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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-19
(45)【発行日】2023-12-27
(54)【発明の名称】フィルター構造体
(51)【国際特許分類】
   B01D 46/10 20060101AFI20231220BHJP
   F24F 13/28 20060101ALI20231220BHJP
【FI】
B01D46/10 B
F24F13/28
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019110009
(22)【出願日】2019-06-13
(65)【公開番号】P2019217493
(43)【公開日】2019-12-26
【審査請求日】2022-06-10
(31)【優先権主張番号】P 2018113281
(32)【優先日】2018-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000222141
【氏名又は名称】東洋アルミエコープロダクツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101409
【弁理士】
【氏名又は名称】葛西 泰二
(74)【代理人】
【氏名又は名称】葛西 さやか
(74)【代理人】
【識別番号】100175662
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 英明
(72)【発明者】
【氏名】足立 将司
(72)【発明者】
【氏名】山岸 拓人
【審査官】塩谷 領大
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-036801(JP,A)
【文献】特開2015-193701(JP,A)
【文献】特開2014-117815(JP,A)
【文献】特開2005-146080(JP,A)
【文献】特開2018-161598(JP,A)
【文献】特開2004-181368(JP,A)
【文献】特開2009-247972(JP,A)
【文献】特開2003-079715(JP,A)
【文献】特開2004-082728(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 46/00-46/90
F24F 13/28
B32B 1/00-43/00
B01D 39/00-41/04
B29C 33/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物に貼着して通過する気体をろ過するためのフィルター構造体であって、
通気性を有するシート状部材からなるフィルター層と、
前記フィルター層の一方面の少なくとも一部に形成された、対象物へ貼着するための粘着剤層とを備え、
前記粘着剤層は、
アクリル系ホットメルト粘着剤によって形成され、
最大剥離荷重が0.004-0.18N/mmの範囲であり、
粘着面どうしが貼り付いた状態の前記粘着剤層に剥離力を与えて前記粘着剤層を剥離したときに、前記粘着面に損傷や破損が生じないように構成され、
前記粘着面どうしが貼り付いた状態の前記粘着剤層を剥離したときに、前記フィルター層自体が損傷したり変形を生じたりすることがない、フィルター構造体。
【請求項2】
対象物に貼着して通過する気体をろ過するためのフィルター構造体であって、
通気性を有するシート状部材からなるフィルター層と、
前記フィルター層の一方面の少なくとも一部に形成された、対象物へ貼着するための粘着剤層とを備え、
前記粘着剤層は、
アクリル系ホットメルト粘着剤によって形成され、
最大剥離荷重が0.004-0.18N/mmの範囲であり、
粘着面どうしが貼り付いた状態の前記粘着面を剥離するのに要する剥離力よりも大きい凝集力を備え、
前記粘着面どうしが貼り付いた状態の前記粘着剤層に剥離力を与えて前記粘着剤層を剥離したときに、前記粘着面に損傷や破損が生じない、フィルター構造体。
【請求項3】
前記粘着剤層は、前記粘着面どうしが貼り付いた状態の前記粘着面を剥離するのに要する剥離力よりも大きい凝集力を備える、請求項1記載のフィルター構造体
【請求項4】
前記対象物は、表面に、金属によるメッキ、又は、樹脂による塗装が施されている、請求項1から請求項3のいずれかに記載のフィルター構造体。
【請求項5】
前記フィルター層の一方の面における、前記粘着剤層を形成する粘着剤の塗布率が、5~95%である、請求項1から請求項4のいずれかに記載のフィルター構造体。
【請求項6】
前記フィルター層の少なくとも一方の長さが、25cm以上である、請求項1から請求項のいずれかに記載のフィルター構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンジフード、エアコン、空気清浄機、通気口等の対象物に貼着して、通過する気体をろ過するためのフィルター構造体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
