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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-19
(45)【発行日】2023-12-27
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/60 20060101AFI20231220BHJP
   H01L 25/07 20060101ALI20231220BHJP
   H01L 25/065 20230101ALI20231220BHJP
   H01L 25/18 20230101ALI20231220BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20231220BHJP
   H01L 23/31 20060101ALI20231220BHJP
【FI】
H01L21/60 311Q
H01L25/08 C
H01L23/30 R
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019187469
(22)【出願日】2019-10-11
(65)【公開番号】P2021064659
(43)【公開日】2021-04-22
【審査請求日】2022-07-27
(73)【特許権者】
【識別番号】390019839
【氏名又は名称】三星電子株式会社
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】129,Samsung-ro,Yeongtong-gu,Suwon-si,Gyeonggi-do,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】石本 達也
(72)【発明者】
【氏名】徳宮 孝弘
【審査官】堀江 義隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-066782(JP,A)
【文献】特開2013-239469(JP,A)
【文献】特開2012-119358(JP,A)
【文献】特表2015-503220(JP,A)
【文献】特開2003-243447(JP,A)
【文献】特開2006-351589(JP,A)
【文献】特開2018-141106(JP,A)
【文献】特開2019-220619(JP,A)
【文献】特開2012-160668(JP,A)
【文献】国際公開第2013/137130(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/60
H01L 25/07
H01L 21/56
H01L 23/29
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の半導体チップを含むチップウェハ上に、封止材を塗布するステップと、
前記チップウェハ上に塗布された前記封止材をプレキュアによりBステージ化するステップと、
Bステージ化された前記封止材とともに前記チップウェハをダイシングして、複数の前記半導体チップに分離するステップと、
ベースウェハに形成された接続用電極と、前記半導体チップのバンプ電極とが、導電性接着剤を介して対向するように、前記ベースウェハ上に前記半導体チップを積層させて、前記ベースウェハ及び前記ベースウェハ上の複数の前記半導体チップを含む積層チップを形成するステップと、
前記積層チップを、加圧されたガス中でリフロー処理を行うことにより、前記接続用電極と前記バンプ電極とを前記導電性接着剤を介して接合させるステップと、
前記接続用電極と前記バンプ電極とを前記導電性接着剤を介して接合させた前記積層チップを、加圧されたガス中でポストキュアを行うことにより、前記封止材をCステージ化するステップと、
を備え
前記リフロー処理及び前記ポストキュアは、1.0MPa以上に加圧されたガス中において行われ、
前記リフロー処理及び前記ポストキュアは、同じ圧力に加圧された前記ガス中において行われる、
半導体装置の製造方法。
【請求項2】
複数の半導体チップを含むチップウェハ上に、封止材を塗布するステップと、
前記チップウェハ上に塗布された前記封止材をプレキュアによりBステージ化するステップと、
Bステージ化された前記封止材とともに前記チップウェハをダイシングして、複数の前記半導体チップに分離するステップと、
ベースウェハに形成された接続用電極と、前記半導体チップのバンプ電極とが、導電性接着剤を介して対向するように、前記ベースウェハ上に前記半導体チップを積層させて、前記ベースウェハ及び前記ベースウェハ上の複数の前記半導体チップを含む積層チップを形成するステップと、
