請求日】2023-07-31
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】504155293
【氏名又は名称】国立大学法人島根大学
(74)【代理人】
【識別番号】100097456
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100180563
【弁理士】
【氏名又は名称】澤田 晃
(72)【発明者】
【氏名】大西 新
【審査官】大島 彰公
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/214950(WO,A1)
【文献】特表2004-538282(JP,A)
【文献】TSUCHIE, K. et al.,Asian J Psychiatr,2013年,Vol. 6,pp. 119-23,ISSN 1876-2018
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K、A61P
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エルトプラジン、又はその医薬として許容し得る塩、溶媒和物、水和物、もしくは重水素標識化合物を含む、ビリルビン誘発性神経機能障害、黄疸を伴う精神疾患、又はビリルビンUDP-グルクロン酸転移酵素遺伝子変異に起因する精神疾患を治療、予防又は管理するための医薬組成物。
【請求項2】
エルトプラジン、又はその医薬として許容し得る塩、溶媒和物、水和物、もしくは重水素標識化合物を含む、対象のビリルビン誘発性神経機能障害を治療、予防又は管理するための医薬組成物であって、該対象がその生体試料中において、健常者のものと比較して高いビリルビン濃度を有する、又は該対象が黄疸を有する、前記医薬組成物。
【請求項3】
エルトプラジン、又はその医薬として許容し得る塩、溶媒和物、水和物、もしくは重水素標識化合物を含む、対象のビリルビン誘発性神経機能障害を治療、予防又は管理するための医薬組成物であって、該対象がビリルビンUDP-グルクロン酸転移酵素遺伝子変異を有する、前記医薬組成物。
【請求項4】
エルトプラジン、又はその医薬として許容し得る塩、溶媒和物、水和物、もしくは重水素標識化合物を含む、対象のビリルビン誘発性神経機能障害を治療、予防又は管理する方法において使用するための医薬組成物であって、
該方法が、
(a)該対象から生体試料を取得する工程;
(b)工程(a)において取得された生体試料中のビリルビン濃度を測定する工程;及び
(c)工程(b)において測定された該ビリルビン濃度が健常者のものと比較して高い場合に、又は工程(b)において測定された該ビリルビン濃度に基づき、該対象が黄疸を有すると判断される場合に、該対象にエルトプラジン、又はその医薬として許容し得る塩、溶媒和物、水和物、もしくは重水素標識化合物を投与する工程;を含む、前記医薬組成物。
【請求項5】
エルトプラジン、又はその医薬として許容し得る塩、溶媒和物、水和物、もしくは重水素標識化合物を含む、対象のビリルビン誘発性神経機能障害を治療、予防又は管理する方法において使用するための医薬組成物であって、
該方法が、
(a)該対象がビリルビンUDP-グルクロン酸転移酵素遺伝子変異を有するか否かを判断する工程;
(b)工程(a)において該対象がビリルビンUDP-グルクロン酸転移酵素遺伝子変異を有すると判断される場合に、該対象にエルトプラジン、又はその医薬として許容し得る塩、溶媒和物、水和物、もしくは重水素標識化合物を投与する工程;を含む、前記医薬組成物。
【請求項6】
エルトプラジン、又はその医薬として許容し得る塩、溶媒和物、水和物、もしくは重水素標識化合物を含む、対象の精神疾患を治療、予防又は管理するための医薬組成物であって、該対象がその生体試料中において、健常者のものと比較して高いビリルビン濃度を有する、又は該対象が黄疸を有する、前記医薬組成物。
【請求項7】
エルトプラジン、又はその医薬として許容し得る塩、溶媒和物、水和物、もしくは重水素標識化合物を含む、対象の精神疾患を治療、予防又は管理するための医薬組成物であって、該対象がビリルビンUDP-グルクロン酸転移酵素遺伝子変異を有する、前記医薬組成物。
【請求項8】
エルトプラジン、又はその医薬として許容し得る塩、溶媒和物、水和物、もしくは重水素標識化合物を含む、対象の精神疾患を治療、予防又は管理する方法において使用するための医薬組成物であって、
該方法が、
(a)該対象から生体試料を取得する工程;
(b)工程(a)において取得された生体試料中のビリルビン濃度を測定する工程;及び
(c)工程(b)において測定された該ビリルビン濃度が健常者のものと比較して高い場合に、又は工程(b)において測定された該ビリルビン濃度に基づき、該対象が黄疸を有すると判断される場合に、該対象にエルトプラジン、又はその医薬として許容し得る塩、溶媒和物、水和物、もしくは重水素標識化合物を投与する工程;を含む、前記医薬組成物。
【請求項9】
エルトプラジン、又はその医薬として許容し得る塩、溶媒和物、水和物、もしくは重水素標識化合物を含む、対象の精神疾患を治療、予防又は管理する方法において使用するための医薬組成物であって、
該方法が、
(a)該対象がビリルビンUDP-グルクロン酸転移酵素遺伝子変異を有するか否かを判断する工程;
(b)工程(a)において該対象がビリルビンUDP-グルクロン酸転移酵素遺伝子変異を有すると判断される場合に、該対象にエルトプラジン、又はその医薬として許容し得る塩、溶媒和物、水和物、もしくは重水素標識化合物を投与する工程;を含む、前記医薬組成物。
【請求項10】
前記精神疾患が、統合失調症又は注意欠陥多動性障害である、請求項1、6、7、8及び9のいずれか一項記載の医薬組成物。
【請求項11】
ビリルビン誘発性神経機能障害、黄疸を伴う精神疾患、又はビリルビンUDP-グルクロン酸転移酵素遺伝子変異に起因する精神疾患を治療、予防又は管理するためのキットであって、エルトプラジン、又はその医薬として許容し得る塩、溶媒和物、水和物、もしくは重水素標識化合物を含む、前記キット。
【請求項12】
生体試料中のビリルビン濃度を測定するための試薬、及び/又はビリルビンUDP-グルクロン酸転移酵素遺伝子の変異を測定するための試薬をさらに含む、請求項11記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビリルビン誘発性神経機能障害(BIND:Bilirubin-Induced Neurological Dysfunction)(ビリルビン脳症)を治療、予防又は管理するための医薬組成物、及び方法に関する。また、本発明は、黄疸を伴う精神疾患、又はビリルビンUDP-グルクロン酸転移酵素(UGT1A1)遺伝子変異に起因する精神疾患を治療、予防又は管理するための医薬組成物、及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
体質性黄疸は、肝細胞内のUDP-グルクロン酸転移酵素(UGT1A1)に異常が生じ、間接ビリルビンが適切に処理されずに血中ビリルビン濃度が増加することによって、皮膚や眼球が黄色くなる病気である。体質性黄疸は、人口の2~7%が発症するよく知られた病気であるが、近年、精神疾患を併発することが明らかになり、UGT1A1の変異や黄疸が統合失調症や注意欠陥多動症(ADHD)の原因の一つになっている可能性が指摘されている。現在、体質性黄疸と統合失調症とを併発する患者は日本において統合失調症患者の2割(20万人以上)いると推定されている。しかしながら、黄疸と統合失調症とを併発している患者は、併発していない患者に比べ、抗精神病薬のドーパミン受容体遮断作用による錐体外路系副作用が強く出現することや急性期及び病状安定期でも臨床症状が重度であることから、治療が難しいものであった(非特許文献1及び2)。
【0003】
BINDは、核黄疸とも呼ばれ、血液中で増加した非抱合型ビリルビンの神経毒性に起因する脳障害であり、知的障害や運動障害などを引き起こし得る。近年、ビリルビン脳症が早産児に増加していることが分かり、新生児医療の分野において、早急に解決すべき大きな課題となっている。
【0004】
神経変性疾患に関して、セロトニン受容体アンタゴニスト等を用いた治療薬の開発が行われているが、これらの治療薬はQT延長などの副作用や効果が限定的であることも報告されており、いまだ課題が残されている(特許文献1~3、及び非特許文献3~5)。一方で、血中ビリルビン濃度の増加に伴う精神疾患や神経機能障害の治療を目的とした研究例はほとんどなく、その治療薬の開発はいまだなされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特表2008-500325号公報
【文献】特表2003-531829号公報
【文献】特表2006-516284号公報
【非特許文献】
【0006】
【文献】宮岡 剛、「統合失調症の異種性からみたQOLの改善-ビリルビン代謝異常の影響-」、精神経誌(2011)113巻4号, p.361-367
【文献】Takahashi H. et al., "The role of extrastriatal dopamine D2 receptors in schizophrenia", Biological psychiatry Volume 59, Issue 10, May 2006 Pages 919-28.
【文献】Q Tang et al., "The 5-HT2 antagonist ketanserin is an open channel blocker of human cardiac ether-a-go-go-related gene (hERG) potassium channels", British Journal of Pharmacology (2008) 155, 365-3373
【文献】Cummings J. et al., "Pimavanserin for patients with Parkinson’s disease psychosis: a randomised, placebo-controlled phase 3 trial", Lancet 2014; 383: 533-40
【文献】McFarland K. et al., "Pimavanserin, a 5-HT2A inverse agonist, reverses psychosis-like behaviors in a rodent model of Parkinson's disease", Behav Pharmacol. 2011 Oct;22(7):681-92
【文献】Hayashida M. et al., "Hyperbilirubinemia-related behavioral and neuropathological changes in rats: A possible schizophrenia animal model", Progress in Neuropsychopharmacology & Biological Psychiatry, 33 (2009) 581-588
【文献】Tsuchie K. et al., "The effects of antipsychotics on behavioral abnormalities of the Gunn rat (unconjugated hyperbilirubinemia rat), a rat model of schizophrenia", Asian Journal of Psychiatry, Volume 6, Issue 2, April 2013, Pages 119-123
【文献】Takeuchi K. et al., "Genetic polymorphisms of bilirubin uridine diphosphate-glucuronosyltransferase gene in Japanese patients with Crigler-Najjar syndrome or Gilbert's syndrome as well as in healthy Japanese subjects", Journal of Gastroenterology and Hepatology (2004) 19, 1023-1028
【文献】Kimura K. et al., "Structures of the 5-HT2A receptor in complex with the antipsychotics risperidone and zotepine", Nature Structural & Molecular Biology, volume 26, pages 121-128 (2019)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本開示は、BIND、黄疸を伴う精神疾患、又はUGT1A1遺伝子変異に起因する精神疾患を治療、予防又は管理するための医薬組成物、及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、精神疾患の治療薬の開発にあたり、UGT1A1遺伝子変異を有する黄疸モデルラット(Gunnラット)に着目した。Gunnラットは、統合失調症に関連した認知行動障害を起こすことが知られている(非特許文献6及び7)。Gunnラットは、BIND、黄疸を伴う精神疾患、又はUGT1A1遺伝子変異に起因する精神疾患のモデル動物になり得る。本発明者らは、Gunnラットに、5-HT1A/1B受容体アゴニストを投与したところ、認知行動障害が劇的に改善されることを見出し、本願発明を開発するに至った。
【0009】
したがって、本開示は、以下の態様の発明を提供する。
(態様1)
5-HT1A/1B受容体アゴニストを含む、ビリルビン誘発性神経機能障害、黄疸を伴う精神疾患、又はビリルビンUDP-グルクロン酸転移酵素遺伝子変異に起因する精神疾患を治療、予防又は管理するための医薬組成物。
(態様2)
5-HT1A/1B受容体アゴニストを含む、対象のビリルビン誘発性神経機能障害を治療、予防又は管理するための医薬組成物であって、該対象がその生体試料中において、健常者のものと比較して高いビリルビン濃度を有する、又は該対象が黄疸を有する、前記医薬組成物。
(態様3)
5-HT1A/1B受容体アゴニストを含む、対象のビリルビン誘発性神経機能障害を治療、予防又は管理するための医薬組成物であって、該対象がビリルビンUDP-グルクロン酸転移酵素遺伝子変異を有する、前記医薬組成物。
(態様4)
5-HT1A/1B受容体アゴニストを含む、対象のビリルビン誘発性神経機能障害を治療、予防又は管理する方法において使用するための医薬組成物であって、
該方法が、
(a)該対象から生体試料を取得する工程;
(b)工程(a)において取得された生体試料中のビリルビン濃度を測定する工程;及び
(c)工程(b)において測定された該ビリルビン濃度が健常者のものと比較して高い場合に、又は工程(b)において測定された該ビリルビン濃度に基づき、該対象が黄疸を有すると判断される場合に、該対象に5-HT1A/1B受容体アゴニストを投与する工程;を含む、前記医薬組成物。
(態様5)
5-HT1A/1B受容体アゴニストを含む、対象のビリルビン誘発性神経機能障害を治療、予防又は管理する方法において使用するための医薬組成物であって、
該方法が、
(a)該対象がビリルビンUDP-グルクロン酸転移酵素遺伝子変異を有するか否かを判断する工程;
(b)工程(a)において該対象がビリルビンUDP-グルクロン酸転移酵素遺伝子変異を有すると判断される場合に、該対象に5-HT1A/1B受容体アゴニストを投与する工程;を含む、前記医薬組成物。
(態様6)
5-HT1A/1B受容体アゴニストを含む、対象の精神疾患を治療、予防又は管理するための医薬組成物であって、該対象がその生体試料中において、健常者のものと比較して高いビリルビン濃度を有する、又は該対象が黄疸を有する、前記医薬組成物。
(態様7)
