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特許7406340加速度検出装置、作業機械および加速度検出方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-19
(45)【発行日】2023-12-27
(54)【発明の名称】加速度検出装置、作業機械および加速度検出方法
(51)【国際特許分類】
   G01P 21/00 20060101AFI20231220BHJP
   G01P 15/125 20060101ALI20231220BHJP
   G01P 15/12 20060101ALI20231220BHJP
   G01P 15/08 20060101ALI20231220BHJP
   G01P 15/18 20130101ALI20231220BHJP
【FI】
G01P21/00
G01P15/125 Z
G01P15/12 D
G01P15/08 D
G01P15/18
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019191351
(22)【出願日】2019-10-18
(65)【公開番号】P2021067498
(43)【公開日】2021-04-30
【審査請求日】2022-09-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】倉金 徹
(72)【発明者】
【氏名】田上 健
(72)【発明者】
【氏名】朴 貞華
【審査官】岡田 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0095481(US,A1)
【文献】特開2017-67500(JP,A)
【文献】米国特許第8762091(US,B1)
【文献】国際公開第2014/020647(WO,A1)
【文献】特開平8-297033(JP,A)
【文献】特開平2-19771(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01P15/00-21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械的な可動部を有する機械式加速度センサから第1加速度を取得する第1加速度取得部と、
機械的な可動部を有していない非機械式加速度センサから第2加速度を取得する第2加速度取得部と、
前記第2加速度を用いて、前記第1加速度を補正するための補正値を演算する補正値演算部と、
を備える加速度検出装置。
【請求項2】
前記補正値演算部は、前記第1加速度と前記第2加速度の差分を前記補正値として演算する
請求項1に記載の加速度検出装置。
【請求項3】
前記補正値演算部は、静止状態が所定時間継続したか否かを判断し、継続したと判断した場合に、前記補正値を演算する
請求項1または2に記載の加速度検出装置。
【請求項4】
前記補正値演算部は、前記非機械式加速度センサによって検知された傾斜角が規定値以下であるか否かを判断し、前記規定値以下であると判断した場合に、前記補正値を演算する
請求項1から3のいずれか1項に記載の加速度検出装置。
【請求項5】
前記補正値演算部は、温度変化が所定値以下であるか否かを判断し、前記所定値以下であると判断した場合に、前記補正値を演算する
請求項1から4のいずれか1項に記載の加速度検出装置。
【請求項6】
前記補正値演算部は、起動後一定時間が経過したか否かを判断し、経過したと判断した場合に、前記補正値を演算する
請求項1から5のいずれか1項に記載の加速度検出装置。
【請求項7】
請求項1に記載の加速度検出装置を備える作業機械。
【請求項8】
機械的な可動部を有する機械式加速度センサから第1加速度を取得するステップと、
機械的な可動部を有していない非機械式加速度センサから第2加速度を取得するステップと、
前記第2加速度を用いて、前記第1加速度を補正するための補正値を演算するステップと、
を含む加速度検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、加速度検出装置、作業機械および加速度検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に示すように、油圧ショベル、ブルドーザ等の作業機械には、IMU(Inertial Measurement Unit:慣性計測装置)を搭載し、IMUを用いてロール角およびピッチ角といった姿勢角を作業機械の傾きに関する情報として得ることができるようにしたものがある。なお、IMUは、3軸のジャイロセンサと3軸の加速度センサを備える計測装置である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2015/177843号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