前記積層チップを、加圧されたガス中でリフロー処理を行うことにより、前記接続用電極と前記バンプ電極とを前記導電性接着剤を介して接合させるステップと、
前記接続用電極と前記バンプ電極とを前記導電性接着剤を介して接合させた前記積層チップを、加圧されたガス中でポストキュアを行うことにより、前記封止材をCステージ化するステップと、
を備え
前記リフロー処理及び前記ポストキュアは、1.0MPa以上に加圧されたガス中において行われ、
前記リフロー処理における圧力は、前記ポストキュアにおける圧力よりも大きい、
半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記導電性接着剤を介して接合させるステップにおいて、
前記接続用電極と前記バンプ電極とをセルフアライメントさせる、
請求項1または2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
複数の半導体チップを含むチップウェハ上に、封止材を塗布するステップと、
前記チップウェハ上に塗布された前記封止材をプレキュアによりBステージ化するステップと、
Bステージ化された前記封止材とともに前記チップウェハをダイシングして、複数の前記半導体チップに分離するステップと、
ベースウェハに形成された接続用電極と、前記半導体チップのバンプ電極とが、導電性接着剤を介して対向するように、前記ベースウェハ上に前記半導体チップを積層させて、前記ベースウェハ及び前記ベースウェハ上の複数の前記半導体チップを含む積層チップを形成するステップと、
前記積層チップを、加圧されたガス中でリフロー処理を行うことにより、前記接続用電極と前記バンプ電極とを前記導電性接着剤を介して接合させるステップと、
前記接続用電極と前記バンプ電極とを前記導電性接着剤を介して接合させた前記積層チップを、加圧されたガス中でポストキュアを行うことにより、前記封止材をCステージ化するステップと、
を備え
前記リフロー処理及び前記ポストキュアは、1.0MPa以上に加圧されたガス中において行われ、
前記導電性接着剤を介して接合させるステップにおいて、
前記接続用電極と前記バンプ電極とをセルフアライメントさせる、
半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記封止材を塗布するステップにおいて、
スプレイにより前記封止材を塗布する、
請求項1~のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法及び封止材に関し、例えば、ベースウェハに半導体チップを接合する半導体装置の製造方法及び封止材に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体実装工程では、半導体チップとベースウェハとを接合する1つの方法として、アンダーフィルを用いる方法がある。アンダーフィルを用いる方法は、まず、半導体チップをベースウェハ上に搭載して、リフロー処理によるボンディングを行う。ボンディング後、半導体チップとベースウェハとの間のチップ間隙に封止材をアンダーフィルにより充填する。しかしながら、TSV(Through Silicon Via)技術を用いた3次元積層化が進むと、アンダーフィルを用いる方法は困難になってくる。バンプが微細化することにより、チップ間隙が小さくなるからである。そこで、NCF(Non Conductive Film)等、半導体チップを搭載する前の状態で、予め、封止材をフィルム状に先貼りする方法が確立されている。
【0003】
NCFの場合、封止材の量は、フィルムの厚さでのみ管理することが可能である。よって、パッキングのデザインや工程の変化により、フィルムの厚さを変更する必要が生じた場合には、フィルム製造工程を変更しなければならない。その他、フィルムを貼付ける工程において、空隙(Void)が発生する問題、フィルムを厚めに設定せざるを得ず、積層時に封止材が多くはみ出るなど、NCFの場合には、問題が山積している。
【0004】
また、NCFを採用した場合には、リフローによるベースウェハの一括接合ではなく、TCB(Thermal Compression Bonding)となる。そうすると、半導体チップ一つずつに圧着のための時間を要する。このため、生産性(Throughput)が低下する要因となっていた。
【0005】
そこで、NCFに置換え、液状の封止材を、スピンコート等により塗布し、加熱することで、気泡および溶剤を飛ばして、B-ステージ(半硬化)状態にする方法が提案されている。