5-HT1A/1B受容体アゴニストを含む、対象の精神疾患を治療、予防又は管理するための医薬組成物であって、該対象がビリルビンUDP-グルクロン酸転移酵素遺伝子変異を有する、前記医薬組成物。
(態様8)
5-HT1A/1B受容体アゴニストを含む、対象の精神疾患を治療、予防又は管理する方法において使用するための医薬組成物であって、
該方法が、
(a)該対象から生体試料を取得する工程;
(b)工程(a)において取得された生体試料中のビリルビン濃度を測定する工程;及び
(c)工程(b)において測定された該ビリルビン濃度が健常者のものと比較して高い場合に、又は工程(b)において測定された該ビリルビン濃度に基づき、該対象が黄疸を有すると判断される場合に、該対象に5-HT1A/1B受容体アゴニストを投与する工程;を含む、前記医薬組成物。
(態様9)
5-HT1A/1B受容体アゴニストを含む、対象の精神疾患を治療、予防又は管理する方法において使用するための医薬組成物であって、
該方法が、
(a)該対象がビリルビンUDP-グルクロン酸転移酵素遺伝子変異を有するか否かを判断する工程;
(b)工程(a)において該対象がビリルビンUDP-グルクロン酸転移酵素遺伝子変異を有すると判断される場合に、該対象に5-HT1A/1B受容体アゴニストを投与する工程;を含む、前記医薬組成物。
(態様10)
前記5-HT1A/1B受容体アゴニストが、式(I)の化合物、又はその医薬として許容し得る塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、互変異性体、又は重水素標識化合物である、態様1~9のいずれか一項記載の医薬組成物:
【化1】
(式中、R1は、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C1-6ヒドロキシアルキル、又はC1-6アミノアルキルであり;
R2及びR3は、出現ごとに各々独立に、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C1-6ヒドロキシアルキル、又はC1-6アミノアルキルであり;
X1及びX2は、各々独立に、酸素、硫黄又は-CRaRbであり;
Ra及びRbは、各々独立に、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C1-6ヒドロキシアルキル、又はC1-6アミノアルキルであり;
nは、0~4の整数であり;
mは、0~5の整数である。)。
(態様11)
式(I)の化合物中、X1及びX2が酸素である、態様10記載の医薬組成物。
(態様12)
式(I)の化合物中、R1が水素である、態様10又は11記載の医薬組成物。
(態様13)
式(I)の化合物中、nが0である、態様10~12のいずれか一項記載の医薬組成物。
(態様14)
式(I)の化合物中、mが0である、態様10~13のいずれか一項記載の医薬組成物。
(態様15)
式(I)の化合物中、X1及びX2が酸素であり、R1が水素であり、nが0であり、かつmが0である、又は式(I)の化合物が、エルトプラジンである、態様10~14のいずれか一項記載の医薬組成物。
(態様16)
前記精神疾患が、統合失調症又は注意欠陥多動性障害である、態様1~9のいずれか一項記載の医薬組成物。
(態様17)
ビリルビン誘発性神経機能障害、黄疸を伴う精神疾患、又はビリルビンUDP-グルクロン酸転移酵素遺伝子変異に起因する精神疾患を治療、予防又は管理するためのキットであって、5-HT1A/1B受容体アゴニスト、又は態様1~16のいずれか一項記載の医薬組成物を含む、前記キット。
(態様18)
生体試料中のビリルビン濃度を測定するための試薬、及び/又はビリルビンUDP-グルクロン酸転移酵素遺伝子の変異を測定するための試薬をさらに含む、態様17記載のキット。
【0010】
また、本開示は、以下の態様の発明を提供する。
(態様19)
その必要がある対象のビリルビン誘発性神経機能障害、黄疸を伴う精神疾患、又はビリルビンUDP-グルクロン酸転移酵素遺伝子変異に起因する精神疾患を治療、予防又は管理するための方法であって、該対象に治療的有効量の5-HT1A/1B受容体アゴニストを投与する工程を含む、前記方法。
(態様20)
その必要がある対象のビリルビン誘発性神経機能障害を治療、予防又は管理するための方法であって、該対象がその生体試料中において、健常者のものと比較して高いビリルビン濃度を有する、又は該対象が黄疸を有し、該方法が、該対象に治療的有効量の5-HT1A/1B受容体アゴニストを投与する工程を含む、前記方法。
(態様21)
その必要がある対象のビリルビン誘発性神経機能障害を治療、予防又は管理するための方法であって、該対象がビリルビンUDP-グルクロン酸転移酵素遺伝子変異を有し、該方法が、該対象に治療的有効量の5-HT1A/1B受容体アゴニストを投与する工程を含む、前記方法。
(態様22)
その必要がある対象の対象のビリルビン誘発性神経機能障害を治療、予防又は管理するための方法であって、
(a)該対象から生体試料を取得する工程;
(b)工程(a)において取得された生体試料中のビリルビン濃度を測定する工程;及び
(c)工程(b)において測定された該ビリルビン濃度が健常者のものと比較して高い場合に、又は工程(b)において測定された該ビリルビン濃度に基づき、該対象が黄疸を有すると判断される場合に、該対象に治療的有効量の5-HT1A/1B受容体アゴニストを投与する工程;を含む、前記方法。
(態様23)
対象のビリルビン誘発性神経機能障害を治療、予防又は管理するための方法であって、
(a)該対象がビリルビンUDP-グルクロン酸転移酵素遺伝子変異を有するか否かを判断する工程;
(b)工程(a)において該対象がビリルビンUDP-グルクロン酸転移酵素遺伝子変異を有すると判断される場合に、該対象に治療的有効量の5-HT1A/1B受容体アゴニストを投与する工程;を含む、前記方法。
(態様24)
その必要がある対象の精神疾患を治療、予防又は管理するための方法であって、該対象がその生体試料中において、健常者のものと比較して高いビリルビン濃度を有する、又は該対象が黄疸を有し、該方法が、該対象に治療的有効量の5-HT1A/1B受容体アゴニストを投与する工程を含む、前記方法。
(態様25)
その必要がある対象の精神疾患を治療、予防又は管理するための方法であって、該対象がビリルビンUDP-グルクロン酸転移酵素遺伝子変異を有し、該方法が、該対象に治療的有効量の5-HT1A/1B受容体アゴニストを投与する工程を含む、前記方法。
(態様26)
その必要がある対象の精神疾患を治療、予防又は管理するための方法であって、
(a)該対象から生体試料を取得する工程;
(b)工程(a)において取得された生体試料中のビリルビン濃度を測定する工程;及び
(c)工程(b)において測定された該ビリルビン濃度が健常者のものと比較して高い場合に、又は工程(b)において測定された該ビリルビン濃度に基づき、該対象が黄疸を有すると判断される場合に、該対象に治療的有効量の5-HT1A/1B受容体アゴニストを投与する工程;を含む、前記方法。
(態様27)
その必要がある対象の精神疾患を治療、予防又は管理するための方法であって、
(a)該対象がビリルビンUDP-グルクロン酸転移酵素遺伝子変異を有するか否かを判断する工程;
(b)工程(a)において該対象がビリルビンUDP-グルクロン酸転移酵素遺伝子変異を有すると判断される場合に、該対象に治療的有効量の5-HT1A/1B受容体アゴニストを投与する工程;を含む、前記方法。
(態様28)
前記5-HT1A/1B受容体アゴニストが、式(I)の化合物、又はその医薬として許容し得る塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、互変異性体、又は重水素標識化合物である、態様19~27のいずれか一項記載の方法:
【化2】
(式中、R1は、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C1-6ヒドロキシアルキル、又はC1-6アミノアルキルであり;
R2及びR3は、出現ごとに各々独立に、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C1-6ヒドロキシアルキル、又はC1-6アミノアルキルであり;
X1及びX2は、各々独立に、酸素、硫黄又は-CRaRbであり;
Ra及びRbは、各々独立に、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C1-6ヒドロキシアルキル、又はC1-6アミノアルキルであり;
nは、0~4の整数であり;
mは、0~5の整数である。)。
(態様29)
式(I)の化合物中、X1及びX2が酸素である、態様28記載の方法。
(態様30)
式(I)の化合物中、R1が水素である、態様28又は29記載の方法。
(態様31)
式(I)の化合物中、nが0である、態様28~30のいずれか一項記載の方法。
(態様32)
式(I)の化合物中、mが0である、態様28~31のいずれか一項記載の方法。
(態様33)
式(I)の化合物中、X1及びX2が酸素であり、R1が水素であり、nが0であり、かつmが0である、又は式(I)の化合物が、エルトプラジンである、態様28~32のいずれか一項記載の方法。
(態様34)
前記精神疾患が、統合失調症又は注意欠陥多動性障害である、態様19~33のいずれか一項記載の方法。
(態様35)
その必要がある対象のビリルビン誘発性神経機能障害、黄疸を伴う精神疾患、又はビリルビンUDP-グルクロン酸転移酵素遺伝子変異に起因する精神疾患を治療、予防又は管理するためのキットであって、治療的有効量の5-HT1A/1B受容体アゴニスト、又は態様1~16のいずれか一項記載の医薬組成物、及びビリルビン誘発性神経機能障害、黄疸を伴う精神疾患、又はビリルビンUDP-グルクロン酸転移酵素遺伝子変異に起因する精神疾患を治療、予防又は管理するための指示書を含む、前記キット。
(態様36)
前記対象の生体試料中のビリルビン濃度を測定するための試薬、及び/又はビリルビンUDP-グルクロン酸転移酵素遺伝子の変異を測定するための試薬をさらに含む、態様35記載のキット。
【0011】
さらに、本開示は、以下の態様の発明を提供する。
(態様37)
ビリルビン誘発性神経機能障害、黄疸を伴う精神疾患、又はビリルビンUDP-グルクロン酸転移酵素遺伝子変異に起因する精神疾患の治療、予防又は管理における使用のための5-HT1A/1B受容体アゴニスト。
(態様38)
対象のビリルビン誘発性神経機能障害の治療、予防又は管理における使用のための5-HT1A/1B受容体アゴニストであって、該対象がその生体試料中において、健常者のものと比較して高いビリルビン濃度を有する、又は該対象が黄疸を有する、前記使用のための5-HT1A/1B受容体アゴニスト。
(態様39)
対象のビリルビン誘発性神経機能障害の治療、予防又は管理における使用のための5-HT1A/1B受容体アゴニストであって、該対象がビリルビンUDP-グルクロン酸転移酵素遺伝子変異を有する、前記使用のための5-HT1A/1B受容体アゴニスト。
(態様40)
対象のビリルビン誘発性神経機能障害を治療、予防又は管理する方法における使用のための5-HT1A/1B受容体アゴニストであって、
該方法が、
(a)該対象から生体試料を取得する工程;
(b)工程(a)において取得された生体試料中のビリルビン濃度を測定する工程;及び
(c)工程(b)において測定された該ビリルビン濃度が健常者のものと比較して高い場合に、又は工程(b)において測定された該ビリルビン濃度に基づき、該対象が黄疸を有すると判断される場合に、該対象に5-HT1A/1B受容体アゴニストを投与する工程;を含む、前記使用のための5-HT1A/1B受容体アゴニスト。
(態様41)
対象のビリルビン誘発性神経機能障害を治療、予防又は管理する方法における使用のための5-HT1A/1B受容体アゴニストであって、
該方法が、
(a)該対象がビリルビンUDP-グルクロン酸転移酵素遺伝子変異を有するか否かを判断する工程;
(b)工程(a)において該対象がビリルビンUDP-グルクロン酸転移酵素遺伝子変異を有すると判断される場合に、該対象に5-HT1A/1B受容体アゴニストを投与する工程;を含む、前記使用のための5-HT1A/1B受容体アゴニスト。
(態様42)
対象の精神疾患の治療、予防又は管理における使用のための5-HT1A/1B受容体アゴニストであって、該対象がその生体試料中において、健常者のものと比較して高いビリルビン濃度を有する、又は該対象が黄疸を有する、前記使用のための5-HT1A/1B受容体アゴニスト。
(態様43)
対象の精神疾患の治療、予防又は管理における使用のための5-HT1A/1B受容体アゴニストであって、該対象がビリルビンUDP-グルクロン酸転移酵素遺伝子変異を有する、前記使用のための5-HT1A/1B受容体アゴニスト。
(態様44)
対象の精神疾患を治療、予防又は管理する方法における使用のための5-HT1A/1B受容体アゴニストであって、
該方法が、
(a)該対象から生体試料を取得する工程;
(b)工程(a)において取得された生体試料中のビリルビン濃度を測定する工程;及び
(c)工程(b)において測定された該ビリルビン濃度が健常者のものと比較して高い場合に、又は工程(b)において測定された該ビリルビン濃度に基づき、該対象が黄疸を有すると判断される場合に、該対象に5-HT1A/1B受容体アゴニストを投与する工程;を含む、前記使用のための5-HT1A/1B受容体アゴニスト。
(態様45)
対象の精神疾患を治療、予防又は管理する方法における使用のための5-HT1A/1B受容体アゴニストであって、
該方法が、
(a)該対象がビリルビンUDP-グルクロン酸転移酵素遺伝子変異を有するか否かを判断する工程;
(b)工程(a)において該対象がビリルビンUDP-グルクロン酸転移酵素遺伝子変異を有すると判断される場合に、該対象に5-HT1A/1B受容体アゴニストを投与する工程;を含む、前記使用のための5-HT1A/1B受容体アゴニスト。
(態様46)
前記5-HT1A/1B受容体アゴニストが、式(I)の化合物、又はその医薬として許容し得る塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、互変異性体、又は重水素標識化合物である、態様37~45のいずれか一項記載の使用のための5-HT1A/1B受容体アゴニスト:
【化3】
(式中、R1は、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C1-6ヒドロキシアルキル、又はC1-6アミノアルキルであり;
R2及びR3は、出現ごとに各々独立に、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C1-6ヒドロキシアルキル、又はC1-6アミノアルキルであり;
X1及びX2は、各々独立に、酸素、硫黄又は-CRaRbであり;
Ra及びRbは、各々独立に、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C1-6ヒドロキシアルキル、又はC1-6アミノアルキルであり;
nは、0~4の整数であり;
mは、0~5の整数である。)。
(態様47)
式(I)の化合物中、X1及びX2が酸素である、態様46記載の使用のための5-HT1A/1B受容体アゴニスト。
(態様48)
式(I)の化合物中、R1が水素である、態様46又は47記載の使用のための5-HT1A/1B受容体アゴニスト。
(態様49)
式(I)の化合物中、nが0である、態様46~48のいずれか一項記載の使用のための5-HT1A/1B受容体アゴニスト。
(態様50)
式(I)の化合物中、mが0である、態様46~49のいずれか一項記載の使用のための5-HT1A/1B受容体アゴニスト。
(態様51)
式(I)の化合物中、X1及びX2が酸素であり、R1が水素であり、nが0であり、かつmが0である、又は式(I)の化合物が、エルトプラジンである、態様46~49のいずれか一項記載の使用のための5-HT1A/1B受容体アゴニスト。
(態様52)
