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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-19
(45)【発行日】2023-12-27
(54)【発明の名称】太陽熱集熱装置
(51)【国際特許分類】
   F24S 60/00 20180101AFI20231220BHJP
   F24S 10/70 20180101ALI20231220BHJP
   F24S 20/60 20180101ALI20231220BHJP
   F24S 80/60 20180101ALI20231220BHJP
   F28D 15/02 20060101ALI20231220BHJP
   F28D 20/00 20060101ALI20231220BHJP
【FI】
F24S60/00
F24S10/70
F24S20/60
F24S80/60
F28D15/02 101E
F28D20/00 A
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019186918
(22)【出願日】2019-10-10
(65)【公開番号】P2021063598
(43)【公開日】2021-04-22
【審査請求日】2022-08-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001317
【氏名又は名称】株式会社熊谷組
(74)【代理人】
【識別番号】100141243
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 靖夫
(72)【発明者】
【氏名】新井 勘
(72)【発明者】
【氏名】淵▲崎▼ 礼奈
【審査官】伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-029732(JP,A)
【文献】実開昭58-167855(JP,U)
【文献】実開昭57-091060(JP,U)
【文献】特開昭58-145850(JP,A)
【文献】特開2014-190653(JP,A)
【文献】特開2011-169186(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109297199(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24S 60/00
F24S 10/70
F24S 20/60
F24S 80/60
F28D 15/02
F28D 20/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽光を透過可能な筒体と、
前記筒体の軸方向に沿って延長し、前記筒体の開口及び前記筒体への前記太陽光の透過を維持して前記筒体の一部を収容可能な筒体収容部を有する蓄熱体と、
前記蓄熱体の軸方向に沿って延長し、前記筒体の開口及び前記筒体への前記太陽光の透過を維持して前記蓄熱体を収容可能な蓄熱体収容部を有する断熱体と、
を備え、
前記蓄熱体における前記筒体の軸方向に沿って延長する表面が大気中に露出し、
前記筒体の一端側が大気に開放され、他端側が空調の対象空間に接続された太陽熱集熱装置。
【請求項2】
前記蓄熱体における前記筒体の一部と接する前記筒体収容部の表面及び前記筒体の軸方向に沿って延長する表面が黒色である請求項1に記載の太陽熱集熱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽光によるエネルギーを空調に利用することができる太陽熱蓄熱装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、熱媒体を封入したヒートパイプを真空管に挿入した太陽熱集熱装置が知られている。これは熱媒体の状態変化に伴う移動を利用したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】富士エネルギー株式会社 製品情報 真空ガラス管形(ヒートパイプ形)太陽集熱器 [2019年7月26日検索]インターネット<http://fujiene.com/?page_id=30>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記太陽熱集熱装置は熱媒体の熱の移動や変換に伴い、熱量に損耗が生じるため太陽光から得られる熱量を十分に利用できるものではない。
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、簡単な構成で効率良く太陽光の熱を空調に利用可能な太陽光蓄熱装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための太陽熱集熱装置の構成として、太陽光を透過可能な筒体と、筒体の軸方向に沿って延長し、筒体の開口及び筒体への太陽光の透過を維持して筒体の一部を収容可能な筒体収容部を有する蓄熱体と、蓄熱体の軸方向に沿って延長し、筒体の開口及び筒体への太陽光の透過を維持して蓄熱体を収容可能な蓄熱体収容部を有する断熱体とを備え、蓄熱体における筒体の軸方向に沿って延長する表面が大気中に露出し、筒体の一端側が大気に開放され、他端側が空調の対象空間に接続された構成とした。
