(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-19
(45)【発行日】2023-12-27
(54)【発明の名称】平角線の製造方法
(51)【国際特許分類】
H02G 1/12 20060101AFI20231220BHJP
B26D 3/00 20060101ALI20231220BHJP
【FI】
H02G1/12 060
B26D3/00 603Z
(21)【出願番号】P 2019161262
(22)【出願日】2019-09-04
【審査請求日】2022-07-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100196346
【氏名又は名称】吉川 貴士
(72)【発明者】
【氏名】池田 遼太
【審査官】鈴木 圭一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-030284(JP,A)
【文献】特開2013-165579(JP,A)
【文献】特開2014-060860(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 1/12
B26D 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体と、前記導体の外周を覆う絶縁被膜とを備えた平角線であって、前記絶縁被膜は前記平角線の外表面を構成し、幅広側の平坦部と、幅狭側の平坦部と、前記双方の平坦部の間に形成される角部とを有する平角線の前記絶縁被膜を除去する被膜除去工程を具備した平角線の製造方法において、
前記被膜除去工程は、前記平角線の角部に型を押し当てて、前記平角線の角部を塑性変形させることで、前記導体の角部に面取り部を成形すると共に、前記絶縁被膜の角部を前記導体から剥離させる面取り工程と、
前記絶縁被膜の双方の平坦部が前記導体から除去された状態とする平坦部被膜除去工程とを有
し、
前記平坦部被膜除去工程は、前記面取り工程の前に、前記絶縁被膜をなす前記幅広側の平坦部と前記幅狭側の平坦部のうち一方の平坦部を除去する面取り前被膜除去工程と、
前記面取り工程の後に、他方の平坦部、もしくは前記導体から剥離した絶縁被膜の角部が前記他方の平坦部とつながった状態で残る場合には前記他方の平坦部及び前記角部を除去する面取り後被膜除去工程とを有することを特徴とする、平角線の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平角線の製造方法に関し、特に平角線の絶縁被膜を除去するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題に鑑み電気自動車やハイブリッド車など、車両の駆動装置やその周辺機器にモータを採用する動きが加速している。上記車両へ搭載されるモータには、搭載可能なスペースの関係上、小型であることが求められる一方で、車両の駆動性能を向上させるべく高出力であることが求められることが多い。
【0003】
ここで、モータの高出力化のためには、ステータコイルに流す電流値を高める必要がある。その一方で、スペースが制限された条件下で効率よくコイルに流れる電流値を高めるためには、断面が略矩形状をなし占積率が相対的に高い平角線(平角導線)でコイルを構成することが考えられる。
【0004】
この平角線は、ステータコアの円周方向に一定の間隔で形成されたスロット内に予め定められた順序で配置されることにより、三相のコイルを構成する。一方、この平角線は周囲を絶縁被膜で覆われた形態をなす。よって、各相を構成する平角線を電気的に接続するためには、平角線の端部の絶縁被膜を除去して平角線の端部同士を接合する必要がある。
【0005】