レンジフードの金属フィルター又は整流板、エアコンや空気清浄機の空気吸入口、屋内外の通気口等に装着して、通過する空気をろ過するためのフィルター構造体が、特開2002-85927号公報(特許文献1)、特開2017-15297号公報(特許文献2)等に記載されている。これらの文献に記載されたフィルター構造体は、不織布等からなるシート状のフィルター層の一方の面に、粘着剤層が形成された構造を有している。又、通常、粘着剤層の表面には厚みの薄い剥離シートが貼着される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-85927号公報
【文献】特開2017-15297号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1又は特許文献2に記載されるようなフィルター構造体を、レンジフードやエアコン等の取付対象に取り付けるには、粘着剤層の表面に貼着された剥離フィルムを除去して粘着剤層の粘着面を露出させた後、フィルター構造体の全体を拡げた状態を保ちながら、粘着面を取付個所に位置合わせした後に圧着する作業を行う。その際、フィルター構造体の全体を拡げた状態を保てず、フィルター構造体が途中で撓んだり一部が折れ曲がったりした場合、粘着面どうしが接触して貼り付いた状態となることがある。特に取付対象がレンジフードである場合には、レンジフードの金属フィルターの大きさに合せてフィルター構造体の寸法が設定され大きくなる傾向があるため、この課題は顕著になりやすい。又、一般的に男性に比して小柄である女性の場合、レンジフードの幅や設置位置(例:設置高さ)によってはフィルター構造体の取付時に全体に手が届きにくいこともあるため、同様にこの課題が顕著になりやすい。又、取付対象がエアコンのように一方向に長尺のものも同様の課題がある。
【0005】
従来のフィルター構造体は、粘着面どうしが貼り付いた粘着剤層を分離するのが難しい場合が多い。しかも、粘着面どうしが貼り付いた状態となった粘着剤層に剥離力を与えて両者を分離したときに、粘着面が損傷し又は破壊された状態となることがしばしばある。又、粘着面の状態悪化とは別に、又はそれと共に、粘着面どうしを分離する際にフィルター層に変形や不可逆的な伸びが生じることがある。更には、粘着面どうしを分離しようとしても一方の粘着面に他方の粘着面が強く貼り付いて分離できないときには、更に強い力で引き剥がそうとすると、粘着面どうしが貼り付いた状態は維持したままで一方の粘着剤層がフィルター層から取れてしまうことがある。
【0006】
粘着面の状態が悪化したフィルター構造体は、取付対象に対して適切な粘着力を発揮することが難しくなる。フィルター層に変形や不可逆的な伸びが生じたフィルター構造体では、フィルター機能が低下する。粘着剤層がフィルター層から取れた場合には、フィルター構造体の使用が不可になる。
【0007】
このような、粘着剤層どうしが粘着面で貼り付く問題は、フィルター構造体の外形寸法が大きくなるほど起こりやすくなる。一般に、レンジフードやエアコン用のフィルター構造体は、縦横ががそれぞれ数十cmと比較的大型の外形寸法を有しているため、上記のような問題が起こりやすくなっている。
【0008】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みて、粘着剤層の粘着面どうしが接触して貼り付いたときに、両者を容易に分離することができ、分離後の粘着面およびフィルター層の状態を悪化させることのないフィルター構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、請求項1記載の発明は、対象物に貼着して通過する気体をろ過するためのフィルター構造体であって、通気性を有するシート状部材からなるフィルター層と、フィルター層の一方面の少なくとも一部に形成された、対象物へ貼着するための粘着剤層とを備え、粘着剤層は、アクリル系ホットメルト粘着剤によって形成され、最大剥離荷重が0.004-0.18N/mmの範囲であり、粘着面どうしが貼り付いた状態の粘着剤層に剥離力を与えて粘着剤層を剥離したときに、粘着面に損傷や破損が生じないように構成され、粘着面どうしが貼り付いた状態の粘着剤層を剥離したときに、フィルター層自体が損傷したり変形を生じたりすることがないものである。
【0010】
このように構成すると、粘着剤層がアクリル系ホットメルト粘着剤で形成されるので、粘着剤層の凝集力が高くなる。最大剥離荷重を上記の範囲とすることによって、粘着面どうしが貼り付いた粘着剤層を剥離するときに、粘着剤層にもフィルター層にも過大な力が働かない。更に、例えばレンジフードの金属フィルター等の対象物に対する適切な粘着力が得られる。又、フィルター構造体の粘着面どうしが貼り付いた場合に、剥離が容易であって、且つ、粘着面に損傷や破損が生じないか、あってもその度合いを抑制できる。又、粘着面どうしが貼り付いた状態の粘着剤層を剥離したときに、フィルター層自体に損傷や変形が生じない。
請求項2記載の発明は、対象物に貼着して通過する気体をろ過するためのフィルター構造体であって、通気性を有するシート状部材からなるフィルター層と、フィルター層の一方面の少なくとも一部に形成された、対象物へ貼着するための粘着剤層とを備え、粘着剤層は、アクリル系ホットメルト粘着剤によって形成され、最大剥離荷重が0.004-0.18N/mmの範囲であり、粘着面どうしが貼り付いた状態の粘着面を剥離するのに要する剥離力よりも大きい凝集力を備え、粘着面どうしが貼り付いた状態の粘着剤層に剥離力を与えて粘着剤層を剥離したときに、粘着面に損傷や破損が生じないものである。
