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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-19
(45)【発行日】2023-12-27
(54)【発明の名称】有機電界発光素子及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H10K 85/60 20230101AFI20231220BHJP
   C09K 11/06 20060101ALI20231220BHJP
   H10K 50/12 20230101ALI20231220BHJP
   H10K 71/16 20230101ALI20231220BHJP
   H10K 85/30 20230101ALI20231220BHJP
   H10K 101/10 20230101ALN20231220BHJP
   H10K 101/25 20230101ALN20231220BHJP
【FI】
H10K85/60
C09K11/06 660
C09K11/06 690
H10K50/12
H10K71/16
H10K85/30
H10K101:10
H10K101:25
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019170566
(22)【出願日】2019-09-19
(65)【公開番号】P2020053683
(43)【公開日】2020-04-02
【審査請求日】2022-08-25
(31)【優先権主張番号】10-2018-0113538
(32)【優先日】2018-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】512187343
【氏名又は名称】三星ディスプレイ株式會社
【氏名又は名称原語表記】Samsung Display Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】1, Samsung-ro, Giheung-gu, Yongin-si, Gyeonggi-do, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110002619
【氏名又は名称】弁理士法人PORT
(72)【発明者】
【氏名】キム ミンキュン
【審査官】辻本 寛司
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2015-0129928(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0179401(US,A1)
【文献】国際公開第2016/042997(WO,A1)
【文献】特開2016-110978(JP,A)
【文献】特開2013-125653(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0133853(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0200373(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0124766(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0118590(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10K 85/60
C09K 11/06
H10K 50/12
H10K 71/16
H10K 85/30
H10K 101/10
H10K 101/25
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極と、
前記第1電極の上に配置された第2電極と、
前記第1電極と前記第2電極との間に配置され、下記化学式1で表される第1ホスト、下記化学式2-1~化学式2-5のうちいずれか一つで表される第2ホスト、および下記D1~D3のうちいずれか一つで表されるりん光ドーパントを含む発光層と、を含み、
前記第1ホスト及び前記第2ホストの重量比は、60:30~75:15である、有機電界発光素子。
【化1】

【化2】





【化3】

(前記化学式1において、
~Rはそれぞれ独立して重水素原子、ハロゲン原子、置換若しくは無置換のシリル基、置換若しくは無置換のゲルミル基、置換若しくは無置換の炭素数1以上20以下のアルキル基、置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、または置換若しくは無置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリール基であり、
a及びbはそれぞれ独立して0以上7以下の整数であり、
c及びdはそれぞれ独立して0以上4以下の整数であり、
前記化学式2-1~化学式2-5において、
X及びYのうちいずれか一つはNRであり、残りはCRまたはSiRであり、
~R、及びR11~R60は、それぞれ独立して水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、置換若しくは無置換のシリル基、置換若しくは無置換の炭素数1以上20以下のアルキル基、置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下の炭化水素環基、または置換若しくは無置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロ環基である。)
【請求項2】
前記化学式1は、下記化学式1-1または下記化学式1-2で表される、請求項1に記載の有機電界発光素子。
【化4】

【請求項3】
前記第1ホストは、下記第1化合物群の化合物のうち少なくとも一つを含む、請求項1に記載の有機電界発光素子。
[第1化合物群]
【化5】






【請求項4】
前記第2ホストは、下記化学式H2-1~化学式H2-12で表される化合物のうち少なくとも一つを含む、請求項1に記載の有機電界発光素子。
【化6】


【請求項5】
前記R~R、及び前記R11~R60のうち少なくとも一つは、下記H1~H110のうちいずれか一つで表される、請求項に記載の有機電界発光素子。
【化7】



【請求項6】
記第1ホスト及び前記第2ホスト全体と前記ドーパントの重量比は、59:41~95:5である、請求項1に記載の有機電界発光素子。
【請求項7】
前記発光層は、緑色波長領域の光を放出する、請求項1に記載の有機電界発光素子。
【請求項8】
第1電極の上に正孔輸送領域を形成し、
前記正孔輸送領域の上に第1ホスト、第2ホスト、及びドーパントを含む発光層を形成し、
前記発光層の上に電子輸送領域を形成し、
前記電子輸送領域の上に第2電極を形成すること、
を含む、請求項1~のうちいずれか一項に記載の有機電界発光素子の製造方法。
【請求項9】
前記発光層を形成することは、
前記第1ホストと前記第2ホストとを混合して混合ホストを製造し、
前記混合ホストと前記ドーパントを共蒸着すること、を含む、請求項に記載の有機電界発光素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機電界発光素子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、映像表示装置として、有機電界発光表示装置(Organic Electroluminescence Display)の開発が活発に行われている。有機電界発光表示装置は液晶表示装置などとは異なって、第1電極及び第2電極から注入された正孔及び電子を発光層において再結合させることで、発光層において有機化合物を含む発光材料を発光させて表示を実現するいわゆる自発光型の表示装置である。
【0003】
有機電界発光素子を表示装置に応用するに際しては、有機電界発光素子の低駆動電圧化、高発光効率化、及び長寿命化が要求されており、これを安定的に実現し得る有機電界発光素子用材料及び素子構成に対する開発が持続的に要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】韓国公開特許第2016-0036159
【文献】韓国公開特許第2017-0047653
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的の一つは、発光効率及び素子寿命が改善された有機電界発光素子を提供することである。
【0006】
本発明の他の目的は、発光効率及び素子寿命が改善された有機電界発光素子を製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態によれば、第1電極と、前記第1電極の上に配置された第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に配置され、下記化学式1で表される第1ホスト、及び下記化学式2-1~化学式2-5のうちいずれか一つで表される第2ホストを含む発光層と、を含む有機電界発光素子が提供される。
【化1】

【化2】


前記化学式1において、R~Rはそれぞれ独立して重水素原子、ハロゲン原子、置換若しくは無置換若しくは無置換のシリル基、置換若しくは無置換のゲルミル基、置換若しくは無置換の炭素数1以上20以下のアルキル基、置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、または置換若しくは無置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリール基であり、a及びbはそれぞれ独立して0以上7以下の整数であり、c及びdはそれぞれ独立して0以上4以下の整数である。前記化学式2-1~化学式2-5において、X及びYのうちいずれか一つはNRであり、残りはCRまたはSiRであり、R~R、及びR11~R60はそれぞれ独立して水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、置換若しくは無置換のシリル基、置換若しくは無置換の炭素数1以上20以下のアルキル基、置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下の炭化水素環基、または置換若しくは無置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロ環基である。
【0008】
前記発光層において、前記第1ホストの含量は前記第2ホストの含量より多くてもよい。
【0009】
前記第1ホスト及び前記第2ホストの重量比は、50:40~80:10であってもよい。
【0010】
前記第1ホストと前記第2ホストは、エキサイプレックス(exciplex)を形成してもよい。
【0011】
前記化学式1は、下記化学式1-1または化学式1-2で表されてもよい。
【化3】

前記化学式1-1及び化学式1-2において、R、R、a、及びbは前記化学式1で定義したとおりである。
【0012】
前記第1ホストは、下記第1化合物群の化合物のうち少なくとも一つを含んでもよい。
[第1化合物群]
【化4】