前記精神疾患が、統合失調症又は注意欠陥多動性障害である、態様37~51のいずれか一項記載の使用のための5-HT1A/1B受容体アゴニスト。
(態様53)
対象のビリルビン誘発性神経機能障害、黄疸を伴う精神疾患、又はビリルビンUDP-グルクロン酸転移酵素遺伝子変異に起因する精神疾患を治療、予防又は管理するためのキットであって、5-HT1A/1B受容体アゴニスト、又は治療的有効量の態様37~52のいずれか一項記載の使用のための5-HT1A/1B受容体アゴニスト、及びビリルビン誘発性神経機能障害、黄疸を伴う精神疾患、又はビリルビンUDP-グルクロン酸転移酵素遺伝子変異に起因する精神疾患を治療、予防又は管理するための指示書を含む、前記キット。
(態様54)
前記対象の生体試料中のビリルビン濃度を測定するための試薬、及び/又はビリルビンUDP-グルクロン酸転移酵素遺伝子の変異を測定するための試薬をさらに含む、態様53記載のキット。
【発明の効果】
【0012】
BIND、黄疸を伴う精神疾患、又はUGT1A1遺伝子変異に起因する精神疾患を治療、予防又は管理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、溶媒のみを投与したWistarラット(Vehicle(+/+))、溶媒のみを投与したGunnラット(Vehicle(j/j))、0.3mg/kgのエルトプラジンを投与したGunnラット(Elto(j/j))、及び1mg/kgの8OH-DPATを投与したGunnラット(8OH-DPAT(j/j))のオープンフィールドテストにおける自発活動量を示す。図中、**はp<0.01を表す(Vehicle(+/+)に対する各群のダネット検定)。
図2図2は、溶媒のみを投与したWistarラット(Vehicle(+/+))、溶媒のみを投与したGunnラット(Vehicle(j/j))、0.3mg/kgのエルトプラジンを投与したGunnラット(Elto(j/j))、及び1mg/kgの8OH-DPATを投与したGunnラット(8OH-DPAT(j/j))のオープンフィールドテストにおける立ち上がり回数を示す。図中、**はp<0.01を表す(Vehicle(+/+)に対する各群のダネット検定)。
図3図3は、溶媒のみを投与したWistarラット(Vehicle(+/+))、溶媒のみを投与したGunnラット(Vehicle(j/j))、0.3mg/kgのエルトプラジンを投与したGunnラット(Elto(j/j))、及び1mg/kgの8OH-DPATを投与したGunnラット(8OH-DPAT(j/j))のオープンフィールドテストにおける毛づくろい回数を示す。図中、**はp<0.01を表す(Vehicle(+/+)に対する各群のダネット検定)。
図4図4は、溶媒のみを投与したWistarラット(Vehicle(+/+))、溶媒のみを投与したGunnラット(Vehicle(j/j))、0.3mg/kgのエルトプラジンを投与したGunnラット(Elto(j/j))、及び1mg/kgのCGS12066Aを投与したGunnラット(CGS(j/j))のオープンフィールドテストにおける自発活動量を示す。図中、**はp<0.01を表す(Vehicle(+/+)に対する各群のダネット検定)。
図5図5は、溶媒のみを投与したWistarラット(Vehicle(+/+))、溶媒のみを投与したGunnラット(Vehicle(j/j))、0.3mg/kgのエルトプラジンを投与したGunnラット(Elto(j/j))、及び1mg/kgのCGS12066Aを投与したGunnラット(CGS(j/j))のオープンフィールドテストにおける立ち上がり回数を示す。図中、**はp<0.01を表す(Vehicle(+/+)に対する各群のダネット検定)。
図6図6は、溶媒のみを投与したWistarラット(Vehicle(+/+))、溶媒のみを投与したGunnラット(Vehicle(j/j))、0.3mg/kgのエルトプラジンを投与したGunnラット(Elto(j/j))、及び1mg/kgのCGS12066Aを投与したGunnラット(CGS(j/j))のオープンフィールドテストにおける毛づくろい回数を示す。図中、*はp<0.05を表す(Vehicle(+/+)に対する各群のダネット検定)。
図7図7は、溶媒のみを投与したWistarラット(Vehicle(+/+))、溶媒のみを投与したGunnラット((Vehicle(j/j))、0.3mg/kgのエルトプラジンを投与したGunnラット(Elto 0.3mg(j/j))、及び1mg/kgのエルトプラジンを投与したGunnラット(Elto 1mg(j/j))のソーシャルンインターラクションテストにおける追跡行動回数の結果を示す。図中、***はp<0.001を表す(Vehicle(+/+)に対する各群のダネット検定)。
図8図8は、溶媒のみを投与したWistarラット(Vehicle(+/+))、溶媒のみを投与したGunnラット(Vehicle(j/j))、0.3mg/kgのエルトプラジンを投与したGunnラット(Elto 0.3mg(j/j))、及び1mg/kgのエルトプラジンを投与したGunnラット(Elto 1mg(j/j))のソーシャルンインターラクションテストにおける攻撃行動回数の結果を示す。図中、***はp<0.001を表す(Vehicle(+/+)に対する各群のダネット検定)。
図9図9は、溶媒のみを投与したWistarラット(Vehicle(+/+))、溶媒のみを投与したGunnラット(Vehicle(j/j))、0.3mg/kgのエルトプラジンを投与したGunnラット(Elto 0.3mg(j/j))、及び1mg/kgのエルトプラジンを投与したGunnラット(Elto 1mg(j/j))のソーシャルンインターラクションテストにおける相手への匂いかぎ・毛づくろい時間の結果を示す。図中、***はp<0.001を表す(Vehicle(+/+)に対する各群のダネット検定)。
図10図10は、溶媒のみを投与したWistarラット(Vehicle(+/+))、溶媒のみを投与したGunnラット(Vehicle(j/j))、0.3mg/kgのエルトプラジンを投与したGunnラット(Elto 0.3mg(j/j))のパーセンテージPPIの結果を示す。図中、**はp<0.01を表し、***はp<0.001を表す(Vehicle(+/+)に対する各群のダネット検定)。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(1.定義)
本明細書で使用される用語「精神疾患」は、本開示の技術分野において用いられている最も広い意味を有する。精神疾患は、一般に、平均や価値の基準から偏った精神状態のために、著しい苦痛や機能障害をもたらし得る多様な症状群を包括する上位概念である。用語「精神疾患」の例を挙げると、制限されないが、DMS-IV精神疾患の診断・統計マニュアル分類では、せん妄、認知症、健忘障害、他の認知障害、一般身体疾患による精神障害、物質関連障害、統合失調症および他の精神病性障害、気分障害、不安障害、身体表現性障害、虚偽性障害、解離性障害、性障害及び性同一性障害、摂食障害、睡眠障害、他のどこにも分類されない衝動制御の障害、適応障害、パーソナリティ障害がある。その他にも、注意欠陥多動性障害(ADHD)、自閉症、アルツハイマー病、認知異常、うつ病、双極性障害(躁うつ病)、脳神経発達障害、妊娠中の感染症による神経障害に起因する認知機能障害、免疫障害に起因する精神障害、てんかん、脳器質性精神障害、中毒性精神障害、知的障害(精神遅滞)、精神病質、神経症、梅毒性精神障害、老年期精神障害、脳血管性精神障害、頭部外傷による精神障害、非定形内因性精神病、内分泌性精神障害及び外因反応型、及び退行期精神障害がある。
【0015】
本明細書で使用される用語「ビリルビン誘発性神経機能障害」(BIND:Bilirubin-Induced Neurological Dysfunction)は、本開示の技術分野において用いられている最も広い意味を有し、一般に、ビリルビンの神経毒性に起因する脳障害を意味する。本明細書中において、「ビリルビン誘発性神経機能障害」をBINDとも呼ぶ。特に、間接ビリルビン(unbound bilirubin; UB-Bil)は神経毒性を持ち、選択的に、淡蒼球、視床下核、海馬、動眼神経核、蝸牛神経腹側核、小脳プルキンエ細胞、及び小脳歯状核などが障害される。早産児では、軽度の高ビリルビン血症でもBINDが起きることが知られている。「ビリルビン誘発性神経機能障害」は、「核黄疸」又は「ビリルビン脳症」とも呼ばれる。
【0016】
本明細書で使用される用語「ビリルビンUDP-グルクロン酸転移酵素」は、生体内物質の非抱合ビリルビン(間接ビリルビン)を抱合ビリルビンする(直接ビリルビン)に変換する酵素である。本明細書中において、ビリルビンUDP-グルクロン酸転移酵素は、UGT1A1とも呼ばれる。
【0017】
本明細書で使用される用語「ビリルビンUDPグルクロン酸転移酵素遺伝子」又は「UGT1A1遺伝子」は、ビリルビンUDPグルクロン酸転移酵素(UGT1A1)をコードする遺伝子を意味する。この遺伝子変異が、体質性黄疸の原因となり得ることが知られている。
【0018】
本明細書で使用される用語「ビリルビン」は、本開示の技術分野において用いられている最も広い意味を有し、一般に、黄色のヘムの通常の分解代謝物である。本明細書で使用される用語「ビリルビン」は、総ビリルビン、間接ビリルビン、及び直接ビリルビンを含む。間接ビリルビンは肝臓に運ばれる前のビリルビンを意味し、直接ビリルビンは、肝臓で処理が行われたあとのビリルビンを意味する。総ビリルビンは、間接ビリルビン及び直接ビリルビンの総称である。
【0019】
本明細書で使用される用語「遺伝子変異」は、本開示の技術分野において用いられている最も広い意味を有し、一般に、遺伝子に高頻度の異常(塩基の欠失、置換、挿入など)があり、これらの異常により、遺伝子の機能が低下したり、又は失われたりすることを意味する。
【0020】
本明細書で使用される用語「黄疸」は、本開示の技術分野において用いられている最も広い意味を有し、一般に、胆汁色素(ビリルビン)が血液中や組織内に異常に増加し、皮膚、粘膜、その他の組織が黄色くなる症状を意味する。「黄疸」は、特に、血中又は尿中の非抱合型ビリルビン濃度が高値を示す。「黄疸」は、潜在性黄疸(例えば、血中ビリルビン濃度約1mg/dl~約2mg/dl)、軽度黄疸(例えば、血中ビリルビン濃度約2mg/dl~約10mg/dl)、中程度黄疸(例えば、血中ビリルビン濃度約10mg/dl~約20mg/dl)、及び高度黄疸(例えば、血中ビリルビン濃度約20mg/dl~)を包含する。「黄疸」の具体的な例を挙げると、制限されないが、生理的黄疸及び病的黄疸、例えば、直接ビリルビン優位性黄疸、閉塞性黄疸、肝細胞性黄疸、間接ビリルビン優位性黄疸、溶血性黄疸、体質性黄疸及び新生児黄疸がある。
【0021】
本明細書で使用される用語「体質性黄疸」は、本開示の技術分野において用いられている最も広い意味を有し、一般に、ビリルビンの分解に先天的な障害がある状態を意味する。「体質性黄疸」は、特に、血中又は尿中の非抱合型ビリルビン濃度が高値を示す。「体質性黄疸」は、ジルベール(Gilbert)症候群、クリグラー・ナジャー(Crigler-Najjar)症候群、デュビン・ジョンソン(Dubin-Johnson)症候群、及びローター(Rotor)症候群などを包含する。
【0022】
本明細書で使用される用語「5-HT1A/1B受容体」は、本開示の技術分野において用いられている最も広い意味を有し、一般に、セロトニン(5-HT)受容体のサブタイプである5-HT1A受容体と5-HT1B受容体との両方を指す。
【0023】
本明細書で使用される用語「アゴニスト」は、本開示の技術分野において用いられている最も広い意味を有し、一般に、受容体と接触した場合に受容体の活性を高める化合物を意味する。
【0024】
本明細書で使用される用語「アンタゴニスト」は、本開示の技術分野において用いられている最も広い意味を有し、一般に、受容体への結合に関してアゴニスト又はインバースアゴニストと競合的に作用し、それによって受容体でのアゴニスト又はインバースアゴニストの作用を遮断する化合物を意味する。しかしながら、アンタゴニスト(「ニュートラル」アンタゴニストとしても知られる)は、構成的活性には影響を及ぼさない。
【0025】
本明細書で使用される用語「5-HT1A/1B受容体アゴニスト」は、5-HT1A受容体アゴニストであり且つ5-HT1B受容体アゴニストでもあることを意味する。
【0026】
本明細書中で使用される用語「生体試料」は、本発明の技術分野において用いられている最も広い意味を有する。例えば、用語「生体試料」は、血液又は尿などの体液である。用語「血液」は、血清、血漿、及び全血を含む。
【0027】
本明細書で使用される用語「脳」は、本開示の技術分野において用いられている最も広い意味を有する。脳は、対象の脳、例えば、ヒトの脳である。脳の具体的な例を挙げると、制限されないが、大脳、大脳皮質、間脳、小脳及び脳幹がある。脳のさらに具体的な例を挙げると、制限されないが、頭頂葉、前頭葉、側頭葉、後頭葉、中脳、線条体、海馬、起始核、縫線核(例えば、背側縫線核、大縫線核及び背側縫線核外側部)、前脳、延髄、橋、視床、視床下部、脳下垂体、淡蒼球、動眼神経核、蝸牛神経腹側核、小脳プルキンエ細胞、小脳歯状核、及び大脳基底核がある。
【0028】
本明細書で使用される用語「アルキル」は、脂肪族飽和炭化水素の水素原子1個が失われて生じる1価の基を意味する。「アルキル」は、例えば、1~10個、1~8個、1~6個、1~5個、1~4個、1~3個、1~2個、又は2~6個の炭素原子を有する。「アルキル」は、直鎖もしくは分枝状であってもよい。「アルキル基」の例を挙げると、制限されないが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、2,2-ジメチルエチル、2-メチル-1-プロピル、2-メチル-2-プロピル、2-メチル-1-ブチル、3-メチル-1-ブチル、2-メチル-3-ブチル、2,2-ジメチル-1-プロピル、2-メチル-1-ペンチル、3-メチル-1-ペンチル、4-メチル-1-ペンチル、2-メチル-2-ペンチル、3-メチル-2-ペンチル、4-メチル-2-ペンチル、2,2-ジメチル-1-ブチル、3,3-ジメチル-1-ブチル、2-エチル-1-ブチル、ブチル、イソブチル、t-ブチル、メチルブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-ノニル、及びn-デシルがある。
【0029】
本明細書で使用される用語「アルケニル」は、少なくとも1つの二重結合を持つ脂肪族不飽和炭化水素の水素原子1個が失われて生じる1価の基を意味する。「アルケニル」は、例えば、2~10個、2~8個、2~6個、2~5個、2~4個、2~3個、3~6個、3~8個、4~6個、4~7個、又は4~8個の炭素原子を有する。「アルケニル基」は、直鎖もしくは分枝状であってもよい。「アルケニル」の例を挙げると、制限されないが、エテニル(ビニル)、プロペニル、アリル、ブテニル、メチルブテニル、ブタジエニル、ペンテニル、ペンタジエニル、ヘキセニル、及びヘキサジエニルがある。
【0030】
本明細書で使用される用語「アルキニル」は、少なくとも1つの三重結合を持つ脂肪族不飽和炭化水素の水素原子1個が失われて生じる1価の基を意味する。「アルキニル」は、例えば、2~10個、2~8個、2~6個、2~5個、2~4個、2~3個、3~6個、4~6個、4~7個、又は4~8個の炭素原子を有する。「アルキニル基」は、直鎖もしくは分枝状であってもよい。「アルキニル」の例を挙げると、制限されないが、エチニル、プロパルギル、ブチニル、メチルブチニル、ペンチニル及びヘキシニルがある。
【0031】
本明細書で使用される用語「ヒドロキシアルキル」は、ヒドロキシを有するアルキルを意味する。「ヒドロキシアルキル」の例を挙げると、制限されないが、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、2-ヒドロキシ-2-プロピル、及びヒドロキシペンチルがある。