【0006】
特許文献1には、封止材をB-ステージ化した複数の半導体チップとベースウェハとを一括に接合する方法が記載されている。B-ステージ化することで、ベースウェハへの半導体チップ搭載時に、封止材は、仮固定可能な粘着力を持つ。このため、その後、半導体チップを積層したベースウェハを、リフロー工程により、一括接合することができる。また、このB-ステージ化する液状の封止材の場合には、スピンコート等により、任意の封止材の膜厚管理も可能となり、封止材の効率も向上する。
【0007】
特許文献2には、特許文献1と同様のB-ステージ状態に変化する封止材が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2012-119358号公報
【文献】特許第5278457号公報
【非特許文献】
【0009】
【文献】66th Electronic Components and Technology Conference 予稿集(p.108, 2016), “High-throughput Thermal Compression Bonding of 20μm Pitch Cu Pillar with Gas Pressure Bonder for 3D IC Stacking”, L. Xie, S. Wickramanayaka, S. C. Chong, V. N. Sekhar, D. I. Cerano, of IME, A*STAR
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2の方法では、ベースウェハ上に多層に半導体チップを積層して実装する際に、リフロー工程において、層ごとの温度にばらつきが生じる。リフロー工程時には、加熱によって、封止材が熱膨張し、半導体チップ間の間隔が大きくなる。このため、半導体チップ間の間隔にもばらつきが生じ、バンプが接合しない層が生じる。これにより、半導体チップの反りやTSVの上端及び下端の位置ずれの原因となり、半導体装置の品質が低下する。
【0011】
こうした問題に対して、非特許文献1には、リフロー工程を、ガス圧(Gas Pressure)雰囲気下で行うことで解決することが記載されている。非特許文献1には、ガス圧雰囲気下のリフロー工程により、封止材の熱膨張を抑制し、接合を均一化させ、位置精度を向上させることが記載されている。しかしながら、非特許文献1のプロセスでは、ベースウェハ上に塗布した封止材の膜厚を平坦化させるのに、バックグラインド(Back Grinding)工程が必要である。よって、バックグラインド工程で生じた削りカスの洗浄とバンプの酸化膜除去に、表面洗浄及び還元(Surface Cleaning & Deoxidization)の工程が必要となる。
【0012】
また、NCPというベースウェア側に封止材を塗布する方法もあるが、微細化が進み、バンプピッチが狭小となった半導体装置には、埋め込み性やボイドの抜けが極端に悪化する。そのため、NCP工法では、バンプピッチが50[μm]以下の製品に適用することが困難である。
【0013】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものである。具体的には、本発明は、TSVを含むデバイスが形成された半導体チップをベースウェハに搭載する工程を備えた半導体装置の製造方法及び封止材に関する。本発明の半導体装置の製造方法は、微細配線が形成されたベースウェハにボイド(Void)なく任意の膜厚で均一に封止材を塗布することができる。このため、封止材の膜厚平坦化工程を必要としない。また、本発明の封止材は、樹脂等の主成分及び硬化後架橋構造を持つフラックス成分を含有する。よって、本発明の封止材は、リフロー工程でも揮発しない。このため、当該封止材を用いた半導体装置の製造方法は、B-ステージ化された封止材を含む半導体チップを、ベースウェハへ積層した後に、酸化膜除去工程を必要としない。また、リフロー処理時に、ガス圧を1.0[MPa]以上としているので、バンプ数が増加しても押し付け力が不足することがない。さらに、リフロー処理においても、ボイドの発生、半導体チップの反りや位置ずれも抑制することができる。よって、本発明の半導体装置の製造方法は、ベースウェハ単位での一括バンプ接合可能である。