このように構成すると、粘着剤層がアクリル系ホットメルト粘着剤で形成されるので、粘着剤層の凝集力が高くなる。最大剥離荷重を上記の範囲とすることによって、粘着面どうしが貼り付いた粘着剤層を剥離するときに、粘着剤層にもフィルター層にも過大な力が働かない。更に、例えばレンジフードの金属フィルター等の対象物に対する適切な粘着力が得られる。又、粘着剤層が、粘着面どうしが貼り付いた状態の粘着面を剥離するのに要する剥離力よりも大きい凝集力を備えるから、フィルター構造体の粘着面どうしが貼り付いた場合に、剥離が容易であって、且つ、粘着面に損傷や破損が生じないか、あってもその度合いを抑制できる。
請求項3記載の発明は、請求項1記載の発明の構成において、粘着剤層は、粘着面どうしが貼り付いた状態の粘着面を剥離するのに要する剥離力よりも大きい凝集力を備えるものである。
このように構成すると、粘着剤層が粘着面を剥離するのに要する剥離力に比べて大きい凝集力を備えることにより、貼り付いた粘着剤層を剥離するときに、粘着面が損傷したり破損したりするのを防止する。
【0011】
請求項記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれかに記載の発明の構成において、対象物は、表面に、金属によるメッキ、又は、樹脂による塗装が施されているものである。
【0012】
このように構成すると、フィルター構造体が適用される対象物が、表面にメッキ又は樹脂の塗装が施されたものに限定される。
【0013】
請求項記載の発明は、請求項1から請求項4のいずれかに記載の発明の構成において、フィルター層の一方の面における、粘着剤層を形成する粘着剤の塗布率が、5~95%であるものである。
【0014】
このように構成すると、フィルター層の一方の面における粘着剤の塗布率が、5~95%の範囲となる。
【0015】
請求項記載の発明は、請求項1から請求項のいずれかに記載の発明の構成において、フィルター層の少なくとも一方の長さが、25cm以上であるものである。
【0016】
このように構成すると、フィルター構造体が、比較的大型の製品となる。
【発明の効果】
【0017】
請求項1記載の発明は、アクリル系ホットメルト粘着剤によって形成されるので粘着剤層が高い凝集力を備えている。それにより、粘着面どうしが貼り付いた状態の粘着剤層に剥離力を与えて強制的に剥離したときに、容易に剥離することができて、且つ、粘着面に損傷や破損を生じさせない。従って、粘着剤層どうしが貼り付いたときでも、剥離後に粘着剤層の粘着力が低下しないか低下してもその度合いを抑制できるので、フィルター構造体を対象物に適切な粘着力で取り付けることが可能である。又、アクリル系ホットメルト粘着剤により形成すると共に、粘着剤層の最大剥離荷重が適切な範囲に設定されるので、粘着剤層どうしが貼り付いた場合でも、粘着面に損傷を与えずに両者を容易に剥離することができると共に、対象物に貼着した後でフィルター構造体が対象物から簡単には脱落したり部分的に剥離したりするおそれがなく、しかも交換等の必要時には、フィルター構造体を対象物から容易に引き剥がすことが可能である。更に、粘着面どうしが貼り付いた粘着剤層を剥離するときに、粘着剤層及びフィルター層のいずれにも過大な力をかけることなく剥離することができると共に、フィルター層自体が損傷したり変形を生じたりすることがないように構成したので、粘着剤層が破壊されたり、フィルター層が変形したり不可逆的に伸びたりすることが防止される。よって、粘着剤層どうしが貼り付いた後に剥離した後でも、フィルター構造体が良好なフィルター機能を発揮することができる。
請求項2記載の発明は、アクリル系ホットメルト粘着剤によって形成されるので粘着剤層が高い凝集力を備えている。それにより、粘着面どうしが貼り付いた状態の粘着剤層に剥離力を与えて強制的に剥離したときに、容易に剥離することができて、且つ、粘着面に損傷や破損を生じさせない。従って、粘着剤層どうしが貼り付いたときでも、剥離後に粘着剤層の粘着力が低下しないか低下してもその度合いを抑制できるので、フィルター構造体を対象物に適切な粘着力で取り付けることが可能である。又、アクリル系ホットメルト粘着剤により形成すると共に、粘着剤層の最大剥離荷重が適切な範囲に設定されるので、粘着剤層どうしが貼り付いた場合でも、粘着面に損傷を与えずに両者を容易に剥離することができると共に、対象物に貼着した後でフィルター構造体が対象物から簡単には脱落したり部分的に剥離したりするおそれがなく、しかも交換等の必要時には、フィルター構造体を対象物から容易に引き剥がすことが可能である。更に、粘着面どうしが貼り付いた粘着剤層を剥離するときに、粘着剤層及びフィルター層のいずれにも過大な力をかけることなく剥離することができると共に、貼り付いた状態の粘着面を剥離するのに要する剥離力よりも大きい凝集力を粘着剤層が備えるので、粘着剤層が破壊されたり、フィルター層が変形したり不可逆的に伸びたりすることが防止される。よって、粘着剤層どうしが貼り付いた後に剥離した後でも、フィルター構造体が良好なフィルター機能を発揮することができる。