IMUが備える加速度センサとしては、例えば、機械式のセンサである静電容量検知方式の加速度センサが用いられている。静電容量検知方式の加速度センサは、固定電極と稼働電極を備え、加速度に応じた固定電極と稼働電極間の静電容量の変化に基づき加速度を検出する。このような機械的な可動部を有する加速度センサでは、温度、振動、衝撃等の環境印加時に性能が変動する。そのため、使用環境によっては、加速度センサの性能が、キャリブレーションがとれた工場出荷時の性能から変化してしまう場合がある。
【0005】
本開示は、上記事情に鑑みてなされたものであり、性能の変化を小さくすることができる加速度検出装置、作業機械および加速度検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本開示の一態様は、機械式加速度センサから第1加速度を取得する第1加速度取得部と、非機械式加速度センサから第2加速度を取得する第2加速度取得部と、前記第2加速度を用いて、前記第1加速度を補正するための補正値を演算する補正値演算部と、を備える加速度検出装置である。
【発明の効果】
【0007】
本開示の各態様によれば、機械式加速度センサの加速度検出における性能の変化を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の一実施形態に係る作業機械の斜視図である。
図2図1に示すIMU30の構成例を示すブロック図である。
図3図2に示す補正値演算部315の動作例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施形態について図面を参照して説明する。なお、各図において同一または対応する構成には同一の符号を用いて説明を適宜省略する。
【0010】
図1は、本開示の一実施形態に係る作業機械の斜視図である。図2は、図1に示すIMU(Inertial Measurement Unit:慣性計測装置)30の構成例を示すブロック図である。作業機械としての油圧ショベル100は、車両本体1と作業機2とを有する。車両本体1は、旋回体としての上部旋回体3と走行体としての走行装置5とを有する。上部旋回体3の後端側には、機関室3EGが配置されている。
【0011】
本実施形態において、油圧ショベル100は、機関室3EG内に、動力発生装置としての例えばディーゼルエンジン等の内燃機関や、動力発生装置が発生した動力を作動油の圧力(以下、適宜油圧という)に変換する油圧ポンプ等を備えている。ただし、動力発生装置は内燃機関に限定されない。油圧ショベル100の動力発生装置は、例えば、内燃機関と発電電動機と蓄電装置とを組み合わせた、いわゆるハイブリッド方式の装置であってもよい。
【0012】
上部旋回体3は、運転室4を有する。運転室4は、上部旋回体3の前端側に設置されている。すなわち、運転室4は、機関室3EGが配置されている側とは反対側に設置されている。運転室4内には、図示していない、表示装置、操作装置等が配置される。また、運転室4の下部に、IMU30と車体コントローラ40が設けられている。車体コントローラ40は、例えば、IMU30等のセンサを制御するとともに、オペレータによる操作装置に対する操作等に応じて動力発生装置や後述する油圧制御弁等を制御する。
【0013】
走行装置5は、履帯5aおよび5bを有している。走行装置5は、左右に設けられた油圧モータ5cの一方または両方が駆動し、履帯5aおよび5bが回転することにより、油圧ショベル100を前後に走行または旋回させる。作業機2は、上部旋回体3の運転室4の側方側に取り付けられている。
【0014】
なお、油圧ショベル100は、履帯5aおよび5bの代わりにタイヤを備え、機関室3EGに収容されているエンジン等からの駆動力を、トランスミッションを介してタイヤへ伝達して走行が可能な走行装置を備えたものであってもよい。このような形態の油圧ショベル100としては、例えば、ホイール式油圧ショベルがある。また、油圧ショベル100は、車両本体に作業機が取り付けられ、車両本体の一部を構成するタイヤを有した走行装置を備えた構成を有する例えばバックホウローダであってもよい。
【0015】