【0013】
前記第2ホストは、下記化学式H2-1~化学式H2-12で表される化合物のうち少なくとも一つを含んでもよい。
【化5】

前記化学式H2-1~化学式H2-12において、R~R、及びR11~R60は、前記化学式2-1~化学式2-5で定義したとおりである。
【0014】
~R、及びR11~R60のうち少なくとも一つは、下記H1~H110のうちいずれか一つで表されてもよい。尚、―*は、結合位置を示す。
【化6】


【0015】
前記発光層はドーパントを更に含み、前記第1ホスト及び前記第2ホスト全体と前記ドーパントの重量比は59:41~95:5であってもよい。
【0016】
前記ドーパントは、Ir、Os、Pt、またはPdを中心原子として含む金属錯体であってもよい。
【0017】
前記発光層は、下記D1~D3のうちいずれか一つで表されるりん光ドーパントを更に含んでもよい。
【化7】
【0018】
前記発光層は、りん光発光してもよい。
【0019】
前記発光層は、緑色波長領域の光を放出してもよい。
【0020】
本発明の一実施形態によると、第1電極と、前記第1電極の上に配置された正孔輸送領域と、前記正孔輸送領域の上に配置され、下記化学式1で表される第1ホスト、下記化学式2-1~化学式2-5のうちいずれか一つで表される第2ホスト、及びりん光ドーパントを含む発光層と、前記発光層の上に配置された電子輸送領域と、前記電子輸送領域の上に配置された第2電極と、を含む有機電界発光素子が提供される。
【化8】