請求項3記載の発明は、請求項1記載の発明の効果に加えて、粘着剤層が、粘着面どうしが貼り付いた状態の粘着面を剥離するのに要する剥離力よりも大きい凝集力を備えることにより、貼り付いた粘着剤層を剥離するときに、剥離後の粘着面が損傷したり破損したりするのを防止することができるので、粘着面が貼り付いた粘着剤層を引き剥がしたあとのフィルター構造体であっても、これを対象物に適切に取り付けることができ、取付後に保持力が低下することはないか、あってもその度合いを抑制できる。
【0018】
請求項記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれかに記載の発明の効果に加えて、フィルター構造体の適用対象が表面にメッキ又は樹脂による塗装が施されているものであれば、フィルター構造体を対象物に取り付けた後に取り外した時に糊残りが生じない、あるいは糊残りを低減できる。
【0019】
請求項記載の発明は、請求項1から請求項4のいずれかに記載の発明の効果に加えて、フィルター層の一方面に形成される粘着剤層の面積比率を特定範囲に設定したので、貼着する対象物に応じてフィルター構造体全体の粘着力とフィルター層の通気性のバランスを適宜設定することができる。
【0020】
請求項記載の発明は、請求項1から請求項のいずれかに記載の発明の効果に加えて、本発明の適用対象を、粘着剤層どうしが貼り付くという問題を招きやすい比較的外形寸法が大きいフィルター構造体としたので、貼り付いた粘着剤層どうしをきれいに引き剥がすことが容易になるという利点がより明確になる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施の形態によるフィルター構造体の一例を示す正面図である。
図2】本発明の実施の形態によるフィルター構造体において、粘着面どうしが貼り付いた粘着剤層を剥離する状況を説明するための断面図である。
図3】本発明の実施の形態によるフィルター構造体を製造するための製造装置の一例を示す概略図である。
図4】本発明の実施の形態によるフィルター構造体を製造するための製造装置の別態様を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は、本発明の実施の形態によるフィルター構造体の一例を示す正面図である。このフィルター構造体Fは、対象物に貼着して通過する気体をろ過するためのものであり、通過する空気をろ過するシート状のフィルター層Sと、フィルター層Sの一方面の少なくとも一部に形成された、対象物へ貼着するための粘着剤層Nとを備える。本例のフィルター構造体Fは、この粘着剤層Nを、アクリル系ホットメルトによって形成したところを特色とする。
【0023】
本例のフィルター層Sは、例えば不織布、織布、又は編み布等で構成される。粉塵等の捕集と気体の流通とを両立させると共に、実用的な強度を確保するため、厚さを0.3~15.0mm、目付けを20~200g/mの範囲とするのが好ましい。厚さが0.3mm未満、又は、目付けが20g/m未満の場合は、実用的な強度が不足すると共に、十分な捕集機能を発揮しないおそれがある。厚さが15.0mmを超えるか、又は、目付けが200g/mを超えると、気体の流通抵抗が大きくなり、エアフィルターとしての実用性が損なわれるおそれがある。フィルター層Sの材質としては、PET等のポリエステル、ポリプロピレン又はプロピレン主体の共重合体、モダクリルを含むアクリル等を用いることができるが、これらに限定されない。尚、本発明のフィルター構造体をレンジフード用のフィルター構造体として使用する場合、フィルター層Sは、例えば不織布であれば構成する繊維として難燃性繊維を用いたり、繊維を難燃化剤による処理(例えば、繊維にステアリン酸アルミニウムなどの脂肪酸金属塩を付着させるなど)を行うことが好ましい。
【0024】
粘着剤層Nは、フィルター層Sの一方面の少なくとも一部に、アクリル系ホットメルトによって形成される。アクリル系ホットメルトは、凝集性が高く、耐候性、耐湿性に優れ、粘着付与剤をあまり必要としない等の特性を有している。粘着剤層Nの最大剥離荷重は、0.004-0.18N/mmの範囲、好ましくは0.003~0.115N/mmの範囲に設定される。
【0025】
アクリル系ホットメルトには、各種物性を向上させるため、下記に示すような成分の1つ以上を添加することができる。
(粘着付与剤):フィルター層に対する粘着剤層の密着性を向上させる。
ロジン系樹脂、テルペン樹脂、(水添)石油樹脂、クマロン-インデン系樹脂、水素化芳香族コポリマー、スチレン系樹脂、フェノール系樹脂、キシレン樹脂などの粘着付与樹脂;フタル酸エステル、アジピン酸エステル、セバシン酸エステル、その他脂肪酸エステルパラフィン、エポキシ系高分子可塑剤、リン酸エステル、亜リン酸エステル類、アクリル系オリゴマー、ポリイソプレン、プロセスオイル、ナフテン系オイル、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリオール化合物などの可塑剤;エチレン-アクリル酸エチル共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニルなどの他の重合体等