本明細書で使用される用語「アミノアルキル」は、アミノを有するアルキルを意味する。「アミノアルキル」の例を挙げると、制限されないが、アミノメチル及びアミノエチルがある。
【0032】
本明細書で使用される用語「ハロゲン」又は「ハロ」は、フルオロ(-F)、クロロ(-Cl)、ブロモ(-Br)、及びヨード(-I)を意味する。
本明細書で使用される用語「ヒドロキシ」は、-OHを意味する。
本明細書で使用される用語「アミノ」は、-NH2を意味する。
【0033】
本明細書で使用される用語「塩」は、本開示の技術分野において用いられている最も広い意味を有し、一般に、無機酸もしくは無機塩基、又は有機酸もしくは有機塩基を包含する、酸又は塩基を用いて形成され得る。塩の例を挙げると、限定されないが、アルカリ金属塩、例えば、限定されないが、リチウム、カリウム、及びナトリウム;アルカリ土類金属塩、例えば、限定されないが、バリウム、カルシウム、及びマグネシウム;遷移金属塩、例えば、限定されないが、亜鉛;並びに他の金属塩、例えば、限定されないが、リン酸水素ナトリウム及びリン酸二ナトリウム;鉱酸の塩、例えば、限定されないが、塩酸塩及び硫酸塩;有機酸の塩、例えば、限定されないが、酢酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、リンゴ酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、酪酸塩、吉草酸塩、フマル酸塩、及び有機スルホン酸塩;並びにアミン塩、例えば、限定されないが、リジン、N,N'-ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、コリン、アンモニア、ジエタノールアミン及び他のヒドロキシアルキルアミン、エチレンジアミン、N-メチルグルカミン、プロカイン、N-ベンジルフェネチルアミン、1-パラ-クロロベンジル-2-ピロリジン-1'-イルメチル-ベンズイミダゾール、ジエチルアミン及び他のアルキルアミン、ピペラジン及びトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンがある。また、塩は、カルボン酸付加塩又はジカルボン酸付加塩(例えば、マレイン酸付加塩又はフマル酸付加塩)などの酸付加塩、及び塩基付加塩を含み得る。
【0034】
本明細書で使用される用語「医薬として許容し得る」とは、対象、例えば、ヒトを包含する哺乳動物、特にヒトに対して有害でないことを意味する。
【0035】
本明細書で使用される用語「溶媒和物」は、本開示の技術分野において用いられている最も広い意味を有し、一般に、化合物に対する1つ又は複数の溶媒分子の会合により形成される含溶媒化合物を意味する。溶媒の例としては、水、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、及び酢酸などが挙げられるが、これらに限定されない。溶媒和物は、例えば、一溶媒和物、二溶媒和物、三溶媒和物、及び四溶媒和物を包含する。また、溶媒が水の場合、溶媒和物は、水和物である。
【0036】
本明細書で使用される用語「立体異性体」は、本開示の技術分野において用いられている最も広い意味を有する。立体異性体は、ジアステレオマー(シス‐トランス異性体など)及び鏡像異性体を包含する。
本明細書で使用される用語「互変異性体」は、本開示の技術分野において用いられている最も広い意味を有する。互変異性体は、ケト-エノール互変異性を包含する。
本明細書で使用される用語「重水素標識化合物」は、化合物構造中の少なくとも1つの水素原子が重水素である化合物を意味する。
【0037】
本明細書で使用される用語「対象」は、動物、典型的には、ヒト及び非ヒト動物を包含する哺乳動物を意味する。非ヒト動物は、例えば、ラット、マウス、モルモット、ウサギ、サル、イヌ、ネコ、又はミニブタなどの非ヒト哺乳動物などがある。対象がヒトである場合、該対象は、「被験者」又は「患者」とも呼ばれる。対象がヒトである場合、該対象は、男性であっても女性であってもよい。対象がヒトである場合、該対象の年齢は、特に制限されないが、例えば、新生児、乳児、幼児、児童(少年)、青年、壮年、中年、又は老年である。
【0038】
本明細書で使用される用語「約」は、本開示の技術分野において用いられている最も広い意味を有し、一般に、示された数値の誤差の容認可能な程度を意味する。用語「約」は、例えば、所与の値又は値の範囲について、±0.1~20%、±0.1~10%、±0.1~5%、±0.1~1.0%、又は±0.1~0.5%の変動があることを意味する。
【0039】
本明細書で使用される用語「治療」は、本開示の技術分野において用いられている最も広い意味を有し、一般に、特定の疾患又は障害に関連する症状を緩和、低減、改善又は根絶することを意味する。
【0040】
本明細書で使用される用語「予防」は、本開示の技術分野において用いられている最も広い意味を有し、一般に、特定の疾患又は障害に関連する症状の発生を予め防止すること、例えば精神疾患のリスクがある患者に、その症状の発生前に薬物を投与することを意味する。
【0041】
本明細書の特定の疾患もしくは障害の文脈で使用される用語「管理」は、本開示の技術分野において用いられている最も広い意味を有し、特定の疾患もしくは障害の再発を予防すること、特定の疾患もしくは障害に罹患していた患者が寛解期にとどまる時間を延長すること、及び/又は特定の疾患もしくは障害に関連する症状の重症度の低減もしくは回避を維持することを含有する。
【0042】
本明細書で使用される用語「担体」及び「賦形剤」は、本開示の技術分野において用いられている最も広い意味を有し、一般に、剤形等に応じて通常使用される、非毒性で不活性の固体、半固体又は液体物質を意味する。
【0043】
本明細書で使用される用語「有効量」又は「有効な量」は、目的の効果を得ることができる、化合物又は組成物の量を意味する。いくつかの実施態様において、「治療的有効量」は、疾患もしくは障害の治療、予防又は管理が可能な、化合物又は医薬組成物の量を意味する。
【0044】
本明細書中において、特に濃度等に関する文脈において、「高い」、「増加」及び「過剰」は、例えば、健常者に比べて高い又は増加していること、過去の自分自身に比べて高い又は増加していること、統計学的に有意に高い又は増加していること、又は正常対照群の中央値より大きいことを意味する。「高い」、「増加」又は「中央値より大きい」は、例えば、約1.2倍、約1.5倍、約2倍、約3倍、約4倍、約5倍、約10倍、約15倍、約20倍、約30倍、約50倍、約100倍又はそれ以上、高いこと、増加していること又は中央値より大きいことを意味し得る。「影響を与えない」、「変化はない」、及び「変化を有さない」は、例えば、健常者と比べて同じであること、UGT1A1遺伝子変異のない対象と比べて同じであること、過去の自分自身と比べて同じであること、統計学的に有意差がないこと、又は正常対照群の中央値と同じであることを意味し得る。「同じである」及び「有意差がない」は、例えば、p値が0.05以下もしくは0.01以下、或いは差が、約0%、約0.1%、約0.2%、約0.3%、約0.4%、約0.5%、約1%、約2%、約3%、約4%、約5%、約10%、約20%、又は約30%程度であることを意味し得る。
【0045】
(2.疾患及び対象)
本開示により治療、予防又は管理される疾患は、BIND、黄疸を伴う精神疾患、又はUGT1A1遺伝子変異に起因する精神疾患である。一実施態様において、本開示により治療、予防又は管理される疾患は、BIND、黄疸を伴う精神疾患、及びUGT1A1遺伝子変異に起因する精神疾患からなる群から選択される1つ以上(例えば、1つ、2つ又は3つ)の疾患である。一実施態様において、本開示により治療、予防又は管理される疾患は、BINDである。一実施態様において、本開示により治療、予防又は管理される疾患は、黄疸を伴う精神疾患である。一実施態様において、本開示により治療、予防又は管理される疾患は、UGT1A1遺伝子変異に起因する精神疾患である。
【0046】
「黄疸を伴う精神疾患」は、黄疸と精神疾患とが併発されることを包含する。先に黄疸が発症され、その後に精神疾患がされても、先に精神疾患が発症され、その後に黄疸が発症されても、又は黄疸と精神疾患とが同時に発症されてもよい。特定の実施態様において、BIND又はUGT1A1遺伝子変異に起因する精神疾患は、黄疸を伴う。いくつかの具体的な実施態様において、黄疸は、体質性黄疸である。
「UGT1A1遺伝子変異に起因する精神疾患」は、UGT1A1遺伝子変異が原因となって生じる精神疾患を意味する。
【0047】
本開示により治療、予防又は管理される疾患の具体的な例を挙げると、制限されないが、UGT1A1遺伝子変異に起因する、せん妄、認知症、健忘障害、他の認知障害、一般身体疾患による精神障害、物質関連障害、統合失調症および他の精神病性障害、気分障害、不安障害、身体表現性障害、虚偽性障害、解離性障害、性障害及び性同一性障害、摂食障害、睡眠障害、他のどこにも分類されない衝動制御の障害、適応障害、パーソナリティ障害、又は注意欠陥多動性障害(ADHD)などがある。好ましくは、本開示により治療、予防又は管理される精神疾患は、UGT1A1遺伝子変異に起因する統合失調症、又はUGT1A1遺伝子変異に起因する注意欠陥多動性障害(ADHD)である。
【0048】
本開示により治療、予防又は管理される疾患の具体的な他の例を挙げると、制限されないが、黄疸を伴う、せん妄、認知症、健忘障害、他の認知障害、一般身体疾患による精神障害、物質関連障害、統合失調症および他の精神病性障害、気分障害、不安障害、身体表現性障害、虚偽性障害、解離性障害、性障害及び性同一性障害、摂食障害、睡眠障害、他のどこにも分類されない衝動制御の障害、適応障害、パーソナリティ障害、又は注意欠陥多動性障害(ADHD)である。好ましくは、本開示により治療、予防又は管理される精神疾患は、黄疸を伴う統合失調症、又は黄疸を伴う注意欠陥多動性障害(ADHD)である。
【0049】
UGT1A1遺伝子変異は、当業者に公知である(例えば、非特許文献8を参照されたい。)。「UGT1A1遺伝子変異」は、例えば、UGT1A1遺伝子の塩基の1つ、一部分又は複数が変異し、UGT1A1遺伝子の活性が、正常に比べて低下(例えば、約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%又は約95%以上の低下)又はなくなることを意味し得る。UGT1A1遺伝子変異の例を挙げると、プロモーター領域の変異、コーディング領域の変異、フレームシフト変異、具体的に、1塩基(G)欠失によるフレームシフト変異、ホモ接合型Y486D、プロモーター領域のTATAボックスへのTAのホモ接合型の挿入(TA7/7)、ホモ接合型G71R、TA7/6とヘテロ接合型G71Rとの組合せ、ホモ接合型又はヘテロ接合型Y486D及びP229Q、ヘテロ接合型P364L、ホモ接合型又はヘテロ接合型TA7、G71R、及びヘテロ接合型Y486D、並びにこれらの1つ以上の任意の組合せなどがある。
【0050】
本開示により治療、予防又は管理されるBIND又は精神疾患は、脳内におけるセロトニン過剰伝達により引き起こされ得る。UGT1A1遺伝子変異は、脳内におけるドーパミン神経、伝達及び/又は濃度に影響を与えずに、脳内におけるセロトニン過剰伝達を引き起こし得る。したがって、特定の実施態様において、本開示により治療、予防又は管理される精神疾患は、脳内におけるセロトニン過剰伝達を伴うが、脳内におけるドーパミン伝達に変化はない。UGT1A1遺伝子変異は、脳内におけるセロトニン濃度の増加、及び/又は脳内におけるセロトニン神経の増加を引き起こし得る。したがって、特定の実施態様において、本開示により治療、予防又は管理される精神疾患は、脳内におけるセロトニン濃度の増加、及び/又は脳内におけるセロトニン神経の増加により引き起こされる。UGT1A1遺伝子変異は、血中又は尿中のビリルビン濃度を増加させ、結果、黄疸を引き起こし得る。したがって、特定の実施態様において、本開示により治療、予防又は管理される精神疾患は、血中又は尿中のビリルビン濃度の増加を伴う。特定の実施態様において、本開示により治療、予防又は管理される精神疾患は、黄疸を伴う。
【0051】
一実施態様において、本開示により治療、予防又は管理される対象は、BIND、黄疸を伴う精神疾患、又はUGT1A1遺伝子変異に起因する精神疾患を有する。一実施態様において、本開示により治療、予防又は管理される対象は、BIND、黄疸を伴う精神疾患、及びUGT1A1遺伝子変異に起因する精神疾患からなる群から選択される1つ以上(例えば、1つ、2つ又は3つ)の疾患を有する。
【0052】
いくつかの実施態様において、本開示により治療、予防又は管理される対象は、BINDを有する。いくつかの実施態様において、本開示により治療、予防又は管理される対象は、UGT1A1遺伝子変異を有する。いくつかの実施態様において、本開示により治療、予防又は管理される対象は、黄疸を有する。いくつかの実施態様において、本開示により治療、予防又は管理される対象は、その生体試料中において、高いビリルビン濃度、例えば、健常者のものと比較して高いビリルビン濃度を有する。
【0053】
いくつかの実施態様において、本開示により治療、予防又は管理される対象は、BIND及び黄疸を有する。いくつかの実施態様において、本開示により治療、予防又は管理される対象は、BIND及びUGT1A1遺伝子変異を有する。いくつかの実施態様において、本開示により治療、予防又は管理される対象は、BIND、UGT1A1遺伝子変異及び黄疸を有する。いくつかの実施態様において、本開示により治療、予防又は管理される対象は、UGT1A1遺伝子変異及び黄疸を有する。
【0054】
いくつかの具体的な実施態様において、本開示により治療、予防又は管理される対象は、BINDを有し、かつその生体試料中において、健常者のものと比較して高いビリルビン濃度を有する、又は黄疸を有する。
【0055】
いくつかの実施態様において、本開示により治療、予防又は管理される対象は、精神疾患を有する。いくつかの実施態様において、本開示により治療、予防又は管理される対象は、精神疾患及びUGT1A1遺伝子変異を有する。いくつかの実施態様において、本開示により治療、予防又は管理される対象は、精神疾患及び黄疸を有する。いくつかの実施態様において、本開示により治療、予防又は管理される対象は、精神疾患、UGT1A1遺伝子変異及び黄疸を有する。
【0056】
いくつかの具体的な実施態様において、本開示により治療、予防又は管理される対象は、精神疾患を有し、かつその生体試料中において、健常者のものと比較して高いビリルビン濃度、又は黄疸を有する。
【0057】
いくつかの実施態様において、本開示により治療、予防又は管理される対象は、精神疾患、BIND、黄疸、UGT1A1遺伝子変異、及びその生体試料中において高いビリルビン濃度、例えば、健常者のものと比較して高いビリルビン濃度、からなる群から選択される1つ以上(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ又は5つ)の状態を有する。該精神疾患は、黄疸を伴う精神疾患、及び/又はUGT1A1遺伝子変異に起因する精神疾患を含み得る。
【0058】
いくつかの具体的な実施態様において、該黄疸は、体質性黄疸である。
いくつかの具体的な実施態様において、該生体試料は、血液又は尿である。
【0059】
対象がBINDを有しているか否かは、当業者に公知の方法により、判断することができる。例えば、対象由来の生体試料中のビリルビン濃度(総ビリルビン濃度、直接ビリルビン濃度、もしくは間接ビリルビン濃度)、又はUGT1A1遺伝子変異、あるいはこれらの2つ以上、3つ以上又は4つの組合せを調べることで、対象のBINDの有無を判断することができる。例えば、対象の血中ビリルビン濃度が増加している場合、例えば、対象の血中ビリルビン濃度が健常者のものと比べて高い場合、対象がBINDを有していると判断することができる。
【0060】