また、上部旋回体3は、作業機2および運転室4が配置されている側が前であり、機関室3EGが配置されている側が後である。前に向かって左側が上部旋回体3の左であり、前に向かって右側が上部旋回体3の右である。また、油圧ショベル100または車両本体1は、上部旋回体3を基準として走行装置5側が下であり、走行装置5を基準として上部旋回体3側が上である。油圧ショベル100が水平面に設置されている場合、下は鉛直方向、すなわち重力の作用方向側であり、上は鉛直方向とは反対側である。
【0016】
作業機2は、ブーム6とアーム7とバケット8とブームシリンダ10とアームシリンダ11とバケットシリンダ12とを有する。ブーム6の基端部は、ブームピン13を介して上部旋回体3の前部に揺動可能に取り付けられている。アーム7の基端部は、アームピン14を介してブーム6の先端部に揺動可能に取り付けられている。アーム7の先端部には、バケットピン15を介してバケット8が取り付けられている。バケット8は、バケットピン15を中心として揺動する。バケット8は、バケットピン15とは反対側に複数の刃8Bが取り付けられている。
【0017】
バケット8は、複数の刃8Bを有していなくてもよい。つまり、例えば、刃先が鋼板によってストレート形状に形成されたようなバケットであってもよい。また、作業機2は、例えば、単数の刃を有するチルトバケットを備えていてもよい。チルトバケットとは、バケットチルトシリンダを備え、バケットが左右にチルト傾斜することで油圧ショベルが傾斜地にあっても、斜面、平地を自由な形に成形、整地をすることができ、底板プレートによる転圧作業もできるバケットである。この他にも、作業機2は、バケット8の代わりに、法面バケットまたは削岩用のチップを備えた削岩用のアタッチメント等を備えていてもよい。
【0018】
図1に示すブームシリンダ10とアームシリンダ11とバケットシリンダ12とは、油圧によって駆動される油圧シリンダである。ブームシリンダ10はブーム6を駆動して、これを昇降させる。アームシリンダ11は、アーム7を駆動して、アームピン14の周りを回動させる。バケットシリンダ12は、バケット8を駆動して、バケットピン15の周りを回動させる。
【0019】
ブームシリンダ10、アームシリンダ11およびバケットシリンダ12等の油圧シリンダと機関室3EGに収容されている油圧ポンプとの間には、図示していない油圧制御弁が設けられている。油圧制御弁は、油圧モータ5cを駆動するための走行用制御弁と、ブームシリンダ10、アームシリンダ11およびバケットシリンダ12ならびに上部旋回体3を旋回させる旋回モータを制御するための作業機用制御弁とを含む。車体コントローラ40が、これらの油圧制御弁を制御することにより、ブームシリンダ10、アームシリンダ11、バケットシリンダ12、旋回モータまたは油圧モータ5cに供給される作動油の流量が制御される。その結果、ブームシリンダ10、アームシリンダ11およびバケットシリンダ12等の動作が制御される。
【0020】
また、上部旋回体3の上部には、アンテナ20および21が取り付けられている。アンテナ20および21は、油圧ショベル100の現在位置を検出するために用いられる。アンテナ20および21は、油圧ショベル100の現在位置を検出するための図示していない位置検出装置と電気的に接続されている。位置検出装置は、RTK-GNSS(Real Time Kinematic - Global Navigation Satellite SYstems、GNSSは全地球航法衛星システムをいう)を利用して油圧ショベル100の現在位置を検出し、検出した位置情報を車体コントローラ40へ出力する。アンテナ20および21が受信したGNSS電波に応じた信号は、位置検出装置に入力される。位置検出装置は、アンテナ20および21の設置位置を検出する。アンテナ20および21は、図1に示すように、上部旋回体3の上であって、油圧ショベル100の左右方向に離れた両端位置に設置されることが好ましい。
【0021】
図2に示すように、IMU30と車体コントローラ40は、車内信号線41を介して接続され、相互に所定の制御信号を送受信する。また、車体コントローラ40は、車内信号線41等を介して、運転室4内に設置されている図示していない表示装置、操作装置等と接続されるとともに、図1に示すブームシリンダ10、アームシリンダ11およびバケットシリンダ12のストロークを検出するセンサ、ブーム6の角度およびアーム7の角度を検出するセンサならびに上部旋回体3の旋回角度を検出するセンサ等といった図示していない各種のセンサ類に接続されている。ブームシリンダ10、アームシリンダ11およびバケットシリンダ12のストロークを検出するセンサとして、各油圧シリンダの伸縮量を検知する近接センサやロータリエンコーダなどを用いることができる。また、ブーム6の基端部およびアーム7の基端部に、図示しないエンコーダを備え、そのエンコーダによって各油圧シリンダの伸縮量を検知する近接センサまたはロータリエンコーダの検出値をリセットすることができるようにしてもよい。