【化9】


前記化学式1において、R~Rはそれぞれ独立して重水素原子、ハロゲン原子、置換若しくは無置換のシリル基、置換若しくは無置換のゲルミル基、置換若しくは無置換の炭素数1以上20以下のアルキル基、置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、または置換若しくは無置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリール基であり、a及びbはそれぞれ独立して0以上7以下の整数であり、c及びdはそれぞれ独立して0以上4以下の整数である。前記化学式2-1~化学式2-5において、X及びYのうちいずれか一つはNRであり、残りはCRまたはSiRであり、R~R、及びR11~R60はそれぞれ独立して水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、置換若しくは無置換のシリル基、置換若しくは無置換の炭素数1以上20以下のアルキル基、置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下の炭化水素環基、または置換若しくは無置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロ環基である。
【0021】
前記第1ホスト及び前記第2ホストの重量比は、50:40~80:10であってもよい。
【0022】
前記発光層は、緑色光を放出してもよい。
【0023】
本発明の他の実施形態によれば、第1電極の上に正孔輸送領域を形成し、前記正孔輸送領域の上に第1ホスト、第2ホスト、及びドーパントを含む発光層を形成し、前記発光層の上に電子輸送領域を形成し、前記電子輸送領域の上に第2電極を形成し、を含み、前記第1ホストは上述した化学式1で表され、前記第2ホストは上述した化学式2-1~化学式2-5のうちいずれか一つで表される有機電界発光素子の製造方法が提供される。
【0024】
前記発光層を形成することは、前記第1ホストと前記第2ホストを混合して混合ホストを製造し、前記混合ホストと前記ドーパントとを共蒸着すること、を含んでもよい。
【0025】
前記混合ホストは、前記第1ホスト及び前記第2ホストを50:40~80:10の重量比で含んでもよい。
【0026】
前記混合ホストと前記ドーパントの重量比は、59:41~95:5であってもよい。
【発明の効果】
【0027】
本発明の一実施形態による有機電界発光素子は、発光層に2つ以上の異なるホスト材料を全て含むことにより、低い駆動電圧、長寿命、及び高効率の改善された素子特性を示す。
【0028】
本発明の一実施形態による有機電界発光素子の製造方法は、発光層を2つの異なるホスト材料及びドーパントを全て含むように形成することで、改善された素子特性を示すようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の一実施形態による有機電界発光素子を概略的に示す断面図である。
図2】本発明の一実施形態による有機電界発光素子を概略的に示す断面図である。
図3】本発明の一実施形態による有機電界発光素子を概略的に示す断面図である。
図4】本発明の一実施形態による有機電界発光素子の製造方法を概略的に示す順序図である。
図5】本発明の一実施形態による有機電界発光素子の製造方法を概略的に示す順序図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明は、多様な変更を加えることができ、多様な形態を有することができるため、特定の実施形態を図面に例示し、本文に詳細に説明する。しかし、これは本発明を特定な開示形態に対して限定しようとするものではなく、本発明の思想及び技術範囲に含まれる全ての変更、均等物乃至代替物を含むと理解すべきである。
【0031】
同じ図面符号は同じ構成要素を指す。また、図面において、構成要素の厚さ、割合、及び寸法は技術的内容の効果的な説明のために誇張されている。
【0032】
本明細書において、ある構成要素(または領域、層、部分など)が他の構成要素の「上にある」、または「結合される」と言及されれば、それは他の構成要素の上に直接配置・結合され得るか、またはそれらの間に第3の構成要素が配置され得ることを意味する。
【0033】
「及び/または」は、関連する構成が定義する一つ以上の組み合わせを全て含む。
【0034】
第1、第2などの用語は多様な構成要素を説明するために使用されるが、構成要素は用語に限らない。用語は一つの構造要素を他の構成要素から区別する目的にのみ使用される。例えば、本発明の権利範囲を逸脱しないかぎり第1構成要素は第2構成要素と称されてもよく、同様に第2構成要素も第1構成要素と称されてもよい。単数の表現は、文脈上明白に異なる意味にならない限り、複数の表現を含む。
【0035】
また、「下に」、「下側に」、「上に」、「上側に」などの用語は、図面に示した構成の関係を説明するために使用される。これらの用語は相対的な概念であって、図面に示した方向を基準に説明される。
【0036】
異なるように定義されない限り、本明細書で使用された全ての用語(技術的及び科学的用語を含む)は、本発明の属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。また、一般的に使用される辞書に定義されている用語は、関連技術の脈絡での意味と一致する意味を有すると解釈すべきであり、理想的な、または過度に形式的な意味に解釈されない限り、明示的にここで定義される。
【0037】
「含む」または「有する」などの用語は明細書の上に記載された特徴、数字、工程、動作、構成要素、部品またはこれらを組み合わせたものが存在することを意味するものであって、一つまたはそれ以上の他の特徴や数字、工程、動作、構成要素、部分品またはこれらを組み合わせたものの存在または付加可能性を予め排除しないと理解すべきである。
【0038】
本明細書において、「置換若しくは無置換の」とは重水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、シリル基、オキシ基、チオ基、スルフィニル基、スルホニル基、カルボニル基、ボリル基、ホスフィンオキシド基、ホスフィンスルフィド基、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、炭化水素環基、アリール基、及びヘテロ環基からなる群より選択される一つ以上の置換基に置換される、若しくは無置換であることを意味する。また、以上に例示された置換基それぞれは、置換若しくは無置換である。例えば、ビフェニル基はアリール基と解釈されてもよく、フェニル基に置換されたフェニル基と解釈されてもよい。
【0039】
本明細書において、ハロゲン原子の例としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、またはヨウ素原子が挙げられる。
【0040】