このように、本発明は、品質を向上させることができる半導体装置の製造方法及び封止材を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明にかかる半導体装置の製造方法は、複数の半導体チップを含むチップウェハ上に、封止材を塗布するステップと、前記チップウェハ上に塗布された前記封止材をプレキュアによりBステージ化するステップと、Bステージ化された前記封止材とともに前記チップウェハをダイシングして、複数の前記半導体チップに分離するステップと、ベースウェハに形成された接続用電極と、前記半導体チップのバンプ電極とが、導電性接着剤を介して対向するように、前記ベースウェハ上に前記半導体チップを積層させて、前記ベースウェハ及び前記ベースウェハ上の複数の前記半導体チップを含む積層チップを形成するステップと、前記積層チップを、加圧されたガス中でリフロー処理を行うことにより、前記接続用電極と前記バンプ電極とを前記導電性接着剤を介して接合させるステップと、前記接続用電極と前記バンプ電極とを前記導電性接着剤を介して接合させた前記積層チップを、加圧されたガス中でポストキュアを行うことにより、前記封止材をCステージ化するステップと、を備える。
【0015】
また、前記リフロー処理及び前記ポストキュアは、1.0[MPa]以上に加圧されたガス中において行われる。
【0016】
さらに、前記リフロー処理及び前記ポストキュアは、同じ圧力に加圧された前記ガス中において行われる。
【0017】
前記封止材を塗布するステップにおいて、スプレイにより前記封止材を塗布する。
【0018】
また、前記導電性接着剤を介して接合させるステップにおいて、前記接続用電極と前記バンプ電極とをセルフアライメントさせる。
【0019】
本発明にかかる封止材は、複数の半導体チップを含むチップウェハ上に塗布され、プレキュアによってBステージ化する封止材であって、Bステージ化後に、前記チップウェハを複数の半導体チップに分離するために、前記チップウェハとともにダイシングされることが可能な前記封止材であり、ベースウェハに形成された接続用電極と、前記半導体チップのバンプ電極とが、導電性接着剤を介して対向するように、前記ベースウェハ上に前記半導体チップとともに積層される前記封止材であり、前記ベースウェハ及び前記ベースウェハ上の複数の前記半導体チップを含む積層チップを、加圧されたガス中でリフロー処理を行うことによって、前記接続用電極と前記バンプ電極とを前記導電性接着剤を介して接合させた後に、前記積層チップを加圧されたガス中でポストキュアを行うことによって、Cステージ化する。
【0020】
また、エポキシ樹脂及びフェノール樹脂を含み、前記ポストキュアによって架橋構造を形成する。
【0021】
さらに、前記リフロー処理において揮発しないフラックス成分を含む。
【0022】
前記リフロー処理において、重量減少率は、0.2%以下である。
【0023】
また、チキソトロピーは、1.1~3.5である。
【0024】
さらに、粒子径が15μm以下のフィラーを含む。
【0025】
前記リフロー処理及び前記ポストキュアは、1.0[MPa]以上に加圧された窒素を含むガス中において行われる。
【発明の効果】
【0026】
本発明により、品質を向上させることができる半導体装置の製造方法及び封止材を提供することができる。具体的には、例えば、本発明の半導体装置の製造方法は、微細配線が形成されたベースウェハにボイド(Void)なく任意の膜厚で均一に封止材を塗布することができる。このため、封止材の膜厚平坦化工程を必要としない。また、本発明の封止材は、樹脂等の主成分及び硬化後架橋構造を持つフラックス成分を含有するので、リフロー工程での揮発を抑制することができる。このため、当該封止材を用いた半導体装置の製造方法は、B-ステージ化された封止材を含む半導体チップを、ベースウェハへ積層した後に、酸化膜除去工程を必要としない。また、リフロー工程においても、ボイド(Void)の発生を抑制し、半導体チップの反りや位置ずれを抑制することができる。よって、本発明の半導体装置の製造方法は、ベースウェハ単位での一括バンプ接合可能である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】実施形態1に係る半導体装置を例示した側面図である。
図2】実施形態1に係る半導体装置の製造方法を例示したフローチャート図である。
図3】実施形態1に係る半導体装置の製造方法を例示した工程図である。
図4】実施形態1に係る半導体装置の製造方法を例示した工程図である。
図5】実施形態1に係る半導体装置の製造方法を例示した工程図である。
図6】実施形態1に係る半導体装置の製造方法を例示した工程図である。
図7】実施形態1に係る半導体装置の製造方法を例示した工程図である。
図8】実施形態1に係る半導体装置の製造方法を例示した工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