【0022】
IMU30は、油圧ショベル100の角速度および加速度を検出する。油圧ショベル100の動作にともない、走行時に発生する加速度、旋回時に発生する角加速度および重力加速度といった様々な加速度が生じるが、IMU30は少なくとも重力加速度を含む加速度を検出し、各加速度の種類を区別することなく検出する。IMU30は、より高い精度で加速度を検出するために、例えば、油圧ショベル100の上部旋回体3の旋回中心軸上に設けられることが望ましいが、前述のようにIMU30は運転室4の下部に設置されてもよい。
【0023】
IMU30は、図1に示す座標系(X、Y、Z)において、X軸方向、Y軸方向およびZ軸方向の加速度ならびにX軸、Y軸およびZ軸周りの角速度を検出する。図1に示す例において、Y軸は油圧ショベル100の前後方向と平行な軸であり、X軸は油圧ショベル100の幅方向と平行な軸であり、Z軸はX軸およびY軸の両方に直交する軸である。座標系(X、Y、Z)は、例えば車体座標系とすることができる。
【0024】
また、IMU30は、検出した角速度と加速度に基づき、油圧ショベル100の姿勢角を算出して車体コントローラ40へ出力する。油圧ショベル100の傾きは、ピッチ角、ロール角およびヨー角で表すことができる。ピッチ角は、X軸周りに油圧ショベル100が傾斜したときの角度(θp)であり、ロール角はY軸周りに油圧ショベル100が傾斜したときの角度(θr)であり、ヨー角は、Z軸周りに油圧ショベル100が傾斜したときの角度(θy)である。本実施形態において、ピッチ角およびロール角を、油圧ショベル100の姿勢角という。
【0025】
図2は、IMU30の一例を示すブロック図である。IMU30は、CPU(中央処理装置)31と、メインメモリ31aと、ジャイロセンサ32と、加速度センサ33と、傾斜センサ34と、温度センサ35と、不揮発性メモリ36と、通信部37とを備える。
なお、IMU30が具備する上記各構成は、図示しない密閉式の筐体の中に格納される。
【0026】
CPU31は、内部に演算装置、制御装置、揮発性メモリや不揮発性メモリ等の記憶装置、入出力装置、タイマ、カウンタ、A/D(アナログ/デジタル)変換装置等のハードウェアを備え、その記憶装置内に記憶されているプログラムを実行することで、各部を制御する。本実施形態において、CPU31は、ハードウェアとプログラム等のソフトウェアの組み合わせから構成される機能的構成要素として、角速度取得部311、第1加速度取得部312、第2加速度取得部313、温度取得部314、補正値演算部315、加速度補正部316、姿勢角算出部317、および記憶部318を有する。ここで、記憶部318は、例えば、CPU31内部に設けられたキャッシュメモリなどである。
【0027】
メインメモリ31aは、いわゆる主記憶装置であって、CPU31の外部に設けられるとともに、CPUが行う演算処理において直接読み書きができる記憶領域を提供する。
【0028】
ジャイロセンサ32は、3軸の角速度を検出し、検出した角速度を表す信号(以下、角速度を表す信号を角速度ともいう)をCPU31へ出力する。
【0029】
加速度センサ33は、X軸方向、Y軸方向およびZ軸方向の3軸の加速度を検出し、検出した加速度(以下、第1加速度ともいう)を表す信号(以下、加速度を表す信号を加速度ともいう)をCPU31へ出力する。加速度センサ33は、例えば、静電容量検出方式の加速度センサ、ピエゾ抵抗方式の加速度センサ等の機械的な可動部を有する機械式加速度センサである。ここで、機械的な稼働とは、例えば、固体部材の変形や摺動等である。
【0030】
傾斜センサ34は、X軸方向およびY軸方向の2軸の加速度を検出し、検出した加速度(以下、第2加速度ともいう)を表す信号をCPU31へ出力する。傾斜センサ34は、例えば、熱検知方式の加速度センサ、液封入式の加速度センサ等の機械的な可動部を有していない非機械式加速度センサである。熱検知方式の加速度センサは、ヒータによって封入ガスを加熱し、重力加速度等の加速度による対流の変化を温度の変化に基づいて計測することで、加速度を検知する。液封入式の加速度センサは、チェンバー内の液面の変化を静電容量の変化に基づいて計測することで、加速度を検知する。機械式加速度センサと比較し、非機械式加速度センサは、機械的な可動部が無いため、部材の貼り付きが発生しない、機械的および温度的ヒステリシスが無い或いは小さい、機械的共振点が存在しない、耐衝撃性が高いという特長を有する。一方、非機械式加速度センサと比較し、機械式加速度センサは、周波数特性が良い、即ち、測定周波数帯域が広いという特長を有する。なお、傾斜センサ34は、例えば、X軸方向、Y軸方向およびZ軸方向の3軸の加速度を検出するものとしてもよい。