本明細書において、アルキル基は直鎖、分枝鎖、または環状であってもよい。アルキル基の炭素数は、1以上50以下、1以上30以下、1以上20以下、1以上10以下、または1以上6以下である。アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、i-ブチル基、2-エチルブチル基、3、3-ジメチルブチル基、n-ペンチル基、i-ペンチル基、ネオペンチル基、t-ペンチル基、シクロペンチル基、1-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、2-エチルペンチル基、4-メチル-2-ペンチル基、n-ヘキシル基、1-メチルヘキシル基、2-エチルヘキシル基、2-ブチルヘキシル基、シクロヘキシル基、4-メチルシクロヘキシル基、4-t-ブチルシクロヘキシル基、n-ヘプチル基、1-メチルペプチル基、2、2-ジメチルヘプチル基、2-エチルヘプチル基、2-ブチルヘプチル基、n-オクチル基、tーオクチル基、2-エチルオクチル基、2-ブチルオクチル基、2-ヘキシルオクチル基、3、7-ジメチルオクチル基、シクロオクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、アダマンチル基、2-エチルデシル基、2-ブチルデシル基、2-ヘキシルデシル基、2-オクチルデシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、2-エチルドデシル基、2-ブチルドデシル基、2-ヘキシルドデシル基、2-オクチルデシル基、n-トリデシル基、n-テトラデシル基、n-ペンタデシル基、n-ヘキサデシル基、2-エチルヘキサデシル基、2-ブチルヘキサデシル基、2-ヘキシルヘキサデシル基、2-オクチルヘキサデシル基、n-ヘプタデシル基、n-オクタデシル基、n-ノナデシル基、n-イコシル基、2-エチルイコシル基、2-ブチルイコシル基、2-ヘキシルイコシル基、2-オクチルイコシル基、n-ヘンイコシル基、n-ドコシル基、n-トリコシル基、n-テトラコシル基、n-ペンタコシル基、n-ヘキサコシル基、n-ヘプタコシル基、n-オクタコシル基、n-ノナコシル基、及びn-トリアコンチル基などが挙げられるが、これらに限らない。
【0041】
本明細書において、炭化水素環は、脂肪族炭化水素環及び芳香族炭化水素環を含む。ヘテロ環は、脂肪族ヘテロ環及び芳香族ヘテロ環を含む。炭化水素環及びヘテロ環は、単環または多環である。
【0042】
本明細書において、炭化水素環基は、脂肪族炭化水素環から誘導された任意の作用基または置換基、または芳香族炭化水素環から誘導された任意の作用基または置換基である。炭化水素環基の環形炭素数は、5以上60以下である。
【0043】
本明細書において、ヘテロ環基は、少なくとも一つのヘテロ原子を環形成原子として含むヘテロ環から誘導された任意の作用基または置換基である。ヘテロ環基の環形炭素数は、2以上60以下である。
【0044】
本明細書において、アリール基は、芳香族炭化水素環から誘導された任意の作用基または置換基を意味する。アリール基は、単環式アリール基または多環式アリール基である。アリール基の環形成炭素数は、6以上30以下、6以上20以下、または6以上15以下である。アリール基の例としては、フェニル基、ナフチル基、フルオレニル基、アントラセニル基、フェナントリル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基、クォーターフェニリル基、クインクフェニリル基、セクシフェニリル基、トリフェニレニル基、ピレニル基、ベンゾフルオランテニル基、クリセニル基などが挙げられるが、これに限らない。
【0045】
本明細書において、ヘテロアリール基は、ヘテロ原子としてB、O、N、P、Si、及びSのうち一つ以上を含む。ヘテロアリール基がヘテロ原子を2つ以上含む場合、2つ以上のヘテロ原子は互いに同じであってもよく、異なってもよい。ヘテロアリール基は、単環式へテロ環基または多環式へテロ環基である。ヘテロアリール基の環形成炭素数は、2以上30以下、2以上20以下、または2以上10以下である。ヘテロアリール基の例としては、チオフェニル基、フラニル基、ピロリル基、イミダゾリル基、チアゾリル基、オキサゾリル基、オキサジアゾリル基、トリアゾリル基、ピリジニル基、ビピリジニル基、ピリミジニル基、トリアジニル基、アクリジニル基、ピリダジニル基、キノリニル、キナゾリル基、キノキサリニル基、フェニキサジニル基、フタラジニル基、ピリドピリミジニル基、ピリドピラジニル基、ピラジノピラジニル基、イソキノリニル基、インドリル基、カルバゾリル基、N-アリールカルバゾリル基、N-ヘテロアリールカルバゾリル基、N-アルキルカルバゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾカルバゾリル基、ベンゾチオフェニル基、ジベンゾチオフェニル基、チエノチオフェニル基、ベンゾフラニル基、フェナントロリニル基、イソオキサゾリル基、チアジアゾリル基、フェノチアジニル基、ジベンゾシロリル基、及びジベンゾフラニル基などが挙げられるが、これらに限らない。
【0046】
本明細書において、シリル基はアルキルシリル基及びアリールシリル基を含む。シリル基の例としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、t-ブチルジメチルシリル基、ビニルジメチルシリル基、プロピルジメチルシリル基、トリフェニルシリル基、ジフェニルシリル基、フェニルシリル基などが挙げられるが、これに限らない。
【0047】
【0048】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態による有機電界発光素子、及び一実施形態による有機電界発光素子の製造方法について説明する。
【0049】
図1図3は、本発明の一実施形態による有機電界発光素子を概略的に示す断面図である。図1図3を参照すると、一実施形態の有機電界発光素子10において、第1電極EL1及び第2電極EL2は互いに対向して配置され、第1電極EL1と第2電極EL2との間には複数の有機層が配置される。複数の有機層は正孔輸送領域HTR、発光層EML、及び電子輸送領域ETRを含む。つまり、本発明の一実施形態による有機電界発光素子10は、順次積層された第1電極EL1、正孔輸送領域HTR、発光層EML、電子輸送領域ETR、及び第2電極EL2を含む。
【0050】
一方、図2図1とは異なり、正孔輸送領域HTRが正孔注入層HIL及び正孔輸送層HTLを含み、電子輸送領域ETRが電子注入層EIL及び電子輸送層ETLを含む一実施形態による有機電界発光素子10の断面図を示す。また、図3図1とは異なり、正孔輸送領域HTRが正孔注入層HIL、正孔輸送層HTL、及び電子阻止層EBLを含み、電子輸送領域ETRが電子注入層EIL、電子輸送層ETL、及び正孔阻止層HBLを含む一実施形態による有機電界発光素子10の断面図を示す。
【0051】
第1電極層EL1は導電性を有する。第1電極層EL1は、金属合金または導電性化合物からなる。第1電極層EL1はアノード(anode)である。また、第1電極EL1は画素電極である。第1電極EL1は、透過型電極、半透過型電極、または反射型電極である。第1電極EL1が透過型電極であれば、第1電極EL1は、透明金属酸化物、例えば、ITO(indium tin oxide)、IZO(indium zinc oxide)、ZnO(zinc oxide)、ITZO(indium tin zinc oxide)などを含む。第1電極EL1が半透過型電極または反射型電極であれば、第1電極EL1は、Ag、Mg、Cu、Al、Pt、Pd、Au、Ni、Nd、Ir、Cr、Li、Ca、LiF/Ca、LiF/Al、Mo、Ti、またはこれらの化合物や混合物(例えば、AgとMgの合金)を含む。または、前記物質からなる反射膜や半透過膜、及びITO、IZO、ZnO、ITZOなどからなる透明導電膜を含む複数の層構造であってもよい。例えば、第1電極EL1は、ITO/Ag/ITOの3層構造を有してもよいが、これに限らない。第1電極EL1の厚さは、約100nm~約1000nm、例えば約100nm~約300nmであってもよい。
【0052】
正孔輸送領域HTRは、第1電極EL1の上に設けられる。正孔輸送領域HTRは、正孔注入層HIL、正孔輸送層HTL、正孔バッファ層(図示せず)、及び電子阻止層EBLのうち少なくとも一つを含む。正孔輸送領域HTRの厚さは、例えば、約5nm~約150nmであってもよい。
【0053】
正孔輸送領域HTRは、単一物質からなる単一層、複数の互いに異なる物質からなる単一層、または複数の互いに異なる物質からなる複数の層を有する多層構造を有する。