ここで、特許文献1には、予め所定の長さに切断して得た平角線をその長手方向軸線まわりに回転させながら所定の方向に平角線を搬送して、搬送方向に沿って設けられた複数の切削工程で、平角線の角部に順次面取り加工(切削加工)を施して、角部の絶縁被膜を除去する方法が開示されている。このように、平角線を回転させながら、平角線の角部に切削加工を施すのであれば、複数の切削部材の剥離方向(切削方向)を同じ向きに揃えることができるので、製造設備の単純化が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載のように、平角線を回転させながら切削加工(面取り加工)を施す場合には、切削工程ごとに異なる姿勢で平角線を位置決め保持する必要があるため、搬送不良や位置決め精度の低下の原因となる。また、平角線の搬送と姿勢変更の二つの機能を備えた搬送装置が必要となるため、装置の構造が複雑化すると共に、装置の調整が困難で不具合発生時の復旧に時間を要するなどコスト及びメンテナンスの点でも好ましくない。何より、上述のように切削加工で絶縁被膜を除去する方法だと、絶縁被膜だけでなく導体をなす銅の切削カスが少なからず発生するため、高価な材料である銅の切削ロスを招き、材料コストの面でも好ましくない。
【0008】
以上の事情に鑑み、本明細書では、平角線の姿勢変更を行うことなく角部の絶縁被膜を除去することで高精度かつ低コストに平角線を製造することを、解決すべき技術課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題の解決は、本発明に係る平角線の製造方法によって達成される。すなわち、この製造方法は、平角線の端部の絶縁被膜を除去する被膜除去工程を具備した平角線の製造方法において、被膜除去工程は、平角線の角部に型を押し当てて、角部を塑性変形させることで、角部に面取り部を成形する面取り工程と、平角線の外周に設けられ角部を構成する平坦部の絶縁被膜を除去する平坦部被膜除去工程とを有することを特徴とする点をもって特徴付けられる。
【0010】
このように、本発明に係る平角線の製造方法では、平角線の角部に型を押し当てて、角部を塑性変形させることで、角部に面取り部を成形するようにしたので、各々の角部に対応した型を同じ方向(例えば鉛直方向)に移動させるだけで、平角線を回転させることなく全ての角部に面取り加工を施すことができる。よって、平角線の姿勢変更を伴って角部の絶縁被膜を除去する場合と比べて、搬送不良及び位置決め精度の低下を防止することが可能となる。また、何れの型も同じ方向に移動させるだけで済むので、型の押し当て機構を含む剥離装置の構造を単純化できる。また、角部に切削加工を施さずに済むため、銅の切削ロスを減らして材料コストの低減化を図ることが可能となる。
【0011】
また、型の押し当てにより角部の絶縁被膜は導体から剥離する。剥離した絶縁被膜はそのまま落下し、あるいは角部を構成する平坦部の絶縁被膜とつながった状態で平角線に残る。そのため、平角線の外周に設けられた絶縁被膜のうち平坦部の絶縁被膜を除去することにより、特に工数を増やすことなく、平坦部とつながった状態の角部の絶縁被膜を導体から確実に除去することが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、本発明に係る平角線の製造方法によれば、平角線の姿勢変更を行うことなく角部の絶縁被膜を除去することで高精度かつ低コストに平角線を製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係る平角線の製造方法の要部の手順を示すフローチャートである。
【
図2】
図1に示す面取り前被膜除去工程の概念を示す図である。
【
図4】面取り加工を施す前の平角線の端部の斜視図である。
【
図5】
図4に示す平角線の(a)先端側角部の面取り加工を施す前のX-Z断面図と、(b)面取り加工を施した後のX-Z側面図である。
【
図6】
図4に示す平角線の(a)外周側角部の第一の面取り加工を施す前のY-Z断面図と、(b)面取り加工を施した後のY-Z断面図である。
【
図7】
図4に示す平角線の(a)外周側角部の第二の面取り加工を施す前のY-Z断面図と、(b)面取り加工を施した後のY-Z断面図である。
【
図8】
図4に示す平角線の(a)面取り後被膜除去加工を施す前のY-Z断面図と、(b)被膜除去加工を施した後のY-Z断面図である。
【
図9】面取り加工及び被膜除去加工を施した後の平角線の端部の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態に係る平角線の製造方法の内容を図面に基づいて説明する。
【0015】