説明の明確化のため、以下の記載及び図面は、適宜、省略、及び簡略化がなされている。また、各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。
【0029】
(実施形態1)
実施形態1に係る半導体装置及び半導体装置の製造方法を説明する。図1は、実施形態1に係る半導体装置を例示した側面図である。図1に示すように、半導体装置1は、複数の半導体チップ10、ベースウェハ20、封止材30を備えている。
【0030】
複数の半導体チップ10は、ベースウェハ20上に多層に積層されている。例えば、複数の半導体チップ10は、CoW(Chip on Wafer)工法により、ベースウェハ20上に多層に積層されている。半導体チップ10にはバンプ電極11が形成されている。複数の半導体チップ10は、TSV技術を用いて、三次元積層体として形成されている。TSVにおける貫通電極は、バンプ電極11に通電可能状態に接続されている。また、半導体チップ10のバンプ電極11が形成された面の反対側の面には、貫通電極が通電可能状態に接続された接続用電極12が形成されてもよい。複数の半導体チップ10は、例えば、複数の半導体チップ10を含むチップウェハからダイシングにより分離されたものである。
【0031】
ベースウェハ20は、上面に形成された複数の微細な配線及び配線に接続した接続用電極21を有している。ベースウェハ20に形成された接続用電極21は、半導体チップ10のバンプ電極11に導電性接着剤を介して通電可能状態に接合されている。導電性接着剤は、例えば、ハンダである。また、半導体チップ10の接続用電極12は、他の半導体チップ10のバンプ電極11に導電性接着剤を介して通電可能状態に接合されている。ベースウェハ20及びベースウェハ20上に多層に積層された複数の半導体チップ10を積層チップ50と呼ぶ。積層チップ50は、封止材30により封止されている。
【0032】
封止材30は、チップウェハ上に塗布される際は、液状のものが好ましい。これにより、チップウェハ上にボイドなく任意の膜厚で均一に塗布することができる。また、封止材30は、チップウェハ上に塗布された後にプレキュアによってBステージ化するものが好ましい。これにより、封止材30は、B-ステージ化後に、チップウェハを複数の半導体チップ10に分離するために、チップウェハとともにダイシングされることが可能である。また、ダイシングされた半導体チップ10を、ベースウェハ20上及び半導体チップ10上に搭載時に仮固定することができる粘着性を持たせることができる。
【0033】
封止材30は、ベースウェハ20に形成された接続用電極21と、半導体チップ10のバンプ電極11とが、導電性接着剤を介して対向するように、ベースウェハ20上に半導体チップ10とともに積層される。また、封止材30は、半導体チップ10に形成された接続用電極12と、半導体チップ10のバンプ電極11とが、導電性接着剤を介して対向するように、他の半導体チップ10上に半導体チップ10とともに積層される。
【0034】
そして、封止材30は、積層チップ50を、加圧されたガス中でリフロー処理を行うことによって、接続用電極21及び12と、バンプ電極11とを導電性接着剤を介して接合した後に、積層チップ50を加圧されたガス中でポストキュアを行うことによって、Cステージ化する。リフロー処理及びポストキュアは、例えば、1.0[MPa]以上に加圧されたガス中において行われる。ガスは、例えば、不活性ガスであり、窒素でもよい。加圧されたガス中において、リフロー処理及びポストキュアを行うことにより、ボイドの発生、半導体チップ10の反りや位置ずれを抑制することができる。
【0035】
封止材30は、例えば、フィラー(Filler)が10~40%、エポキシ樹脂(Epoxy)が5~50%、フェノール系水酸基を有するフェノール樹脂が10~30%、PEGMIA(Propylene Glycol Methyl Ether Acetate)溶媒が5~50%、フラックスが1~5%含むものが好ましい。
【0036】
封止材30は、エポキシ樹脂及びフェノール樹脂を含む。封止材30は、例えば、ポストキュアによって架橋構造を形成する。封止材30は、リフロー処理において揮発しないフラックス成分を含むものが好ましい。リフロー処理は、導電性接着剤であるハンダが溶融する温度以上で行われる。例えば、ハンダの融点は、ハンダの種類にもよるが、225~250[℃]である。例えば、封止材30は、240℃で揮発しないフラックスを含む。これにより、ハンダ等の導電性接着剤の溶融時に、フラックスは、揮発せずベースウェハ20の接続用電極、ハンダ、バンプ電極11を覆うことができる。よって、酸化膜除去工程を不要とすることができる。