【0054】
例えば、正孔輸送領域HTRは、正孔注入層HILまたは正孔輸送層HTLの単一層の構造を有してもよく、正孔注入物質及び正孔輸送物質からなる単一層構造を有してもよい。また、正孔輸送領域HTRは、複数の互いに異なる物質からなる単一層の構造を有するか、第1電極EL1から順番に積層された正孔注入層HIL/正孔輸送層HTL、正孔注入層HIL/正孔輸送層HTL/正孔バッファ層(図示せず)、正孔注入層HIL/正孔バッファ層(図示せず)、正孔輸送層HTL/正孔バッファ層、または正孔注入層HIL/正孔輸送層HTL/正孔阻止層EBLの構造を有してもよいが、これらに限定されない。
【0055】
正孔輸送領域HTRは、真空蒸着法、スピンコート法、LB法(Langmuir-Blodgett)、インクジェットプリント法、レーザプリント法、レーザ熱転写法(Laser Induced Thermal Imaging、LITI)などのような多様な方法を利用して形成される。
【0056】
正孔注入層HTLは、例えば、銅フタロシアニンなどのフタロシアニン化合物と、DNTPD(N、N’-ジフェニル-N、N’-ビス-[4-フェニル-m-トリルーアミノ)-フェニル]-ビフェニル-4、4’-ジアミン)、m-MTDATA(4、4’、4”-トリス(3-メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミノ)、TDATA(4、4’、4”-トリス(N,N-ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン)、2-TNATA(4、4’、4”-トリス{N,-(2-ナフチル)-N-フェニルアミノ}-トリフェニルアミン)、PEDOT/PSS(ポリ(3、4-エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(4-スチレンスルフォナート)、PANI/DBSA(ポリアニリン/ドデシルベンゼンスルホン酸)、PANI/CSA(ポリアニリン/カンファースルホン酸)、PANI/PSS(ポリアニリン)/ポリ(4-スチレンスルフォナート)、NPB(N、N’-ジ(ナフタレン-1-イル)-N、N’-ジフェニル-ベンジジン)、トリフェニルアミンを含むポリエテールケトン(TPAPEK)、4-イソプロピル-4’-メチルジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、HAT-CN(ジピラジノ[2、3-f:2’、3’-h]キノキサリン-2、3、6、7、10、11-ヘキサカルボニトリル)などを含む。
【0057】
正孔輸送層HTLは、例えば、N-フェニルカルバゾール、ポリビニルカルバゾールなどのカルバゾール系誘導体、フルオレン系誘導体、TPD(N、N’-ビス(3-メチルフェニル)-N、N’-ジフェニル-[1、1-ビフェニル]-4、4’-ジアミン)、TCTA(4、4’、4”-トリス(N-カルバゾリル)トリフェニルアミン)などのようなトリフェニルアミン系誘導体、NPB(N、N’-ジ(ナフタレン-1-イル)-N、N’-ジフェニル-ベンジジン)、TAPC(4、4’-シクロへキシリデンビス[N、N-ビス(4-メチルフェニル)ベンゼンアミン])、HMTPD(4、4’-ビス[N、N’-(3-トリル)アミノ]-3、3’-ジメチルビフェニル)、mCP(1,3-ビス(N-カルバゾリル)ベンゼン)などを含む。
【0058】
正孔輸送領域HTRの厚さは、約5nm~約1000nm、例えば約10nm~約500nmである。正孔注入層HILの厚さは、例えば約3nm~約100nmであり、正孔輸送層HTLの厚さは、約1nm~約100nmである。例えば、電子阻止層EBLの厚さは、約1nm~約100nmであってもよい。正孔輸送領域HTR、正孔注入層HIL、正孔輸送層HTL、及び電子阻止層EBLの厚さが上述したような範囲を満たす場合、実質的な駆動電圧の上昇なしに満足できる程度の正孔輸送特性が得られる。
【0059】
正孔輸送領域HTRは、上述した物質以外に、導電性を向上するために電荷生成物質を更に含んでもよい。電荷発生物質は、正孔輸送領域HTR内に均一にまたは不均一に分散されている。電荷発生物質は、例えば、p-ドーパント(dopant)である。p-ドーパントは、キノン誘導体、金属酸化物、及びシアノ基含有化合物の一つであるが、これらに限らない。例えば、p-ドーパントの例としては、TCNQ(テトラシアノキノジメタン)及びF4-TCNQ(2,3,5,6-テトラフルオロ-7,7,8,8-テトラシアノキノジメタン)などのようなキノン誘導体、タングステン酸化物及びモリブデン酸化物のような金属酸化物などが挙げられるが、これらに限らない。
【0060】
上述したように、正孔輸送領域HTRは、正孔輸送層HTL及び正孔注入層HIL以外に、正孔バッファ層(図示せず)及び電子阻止層EBLのうち少なくとも一つを更に含んでもよい。正孔バッファ層(図示せず)は、発光層EMLから放出される光の波長による共振距離を補償して光放出効率を増加させる。正孔バッファ層(図示せず)に含まれる物質としては、正孔輸送領域HTRに含まれる物質を使用することができる。電子阻止層EBLは、電子輸送領域ETRから正孔輸送領域HTRへの電子の注入を防止する役割をする層である。
【0061】
発光層EMLは、正孔輸送領域HTRの上に設けられる。発光層EMLは、例えば、約10nm~約100nm、または約10nm~約50nmの厚さを有してもよい。発光層EMLは、単一物質からなる単一層、複数の互いに異なる物質からなる単一層、または複数の互いに異なる物質からなる複数の層を有する多層構造を有する。
【0062】
一実施形態による有機電界発光素子10において、発光層EMLは、下記化学式1で表される第1ホスト、及び後述する化学式2-1~化学式2-5のうちいずれか一つで表される第2ホストを含む。
【化10】
【0063】
化学式1において、R~Rはそれぞれ独立して重水素原子、ハロゲン原子、置換若しくは無置換のシリル基、置換若しくは無置換のゲルミル基、置換若しくは無置換の炭素数1以上20以下のアルキル基、置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、または置換若しくは無置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリール基である。
【0064】
化学式1において、a及びbはそれぞれ独立して0または7以下の整数であり、c及びdはそれぞれ独立して0以上4以下の整数である。a~dがそれぞれ2以上の整数であれば、複数のRa~Rdはそれぞれ同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0065】
化学式1において、c及びdは0であってもよい。
【0066】
化学式1で表わされる化合物は、下記化学式1-1または化学式1-2で表される化合物であってもよい。つまり、発光層EMLに含まれる第1ホストは、下記化学式1-1または化学式1-2で表される化合物を少なくとも一つ含んでもよい。
【化11】
【0067】
化学式1-1~化学式1-2において、R、R、a、及びbに関しては上述した化学式1で説明した内容と同じ内容が適用される。
【0068】
つまり、一実施形態に係る有機電界発光素子10において、発光層EMLは、アントラセンコアを有する第1ホストを含む。例えば、一実施形態に係る有機電界発光素子10において、発光層EMLは、2つの置換若しくは無置換のナフチル基に置換されたアントラセンコアを有する第1ホストを含んでもよい。
【0069】
一実施形態に係る有機電界発光素子10において、発光層EMLは、第1ホストとして下記第1化合物群の化合物うち少なくとも一つを含んでもよい。
【0070】
[第1化合物群]
【化12】