本構成によれば、熱媒体を介する必要がないため、熱損失を抑えることができるとともに特別な熱交換設備を設ける必要がない。また、一般的な空気式太陽熱集熱装置のような通風層を設ける必要がないため、既存建物等にも容易に導入することができる。また、日射を蓄熱体に直接照射させることができる。
また、蓄熱体における筒体の一部と接する筒体収容部の表面及び筒体の軸方向に沿って延長する表面が黒色である構成とした。
本構成によれば、日射を効率良く蓄熱体に吸収させることができる。
【0006】
なお、上記発明の概要は、本発明の必要な全ての特徴を列挙したものではなく、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となり得る。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】太陽熱集熱装置の概念図である。
図2】太陽熱集熱装置の作用を示す図である。
図3】太陽熱集熱装置の作用を示す図である。
図4】太陽熱集熱装置の実施例を示す図である。
図5】太陽熱集熱装置の設置例を示す図である。
【0008】
以下、実施の形態を通じて本発明を詳説するが、以下の実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また、実施の形態の中で説明される特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、本実施形態に係る太陽熱集熱装置1の概略構成図、及び分解斜視図である。以下、図1に基づいて太陽熱集熱装置1について説明する。
本実施形態に係る太陽熱集熱装置1は、筒体2と、蓄熱体4と、断熱体6とを備える。
【0010】
以後の説明において、蓄熱体4の辺A1の寸法を幅Wとし、その方向をx方向という。また、辺A1に直交する辺A2の寸法を厚さHとし、その方向をz方向という。さらに、軸c方向の長さ寸法については長さLとし、その方向をy方向という。
【0011】
筒体2は内径及び外径がy方向(軸方向)に一定であり、太陽光を透過可能な素材であれば良く、例えば、ガラス管または樹脂管等で構成される。
なお、筒体2は直管でも曲管でもよく、断面形状が楕円形上でもよい。さらに、部分ごとに管の太さが変わってもよい。さらに、後述の蓄熱体4及び断熱体6は、筒体2に形状に対応するように適宜形状を変化させれば良い。
筒体2は、一端側を後出する集合管84に接続できるようにし、他端側を大気を取り入れるために、開放させておく。開放させた端部には、適宜フィルター等を取り付けても良い。筒体2は、開放させた端部から取り入れられた空気が、集合管84を介して空調対象の空間に流通可能に空調機等に接続される。
【0012】
蓄熱体4は、y方向と直交する平面内において辺A1,A2からなる矩形状となるように形成され、y方向に延長した長尺の部材である。蓄熱体4は、面4a側に筒体2を収容するための凹部40を備える。凹部40は、筒体2の開口、及び筒体2への太陽光の透過を維持するように、筒体2の一部を大気中に露出させ、他部を収容可能に形成される。蓄熱体4は、日射による熱エネルギーを蓄えることができる蓄熱素材により構成される。好ましくは、凹部40の表面40a及び平面部44;44は黒色に彩色されているとよい。なお、蓄熱体4そのものの色が黒色である場合には、あえて彩色しなくても良い。
【0013】
凹部40は、図1(b)に示すように、断面視において筒体2の外周面の一部が密着するように、外周面の形状に倣って形成される。本実施形態では、筒体2の外形形状に合致する円弧状または半円弧状の断面として形成される。さらに、凹部40は筒体2の円の中心が、2つの平面部44;44で形成される一つの平面上に位置するように形成される。即ち、凹部40は、筒体2を収容する筒体収容部として機能する。筒体2は蓄熱体4のy方向に沿って、蓄熱体4の凹部40に収容される。
【0014】
蓄熱体4の寸法は、例えば、幅Wが筒体2の外径寸法D1よりも長く、厚さHが外径寸法D1の半分よりも長く、また、長さLが筒体2の長さと同じに設定される。これにより、筒体2の一部は蓄熱体4に埋没され、残りが蓄熱体4から突起するように収容される。本実施形態では、凹部40に筒体2を収容したときに、凹部40の面4aと、筒体2の中心とが面一となるように半円状に形成される。つまり、筒体2は中心よりも上部の半円弧が蓄熱体4から突起するように収容される。なお、筒体2はその両端または一端側にダクト等を接続する場合がある。この場合は、接続するダクト等の長さを考慮し適宜、筒体2に対する蓄熱体4の長さを変更してもよい。
【0015】
尚、上記実施例では蓄熱体4に対して筒体2を1本収容する構成としているが、蓄熱体4に対してx方向に並列で複数本収容しても構わない。
【0016】
断熱体6は底部62と底部62から立ち上がる壁部64と66からなる断面視が凹状の部材であり、底部62,壁部64,壁部66に囲まれ、蓄熱体4を収容する蓄熱体収容部(以下、単に収容部という)60を有する。
【0017】
収容部60の面62a,64a,66aは蓄熱体4の面4c,4b,4dとそれぞれ対応し、同一の寸法を有している。また収容部60のy方向の長さは蓄熱体4のy方向の長さは同一の寸法値を有している。