【0037】
封止材30は、リフロー処理において軟化するものが好ましい。これにより、加圧されたガス中でのリフロー時に、接続用電極21とバンプ電極11とをセルフアライメントさせることができる。そして、接続用電極21とバンプ電極11とを一括接合させることができる。
【0038】
封止材30は、B-ステージ状態(半硬化)からC-ステージ状態(全硬化)までの間の硬化遅延が長いことが好ましい。すなわち、封止材30は、半導体チップ10のベースウェハ20上への搭載時及びリフロー処理時には、まだ硬化せず、リフロー処理後に、ポストキュアを行うことにより硬化する。これにより、リフロー時に接続用電極21とバンプ電極11とをセルフアライメントさせることができる。そして、接続用電極21とバンプ電極11とを一括接合させることができる。
【0039】
また、封止材30は、リフロー処理において重量減少率が低いものが好ましい。リフロー処理において、フラックス及び溶媒は残留している。よって、エポキシ樹脂及びフェノール樹脂も残留していることが好ましい。封止材30の重量減少率は、例えば、リフロー処理時の255[℃]において、TG-DTAで0.2[%]以下のものが好ましい。これにより、リフロー処理における半導体チップ10の反りや位置ずれを抑制することができる。
【0040】
封止材30は、チキソトロピー(Thixotoropic Index)が所定の値のものが好ましい。塗布前の封止材30のチキソトロピーは、1.1~3.5であることが好ましい。チキソトロピーが1.1よりも小さいと、粘度が下がらないので、封止材30を、例えば、スプレイ装置で塗布する際に、スプレイ装置に目詰まりを起こしやすい。また、粘度が下がらないので、平坦化性(Leveling)が不足する。
【0041】
一方、チキソトロピーが3.5よりも大きいと、粘度が下がりすぎるので、スプレイ装置による塗布は、霧化性を向上させるが、塗布後の粘度が低いため、厚膜塗布することができない。
【0042】
封止材30は、フィラーを含むことが好ましい。フィラーを含むことによって、封止材30の物性、例えば、粘度を調整する。封止材30は、例えば、粒子径が15[μm]以下のフィラーを含む。フィラーの粒子径が15[μm]よりも大きいと、例えば、スプレイ装置により塗布することが困難になる。
【0043】
次に、半導体装置1の製造方法を説明する。図2は、実施形態1に係る半導体装置の製造方法を例示したフローチャート図である。図3図8は、実施形態1に係る半導体装置の製造方法を例示した工程図である。
【0044】
図2のステップS11及び図3に示すように、封止材30の塗布を行う。具体的には、チップウェハ40上に、例えば、スプレイ(Spray)装置31を用いて、封止材30をスプレイにより塗布する。チップウェハ40は、半導体チップ10にダイシングされる前の複数の半導体チップ10を含む。半導体チップ10には、バンプ電極11が形成されていてもよい。封止材30は、ボイドがないように任意の膜厚で均一に塗布する。
【0045】
次に、図2のステップS12及び図4に示すように、封止材30のB-ステージ化を行う。具体的には、チップウェハ40上に塗布された封止材30をプレキュアによりB-ステージ化する。例えば、封止材30を塗布後のチップウェハ40を、オーブンを用いて、70[℃]で1時間加熱して溶剤を蒸発させる。これにより、封止材30をB-ステージ化する。封止材30をB-ステージ化することにより、封止材30は、半導体チップ10とともにダイシングされることができるとともに、ダイシングされた半導体チップ10をベースウェハ20へ搭載する時に、仮固定をすることができる程度の粘着性を有するようになる。
【0046】
次に、図2のステップS13及び図5に示すように、チップウェハ40のダイシングを行う。例えば、チップウェハ40の裏面を、裏面グラインド(back grinde)する。チップウェハ40の裏面は、パターン面の反対側の面である。チップウェハ40のパターン面は、封止材30が塗布された面であり、半導体チップ10のバンプ電極11等が形成された面である。裏面グラインドを、例えば、100[μm]行った後で、ブレードダイシング(blade dicing)装置で、半導体チップ10を個片化させる。このようにして、Bステージ化された封止材30とともにチップウェハ40をダイシングして、複数の半導体チップ10に分離する。なお、TSVの貫通電極、接続用電極12を形成してもよい。
【0047】