【0031】
温度センサ35は、IMU30の周囲温度を検出し、検出した温度を表す信号をCPU31へ出力する。
【0032】
角速度取得部311は、ジャイロセンサ32から角速度を取得する。角速度取得部311は、所定の周期で繰り返しジャイロセンサ32から3軸の角速度を取得し、例えば直近の所定時間分の角速度をメインメモリ31a又は記憶部318の所定の記憶領域に記憶する。
【0033】
第1加速度取得部312は、機械式加速度センサである加速度センサ33から第1加速度を取得する。第1加速度取得部312は、所定の周期で繰り返し加速度センサ33から3軸の加速度を取得し、例えば直近の所定時間分の第1加速度をメインメモリ31a又は記憶部318の所定の記憶領域に記憶する。
【0034】
第2加速度取得部313は、非機械式加速度センサである傾斜センサ34から第2加速度を取得する。第2加速度取得部313は、所定の周期で繰り返し傾斜センサ34から2軸の加速度を取得し、例えば直近の所定時間分の第2加速度をメインメモリ31a又は記憶部318の所定の記憶領域に記憶する。
【0035】
温度取得部314は、温度センサ35から温度を表す信号を取得する。温度取得部314は、所定の周期で繰り返し温度センサ35から温度を表す信号を取得し、例えば直近の所定時間分の温度を表す信号をメインメモリ31a又は記憶部318の所定の記憶領域に記憶する。
【0036】
補正値演算部315は、第2加速度を用いて、第1加速度を補正するための補正値(以下、加速度補正値とする)を演算する。補正値演算部315は、例えば、第1加速度の直近の所定時間分の平均値と第2加速度の直近の所定時間分の平均値との差分を加速度補正値として求める。その際、補正値演算部315は、加速度補正値を軸毎に演算する。ここで、所定時間とは、例えば10秒間である。
【0037】
また、補正値演算部315は、例えば、静止状態が所定時間継続したか否かを判断し、継続したと判断した場合に、加速度補正値を演算するようにしてもよい。動作時は加速度のノイズや遅延があり、オフセットである加速度補正値を計算しにくいが、静止状態であれば、オフセットを精度良く計算することができる。静止状態であるか否かの判断は、例えば、角速度の3軸合成値、角速度、第1加速度、第2加速度等の変化量を表す値等が所定の閾値より小さい場合に静止状態であると判断したり、車体コントローラ40から油圧ショベル100が静止状態であるか否かを示す信号、車速を示す信号等を受信し、その信号に基づいて判断したりすることができる。ここで、油圧ショベル100が静止状態であるか否かを示す信号とは、例えば操作装置が有するロックレバーが操作された状態であることを示す信号、操作レバーがすべて中立状態であることを示す信号等であってよい。
【0038】
また、補正値演算部315は、例えば、非機械式加速度センサである傾斜センサ34によって検知された傾斜角が規定値以下であるか否かを判断し、規定値以下であると判断した場合に、加速度補正値を演算するようにしてもよい。ここで、規定値以下とは、例えば、±5度以下や、±10度以下である。傾斜センサ34には、水平付近で特に精度良く加速度を検知できるものがあり、そのような傾斜センサ34を用いる場合に、より精度良く加速度補正値を演算することができる。
【0039】
また、補正値演算部315は、例えば、温度センサ35によって検知された所定の時間の温度変化が所定値以下であるか否かを判断し、所定値以下であると判断した場合に、加速度補正値を演算するようにしてもよい。温度変化が大きい場合、加速度センサ33や傾斜センサ34が出力する加速度がわずかに変動するときがあるため、温度変化が小さいときに限定することで、より精度良く加速度補正値を演算することができる。所定値とは、例えば1分間である。
なお、密閉式の筐体を採用する場合、筐体内の温度変化のばらつきを抑制し、熱式の傾斜センサ34の出力値を精度よくすることができる。
【0040】
また、補正値演算部315は、例えば、IMU30、あるいは油圧ショベル100の起動後一定時間が経過したか否かを判断し、経過したと判断した場合に、加速度補正値を演算するようにしてもよい。起動時は比較的温度変化が大きくなる場合があり、起動後所定時間経過後に演算することで、より精度良く加速度補正値を演算することができる。