図1は、平角線の製造方法の要部の手順を示している。すなわち、本発明に係る平角線の製造方法は、平角線の端部に設けられた絶縁被膜を除去する被膜除去工程を具備するもので、被膜除去工程は、本実施形態では、面取り前被膜除去工程S1と、面取り工程S2と、面取り後被膜除去工程S3とを具備する。ここで、面取り後被膜除去工程S3が本発明に係る平坦部被膜除去工程に相当する。以下、各工程S1~S3の詳細を説明する。
【0016】
(S1)面取り前被膜除去工程
この工程S1では、後述する面取り工程S2の前に、平角線の端部を覆う絶縁被膜の一部を除去する。本実施形態では、この工程S1は、
図2に示すように、所定長さに切断される前の平角線材1の絶縁被膜2に対してプレカットを施すプレカット工程S11と、プレカット工程S11よりも平角線材1の搬送方向下流側に設けられ、プレカットを施した絶縁被膜2の一部を除去する第一被膜除去工程S12とを有する。また、本実施形態では、第一被膜除去工程S12よりも平角線材1の下流側に、平角線材1を切断して、所定長さの平角線3を取得する切断工程S4が設けられている。
【0017】
(S11)プレカット工程
このうち、プレカット工程S11では、平角線材1の外周を覆う絶縁被膜2のうち、平角線材1(平角線3)のフラットワイズ側(幅広側)の平坦部2aに切れ目4を形成する。この切れ目4は、幅広側の平坦部2aの幅方向(本明細書では、平坦部2aに沿った向きでかつ平角線材1及び平角線3の長手方向に直交する向きを意味する。)に沿って形成される。また、切れ目4は平角線材1の長手方向に所定の間隔を空けて形成される。本実施形態では、導体5を介して互いに対向する一対の平坦部2aそれぞれに対して一組の切れ目4が形成される(
図2を参照)。
【0018】
(S12)第一被膜除去工程
第一被膜除去工程S12では、絶縁被膜2の平坦部2aのうち予め一組の切れ目4により区画された領域に対して、所定の剥離手段により剥離処理を施す。この際、適用可能な剥離手段は任意であり、例えば図示は省略するが、剥離用の刃部材を平角線材1の平坦部2aのうち長手方向で隣り合う一組の切れ目4の間の部分に当て、幅方向に滑らせることで、平坦部2aのうち一組の切れ目4で区画された部分が剥がされ、平角形状を成す導体5の表面から除去される。上述した剥離動作は、導体5を介して互いに対向する一対の平坦部2aに対して行われる。この段階では、
図3に示すように、平角線材1(平角線3)の外周を覆う絶縁被膜2のうち幅広側の平坦部2aのみが除去され、エッジワイズ側(幅狭側)の平坦部2bが未だ導体5の表面に付着した状態にある。
【0019】
(S4)切断工程
切断工程S4では、平角線材1のうち直前の工程(第一被膜除去工程S12)で絶縁被膜2が除去された部分を所定の切断手段(例えばせん断加工)で切断する。これにより、例えば
図4に示すように、長手方向端部を覆う絶縁被膜2の一部(平坦部2a)が剥離した状態の平角線3が得られる。
【0020】
(S2)面取り工程
面取り工程S2では、
図4に示すように、平角線3の幅広側の平坦部(ここでは導体5により構成される幅広側の平坦部5a)と幅狭側の平坦部(ここでは絶縁被膜2により構成される幅狭側の平坦部2b)との間の角部(第一角部3a)、平角線3の最も先端側に位置する先端面部(ここでは導体5の先端面部5b)と幅広側の平坦部5aとの間の角部(第二角部3b)、及び、先端面部5bと幅狭側の平坦部2bとの間の角部(第三角部3c)にそれぞれ面取り加工を施す。
【0021】
ここで、各角部3a~3cに対する面取り加工の順序は任意である。以下では、第二角部3b、第一角部3a、第三角部3cの順に面取り加工を施す場合を例にとって説明する。
【0022】
(S21)第一面取り工程
この工程S21では、
図5(a)に示すように、平角線3の第二角部3bに型11の成形面11aを押し当てて、第二角部3bを塑性変形させることで、第二角部3bに面取り加工を施す。なお、
図5(a)は、
図4に示すようにXYZ座標系を設定した場合、平角線3のX-Z断面図を示している。後述する
図5(b)についても同じである。
【0023】
この場合、型11を
図4のZ方向に移動させることにより、第二角部3bに面取り加工を施す。これにより、平角線3の第二角部3bには、成形面11aに準じた形状及び傾きの面取り部(第二面取り部6b)が成形される(
図5(b)を参照)。なお、本実施形態では、接合の都合上、一方の第二角部3bのみに面取り加工を施し、然る後、次の工程(第二面取り工程S22)を実施する。