次に、図2のステップS14及び図6に示すように、ベースウェハ20上に半導体チップ10を積層する。具体的には、ベースウェハ20に形成された接続用電極21と、半導体チップ10のバンプ電極11とが、導電性接着剤を介して対向するように、ベースウェハ20上に半導体チップ10を積層させる。また、半導体チップ10に形成された接続用電極12と、半導体チップ10のバンプ電極11とが、導電性接着剤を介して対向するように、他の半導体チップ10上に半導体チップ10を積層させる。
【0048】
例えば、ダイシングにより個片化させた半導体チップ10を、フリップチップボンダーにより、ベースウェハ20上に積層する。積層する際には、100[℃]に加熱し、荷重80[N]2秒間圧着することにより行う。これにより、ベースウェハ20上に封止材30の軟化温度で積層し、仮固定することができる。ベースウェハ20及びベースウェハ20上の複数の半導体チップ10を含むものを積層チップ50と呼ぶ。よって、本ステップでは、積層チップ50が形成される。
【0049】
次に、図2のステップS15及び図7に示すように、加圧ガス中でリフロー処理を行う。具体的には、積層チップ50を、加圧されたガス中でリフロー処理を行うことにより、接続用電極21及び12と、バンプ電極11とを導電性接着剤を介して接合させる。
【0050】
リフロー処理には、加圧オーブンを用いてもよい。すなわち、積層チップ50を、例えば、窒素を充填させた加圧オーブンにおいて加熱する。ガス圧力は、例えば、1.0[MPa]以上である。これにより、積層チップ50を、導電性接着剤であるハンダ融点まで加熱し、接続用電極21及び12と、バンプ電極11とを接合させる。加圧ガスによるリフロー接合によって、ボイドの発生を抑制することができる。
【0051】
また、ガス加圧によるリフロー処理によって、接続用電極21及び12と、バンプ電極11とをセルフアライメントさせることができる。リフロー処理の前において、仮に、接続用電極21及び12と、バンプ電極11との位置がずれていても、加圧ガス中のリフロー処理においては、導電性接着剤は溶融し、封止材30は軟化している。よって、接続用電極21及び12と、バンプ電極11とは安定な位置に再配置される。
【0052】
これにより、接続用電極21及び12と、バンプ電極11とをセルフアライメントさせることができる。さらに、半導体チップ10の反りや位置ずれを抑制し、バンプ接合することができる。また、複数の半導体チップ10のバンプ電極11と、接続用電極21及び12とを一括に接合することができる。
【0053】
次に、図2のステップS16及び図8に示すように、加圧ガス中でポストキュアを行う。具体的には、接続用電極21及び12と、バンプ電極11とを導電性接着剤を介して接合させた積層チップ50を、加圧されたガス中でポストキュアを行うことにより、封止材30をCステージ化する。例えば、積層チップ50を、窒素を充填させた加圧オーブンにおいて加熱する。ガス圧力は、例えば、1.0[MPa]以上である。圧力を1.0[MPa]以上のままで160[℃]2時間保持する。このようにして、ポストキュアを行い、封止材30を熱硬化させる。
【0054】
本実施形態の半導体装置1の製造方法では、リフロー処理及びポストキュアは、1.0[MPa]以上に加圧されたガス中において行われてもよい。また、リフロー処理及びポストキュアは、同じ圧力に加圧されたガス中において行われてもよい。例えば、リフロー処理を行った圧力条件のまま、ポストキュアを行うことにより、ガス圧の設定を簡略化することができる。
【0055】
また、リフロー処理における圧力が、ポストキュアにおける圧力よりも大きくしてもよい。これにより、リフロー処理において、封止材30を半導体チップ10の間隙に注入でき、封止材30の硬化の前に、ボイドの抑制、セルフアラインを優先させ、ポストキュアにおいて、フラックス及び溶媒の蒸発を優先させることができる。さらに、封止材30によっては、リフロー処理における圧力が、ポストキュアにおける圧力よりも小さくしてもよい。
【0056】
次に、本実施形態の半導体装置の製造方法を用いて製造した半導体装置において、塗布後の封止材30の膜厚、塗布後の封止材30のボイド、半導体チップ10の接合性、反り(Warpage)、半導体チップ10の位置ずれ、ポストキュア後の封止材30のボイドを測定した結果を説明する。
【0057】
<塗布後の封止材30の膜厚測定>
チップウェハ40上に封止材30を塗布し、封止材30の溶剤を乾燥した後のチップウェハ40をブレードダイシング装置で切断し、封止材30の膜厚を測定した。チップウェハ40の中心部、端部ともに20[μm]に対して、±1[μm]以内と均一な膜厚であり、エッジビードも存在しなかった。