対象が黄疸を有しているか否かは、当業者に公知の方法により、判断することができる。例えば、体質性黄疸の検査は、血液検査によって行われ、血中間接ビリルビン濃度を測定することにより行われる。例えば、対象の血中間接ビリルビン濃度が増加している場合、例えば、対象の血中ビリルビン濃度が健常者のものと比べて高い場合、対象が黄疸を有していると判断することができる。
【0061】
総ビリルビン濃度及び直接ビリルビン濃度は、例えば、血液検査用総ビリルビンキット シカリキッドD-BIL(関東化学株式会社)、バナジン酸を用いる方法(臨床化学22:116-122, 1993参照。当該文献は引用により本明細書中に組み込まれている。)、直接ビリルビンキット アクアオート カイノス D-BIL試薬(株式会社カイノス)、又は総ビリルビン測定用「セロテック」T-BIL(株式会社セロテック)により測定することができる。通常、間接ビリルビン濃度は直接測ることができないので、間接ビリルビン濃度は、総ビリルビン濃度から直接ビリルビン濃度を減算することにより算出される。
【0062】
対象が精神疾患を有しているか否かは、当業者に公知の方法により、判断することができる。例えば、各種精神疾患の診断テスト、問診、脳波検査、CT検査、又はこれらの1つ以上の組合せにより判断することができる。
【0063】
対象がUGT1A1遺伝子変異を有しているか否かは、当業者に公知の方法により、判断することができる。例えば、UGT1A1遺伝子多型判定試薬としてインベーダー(登録商標)UGT1A1アッセイ(積水メディカル株式会社)を用いる方法がある。
【0064】
UGT1A1遺伝子変異は、脳内におけるセロトニン過剰伝達を引き起こし得る。したがって、特定の実施態様において、本開示により治療、予防又は管理される対象は、脳内におけるセロトニン過剰伝達を生じている。UGT1A1遺伝子変異は、脳内におけるドーパミン神経、伝達及び/又は濃度に影響を与えずに、脳内におけるセロトニン過剰伝達を引き起こし得る。したがって、特定の実施態様において、本開示により治療、予防又は管理される対象は、脳内におけるドーパミン神経、伝達及び/又は濃度に変化を有さない。特定の実施態様において、本開示により治療、予防又は管理される対象は、脳内におけるセロトニン過剰伝達を有するが、脳内におけるドーパミン伝達に変化を有さない。UGT1A1遺伝子変異は、脳内におけるセロトニン濃度の増加、及び/又は脳内におけるセロトニン神経の増加を引き起こし得る。したがって、特定の実施態様において、本開示により治療、予防又は管理される対象は、脳内におけるセロトニン濃度、及び/又は脳内におけるセロトニン神経が増加している。UGT1A1遺伝子変異は、血中又は尿中のビリルビン濃度を増加させ、結果、UGT1A1遺伝子変異は、黄疸を引き起こし得る。したがって、特定の実施態様において、本開示により治療、予防又は管理される対象は、血中又は尿中のビリルビン濃度の増加を有する。特定の実施態様において、本開示により治療、予防又は管理される対象は、血中又は尿中のビリルビン濃度が、健常者のものと比較して増加している。
【0065】
前記脳は、例えば、脳幹、前頭葉、線条体、海馬、及び起始核(特に縫線核、例えば、背側縫線核)からなる群から選択される1つ(例えば、1つ、2つ、3つ、又は4つ)以上の部位である。セロトニンに関して、前記脳は、好ましくは、前頭葉及び海馬である。ドーパミンに関して、前記脳は、好ましくは、前頭葉、線条体、及び海馬である。
【0066】
(3.5-HT1A/1B受容体アゴニスト)
5-HT1A/1B受容体アゴニストは、本明細書中に記載された疾患を、治療、予防又は管理するために使用することができる。5-HT1A/1B受容体アゴニストは、本明細書中に記載された疾患を、治療、予防又は管理するための医薬品の製造において使用することができる。5-HT1A/1B受容体アゴニストは、本明細書中に記載された対象を、治療、予防又は管理するために使用することができる。5-HT1A/1B受容体アゴニストは、本明細書中に記載された対象を、治療、予防又は管理するための医薬品の製造において使用することができる。
5-HT1A/1B受容体アゴニストは、本明細書中に記載された治療、予防又は管理方法において使用することができる。
【0067】
一実施態様において、5-HT1A/1B受容体アゴニストは、対象のBIND、黄疸を伴う精神疾患、又はUGT1A1遺伝子変異に起因する精神疾患を治療、予防又は管理するために使用される。一実施態様において、5-HT1A/1B受容体アゴニストは、対象のBIND、黄疸を伴う精神疾患、又はUGT1A1遺伝子変異に起因する精神疾患を治療、予防又は管理するための医薬品の製造において使用される。
【0068】
一実施態様において、5-HT1A/1B受容体アゴニストは、対象のBIND、黄疸を伴う精神疾患、及びUGT1A1遺伝子変異に起因する精神疾患からなる群から選択される1つ以上(例えば、1つ、2つ又は3つ)の疾患を治療するために使用される。一実施態様において、5-HT1A/1B受容体アゴニストは、対象のBIND、黄疸を伴う精神疾患、及びUGT1A1遺伝子変異に起因する精神疾患からなる群から選択される1つ以上(例えば、1つ、2つ又は3つ)の疾患を予防するために使用される。一実施態様において、5-HT1A/1B受容体アゴニストは、対象のBIND、黄疸を伴う精神疾患、及びUGT1A1遺伝子変異に起因する精神疾患からなる群から選択される1つ以上(例えば、1つ、2つ又は3つ)の疾患を管理するために使用される。
【0069】
一実施態様において、5-HT1A/1B受容体アゴニストは、対象のBINDを治療、予防、又は管理するために使用される。一実施態様において、5-HT1A/1B受容体アゴニストは、対象の黄疸を伴う精神疾患を治療、予防、又は管理するために使用される。一実施態様において、5-HT1A/1B受容体アゴニストは、対象のUGT1A1遺伝子変異に起因する精神疾患を治療、予防、又は管理するために使用される。
【0070】
いくつかの実施態様において、5-HT1A/1B受容体アゴニストは、対象の精神疾患の治療、予防又は管理方法において使用される。
【0071】
5-HT1A/1B受容体アゴニストは、対象の治療、予防又は管理方法において使用することができる。いくつかの実施態様において、該対象は、精神疾患を有する。いくつかの実施態様において、該対象は、BINDを有する。いくつかの実施態様において、該対象は、黄疸を有する。いくつかの実施態様において、該対象は、UGT1A1遺伝子変異を有する。いくつかの実施態様において、該対象は、その生体試料中において、高いビリルビン濃度を有する。いくつかの実施態様において、該対象は、その生体試料中において、健常者のものと比較して高いビリルビン濃度を有する。いくつかの実施態様において、該対象は、精神疾患、BIND、黄疸、UGT1A1遺伝子変異、及びその生体試料中において高いビリルビン濃度、例えば、健常者のものと比較して高いビリルビン濃度、からなる群から選択される1つ以上(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ又は5つ)の状態を有する。
【0072】
一実施態様において、5-HT1A/1B受容体アゴニストは、下記式(I)の化合物、又はその医薬として許容し得る塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、互変異性体、重水素標識化合物、結晶、多形体又はプロドラッグである:
【化4】
(式中、R1は、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C1-6ヒドロキシアルキル、又はC1-6アミノアルキルであり;
R2及びR3は、出現ごとに各々独立に、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C1-6ヒドロキシアルキル、又はC1-6アミノアルキルであり;
X1及びX2は、各々独立に、酸素、硫黄又は-CRaRbであり;
Ra及びRbは、各々独立に、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C1-6ヒドロキシアルキル、又はC1-6アミノアルキルであり
nは、0~4の整数であり;
mは、0~5の整数である。)。
【0073】
一実施態様において、R1は、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C1-6ヒドロキシアルキル、又はC1-6アミノアルキルであり、好ましくは、水素である。一実施態様において、R2及びR3は、出現ごとに各々独立に、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C1-6ヒドロキシアルキル、又はC1-6アミノアルキルである。R2は、ピペラジン環上の結合可能な位置に結合することができる。一実施態様において、R2は、ピペラジン環上の結合可能な位置(N上を除く)に結合することができる。R3は、縮合環(X1及びX2を含む環とベンゼン環との縮合環)上のX1及びX2以外の結合可能な位置に結合することができる。一実施態様において、X1及びX2は、各々独立に、酸素、硫黄又は-CRaRbであり、好ましくは、酸素であり、より好ましくは、X1及びX2の両方が酸素である。一実施態様において、Ra及びRbは、各々独立に、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C1-6ヒドロキシアルキル、又はC1-6アミノアルキルである。一実施態様において、nは、0、1、2、3又は4の整数であり、好ましくは、0である。一実施態様において、mは、0、1、2、3、4又は5の整数であり、好ましくは、0である。
【0074】
具体的な実施態様において、式(I)の化合物は、エルトプラジン(5-(ピペラジン-1-イル)-2,3-ジヒドロ-1,4-ベンゾジオキシン)である。具体的な実施態様において、5-HT1A/1B受容体アゴニストは、エルトプラジン(5-(ピペラジン-1-イル)-2,3-ジヒドロ-1,4-ベンゾジオキシン)、又はその医薬として許容し得る塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、互変異性体、重水素標識化合物、結晶、多形体又はプロドラッグである。エルトプラジンは、以下の構造を有する:
【化5】
【0075】
医薬として許容し得る塩の例を挙げると、制限されないが、5-HT1A/1B受容体アゴニスト又は式(I)の化合物の溶液と;リン酸、硫酸、硝酸、二リン酸、重炭酸、炭酸、クラブラン酸、イソチオン酸、ホウ酸、ハライド、ハロゲン化水素酸、硝酸、酢酸、コハク酸、乳酸、酒石酸、ラクトビオン酸、ラウリン酸、マンデル酸、リンゴ酸、クエン酸、フマル酸、マレイン酸、オレイン酸、シュウ酸、アスコルビン酸、ニコチン酸、安息香酸、メシル酸、サリチル酸、ステアリン酸、タンニン酸、トシル酸、吉草酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、2-エタンジスルホン酸、及びナフタレンスルホン酸からなる群から選択される酸の溶液と;を混合することにより作製した塩又は酸付加塩がある。
【0076】
さらに、5-HT1A/1B受容体アゴニスト又は式(I)の化合物の化学構造が酸性部分を有する場合、医薬として許容し得る塩の例を挙げると、制限されないが、アルカリ金属塩、例えばナトリウム又はカリウム塩;アルカリ土類金属塩、例えばカルシウム又はマグネシウム塩;及び好適な有機リガンドで作製した塩、例えば第四級アンモニウム塩がある。前記化合物の医薬として許容し得る塩の具体的な例を挙げると、制限されないが、酢酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重炭酸塩、重硫酸塩、重酒石酸塩、ホウ酸塩、臭化物、カルシウム、炭酸塩、塩化物、クラブラン酸塩、クエン酸塩、二塩酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、臭化水素酸塩、塩酸塩、ヒドロキシナフトエ酸塩、ヨウ化物、イソチオン酸塩、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、ラウリン酸塩、マレイン酸塩、マンデル酸塩、メシル酸塩、メチル臭化物、メチル硝酸塩、メチル硫酸塩、硝酸塩、N-メチルグルカミンアンモニウム塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、リン酸塩/二リン酸塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、硫酸塩、コハク酸塩、タンニン酸塩、酒石酸塩、トシル酸塩、トリエチオダイド及び吉草酸塩がある。
【0077】
本開示は、5-HT1A/1B受容体アゴニスト又は式(I)の化合物のプロドラッグをその範囲に包含する。プロドラッグは前記化合物の不活性な誘導体であって、インビボにおいて所望の化合物に容易に変換することができるものである。好適なプロドラッグ誘導体の選択及び製造に関する慣例法については、例えば、「プロドラッグの設計(Design of Prodrugs)」(編集者 H. Bundgaard, Elsevier, 1985)に記載されている。当該文献は、引用により本明細書中に組み込まれている。
【0078】
5-HT1A/1B受容体アゴニスト又は式(I)の化合物の構造が少なくとも1つのキラル中心を有する場合、それらの化合物はラセミ混合物又はエナンチオマーとして存在し得る。そのような異性体及びその混合物は本開示の範囲内にある。さらに、5-HT1A/1B受容体アゴニスト又は式(I)の化合物の結晶形、結晶、結晶固体及び多形体も、存在する場合、本開示に包含される。さらに、5-HT1A/1B受容体アゴニスト又は式(I)の化合物の溶媒和物及び水和物もまた本開示の範囲内にある。5-HT1A/1B受容体アゴニスト又は式(I)の化合物の結晶形、結晶、結晶固体及び多形体は、例えば、引用により本明細書中に取り込まれている国際公開第2006/037043号パンフレット及び国際公開第2006/036874号パンフレットに記載の方法により得ることができる。
【0079】
5-HT1A/1B受容体アゴニストは、商業的に入手可能である。ある化合物が、5-HT1A/1B受容体アゴニストであるか否かは、当業者に公知の方法で容易に判断することができる。式(I)の化合物も、商業的に入手可能である。式(I)の化合物は、有機合成化学的手法により、合成することができる。例えば、特開昭61-152655号公報、及び米国特許第5424313号明細書を参照されたい。これらの文献は、引用により本明細書中に取り込まれている。
【0080】
5-HT1A及び5-HT1B受容体は、Gタンパク質共役受容体(GPCR)に分類される受容体であり、リガンドのスクリーニング方法は既に確立され、商業利用されている(例えば、清水 良ら, ケモインフォマティクス討論会予稿集, 第29回情報化学討論会 新潟, JL1, GPCRリガンドスクリーニングへの能動学習の応用、及びINSIGHTS INTO GPCR DRUG DISCOVERY & DEVELOPMENT, Exploring GPCR-Ligand Interactions and Signaling Pathways with Binding and Functional Assays, eurofins, DiscoverX, 2022、特に、p.64を参照されたい。これらの文献は、引用により本明細書中に取り込まれている。)。また、コスモ・バイオ株式会社などの多くの企業からGPCRプロファイリング及びスクリーニングサービスが提供されている。したがって、当業者であれば容易に、5-HT1A/1B受容体のリガンドをスクリーニングすることができる。
【0081】
(4.医薬組成物)
本開示は、5-HT1A/1B受容体アゴニストを含む、医薬組成物を提供する。一実施態様において、本開示の医薬組成物は、治療的有効量の5-HT1A/1B受容体アゴニストを含む。本開示の医薬組成物は、医薬として許容し得る担体又は賦形剤をさらに含むことができる。本開示の医薬組成物の投与量、投与方法、投与経路、投与回数、投与間隔、投与順序、及び投与時期などは、特に限定されず、対象の状態に基づき、医師等によって判断することができる。