【0024】
(S22)第二面取り工程
この工程では、
図6(a)に示すように、平角線3の第一角部3aに型12の成形面12aを押し当てて、第一角部3aを塑性変形させることで、第一角部3aに面取り加工を施す。本実施形態では、四つある第一角部3aのうち、平角線3の対角線上に位置する一対の第一角部3a,3a(
図6(a)では左上の第一角部3aと右下の第一角部3a)に対して型12を用いた面取り加工を施す。なお、
図6(a)は、
図4に示すようにXYZ座標系を設定した場合、平角線3のY-Z断面図を示している。後述する
図6(b)についても同じである。
【0025】
この場合、各々の型12を
図4のZ方向に移動させることにより、対応する第一角部3aに面取り加工を施す。これにより、平角線3の第一角部3aには、成形面12aに準じた形状及び傾きの面取り部(第一面取り部6a)が成形される(
図6(b)を参照)。また、この面取り加工により、第一角部3aを覆っていた絶縁被膜2が導体5から剥離する。本実施形態では、絶縁被膜2のうち第一角部3aから剥離した部分が、バリ7として絶縁被膜2の幅狭側の平坦部2bとつながった状態で残るように第一角部3aの面取り加工が施される。
【0026】
(S23)第三面取り工程
この工程では、
図7(a)に示すように、平角線3の第一角部3aに型12の成形面12aを押し当てて、第一角部3aを塑性変形させることで、第一角部3aに面取り加工を施す。本実施形態では、四つある角部3aのうち、平角線3の対角線上に位置し未だ面取り加工が施されてない一対の第一角部3a,3a(
図7(a)では右上の第一角部3aと左下の第一角部3a)に対して型12を用いた面取り加工を施す。なお、
図7(a)は、
図4に示すようにXYZ座標系を設定した場合、平角線3のY-Z断面図を示している。後述する
図7(b)についても同じである。
【0027】
この場合、各々の型12を
図4のZ方向に移動させることにより、対応する第一角部3aに面取り加工を施す。これにより、平角線3の第一角部3aには、成形面12aに準じた形状及び傾きの面取り部(第一面取り部6a)が成形される(
図7(b)を参照)。また、この面取り加工により、第一角部3aを覆っていた絶縁被膜2が導体5から剥離する。本実施形態においても、絶縁被膜2のうち第一角部3aから剥離した部分が、バリ7として絶縁被膜2の幅狭側の平坦部2bとつながった状態で残るように第一角部3aの面取り加工が施される。以上より、四つ全ての第一角部3aに面取り加工が施され、各第一角部3aを覆っていた絶縁被膜2が全て剥離された状態となる(
図7(b)を参照)。
【0028】
(S3)面取り後被膜除去工程(第二平坦部被膜除去工程)
このようにして平角線3の外周に位置する全ての角部(四つの第一角部3a)に面取り加工を施した後、平角線3の端部に残った絶縁被膜2(幅狭側の平坦部2b)の除去を行う。具体的には、
図8(a)に示すように、刃面14aを有する刃部材14を導体5と絶縁被膜2(幅狭側の平坦部2b)との境界に沿って移動させて、導体5から幅狭側の平坦部2bを切り離す。これにより、平角線3の端部から残りの絶縁被膜2を除去される(
図8(b)を参照)。なお、
図8(a)及び(b)は、
図4に示すようにXYZ座標系を設定した場合、平角線3のY-Z断面図を示している。
【0029】
また、図示は省略するが、第三角部3cに対しても、例えば
図8に示す如き刃部材をZ方向に移動させて切断加工を施すことにより、第三角部3cに面取り加工が施され、
図9に示すように、平角線3の幅狭側の平坦部(ここでは導体5の幅狭側の平坦部5c)と先端面部5bとの間に、第三面取り部6cが形成される。第三面取り部6cの形成工程(第三角部3cの面取り工程)は、面取り後被膜除去工程S3の後に実施してもよいが、第三面取り工程S23の後でかつ面取り後被膜除去工程S3の前に実施してもよい。
【0030】
以上のようにして、各角部3a~3cに対応する面取り部6a~6cを形成すると共に、平角線3の端部を覆う絶縁被膜2を除去することによって、平角線3の端部に対する加工が完了する。然る後、所定の曲げ加工等を施すことにより、コイルセグメントとしての平角線が完成する。
【0031】