【0058】
<塗布後の封止材30のボイド>
チップウェハ40上に封止材30を塗布し、封止材30の溶剤を乾燥した後のチップウェハ40を、超音波映像装置で観察した。ボイドのサイズは最大で20[μm]程度で、半導体チップ10のチップ面積の1[%]に満たない。
【0059】
<半導体チップ10の接合性>
半導体チップ10をベースウェハ20上に多層に積層した積層チップ50をポストキュア後に積層方向に切断し、積層チップ50の切断面をSEMで観察することにより、バンプの接合性を確認した。未接合のバンプは存在しなかった。
【0060】
<反り(Warpage)>
半導体チップ10をベースウェハ20上に多層に積層した積層チップ50をポストキュア後に積層方向に切断し、積層チップ50の切断面に対して積層された半導体チップ10間のギャップ高さを測定した。積層チップ50の中心部、端部ともに18[μm]±1[μm]以内と均一なギャップ高さであり、積層チップ50及び半導体チップ10の反りは観察されなかった。
【0061】
<半導体チップ10の位置ずれ>
半導体チップ10をベースウェハ20上に多層に積層した積層チップ50をポストキュア後に積層方向に切断し、積層チップ50の切断面をSEMで観察し、積層チップ50のバンプ電極11と接続用電極21及び12との位置精度を測定したところ、±1.5[μm]以内の精度であった。
【0062】
<ポストキュア後の封止材30のボイド>
半導体チップ10をベースウェハ20上に多層に積層した積層チップ50をポストキュア後に超音波映像装置で観察した。ボイドのサイズは、最大300[μm]程度で、半導体チップ10のチップ面積の1[%]に満たなかった。
【0063】
次に、本実施形態の効果を説明する。
本実施形態の半導体装置1の製造方法は、加圧されたガス中でリフロー処理及びポストキュアを行う。これにより、三次元実装等の半導体チップ10の間隙が小さい半導体装置1においても封止材30を間隙に注入させることができ、半導体装置1の品質を向上させることができる。また、封止材30を過不足なく半導体チップ10の間隙に注入できるので、封止材30の材料効率を向上させることができる。
【0064】
また、本実施形態の半導体装置1の製造方法は、封止材30をスプレイ装置31等により液状の状態で塗布するので、NCFよりも封止材30の厚さの制御を容易にすることができる。封止材30を半導体チップ10のバンプ電極11側に塗布し、ベースウェハ20側に塗布していない。ベースウェハ20に封止材30を塗布すると、半導体チップ10のバンプ電極11が狭ピッチになった場合に、半導体チップ10の間隙に封止材30を注入するのが困難になる。一方、本実施形態では、封止材30を半導体チップ10のバンプ電極11側に塗布しているので、バンプ電極11が狭ピッチになった場合に、半導体チップ10の間隙に封止材30を注入することができる。さらに、1.0[MPa]以上にエア加圧しているので、半導体チップ10の間隙に封止材30を注入することができる。
【0065】
本実施形態の半導体装置1の製造方法は、半導体チップ10をベースウェハ20に1つずつ積層する際に、熱圧着するのではなく、B-ステージ化された封止材30で仮固定する。そして、積層チップ50を形成した後で、ガス加圧中でリフロー処理を行う。よって、接続用電極21及び12と、複数の半導体チップ10のバンプ電極11とを一括で接合することができる。
【0066】
熱圧着の場合には、接続用電極21及び12と、バンプ電極11とを接合するのに一つ一つ正確に接合する必要があり、長時間を要する。よって、生産性を向上させることができない。一方、本実施形態のように、リフロー処理時に導電性接着剤を溶融させるとともに、封止材30を軟化させるので、仮に、位置ずれが生じていても、セルフアライメントすることができ、一括で接合することができる。よって、接合の位置ずれを抑制し、生産性を向上させることができる。
【0067】
加圧されたガス中でリフロー処理及びポストキュアを行うので、封止材30が積層チップの外部に、はみ出すエッチビードを抑制することができる。
【0068】
本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0069】
1 半導体装置
10 半導体チップ
11 バンプ電極
12 接続用電極
20 ベースウェハ
21 接続用電極
30 封止材
31 スプレイ装置
40 チップウェハ
50 積層チップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8