【0071】
第1化合物群に開示された化合物H1-1~化合物H1-45において、「D」は重水素原子を示し、「Ph」はフェニル基を示し、「TMS」はトリメチルシリル基を示す。
【0072】
一実施形態に係る有機電界発光素子10において、発光層EMLに含まれる第2ホストは、下記化学式2-1~化学式2-5のうちいずれか一つで表される。
【化13】

【0073】
化学式2-1~化学式2-5において、X及びYのうちいずれか一つはNRであり、残りはCRまたはSiRである。化学式2-1~化学式2-5において、R~R、及びR11~R60は、それぞれ独立して水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、置換若しくは無置換のシリル基、置換若しくは無置換の炭素数1以上20以下のアルキル基、置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下の炭化水素環基、または置換若しくは無置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロ環基である。
【0074】
例えば、R~R、及びR11~R60は、それぞれ独立して水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、置換若しくは無置換のシリル基、置換若しくは無置換の炭素数1以上10以下のアルキル基、置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、または置換若しくは無置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリール基であってもよい。
【0075】
~R、及びR11~R60は、それぞれ独立して置換若しくは無置換のメチル基、置換若しくは無置換のエチル基、置換若しくは無置換のプロピル基、置換若しくは無置換のブチル基、置換若しくは無置換のペンチル基、置換若しくは無置換のヘキシル基、置換若しくは無置換のエチルヘキシル基、置換若しくは無置換のヘプチル基、置換若しくは無置換のオクチル基などのアルキル基であってもよい。
【0076】
~R、及びR11~R60は、それぞれ独立して置換若しくは無置換のフェニル基、置換若しくは無置換のナフチル基、置換若しくは無置換のフルオレニル基、置換若しくは無置換のビフェニリル基、置換若しくは無置換のフェナントリル基、置換若しくは無置換のターフェニリル基、置換若しくは無置換のピレニル基、置換若しくは無置換のペリレニル基、置換若しくは無置換のスフィロビフルオレニル基、置換若しくは無置換のフルオランテニル基、置換若しくは無置換のクリセニル基、置換若しくは無置換のトリフェニレニル基などのアリール基であってもよい。しかし、これらに限らない。
【0077】
また、R~R、及びR11~R60のうち少なくとも一つは、窒素原子を環形成原子として含む置換若しくは無置換のヘテロ環基であってもよく、または置換若しくは無置換のアリールアミノ基であってもよい。
【0078】
例えば、一実施形態によれば、R~R、及びR11~R60のうち少なくとも一つは、下記H1~H110のうちいずれか一つであってもよい。
【0079】
【化14】




【0080】
一実施形態に係る有機電界発光素子10において、発光層EMLは、第2ホストとして下記H2-1~H2-12で表される化合物のうち少なくとも一つを含んでもよい。言い換えれば、化学式2-1~化学式2-5で表わされる化合物は、下記H2-1~H2-12のうちいずれか一つで表される化合物であってもよい。
【0081】
例えば、化学式2-1で表わされる化合物は、下記化学式H2-1~化学式H2-4で表わされる化合物のうちいずれか一つでもよい。また、化学式2-2で表わされる化合物は、下記化学式H2-5または化学式H2-6で表わされる化合物であってもよく、化学式2-3で表わされる化合物は、化学式H2-7または化学式H2-8で表わされる化合物であってもよい。化学式2-4で表わされる化合物は、下記化学式H2-9または化学式H2-10で表わされる化合物であってもよく、化学式2-5で表わされる化合物は、下記化学式H2-11または化学式H2-12で表わされる化合物であってもよい。
【化15】