【0041】
また、補正値演算部315は、加速度補正値を不揮発性メモリ361に1回の起動で1回だけ記憶するようにしてもよい。加速度補正値は頻繁に変化するものではなく、また、不揮発性メモリ361は一般に書き込み回数に制限があるため、1回の起動で書き込み回数を1回とすることで、書き込み頻度を適切にすることができる。ただし、補正値演算部315は、車体コントローラ40等から所定の補正指令を受け付けた場合、記憶回数を制限せずに、新たに演算した加速度補正値を不揮発性メモリ361に記憶するようにしてもよい。
【0042】
加速度補正部316は、例えば、CPU31の起動後の初期化の際に、あるいは補正指令を受け付けた後に、不揮発性メモリ36から前回記憶された加速度補正値361を読み込んで、メインメモリ31a又は記憶部318の所定の記憶領域に記憶し、メインメモリ31a又は記憶部318に記憶した加速度補正値361に基づいて第1加速度取得部312が取得した第1加速度の値を補正して、姿勢角算出部317へ出力する。第1加速度の値とは、例えば第1加速度のX軸方向の成分およびY軸方向の成分である。この構成によれば、補正指令が無い場合、油圧ショベル100の起動中に補正値が変更されるようなことはせず、あくまで、次回起動時に反映されることになる。ただし、変形例として起動中に反映される態様であってもよい。なお、第1加速度の値を補正するタイミングを、例えば静止状態など特定のタイミングで補正するようにしてもよい。
【0043】
姿勢角算出部317は、例えば、角速度取得部311が取得した角速度と、加速度補正部316が補正した第1加速度と、第1加速度取得部312が取得した第1加速度の値に基づいて姿勢角を演算して、演算した姿勢角を表す情報を車体コントローラ40へ送信する。加速度補正部316が補正した第1加速度は、例えば、第1加速度のX軸方向の成分およびY軸方向の成分であって、第1加速度取得部312が取得した第1加速度の値は、例えば、第1加速度のZ軸方向の成分である。姿勢角の算出の仕方には、限定はなく、例えば特許文献1に記載されているものを用いることができる。
【0044】
また、不揮発性メモリ36は、加速度補正値361等のデータを書き換え可能に記憶する。
【0045】
また、通信部37は、CAN(Controller Area Network)等の規格に基づき、車内信号線41を介して車体コントローラ40と通信する。
【0046】
次に、図3を参照して、図2に示す補正値演算部315の動作例について説明する。図3は、図2に示す補正値演算部315の動作例を示すフローチャートである。図3に示す処理は、CPU31の起動時に開始される。
【0047】
図3に示す処理が開始されると、まず、補正値演算部315は、起動後一定時間が経過したか否かを判断する(ステップS11)。一定時間が経過した場合、補正値演算部315は、起動後一定時間が経過したと判断し(ステップS11で「YES」)、次に、所定時間継続して静止しているか否かを判断する(ステップS12)。
【0048】
静止状態で所定時間が経過した場合、補正値演算部315は、所定時間継続して静止状態であったと判断し(ステップS12で「YES」)、次に、傾斜角が規定値以下であったか否かを判断する(ステップS13)。傾斜角が規定値以下でなかった場合(ステップS13で「NO」の場合)、補正値演算部315は、ステップS12へ戻り、再度、静止状態が所定時間継続するまで待機する(ステップS12で「NO」の繰り返し)。一方、傾斜角が規定値以下であった場合(ステップS13で「YES」の場合)、補正値演算部315は、次に、温度変化が所定値以下であったか否かを判断する(ステップS14)。
【0049】
温度変化が所定値以下でなかった場合(ステップS14で「NO」の場合)、補正値演算部315は、ステップS12へ戻り、再度、静止状態が所定時間継続するまで待機する(ステップS12で「NO」の繰り返し)。一方、温度変化が所定値以下であった場合(ステップS14で「YES」の場合)、補正値演算部315は、次に、第1加速度の所定時間の平均値を算出する(ステップS15)。次に、補正値演算部315は、第2加速度の所定時間の平均値を算出する(ステップS16)。次に、補正値演算部315は、第1加速度の所定時間の平均値と第2加速度の所定時間の平均値の差分を軸毎に算出する(ステップS17)。なお、ステップS17では、差分に対して上下限値を設定し、差分が上下限値を超える場合には上限値または下限値で差分の値を制限するようにしてもよい。