このように、本発明に係る平角線3の製造方法では、平角線3の第一角部3aに型12を押し当てて、第一角部3aを塑性変形させることで、第一角部3aに面取り部を成形するようにしたので、各々の第一角部3aに対応した型12を同じ方向(本実施形態ではZ方向)に移動させるだけで、平角線3をその長手方向軸線まわりに回転させることなく全ての第一角部3aに面取り加工を施すことができる。よって、平角線3の姿勢変更を伴って第一角部3aの絶縁被膜2を除去する場合と比べて、搬送不良及び位置決め精度の低下を防止することが可能となる。また、何れの型12も同じ方向に移動させるだけで済むので、型12の押し当て機構を含む剥離装置の構造を単純化できる。また、第一角部3aに切削加工を施さずに済むため、銅の切削ロスを減らして材料コストの低減化を図ることが可能となる。
【0032】
また、型12の押し当てにより第一角部3aの絶縁被膜2は導体5から剥離する。剥離した絶縁被膜2はそのまま落下し、あるいは第一角部3aに隣接する絶縁被膜2(ここでは絶縁被膜2の幅狭側の平坦部2b)とつながった状態で平角線3に残る。そのため、平角線3の外周に設けられた絶縁被膜2のうち平坦部2bを除去することにより、特に工数を増やすことなく、平坦部2bとつながった状態の第一角部3aの絶縁被膜2を導体5から確実に除去することが可能となる。
【0033】
また、本実施形態では、面取り工程S2の前に、平角線3の端部を覆う絶縁被膜2の一部を除去するようにした。具体的には、平角線3の端部外周に設けられる角部(第一角部3a)を構成する平坦部2a,2bのうち何れか一方の平坦部(ここでは幅広側の平坦部2a)を除去した後、当該除去した平坦部2aに隣接する第一角部3aに面取り加工を施すようにした。この構成によれば、第一角部3aを構成する一方の絶縁被膜2(幅広側の平坦部2a又は幅狭側の平坦部2b)を除去した状態で、第一角部3aに面取り加工を施すことができる。そのため、第一角部3aの絶縁被膜2を容易に導体5から剥離させることが可能となる。
【0034】
以上、本発明の一実施形態について述べたが、本発明に係る平角線の製造方法は、その趣旨を逸脱しない範囲において、上記以外の構成を採ることも可能である。
【0035】
例えば、上記実施形態では、第一角部3aの面取り加工を二工程(第二面取り工程S22、第三面取り工程S23)に分けて実施した場合を例示したが、もちろん、これらを一工程で実施することも可能である。この場合、図示は省略するが、計四つの型12をZ方向に移動させて、四つの第一角部3aに対して同時に面取り加工を施すのがよい。また、上記実施形態のように二工程に分けて実施する場合においても、一工程で面取り加工を施す二つの第一角部3aの組み合わせは任意であり、例えば幅狭側の平坦部2bの両側に位置する二つの第一角部3a(
図6(a)でいえば左上の第一角部3aと左下の第一角部3a)に対して面取り加工を施してもよい。
【0036】
また、上記実施形態では、幅狭側の平坦部2bを除去する面取り後被膜除去工程S3において、切断加工で残りの絶縁被膜2(幅狭側の平坦部2b)を除去する場合を例示したが、もちろん切削以外の手段で残りの絶縁被膜2を除去してもよい。特に、上記実施形態のように、第一面取り部6aの成形に伴って、幅狭側の平坦部2bにバリ7が生じるように、第一角部3aに面取り加工を施す場合であれば、残りの絶縁被膜2を除去するための手段の選択肢も増えるため、好適である。
【0037】
また、上記実施形態では、面取り工程S2の前に、平角線3の端部を覆う絶縁被膜2の一部を除去するようにしたが、もちろんこの形態には限られない。面取り後被膜除去工程S3(平坦部被膜除去工程)で、絶縁被膜2の平坦部(幅広側の平坦部2a又は幅狭側の平坦部2b)を除去した状態において、第一角部3aを覆う絶縁被膜2が除去されるのであれば、必ずしも面取り工程S2の前に面取り前被膜除去工程S1を設ける必要はない。
【符号の説明】
【0038】
1 平角線材
2 絶縁被膜
2a,2b 平坦部
3 平角線
3a~3c 角部
4 切れ目
5 導体
5a,5c 平坦部
5b 先端面部
6a~6c 面取り部
7 バリ
11,12 型
11a,12a 成形面
14 刃部材
14a 刃面
S1 面取り前被膜除去工程
S11 プレカット工程
S12 第一平坦部被膜除去工程
S2 面取り工程
S3 面取り後被膜除去工程(第二平坦部被膜除去工程)
S4 切断工程