(軟化剤):低温時における粘着力の低下の防止、塗工性の向上(糸引きの抑制)、糊残りを抑制のため。
石油系炭化水素などの鉱物油(合成オイル)類、植物油類、動物油類、パラフィン類、テルペノイド類、脂肪酸類、脂肪酸エステル類、アルコール類、はちみつ、クロタミトン
尚、上記の成分は、1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0026】
図2は、本発明の実施の形態によるフィルター構造体において、粘着面どうしが貼り付いた粘着剤層を剥離する状況を説明するための断面図である。本発明のフィルター構造体は、粘着剤層の凝集力が高く且つ最大剥離荷重が特定の範囲であることが、粘着面で貼り付いたときに両者をきれいに引き剥すことが可能となっている理由の1つと考えられる。図2を参照して、本例のフィルター構造体F1、F2において、粘着面n1、n2どうしが貼り付いた粘着剤層N1、N2を剥離するときに要する剥離力をG、粘着剤層N1、N2の凝集力をH、粘着剤層N1(N2)とフィルター層S1(S2)との結合力をJ、フィルター層S1、S2の引裂強度をKとする。本発明では、粘着剤層N1、N2をアクリル系ホットメルトで形成したので、粘着剤層N1、N2の凝集力Hを高めることができる。
【0027】
粘着剤層が充分な凝集力Hを備えていない場合、粘着面どうしが貼り付いた粘着剤層を引き剥がした時に、粘着剤層の一部が分離して他方の粘着剤層へ移行する現象(粘着面どうしを分離しようとしても一方の粘着面に他方の粘着面が強く貼り付いて分離できないときに、更に強い力で引き剥がそうとすると、粘着面どうしが貼り付いた状態は維持したままで一方の粘着剤層がフィルター層から取れてしまう状態)が生じて、粘着剤層の損傷や破壊を生じさせることになる。又、粘着面どうしを分離する際にフィルター層に変形や不可逆的な伸びが生じることもある。それらの結果、フィルター構造体は、粘着面の表面状態が悪化し、対象物に適切に取り付けることができなくなったり、取付後の保持力が低下して対象物から早期に脱落したりするおそれがあったり、フィルター機能が低下したりするなどの不具合が生じる。
【0028】
これに対し本発明のフィルター構造体F1、F2では、粘着剤層N1、N2自体が、粘着面n1、n2を剥離するのに要する剥離力Gに比べて大きい凝集力Hを備えるから、貼り付いた粘着剤層N1、N2を剥離するときに、剥離後の粘着面n1、n2が損傷したり破損したりするのを防止することができる。従って、粘着面が貼り付いた粘着剤層を引き剥がしたあとのフィルター構造体であっても、これを対象物に適切に取り付けることができ、取付後に保持力が低下することはないか、あってもその度合いを抑制できる。
【0029】
更に本例では、粘着面n1、n2間の剥離力Gに比べて、粘着剤層N1(N2)とフィルター層S1(S2)との間の結合力J、及び、フィルター層S1、S2自体の引裂強度Kがいずれも大きくなるように設計されている。これにより、貼り付いた粘着面n1、n2を剥離するときに、粘着剤層N1(N2)とフィルター層S1(S2)との間の結合部や、フィルター層S1、S2自体が損傷したり変形を生じたりすることがないので、剥離後のフィルター構造体F1、F2を通常通り使用することが可能となる。
【0030】
フィルター層にアクリル系ホットメルトを塗布する手段は、塗布ロールによるロールコート方式、スプレーコート方式、インクジェット方式、ダイコート方式、スクリーン印刷方式等が可能であるが、これらに限定されない。
【0031】
以下、ロールコート方式によるフィルター構造体の製造手順について説明する。
【0032】
図3は、本発明の実施の形態によるフィルター構造体を製造するための製造装置の一例を示す概略図である。図3を参照して、製造装置Pは、アクリル系ホットメルトMの供給手段、不織布等からなるシート状のフィルター層Sの供給手段、PETフィルム等からなる剥離シートTの供給手段、アクリル系ホットメルトMを貯留させつつ送り出すためのホットメルト供給ロール2及び補助ロール1、フィルター層Sの一方の面にアクリル系ホットメルトMを塗工するための塗布ロール3及びバックアップロール4、フィルター層Sと剥離シートTとを積層して貼り合わせるためのニップロール5及び6、剥離シートTの搬送速度を調節しつつ供給するための供給ロール10及び11、剥離シートTを搬送するための搬送ロール12、13及び14を有している。補助ロール1、ホットメルト供給ロール2、塗布ロール3及びバックアップロール4は隣接して配置されると共に、連動して回転するように構成される。ホットメルト供給ロール2と補助ロール1との突き合わせ部分の上部に、溶融状態のアクリル系ホットメルトMが貯留される。ホットメルト供給ロール2を回転させると、その表面に付着したアクリル系ホットメルトMが、これに接する塗布ロール3の表面へ移行する。アクリル系ホットメルトMの移行量は、ホットメルト供給ロール2と補助ロール1との間隙寸法を調節することで制御することができる。塗布ロール3は、グラビアロールや凸版ロールなど、公知の印刷用ロールを使用することができる。
【0033】