【0050】
次に、補正値演算部315は、算出した差分を軸毎に加速度補正値361として不揮発性メモリ36に記憶して(ステップS18)処理を終了する。
【0051】
また、補正値演算部315は、算出した差分を不揮発性メモリ36に記憶した後に、通信部37が車体コントローラ40から補正指令を受信すると、補正値演算部315は、ステップS12へ戻り、再度、静止状態が所定時間継続するまで待機する(ステップS12で「NO」の繰り返し)。
【0052】
以上の処理によって、補正値演算部315は、起動後一定時間が経過した後、静止状態が所定時間継続し、その間の傾斜角が既定値以下で、かつ、所定の時間の温度変化が所定値以下の場合に、加速度補正値を演算して、不揮発性メモリ36に記憶する。ここで、所定の時間は、静止状態の判断における時間と同一でもよいし同一でなくてもよい。
【0053】
以上のように、本実施形態によれば、経年変化が起きにくい非機械式加速度センサである傾斜センサ34を用いて、機械式加速度センサである加速度センサ33の出力を補正することができるので、補正を行わない場合と比較して、加速度の検出特性の変化を小さくすることができる。
【0054】
なお、図3に示す各判断における閾値等の判断の基準値は、例えば、車体コントローラ40からの指示に応じて任意に変更できるようにしてもよい。
【0055】
なお、上述した機械式加速度センサは、例えば、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)など機械的可動部を持つセンサであり、応答性がよい。しかし、可動部を持つがゆえに経年劣化、即ち、経年的な特性変化が生じやすい。一方、非機械式加速度センサは、例えば熱式傾斜計であり、機械的可動部を持たない。そのため経年劣化が小さいが、素早い動きを検出できない。なお、傾斜センサ34は、例えば、レンジの小さい機械式加速度センサとしてもよい。
【0056】
また、図1では、IMU30を上部旋回体3の運転席40の下部に一つ設けているが、IMUは、上部旋回体3に加え、例えば、ブーム6、アーム7、バケット8のそれぞれに、あるいはその一部に設けられていてもよい。また、IMUを複数設ける場合には、上述した補正指令を一斉に全てのIMUに送信してもよいし、個別に送信してもよい。
【0057】
また、図2では、メインメモリ31aおよび不揮発性メモリ36を、CPU31と別の構成としているが、メインメモリ31aおよび不揮発性メモリ36の両方、またはいずれか一方は、CPU31に含まれていてもよい。
【0058】
また、上記実施形態において、IMU30が、本開示に係る加速度検出装置の一態様である。ただし、本開示の態様は、これに限られず、例えば、ジャイロセンサ32を含まず、加速度センサ33、傾斜センサ34、CPU31等を含む加速度を検知する装置としてとらえたり、加速度検出装置ではなくジャイロセンサ32を含むIMUとしてとらえたりすることができる。また、図2に示すIMU30では、温度センサ35を省略してもよい。あるいは、ジャイロセンサ32、加速度センサ33、傾斜センサ34等が温度センサを含む場合に、その温度センサを温度センサ35に代えて用いてもよい。
【0059】
なお、作業機械は、例えばブルドーザ、ダンプトラック等であってもよい。
【0060】
なお、上記実施形態では、加速度補正値を第1加速度と第2加速度の差分としているが、これに限らず、例えば、異なる複数の傾斜センサで計測された複数の第1加速度と複数の第2加速度の各差分に基づいて演算した値としてもよい。
【0061】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して説明してきたが、具体的な構成は上記実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。また、CPU31が実行するプログラムの一部または全部は、コンピュータ読取可能な記録媒体、通信回線等を介して頒布することができる。
【符号の説明】
【0062】
1 車両本体、2 作業機、3 上部旋回体、4 運転室、5 走行装置、6 ブーム、7 アーム、8 バケット、20、21 アンテナ、30 IMU、31 CPU、31a メインメモリ、32 ジャイロセンサ、33 加速度センサ、34 傾斜センサ、35 温度センサ、36 不揮発性メモリ、37 通信部、311 角速度取得部、312 第1加速度取得部、313 第2加速度取得部、314 温度取得部、315 補正値演算部、316 加速度補正部、317 姿勢角算出部、318 記憶部、100 油圧ショベル
図1
図2
図3