【0082】
化学式H2-1~化学式H2-12において、R~R、及びR11~R60に関しては、上述した化学式2-1~化学式2-5で説明した内容と同じ内容が適用される。
【0083】
一実施形態に係る有機電界発光素子10において、発光層EMLは、化学式1で表される第1ホストと、化学式2-1~化学式2-5のうちいずれか一つで表される第2ホストを同時に含む。
【0084】
つまり、一実施形態に係る有機電界発光素子10は、発光層EMLに第1ホスト及び第2ホストを両方含むことにより、第1ホストまたは第2ホストのみを単独に使用した場合に比べ、優れた発光効率を維持しながら素子の寿命も向上させる効果を奏する。一実施形態に係る有機電界発光素子10は、第1ホスト及び第2ホストを両方含むことにより、発光層EMLへの正孔と電子の注入を容易にし、発光層EML内での電荷バランス(Charge balance)を高めて低い駆動電圧、高発光効率、及び長寿命特性を示す。
【0085】
一方、発光層EMLに含まれた第1ホスト及び第2ホストは、エキサイプレックスを形成する。互いに異なる特性を有する2つのホストである第1ホストと第2ホストが混合されたホスト物質によって生成されたエキサイプレックスは、発光層EML内において第1ホスト及び第2ホストそれぞれとは異なる新たなエネルギーレベルを有する。例えば、第1ホストと第2ホストが混合されたホスト物質によって生成されたエキサイプレックスは、第1ホスト及び第2ホストとは異なる新たな三重項(Triplet)エネルギーレベルを有する。
【0086】
一実施形態に係る有機電界発光素子10において、発光層EMLに含まれる第1ホストの含量は第2ホストの含量より多い。例えば、一実施形態に係る有機電界発光素子10において、発光層EMLは、第1ホスト及び第2ホストを50:40~80:10の重量比で含んでもよい。一実施形態に係る有機電界発光素子10において、発光層EMLは、第1ホスト及び第2ホストを50:40~80:10の重量比で含むことで、優れた発光効率を維持しながら素子寿命特性を改善する効果を奏する。
【0087】
一実施形態に係る有機電界発光素子10は、発光層EMLに第1ホスト及び第2ホスト以外にもドーパントを更に含む。一実施形態において、発光層EMLは、ホストとドーパントを59:41~95:5の重量比で含む。つまり、ホストの全体重量はドーパントの重量より多くなければならず、ドーパントがホスト及びドーパントの全体重量に比べ最小5%以上含まれれば適切な発光効率を実現することができるため、ホストとドーパントの重量比は59:41~95:5である。
【0088】
この際、ホストの重量は第1ホスト及び第2ホスト全体の重量に当たる。つまり、発光層EMLは、第1ホスト及び第2ホスト全体とドーパントを59:41~95:5の重量比で含む。
【0089】
一方、一実施形態において、第1ホスト及び第2ホスト全体とドーパントの重量比を90:10に固定する場合、第1ホスト:第2ホスト:ドーパントの重量比は50:40:10~80:10:10である。
【0090】
一実施形態に係る有機電界発光素子10において、発光層EMLは、りん光発光する。例えば、一実施形態において、発光層EMLは、第1ホスト及び第2ホスト以外にもりん光ドーパントを更に含んでもよい。
【0091】
一実施形態において、発光層EMLは、イリジウム(Ir)、白金(Pt)、オスミウム(Os)、金(Au)、パラジウム(Pd)、チタニウム(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、ユウロピウム(Eu)、テルビウム(Tb)、またはツリウム(Tm)を含む金属錯体をりん光ドーパントとして含む。例えば、りん光ドーパントは、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)、白金(Pt)、またはパラジウム(Pd)を中心原子として含む金属錯体であってもよい。詳しくは、Flrpic(イリジウム(III)ビス(4,6-ジフルオロフェニルピリジナト-N,C2’)ピコリナート)、Fir6(ビス(2,4-ジフルオロフェニルピリジナト))、またはPtOEP(白金-オクタエチルポルフィリン)がりん光ドーパントとして使用される。しかし、これらに限らない。
【0092】
一実施形態に係る有機電界発光素子10の発光層EMLは、緑色波長領域の光を放出する。しかし、これに限らず、発光層EMLは青色光または赤色光を放出してもよい。
【0093】
一実施形態に係る有機電界発光素子10の発光層EMLは、緑色りん光発光層である。例えば、一実施形態に係る有機電界発光素子10にの発光層EMLは、上述した化学式1で表される第1ホスト、化学式2-1~化学式2-5のうちいずれか一つで表される第2ホスト、及び下記D1~D3のうちいずれか一つで表されるりん光ドーパントを含み、緑色りん光を発光してもよい。
【化16】
【0094】
一方、図示していないが、一実施形態に係る有機電界発光素子10は、複数の発光層を含んでもよい。複数の発光層は順次積層されるが、例えば、複数の発光層を含む有機電界発光素子10は、白色光を放出してもよい。複数の発光層を含む有機電界発光素子10は、タンデム(Tandem)構造の有機電界発光素子である。複数の発光層のうち少なくとも一つの発光層は、上述したように、化学式1で表される第1ホスト、化学式2-1~化学式2-5のうちいずれか一つで表される第2ホスト、及びドーパントを含む。
【0095】
図1図3に示した一実施形態に係る有機電界発光素子10において、電子輸送領域ETRは発光層EMLの上に設けられる。電子輸送領域ETRは、正孔阻止層HBL、電子輸送層ETL及び電子注入層のEILうち少なくとも一つを含むが、これらに限らない。
【0096】
電子輸送領域ETRは、単一物質からなる単一層、複数の互いに異なる物質からなる単一層、または複数の互いに異なる物質からなる複数の層を有する多層構造を有する。
【0097】
例えば、電子輸送領域ETRは、電子注入層のEILまたは電子輸送層ETLの単一層構造を有してもよく、電子注入物質と電子輸送物質とからなる単一層構造を有してもよい。また、電子輸送領域ETRは、複数の互いに異なる物質からなる単一層構造を有するか、発光層EMLから順番に積層された電子輸送層ETL/電子注入層EIL、正孔阻止層HBL/電子輸送層ETL/電子注入層EILの構造を有してもよいが、これらに限らない。電子輸送領域ETRの厚さは、例えば、約100nm~約150nmである。
【0098】
電子輸送領域ETRは、真空蒸着法、スピンコート法、LB法、インクジェットプリント法、レーザプリント法、レーザ熱転写法(LITI)などのような多様な方法を利用して形成される。
【0099】
電子輸送領域ETRが電子輸送層ETLを含む場合、電子輸送領域ETRは、アントラセン系化合物を含む。但し、これに限らず、電子輸送領域は、例えば、Alq(トリス(8-ヒドロキシキノリナト)アルミニウム)、1、3、5-トリ[(3-ピリジル)-フェン-3-イル]ベンゼン、2、4、6-トリス(3’-ピリジン-3-イル)ビフェニル-3-イル)-1、3、5-トリアジン、2-(4-(N-フェニルベンゾイミダゾリル-1-イルフェニル)-9、10-ジナフチルアントラセン、TPBi(1,3,5-トリ(1-フェニル-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-2-イル)フェニル)、BCP(2,9-ジメチル-4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン)、Bphen(4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン)、TAZ(3-(4-ビフェニルイル)-4-フェニル-5-テルト-ブチルフェニル-1,2,4-トリアゾール)、NTAZ(4-(ナフタレン-1-イル)-3,5-ジフェニル-4H-1,2,4-トリアゾール)、tBu-PBD(2-(4-ビフェニルイル)-5-(4-テルト-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール)、BAlq(ビス(2-メチル-8-キノリノラト-N1,O8)-(1,1’-ビフェニル-4-オラト)アルミニウム)、Bebq2(ベリリウムビス(ベンゾキノリン-10-オラト)、ADN(9,10-ジ(ナフタレン-2-イル)アントラセン)、及びこれらの混合物を含んでもよい。電子輸送層ETLの厚さは、約10nm~約100nm、例えば約15nm~約50nmである。電子輸送層HTLの厚さが上述したような範囲を満たせば、実質的な駆動電圧の上昇なしに満足できる程度の電子輸送特性が得られる。
【0100】
電子輸送領域ETRが電子注入層EILを含む場合、電子輸送領域ETRは、LiF、LiQ(8-ヒドロキシキノリノラト-リチウム)、LiO、BaO、NaCl、CsF、Ybのようなランタン族金属、またはRbCl、Rblのようなハロゲン化金属などが使用されるが、これらに限らない。電子注入層EILは、電子輸送物質と絶縁性の有機金属塩(organo metal salt)が混合された物質を含んでもよい。有機金属塩は、エネルギーバンドギャップが約4eV以上の物質である。詳しくは、例えば、有機金属塩は、酢酸金属塩(metal acetate)、安息香酸金属塩(metal benzoate)、アセト酢酸金属塩(metal acetoacetate)、金属アセチルアセトナート(metal acetylacetonate)、またはステアリン酸金属塩(stearate)を含む。電子注入層EILの厚さは、約0.1nm~約10nm、約0.3nm~約9nmである。電子注入層EILの厚さが上述したような範囲を満たせば、実質的な駆動電圧の上昇なしに満足できる程度の電子注入特性が得られる。
【0101】
電子輸送領域ETRは、上述したように、正孔阻止層HBLを含む。正孔阻止層HBLは、例えば、BCP(2,9-ジメチル-4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン)、及びBphen(4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン)のうち少なくとも一つを含んでもよいが、これらに限らない。
【0102】
第2電極EL2は、電子輸送領域ETRの上に設けられる。第2電極EL2は、共通電極または負極である。第2電極EL2は、透過型電極、半透過型電極、または反射型電極である。第2電極EL2が透過型電極であれば、第2電極EL2は透明金属酸化物、例えば、ITO、IZO、ZnO、ITZOなどからなる。第2電極EL2が半透過型電極または反射型電極であれば、第2電極EL2はAg、Mg、Cu、Al、Pt、Pd、Au、Ni、Nd、Ir、Cr、Li、Ca、LiF/Ca、LiF/Al、Mo、Ti、またはこれらを含む化合物や混合物(例えば、AgとMgの合金)を含む。また、第2電極EL2は、前記物質からなる反射膜や半透過膜、及びITO、IZO、ZnO、ITZOなどからなる透明導電膜を含む複数の層構造を有してもよい。
【0103】
図示していないが、第2電極EL2は補助電極と電気的に接続される。第2電極EL2が補助電極と電気的に接続される場合、第2電極EL2の抵抗を減少させることができる。
【0104】
図示していないが、一実施形態に係る有機電界発光素子10の第2電極EL2の上には、キャッピング層(図示せず)が更に配置されてもよい。キャッピング層(図示せず)は、例えば、α-NPD、NPB、TPD、m-MTDATA、Alq、CuPc、TPD15(N4,N4,N4’,N4’-テトラ(ビフェニル-4-イル)ビフェニル-4,4’-ジアミン)、TCTA(4,4’,4”-トリス(カルバゾール ソル-9-イル)トリフェニルアミン)、N,N’-ビス(ナフタレン-1-イル)などを含んでもよい。
【0105】
本発明の一実施形態に係る有機電界発光素子10は、発光層EMLに互いに異なる2つのホスト物質を同時に含むことで、単独のホストを使用した場合に比べ発光効率及び寿命特性が改善される。つまり、一実施形態による有機電界発光素子10は、化学式1で表されるアントラセン誘導体の第1ホストと、化学式2-1~化学式2-5のうちいずれか一つで表されるピロリジンを含む縮合多環化合物の第2ホストを発光層EMLに全て含むことで、第1ホスト及び第2ホストそれぞれを単独ホストとして使用した場合に比べ、低い駆動電圧、改善された発光効率、及び長寿命特性を示す。
【0106】
図4図5は、本発明の一実施形態に係る有機電界発光素子の製造方法を示すフロー図である。以下の一実施形態に係る有機電界発光素子の製造方法に関する説明では、有機電界発光素子の各有機層に関しては詳細に説明せず、製造工程に関してのみ説明する。一実施形態に係る有機電界発光素子の製造方法によって製造された有機電界発光素子の各有機層に関しては、上述した一実施形態に係る有機電界発光素子に関する説明が同じく適用される。
【0107】
図4を参照すると、一実施形態に係る有機電界発光素子の製造方法は、第1電極を形成すること(S100)と、第1電極の上に正孔輸送領域を形成すること(S200)と、正孔輸送領域の上に第1ホスト、第2ホスト、及びドーパントを含む発光層を形成すること(S300)と、発光層の上に電子輸送領域を形成すること(S400)と、第2電極を形成すること(S500)と、を含む。
【0108】
一方、発光層を形成すること(S300)において、発光層EMLは、下記化学式1で表される第1ホスト、及び下記化学式2-1~化学式2-5のうちいずれか一つで表される第2ホストを含む。
【化17】