ホットメルト供給ロール2からの移行によりアクリル系ホットメルトMを表面に付着させた塗布ロール3とバックアップロール4との間にフィルター層Sを通過させることにより、フィルター層Sの一方面に、所望の文字や図柄等をアクリル系ホットメルトMで印刷することができる。文字等が印刷されたフィルター層Sは、ニップロール5及び6に供給される。PET等からなる剥離シートTは、供給ロール10及び11、搬送ロール12、13及び14によって、ニップロール5及び6の位置まで搬送される。剥離シートTの搬送速度は、供給ロール10及び11の回転速度によって調節され、フィルター層Sの搬送速度と一致するように制御される。ニップロール5及び6に供給されるフィルター層S及び剥離シートTは、フィルター層Sのアクリル系ホットメルトMが塗工された面と剥離シートTとを向かい合わせた状態で、両者をニップロール5及び6の間を通過させる。これにより、フィルター層Sと剥離シートTとが積層されて貼り合わされたフィルター構造体Fを得ることができる。
【0034】
しかる後、製造された長尺のフィルター構造体Fは、必要に応じ所定寸法に切断されて製品化され、剥離シート付きフィルター製品として販売される。使用に際しては、作業現場において、剥離シートTを剥離し、不織布等からなるフィルター層S部分を、粘着剤層Nを使用して、対象物に貼着する。
【0035】
図4は、本発明の実施の形態による通気性製品を製造するための製造装置の別態様を示す概略図である。図4を参照して、この製造装置Qは、フィルター層Sの供給手段、剥離シートTの供給手段、アクリル系ホットメルトMの供給手段、アクリル系ホットメルトMを剥離シートTに塗布するための塗布手段、及び、フィルター層Sを粘着剤層に押圧するための押圧手段のほかに、粘着剤層の一部のみがフィルター層Sの隙間に侵入するように粘着剤層の硬度を調整するための硬度調整手段を備える。フィルター層Sは例えば不織布であり、剥離シートTは例えばPETフィルムである。フィルター層Sの供給手段は、フィルター層Sの搬送速度を調節しつつ供給するための供給ロール10及び11とフィルター層Sを搬送するための搬送ロール12、13及び14とを備え、アクリル系ホットメルトMの供給手段は、アクリル系ホットメルトMを貯留させつつ送り出すためのホットメルト供給ロール2及び補助ロール1を備え、塗布手段は、ホットメルト供給ロール2から供給されるアクリル系ホットメルトMを塗布して所定のパターンの粘着剤層Nを形成するための塗布ロール3及びバックアップロール4を備え、押圧手段は、フィルター層Sを剥離シートTに積層して押圧することにより両者を貼り合わせるためのニップロール5及び6を備える。硬度調整手段は、剥離シートTにおける粘着剤層Nが形成された面とは反対側の面に接する金属製ロール7を備える。尚、剥離シートTの供給手段については、公知の機構を使用することができ、図示は省略した。補助ロール1、ホットメルト供給ロール2、塗布ロール3及びバックアップロール4は隣接して配置されると共に、連動して回転するように構成される。
【0036】
ホットメルト供給ロール2と補助ロール1との突き合わせ部分の上部に、溶融状態のアクリル系ホットメルトMが貯留される。ホットメルト供給ロール2を回転させると、その表面に付着したアクリル系ホットメルトMが、これに接する塗布ロール3の表面へ移行する。アクリル系ホットメルトMの移行量は、ホットメルト供給ロール2と補助ロール1との間隙寸法を調節することで制御することができる。塗布ロール3は、グラビアロールや凸版ロール等、公知の印刷用ロールを使用することができる。又、塗布ロール3の表面を金属表面とすることにより剥離性を高めて、塗布ロール3から剥離シートTへのアクリル系ホットメルトMの移行を円滑にしている。ホットメルト供給ロール2から移行したアクリル系ホットメルトMを表面に付着させた塗布ロール3とバックアップロール4との間に剥離シートTを通過させると、剥離シートTの一方面にアクリル系ホットメルトMが塗布されて、粘着剤層Nを形成することができる。粘着剤層Nは、文字や図柄等の形態とすることもできる。剥離シートTにおける粘着剤層Nが形成された面とは反対側の面に接触させる金属製ロール7は、銅、真鍮、アルミニウム、鉄、ステンレス等の熱伝導率の高い金属で製作される。材質と外形寸法とを適宜選択することにより、熱容量を設定することができる。金属製ロール7と剥離シートTとの接触面積は、金属製ロール7の直径や、剥離シートTの経路に対する金属製ロール7の位置等によって設定することができる。金属製ロール7に、適宜の放熱機構や冷却機構を備えてもよい。尚、金属製ロール7は、離型シートに張力を付与するテンサーの機能を持たせることも可能である。
【0037】