【0082】
本開示の医薬組成物は、本明細書中に記載された疾患を治療、予防又は管理するために使用することができる。本開示の医薬組成物は、本明細書中に記載された疾患を治療、予防又は管理するための医薬品の製造において使用することができる。本開示の医薬組成物は、本明細書中に記載された対象を治療、予防又は管理するために使用することができる。本開示の医薬組成物は、本明細書中に記載された対象を治療、予防又は管理するための医薬品の製造において使用することができる。
本開示の医薬組成物は、本明細書中に記載された治療、予防又は管理方法において使用することができる。
【0083】
一実施態様において、本開示の医薬組成物は、対象のBIND、黄疸を伴う精神疾患、又はUGT1A1遺伝子変異に起因する精神疾患を治療、予防又は管理するために使用される。一実施態様において、本開示の医薬組成物は、対象のBIND、黄疸を伴う精神疾患、又はUGT1A1遺伝子変異に起因する精神疾患を治療、予防又は管理するための医薬品の製造において使用される。
【0084】
一実施態様において、本開示の医薬組成物は、対象のBIND、黄疸を伴う精神疾患、及びUGT1A1遺伝子変異に起因する精神疾患からなる群から選択される1つ以上(例えば、1つ、2つ又は3つ)の疾患を治療するために使用される。一実施態様において、本開示の医薬組成物は、対象のBIND、黄疸を伴う精神疾患、及びUGT1A1遺伝子変異に起因する精神疾患からなる群から選択される1つ以上(例えば、1つ、2つ又は3つ)の疾患を予防するために使用される。一実施態様において、本開示の医薬組成物は、対象のBIND、黄疸を伴う精神疾患、及びUGT1A1遺伝子変異に起因する精神疾患からなる群から選択される1つ以上(例えば、1つ、2つ又は3つ)の疾患を管理するために使用される。
【0085】
一実施態様において、本開示の医薬組成物は、対象のBINDを治療、予防、又は管理するために使用される。一実施態様において、本開示の医薬組成物は、対象の黄疸を伴う精神疾患を治療、予防、又は管理するために使用される。一実施態様において、本開示の医薬組成物は、対象のUGT1A1遺伝子変異に起因する精神疾患を治療、予防、又は管理するために使用される。
【0086】
いくつかの実施態様において、本開示の医薬組成物は、対象の精神疾患の治療、予防又は管理方法において使用される。
【0087】
本開示の医薬組成物は、対象を治療、予防又は管理するために使用することができる。いくつかの実施態様において、該対象は、その生体試料中において、高いビリルビン濃度を有する。いくつかの実施態様において、該対象は、その生体試料中において、健常者のものと比較して高いビリルビン濃度を有する。いくつかの実施態様において、該対象は、BINDを有する。いくつかの実施態様において、該対象は、黄疸を有する。いくつかの実施態様において、該対象は、UGT1A1遺伝子変異を有する。いくつかの実施態様において、該対象は、精神疾患、BIND、UGT1A1遺伝子変異、黄疸、及びその生体試料中において高いビリルビン濃度、例えば、健常者のものと比較して高いビリルビン濃度、からなる群から選択される1つ以上(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ又は5つ)の状態を有する。
【0088】
本開示の医薬組成物は、経口、非経口(例えば、静脈内、筋肉内又は皮下)、経鼻、舌下又は直腸投与用、又は吸入又は吹き付けによる投与用に製剤化することができる。例えば、本開示の医薬組成物は、錠剤、丸剤、カプセル剤(徐放性又は緩効性処方など)、散剤、粒剤、エリキシル剤、チンキ、シロップ剤、乳剤、滅菌非経口水液剤もしくは懸濁剤、エアゾールもしくは液体スプレー剤、滴剤、アンプル剤、自己皮下注射器又は坐剤のような剤形である。本開示の医薬組成物は、引用により本明細書中に組み込まれているRemington’s Pharmaceutical Sciences, (Gennaro, 編集, Mack Publishing Co., Easton PA, 1990)に開示されるものなどの一般的な方法に従って製剤化することができる。
【0089】
医薬として許容し得る担体又は賦形剤は、非毒性で不活性の固体、半固体又は液体物質である。医薬として許容し得る担体又は賦形剤の例を挙げると、例えば、安定化剤、不活性希釈剤、充填剤、増量剤、崩壊剤、崩壊抑制剤、懸濁化剤、緩衝剤、等張化剤、キレート剤、pH調整剤、界面活性剤、カプセル封入剤、結合剤、防腐剤、抗酸化剤、潤滑剤、保湿剤、吸着剤、滑沢剤又は任意の他の製剤助剤などがある。医薬として許容し得る担体又は賦形剤の具体例を挙げると、制限されないが、以下のものがある:水、アルコール類(エタノールなど)、溶媒(ジメチルスルホキシドなど)、塩水(生理食塩水など)、又はこれらの混合溶液;塩化ナトリウムなどの無機塩類;ホウ酸、リン酸、酢酸、クエン酸、ε-アミノカプロン酸、グルタミン酸、エデト酸、又はそれらに対応する塩、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、もしくはマグネシウム塩などのアルカリ金属塩もしくはアルカリ土類金属塩;グルコース(デキストロース)、マンノース、ガラクトース、又はフルクトースなどの単糖類;マンニトール、イノシトール、又はキシリトールなどの糖アルコール;スクロース、ラクツロース、ラクトース、マルトース、トレハロース、又はセロビオースなどの二糖類;デキストリン、デキストラン、セルロース、ヒアルロン酸、又はコンドロイチン硫酸などの多糖類;トウモロコシデンプン及びジャガイモデンプンなどのデンプン類;セルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、酢酸セルロース、又はそれらの誘導体などのセルロース類;ヒト血清アルブミン;グリシン、リシン、アスパラギン、アルギニン、グルタミン、システイン、アスパラギン酸、又はグルタミン酸などのL-アミノ酸;トラガカント;ゼラチン;滑石;カカオバター又はワックス;蝋又はミツロウ;ピーナッツ油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油、ダイズ油、又は硬化油などのオイル類;エチレングリコール、又はプロピレングリコールなどのグリコール類;オレイン酸エチル又はラウリン酸エチルなどのエステル類;寒天;水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化マグネシウム又は水酸化アルミニウム;アルギン酸;等張性塩類溶液;リンゲル液;エチルアルコール;リン酸緩衝液;ラウリル硫酸ナトリウム又はステアリン酸マグネシウムなどである。医薬として許容し得る担体又は賦形剤は、剤形の種類及び使用される化合物などに応じて、適宜選択することができる。
【0090】
本開示の医薬組成物に含まれる、5-HT1A/1B受容体アゴニスト、第二の薬剤、及び医薬として許容し得る担体又は賦形剤の量は、特に制限はなく、疾患を治療、予防又は管理するのに有効な量であればよい。一実施態様において、本開示の医薬組成物に含まれる、5-HT1A/1B受容体アゴニストの量は、治療的有効量である。本開示の医薬組成物に含まれる、5-HT1A/1B受容体アゴニスト、第二の薬剤、及び医薬として許容し得る担体又は賦形剤の量は、使用される化合物の種類;投与される哺乳動物の年齢、体重、健康状態、性別及び食事内容;投与の回数、及び投与経路;治療期間;同時に使用される他の薬剤など、様々な要因により決定され得る。本開示の医薬組成物に含まれる5-HT1A/1B受容体アゴニストは、例えば、約0.01mg~約100mg、約0.1mg~約50mg、約0.5mg~約50mg、約1mg~約25mg、約2.5mg~約25mg、約5mg~約25mg、又は約10mg~約20mgである。いくつかの実施態様において、本開示の医薬組成物は、対象に、1日当たり又は1回当たり、約0.0001mg/kg(体重)~約50mg/kg(体重)、約0.001mg/kg(体重)~約50mg/kg(体重)、約0.01mg/kg(体重)~約50mg/kg(体重)、約0.1mg/kg(体重)~約50mg/kg(体重)、約0.1mg/kg(体重)~約40mg/kg(体重)、約0.1mg/kg(体重)~約34mg/kg(体重)未満、約0.1mg/kg(体重)~約30mg/kg(体重)、約0.1mg/kg(体重)~約20mg/kg(体重)、約0.5mg/kg(体重)~約10mg/kg(体重)、又は約1mg/kg(体重)~約10mg/kg(体重)の5-HT1A/1B受容体アゴニストが投与されるように用いられる。本開示の医薬組成物に含まれる医薬として許容し得る担体又は賦形剤の量は、本開示の医薬組成物の約1~約99重量%、約5~約90重量%、約10~約80重量%、約20~約70重量%、約30~約60重量%、又は約40~約50重量%の量とすることができる。5-HT1A/1B受容体アゴニストは、1日用量を1回で投与されてもよいし、又は全1日用量を分割量で、例えば1日当たり2、3又は4回で投与されてもよい。
【0091】
本開示の医薬組成物を、経口投与用又は非経口投与用、例えば静脈内、皮下、経腸、腹腔内、又は筋肉内投与用に製剤化することができる。製剤は、5-HT1A/1B受容体アゴニスト、及び任意に担体もしくは賦形剤を含むことができる。製剤内において、5-HT1A/1B受容体アゴニストは、均一に存在し得る。製剤は、例えば、錠剤、丸剤、散剤、粉末剤、顆粒剤、又はカプセル剤などの固体製剤、又は滅菌水性溶液、滅菌非水性溶液、懸濁剤、乳剤、シロップ、エマルション又はエリキシルなどの液体製剤がある。剤形の種類は、特に制限されず、投与経路に応じて適宜選択される。本開示の医薬組成物は、例えば、固体剤形として、錠剤による経口投与、又は液体剤形として、注射器又はカテーテルなどによる静脈内投与により投与される。
【0092】
固体製剤は、慣用の製薬配合技術に従って、有効成分を、賦形剤、結合剤、崩壊剤、界面活性剤、崩壊抑制剤、吸収促進剤、保湿剤、吸着剤、及び滑沢剤からなる群から選択される1種以上の物質と組み合わせることにより調製することができる。結合剤の例を挙げると、限定されるないが、デンプン、ゼラチン、グルコース又はβ-ラクトースなどの天然糖類、アカシア、トラガカント又はアルギン酸ナトリウムのような天然及び合成ゴム、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、及び蝋がある。崩壊剤の例を挙げると、限定されないが、デンプン、メチルセルロース、寒天、ベントナイト、及びキサンタンガムがある。滑沢剤の例を挙げると、限定されるないが、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、及び塩化ナトリウムがある。固体製剤は、必要に応じて、さらに着色料、保存剤、香料、風味剤、もしくは甘味剤などを含んでいてもよい。さらに固体製剤は、例えば、糖衣錠、ゼラチン被包錠、腸溶被錠、又はフィルムコーティング錠とすることができ、二重錠ないしは多層錠とすることもできる。カプセル剤は、常法に従い、活性成分を各種の医薬として許容し得る担体と混合して硬質ゼラチンカプセル、又は軟質カプセルなどに充填して調製することができる。固体製剤中の有効成分の濃度は、特に制限はなく、例えば、約1重量%~約99重量%、約20重量%~約80重量%、約30重量%~約60重量%、又は約40重量%~約50重量%とすることができる。固体製剤は、単回又は分割用量の有効成分を含むことができる。
【0093】
液体製剤は、慣用の製薬配合技術に従って、有効成分を、不活性希釈剤などと混合することにより調製することができる。さらに、任意に、溶解補助剤、緩衝剤、等張化剤、懸濁化剤、界面活性剤、抗酸化剤、及び防腐剤などからなる群から選択される1種以上の物質を添加することもできる。また、液体製剤は、初めに本開示の医薬組成物を凍結乾燥粉末として調製及び保存しておき、使用直前に不活性希釈剤等に溶解又は懸濁化して調製してもよい。液体製剤は、必要に応じて、さらに着色料、保存剤、香料、風味剤、もしくは甘味剤などを含んでいてもよい。液体製剤中の有効成分の濃度は、特に制限はなく、例えば、約1重量%~約99重量%、約20重量%~約80重量%、約30重量%~約60重量%、又は約40重量%~約50重量%とすることができる。液体製剤は、単回又は分割用量の有効成分を含むことができる。
【0094】
本開示の医薬組成物は、さらに、第二の薬剤を含むことができる。本開示の医薬組成物は、対象に、5-HT1A/1B受容体アゴニストが、第二の薬剤とともに同時投与、共投与又は逐次投与されるように用いることができる。逐次投与の場合、5-HT1A/1B受容体アゴニストが先に投与されても、第二の薬剤が先に投与されてもよい。第二の薬剤は、例えば、精神疾患を治療、予防又は管理するための薬剤、例えば、公知の抗精神病薬、抗統合失調症薬、又は抗注意欠陥多動性障害(ADHD)薬などである。いくつかの実施態様において、第二の薬剤は、コリンエステラーゼ阻害剤、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤、ブチルコリンエステラーゼ阻害剤、ムスカリン性受容体作動薬、グルタミン酸作動性拮抗薬、コリン作動薬、カルニチンアセチルトランスフェラーゼ刺激薬、アセチルコリン放出刺激薬、コリン取込刺激薬、ニコチン性アセチルコリン受容体作動薬、5-HT6拮抗薬、5-HT6逆作動薬、抗ジスキネジア剤、抗ジストニア剤、抗ミオクローヌス剤、抗振戦剤、選択式セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)、モノアミン酸化酵素阻害薬(MAOI)、三環系抗うつ薬(TCA)、抗精神病薬、ノルエピネフリン再取り込み阻害薬、ドーパミン作動薬、抗不眠症薬、抗躁病薬、抗恐怖症薬からなる群から選択される1種以上の薬剤である。いくつかの実施態様において、第二の薬剤は、SB-742457、SB-271046、SB-399885、SB-357134、SB-258585、RO-436854、RO-0406790、及びRO-65-7674からなる群から選択される1種以上の薬剤である。いくつかの実施態様において、第二の薬剤は、レボドパ、ブロモクリプチン、ペルゴリド、硫酸エフェドリン、ペモリン、マチンドール、d,1-α-メチルフェネチルアミン、メチルフェニデート、プラミペキソール、モダフィニル、及びロピニロールからなる群から選択される1種以上の薬剤である。第二の薬剤の投与量、投与方法、投与経路、投与回数、投与間隔、投与順序、及び投与時期などは、特に限定されず、対象の状態に基づき、医師等によって判断することができる。第二の薬剤の投与量は、精神疾患を治療、予防又は管理するのに有効な量であり得る。
【0095】
(5.治療、予防、又は管理方法)
本開示は、5-HT1A/1B受容体アゴニスト又は本開示の医薬組成物を投与する工程を含む、疾患又は状態を治療、予防又は管理する方法を提供する。いくつかの実施態様において、本開示の方法は、対象に、治療的有効量の5-HT1A/1B受容体アゴニストを投与する工程を含む。
【0096】
本開示の方法は、本明細書中に記載された疾患を治療、予防又は管理するために使用することができる。本開示の方法は、本明細書中に記載された対象を治療、予防又は管理するために使用することができる。
【0097】
一実施態様において、本開示は、その必要がある対象のBIND、黄疸を伴う精神疾患、又はUGT1A1遺伝子変異に起因する精神疾患を治療、予防、又は管理するための方法であって、該対象に治療的有効量の5-HT1A/1B受容体アゴニスト、又は治療的有効量の本開示の医薬組成物を投与する工程を含む、前記方法を提供する。
【0098】