【0018】
すなわち、収容部60の幅、厚さは蓄熱体4の幅W、厚さHと等しい構成となっている。
これにより、収容部60は面62a,64a,66aを蓄熱体4の面4c,4b,4dと互いに接触するようにして、蓄熱体4を収容する。
【0019】
また、断熱体6は蓄熱体4に蓄えられた熱の損失を防ぐ断熱性を有する素材とすることが望ましい。例えば雨水などを吸水しない発泡系の断熱材などを用いることが好ましい。
【0020】
なお、断熱体6の剛性が不足する場合は、断熱体6を保護するための枠体を設けてもよい。
この場合、枠体の剛性は断熱体6の剛性よりも高い素材を用いればよい。
【0021】
太陽熱集熱装置1は冬季においては暖房用の熱源として利用することができ、夏季特に夜間は冷房として利用することができる。以下、図2及び図3を用いて、上記の利用における太陽熱集熱装置1の作用について説明する。
【0022】
図2は冬季の日中での作用を示すものである。
太陽熱集熱装置1は日射を受けることができる場所、例えば建物の屋上や壁面などに設置される。
【0023】
図2に記載のf1は太陽からの日射を表し、f2は筒体2を透過し、凹部40の表面40aまでに到達する日射(以下、透過日射という)を表し、f3は蓄熱体4から放射される放射熱を表す。
【0024】
筒体2内の空気は日射f1によって直接的に暖められ、また、蓄熱体4は透過日射f2と蓄熱体4の平面部44への日射f1によって暖められる。
【0025】
前記、暖められた蓄熱体4は、日射f1と透過日射f2による熱、或いは日射f1による熱を蓄積するとともに、放射熱f3を放射する。そして、放射された放射熱f3は筒体2を透過し、筒体2内の空気へ伝導される。
これにより、筒体2内の空気は暖められる。
【0026】
すなわち、筒体2内の空気は日射f1および放射熱f3にて効率よく暖められる。
また、蓄熱体4は日射f1や透過日射f2などにより暖められ、その熱を蓄積している。これにより、例えば夜間あるいは雨天時などで日射がない場合においても放射熱f3により筒体2内の空気を暖めることができる。
【0027】
図3は夏季の夜間での作用を示すものである。
太陽熱集熱装置1は日射を受けることができる場所、例えば建物の屋上や壁面などに設置される。
【0028】
図3に記載のf4は蓄熱体4の平面部44から放射冷却現象により放射される熱(以下、放射熱という)を表し、f5は筒体2内から蓄熱体4へ伝わる熱(以下、伝達熱という)を表す。
【0029】
太陽熱集熱装置1は、例えば、夜間に次のように機能させることができる。
夜間、蓄熱体4の平面部44からの放射熱f4が外気に放射される(放射冷却現象)。この放射冷却現象により、蓄熱体4の温度が、外気温度より低い場合、蓄熱体4の平面部44からの放射熱f4が外気に放射され、蓄熱体4が冷却される。これにより、筒体2内の空気から蓄熱体4に向け伝達熱f5が伝達され、筒体2内の温度が外気温度よりも低下する。この冷却された筒体2内の空気を室内に取り込むことにより、室内の夜間冷房に利用することができる。
【0030】
また、蓄熱体4の温度が筒体2内の空気の温度よりも低くなる前の段階では、蓄熱体4の熱により筒体2内の空気が温められる。筒体2内の空気は、温められた結果、浮力を得て開放された一端から大気中に放出される。その際、室内側に、ガラリ(図外)等から空気を取り込むことで、自然換気を行うことができる。
【0031】
図4は太陽熱集熱装置1の実施例を示す図である。
図4に示すように、太陽熱集熱モジュール100は複数の太陽熱集熱装置1とヘッダー80及び太陽熱集熱装置1とヘッダー80を連結する接続する接続管82から構成される。
【0032】
太陽熱集熱装置1は筒体2の開口が同一方向になるように向けられ、上記開口にヘッダー80内の集合管84にとりつけられた接続管82が挿入される。接続管82は集合管84に太陽熱集熱装置1のx方向に複数個、取り付けされている。即ち、太陽熱集熱装置1はヘッダー80に対して複数個、並列に連結される。なお、複数の太陽熱集熱装置は接続管82以外の部分で図外の連結手段により連結させても構わない。太陽熱集熱装置1は、例えば、ヘッダー80に対してX方向に並列に設置したり、さらに、Y方向に複数の太陽熱集熱装置1を接続しても良い。
【0033】
集合管84は給気口86と一体に形成され、給気口86からファン(図5参照)を介して建物内の対象空間に対して前述の暖められた筒体2内の空気を搬送する。
【0034】
太陽熱集熱モジュール100は日射を受けることができる場所であれば設置場所を限定されない。図5に示すように建物の屋上や外壁に所定の傾斜角で取り付けることができる。
【0035】
太陽熱集熱モジュールは複数の太陽熱集熱装置を並列に連結していればよく、連結されるそれぞれの太陽熱集熱装置の構成は筒体2,蓄熱体4,断熱体6を最小単位とすればよく、最小単位を複数個直列に連結しても構わない。
【符号の説明】
【0036】
1 太陽熱集熱装置、2 筒体、4 蓄熱体、6 断熱体、80 ヘッダー、
82 接続管、84 集合管、86 給気口、
f1 日射、f2 透過日射、f3 放射熱、f4 放射熱、f5 伝導熱。
図1
図2
図3
図4
図5