【化18】

【0109】
化学式1において、R~Rはそれぞれ独立して重水素原子、ハロゲン原子、置換若しくは無置換のシリル基、置換若しくは無置換のゲルミル基、置換若しくは無置換の炭素数1以上20以下のアルキル基、置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、または置換若しくは無置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリール基であり、a及びbはそれぞれ独立して0以上7以下の整数であり、c及びdはそれぞれ独立して0以上4以下の整数である。
【0110】
化学式2-1~化学式2-5において、X及びYのうちいずれか一つはNRであり、残りはCRまたはSiRであり、R~R、及びR11~R60はそれぞれ独立して水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、置換若しくは無置換のシリル基、置換若しくは無置換の炭素数1以上20以下のアルキル基、置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下の炭化水素環基、または置換若しくは無置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロ環基である。
【0111】
発光層に含まれる第1ホスト及び第2ホストに関しては、上述した一実施形態に係る有機電界発光素子に関して説明した内容と同じ内容が適用される。
【0112】
一実施形態に係る有機電界発光素子の製造方法において、発光層は第1ホスト、第2ホストと共にドーパントを含むが、この際、ドーパントはりん光ドーパントである。例えば、ドーパントは緑色りん光ドーパントであってもよい。
【0113】
詳しくは、発光層を形成すること(S300)においては、ドーパントとして下記D1~D3のうちいずれか一つを含む。
【化19】
【0114】
図1及び図3で説明した有機電界発光素子10の第1電極EL1、第2電極EL2、正孔輸送領域HTR、発光層EML、及び電子輸送領域ETRなどの金属層、及び各有機層は、蒸着工程を利用して形成される。
【0115】
つまり、図4を参照して説明する一実施形態に係る有機電界発光素子の製造方法において、第1電極を形成すること(S100)、第1電極の上に正孔輸送領域を形成すること(S200)、正孔輸送領域の上に第1ホスト、第2ホスト、及びドーパントを含む発光層を形成すること(S300)、発光層の上に電子輸送領域を形成すること(S400)、及び第2電極を形成すること(S500)は、蒸着工程を利用して行われる。
【0116】
一方、図5を参照すると、一実施形態に係る有機電界発光素子の製造方法において、発光層を形成すること(S300)は、第1ホストと第2ホストを混合して混合ホストを製造すること(S310)、及び混合ホストとドーパントを共蒸着すること(S320)を含む。
【0117】
つまり、一実施形態に係る有機電界発光素子の製造方法において、発光層を形成すること(S300)は、蒸着する工程の前に第1ホストと第2ホストを予め混合して一つのソース(Source)に混合ホストを製造すること、及び一つソースから供給される混合ホストとドーパントを共蒸着すること、を含む。一方、混合ホストにおいて、第1ホストと第2ホストは、50:40~80:10の重量比で含まれる。
【0118】
また、一実施形態に係る有機電界発光素子の製造方法において、発光層を形成すること(S300)は、図5の説明とは異なり、第1ホスト及び第2ホストをそれぞれ異なるソースに提供し、それぞれ異なるソースから供給される第1ホスト、第2ホスト、及びドーパントを一つの工程で共蒸着して発光層を形成してもよい。この際、供給される第1ホスト及び第2ホストの重量比は50:40~80:10である。
【0119】
一実施形態に係る有機電界発光素子の製造方法において、発光層を形成する第1ホスト及び第2ホストを含むホスト全体とドーパントは、59:41~95:5の重量比を有する。例えば、第1ホスト及び第2ホストを含む混合ホストとドーパントの重量比は、59:41~95:5の重量比であってもよい。
【0120】
一実施形態に係る有機電界発光素子の製造方法は、発光層を形成する際に化学式1で表される第1ホスト、化学式2-1~化学式2-5のうちいずれか一つで表される第2ホスト、及びドーパントを全て含むことにより、低駆動電圧、高効率、及び長寿命特性を有する有機電界発光素子を提供することができる。
【実施例
【0121】
以下では実施例及び比較例に基づいて、本発明の一実施形態による有機電界発光素子について詳しく説明する。また、下記実施例は本発明の理解を助けるための一例示に過ぎず、本発明の範囲はこれらに限らない。
【0122】
1.有機電界発光素子の製作
実施例及び比較例の有機電界発光素子を以下の方法で製造した。
【0123】
ガラス基板の上に厚さ50nmのITOをパターニングした後、イソプロピルアルコール及び超純水で洗浄し、超音波で洗浄した後、30分間UVを照射して、後にオゾン処理を行った。次に、2-TNATAを蒸着して厚さ60nmの正孔注入層を形成してから、NPBを蒸着して、厚さ30nmの正孔輸送層を形成した。
【0124】
正孔輸送層の上にホスト及びドーパントを共蒸着して、厚さ40nmの発光層を形成した。発光層に使用されたホストの構成を異なるようにして、実施例1~実施例8、及び比較例1~比較例4の有機電界発光素子を製作した。実施例1~実施例8、及び比較例1~比較例4の発光層において、ドーパントは緑色りん光ドーパントであるD1を使用しており、ホスト全体とドーパントの重量比は90:10に設定して共蒸着を行った。
【0125】
実施例1~実施例8においては発光層に化学式1で表される第1ホスト及び化学式2-1~化学式2-5のうちいずれか一つで表される第2ホストを両方含んでおり、比較例1及び比較例2においては第1ホストのみを使用しており、比較例3及び比較例4においては第2ホストのみを使用しており、比較例5及び比較例6においては2つのホスト材料を使用しているが、実施例とホストの組み合わせが異なるようにしている。
【0126】
実施例及び比較例に使用したホスト材料の組み合わせを下記表1に示した。
【表1】
【0127】
実施例及び比較例に使用したドーパントのD1を以下に示す。
【化20】
【0128】
また、実施例及び比較例に使用した第1ホスト及び第2ホスト化合物を、それぞれ以下に示す。
【化21】

【0129】
表1の実施例1~実施例8、及び比較例1~比較例6のホストの組み合わせで形成した発光層の上に、Alqを厚さ30nmで蒸着して電子輸送層を形成し、次に、アルミニウム(Al)で厚さ120nmの第2電極を形成した。
【0130】
実施例及び比較例の有機電界発光素子の製作に使用した正孔注入層及び正孔輸送層の材料を以下に示す。
【化22】
【0131】
2.有機電界発光素子の特性評価
表2は、実施例1~実施例8、及び比較例1~比較例6に対する有機電界発光素子の評価結果を示している。表2には、製作された有機電界発光素子に対して、電流密度3mA/cm2である際の発光効率と、輝度9000nit基準で90%レベルまで輝度が減少するのにかかる時間である寿命T90を示した。
【表2】
【0132】
表2の結果を参照すると、本発明による一実施形態に係る有機電界発光素子に含まれる構成である化学式1で表される第1ホスト、及び化学式2-1~化学式2-5のうちいずれか一つで表される第2ホストを両方含む発光層を有する実施例1~実施例8の効率及び寿命は、単独ホストを使用した比較例1~比較例6に比べ優れていることが分かる。また、2つのホストを使用しているが、実施例とは異なるホストの組み合わせを採用した比較例5及び比較例6に比べて、実施例1~実施例8の有機電界発光素子が優れた発光効率を示していることが分かる。
【0133】
実施例1~実施例8、及び比較例1~比較例6の結果を参照すると、本発明の一実施形態に係る有機電界発光素子は、発光層に第1ホスト及び第2ホストを同時に含み、いずれか一つのホストが有する短所を他のホストが補ってシナジー効果を奏することにより、単独ホストを含む場合に比べて優れた発光効率と長寿命特性を同時に示すことが分かる。
【0134】
本発明の一実施形態に係る有機電界発光素子、及びそれを製造するための一実施形態に係る有機電界発光素子の製造方法の場合、発光層は互いに異なる特徴を有する第1ホスト及び第2ホストを発光層の材料として同時に含むことで、第1ホスト及び第2ホストがエキサイプレックスを形成する。つまり、本発明の一実施形態に係る有機電界発光素子は、第1ホスト及び第2ホストがエキサイプレックスを形成することにより正孔及び電子が発光層内に円滑に注入されるようになる。それによって駆動電圧が低くなり電荷バランスが高くなって、発光層内で正孔と電子が再結合する可能性が高まることで発光効率が向上する。また、発光層内で正孔と電子が再結合し十分な発光が行われるようになり、発光層と他の有機層との間の界面における劣化が緩和される、それによって素子寿命も改善されることが分かる。
【0135】
また、本発明の一実施形態に係る有機電界発光素子の製造方法は、第1ホストと第2ホストをドーパントと共に共蒸着して発光層を形成することで、発光層内で第1ホスト及び第2ホストが均一に分布され、発光層全体で発光品質が均一になる。
【0136】
一方、表2に示した実施例1~実施例8と比較例5または比較例6の結果を参照すると、本発明の実施例のように化学式1で表される第1ホスト材料、及び化学式2-1~化学式2-5のうちいずれかひとつで表される第2ホスト材料の組み合わせを使用した場合が、比較例5または比較例6のホスト材料の組み合わせを有する場合に比べ、発光効率が向上していることが分かる。
【0137】
これまで本発明の好ましい実施形態を参照して説明したが、該当技術分野における熟練した当業者または該当技術分野における通常の知識を有する者であれば、後述する特許請求の範囲に記載された本発明の思想及び技術領域から逸脱しない範囲内で本発明を多様に修正及び変更し得ることを理解できるはずである。
【0138】
よって、本発明の技術的範囲は明細書の詳細な説明に記載されている内容に限定されず、特許請求の範囲によって決められるべきである。
【符号の説明】
【0139】
10:有機電界発光素子
EL1:第1電極
EL2:第2電極
HTR:正孔輸送領域
EML:発光層
ETR:電子輸送領域
図1
図2
図3
図4
図5