一実施態様において、本開示の方法は、その必要がある対象のBIND、黄疸を伴う精神疾患、及びUGT1A1遺伝子変異に起因する精神疾患からなる群から選択される1つ以上(例えば、1つ、2つ又は3つ)の疾患を治療するための方法であって、該対象に、治療的有効量の5-HT1A/1B受容体アゴニストを投与する工程を含む。一実施態様において、本開示の方法は、その必要がある対象のBIND、黄疸を伴う精神疾患、及びUGT1A1遺伝子変異に起因する精神疾患からなる群から選択される1つ以上(例えば、1つ、2つ又は3つ)の疾患を予防するための方法であって、該対象に、治療的有効量の5-HT1A/1B受容体アゴニストを投与する工程を含む。一実施態様において、本開示の方法は、その必要がある対象のBIND、黄疸を伴う精神疾患、及びUGT1A1遺伝子変異に起因する精神疾患からなる群から選択される1つ以上(例えば、1つ、2つ又は3つ)の疾患を管理するための方法であって、該対象に、治療的有効量の5-HT1A/1B受容体アゴニストを投与する工程を含む。
【0099】
一実施態様において、本開示の方法は、その必要がある対象のBINDを治療、予防、又は管理するための方法であって、該対象に、治療的有効量の5-HT1A/1B受容体アゴニストを投与する工程を含む。一実施態様において、本開示の方法は、対象の黄疸を伴う精神疾患を治療、予防、又は管理するための方法であって、該対象に、治療的有効量の5-HT1A/1B受容体アゴニストを投与する工程を含む。一実施態様において、本開示の方法は、対象のUGT1A1遺伝子変異に起因する精神疾患を治療、予防、又は管理するための方法であって、該対象に、治療的有効量の5-HT1A/1B受容体アゴニストを投与する工程を含む。
【0100】
いくつかの実施態様において、本開示の方法は、その必要がある対象の精神疾患の治療、予防又は管理するための方法であって、該対象に、治療的有効量の5-HT1A/1B受容体アゴニストを投与する工程を含む。
【0101】
いくつかの実施態様において、本開示の方法は、対象から生体試料を採取する工程をさらに含む。生体試料の採取方法は、当業者に公知の方法であってよい。例えば、注射器等を用いて、対象から血液を採取することができる。生体試料は、好ましくは、血液又は尿である。
【0102】
いくつかの実施態様において、本開示の方法は、対象から採取された生体試料中のビリルビン濃度を測定する工程をさらに含む。ビリルビン濃度の測定は、当業者に公知の方法であってよい。例えば、血液検査用総ビリルビンキット シカリキッドD-BIL(関東化学株式会社)、バナジン酸を用いる方法(臨床化学22:116-122, 1993参照。当該文献は引用により本明細書中に組み込まれている。)、直接ビリルビンキット アクアオート カイノス D-BIL試薬(株式会社カイノス)、又は総ビリルビン測定用「セロテック」T-BIL(株式会社セロテック)を用いる方法がある。
【0103】
いくつかの実施態様において、本開示の方法は、対象がBINDを有しているか否かを判断する工程を含む。BINDを有しているか否かは、当業者に公知の方法により、判断することができる。例えば、対象由来の生体試料中のビリルビン濃度(総ビリルビン濃度、直接ビリルビン濃度、もしくは間接ビリルビン濃度)、又はUGT1A1遺伝子変異、あるいはこれらの2つ以上、3つ以上又は4つの組合せを調べることで、対象のBINDの有無を判断することができる。例えば、対象の血中ビリルビン濃度が増加している場合、例えば、対象の血中ビリルビン濃度が健常者のものと比べて高い場合、対象がBINDを有していると判断することができる。
【0104】
いくつかの実施態様において、本開示の方法は、対象が黄疸を有しているか否かを判断する工程を含む。対象が黄疸を有しているか否かは、当業者に公知の方法により、判断することができる。例えば、体質性黄疸の検査は、血液検査によって行われ、血中間接ビリルビン濃度を測定することにより行われる。例えば、対象の血中間接ビリルビン濃度が増加している場合、例えば、対象の血中ビリルビン濃度が健常者のものと比べて高い場合、対象が黄疸を有していると判断することができる。
【0105】
いくつかの実施態様において、本開示の方法は、対象がUGT1A1変異を有するか否かを判断する工程をさらに含む。対象がUGT1A1遺伝子変異を有しているか否かは、当業者に公知の方法により、判断することができる。例えば、UGT1A1遺伝子多型判定試薬としてインベーダー(登録商標)UGT1A1アッセイ(積水メディカル株式会社)を用いる方法がある。
【0106】
いくつかの実施態様において、本開示の方法は、対象が精神疾患を有しているか否かを判断する工程を含む。対象が精神疾患を有しているか否かは、当業者に公知の方法により、判断することができる。例えば、各種精神疾患の診断テスト、問診、脳波検査、CT検査、又はこれらの1つ以上の組合せにより判断することができる。
【0107】
本開示の方法は、対象を治療、予防又は管理するために使用することができる。いくつかの実施態様において、該対象は、精神疾患を有する。いくつかの実施態様において、該対象は、BINDを有する。いくつかの実施態様において、該対象は、黄疸を有する。いくつかの実施態様において、該対象は、UGT1A1遺伝子変異を有する。いくつかの実施態様において、該対象は、その生体試料中において、高いビリルビン濃度を有する。いくつかの実施態様において、該対象は、その生体試料中において、健常者のものと比較して高いビリルビン濃度を有する。いくつかの実施態様において、該対象は、精神疾患、BIND、黄疸、UGT1A1遺伝子変異、及びその生体試料中において高いビリルビン濃度、例えば、健常者のものと比較して高いビリルビン濃度、からなる群から選択される1つ以上(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ又は5つ)の状態を有する。
【0108】
具体的な実施態様において、本開示の方法は、その必要がある対象のBIND又は精神疾患を治療、予防又は管理する方法であって、
(a)該対象から生体試料を取得する工程;
(b)工程(a)において取得された生体試料中のビリルビン濃度を測定する工程;及び
(c)工程(b)において測定された該ビリルビン濃度が健常者のものと比較して高い場合に、又は工程(b)において測定された該ビリルビン濃度に基づき、該対象が黄疸を有すると判断される場合に、該対象に、治療的有効量の5-HT1A/1B受容体アゴニスト又は治療的有効量の本開示の医薬組成物を投与する工程;を含む。該精神疾患は、黄疸を伴う精神疾患、及び/又はUGT1A1遺伝子変異に起因する精神疾患を含み得る。
【0109】
具体的な実施態様において、本開示の方法は、その必要がある対象のBIND又は精神疾患を治療、予防又は管理する方法において使用するための医薬組成物であって、
(a)該対象がUGT1A1遺伝子変異を有するか否かを判断する工程;
(b)工程(a)において該対象がUGT1A1遺伝子変異を有すると判断される場合に、該対象に、治療的有効量の5-HT1A/1B受容体アゴニスト又は治療的有効量の本開示の医薬組成物を投与する工程;を含む。該精神疾患は、黄疸を伴う精神疾患、及び/又はUGT1A1遺伝子変異に起因する精神疾患を含み得る。
【0110】
いくつかの実施態様において、本開示の方法は、対象が本明細書中に記載の疾患又は状態を有するか否か、又は本明細書中に記載の疾患又は状態を有する可能性があるか否かを判断する工程をさらに含む。具体的な実施態様において、本開示の方法は、対象が、精神疾患、BIND、黄疸を伴う精神疾患、又はUGT1A1遺伝子変異に起因する精神疾患を有するか否か、又は精神疾患、BIND、黄疸を伴う精神疾患、又はUGT1A1遺伝子変異に起因する精神疾患を有する可能性があるか否かを判断する工程をさらに含む。いくつかの実施態様において、本開示の方法は、対象の精神症状又は精神状態を診断する工程をさらに含む。
【0111】
5-HT1A/1B受容体アゴニスト又は本開示の医薬組成物の投与量、投与方法、投与経路、投与回数、投与間隔、投与順序、及び投与時期などは、特に限定されず、対象の状態に基づき、医師等によって判断することができる。5-HT1A/1B受容体アゴニスト又は本開示の医薬組成物の投与量は、BIND、黄疸を伴う精神疾患、又はUGT1A1遺伝子変異に起因する精神疾患を治療、予防又は管理するのに有効な量であり得る。投与量は、例えば、1日当たり又は1回当たり、約0.01mg~約100mg、約0.1mg~約50mg、約0.5mg~約50mg、約1mg~約25mg、約2.5mg~約25mg、約5mg~約25mg、又は約10mg~約20mgである。いくつかの実施態様において、5-HT1A/1B受容体アゴニストは、対象に、1日当たり又は1回当たり、約0.0001mg/kg(体重)~約50mg/kg(体重)、約0.001mg/kg(体重)~約50mg/kg(体重)、約0.01mg/kg(体重)~約50mg/kg(体重)、約0.1mg/kg(体重)~約50mg/kg(体重)、約0.1mg/kg(体重)~約40mg/kg(体重)、約0.1mg/kg(体重)~約34mg/kg(体重)未満、約0.1mg/kg(体重)~約30mg/kg(体重)、約0.1mg/kg(体重)~約20mg/kg(体重)、約0.5mg/kg(体重)~約10mg/kg(体重)、又は約1mg/kg(体重)~約10mg/kg(体重)の量で投与される。投与経路の例を挙げると、制限されないが、経口投与又は非経口投与、例えば静脈内、皮下、経腸、腹腔内、又は筋肉内投与がある。投与回数は、例えば、1日1回、1日2回、1日3回、又は2日1回である。投与間隔は、6時間、8時間、12時間、18時間、24時間、2日、3日、4日、又は5日である。
【0112】
本開示の治療、予防又は管理方法は、さらに、該対象に、治療的有効量の第二の薬剤を投与する工程を含むことができる。第二の薬剤は、例えば、精神疾患を治療、予防又は管理するための薬剤、例えば、公知の抗精神病薬、抗統合失調症薬、又は抗注意欠陥多動性障害(ADHD)薬などである。一実施態様において、本開示の治療、予防又は管理方法は、5-HT1A/1B受容体アゴニストを、第二の薬剤とともに同時投与、共投与又は逐次投与する工程を含む。いくつかの実施態様において、第二の薬剤は、コリンエステラーゼ阻害剤、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤、ブチルコリンエステラーゼ阻害剤、ムスカリン性受容体作動薬、グルタミン酸作動性拮抗薬、コリン作動薬、カルニチンアセチルトランスフェラーゼ刺激薬、アセチルコリン放出刺激薬、コリン取込刺激薬、ニコチン性アセチルコリン受容体作動薬、5-HT6拮抗薬、5-HT6逆作動薬、抗ジスキネジア剤、抗ジストニア剤、抗ミオクローヌス剤、抗振戦剤、選択式セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)、モノアミン酸化酵素阻害薬(MAOI)、三環系抗うつ薬(TCA)、抗精神病薬、ノルエピネフリン再取り込み阻害薬、ドーパミン作動薬、抗不眠症薬、抗躁病薬、及び抗恐怖症薬からなる群から選択される1種以上の薬剤である。いくつかの実施態様において、第二の薬剤は、SB-742457、SB-271046、SB-399885、SB-357134、SB-258585、RO-436854、RO-0406790、及びRO-65-7674からなる群から選択される1種以上の薬剤である。いくつかの実施態様において、第二の薬剤は、レボドパ、ブロモクリプチン、ペルゴリド、硫酸エフェドリン、ペモリン、マチンドール、d,1-α-メチルフェネチルアミン、メチルフェニデート、プラミペキソール、モダフィニル、及びロピニロールからなる群から選択される1種以上の薬剤である。第二の薬剤の投与量、投与方法、投与経路、投与回数、投与間隔、投与順序、及び投与時期などは、特に限定されず、対象の状態に基づき、医師等によって判断することができる。第二の薬剤の投与量は、精神疾患を治療、予防又は管理するのに有効な量であり得る。
【0113】
一実施態様において、本開示の治療、予防、又は管理方法は、対象が、BIND、黄疸を伴う精神疾患、又はUGT1A1遺伝子変異に起因する精神疾患を有するか否かを同定する工程をさらに含む。他の実施態様において、本開示の治療、予防、又は管理方法は、対象が、黄疸を有しているか否か、及び/又はUGT1A1遺伝子変異を有しているか否かを同定する工程をさらに含む。
【0114】
(6.キット)
本開示は、5-HT1A/1B受容体アゴニスト又は本開示の医薬組成物を含む、キットを提供する。いくつかの実施態様において、該キットは、治療的有効量の5-HT1A/1B受容体アゴニスト又は治療的有効量の本開示の医薬組成物を含む。
【0115】
本開示のキットは、生体試料中のビリルビン濃度を測定するための試薬、及び/又はビリルビンUDP-グルクロン酸転移酵素遺伝子の変異を測定するための試薬をさらに含むことができる。いくつかの実施態様において、該ビリルビン濃度は、総ビリルビン濃度、間接ビリルビン濃度、又は直接ビリルビン濃度である。いくつかの実施態様において、該ビリルビン濃度は、総ビリルビン濃度、間接ビリルビン濃度、及び直接ビリルビン濃度からなる群から選択される1つ以上(例えば、1つ、2つ又は3つ)である。
【0116】
生体試料中のビリルビン濃度を測定するための試薬の例を挙げると、制限されないが、血液検査用総ビリルビンキット シカリキッドD-BIL(関東化学株式会社)、バナジン酸を用いる方法(臨床化学22:116-122, 1993参照。当該文献は引用により本明細書中に組み込まれている。)、直接ビリルビンキット アクアオート カイノス D-BIL試薬(株式会社カイノス)、又は総ビリルビン測定用「セロテック」T-BIL(株式会社セロテック)に用いられる試薬がある。該試薬の具体的な例を挙げると、制限されないが、ビリルビンオキシダーゼ、バナジン酸、又はメタバナジン酸ナトリウムがある。通常、間接ビリルビン濃度は直接測ることができないので、間接ビリルビン濃度は、総ビリルビン濃度から直接ビリルビン濃度を減算することにより算出される。
【0117】
ビリルビンUDP-グルクロン酸転移酵素遺伝子の変異を測定するための試薬の例を挙げると、制限されないが、UGT1A1遺伝子多型判定試薬としてインベーダー(登録商標)UGT1A1アッセイ(積水メディカル株式会社)に用いられる試薬がある。
【0118】
いくつかの実施態様において、5-HT1A/1B受容体アゴニスト又は本開示の医薬組成物は、アンプル又はバイアルなどの容器に封入されている。したがって、いくつかの実施態様において、本開示のキットは、5-HT1A/1B受容体アゴニスト又は本開示の医薬組成物を含む容器を含む。
【0119】
本開示のキットは、本明細書中に記載された疾患を治療、予防又は管理するために使用することができる。本開示のキットは、本明細書中に記載された対象を治療、予防又は管理するために使用することができる。本開示のキットは、本明細書中に記載された治療、予防又は管理方法において使用することができる。具体的な実施態様において、本開示のキットは、対象のBIND、黄疸を伴う精神疾患、又はUGT1A1遺伝子変異に起因する精神疾患を治療、予防又は管理するために使用される。
【0120】
いくつかの実施態様において、本開示のキットは、5-HT1A/1B受容体アゴニスト又は本開示の医薬組成物の使用方法を記載した指示書をさらに含むことができる。いくつかの実施態様において、本開示のキットは、本明細書中に記載した治療、予防又は管理方法を記載した指示書を含む。具体的な実施態様において、本開示のキットは、BIND、黄疸を伴う精神疾患、又はUGT1A1遺伝子変異に起因する精神疾患を治療、予防又は管理する方法を記載した指示書を含む。いくつかの実施態様において、本開示のキットは、健常者における生体試料中のビリルビン濃度についてのデータを記載した資料をさらに含む。いくつかの実施態様において、本開示のキットは、対象から生体試料を採取するための機器、例えば、検尿コップなどの容器又は注射器を含む。
【0121】