次に、上記製造装置Qを用いたフィルター構造体Fの製造方法について述べる。図4を参照して、ホットメルト供給ロール2を回転させることにより、ホットメルト供給ロール2と補助ロール1との突き合わせ部分の上部に貯留させた溶融状態のアクリル系ホットメルトMが、ホットメルト供給ロール2に接する塗布ロール3の表面へ移行する。そして、供給手段から供給される剥離シートTを、塗布ロール3とバックアップロール4との間を通過させることにより、剥離シートTの一方面に所定パターンでアクリル系ホットメルトMが塗布され、所定パターンの粘着剤層Nが剥離シートT上に形成される。次いで粘着剤層Nが形成された剥離シートTは、金属製ロール7の位置まで搬送され、粘着剤層Nが形成されていない側の面を、金属製ロール7と係合させる。金属製ロール7は、粘着剤層Nの温度よりも低温であり、熱伝導率に優れると共に、十分な熱容量を備えるように構成される。従って、剥離シートT上の軟化状態にある粘着剤層Nが、剥離シートTを介して金属製ロール7によって冷却されるため、粘着剤層Nのうち剥離シートTの近傍領域は、温度低下により硬度を増大させた硬度増大領域となる。これに対し、粘着剤層Nにおける剥離シートTから離れた表面側領域は、流動性を有する軟化状態領域に維持される。剥離シートTと金属製ロール7との接触は、どの部分でもほぼ均一な状態になるから、この接触によりもたらされる粘着剤層Nの温度低下はほぼ均一に実行され、粘着剤層Nは、剥離シートTの近傍領域から表面側領域にかけて硬度が連続的に変化した状態となり、且つ、この変化状態は、粘着剤層Nの長手方向に沿ってほぼ均等である。尚、粘着剤層Nの硬度変化状態は、金属製ロール7の温度、熱伝導率、熱容量、剥離シートTとの接触面積及び接触時間等を調整することによって容易に制御することが可能である。従って、硬度変化状態を制御することにより、後述の工程において、粘着剤層Nがフィルター層S内に侵入する割合と、フィルター層Sの表面側に位置する厚みとを調整することができる。
【0038】
このようにして、粘着剤層Nの硬度が調整された剥離シートTは、ニップロール5及び6の位置まで搬送される。他方、フィルター層Sも、供給ロール10及び11、搬送ロール12、13及び14によって、ニップロール5及び6の位置まで搬送される。このとき、フィルター層Sと剥離シートTの搬送速度は、ニップロール5及び6の位置で一致するように制御される。ニップロール5及び6に供給されるフィルター層S及び剥離シートTは、剥離シートTの粘着剤層Nが形成された面にフィルター層Sを向き合わせた状態で、両者をニップロール5及び6の間を通過させる。これにより、剥離シートT上の粘着剤層Nがフィルター層Sに押圧され、両者が一体化したフィルター構造体Fが製造される。
【0039】
ところで本例のフィルター構造体Fは、フィルター層Sの全面に粘着剤層Nを形成せずに、パターンコートにより、部分的にアクリル系ホットメルトMを塗布してもよい。アクリル系ホットメルトMの好ましい塗布量は、20~50g/m、より好ましくは25~35g/mである。又、フィルター層Sに対する粘着剤層Nの好ましい塗布率は、5~95%の範囲であって、より好ましくは30~90%の範囲、更に好ましくは40~80%の範囲である。塗布量及び塗布率を上記の範囲に設定することにより、粘着剤増どうしが粘着面で貼り付く問題が起きる可能性を低くできると共に、対象部に対する取付信頼性を確保できる。但し、上記の数値は、フィルター構造体Fの用途や大きさに応じ、適宜変更され得るものである。
【0040】
本発明のフィルター構造体は、例えば台所や厨房のレンジフード、エアコン、換気扇等の家庭用機器、屋内外に設置される通気口等の他、工業用機器における通気個所におけるエアフィルター製品として広く使用することができる。この場合、図1に示すように、アクリル系ホットメルトMで形成する粘着剤層Nによって、フィルターの交換時期を表示する文字L等を表記してもよい。フィルター層Sが、文字L等以外の部分で空気中の塵埃を捕捉することによって着色される結果、使用開始前には殆ど判別できなかった無色の文字L等が、使用時間の経過に伴い周囲が着色されることによって文字L等が白抜き文字の状態となり、明瞭に読み取ることができるようになる。従って、文字L等によって表示される内容を、フィルター交換時期を示すものとしておくことによって、フィルター交換時期を使用者に表示することができる。
【0041】
尚、フィルター層に、静電力により効果的に超微粒子を除去できる機能を持った静電フィルターを用いることもできる。静電フィルターとしては、例えば、ポリプロピレン不織布にコロナ放電処理などを行うことによって帯電加工を施したもの、羊毛繊維を含む不織布に樹脂加工を施したものになめし工程で帯電処理を施したもの、ポリプロピレン樹脂の表面がポリエチレン樹脂で被覆された芯鞘型複合繊維に対し印加電極を用いて直流高電界を発生させることにより繊維表面を分極荷電させたものなどが知られている。フィルター層を静電フィルターとすることにより、粒子径が2.5μm以下のPM2.5と呼ばれる超微粒子の除去が可能となる。
【0042】
又、フィルター層を静電フィルターとする場合に、従来、粘着剤層に溶剤系粘着剤を使用した場合に生じていたPM2.5に対する捕集効率の低下を、アクリル系ホットメルトを使用した場合は抑制できるので、本発明は、PM2.5に対する優れた捕集効果を有するフィルター構造体を提供できるという利点を有している。
【0043】
尚、本発明のフィルター構造体は、適用対象物として、表面に、アルミニウム-亜鉛合金メッキ等のメッキ、又は、ポリエステル塗装等の塗装が施されているものを選択することができる。特に、一般に汎用されているレンジフードは鋼板の表面に各種メッキやポリエステル製の塗装が施されたものから構成されていることが多いが、本発明のフィルター構造体は、上記のようなメッキ又は塗装が表面に施された対象物に適用することで、取り外した時の糊残りの発生をより抑制することができる。