一実施態様において、本開示のキットは、対象のBIND、黄疸を伴う精神疾患、及びUGT1A1遺伝子変異に起因する精神疾患からなる群から選択される1つ以上(例えば、1つ、2つ又は3つ)の疾患を治療するために使用される。一実施態様において、本開示のキットは、対象のBIND、黄疸を伴う精神疾患、及びUGT1A1遺伝子変異に起因する精神疾患からなる群から選択される1つ以上(例えば、1つ、2つ又は3つ)の疾患を予防するために使用される。一実施態様において、本開示のキットは、対象のBIND、黄疸を伴う精神疾患、及びUGT1A1遺伝子変異に起因する精神疾患からなる群から選択される1つ以上(例えば、1つ、2つ又は3つ)の疾患を管理するために使用される。
【0122】
一実施態様において、本開示のキットは、対象のBINDを治療、予防、又は管理するために使用される。一実施態様において、本開示のキットは、対象の黄疸を伴う精神疾患を治療、予防、又は管理するために使用される。一実施態様において、本開示のキットは、対象のUGT1A1遺伝子変異に起因する精神疾患を治療、予防、又は管理するために使用される。
【0123】
いくつかの実施態様において、本開示のキットは、対象の精神疾患の治療、予防又は管理方法において使用される。
【0124】
本開示のキットは、対象を治療、予防又は管理するために使用することができる。いくつかの実施態様において、該対象は、精神疾患を有する。いくつかの実施態様において、該対象は、BINDを有する。いくつかの実施態様において、該対象は、黄疸を有する。いくつかの実施態様において、該対象は、UGT1A1遺伝子変異を有する。いくつかの実施態様において、該対象は、その生体試料中において、高いビリルビン濃度を有する。いくつかの実施態様において、該対象は、その生体試料中において、健常者のものと比較して高いビリルビン濃度を有する。いくつかの実施態様において、該対象は、精神疾患、BIND、黄疸、UGT1A1遺伝子変異、及びその生体試料中において高いビリルビン濃度、例えば、健常者のものと比較して高いビリルビン濃度、からなる群から選択される1つ以上(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ又は5つ)の状態を有する。
【実施例
【0125】
(7.実施例)
以下に実施例を記載する。下記実施例は、本発明に関する理解を深めるために記載しているものであり、本発明を限定することを意図するものではない。
【0126】
(実施例1)
(コンパニオン診断薬による確認)
コンパニオン診断薬として総ビリルビン、間接ビリルビン、直接ビリルビン濃度測定試薬又はUGT1A1の遺伝子変異の測定試薬などがある。そこで、一般的なビリルビン検査で用いられる酵素法を用いて、BINDモデルラットであるGunnラット(9~10週齢)の血漿成分を調べた。更にGunnラットのUGT1A1の遺伝子変異について検討した。比較対照として正常ラットであるWistarラット(9~10週齢)を同様に調べた。
【0127】
表1はGunnラット及びWistarラットの血漿中の総ビリルビン、直接ビリルビン、間接ビリルビンの濃度を示す。表中の*はp<0.05を表し、**はp<0.01を表し、***はp<0.001を表す(Student-t検定)。
【表1】
【0128】
血漿中の各種ビリルビン濃度はGunnラットの方が非常に高く、各種ビリルビン(総ビリルビン、直接ビリルビン、間接ビリルビン)濃度を調べることでBINDの鑑別が可能であることが確認された。
【0129】
GunnラットにはUGT1A1遺伝子に変異が入っていることが以下の論文で報告されている。Iyanagi T, Watanabe T, Uchiyama Y. The 3-methylcholanthrene-inducible UDP-glucuronosyltransferase deficiency in the hyperbilirubinemic rat (Gunn rat) is caused by a -1 frameshift mutation. J Biol Chem. 1989 Dec 15;264(35):21302-7.このことから、UGT1A1遺伝子の変異もまたBINDの鑑別に有用であると言える。
【0130】
また、Gunnラットは、黄疸を伴う精神疾患、及びUGT1A1遺伝子変異に起因する精神疾患のモデル動物でもあり得る(非特許文献6及び7)。したがって、各種ビリルビン(総ビリルビン、直接ビリルビン、間接ビリルビン)濃度を調べることで、黄疸を伴う精神疾患、及びUGT1A1遺伝子変異に起因する精神疾患の鑑別が可能である。また、UGT1A1遺伝子の変異も、黄疸を伴う精神疾患、及びUGT1A1遺伝子変異に起因する精神疾患の鑑別に有用である。
【0131】
(実施例2)
(オープンフィールドテスト)
5-HT1A/1B受容体アゴニストの一つであるエルトプラジン(E1357 TCI社製)を任意の溶媒で溶解した。9~10週齢の黄疸モデルラット(Gunnラット)の皮下に、0.3mg/kgのエルトプラジンを投与した。また、コントロール群として、9~10週齢のGunnラット及びWistarラットに溶媒を皮下に投与した。更に比較群として5-HT1A受容体アゴニストの一つである8OH-DPAT(O415005 富士フィルム和光純薬)を任意の溶媒で溶解し、1mg/kgでGunnラットの皮下に投与した。それぞれのラットをホームケージに60分間入れた後に、Scanet MV-40(メルクエスト)を用いて、60分間オープンフィールドテストを行い、各ラットについて自発活動量及び立ち上がり回数を等間隔で配置されたセンターを遮った回数(カウント)で測定した。毛づくろい回数については目視でカウントした。結果を表2~4及び図1~3に示す。
【0132】
表2及び図1は、溶媒のみを投与したWistarラット(Vehicle(+/+))、溶媒のみを投与したGunnラット(Vehicle(j/j))、0.3mg/kgのエルトプラジンを投与したGunnラット(Elto (j/j))、及び1mg/kgの8OH-DPATを投与したGunnラット(8OH-DPAT(j/j))の自発活動量を示す。図中、**はp<0.01を表す(溶媒のみを投与したWistarラットに対する各群のダネット検定)。
【表2】
【0133】
表3及び図2は、溶媒のみを投与したWistarラット(Vehicle(+/+))、溶媒のみを投与したGunnラット(Vehicle(j/j))、0.3mg/kgのエルトプラジンを投与したGunnラット(Elto(j/j))、及び1mg/kgの8OH-DPATを投与したGunnラット(8OH-DPAT(j/j))の立ち上がり回数を示す。図中、**はp<0.01を表す(溶媒のみを投与したWistarラットに対する各群のダネット検定)。
【表3】
【0134】
表4及び図3は、溶媒のみを投与したWistarラット(Vehicle(+/+))、溶媒のみを投与したGunnラット(Vehicle(j/j))、0.3mg/kgのエルトプラジンを投与したGunnラット(Elto(j/j))、及び1mg/kgの8OH-DPATを投与したGunnラット(8OH-DPAT(j/j))の毛づくろい回数を示す。図中、**はp<0.01を表す(溶媒のみを投与したWistarラットに対する各群のダネット検定)。
【表4】
【0135】
表2~4及び図1~3に示すように、エルトプラジンの投与は、Gunnラットの自発活動量及び立ち上がり回数、毛づくろい回数を正常ラットレベルまでの改善をもたらした。それに対し8OH-DPAT(5-HT1A受容体アゴニスト)投与は自発活動量、毛づくろい回数は正常ラットレベルまで改善したが、立ち上がり回数に異常をもたらした。
【0136】
(実施例3)
(オープンフィールドテスト)
5-HT1A/1B受容体アゴニストの一つであるエルトプラジン(E1357 TCI社製)を任意の溶媒で溶解した。9~10週齢の黄疸モデルラット(Gunnラット)の皮下に、0.3mg/kgのエルトプラジンを投与した。また、コントロール群として、9~10週齢のGunnラット及びWistarラットに溶媒のみを皮下に投与した。比較群として5-HT1B受容体アゴニストの一つであるCGS12066A(シグマーアルドリッチ)を任意の溶媒で溶解し、1mg/kgで皮下に投与した。それぞれのラットをホームケージに入れ、60分間入れた後に、Scanet MV-40(メルクエスト)を用いて、60分間オープンフィールドテストを行い、各ラットについて自発活動量及び立ち上がり回数を等間隔で配置されたセンターを遮った回数(カウント)で測定した。毛づくろい回数については目視でカウントした。結果を表5~7及び図4~6に示す。
【0137】
表5及び図4は、溶媒のみを投与したWistarラット(Vehicle(+/+))、溶媒のみを投与したGunnラット(Vehicle(j/j))、0.3mg/kgのエルトプラジンを投与したGunnラット(Elto(j/j))、及びCGS12066A 1mg/kgを投与したGunnラット(CGS(j/j))の自発活動量を示す。図中、**はp<0.01を表す(溶媒のみを投与したWistarラットに対する各群のダネット検定)。
【表5】
【0138】
表6及び図5は、溶媒のみを投与したWistarラット(Vehicle(+/+))、溶媒のみを投与したGunnラット(Vehicle(j/j))、0.3mg/kgのエルトプラジンを投与したGunnラット(Elto(j/j))、及び1mg/kgのCGS12066Aを投与したGunnラット(CGS(j/j))の立ち上がり回数を示す。図中、**はp<0.01を表す(溶媒のみを投与したWistarラットに対する各群のダネット検定)。
【表6】
【0139】
表7及び図6は、溶媒のみを投与したWistarラット(Vehicle(+/+))、溶媒のみを投与したGunnラット(Vehicle(j/j))、0.3mg/kgのエルトプラジンを投与したGunnラット(Elto(j/j))、及び1mg/kgのCGS12066Aを投与したGunnラット(CGS(j/j))の毛づくろい回数を示す。図中、*はp<0.05を表す(溶媒のみを投与したWistarラットに対する各群のダネット検定)。
【表7】
【0140】
表5~7及び図4~6に示すように、エルトプラジンの投与は、Gunnラットの自発活動量及び立ち上がり回数、毛づくろい回数を正常ラットレベルまでの改善をもたらした。それに対しCGS12006A(5-HT1B受容体アゴニスト)投与は自発活動量、立ち上がり回数は正常ラットレベルまで改善したが、毛づくろい回数は改善しなかった。
【0141】
(実施例4)
(ソーシャル・インターラクション・テスト)
5-HT1A/1B受容体アゴニストの一つであるエルトプラジン(E1357 TCI社製)を生理食塩水で溶解し、9~10週齢のGunnラット皮下に溶媒のみ、0.3mg/kgのエルトプラジン、又は1mg/kgのエルトプラジンを投与した。コントロールとして溶媒のみを正常ラットであるWistarラットに投与した。投与して1時間後、それぞれの同種のラット2頭(同じ薬剤、同じ投与量、遺伝子タイプも同じ)を1つのケージに入れ、10分間、上部からビデオ撮影した。撮影されたビデオデータを目視で解析し、相手への追跡行動回数、攻撃行動、相手への匂いかぎ・毛づくろい時間を測定した。
【0142】
表8及び図7は、溶媒のみを投与したWistarラット(Vehicle(+/+))、溶媒のみを投与したGunnラット(Vehicle(j/j))、0.3mg/kgのエルトプラジンを投与したGunnラット(Elto 0.3mg(j/j))、及び1mg/kgのエルトプラジンを投与したGunnラット(Elto 1mg(j/j))の相手への追跡行動の回数を示す。図中、***はp<0.001を表す(溶媒のみを投与したWistarラットに対する各群のダネット検定)。
【表8】
【0143】
エルトプラジン投与によって敵対的行動の一つである追跡行動(Following)が正常ラットレベルにまで減少した。
【0144】
表9及び図8は、溶媒のみを投与したWistarラット(Vehicle(+/+))、溶媒のみを投与したGunnラット(Vehicle(j/j))、0.3mg/kgのエルトプラジンを投与したGunnラット(Elto 0.3mg(j/j))、及び1mg/kgのエルトプラジンを投与したGunnラット(Elto 1mg(j/j))の相手への攻撃行動の回数を示す。図中、***はp<0.001を表す(溶媒のみを投与したWistarラットに対する各群のダネット検定)。
【表9】
【0145】
エルトプラジン投与によって敵対的行動の一つである攻撃行動(Attacking)が正常ラットレベルにまで減少した
【0146】
表10及び図9は、溶媒のみを投与したWistarラット(Vehicle(+/+))、溶媒のみを投与したGunnラット(Vehicle(j/j))、0.3mg/kgのエルトプラジンを投与したGunnラット(Elto 0.3mg(j/j))、及び1mg/kgのエルトプラジンを投与したGunnラット(Elto 1mg(j/j))の相手への匂いかぎ・毛づくろい行動の時間(秒)を示す。図中、***はp<0.001を表す(溶媒のみを投与したWistarラットに対する各群のダネット検定)。
【表10】
【0147】
エルトプラジン投与によって友好的行動の一つである相手への匂いかぎ・毛づくろい行動の時間が正常レベルまで増加した。
【0148】
(実施例5)
(PPIテスト)
5-HT1A/1B受容体アゴニストの一つであるエルトプラジン(E1357 TCI社製)を生理食塩水で溶解し、9~10週齢のGunnラット皮下に溶媒のみ, 0.3mg/kgのエルトプラジン, 1mg/kgのエルトプラジンを投与した。コントロールとして溶媒のみを正常ラットであるWistarラットに投与した。投与して1時間後、驚愕反応前パルス抑制(PPI)テストを行った。PPIテストはSR-LAB驚愕反応測定装置(サンディエゴ・インスティテュート社製 アメリカ)で測定した。測定を行ったラットは測定用のチャンバーに入れ、刺激開始前に5分間65dBのバックグラウンドホワイトノイズで馴化した。120dBの聴覚刺激に対する驚愕反応は、チャンバーの下部に取り付けた圧電計により測定した。試験セッションは、無刺激(ホワイトノイズのみ)、20msの120dBパルス刺激、120dBパルスの前に20msの70dBまたは80dBパルスを100msあけて入れた刺激を、無作為に合計50回試行した。各試行の間隔は20-60秒(平均40秒)で行った。パーセンテージPPIは次のように計算した。100 -[(プレパルス-パルス刺激試行の驚愕反応-無刺激試行)/(パルス単独試行-無刺激試行) × 100].
【0149】
表11及び図10は、溶媒のみを投与したWistarラット(Vehicle(+/+))、溶媒のみを投与したGunnラット(Vehicle(j/j))、0.3mg/kgのエルトプラジンを投与したGunnラット(Elto 0.3mg(j/j))のプレパルス80dBにおけるパーセンテージPPIを示す。図中、**はp<0.01、***はP<0.001を表す(溶媒のみを投与したWistarラットに対する各群のダネット検定)。
【表11】
【0150】
エルトプラジン投与によって認知機能評価指標の一つであるパーセントPPIの改善傾向が見られた。
【要約】
【課題】ビリルビン誘発性神経機能障害(BIND)、黄疸を伴う精神疾患、又はビリルビンUDP-グルクロン酸転移酵素(UGT1A1)遺伝子変異に起因する精神疾患を治療、予防又は管理するための医薬組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】
本発明者らは、対象に5-HT1A/1B受容体アゴニストを投与することにより、該対象のBIND、黄疸を伴う精神疾患、及びUGT1A1遺伝子変異に起因する精神疾患を治療、予防又は管理できることを発見した。したがって、本開示は、5-HT1A/1B受容体アゴニストを含む、BIND、黄疸を伴う精神疾患、及びUGT1A1遺伝子変異に起因する精神疾患を治療、予防又は管理するための医薬組成物を提供する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10