【0044】
又、本発明のフィルター構造体は、フィルター層の少なくとも一方の長さが、例えば25cm以上の比較的大型の製品を対象とするとことができる。これは、フィルター層の少なくとも一方の長さが30cm以上、更には35cm以上、とフィルター構造体が大型の製品になるほど、取付対象物への貼付作業に際し、粘着剤層どうしが貼り付く問題が生じ易くなる。特にレンジフード、エアコン、空気清浄機等に用いる場合、使用されるフィルター構造体の大きさはそれぞれの機種により変わるが少なくとも一方の長さが数十cm以上の大型となることが一般的である。そこで、このような大型のフィルター構造体に本発明を適用すれば、粘着剤層どうしが貼り付いた場合でも、両者をきれいに引き剥がすことが容易になるという利点がより明確になる。
【実施例
【0045】
本発明のフィルター構造体によれば、粘着面どうしが貼り付いた粘着剤層に剥離力を与えたときに、剥離が容易であって、且つ、粘着面の損傷や破損の発生が抑えられるという効果が得られることを、試験により実証した。
【0046】
試料には、レンジフードの金属フィルター用を想定して作製したものであって、不織布からなるフィルター層の一方面にホットメルトで粘着剤層を形成したフィルター構造体を用いた。又、試験に使用したレンジフードとしては、富士工業製の型番「BDR-3HL-601BK」を用いた。
【0047】
試験は、1)最大剥離荷重、2)粘着剤層どうしの剥離状態、3)粘着剤層どうしの剥離試験後のフィルター層の状態、4)金属フィルターへの貼り付け直後の糊残り、の4種類について行った。
「最大剥離荷重」は、基本的な測定方法は「JIS Z 0237:2009」に準じて行ったものであるが、測定条件は後述する条件にて行った。試料を対象物に貼り付けた後、対象物から剥離するときの最大荷重を測定した。試験機として定速伸長形試験機を使用し、試料として巾5mm×長さ250mm及び巾10mm×長さ250mmのフィルター構造体(粘着剤層も同様の寸法)を準備した。貼り付ける対象面にはSUS304のステンレス鋼板を用いた。試験は、試料を上記の対象面に貼り付け、その表面を1kgのローラーで2往復した後、180度の方向へ100mm/分の剥離速度で剥離したときの最大荷重を測定するという方法で行った。
「粘着剤層どうしの剥離状態」は、粘着剤層どうしを貼り付けた後に両者を剥離したときの粘着面の表面状態を、目視観察により評価したものである。観察の結果、剥離後に粘着剤層の表面が損傷したり破損したりすることなくきれいに剥がれた状態を「○」、剥離後に粘着剤層の表面が損傷したり破損したりしたことが確認できた状態を「×」とした。
「粘着剤層どうしの剥離試験後のフィルター層の状態」は、剥離試験の終了後におけるフィルター層の状態を、目視観察により評価したものである。観察の結果、フィルター層の伸びや変形が無い状態を「○」、フィルター層に若干伸びや変形が認められるが、レンジフードのフィルター機能にほぼ問題が無い状態を「△」、フィルター層の伸びや変形が認められ、レンジフードのフィルター機能に問題が生じた状態を「×」と判定した。
「金属フィルターへの貼り付け直後の糊残り」は、レンジフードの金属フィルターにフィルター構造体を貼り付けた直後に剥離して、糊残りの有無を目視観察により判定したものである。
【0048】
試験結果を下記表1に示す。
【0049】
【表1】
表1の結果から、粘着剤層をアクリル系ホットメルトで形成した本発明の実施例1-7(試番1-7)に係るフィルター構造体は、最大剥離荷重が0.02-0.86N/5mm又は0.05-1.80N/10mmの範囲(1mm当たりに換算すると、0.004-0.18N/mm)であり、粘着面どうしが貼り付いた粘着剤層を剥離したときに、良好に分離することができると共に、粘着面が損傷を受けることがないことが判る。又、剥離後に、粘着剤層とフィルター層との結合部、及びフィルター層自体に、変形や伸びが生じることも抑制されていることが理解される。
【0050】
これに対し、ホットメルトであっても、非アクリル系のもので粘着剤層を形成した比較例1-6(試番9-14)にあっては、最大剥離荷重が本発明の実施例と同様の範囲内にあるが、粘着面どうしが貼り付いた粘着剤層を剥離したときに、粘着面が損傷したり破壊されたりするものとなっている。又、金属フィルターに対する糊残りも生じ易くなっている。
【0051】
尚、参考例から理解されるように、本発明と同じくアクリル系ホットメルトで粘着剤層を形成した場合でも、最大剥離荷重が0.96N/5mm(=0.192N/mm)及び2.00N/10(=0.2N/mm)となっており、いずれも0.18N/mmを超えているときには、剥離後の粘着面に損傷や破損が生じなくても、フィルター層に悪影響が及ぼされることが判る。
【符号の説明】
【0052】
F…フィルター構造体
P…製造装置
Q…製造装置
M…アクリル系ホットメルト
N…粘着剤層
n1、n2…粘着面
L…文字
S…フィルター層
T…剥離シート
1…補助ロール
2…ホットメルト供給ロール
3…塗布ロール
4…バックアップロール
5、6…ニップロール
7…金属ロール
10、11…供給ロール
12、13、14…搬送ロール
尚、各図中同一符号は同一又は相当部分を示す。
図1
図2
図3
図4